JP2005142320A - 積層型磁性コアおよび電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来に比べて広い周波数帯域にわたって優れた特性を有し、良好な信号伝送特性や信号抑制効果を実現できる積層型磁性コア、および電子部品を提供する。
【解決手段】 積層型磁性コア1は、厚み(高さ)T方向に薄型のセグメント・コア2が複数枚積層され、全体として1つのトロイダル・コアが形成されている。セグメント・コア2は、酸化物磁性材料、例えばフェライトにより構成されている。各セグメント・コア2A〜2Eは、それぞれ同一の磁性材料であっても良いし、異なる磁性材料で構成されていても良い。セグメント・コア2の厚さT1は、コア全体の大きさにもよるが、一般的な回路素子に用いるのであれば、例えば0.1mm以上、3mm以下であることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 積層型磁性コア1は、厚み(高さ)T方向に薄型のセグメント・コア2が複数枚積層され、全体として1つのトロイダル・コアが形成されている。セグメント・コア2は、酸化物磁性材料、例えばフェライトにより構成されている。各セグメント・コア2A〜2Eは、それぞれ同一の磁性材料であっても良いし、異なる磁性材料で構成されていても良い。セグメント・コア2の厚さT1は、コア全体の大きさにもよるが、一般的な回路素子に用いるのであれば、例えば0.1mm以上、3mm以下であることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、酸化物磁性材料等からなる積層型磁性コア、およびそれを用いたインダクタンス素子や変成器などの電子部品に関する。
酸化物磁性材料、特にフェライト磁性材料は、高周波用磁性材料として低損失、高透磁率、および高飽和磁束密度といった特徴を有し、信号伝送や信号抑制などを目的とした回路素子、パワーエレクトロニクスの電力変換素子、または電波吸収体など、多くの用途に広く使用されている。
磁性材料を用いた回路素子としては、従来、例えば以下の特許文献1に記載のものがある。この特許文献1には、コモンモードとノーマルモードのインダクタンス値の調整を容易に行うことを目的としたノイズフィルタ用インダクタに関する発明が記載されている。このノイズフィルタ用インダクタの構成例として、トロイド型の複数の磁心(磁性コア)を用いた構成が記載されている。各磁心はそれぞれ独立したインダクタとして用いることができるよう、間隔を空けて配置されている。
特開平9−148144号公報
従来、磁性コアを用いた回路素子および電力変換素子については、高周波用といっても実際には使用目的によって適用周波数が種々異なるため、その使用目的に応じてコアの材料や形状を変えたものを多種類用意する必要があった。
ノイズ源となるパワーエレクトロニクスを例にとると、発振周波数は数KHz〜数MHzにあり、またスイッチング・オン/オフ時の周波数帯域は数100MHzに及ぶ。これに対して、他の機器に対する伝導性雑音障害を防止するために世界各国で雑音端子電圧の規格が設けられており、例えば国際規格のCISPR22では150KHz〜30MHzの広帯域で雑音端子電圧が規制されている。従来は、このような広帯域の雑音減衰に対応した磁性材料がないため、ノイズ対策が難しく、かつコストと時間がかかるという欠点があった。
ここで、インダクタンス素子のインダクタンスについて考察する。インダクタンス[H]は、以下の(1)式で表される。ここでμはコアの透磁率、Flはコアの磁路長、Saはコアの断面積、Nは巻線数を表す。(1)式をコア形状の点から考察すると、高いインダクタンスを得るには磁路長Flを短く、断面積Saを大きくした方が良い。
L=μ・(Sa/Fl)・N2 ……(1)
L=μ・(Sa/Fl)・N2 ……(1)
(2)式は磁束密度Bを表した式で、E・tはコアに印加する電圧・時間積である。ここで磁束密度Bはコアの断面積Saに反比例をすることになる。(2)式で計算した値がコアの材質の最大磁束密度を超えると、飽和状態に近づき、極端なインダクタンスの低下を招くので回路上好ましくない。このため実用性のあるコアの形状設計をするにあたっては適度な断面積Saを設定する必要がある。
B=E・t/Sa・N ……(2)
B=E・t/Sa・N ……(2)
