JP2005137307A - 細胞及び組織の損傷を評価する方法及びその測定装置 - Google Patents

細胞及び組織の損傷を評価する方法及びその測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 培養細胞および組織を培養装置内に静置した状態で、電気抵抗値を測定し、細胞および組織の損傷を評価する方法および電気抵抗値の測定用装置を提供する。
【解決手段】 電極を組織の上面側(上面(apical surface)42とその上部空間22を含む)と基底面側(基底面(basal surface)43、細胞外基質43及び43と41に囲まれた部分、その下部空間23を含む)とに装着されるように設置した培養器で、培養した組織の電気抵抗値を測定する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、細胞及び組織の損傷を、電極を予め設置した培養器で細胞や組織を培養することにより、培養装置内から出すことなく細胞及び組織の電気抵抗値を自動的に測定し、評価する方法及びその測定装置に関する。
生体は、外部環境の変動あるいは刺激によって内部環境が変調を来さないように、また変調を来した場合でも個々の反応を調節することによって、元の状態まで復元する能力を有している。一般に、この働きは生体恒常性(ホメオスタシス;homeostasis)と呼ばれ、この働きによって生命活動は常に正常に維持されている。
生体恒常性は、生体を構成する各臓器や各組織の恒常性の上に成立している。各々の組織もまた、内部環境の調節/変動による影響を最小限に抑えながら、各組織に固有の機能が十分発揮出来るように構築されている。
特に、上皮組織は、外部環境に直接接する組織であり、環境中の異物や汚染物質、あるいは微生物等による侵襲に常に曝されていることから、組織恒常性が一層強く求められる組織でもある。また、血管内皮組織では、感染や炎症等病的な状態においても、体液の浸透性昂進による周辺組織の浮腫をいたずらに増大することなく、組織中の体液量を常に適正に保つことが求められている。この様な組織恒常性は、細胞同士が強く結合し合って、外部環境や体液に対する障壁(バリアー)を形成することによって、初めて可能になる。これ以外にも、細胞−細胞間結合により、周囲の組織と異なる内部環境を形成している組織が、体内には数多くある。この様な組織においても、細胞間結合が脆弱になり密着結合(tight junction)による障壁が破られると、内部環境の維持ひいては組織恒常性が支障をきたす。
細胞は、周囲と隔絶して存在することはできない。生存には栄養塩や他の細胞からの成長因子等を必要とする一方で、生成した老廃物や代謝物を排出する必要があるからである。しかし、個々の細胞が生存し機能するための周囲環境は、個々の臓器や組織あるいは細胞塊毎に異なる。この相反する条件を満たすため、個々の組織や細胞塊毎に障壁を形成し物質の移動を制限する一方で、他方では特定の物質に対する受容体(リセプター)を、障壁を形成する細胞の表面に局所的に発現させて選択的透過性を実行している。そして、両者が相まって、各々の組織にとって恒常性維持に最適な内部環境を形成している。
上皮組織において細胞間に間隙があると、外部環境中の異物等は、選択的透過性による制御を経ることなく、無秩序に侵入するようになる。また、体液中の水分、栄養塩等も無秩序に失われる。内皮組織においても、細胞間に間隙があると体液や血球は無秩序に組織中へと浸透し、浮腫等の病変を生ずる。この様な結果、組織恒常性が失われ生命活動に支障が生じるのを防ぐため、細胞間の間隙を塞ぐ役割を有する細胞−細胞間結合が、“密着結合”である。即ち、組織恒常性が正常に機能しているか否かを推定する上で、密着結合の働き度合いは重要な指標となる。
この外にも、細胞−細胞間結合には、カドヘリン(cadherin)分子を仲立ちとして両細胞を機械的に結合させる“細胞間接着結合(cell adherence junction)”等があり、密着結合に隣接して存在する。密着結合には、細胞間接着結合の様に、細胞−細胞間結合を機械的に強化する働きは無い。むしろ、細胞間接着結合の有無に大きく依存している。他方、細胞間接着結合は、密着結合の様に、低分子の透過に対する障壁の役割は無い。
