JP2005138204A - 超微粒子担持炭素材料とその製造方法および担持処理装置 - Google Patents

超微粒子担持炭素材料とその製造方法および担持処理装置 Download PDF

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克嘉 蓼沼
Tsuneyuki Noguchi
恒行 野口
Masae Amano
昌江 天野
Kazuhiro Shiotani
和弘 塩谷
Takushi Taguchi
拓志 田口
Takeshi Ito
剛士 伊藤
Kazu Nakamura
和 中村
Koji Muto
広史 武藤
Kunichi Miyazawa
薫一 宮澤
Toshio Fukuda
敏男 福田
Fumito Arai
史人 新井
Shigeki Kato
茂樹 加藤
Keishin Ota
慶新 太田
Kenzo Masuko
賢蔵 益子
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Abstract

【課題】 高い機能の燃料電池電極触媒、電界電子エミッタ、スーパーキャパシタ、ナノ配線材料を炭素材料に超微粒子物質を担持することで、簡便に製造する。
【解決手段】 活性炭やカーボンナノチューブなどの炭素材料にRuOあるいはOsOを接触反応させることにより、超微粒子のRuOあるいはOsOを均質に炭素材料に分散担持する。この超微粒子担持処理によって、電子電導性、触媒機能、電荷充放電性能などが向上した高機能性炭素材料を簡易な方法で製造できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、固体燃料電池電極触媒材料とその製造方法、熱電子放出あるいは電界電子放出現象を利用する平面型テレビジョン、電子顕微鏡、プラズマ発生装置、X線発生装置などの電子エミッタ材料とその製造方法、高性能のキャパシタ材料とその製造方法、ナノ配線材料とその製造方法に関する。
高効率発電方法としての燃料電池が着目され、現在その実用化を目指し研究開発が進められている。燃料電池はその電解質の違いにより何種類かのタイプがあるが、中でも固体高分子型燃料電池(PEFC)は、低温で運転可能であることとモバイル機器や車載型として利用可能な利点からその実用化を目指した開発が現在大いに進められている。
固体高分子型燃料電池の場合、直接液体燃料として発電セルに直接メタノールを注入する燃料電池(DMFC)の場合は燃料の改質器が不要なため、水素を燃料とする改質型の固体高分子型燃料電池に比較すると、利便性、効率、初期始動性、低温運転性などの点で優れている。
しかし、このDMFCの場合のような固体高分子型燃料電池では、メタノールなどの炭化水素系燃料を酸化する際に生成する一酸化炭素(CO)が燃料電池の陽極に使われる電極触媒の白金(Pt)と強く結合し、触媒毒となって発電効率が低下してしまう。その解決のため、固体高分子型燃料電池の燃料極としてのアノード電極触媒材料としては、これまでPt−Mn、Pt−Cr、Pt−Fe、Pt−Moなどの様々な合金系触媒が開発され、現在最もCO耐被毒性が低いPt−Ru合金触媒が実用的なアノード電極触媒材料として最も有望なため、現在その実用化開発が進められている。
同様に、固体高分子型燃料電池の空気極としての従来のカソード電極触媒材料としてのPt触媒は酸素還元反応の分極値が高くそのため発電効率が悪く、その問題の解決を図るためPt−Fe、Pt−Ni、Pt−Coなどの合金系触媒が検討されているが、効率が高く実用的なカソード触媒材料としての実現が望まれている。
次に、テレビジョンに広く使われているディスプレイであるブラウン管(CRT)は、省電力、薄型化、大画面化、デジタル化などの問題をかかえており、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などが既に商品化され、次第にCRTに置き替わろうとしている。しかし、LCDでは動画スピード性、消費電力の問題、PDPでは大消費電力、輝度不足、短寿命などの問題をかかえている。それらの問題が解消できる高輝度、高動画スピード、低消費電力、デジタル化が可能な電界放出型ディスプレイ(FED)が着目され、現在盛んに開発が進められている。
