JP2005139347A - 熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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研司 小森
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隆 井上
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Abstract

【課題】 溶融時の構造安定性に優れ、機械特性、特に引張強度、靭性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド4,6樹脂の混合物を320℃未満の温度にて加熱後、溶融状態で剪断速度1000sec-1以上の剪断場を付与し、その後剪断場を除去することによって得られる、構造周期0.01〜1μmの共連続構造または数平均分散径0.01〜1μmの分散構造を有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。

Description

本発明は、溶融時の構造安定性に優れ、機械特性、とりわけ引張強度、靭性に優れ、構造材料や機能材料に有用な熱可塑性樹脂組成物に関する。また、相分離サイズのオーダーをナノメーターオーダーからミクロンオーダーに制御可能な熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す。)は優れた耐熱性、難燃性、耐薬品性、寸法安定性、剛性および電気絶縁性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などの用途に使用されている。
しかしながら、PPS樹脂は、脆く、耐衝撃性、機械特性に劣ることが知られており、ほとんどの場合、ガラス繊維等の無機補強剤を添加した強化系で使用されている。そのため、成形材料として使用分野が制限されているのが現状である。
このような現状から、PPS樹脂の靱性を改良する方法として、他の熱可塑性樹脂を配合する方法が知られている。例えばPPS樹脂とゴム状化合物からなる組成物(特許文献1参照)、PPS樹脂と熱可塑性ポリエステル系樹脂からなる組成物(特許文献2参照)、PPS樹脂とポリカーボネート系樹脂からなる組成物(特許文献3参照)、PPS樹脂とポリアミド系樹脂からなる組成物(特許文献4,5参照)が開示されている。
また、PPS樹脂とポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルケトンから選ばれる熱可塑性樹脂を特定の溶融混練条件下で混練することで、両相が連続的に連なった構造を有するPPS樹脂組成物が開示されている(特許文献6参照)。
一方、スピノーダル分解を利用したポリマーアロイとして、特定の温度域で互いに相溶する部分相溶系のポリマーブレンドを相溶状態で溶融紡糸した繊維を、その後、熱処理等でスピノーダル分解あるいは核生成と成長により相分解させ、繊維横断面中に0.001〜0.4μmの分散構造を形成させたポリマーブレンド繊維が記載されている(特許文献7参照)。また、PPS樹脂とポリアミド樹脂を一旦相溶化させ、その後、熱処理によりスピノーダル分解あるいは核生成と成長により相分解させることによって、構造周期0.01μm〜1μmの共連続構造または粒子間距離0.01μm〜1μmの分散構造に構造制御されたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が記載されている(特許文献8参照)。
特開昭60−120753号公報 特開昭59−58052号公報 特開昭51−59952号公報 特開昭53−69255号公報 特開昭61−126170号公報 特開2000−248179号公報 特開平8−113829号公報 特開2003−113307号公報
しかしながら、特許文献1〜5記載のいずれの方法を用いても単純に配合するのみではPPS樹脂との相溶性が悪く、靭性改良に十分な効果が得られていないのが現状である。また特許文献5記載の方法により得られる共連続構造は数マイクロメートル程度のものであり、その構造の規則性も低いものであるため、靭性改良に十分な効果が得られていないのが現状である。特許文献7記載の発明では主としてポリエステル系樹脂が使用されており、PPS樹脂の使用は記載されていない。また特許文献8記載の発明では相溶化する温度が高いことから、一旦相溶領域から外れた場合の相分離速度が高くなり、溶融状態のまま制御された構造を安定して保持することが困難である。
本発明は、優れた機械特性を有し、成形材料として有用な熱可塑性樹脂組成物を提供することをその課題とし、さらに好ましい態様においては、優れた規則性を有し、かつその構造を微細に制御し、さらにはその構造の2相間の濃度差を十分発達させ、しかもその構造が溶融時に安定して存在する熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、PPS樹脂およびポリアミド4,6樹脂を特定の温度で加熱・溶融後、特定の剪断速度で混練することによって得られる熱可塑性樹脂組成物が、上記特性を有することを見いだし本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、