細胞−細胞間の結合は、細胞が基底面で接着している細胞外基質の種類、及び細胞−基質間結合(cell-matrix junction)に働く基底面局在性分子、インテグリン(integrin)、シンデカン(syndecan)等といった接着分子の種類によって影響を受ける。即ち、I型コラーゲンやフィブロネクチンといった基底膜以外の細胞外基質上では、細胞骨格を形成するアクチン線維は、細胞外基質に結合するためのリセプターに使われ、大部分のインテグリン分子と強固に結び付いて、基底面内側に太い棒状線維(ストレスファイバー;stress fiber)の様に集積する。しかし、本来アクチン線維は生体内では、カドヘリン分子に結合して細胞内側面にベルト状に集積し(アクチンベルト;actin belt)、カドヘリン分子による細胞−細胞間結合を機械的に強化している。しかし、アクチン線維がインテグリンと結びついて基底面側に集積すると、本来集積すべき場所、即ちカドヘリン分子の裏側に形成する筈のアクチンベルト構造は希薄になる。その結果、細胞間結合は機械的に脆弱化し、密着結合もまたその影響を受けて壊れ易く、外部刺激に対して弱い構造になる(図1のA参照)。逆に、上皮細胞や内皮細胞にとって、本来の接着基質である基底膜上では、基底膜構成成分のラミニンに親和性のあるシンデカンがリセプターとして使われ、アクチン線維は僅かしかインテグリン分子と結びつかない。むしろ、本来の結合相手であるカドヘリン分子と結びついてアクチンベルトを形成し、細胞間結合を機械的に強化している。隣接する細胞接着結合が正常に形成される結果、密着結合もまた一層安定化され、外部刺激に対して強い構造になると考えられている(図1のB参照)。
上皮細胞や内皮細胞の上面側と基底面側との間には、電気抵抗が生じる。細胞は、細胞表面に局在するリセプターによる選択的透過性による電気伝導はあるが、本来は脂質二重層の膜で囲まれた電気的不導体である。この為、密着結合に異常や傷害が無ければ、上面側と基底面側間には高い電気抵抗が生ずる。従って、この電気抵抗値をモニターすることにより、密着結合が正常に働いているか、ひいては組織内部環境の恒常性を判定できる。
また、被検物質を上皮組織モデルの培養液に添加し、上皮細胞の上面側と基底面側間の電気抵抗を測定することにより、上皮組織に対する被検物質の安全性や毒性を試験することができる可能性について記載されている(例えば、特許文献1、非特許文献1及び2参照)。
上面側−基底面側間の電気抵抗を測定する機器としては、例えば、ミリセル−ERS抵抗値測定装置(Millipore社製)が市販されている。しかし、従来の測定装置は、測定の目的によっては、必ずしも満足できる装置ではない。
例えば、培養している細胞を、電気抵抗を測定する度毎にCO2インキュベーターから取り出し、クリーンベンチ内に移動する必要がある。即ち、培養細胞はこの移動によって、5%CO2大気環境から約0%CO2に曝されることになり、培地中に溶け込んだCO2は空気中に飛散し、培地のpHは速やかに上昇する。また、培地の温度も37℃から室温に低下し始める。この為、電気抵抗値の正確かつ精密な測定には困難を伴う。更に、この測定操作を頻繁に行うと、培養細胞の細胞傷害の発生及び修復過程にも影響することが考えられる。まして複数の培養細胞についてこの操作を行う際には、各サンプルの測定時刻にずれが生じ、上述の影響の程度が異なって測定される問題点も発生する。
また、従来の方法では電気抵抗値の時間変化を連続的に測定することはできない。細胞傷害がどの様な時間軸で現れるかは、試験物質の特性によって異なる。しかし、室温下、通常の大気環境中に置いたのでは、正常な細胞培養は不可能である。この為、従来は時間間隔を十分に開けた断続的測定しか行うことができなかった。しかし、この問題点を解決するために、培養細胞及び組織の損傷を、通常の培養環境下で、連続して、自動的に測定できる方法及びその測定装置については知られていなかった。
特開2003−169847号公報 Sugahara, K., Cott, G.R., Parsons, P.E., Mason, R.J., Sandhaus, R.A., and Henson, P.M. Epithelial permeability produced by phagocytosing neutrophils in vitro. Am. Rev. Respir. Dis. 133: 875-81 (1986). Cheek, J.M., Kim, K.-J., and Crandall, E.D. NO2 decreases paracellular resistance to ion and solute flow in alveolar epithelial monolayers. Exp. Lung Res. 16: 561-575 (1990)
本発明の課題は、培養細胞及び組織を培養装置内に静置した状態で、電気抵抗値を測定し、細胞及び組織の損傷を評価する方法及び電気抵抗値の測定用装置を提供することにある。