以上の(1)式および(2)式の考察から、コア形状としては一般的に、磁路長Flを小さく、断面積Saを大きく設定することが好ましいことになる。
図17(A),(B)は、一般的なトロイダル形状のコアの上面図および側面図である。Dはコアの肉厚(外径D1と内径D2との差)を示し、Tはコアの高さ(厚み)を示す。このトロイダル・コアの場合、磁束が通過するコアの断面積Saは、(3)式に示すようにDとTの積となる。
Sa=D・T ……(3)
Sa=D・T ……(3)
ここで磁路長Flを小さくするにはコアの外径D1および内径D2や肉厚Dは小さい方が好ましい。一般に、これらの値は使用条件に応じた巻線エリアを考慮して決定することになる。肉厚Dを目的に応じて最適化(最小化)するとすると、(3)式によって厚みTは適度に大きくすることが望ましいといえる。
以上、トロイダル・コアを例にとって説明したが、他の形状においても磁路長Flと断面積Saを目的に応じて最適化すべきことは同様である。
図18および図19は、現在市販されている代表的な3種類の磁性材料A,B,CについてインダクタンスLs[H]とインピーダンスZ[Ω]との周波数特性を比較したもので、同一サイズのコアに1ターンを巻線して評価したものである。図18において、横軸は周波数[Hz]、縦軸はインダクタンスLs[H]を示す。図19において、横軸は周波数[Hz]、縦軸はインピーダンスZ[Ω]を示す。評価に用いたコア形状は図17(A),(B)に基づくトロイド型であり、外径D1×厚みT×内径D2=25mm×13mm×15mmである。材料Aはハイμ材と呼ばれているフィルタ回路用の磁性材料、材料Bは低損失材と呼ばれているパワーフェライト用の磁性材料、材料Cは高周波材と呼ばれている高周波雑音対策用の磁性材料である。
図18および図19に示したように、3種類の磁性材料は、それぞれ限定された周波数帯域でのみ良好な特性を維持していることが分かる。まず、インダクタンスLsの周波数特性について考察すると、材料Aは、比較的低域側で良好な特性を維持し、1.2MHz付近でインダクタンスLsがゼロとなってしまっている。材料Bは、周波数特性が材料Aより高域に伸びて、3MHz付近でLsがゼロになるが、700KHz以下での周波数特性は材料Aに大きく劣る。さらに、材料Cの周波数特性は高域まで伸びているが、低周波側は材料A、材料Bに劣る結果となっている。次に、インピーダンスZの周波数特性を考察すると、材料Aは低域側で、材料Bは中域側で、材料Cは高域側でそれぞれ高いインピーダンス値を持っている。このように各材料はそれぞれ得意な周波数帯域特性を有している。
これに対して、前述したようにCISPR22の雑音端子電圧の国際規格では150KHz〜30MHzまでを規定しており、上記の3種類の材料A,B,Cにおいて、この規格の全域をカバーしている材料はないことが分かる。このため一般には種々の材料やあるいはキャパシタなどの他の回路素子と組み合わせないと充分な特性がとれない。
このように従来では、材料Aのようなハイμ材の高周波特性が高域に伸びず、他の材料やキャパシタなど他の素子特性との併用が必要なため、回路構成が複雑になり、コストアップや小型化の障害になっていた。これに対する本質的な解決手段は、材料Aにおいて高域側に特性を伸ばすことである。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、従来に比べて広い周波数帯域にわたって優れた特性を有し、良好な信号伝送特性や信号抑制効果を実現できる積層型磁性コア、および電子部品を提供することにある。
本発明による積層型磁性コアは、酸化物磁性材料、または金属粉末と絶縁材料との混合材料からなる複数の磁性部材が積層され、全体として1つの磁性コアが形成されているものである。
本発明による電子部品は、本発明による積層型磁性コアと、この積層型磁性コアと磁気的に結合しうる導線とを備えたものである。
なお、本発明による積層型磁性コアは、完成品としてみたときに外観上、複数の磁性部材が積層された構成となっていれば良く、必ずしも製造工程の初期の段階から複数の磁性部材を用意し、それらを積層する場合に限られるものではない。製造工程の最終段階において、結果的に複数の磁性部材が積層された構造となっていれば良い。また、本発明による積層型磁性コアは、全体として1つの磁性コアが形成されるものであれば、各磁性部材の間に接着剤や絶縁材料等の他の物質が積層されていても良い。