(1)ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド4,6樹脂の混合物を320℃未満の温度にて加熱後、溶融状態で剪断速度1000sec-1以上の剪断場を付与し、その後剪断場を除去することによって得られる、構造周期0.01〜1μmの共連続構造または数平均分散径0.01〜1μmの分散構造を有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、 (2)前記剪断速度が3000sec-1以上であることを特徴とする(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物、
(3)前記剪断速度が3000sec-1〜5000sec-1であることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物、
(4)前記温度が300〜310℃であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
(5)ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド4,6樹脂の配合量の合計が100重量%の場合、ポリフェニレンスルフィド樹脂の配合量が1〜30重量%または70〜99重量%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
(6)ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド4,6樹脂の混合物を320℃未満の温度にて加熱後、溶融状態で剪断速度1000sec-1以上の剪断場を付与し、その後剪断場を除去することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
(7)前記剪断速度が3000sec-1以上であることを特徴とする(6)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
(8)前記剪断速度が3000sec-1〜5000sec-1であることを特徴とする(6)または(7)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
(9)前記温度が300〜310℃であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
(10)ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド4,6樹脂の配合量の合計が100重量%の場合、ポリフェニレンスルフィド樹脂の配合量が1〜30重量%または70〜99重量%であることを特徴とする(6)〜(9)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
本発明により、優れた機械特性を有し、成形材料として有用な熱可塑性樹脂組成物が得られるようになった。さらに好ましい態様においては、優れた規則性を有し、かつその構造が剪断場を除去した後も安定的に保持された熱可塑性樹脂組成物が得られるようになった。また、本発明により、優れた機械特性を活かして構造材料として有用であり、射出成形材料としても有用である熱可塑性樹脂組成物が得られるようになった。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で用いるPPS樹脂とは、下記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体であり、
Figure 2005139347
耐熱性の点から、上記構造式で示される繰返し単位を70モル%以上、特に90モル%以上を含む重合体であることが好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位等で構成することが可能である。
Figure 2005139347
本発明で用いられるPPS樹脂は、通常公知の方法即ち特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法或は特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造できる。本発明において上記の様に得られたPPS樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することも可能であり、さらに、これらの処理を2種類以上行うことも可能である。また、これらの処理を行ったPPS樹脂を、2種類以上の混合で使用することも可能であり、2種類以上の混合で使用する場合の具体的方法として、空気中加熱により架橋したPPS樹脂と熱処理を行っていないPPS樹脂の混合、酸水溶液による洗浄を行ったPPS樹脂と有機溶媒による洗浄を行ったPPS樹脂の混合、有機溶媒で洗浄したPPS樹脂と有機溶媒で洗浄を行っていないPPS樹脂の混合などが例示できる。
本発明で用いられるPPS樹脂の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はなく、通常5〜1,000Pa・s(320℃、剪断速度1000sec-1)のものが使用されるが、中でも10〜500Pa・sのものが好ましい。