本発明者らは、培養器に電極を設置し、両電極からリード線を延長して電気抵抗を測定する機器データロガー(data logger)に接続し、それをさらにパソコンでプログラム制御する方法を見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、電極が、組織の上面側(上面(apical surface)(図2の符号(以下の説明においても同様)42)とその上部空間(22)を含む)と基底面側(基底面(basal surface)(43)、細胞外基質(43及び43と41に囲まれた部分)、その下部空間(23)を含む)とに装着されるように設置した培養器で、培養した組織の電気抵抗値を測定することを特徴とする組織の損傷を評価する方法(請求項1)や、組織が、細胞層あるいは細胞層と該細胞層の基底面(43)で接着している細胞外基質とを含む培養組織(40)である請求項1記載の評価方法(請求項2)や、培養組織が、人工組織又は人工臓器である請求項2記載の評価方法(請求項3)や、人工組織が、人工表皮組織、人工角膜上皮組織、人工肺胞上皮組織、人工気道上皮組織、人工腎糸球体組織、人工肝実質組織又は人工血管内皮組織である請求項3記載の評価方法(請求項4)や、人工臓器が、人工血管、人工肺、人工肝、人工腎臓、人工皮膚又は人工角膜である請求項3記載の評価方法(請求項5)や、細胞層における細胞が、上皮細胞、内皮細胞又は間充織細胞である請求項2記載の評価方法(請求項6)や、上皮細胞が、表皮細胞、角膜上皮細胞、肺胞上皮細胞、消化器系の粘膜上皮細胞、腎臓子球体上皮細胞又は肝実質細胞である請求項6記載の評価方法(請求項7)や、内皮細胞が、腎臓子球体毛細胞、血管内皮細胞、肺動脈血管内皮細胞、胎盤静脈血管内皮細胞又は大動脈血管内皮細胞である請求項6記載の評価方法(請求項8)や、培養器が、培養皿(ウエル)、シャーレ又はフラスコである請求項1〜8のいずれか記載の評価方法(請求項9)に関する。
また本発明は、電極が、細胞培養して形成される組織の上面側(上面(apical surface)(42)とその上部空間(22)を含む)と基底面側(基底面(basal surface)(43)、細胞外基質(43及び43と41に囲まれた部分)、その下部空間(23)を含む)とに装着されるように設置されていることを特徴とする培養器(請求項10)に関する。
さらに本発明は、培養器に設置した電極、電気抵抗測定器及びプログラム制御装置かなることを特徴とする組織の損傷を測定する装置(請求項11)や、培養器に設置した電極が、細胞培養して形成される組織の上面と底面とに装着されるように設置されている請求項11記載の測定装置(請求項12)や、培養組織の上面に設置されている電極が、培養組織の上面に接触しないように設置されている請求項11又は請求項12記載の測定装置(請求項13)や、培養組織の上面側に設置されている電極から培養組織の上面までの距離が1μm〜20mmである請求項13記載の測定装置(請求項14)や、培養組織の基底面側に設置されている電極が、培養組織の底面(41)には接触しても基底面(43)には接触しないように設置されている請求項11〜14のいずれか記載の測定装置(請求項15)や、培養組織の基底面側に設置されている電極から培養組織の底面までの距離が0〜20mmである請求項15記載の測定装置(請求項16)や、電気抵抗測定器が、電気抵抗値の測定と蓄積の方法をプログラミングでき、必要時には測定値をコンピュータ(PC)や携帯情報端末(PDA)に移せる機能を持つデータロガーである請求項11〜15のいずれか記載の測定装置(請求項17)に関する。
組織培養において、培養組織は、pH、培養中に産生する老廃物あるいは活性酸素による酸化傷害などにより傷害を受ける。また、再生医療の発展に伴い、in vitroで作成した組織の利用が高まっている。特に、上皮組織や内皮組織の再生医療への使用が注目されている。本発明の方法は、これらの組織の製造において、製造管理や品質管理の評価方法として用いられる。また、培養組織を用いた化学物質の毒性試験や、薬理作用試験等にも利用できる。
また、本発明の装置を用いると、多数の試験物質について組織損傷を効率良く評価することができる。
本発明の評価に用いられる組織としては、細胞培養で形成される細胞層あるいは細胞層と該細胞層の基底面で接着している細胞外基質とを含む組織であればどのようなものでもよいが、好ましくは、ヒト等の人工組織又は人工臓器等の培養組織が用いられ、例えば、人工表皮組織、人工角膜上皮組織、人工肺胞上皮組織、人工気道上皮組織、人工腎糸球体組織、人工肝実質組織又は人工血管内皮組織等の人工組織や、人工血管、人工肺、人工肝、人工腎臓、人工皮膚又は人工角膜等の人工臓器を具体的に挙げることができる。特に、近年注目されている再生医療には、上皮組織や内皮組織が好ましく用いられる。
また、細胞培養に用いられる細胞としては、例えば、上皮細胞又は内皮細胞等を挙げることができ、上皮細胞としては、例えば、表皮細胞、角膜上皮細胞、肺胞上皮細胞、消化器系の粘膜上皮細胞、腎臓子球体上皮細胞又は肝実質細胞等を、内皮細胞としては、例えば、腎臓子球体毛細胞、血管内皮細胞、肺動脈血管内皮細胞、胎盤静脈血管内皮細胞又は大動脈血管内皮細胞等をより具体的に例示することができる。これら上皮細胞や内皮細胞は、単独もしくは他細胞と共培養することができ、例えば、間充織細胞は、上皮細胞や内皮細胞と共培養することにより、培養中の上皮組織や内皮組織を一層生体中の組織に近づけることができる。間充織細胞としては、例えば、線維芽細胞、筋細胞、脂肪細胞、グリア細胞、シュワン細胞又は神経細胞(ニューロン)等を具体的に例示することができる。