当初、FEDの電子放出源であるエミッタ材料としては、電子を電界放出させるためにモリブデン(Mo)などの金属材料の先端を極端に尖らしたものが使われてきたが、最近カーボンナノチューブ(CNT)が優れた特性を有していることが分かり、現在ではCNTをFED電子エミッタ材料として用いる実用化開発が主流になりつつある。
CNTは、その構造が円筒型のグラファイトであり、直径が数〜数十nmで長さがμmレベルのため大きなアスペクト比を有し、主にその先端の開口部からの高い電界電子放出特性が優れている特長を有している。しかし、CNTを構成する大部分の側壁が電子放出性の無い六員環から構成されており、主に電子を放出しやすい先端部あるいは五員環の部分が少ないため、現状では省電力の点で改善できる余地がある。
次に、電気二重層キャパシタはLCやLSIのメモリーおよびアクチュエーターなどのバックアップ電源として、最近産業界や一般民生用の種々の分野で広く利用されている。従来、電気二重層キャパシタには活性炭繊維や粉末活性炭を分極用電極材料として用いているが、今後需要が拡大するソーラーカー、ハイブリッド自動車など高出力を必要とされるキャパシタ電源としては能力が不足しており、高性能なキャパシタ材料の開発が望まれている。
さらに、近年半導体の高集積化が進み、半導体チップ用配線もnmサイズの細さが要求されつつあり、ナノ配線材料の開発が盛んである。このナノ配線は、軽量で強靱な様々な高機能な配線材料が望まれている宇宙用の材料としても開発が望まれている。
特開2003−261311号公報 特開2003−221217号公報 特開2003−239142号公報 特表2002−526361号公報
前記したように、固体高分子型燃料電池の高いCO耐被毒性を有するアノード電極触媒材料ならびに酸素還元反応効率が高いカソード電極触媒材料、熱電子放出あるいは電界電子放出を利用する平面型テレビジョン、電子顕微鏡、プラズマ発生装置、X線発生装置などの高効率な電子エミッタ材料、電気二重層キャパシタよりも高性能なスーパーキャパシタ材料、ナノ配線材料などにおけるいずれも高機能、高性能な実用的材料の実現が望まれている。
本発明は、従来の固体高分子型燃料電池のアノード電極触媒ならびにカソード電極触媒を凌ぐ高性能な電極触媒材料とその製造方法、次に現在実用化が進められているFED電子エミッタ材料としてのカーボンナノチューブに対しさらに高性能な電界電子エミッタ材料とその製造方法、また従来開発が進められてきたキャパシタ材料の性能を上回る高性能のスーパーキャパシタ材料とその製造方法、さらに軽量で強靱な新規のナノ配線材料など、いずれの炭素材料の適用分野においても従来材料に比較して高機能な新規材料及びそれらの低コスト製造を可能とするものである。
本発明では、前記の目的を達成するため、まず固体高分子型燃料電池用の電極触媒材料として、従来のカーボンブラックやカーボンナノチューブなどに触媒元素として白金を担持したPt/C(カーボンブラックにPtが担持された材料を示す:以下同様)、Pt/CNT(カーボンナノチューブにPtが担持された材料を示す:以下同様)に、さらにアノード触媒としては高いCO耐触媒毒の特性を有する二酸化ルテニウム(RuO)あるいは二酸化オスミウム(OsO)に代表される物質を超微粒子状態で担持し、また同様にカソード触媒に利用した場合でも酸素還元反応の分極値を低下する特性を有するRuOあるいはOsOに代表される物質を超微粒子状態で担持することにより、高性能な固体高分子型燃料電池用の電極触媒材料を実現できる。
すなわち、本発明による固体高分子型燃料電池用のアノード電極触媒ならびにカソード電極触媒は、既に開発され市販されているPt/CあるいはPt/CNTなどの電極触媒材料にRuOあるいはOsOの超微粒子を後で担持する処理を行うことにより、従来の粗大化したPt粒子の微細化処理とRuOあるいはOsOの超微粒子の担持処理が同時に行えること、しかもそれらRuOあるいはOsOの超微粒子の担持処理は特別な装置や処理条件を必要とせず常温で行えるため低コスト化を可能とする。