本発明で用いられる(A)成分のポリアミド4,6樹脂は、テトラメチレンジアミンとアジピン酸とから得られる樹脂であり、ポリテトラメチレンアジパミドまたはナイロン4,6ともいう。ポリアミド4,6樹脂は、ポリテトラメチレンアジパミドおよびポリテトラメチレンアジパミド単位を主たる構成成分とする共重合ポリアミドを含む。
共重合成分として用いる単量体としては、特に制限がなく、任意のアミド形成成分を用いることができる。共重合成分の代表的な例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノウンデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウリルラクタム等のラクタム、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(アミノプロシル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等のジアミンとアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロルテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸等を挙げることができる。
ポリアミド4,6の製造に際しては、通常公知の方法、例えば、特開昭56−149430号公報、特開昭56−149431号公報、特開昭58−83029号公報、特開昭61−43631号公報等に記載されている方法を用いることができる。すなわち、まず、環状末端基が少ないプレポリマーを特定の条件下で製造した後、水蒸気雰囲気下で固相重合させることによって、または、2−ピロリドンやN−メチルピロリドン等の極性有機溶媒中での加熱によって、高粘度ポリアミド4,6を調製することができる。ポリアミド4,6の重合度については特に制限はないが、25℃、96%硫酸中、1g/dlにおける相対粘度が2.0〜6.0の範囲内にあるポリアミド4,6樹脂が好ましく用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、構造周期0.01〜1μmの共連続構造、または粒子間距離0.01〜1μmの分散構造を有することが必要である。かかる構造物を得るためには、PPS樹脂と、ポリアミド4,6樹脂とが、一旦相溶解し、後述のスピノーダル分解によって構造形成せしめることが必要である。
一般に、2成分の樹脂からなるポリマーアロイには、これらの組成に対して、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な全領域において相溶する相溶系や、逆に全領域で非相溶となる非相溶系や、ある領域で相溶し、別の領域で相分離状態となる、部分相溶系があり、さらにこの部分相溶系では、その相分離状態の条件によってスピノーダル分解によって相分離する場合と、核生成と成長によって相分離する場合がある。
さらに3成分以上からなるポリマーアロイの場合は、3成分以上のいずれもが相溶する系、3成分以上のいずれもが非相溶である系、2成分以上のある相溶した相と、残りの1成分以上の相が非相溶な系、2成分が部分相溶系で、残りの成分がこの2成分からなる部分相溶系に分配される系などがある。本発明で好ましい3成分以上からなるポリマーアロイは、2成分が部分相溶系で、残りの成分がこの2成分からなる部分相溶系に分配される系であり、この場合ポリマーアロイの構造は、2成分からなる部分相溶系の構造で代替できることから、以下2成分の樹脂からなるポリマーアロイで代表して説明する。
スピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分の樹脂組成および温度に対する相図においてスピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指し、また核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分の樹脂を混合した場合、相溶した場合の自由エネルギーと相溶しない2相における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂2ΔGmix/∂φ2)が0となる曲線のことであり、またスピノーダル曲線の内側では、∂2ΔGmix/∂φ2<0の不安定状態であり、外側では∂2ΔGmix/∂φ2>0である。
また、かかるバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶する領域と相分離する領域の境界の曲線のことである。
ここで本発明における相溶する場合とは、分子レベルで均一に混合している状態のことであり、具体的には異なる2成分の樹脂を主成分とする相がいずれも0.001μm以上の相構造を形成していない場合を指し、また、非相溶の場合とは、相溶状態でない場合のことであり、すなわち異なる2成分の樹脂を主成分とする相が互いに0.001μm以上の相構造を形成している状態のことを指す。相溶するか否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers,Munich Viema New York,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急冷した場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λm)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った共連続構造を形成する。この共連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]-1/2(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)