本発明による積層型磁性コアでは、酸化物磁性材料、または金属粉末と絶縁材料との混合材料からなる複数の磁性部材が積層された構造を有していることで、従来の単体の磁性コアに比べて、特にインダクタンス特性やインピーダンス特性の広帯域化が図られる。これにより、例えば信号伝送や信号抑制などを目的とした回路素子を構成する場合において、良好な信号伝送特性や信号抑制効果が実現される。
本発明による電子部品では、このような積層型磁性コアを用いることで、良好な信号伝送特性や信号抑制効果を得ることができ、例えば広帯域伝送トランスや広帯域フィルタ用インダクタなどの実現が容易となる。
本発明による積層型磁性コアにおいて、酸化物磁性材料としては、例えばフェライトを用いることができる。なお、複数の磁性部材は、それぞれ同一材料であっても異なる材料であっても良い。複数の磁性部材は、例えばそれぞれ同一の厚さで構成される。ただし、互いに厚さの異なる第1および第2の磁性部材を含むような構成にすることも可能である。
本発明による積層型磁性コアは、例えばトロイダル・コアとして形成することができる。この場合、複数の磁性部材は、例えば高さ方向に積層しても良いし、径方向に積層するようにしても良い。高さ方向に積層する場合において、各磁性部材の高さ方向の厚さはそれぞれ、0.1mm以上、3mm以下であることが好ましい。
本発明による積層型磁性コアによれば、酸化物磁性材料、または金属粉末と絶縁材料との混合材料からなる複数の磁性部材を積層することで、全体として1つの磁性コアを形成するようにしたので、従来の単体の磁性コアに比べて広い周波数帯域にわたって優れた特性を有し、トランスやインダクタなどの回路素子に用いた場合に良好な信号伝送特性や信号抑制効果を実現できる。なお、磁性部材の初透磁率が3000以上であれば、特性としてインダクタンスが良好に取れ、好適である。
本発明による電子部品によれば、酸化物磁性材料、または金属粉末と絶縁材料との混合材料からなる複数の磁性部材を積層した構成の積層型磁性コアを備えるようにしたので、従来の単体の磁性コアを用いた場合に比べて広い周波数帯域にわたって優れた特性を有し、良好な信号伝送特性や信号抑制効果を得ることができる。これにより、例えば広帯域伝送トランスや広帯域フィルタ用インダクタなどを容易に実現できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1(A),(B)は、本発明の一実施の形態に係る積層型磁性コアの構成例を示す上面図および側面図である。この積層型磁性コア1は、厚み(高さ)T方向に薄型のセグメント・コア2を複数枚積層し、全体として1つのトロイダル・コアを形成したものである。図では、厚みT1が同一の5枚のセグメント・コア2A〜2Eを積層した例を示すが、セグメント・コア2の枚数はこれよりも多いまたは少ない構成であっても良い。図1(A),(B)において、D1,D2はそれぞれ、この積層型磁性コア1全体の外径および内径を示し、Tはこの積層型磁性コア1全体の高さ方向の厚みを示す。T1は、セグメント・コア2の高さ方向の厚みを示す。セグメント・コア2は、本発明における「磁性部材」の一具体例に対応する。
セグメント・コア2は例えば、酸化物磁性材料からなるコア、あるいはパーマロイやセンダスト等からなる金属粉末と絶縁材料の粉末とを混合し、加圧成形した圧粉コアである。さらにはアモルファス磁性材料からなるコアであっても良い。酸化物磁性材料からなるコアの場合、例えばフェライトにより構成される。各セグメント・コア2A〜2Eは、それぞれ同一の磁性材料であっても良いし、異なる磁性材料で構成されていても良い。セグメント・コア2の厚さT1は、コア全体の大きさにもよるが、一般的な回路素子に用いるのであれば、後述する理由により、例えば0.1mm以上、3mm以下であることが好ましい。また、セグメント・コア2の初透磁率が3000以上であれば、特性としてインダクタンスが良好に取れ、好適である。
この積層型磁性コア1は、全体として1つの磁性コアが形成されるものであれば、各セグメント・コア2A〜2Eの間に接着剤や絶縁材料等の他の物質が積層されていても良い。特に磁性材料として抵抗値の低いものを用いる場合には、各セグメント・コア2A〜2Eの間に絶縁層を設けた方が好ましいと考えられる。