本発明による炭素材料へのRuOあるいはOsOの担持処理は、上記の高性能な触媒材料としてだけでなく、電子電導性やキャパシタ特性が向上するため、省電力、高輝度、平面型のテレビディスプレイの用途に代表される高性能な電界電子放出源(エミッタ)材料、太陽電池車やハイブリッド自動車などに求められる従来のキャパシタ材料よりさらに高性能なスーパーキャパシタ材料、ならびにフレキシブルな極細の繊維状炭素材料によるナノ配線材料などを実現する。
上記の電界電子放出源(エミッタ)材料としては、RuOあるいはOsOを電子電導性の高い特長を利用して、例えばカーボンナノチューブの表面に超微粒子のRuOあるいはOsOを担持することによって、カーボンナノチューブの電界電子放出特性をはるかに上回る低電圧での高い電子放出性が得られ、そのため省電力化が可能となり、しかも電界電圧の低下による電子エミッタ材料の長寿命化を実現できるため、CNT−FED(カーボンナノチューブ型電界電子放出ディスプレイ)として早期実用化をもたらす。
同様に、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、フラーレンナノウィスカー、フラーレンナノファイバーなどのフレキシビリティのある繊維状の炭素材料に、高い電子電導性のRuOあるいはOsOを担持することによって、任意に配線可能なnmサイズの細さの高電子電導性のナノワイヤーを製造することが可能である。
さらに、これまでRuOが担持されたスーパーキャパシタ材料は、そのRuO担持処理を通常ゾルゲル法により粉末活性炭や繊維状活性炭に担持処理されてきたが、その作成方法の制約のため活性炭にRuOを超微粒子状態で分散させて担持させることが困難であった。本発明によれば、炭素材料へ超微粒子RuOあるいはOsOを担持する方法として、それらの最高酸化状態(Ru、Osとも+8価の状態)である四酸化ルテニウム(RuO)あるいは四酸化オスミウム(OsO)が炭素材料と接触し酸素原子を放出する還元反応が起ることによって生成する超微粒子のRuOあるいはOsOが高い分散状態で炭素に担持する反応を利用する。このRuOあるいはOsOを生成する反応とそれらが炭素材料と接触し超微粒子のRuOあるいはOsOが分散して担持する反応の全てが常温・常圧状態で進行し、しかも従来超微粒子の担持処理に頻繁に使われてきたスパッタリング装置などの高価な特殊な装置を用いる必要もない。
以上示した通り、本発明によれば、超微粒子のRuOあるいはOsOを炭素材料に分散担持させることにより、高い電子電導性、電界電子放出特性、電荷充放電特性、触媒機能などの特性が向上する。具体的には、本発明をPEFCのアノード電極触媒材料に適用した場合はCO耐被毒性や発電特性が向上し、一方カソード電極触媒に適用した場合もその酸素還元反応が促進されるために発電特性が向上するなど、PEFCの早期実用化を可能とする。次に、本発明をCNTやグラファイト化処理フラーレンナノウィスカーなどの高い電子電導性の炭素材料に適用した場合は、それら単体に比べ電界電子放出特性が飛躍的に向上し、FEDの早期実現を可能とする。また、活性炭などに本発明を適用した場合は、その電荷充放電特性が向上するためハイパワーなスーパーキャパシタの実現を可能とする。さらに、繊維状の炭素材料の電気抵抗が高い場合でも、本発明によってそれに対し高い電子電導特性を付加することが可能となるため、フレキシブルで任意に配線が可能なナノ配線材料となる。
以上のように、本発明は、現在実用化開発が進められている、固体高分子型燃料電池、電界電子放出型ディスプレイ、スーパーキャパシタ、ナノ配線などのいずれに対してもそれらの開発と実用化を早期に実現する上で有効となるものであり、本発明の社会的意義は大きい。
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