組織形成に用いられる細胞外基質としては、基底膜の構成成分であるラミニン、IV型コラーゲンやマトリゲル、間充織の構成成分であるI型コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチンやフィブリン等を塗抹した標品、及び線維を形成させたコラーゲンやフィブリン標品等が挙げられる。さらには、上皮細胞や内皮細胞が形成した基底膜構造体を培養基質として利用することもできる(特開2003−169846号公報)。また、生物由来の細胞外基質に代わって、培養基質に親和性のあるポリマーに細胞接着ペプチドを結合させた化合物を用いることもできる。
評価に用いられる細胞層からなる組織としては、培養器に直接、あるいはプラスチック等のシート状の膜に、細胞を播種し、培養したもの等、何れの細胞層からなる組織でもよい。
また、細胞層に細胞外基質を有する組織としては、特に制限されないが、例えば、任意の上皮細胞や内皮細胞等を用いて、基底膜構造体を有する上皮細胞や内皮細胞等を培養して得られる組織(例えば、特開2003−93050号公報、特開2003−93053号公報、特開2003−169846号公報、特開2003−169847号公報参照)、及び、肺胞II型上皮細胞と肺線維芽細胞との共培養組織(Cell Struct. Funct., 22: 603-614, 2002)、該培養系にマトリゲル(Matrigel;Becton Dickinson社の登録商標)(J. Cell Sci., 113: 859-868, 2000)やサイトカイン、TGF−β(Eur. J. Cell. Biol., 78: 867-875, 1999)等を添加し、肺胞上皮細胞直下に基底膜構造体を形成させる方法等で得られる組織、さらには、培養基質に親和性のあるポリマーに細胞接着ペプチドを結合させた化合物を塗布した培養基質に上皮細胞、内皮細胞等を播種して培養し、細胞直下に基底膜成分等の細胞外基質が集積した組織を挙げることができる。
本発明に用いられる培養器としては、培養皿(ウエル)、シャーレ又はフラスコ等が例示されるが、特に培養皿は、多数の組織損傷を効率よく評価するためには、好適に用いられる。
組織損傷の評価は、予め電極を設置した培養器中で、組織の上面側と基底面側とに電極が装着されるように目的とする細胞を培養し、該形成された組織の電気抵抗値を測定することにより行うことができる。また、電気抵抗値の測定は、培養を中断したり、培養条件を変えることなく、培養細胞を培養装置内に静置した状態で、測定目的に応じ、細胞培養中あるいは培養終了後等、また必要により連続的に、適宜行うことができる。
本来、細胞は脂質二重層の膜で囲まれた電気的不導体である。従って、細胞の集団である組織は、その密着結合に異常や傷害がなければ、上面側と基底面側との間に高い電気抵抗が生じる。組織に何らかの損傷が生じると電気抵抗は小さくなる。この電気抵抗値をモニターすることにより、培養組織内部環境の恒常性を判定できる。従って、本発明の評価方法は、例えば、物質の毒性試験、薬物の副作用試験、人工組織の品質管理等、種々の目的に利用可能である。
物質の毒性試験においては、工業生産に伴う廃棄物を、総体として毒性が有るか否かを速やかに判定することができる。培養液中に所定の濃度の廃棄物抽出液を添加し、24時間後の電気抵抗値を測定することによって、許容範囲か否かを判断する。この方法は、法律で決められた特定物質を管理する方法ではないが、廃棄物総体としての安全性が速やかに判断できる点で優れている。
薬物の副作用試験については、薬は本来、決められた範囲内では効能を示すが、それを超えると重篤な副作用を示すことがよくある。副作用を簡便に調べる方法としては、生存率や細胞増殖に対する影響を調べるのが一般的である。しかし、より軽微な影響を調べるには、個々の遺伝子発現や蛋白生合成に着目せざるを得ず、個々の変化が細胞全体に及ぼす影響を正確に把握するのは難しい。薬の標的細胞は、間質系細胞(筋肉組織、骨組織、線維芽細胞、間充織等の細胞)よりは、上皮組織や内皮組織(皮膚、角膜、粘膜組織、呼吸器官、循環器系、消化器官、肝臓、腎臓、膀胱等の細胞)が圧倒的に多い。密着結合は、これらの細胞が正常に働くために必要な構造である。電気抵抗値の低下は、一般的な細胞毒性を調べるには簡便で良い方法である。
これら、物質の毒性試験あるいは薬物の副作用試験等における化学物質の安全性評価において、動物実験をできるだけ少なくしようとする試みがなされている。その実験動物の代替がin vitroでの試験であり、本発明の評価方法は有用となる。
また、人工組織の品質管理においては、構築した人工組織が満たすべき組織としての一般的な品質管理方法となり得る。