なお、この積層型磁性コア1は、完成品としてみたときに外観上、複数のセグメント・コア2が積層された構成となっていれば良い。製造方法として、必ずしも製造工程の初期の段階からセグメント・コア2を複数用意し、それらを積層する場合に限られるものではない。製造工程の最終段階において、結果的に複数のセグメント・コア2が積層された構造となっていれば良い。
次に、この積層型磁性コア1を用いた電子部品の構成例を説明する。
図6はこの積層型磁性コア1を用いた電子部品の第1の構成例としての、1巻線タイプの回路素子の等価回路を示している。図7(A)はその回路素子の実際の構成例を示す。この回路素子10は、積層型磁性コア1とこの積層型磁性コア1の周りに巻かれた巻線11とを備えている。巻線11の巻数は、図7(A)に示したものに限定されず、必要とされる特性に応じて決定される。なお、巻線11は、電流が流れることにより積層型磁性コア1と磁気的に結合する導線である。本実施の形態における電子部品は、積層型磁性コア1と、それに磁気的に結合しうる部材とを備えた構成であれば良い。このため巻線11に限らず、例えば、板材を積層型磁性コア1の周りに巻いたものや、図7(B)に示したように、積層型磁性コア1に巻かれず、積層型磁性コア1の開口の一方側から他方側に導線12が通過するような形態であっても良い。
図8(A),(B)は、積層型磁性コア1を用いた電子部品の第2の構成例としての、2巻線タイプの回路素子の等価回路を示している。図9(A),(B),(C)は、その回路素子の実際の構成例を示す。これらの回路素子20A,20B,20Cはいずれも、積層型磁性コア1とこの積層型磁性コア1の周りに巻かれた2つの巻線21,22とを備えている。巻線21,22は、電流が流れることにより積層型磁性コア1と磁気的に結合する導線である。巻線21,22の巻数は、図示したものに限定されず、必要とされる特性に応じて決定される。各回路素子20A,20B,20Cの違いは、巻線21,22の巻き方にある。なお、上述の第1の構成例と同様、この第2の構成例についても、巻線21,22に限らず、例えば、板材を積層型磁性コア1の周りに巻いたものや、積層型磁性コア1に巻かれることなく、積層型磁性コア1の開口を導線が通過するような形態であっても良い。
図9(A)に示した回路素子20Aは、分割巻きと呼ばれる方法で巻線21,22を巻いたものであり、2つの巻線21,22が積層型磁性コア1の周りに別々に巻かれている。図9(B)に示した回路素子20Bは、バイファイラ巻きと呼ばれる方法で巻線21,22を巻いたものであり、2つの巻線21,22が積層型磁性コア1の周りに並行するように巻かれている。図9(C)に示した回路素子20Cは、より線巻きと呼ばれる方法で巻線21,22を巻いたものであり、2つの巻線21,22が互いにより合わせられるようにして積層型磁性コア1の周りに巻かれている。
図10(A),(B),(C)は、積層型磁性コア1を用いた電子部品の第3の構成例としての、3巻線タイプの回路素子の等価回路を示している。図11は、その回路素子の実際の構成例を示す。この回路素子30は、積層型磁性コア1とこの積層型磁性コア1の周りに巻かれた3つの巻線31,32,33とを備えている。巻線31,32,33の巻数は、図示したものに限定されず、必要とされる特性に応じて決定される。図11は、巻線31,32,33を三つ編み式で巻いた例である。なお図示しないが、バイファイラ巻きや、より線巻きによって構成することもできる。巻線31,32,33は、電流が流れることにより積層型磁性コア1と磁気的に結合する導線である。なお、上述の第1の構成例と同様、この第3の構成例についても、巻線31,32,33に限らず、例えば、板材を積層型磁性コア1の周りに巻いたものや、積層型磁性コア1に巻かれることなく、積層型磁性コア1の開口を導線が通過するような形態であっても良い。
以上、3巻線までの構成例について説明したが、4巻線以上の構成にすることももちろん可能である。以上の回路素子は、例えば信号や電力を伝送するための伝送用トランス、または信号や電力を抑制するためのフィルタ用インダクタなどとして用いることが可能である。なおその他にも、本実施の形態の積層型磁性コア1は、種々の電子部品に利用可能である。
次に、以上のように構成された積層型磁性コア1、およびそれを用いた電子部品の作用、効果を説明する。