CNTの持つ優れた特性の理由から、近年電界放出型ディスプレイ(FED)の電子エミッタ材料として有望視され、現在実用化開発が進められている。このCNT−FEDの開発は、電子放出開始電界強度が2V/μm以下で、10mA/cm2の電流密度が4V/μm以下の電界強度で実現するという目標のもとに進められている。この目標の達成のために、CNT材料そのものの高度化やFEDパネル基板上での直接成長や基板への塗布法など様々な開発が試みられている。本発明によれば、例えば図1に示すように、RuOあるいはOsOの気体をディスプレイのパネル基板上の炭素材料に吹きつける機能、同様にRuOあるいはOsOを溶解した有機溶媒をディスプレイのパネル基板上の炭素材料に滴下または吹きつける機能を有する電界電子放出型ディスプレイパネル基板処理装置によって、効率的にパネル基板上のCNTに超微粒子のRuOあるいはOsOを直接分散担持処理できる。
上記のRuOのガスを生成させその状態のまま炭素材料へRuOを担持する方法としては、Ru(NOやRuClの水溶液に酸化剤としてCe4+やI7+を添加し、この溶液に窒素ガスなどの不活性ガスをバブリングさせれば、RuOが気化する。このRuOを含むガスを図1に示すように炭素材料へ吹きつければ、その炭素材料に超微粒子のRuOを担持することができる。これらのRuO生成反応ならびに炭素材料へのRuO担持処理は、その全ての工程を常温・常圧で行うことができる。
一方、OsOを生成させ炭素材料へOsOを担持する方法としては、RuOの生成と同様にOsO生成のための原料にOs(NOやOsClを使い、その他の工程や処理条件はRuO担持処理と全く同様に行える。
次に、上記と同様に溶液中でRuOあるいはOsOを生成させ、そのRuOあるいはOsOを一旦有機溶媒に溶媒抽出し、そのRuOあるいはOsOを含む溶液を炭素材料へ吹きつけてRuOあるいはOsOとして担持する。具体的には、RuOあるいはOsOを抽出する有機溶媒としては、それらに対し溶解度が高くかつ無反応性のCOCHなどの有機フッ素系溶媒を利用することができる。このRuOあるいはOsOを含む有機溶媒を図1に示すように炭素材料へ吹きつければ、その炭素材料に超微粒子のRuOあるいはOsOを担持することができる。これらのRuO生成反応ならびに炭素材料へのRuOあるいはOsO担持処理は、その全ての工程を常温・常圧で行うことができる。
次に、固体高分子型燃料電池用の電極触媒材料の場合は、炭素質材料に担持されている触媒元素の比表面積が大きく、しかも高分散されているほど活性が高い。従来のPt/Cに代表される電極触媒は、そのPtの触媒活性が最も高い2〜4nmの粒径に制御するため、高度な製造技術が開発されてきた。これは、Pt−Ru、Pt−Feなどの合金触媒の場合は、さらに高度な技術と特別な装置を必要としてきた。そのため、低コストで高品質な材料を製造することが困難であった。
本発明は、Pt/CやPt/CNTなどの触媒材料にRuOあるいはOsOを作用させることにより、既に担持されているPt粒子の微細化反応とナノサイズ微粒子のRuOあるいはOsOの高分散担持反応が同時に進行し、触媒活性のより高い固体高分子型燃料電池電極触媒材料を得るものである。
より具体的には、Ru溶液あるいはOs溶液に酸化剤を作用させ、気化した分子状のRuOあるいはOsOを不活性なフッ素系溶媒に溶解させ、それらのRuO溶液あるいはOsO溶液を触媒担体に接触させ、その後溶媒を気化させる方法、また、気化した分子状RuOガスあるいはOsOガスを直接触媒担体に吹き付け接触させる方法などにより、触媒担体と分子状のRuOあるいはOsOが速やかに反応し、それぞれRuOあるいはOsOとして触媒担体に安定沈着することでナノサイズRuOあるいはOsOが担持された触媒として得られる。
なお、活性炭等にRuOを担持したスーパーキャパシタ材料の場合も上記と同様の操作方法で行うことにより、その製造が可能である。