本発明の損傷した組織の評価方法においては、培養細胞を培養装置内に静置した状態で、電気抵抗値を測定する必要があるため、本発明の測定装置は、培養器に電極を設置し、両電極からリード線を延長して電気抵抗を測定する機器データロガーに接続し、それをさらにパソコンでプログラム制御する装置からなる。本発明の測定装置の概念図を図2に、また、測定装置の例を図3(参考写真1参照)に示す。
図2において、培養器(20)に設置した電極(10)とは、電極の一方(10A)を培養器の底面に接触し、培養組織の底面(41)に接触しないように設置し、他方(10B)を培養組織の上面に接触しないように設置する。電極の形態は、特に制限はないが、電極(10A)は先端が培養皿の中央近くに位置し平板状の形状のものが、電極(10B)は培養皿の中央に位置し円筒状や先端が円盤状のものが好ましい。また、電気抵抗値を安定して測定し、しかも組織傷害を測定する範囲を局所的から培養挿入皿(21)の底面全体に亘って測定するには、培養組織(40)の底面(41)が培養器の電極(10A)に接触しているか、0〜20mmの距離にあり、培養組織の上面(42)が電極(10B)の先端に接触せず1μm〜20mmの距離であるのが好ましい。この場合、細胞外基質(43及び43と41に囲まれた部分)の厚さは、1μm程度から細胞層の数倍の厚さ程度(1μm〜1mm)である。この細胞外基質の厚さが厚いほど、電極(10A)と組織の底面(41)との距離は0μmに近づくことになり、最終的には、組織の基底面(43)と電極(10A)との距離を、上面側と同様に1μm〜20mm程度にする。
電極としては、白金や金電極の他に、ステンレス等の安価な材料でも用いることができる。電極(10A)は必ずしも培養皿の内側を這わせる必要は無く、底面に穴を開けて設置しても構わない。また、(10A)に繋がるリード線を1本に統合することもできる。
電極(10)は、電気抵抗測定器(30)と接続することにより、培養組織(40)の電気抵抗を測定することができる。
電気抵抗測定器(30)としては、電気抵抗値の測定と蓄積をプログラミングでき、必要時にはコンピュータ(PC)や携帯情報端末(PDA)に移せる機能を持つものであれば、何れの測定器でもいいが、例えば、データロガー(Campbell Scientific Inc. 社製、モデルCR10X)を用いることができる。
電極(10)と電気抵抗測定器(30)とは、通常のリード線で接続すればいいが、複数の培養器あるいは培養皿のように複数の反応曹については、図3のように複数のリード線を束ねコネクターを介してデータロガーと接続するようにすると操作性が向上する。
データロガーは、駆動プログラムをPCにインストールして制御することができるものを用いる。データロガーとPCとは、有線・無線どちらの接続方法でも構わないが、例えばRS232Cケーブルで接続する方法を上げることができる。
本発明の測定装置においては、培養器は、常にCO2インキュベーター等の培養装置内に静置した状態で測定できること、パルス電流を極短時間流す操作を繰り返すことにより、電気抵抗値の秒単位の変化を連続して測定できること、複数の培養器を、同一の条件で測定できること、及びデータロガーの動作をパソコンでプログラム制御することにより、測定値がディスプレイ上に自動的かつリアルタイムで表示されること等の特徴を有する。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
呼吸によって、ガス交換を行う場である肺胞には、空気と共に自然界由来の種々の異物や微生物が侵入する(図4参照)。この様な異物を除去するため、肺胞には肺胞マクロファージ(alveolar macrophage)が存在する。このマクロファージの貪食・殺菌作用の過程で発生する活性酸素(スーパーオキシド; superoxide、 とこれから派生した反応性の高い酸化物)によって、肺胞表面を覆う肺胞上皮細胞は、常に酸化的刺激を受けている。その刺激によって上皮組織の傷害が顕在化しないのは、通常上皮組織が十分な耐性を有しているためである。肺胞上皮細胞が酸化的ストレスに対して自己防衛し、上皮組織としての integrity(高潔性/完全性、しっかりしていること)を保持できなければ、その組織恒常性は崩壊へと向かう。細胞外基質が、上皮組織や内皮組織等の integrity の保持に与える効能を明確にするため、肺胞上皮細胞培養系において活性酸素を人工的に発生させ、細胞外基質に依存して細胞傷害を受ける程度が異なることを、以下の実施例で説明する。細胞傷害の評価は、本発明の測定装置を用い、本発明の評価方法で行った。
(細胞外基質の役割を無視した培養方法)