ここで本発明でいうところの共連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この共連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ 基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人)に記載されている。
スピノーダル分解では、この様な初期過程を経た後、波長の増大と濃度差の増大が同時に生じる中期過程、濃度差が共存組成に達した後、波長の増大が自己相似的に生じる後期過程を経て、最終的には巨視的な2相に分離するまで進行するが、本発明で規定する構造を得るには、この最終的に巨視的な2相に分離する前の所望の構造周期に到達した段階で構造を固定すればよい。
また、中期過程から後期過程にかける波長の増大過程において、組成や界面張力の影響によっては、片方の相の連続性が途切れ、上述の共連続構造から分散構造に変化する場合もある。この場合には所望の粒子間距離に到達した段階で構造を固定すればよい。
ここで本発明にいうところの分散構造とは、片方の樹脂成分が主成分であるマトリックスの中に、もう片方の樹脂成分が主成分である粒子が点在している、いわゆる海島構造のことをさす。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、構造周期0.01〜1μmの範囲の共連続構造、または粒子間距離0.01〜1μmの範囲の分散構造に構造制御されていることが必要であるが、スピノーダル分解の初期過程の構造周期を0.001〜0.1μmの範囲に制御することで、上述の中期過程以降で波長および濃度差が増大しても、構造周期0.01〜1μmの範囲の共連続構造、または粒子間距離0.01〜1μmの範囲の分散構造に構造制御することができる。より優れた機械特性を得るためには、構造発展させた後、構造周期0.01〜0.5μmの範囲の共連続構造、または粒子間距離0.01〜0.5μmの範囲の分散構造に制御することが好ましく、さらには、構造周期0.01〜0.3μmの範囲の共連続構造、または粒子間距離0.01〜0.3μmの範囲の分散構造に制御することがより好ましい。かかる構造周期の範囲、および粒子間距離の範囲に制御することにより本発明効果が得られるが、さらに濃度差を十分発達せしめることで、より優れた機械特性を有する構造物を効果的に得ることができる。
一方、上述の準安定領域での相分離である核生成と成長では、その初期から海島構造である分散構造が形成されてしまい、それが成長するため、本発明の様な規則正しく並んだ構造周期0.01〜1μmの範囲の共連続構造、または粒子間距離0.01〜1μmの範囲の分散構造を形成させることは困難である。
また、これらのスピノーダル分解による共連続構造、もしくは分散構造を確認するためには、規則的な周期構造が確認されることが重要である。これは例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、共連続構造が形成されることの確認に加えて、光散乱装置や小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れることの確認が必要である。なお、光散乱装置、小角X線散乱装置は最適測定領域が異なるため、構造周期の大きさに応じて適宜選択して用いられる。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λm は、共連続構造の場合構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θm を用いて次式により計算することができる。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
上記スピノーダル分解を実現させるためには、PPS樹脂とポリアミド4,6樹脂を相溶状態とした後、スピノーダル曲線の内側の不安定状態とすることが必要である。
一般的に2成分以上からなる樹脂で相溶状態を実現する方法としては、共通溶媒に溶解後、この溶液から噴霧乾燥、凍結乾燥、非溶媒物質中の凝固、溶媒蒸発によるフィルム生成等の方法により得られる溶媒キャスト法や、部分相溶系を、相溶条件下で溶融混練による溶融混練法が挙げられる。中でも溶媒を用いないドライプロセスである溶融混練による相溶化が、実用上好ましく用いられる。
溶融混練により相溶化させるには、通常の押出機が用いられるが、2軸押出機を用いることが好ましい。また、樹脂の組合わせによっては射出成形機の可塑化工程で相溶化できる場合もある。相溶化のための温度は、部分相溶系の樹脂が相溶する条件である必要がある。