次に、本発明の実施例として、超微粒子のRuOあるいはOsOを炭素材料に分散担持処理して超微粒子物質担持型炭素材料を製造する方法の例と、これによって製造された固体高分子型燃料電池電極触媒材料の特性評価の結果、電界電子エミッタ材料の特性評価の結果、キャパシタ特性の評価の結果、さらにナノ配線材料の特性の評価、それぞれについて具体的に説明する。
炭素材料に超微粒子のRuOあるいはOsOを担持する方法として、常温で揮発性のRuOあるいはOsOを気体の状態で炭素材料へ吹きつけて接触させる方法、あるいはRuOあるいはOsOに対して不活性な例えばパーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)などの有機フッ素系溶媒に一定量のRuOあるいはOsOを溶媒抽出法で溶解した溶液に炭素材料を撹拌混合させる方法により、超微粒子のRuOあるいはOsOを炭素材料へ分散して担持できる。これらのRuOあるいはOsOの生成は、例えばRuClやRu(NOなど(オスミウムの場合も同様の塩化物や硝酸塩を使用)の水溶液にCe4+やI7+などの酸化剤を添加し、それらを直接気体として使用する方法、あるいは前記したような有機フッ素系溶媒に抽出して使用する方法のいずれでも可能である。生成したRuOあるいはOsOに炭素材料であるカーボンブラックを接触させると、超微粒子のRuOあるいはOsOが得られるが、それぞれが分散担持した状態の透過型電子顕微鏡観察像を図2(RuOの場合)、図3(OsOの場合)に示す。これらの電子顕微鏡の画像から、カーボンブラックに粒子径1〜3nmサイズの超微粒子のRuOあるいはOsOが分散担持されていることが分かる。
同様に、超微粒子のRuOあるいはOsOを分散担持したカーボンナノチューブをそれぞれ図4、図5に示す。この超微粒子のRuOあるいはOsOが分散担持したカーボンナノチューブは、実施例3(後記)で示すように高い電界電子放出特性を有している。
RuOを担持したカーボンブラックを電極触媒材料とした固体高分子型燃料電池(PEFC)の実験を行った。PEFCの電解質はナフィオン(タイプ117)を用い、燃料としてメタノール及び水素ならびにCOを含む水素を用いた。
まず、従来の電極触媒材料であるPt/C、Pt−Ru(合金)/C、本発明のPt/C触媒にRuOを反応させ超微粒子のRuOを担持したカーボンブラック(Pt−RuO/C触媒)の3種類をそれぞれアノード触媒として用い、カソード触媒にいずれもPt/Cを用いた場合の、メタノールを燃料とした場合のPEFCの発電能力を比較した結果を図6に示す。この結果から、PEFCアノード触媒としては、本発明により調製したPt−RuO/C触媒の場合の発電出力密度は、従来の電極触媒材料であるPt/C、Pt−Ru(合金)/Cに比べ2〜3倍高いことが分かる。この結果から、本発明によるPt−RuO2/C触媒は、CO耐被毒性が高いこと、さらに従来のPt/C、Pt−Ru(合金)/Cに比べPt及びRuOの粒径が微細化され触媒元素の実効表面積が増加したために発電能力が増大していると考えられる。
同様に、一酸化炭素(CO)を100ppm含む水素ガスを燃料として、PEFCアノード触媒にPt−RuO/C触媒を用い、アノード電極におけるPt+Ru担持量を0.1〜1.0mg/cm2に変化させた場合の発電能力を調べた結果を図7に示す。
この結果から、本発明によるPt−RuO/C触媒は、CO耐被毒性が高くしかも電極上のPt+Ru担持量が0.1mg/cm2という低い量でも充分な発電能力があることが分かる。
次に、従来の電極触媒材料であるPt/C、本発明のPt/C触媒にRuOを反応させ超微粒子のRuOを担持したカーボンブラック(Pt−RuO/C触媒)の2種類をそれぞれカソード触媒として用い、アノード触媒にいずれもPt/Cを用いた場合の、水素を燃料とした場合のPEFCの発電能力を比較した結果を図8に示す。
このカソード触媒としての評価結果からも、Pt/C触媒に対しPt−RuO/C触媒の発電能力が高いことが分かる。この理由は、Pt/C触媒にRuOを担持することによって、酸素還元反応が速くそのため過電圧が低い電極状態になったためと考えられる。
以上のPEFCのアノードならびにカソード電極触媒にOsOを担持した場合でも、その特性はRuOとほぼ同様であり、本発明の有効性が確認できている。