直径3μmの孔が多数開いているプラスチック膜上に、10%FBS、0.2mMアスコルビン酸-2-リン酸(Asc−P)、0.25ng/mlアンホテリシンB(Am−B)を含むDMEM培地に懸濁した5.0x104個/0.5mlの肺胞上皮細胞を直接播種した。1日後にFBS濃度を1%に変えて更に3日間培養を継続し、肺胞上皮細胞がプラスチック膜上で confluent になったことを確認した。そこで、培養挿入皿内部の培養液(22)にのみ、0.1mMヒポキサンチン(hypoxanthine)及び10-1〜10-6単位/mlのキサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase)を含む培地に交換し、培養挿入皿の外側の培養液(23)は通常の培地交換を行った。2時間毎にヒポキサンチン及びキサンチンオキシダーゼを含む培地に4回交換した。また、一方の培養系では、1mMの青葉アルコールも添加した培地と交換し、青葉アルコールがヒポキサンチン−キサンチンオキシダーゼによって発生した活性酸素による毒性発現にどの様に影響するか検討した。培養6時間及び24時間後の培養細胞の損傷程度を、電気抵抗値として測定した結果を図5に示す。
キサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase)でキサンチン(xanthine)を分解すると、酵素反応によりスーパーオキシドが発生する。肺胞上皮細胞の培養液中に、一定量のキサンチンと種々の濃度のキサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase)を添加すると、酵素量に逆比例して極めて短時間に細胞の許容量を超える高濃度の活性酸素が発生する。その結果、肺胞上皮細胞は傷害を受け、密着結合も影響を受ける。即ち、肺胞上皮組織としての integrity が低下し、上面−基底面間の電気抵抗値(TER;transepithelial electric resistance)は低下する。因みに、この傷害は遅発性で、6時間では最大酵素量で僅かに認めるのみだが、24時間経過するとより低濃度の酵素量、即ちより低濃度の活性酸素濃度でも認められる。
自然界で草木から飛散する揮発性有機化合物の一つに、青葉アルコール(LA:leaf alcohol)が有る。これ自身に顕著な毒性は無い。1mMの青葉アルコールを肺胞上皮細胞の培養系に添加しても、密着結合は影響を受けない。しかし、活性酸素が共存すると、青葉アルコール分子の2重結合に活性酸素が付加・開裂して、より毒性の高いアルデヒド分子が発生する。その結果、より低濃度の酵素量でも、即ちより緩慢に活性酸素が発生された低濃度の状態でも、肺胞上皮細胞は傷害を受け電気抵抗値は低下する。
(細胞外基質の役割を重視した培養方法)
本実施例で下記に示した培養方法では、活性酸素を酵素反応により人工的に発生させるのではなく、より生体の条件に近づけた条件で肺胞上皮細胞を活性酸素で刺激した。即ち、肺胞に侵入する微生物が出す内毒素(エンドトキシン)で肺胞マクロファージを刺激し、活性酸素の一つスーパーオキシドを発生させるようにした。
T2:肺胞上皮細胞単独培養は、実施例1の方法に準じて播種し、1週間培養した。
T2−fib:コラーゲン線維基質(fib)は、0.3mg/mlのI型コラーゲン溶液70μlを多孔性プラスチック膜(直径3μm)上に注ぎ、CO2インキュベーター内で一晩静置してゲル化させた後、クリーンベンチ内で風乾して作製した。使用前にfibをPBS(−)でリンスし、単独培養と同様に肺胞上皮細胞を播種し、1週間培養した。
Fgel:肺線維芽細胞は、10%FBSを添加したDMEMで培養して調製した。次に、線維芽細胞を2.5x105/mlの濃度で1mg/mlのI型コラーゲン中性溶液に懸濁し、140μlを多孔性プラスチック膜に注ぎ、CO2インキュベーター内で1時間静置して、Fgelを作製した。作製後、10%FBS、0.2mM Asc−P、0.25ng/ml Am−Bを添加したDMEM培地で3日間培養した。
T2−Fgel:3日間培養したFgel上に、肺胞上皮細胞を単独培養と同様に播種し、FBS濃度を1%にして1週間培養した。
T2−fib−Fcm:培養皿の底面にFgelを作製し、3日間培養した。次に、多孔性プラスチック膜上に作製したfib上に、単独培養と同様に肺胞上皮細胞を播種し、Fgelと統合して1週間共培養した。
肺胞マクロファージ:ラットから肺胞マクロファージ(AM)を調製した(J. Health Sci., 14: 302-309, 2001)。次に、7.5x105個/mlの細胞を、それぞれの培養系、T2、T2−fib、T2−Fgel、F2−fib−Fcmの肺胞上皮細胞層上に添加して、AM−T2、AM−T2−fib、AM−T2−Fgel、AM−T2−fib−Fcmを作製した。
エンドトキシン及び青葉アルコール:AMの添加後、さらに3日間培養を継続した後、5μg/mlのエンドトキシン(LPS、lipopolysaccharide)を培養皿の内側にのみ添加した。青葉アルコールは、エンドトキシン添加の1日前から、培養挿入皿の内側(22)及び外側(23)の培養液に、1mM添加した。