次に上記溶融混練により相溶状態とした樹脂組成物をスピノーダル曲線の内側の不安定状態として、スピノーダル分解せしめるに際し、不安定状態とするための温度、その他の条件は、樹脂の組み合わせによっても異なり一概にはいえないが、相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより設定することができる。本発明においては前記の如く、初期過程の構造周期を特定の範囲に制御した後、中期過程以降でさらに構造発展させて本発明で規定する特定の共連続構造もしくは、分散構造とすることが好ましい。
この初期過程で特定の構造周期に制御する方法に関しては、特に制限はないが、熱可塑性樹脂組成物を構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で、かつ上述の熱力学的に規定される構造周期を小さくするような温度で熱処理することが好ましく用いられる。ここでガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)にて、室温から20℃/分の昇温速度で昇温時に生じる変曲点から求めることができる。
また、この初期過程から構造発展させる方法に関しては、特に制限はないが、熱可塑性樹脂組成物を構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で熱処理する方法が通常好ましく用いられる。また該熱処理温度を結晶性樹脂の結晶融解温度以上とすることは、熱処理による構造発展を効果的に得られるため好ましく、また該熱処理温度を結晶融解温度±20℃以内とすることは上記構造発展の制御を容易にするために好ましく、さらには結晶融解温度±10℃以内とすることがより好ましい。ここで樹脂成分としてPPS樹脂を含め2種以上の結晶性樹脂を用いる場合、該熱処理温度は、結晶性樹脂の結晶融解温度のうち最も高い温度を基準として、かかる結晶融解温度±20℃以内とすることが好ましく、さらにはかかる結晶融解温度±10℃以内とすることが好ましい。ここで結晶性樹脂の結晶融解温度とは、示差走査熱量計(DSC)にて、室温から20℃/分の昇温速度で昇温時に生じる融解曲線のピーク温度から求めることができる。
また、スピノーダル分解による構造生成物を固定化する方法としては、急冷等による短時間で相分離相の一方または両方の成分の構造固定や、一方が熱硬化する成分である場合、熱硬化性成分の相が反応によって自由に運動できなくなることを利用した構造固定や、さらに一方が結晶性樹脂である場合、結晶性樹脂相を結晶化によって自由に運動できなくなることを利用した構造固定が挙げられるが、本発明の様に共に結晶性樹脂を用いた場合、結晶化による構造固定が好ましく用いられる。
一般に部分相溶系には、同一組成において低温側で相溶しやすくなる低温相溶型相図を有するものや、逆に高温側で相溶しやすくなる高温相溶型相図を有するものが知られている。この低温相溶型相図における相溶と非相溶の分岐温度で最も低い温度を、下限臨界共溶温度(lower critical solution temperature略してLCST)と呼び、高温相溶型相図における相溶と非相溶の分岐温度で最も高い温度を、上限臨界共溶温度(upper critical solution temperature略してUCST)と呼ぶ。
部分相溶系を用いて相溶状態となった2成分以上の樹脂は、低温相溶型相図の場合、LCST以上の温度かつスピノーダル曲線の内側の温度にすることで、また高温相溶型相図の場合、UCST以下の温度かつスピノーダル曲線の内側の温度にすることでスピノーダル分解を行わせることができる。
また、この部分相溶系によるスピノーダル分解の他に、非相溶系においても溶融混練によってスピノーダル分解を誘発すること、例えば溶融混練時等の剪断下で一旦相溶し、非剪断下で再度不安定状態となり相分解するいわゆる剪断場依存型相溶解・相分解によってもスピノーダル分解による相分離が可能であり、この場合においても、部分相溶系の場合と同じくスピノーダル分解様式で分解が進行し規則的な共連続構造を有する。さらにこの剪断場依存型相溶解・相分解は、スピノーダル曲線が剪断場により変化し、不安定状態領域が拡大するため、スピノーダル曲線が変化しない部分相溶系の温度変化による方法に比べて、その同じ温度変化幅においても実質的な過冷却度(│Ts−T│)が大きくなり、その結果、上述の関係式におけるスピノーダル分解の初期過程における構造周期を小さくすることが容易となるためより好ましく用いられる。溶融混練時の剪断場の大きさは、剪断速度により定量化することができ、円盤型剪断付与装置等を使用することによって、所望の剪断速度を溶融時に付与することが可能である。円盤型剪断付与装置とは、平行平板の間に樹脂を投入し、加熱溶融後、一定の厚みを保ちながら一方の円盤を回転させることにより、中心からの距離rと平行平板間の厚みh、回転の各速度ωから溶融サンプルに付与される剪断速度を(ω×r/h)として求めることが可能である。なお、通常の押出機を用いる場合は、2軸押出機を用いることが好ましいが、その場合に付与される剪断速度はシリンダ内を通過する樹脂に付与される剪断速度の平均値として与えられ、その場合剪断速度の平均値は、スクリューの回転速度により制御をすることができる。また、2軸押出機を用いる場合、剪断速度は一般的にニーディングディスクを使用したミキシングゾーンでは高いが、それ以外の樹脂輸送ゾーンや、先端部付近の樹脂滞留ゾーンでは、剪断速度が低くなることから、押出機先端部から吐出される樹脂組成物は、ミキシングゾーンにて剪断場を付与して一旦相溶化した状態を経て、剪断場を除去した状態が一定時間経過したものとして得られる。