本発明によりCNTへRuO担持処理を行って生成する超微粒子RuOが担持したCNTの電界電子放出特性を調べた。
面積1mm2の高配向CNTを用い、RuO2担持処理を行わないCNT単体と、それにRuOを約50mg/g(CNT)になるように担持処理を行ったRuO担持CNTの2種類を準備した。この2種類について、それぞれ電界電子放出率測定用真空装置のサンプルステージにCNTをセットし、サンプルステージ(カソード)とグリッド(アース)及び対向電極(アノード)間に電圧を印加した。CNTとグリッド間の距離を500μmになるように設置し、その際のカソード印加電圧と放出電子量を電流密度に換算した値をプロットした結果が図9である。
この結果から、電子放出開始電圧は、CNT単体の場合は約7V/μmであり、一方RuO担持CNTの場合の電子放出開始電圧は約4V/μmである。さらに、10mA/cmの電流密度が得られる印加電圧は、CNT単体の場合は約10V/μmであり、一方RuO担持CNTの場合は約6V/μmである。以上から、微粒子のRuO2をCNTに担持することによる電界電子放出特性の向上の効果は明らかである。
同様に、RuO担持処理を行わないCNT単体と、それにRuO担持処理を行ったRuO担持CNTの2種類について、それぞれ1本のCNTを用いた場合の電界電子放出特性を調べた。CNT(カソード)と対向電極(アノード)のギャップを1μmになるように電界電子放出率測定用真空装置のサンプルステージにCNTをセットし、カソードとアノード間に電圧を印加した。
その際のカソード印加電圧と電流値をプロットした結果(図10)から、5X10−5Aの電流値が得られる印加電圧値は、CNT単体の場合は約140Vであり、それに対しRuO担持CNTの場合は約80Vと極めて低い電圧で同等の電流が得られる。この結果から、微粒子のRuOをCNTに担持することによる電界電子放出特性の向上の効果は明らかである。
グラファイト化処理を施したフラーレンナノファイバーを図11に示す。このグラファイト化フラーレンナノファイバーは高い電子導電特性を有するため、この材料単体でも電界電子エミッタ材料になるが、本発明によるRuO担持処理を行うと、上記のRuO担持CNTと同じレベルの電界電子放出特性が得られる。
以上から、CNTの電界電子放出特性はRuOの担持によって著しく向上するため、本発明の効果は歴然としている。なお、微粒子OsO担持処理したCNTの電界電子放出特性の評価は行っていないが、図3及び図5に示したようにカーボンブラックあるいはCNTに超微粒子のOsOが担持されること、RuOとOsOはそれらの化学的・物理的特性が非常に類似していることなどから、CNTに微粒子OsOを担持した場合はその電界電子放出特性が相当向上されると期待できる。これらの結果から、RuOあるいはOsO担持CNTを電子エミッタ材料とすることにより、FEDの実用化開発を大いに促進できるのみならず、電子顕微鏡の高分解能化、ハイパワーなプラズマ発生装置やX線発生装置などの実現をもたらす。
本発明により活性炭へRuO担持処理を行って生成する超微粒子RuOが担持した活性炭の電荷充放電特性(キャパシタ特性)を調べた。具体的には、サイクリックボルタンメトリ(CV)により、少量の超微粒子RuO担持活性炭(RuO担持量:32〜50重量%)をCV電極にセットし、0.5M硫酸溶液中でキャパシタンスを測定した。
そのCV測定結果を図12に示す。用いた活性炭単体のキャパシタンスは約90〜100F/gであり、その活性炭に本発明によるRuO担持処理すると280〜370F/gとなった。このキャパシタンスは活性炭のRuO担持量が大きいほど増加した。なお、従来活性炭にRuO担持処理してキャパシタとする方法にゾルゲル法が用いられているが、その場合では180〜220F/g程度であり、しかも活性炭へのゾルゲル法によるRuO担持処理の条件によっては安定したキャパシタンス特性が得られていないのが現状である。一方、本発明によるRuO担持活性炭のキャパシタ特性は高く安定しており、しかも材料作成上のばらつきは見られない。この理由としてはRuOが活性炭に均一に分散担持されていること、さらにそのRuOが超微粒子状態であるためである。