図2(A),(B)は、この積層型磁性コア1における磁束Φの分布を模式的に示している。この積層型磁性コア1では、各セグメント・コア2A〜2Eのそれぞれにおいて磁束Φが発生する。例えば図2(A)の紙面手前側から奥側に電流iが流れるものとすると、上側から見て時計回りに各セグメント・コア2A〜2Eを通過するような磁束Φが発生する。
今回、セグメント・コア2の磁性材料としてフェライトを用いて積層型磁性コア1を形成することにより、低周波側の特性をほぼ維持した状態で、中域および高周波側の特性を大幅に改善できるという実験結果が得られた。以下、この実験結果と共に、この積層型磁性コア1の作用、効果を説明する。
図3は、セグメント・コア2単体でのインピーダンスZ[Ω]の周波数特性を評価した実験結果を示している。横軸は周波数[Hz]、縦軸はインピーダンスZ[Ω]を示す。この実験結果は、セグメント・コア2として、外径D1×厚みT1×内径D2=14mm×T1×8mmで、T1を1mm,2mm,4mm,8mmと変えた4種類のトロイダル・コアを製作し、それぞれ1ターン巻線してインピーダンス特性を評価したものである。コア材料としては、図18および図19における材料Aと同じ、ハイμ材と呼ばれているフィルタ回路用の磁性材料を用いた。図3において、曲線41がT1=1mm、曲線42がT1=2mm、曲線43がT1=4mm、曲線44がT1=8mmとした場合の測定データである。
図3において、符号45を付した太い実線は各測定データ(曲線41〜44)のピーク点を線で結んだものである。このピーク点を示す実線45を見ると、厚さT1が薄くなるほどインピーダンスZのピーク点が高周波側に移っていることが分かる。このピーク点の遷移状態を考察すると、厚さT1として4mmから2mmの間、3mm付近において、ピーク点が大きく変わる特性が見受けられ、厚さT1が3mm付近以下では高周波特性が急に向上する様子が分かる。
この図3の測定結果により、セグメント・コア2を薄型にすればするほど高域側に周波数特性が伸びることが新しい事実として捉えることができた。薄型化の下限はもちろんコア材料の粒径である。一般にコア材料の粒径は50μm以下であるので、この点を考慮すると実質的には100μmが薄型化の限度と思われる。従って、セグメント・コア2の厚さT1は、例えば0.1mm以上、3mm以下であることが好ましいと考えられる。
以上、図3においてセグメント・コア2の薄型化の効果について説明したが、次に薄型のセグメント・コア2を積層した場合の効果について説明する。
図4および図5は、図3に示したコアの内、厚さT1=8mmのコアを1つ用いた場合と、厚さT1=1mmのセグメント・コア2を8枚重ねて総厚Tを8mmにした場合とにおける周波数特性を測定して比較したデータである。図4は、インダクタンス特性(Ls特性)を比較したものであり、横軸は周波数[Hz]、縦軸はインダクタンスLs[H]を示す。図5は、インピーダンス特性(Z特性)を比較したものであり、横軸は周波数[Hz]、縦軸はインピーダンスZ[Ω]を示す。
図4のLs特性を考察すると、特に点線51で囲った部分のデータを見て分かるように、厚さ8mmのコアを1つのみ使用した場合には、2.2MHz付近でインダクタンスLsがゼロになるが、厚さ1mmの薄型セグメント・コア2を8枚積層した場合には、10MHz以上までの高域にわたってインダクタンス特性が伸びている。この結果、図5のZ特性では、特に点線52で囲った部分のデータを見て分かるように、2MHz以上の周波数域で大きなインピーダンスの差が顕著に出ており、薄型セグメント・コア2を8枚積層した場合には高域側でのインピーダンス特性が向上している。これらの現象から推測すると、コアの薄型化によって高周波側で磁壁の移動が動きやすくなっていることが推測できる。
このように薄型のコアを積層した場合にインピーダンス特性とインダクタンス特性とが高周波側に伸びることは、信号伝送や信号抑制を行う場合において広帯域に効果的に作用することを示している。つまりこの効果によって、広帯域伝送トランスや広帯域フィルタ用インダクタなどの開発と実用化が可能となる。このような広帯域化により、従来のように用途に合わせて多種類のコアを用意する必要もなくなり、生産上非常に好都合となる。