また、樹脂の組合わせによっては射出成形機の可塑化工程で相溶化できる場合もある。また上記射出成形機の可塑化工程での相溶化を確実に実現させる方法として、予め2軸押出機で溶融混練し相溶化させ、吐出後氷水中などで急冷し相溶化状態で構造を固定させたものを用いて射出成形する方法などが挙げられる。
かかる剪断場依存型相溶解・相分解の手法を用いることによって本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。本発明においてはPPS樹脂とポリアミド4,6樹脂の混合物を320℃未満の温度にて加熱後、溶融状態で剪断速度1000sec−1以上の剪断場を付与し、その後剪断場を除去することによって得られる。この加熱する際の温度としては、320℃未満であるが、好ましくは300〜310℃である。また、溶融時に付与する剪断場の剪断速度は、相溶する領域が広がる1000sec−1以上が好ましく、さらには3000sec−1以上がより好ましい。この剪断速度の上限は特定されるものではないが10000sec−1程度である。したがって、剪断速度は、1000sec−1〜10000sec−1が好ましく、3000sec−1〜5000sec−1がさらに好ましい。
本発明での熱可塑性樹脂組成物を構成する樹脂成分の組成については、熱可塑性樹脂組成物を構成する樹脂成分(PPS樹脂およびポリアミド4,6樹脂)の配合量の合計が100重量%の場合、PPS樹脂の配合量が1〜30重量%または70〜99重量%であるのがよい。熱可塑性樹脂組成物を構成する樹脂成分の合計100重量%に対して、PPS樹脂成分を多くする場合には、PPS樹脂が70〜99重量%の範囲が好ましく用いられ、さらには75〜95重量%の範囲がより好ましく、特に80〜90重量%の範囲であれば比較的低い剪断場の下で相溶化するため、好ましく用いられる。一方、ナイロン4,6樹脂成分を多くする場合には、ナイロン4,6樹脂が70〜99重量%の範囲が好ましく用いられ、さらには75〜95重量%の範囲がより好ましく、特に80〜90重量%の範囲であれば比較的低い剪断場の下で相溶化するため、好ましく用いられる。
また、本発明を構成する熱可塑性樹脂組成物に、さらにポリマーアロイを構成する成分を含むブロックコポリマーやグラフトコポリマーやランダムコポリマーなどのコポリマーである第3成分を添加することは、相分解した相間における界面の自由エネルギーを低下させるため、共連続構造における構造周期や、分散構造における分散粒子間距離の制御を容易にするため好ましく用いられる。この場合通常、かかるコポリマーなどの第3成分は、それを除く2成分の樹脂からなるポリマーアロイの各相に分配されるため、2成分の樹脂からなるポリマーアロイ同様に取り扱うことができる。
また、本発明における熱可塑性樹脂組成物に対して、耐衝撃性に優れる樹脂を第3成分として用いた場合は、耐衝撃性を高めた構造材料として有用に用いることができ、例えば自動車部品や電機部品などに好適に使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、アルコキシシラン化合物を併用することは、優れた機械強度を得るために有効である。かかるアルコキシシラン化合物としては、例えばエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられ、中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物等が好ましい。特に好ましくは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
かかるエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物は、より優れた機械的強度を得るために用いられ、その添加量はPPS樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部の範囲が選択され、0.2〜3重量部の範囲がより好ましく選択される。少なすぎると、アルコキシシラン化合物添加による機械的強度の向上効果が十分発現しなく、また多すぎると、上記改良効果が飽和に達するばかりでなく、組成物のガス発生量を増加させる傾向にある。
本発明においては、強度及び寸法安定性等を向上させるため、必要に応じて充填材を用いてもよい。充填材の形状としては繊維状であっても非繊維状であってもよく、繊維状の充填材と非繊維状充填材を組み合わせて用いてもよい。かかる充填材としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
強度及び寸法安定性等を向上させるため、かかる充填材を用いる場合、その配合量は特に制限はないが、通常PPS樹脂100重量部に対して30〜400重量部配合される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物、などの離型剤、防食剤、着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