電気伝導度(TER):エンドトキシン添加後、24時間培養を継続し、電気伝導度を測定した結果を図6(参考写真2参照)に示す。
図中、白(左端)の□:AMを無添加の場合、青(左から2番目)の□:AMを添加した場合、黄色(右から2番目)の□:LAで前処理をしたが、AMは添加しなかった場合、赤(右端)の□:LAで前処理をし、AMを添加した場合を示す。何れの場合も、エンドトキシンは添加した。
AMを添加しない場合は、LA前処理を行っても電気抵抗値は低下しない。AMを添加した場合、AM−T2は、何れも電気抵抗値は低下したが、AM−T2−fibは、LAで前処理した場合のみ、電気抵抗値は低下した。AM−T2−Fgel及びAM−T2−fib−Fcmは、何れの場合も低下しなかった。
肺胞上皮細胞単独(T2)では、基底膜成分の沈着が起こるが、基底膜構造体は形成されない。形態学的にはかすかに密着結合が認められるが、免疫染色によるとアクチンベルトの形成や細胞接着面における密着結合に関わるZO−1分子等の集積も悪かった。この状態で、肺胞マクロファージをエンドトキシンで活性化すると、発生したスーパーオキシドによって、電気抵抗値(TER)は6時間目から低下が認められ、24時間後には著しく低下した。しかし、プラスチック膜からの肺胞上皮細胞の乖離は無かった。
コラーゲン線維上の培養条件下(T2−fib)では、形態学的には密着結合の形成を一応観察することができる(Cell Struct. Funct., 22: 603-614, 2002)。しかし、T2単独の場合よりは改善されているが、アクチン線維やZO−1分子等の細胞接着面への集積は、完全では無かった。その結果、青葉アルコールを添加しない場合には、肺胞マクロファージをエンドトキシンで刺激しても、活性酸素による細胞傷害(電気抵抗の低下)は発生しなかった。しかし、1mM青葉アルコールを添加すると、24時間後には上面−基底面間の電気抵抗値は低下した。しかし、上皮細胞自体は、コラーゲン線維基質(fib)から剥離するような傷害像を示すことは無かった。
培養線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル(Fgel)上に肺胞上皮細胞を播種した培養(T2−Fgel)、又は、コラーゲン線維(fib)上に播種した肺胞上皮細胞を、線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル(Fgel)と2週間共培養(T2−fib−Fcm)すると、肺胞上皮細胞直下には基底膜構造体が形成される(Cell Struct. Funct., 22: 603-614, 2002)。また、アクチン線維や密着結合に関わるZO−1等の分子は、細胞接着面に良く集積した。この様な肺胞上皮組織においては、その後添加した肺胞マクロファージをエンドトキシンで刺激しても、青葉アルコールの有無に拘わらず、活性酸素に対して耐性を示した。
肺胞は、ガス交換を行う組織であり、常に異物の侵襲に曝されている。その異物を除去する役割が肺胞マクロファージであり、肺胞という組織の恒常性を維持する為には必須の存在である(図4参照)。しかし、異物を除去する過程で自分自身が産生した活性酸素及びライソゾーム由来の分解酵素等により、自分自身もまた傷害を受けるリスクが発生する。活性酸素の有する諸刃の刃の効果と影響に対して我々の祖先は、進化の過程で肺胞マクロファージの異物除去を効率良くすることで活性酸素の必要量を軽減し、活性酸素漏出の低減を計った(参考までに:肺胞マクロファージの活性酸素発生能は、その前駆細胞である単球の発生能の約1/10である。また、肺胞マクロファージの貪職能は、単球より高い。)。他方、酸化的刺激に対する肺胞上皮細胞の耐性を向上させたと考えられている。現在では、活性酸素を殺菌作用に用いて効率的に異物除去ができるメリットを享受しなら、自分自身が傷害を受けるリスクを極力低減することに成功している。その結果我々は、自然界の大気の恵みを余すこと無く享受できる。
ここに例示した青葉アルコールは、植物から蒸散する揮発性アルコールの一つであり、大気中にありふれて存在する天然化学物質である。我々にとって、この様な物質を吸入することは自然環境の中では、ごくありふれたことである。しかし、それによって我々や動物の肺胞が傷害を受けることは、通常無い。この観点で、プラスチック膜やコラーゲン線維上で培養した肺胞上皮細胞の活性酸素に対する感受性の結果を検討すると、如何にも不自然で合理性を欠く。他方、基底膜構造体上における肺胞上皮細胞の感受性は充分抑制されており、in vivo の実態とも整合する。肺胞上皮組織を in vitro で構築して種々の試験物質の毒性を検討する場合、細胞直下の細胞外基質の構造、即ち基底膜構造体もまた in vivo と同様に再現されていることが重要であると、本実施例の結果は示唆している。