以上説明したように、本実施の形態による積層型磁性コア1によれば、薄型のセグメント・コア2が複数枚積層された構造を有していることで、従来の単体の磁性コアに比べて、特にインダクタンス特性やインピーダンス特性の広帯域化を図ることができる。これにより、例えば信号伝送や信号抑制などを目的とした電子部品を構成する場合において、良好な信号伝送特性や信号抑制効果を実現できる。
[変形例]
本発明は、上記実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば以下の変形例が考えられる。
本発明は、上記実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば以下の変形例が考えられる。
図12(A),(B)は、本実施の形態の第1の変形例に係る積層型磁性コアの構成例を示す上面図および側面図である。図1(A),(B)の積層型磁性コア1では、厚み(高さ)T方向にセグメント・コア2を複数枚積層するようにしたが、コアの積層方向はこれに限定されるものではない。
図12(A),(B)に示した本変形例の積層型磁性コア3は、幅方向(径方向)に薄型のセグメント・コア4を複数枚、同心円状に積層し、全体として1つのトロイダル・コアを形成したものである。なお図では、径方向の厚みD3が同一の3枚のセグメント・コア4A〜4Cを積層した例を示すが、セグメント・コア4の枚数はこれよりも多いまたは少ない構成であっても良い。この積層型磁性コア3においても、各セグメント・コア4A〜4Cを通過する磁束Φが発生するので、図1(A),(B)の積層型磁性コア1と同様の作用、効果が得られることが容易に推測できる。
図13(A),(B)は、本実施の形態の第2の変形例に係る積層型磁性コアの構成例を示す上面図および側面図である。図1(A),(B)の積層型磁性コア1では、厚みT1が同一のセグメント・コア2を複数枚積層するようにしたが、図13(A),(B)に示した積層型磁性コア5のようにセグメント・コア6として、高さ方向の厚みが互いに異なるものを積層するようにしても良い。図4および図5に示した周波数特性を考慮すると、相対的に低周波側に特性がシフトしている厚めのコアと相対的に高周波側に特性がシフトしている薄目のコアとを積層することで、周波数特性の高帯域化が可能となる。
図13(A),(B)では、相対的に薄い厚みT1のセグメント・コア6A〜6Cと、相対的に厚い厚みT2のセグメント・コア6Dとを積層した例を示すが、その他にも厚みの組み合わせは種々考えられる。例えば各セグメント・コア6A〜6Dの厚みが互いにすべて異なるような組み合わせも可能である。
図14(A),(B)は、本実施の形態の第3の変形例に係る積層型磁性コアの構成例を示す上面図および側面図である。図12(A),(B)の積層型磁性コア3では、径方向の厚みD3が同一のセグメント・コア4を複数枚積層するようにしたが、この場合においても、図14(A),(B)に示した積層型磁性コア7のようにセグメント・コア8として、径方向の厚みが異なるものを積層するようにしても良い。
図14(A),(B)では、相対的に薄い厚みD3のセグメント・コア8A,8Bと、相対的に厚い厚みD4のセグメント・コア8Cとを積層した例を示す。この場合にも、厚みの組み合わせとしてその他種々の変形例が考えられる。
以上では、積層型磁性コアにより全体としてトロイダル・コアを形成した例を説明したが、本発明はさらに他のタイプのコアにも適用可能である。図15(A)〜(D)は、さらに他の構成例として、積層型磁性コアによりカット・コアを形成した例を示している。なお、図15(B)は、図15(A)の上面図を図の矢印X方向から見た側面図、図15(D)は、図15(C)の上面図を図の矢印X方向から見た側面図を示す。
このカット・コアは、コの字形にカットされた2つのコア15,16(図15(A),(B))を、一体化したものである(図15(C),(D))。各コア15,16がそれぞれ、図1(A),(B)の積層型磁性コア1と同様、厚み(高さ)方向に薄型のセグメント・コア17,18を複数枚積層した構造となっている。図では、それぞれ5枚のセグメント・コア17A〜17E,18A〜18Eを積層した例を示すが、セグメント・コア17,18の枚数はこれよりも多いまたは少ない構成であっても良い。また、図では同一の厚みのものを積層した例を示すが、セグメント・コア17,18として、異なる厚みのものが含まれていても良い。さらに、各セグメント・コア17,18の積層方向は高さ方向に限らず、図12(A),(B)の構成例と同様、幅方向に積層したものであっても良い。なお図では、コの字型のカット・コアの例を示すが、他の形状のカット・コアであっても良い。