以上から、本発明による活性炭への超微粒子RuO担持処理は、ハイパワーなキャパシタを製造する上でも効果があることが分かる。
次に超微粒子RuOを繊維状炭素材料に担持し、極細の配線(ナノ配線)材料とした例を示す。
フラーレンナノウィスカーやフラーレンナノファイバーは、電子電導性は低くその比抵抗は高いもので105〜1010Ωcmにも達する。このような電子電導性が低い炭素材料の場合でも、それに高い電子電導性を有するRuOあるいはOsOなどの超微粒子を高密度で担持することによって、高い電子電導性を有するようになる。
この例として、比抵抗が約107Ωcmのフラーレンナノウィスカー(図13)に高密度でRuO微粒子を担持したRuO担持フラーレンナノウィスカー(図14)の場合、その比抵抗値は0.1〜1Ωcm程度にまで電子電導性が飛躍的に増加した。この現象は、図13の電子顕微鏡画像がチャージアップしているのに対し、図13よりも高い加速電圧で電子顕微鏡観察を行った図14のRuO担持処理した場合では全くチャージアップせずに良好な電子顕微鏡画像が得られていることからも分かる。
高い電気抵抗を有する材料が上記に示したRuO微粒子担持処理によって分解能の高い電子顕微鏡観察が可能になる点は、RuO微粒子担持処理が高分解の電子顕微鏡観察としての手段にも有効であることも示している。
以上から、RuO微粒子を担持することによって、高い電気抵抗を有している繊維状炭素繊維の場合でもナノ配線材料とすることが可能であり、本発明の効果が分かる。なお、化学的・物理的に同様なOsO担持処理した場合でも、ナノ配線材料ならびに電子顕微鏡の高分解観察が可能となる。
本発明による、電界電子放出型ディスプレイのパネル基板に対して高い電子放出特性を付与するための製造装置の一実施形態を示す概略図である。 本発明による、超微粒子RuOがカーボンブラックに均質に分散担持されたことを示す透過型電子顕微鏡(TEM)により観察された顕微鏡写真である。 本発明による、超微粒子OsOがカーボンブラックに均質に分散担持されたことを示す透過型電子顕微鏡(TEM)により観察された顕微鏡写真である。 左の写真はCNT単体のTEM観察像であり、一方右の写真は本発明による1〜3nmサイズの超微粒子RuOがCNTに分散担持されたことを示すTEM観察像である。 本発明による、超微粒子OsOがCNTに分散担持されたことを示すTEM観察像である 固体高分子型燃料電池(PEFC)の電極触媒材料として、市販のPt/CとPtーRu(合金)/Cならびに本発明により調製したPt−RuO/Cの3種類についてそれぞれをPEFCのアノード電極触媒として、メタノールを燃料とした場合の発電特性の結果である。 COを含む水素を燃料として、PEFCのアノード電極触媒に本発明により調製したPt−RuO/Cを用い、電極上のPt−RuO量を変化させた場合の発電特性の結果である。 PEFCのカソード電極触媒材料に市販のPt/Cと本発明により調製したPt−RuO/Cの2種類を用い、水素を燃料とした場合の発電特性の結果である。 高配向CNT単体と本発明によりそれにRuOを担持したCNTの電圧を印加した時の電界電子放出特性を示す。 1本のCNTを用い、CNT単体と本発明によりRuOを担持したCNTの電圧を印加した時の電界電子放出特性を示す。 グラファイト化処理を施したフラーレンナノウィスカーに本発明によるRuOを担持処理したものの、電子顕微鏡(SEM)により観察された顕微鏡写真である。 本発明によりRuOを担持処理した活性炭のサイクリックボルタンメトリの測定結果である。 チャージアップ現象が見られるフラーレンナノウィスカー単体のSEM観察像である。 本発明によりRuOを担持処理したフラーレンナノウィスカーのSEM観察像で、図13に対しチャージアップ現象が無い図である。

Claims (5)