生体中では、上皮細胞と同様に血管内皮細胞等の直下にも基底膜構造体が存在し、内皮細胞間の結合や血液成分の漏出を制御している。また、傷害を受けた細胞の周囲の細胞が遊走して速やかに傷を修復する際にも、細胞直下の基底膜の状態が影響すると考えられている。従って、本発明の評価方法及び装置は、係る細胞傷害による電気抵抗値の変化を測定するために、有効に用いることができる。
細胞−基質間結合が及ぼす密着結合及び細胞−細胞間への影響を示す図である。Aは、細胞外基質がコラーゲン、フィブロネクチン等基底膜以外の場合を、Bは、細胞外基質が基底膜構造体の場合を示している。 本発明の細胞傷害自動測定装置の概念図を示す図である。 本発明の細胞傷害自動測定装置の一例を示す図である。上段は、全体の外観図を、下段は、電極付きの培養皿を示している。 肺胞の模式図(A)及び肺胞マクロファージの殺菌過程における活性酸素の発生を示す図(B)である。 キサンチン−キサンチンオキシダーゼ酵素反応により、発生させたスーパーオキシドによる肺胞上皮細胞の傷害を示す図である。 肺胞マクロファージを微生物由来のエンドトキシンで刺激し、発生させたスーパーオキシドによる肺胞上皮細胞の傷害を示す図である。
符号の説明
10 電極
20 培養器(培養皿)
21 培養挿入皿
22 培養挿入皿(21)の内側(組織の上面側)の細胞培養液
23 培養挿入皿(21)の外側(組織の基底面側)の細胞培養液
30 電気抵抗測定器
40 培養組織
41 培養組織の底面
42 培養組織の上面
43 細胞外に分泌された細胞外基質の沈着物又は基底膜構造体

Claims (17)

  1. 電極が、組織の上面側(上面(apical surface)(図2の符号(以下の説明においても同様)42)とその上部空間(22)を含む)と基底面側(基底面(basal surface)(43)、細胞外基質(43及び43と41に囲まれた部分)、その下部空間(23)を含む)とに装着されるように設置した培養器で、培養した組織の電気抵抗値を測定することを特徴とする組織の損傷を評価する方法。
  2. 組織が、細胞層あるいは細胞層と該細胞層の基底面(43)で接着している細胞外基質とを含む培養組織(40)である請求項1記載の評価方法。
  3. 培養組織が、人工組織又は人工臓器である請求項2記載の評価方法。
  4. 人工組織が、人工表皮組織、人工角膜上皮組織、人工肺胞上皮組織、人工気道上皮組織、人工腎糸球体組織、人工肝実質組織又は人工血管内皮組織である請求項3記載の評価方法。
  5. 人工臓器が、人工血管、人工肺、人工肝、人工腎臓、人工皮膚又は人工角膜である請求項3記載の評価方法。
  6. 細胞層における細胞が、上皮細胞、内皮細胞又は間充織細胞である請求項2記載の評価方法。
  7. 上皮細胞が、表皮細胞、角膜上皮細胞、肺胞上皮細胞、消化器系の粘膜上皮細胞、腎臓子球体上皮細胞又は肝実質細胞である請求項6記載の評価方法。
  8. 内皮細胞が、腎臓子球体毛細胞、血管内皮細胞、肺動脈血管内皮細胞、胎盤静脈血管内皮細胞又は大動脈血管内皮細胞である請求項6記載の評価方法。
  9. 培養器が、培養皿(ウエル)、シャーレ又はフラスコである請求項1〜8のいずれか記載の評価方法。
  10. 電極が、細胞培養して形成される組織の上面側(上面(apical surface)(42)とその上部空間(22)を含む)と基底面側(基底面(basal surface)(43)、細胞外基質(43及び43と41に囲まれた部分)、その下部空間(23)を含む)とに装着されるように設置されていることを特徴とする培養器。
  11. 培養器に設置した電極、電気抵抗測定器及びプログラム制御装置からなることを特徴とする組織の損傷を測定する装置。
  12. 培養器に設置した電極が、細胞培養して形成される組織の上面と底面とに装着されるように設置されている請求項11記載の測定装置。
  13. 培養組織の上面側に設置されている電極が、培養組織の上面(符号42)に接触しないように設置されている請求項11又は請求項12記載の測定装置。
  14. 培養組織の上面に設置されている電極から培養組織の上面までの距離が1μm〜20mmである請求項13記載の測定装置。
  15. 培養組織の基底面側に設置されている電極が、培養組織の底面(41)には接触しても基底面(43)には接触しないように設置されている請求項11〜14のいずれか記載の測定装置。
  16. 培養組織の基底面側に設置されている電極から培養組織の底面までの距離が0〜20mmである請求項15記載の測定装置。
  17. 電気抵抗測定器が、電気抵抗値の測定と蓄積をプログラミングでき、必要時には測定値をコンピュータ(PC)や携帯型情報端末(PDA)に移せる機能を持つデータロガーである請求項11〜15のいずれか記載の測定装置。
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