図16(A),(B)は、このカット・コアを用いた電子部品としての回路素子の構成例を示している。図16(A)は、第1のコア15に第1の巻線19Aを、第2のコア16に第2の巻線19Bをそれぞれ独立に巻いたものである。図16(B)は、2つのコア15,16のそれぞれに、2つの巻線19A,19Bを共通に巻いたものである。なお、巻線19A,19Bは、電流が流れることによりこのカット・コアと磁気的に結合する導線である。このカット・コアについても、巻線19A,19Bに限らず、例えば、板材を巻いた構成や、コアに巻かれることなく、開口を導線が通過するような形態であっても良い。また図では巻線19A,19Bを各コア15,16に直接巻いた例を示したが、その他、ボビンを使って巻くようにしても良いし、各コア15,16にテープを貼り、その上から巻くような構成も可能である。また、巻数は、2巻線タイプに限らず、3巻線以上の構成にすることももちろん可能である。
Φ…磁束、1,3,5,7…積層型磁性コア、2(2A〜2E),4(4A〜4C),6(6A〜6D),8(8A〜8C)…セグメント・コア、10,20A〜20C,30…回路素子、11,21,22,31〜33…巻線。
Claims (9)
- 酸化物磁性材料、または金属粉末と絶縁材料との混合材料からなる複数の磁性部材が積層され、全体として1つの磁性コアが形成されている
ことを特徴とする積層型磁性コア。 - 前記酸化物磁性材料は、フェライトである
ことを特徴とする請求項1に記載の積層型磁性コア。 - 前記複数の磁性部材は、それぞれ厚さが同一である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の積層型磁性コア。 - 前記複数の磁性部材は、互いに厚さの異なる第1および第2の磁性部材を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の積層型磁性コア。 - 全体としてトロイダル・コアを形成している
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の積層型磁性コア。 - 前記複数の磁性部材が、高さ方向に積層されている
ことを特徴とする請求項5に記載の積層型磁性コア。 - 前記各磁性部材の高さ方向の厚さはそれぞれ、0.1mm以上、3mm以下である
ことを特徴とする請求項6に記載の積層型磁性コア。 - 前記複数の磁性部材が、径方向に積層されている
ことを特徴とする請求項5に記載の積層型磁性コア。 - 酸化物磁性材料、または金属粉末と絶縁材料との混合材料からなる複数の磁性部材が積層されることにより、全体として1つの磁性コアを形成している積層型磁性コアと、
この積層型磁性コアと磁気的に結合しうる導線と
を備えたことを特徴とする電子部品。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008153254A (ja) * | 2006-12-14 | 2008-07-03 | Tdk Corp | コイル部品 |
JP2011199033A (ja) * | 2010-03-19 | 2011-10-06 | Nec Tokin Corp | 線輪部品 |
JP2014160704A (ja) * | 2013-02-19 | 2014-09-04 | Honda Motor Co Ltd | コイル構造および電子機器 |
-
2003
- 2003-11-06 JP JP2003376645A patent/JP2005142320A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US7573364B2 (en) | 2006-12-14 | 2009-08-11 | Tdk Corporation | Coil unit |
JP2011199033A (ja) * | 2010-03-19 | 2011-10-06 | Nec Tokin Corp | 線輪部品 |
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