  1. 活性炭、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラファイトナノファイバー、フラーレン、フラーレンナノウィスカー、フラーレンナノファイバー、グラファイト化処理を施したフラーレンナノウィスカーやフラーレンナノファイバーなどの炭素材料あるいはそれらから構成される炭素複合材料に超微粒子物質を分散状態で担持させることにより、より高い電子電導性、電界電子放出特性、電荷充放電特性、触媒機能のいずれかあるいはその複数の機能が付加されたことを特長とする超微粒子物質分散担持型炭素材料。
  2. 活性炭、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラファイトナノファイバー、フラーレン、フラーレンナノウィスカー、フラーレンナノファイバー、グラファイト化処理を施したフラーレンナノウィスカーやフラーレンナノファイバーなどの炭素材料あるいはそれらから構成される炭素複合材料に超微粒子物質として二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムを分散状態で担持させることにより、より高い電子電導性、電界電子放出特性、電荷充放電特性、触媒機能のいずれかあるいはその複数の機能が付加されたことを特長とする超微粒子物質分散担持型炭素材料。
  3. 請求項1〜2記載の高い電子電導性・電界電子放出特性・電荷充放電特性・触媒機能などを有する超微粒子物質担持型炭素材料を製造する方法として、炭素材料あるいは炭素複合材料に超微粒子二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムを分散担持させるため、四酸化ルテニウムあるいは四酸化オスミウムの常温揮発性を利用し気体の四酸化ルテニウムあるいは四酸化オスミウムを炭素材料に均質に吹きつけることによって超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムが炭素材料に分散担持される特性を利用することを特長とする、超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムが分散担持した炭素材料の製造方法。
  4. 請求項1〜2記載の高い電子電導性・電界電子放出特性・電荷充放電特性・触媒機能などを有する超微粒子物質担持型炭素材料を製造する方法として、炭素材料あるいは炭素複合材料に超微粒子二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムを分散担持させるため、四酸化ルテニウムあるいは四酸化オスミウムが溶解した有機溶媒中に炭素材料を混合し撹拌することによって超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムが炭素材料に分散担持される特性を利用することを特長とする、超微粒子二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムが分散担持した炭素材料の製造方法。
  5. 電界電子放出型ディスプレイのパネル基板に成長あるいは塗布された電子エミッタ材料としてのカーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、フラーレンナノウィスカー、フラーレンナノファイバー、グラファイト化処理を施したフラーレンナノウィスカーやフラーレンナノファイバーなどの繊維状炭素材料の電界電子放出特性を向上させるため、請求項3〜4に示す、四酸化ルテニウムあるいは四酸化オスミウムの気体をディスプレイのパネル基板上の炭素材料に吹きつける方法、あるいは四酸化ルテニウムあるいは四酸化オスミウムを溶解した有機溶媒をディスプレイのパネル基板上の炭素材料に滴下または吹きつける方法によって、パネル基板上の炭素材料に超微粒子の二酸化ルテニウムあるいは二酸化オスミウムを直接分散担持処理するための電界電子放出型ディスプレイパネル基板の処理装置。
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