これらの添加剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、少なくとも2成分の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2成分の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法が挙げられる。
本発明から得られる熱可塑性樹脂組成物の成形方法は、任意の方法が可能であり、成形形状は、任意の形状が可能である。成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを挙げることができるが、中でも射出成形は射出後、金型内で熱処理と構造固定化が同時にできることから好ましく、またフィルムおよび/またはシート押出成形であれば、フィルムおよび/またはシート延伸時に熱処理し、その後の巻き取り前の自然冷却時に構造固定ができることから好ましい。もちろん上記成形品を別途熱処理し構造形成させることも可能である。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。原料は、以下に示すものを使用した。
PPS:PPS樹脂(大日本インキ社より試供、数平均分子量25,000)
PA:ポリアミド4,6樹脂(JSR社より試供、数平均分子量45,000)
実施例1〜8
表1記載の組成からなる原料を、円盤型剪断付与装置(リンカム社製 CSS−430)に供給し、混練温度を300〜310℃に設定して、溶融後、表1記載の剪断速度による剪断場を付与した。また、表1記載の温度・剪断速度で剪断場を付与している箇所を光学顕微鏡で観察したところ、いずれのサンプルについても構造物がみられないことを確認した。
さらに上記サンプルについて、剪断場除去後直ちにサンプルを取り出し氷水中に急冷し、構造を固定したサンプルから切片を切り出し、混練温度と同じ温度でそれぞれ熱処理を行い、この熱処理中の構造形成過程を小角X線散乱を用いて追跡した。いずれのサンプルも、熱処理開始から10秒後以降にピークが出現し、またこのピークは、そのピーク位置を変化させずに強度を増加させる様子が観測された。この小角X線散乱においてピーク位置を変化させずに強度を増加させる過程はスピノーダル分解の初期過程に対応する。またこの小角X線散乱測定中初期過程の切片については、一部をすぐに氷水中に急冷し構造を凍結し、リンタングステン酸染色法によりポリアミド4,6を染色後、超薄切片を切り出したサンプルについて透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行ったところ、いずれのサンプルも共連続構造が観察された。
さらに上記小角X線散乱を測定した切片は、初期過程において構造を形成させた後、さらにそれぞれ上記記載の温度で剪断場除去後から30秒、60秒、120秒の条件で熱処理を続け、構造形成を行い、本発明の熱可塑性樹脂組成物を得た。それぞれのサンプルについて、表1に透過型電子顕微鏡写真から構造の状態を観察した結果とともに、小角X線散乱のピーク位置(θm)から下式で計算した、構造周期(Λm)を記した。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
なお、分散構造を有する場合の粒子間距離も共連続構造における構造周期と同じ方法で算出される。本実施例は320℃未満の温度で剪断場を除去した後も、構造周期あるいは粒子間距離が1μm以下に安定して保持されることがわかった。
また、剪断場除去後氷水中に急冷し構造を固定したサンプルの作成を繰り返し、加熱プレスに必要なサンプル量を採取したのち、剪断場除去後から60秒間熱処理を行いシート(厚み0.2mm)を作製した。次に該シートから、長さ×幅×厚み=25mm×5mm×0.2mmの短冊状サンプルを切り出し、チャック間距離10mm、引張速度10mm/分で測定した引張強度、引張伸びを測定し、その測定結果を表1に記載した。
比較例1〜2
PPSの配合量を60重量部および50重量部とした以外は、実施例7〜8と同様な操作を行い、構造を固定したサンプルを得たが、本サンプルは濁っており、また該サンプルを剪断場付与時に光学顕微鏡で観察したところ、1.0μm以上の不均一な分散構造物が観測された。このことから、本サンプルは、溶融時の剪断下で相溶化していないことがわかる。これは本系はLCST型相図を有することから、該組成での剪断条件では非相溶であるためと考えられる。また本例の様に、かかる構造周期が本発明範囲を外れると、機械特性の劣るものしか得られなかった。
比較例3〜4
剪断速度を500sec−1とした以外は、それぞれ実施例1〜2と同様な操作を行い、構造を固定したサンプルを得たが、本サンプルは濁っており、また該サンプルを剪断場付与時に光学顕微鏡で観察したところ、1.0μm以上の不均一な分散構造物が観測された。このことから、本サンプルは、溶融時の剪断速度が低く、該条件では非相溶であるためと考えられる。また本例の様に、かかる構造周期が本発明範囲を外れると、機械特性の劣るものしか得られなかった。
比較例5〜6
剪断付与時の温度を320℃以上とした以外は、それぞれ実施例2と同様な操作を行い、構造を固定したサンプルを得た。本サンプルは実施例1〜2と同様、剪断付与時は相溶しており、熱処理直後には構造周期1μm以下の共連続構造または粒子間距離が1μm以下の均一な構造が得られたが、相分離速度が高く、30秒後には構造周期が本発明範囲を外れることがわかった。またこの傾向は、剪断付与時の温度が高いほどより顕著に表われることもわかった。本サンプルの様に製造時の温度を本発明の範囲より高くすると、本発明の構造を保持する時間は極めて短く、60秒後には機械特性の劣るものしか得られなかった。
Figure 2005139347
Figure 2005139347
実施例9〜17
表3記載の組成からなる原料に対して、実施例1〜8と同様な操作を行い、構造を固定したサンプルを得た。本実施例はポリアミド4,6樹脂を多く配合しているが、実施例1〜8の場合と同様に、320℃未満の温度で剪断場を除去した後も、構造周期あるいは粒子間距離が1μm以下に安定して保持され、機械特性も良好であることがわかった。
Figure 2005139347
比較例7
PPSの配合量を40重量部とした以外は、実施例15〜16と同様な操作を行い、構造を固定したサンプルを得たが、本サンプルは濁っており、また該サンプルを剪断場付与時に光学顕微鏡で観察したところ、1.0μm以上の不均一な分散構造物が観測された。
このことから、本サンプルは、溶融時の剪断下で相溶化していないことがわかる。これは本系はLCST型相図を有することから、該組成での剪断条件では非相溶であるためと考えられる。また本例の様に、かかる構造周期が本発明範囲を外れると、機械特性の劣るものしか得られなかった。
比較例8〜9
剪断速度を500sec−1とした以外は、実施例15〜16と同様な操作を行い、構造を固定したサンプルを得たが、本サンプルについても濁っており、また該サンプルを剪断場付与時に光学顕微鏡で観察したところ、1.0μm以上の不均一な分散構造物が観測された。このことから、本サンプルは、比較例3〜4と同様に、溶融時の剪断速度が低く、該条件では非相溶であるためと考えられる。また本例の様に、かかる構造周期が本発明範囲を外れると、機械特性の劣るものしか得られなかった。
比較例10
剪断付与時の温度を320℃とした以外は、それぞれ実施例16と同様な操作を行い、構造を固定したサンプルを得た。本サンプルは実施例16と同様、剪断付与時は相溶しており、熱処理直後には構造周期1μm以下の共連続構造が得られたが、本サンプルは相分離速度が高く、30秒後には構造周期が本発明範囲を外れることがわかった。本サンプルの様に製造時の温度を本発明の範囲より高くすると、本発明の構造を保持する時間は極めて短く、60秒後には機械特性の劣るものしか得られなかった。
Figure 2005139347
これらの結果から、特定の組成・温度・剪断速度の下で溶融時剪断場を付与した後、スピノーダル分解の初期過程を経て、特定構造周期の共連続構造物を形成後、構造を発展させたサンプルが、溶融時に剪断場を除去した後も安定的に構造を保持しており、優れた機械特性を有していることがわかる。

Claims (10)

  1. ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド4,6樹脂の混合物を320℃未満の温度にて加熱後、溶融状態で剪断速度1000sec-1以上の剪断場を付与し、その後剪断場を除去することによって得られる、構造周期0.01〜1μmの共連続構造または数平均分散径0.01〜1μmの分散構造を有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記剪断速度が3000sec-1以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記剪断速度が3000sec-1〜5000sec-1であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記温度が300〜310℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド4,6樹脂の配合量の合計が100重量%の場合、ポリフェニレンスルフィド樹脂の配合量が1〜30重量%または70〜99重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド4,6樹脂の混合物を320℃未満の温度にて加熱後、溶融状態で剪断速度1000sec-1以上の剪断場を付与し、その後剪断場を除去することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記剪断速度が3000sec-1以上であることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  8. 前記剪断速度が3000sec-1〜5000sec-1であることを特徴とする請求項6または7に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  9. 前記温度が300〜310℃であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  10. ポリフェニレンスルフィド樹脂およびポリアミド4,6樹脂の配合量の合計が100重量%の場合、ポリフェニレンスルフィド樹脂の配合量が1〜30重量%または70〜99重量%であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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