JP2005131899A - インクジェット記録体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 基材の種類を大幅に限定することなく、欠陥の無い密着性の高いインク受容層を形成することができるインクジェット記録体の製造方法を提供する。
【解決手段】 基材又は下塗り層を設けた基材に水を主成分とする溶液(a)を均一に塗布し、湿潤状態の内に、水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを形成する電子線硬化性成分を含有する水性塗料(b)を積層塗布し、ついで電子線を照射して該塗工層をハイドロゲル化させたのち乾燥してインク受容層を形成するインクジェット記録体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、欠陥が少なく、かつインク受容層の密着性に優れたインクジェット記録体の製造方法に関する。
現在、コンピューターなどの出力用として、ワイヤードット記録方式、感熱発色記録方式、溶融熱転写記録方式、昇華記録方式、電子写真方式、インクジェット記録方式などの種々の方式が開発されている。この中でもインクジェット記録方式は、記録用シートとして普通紙を使用できること、ランニングコストが安価なこと、ハードウェアがコンパクトで安価なことから、パーソナルユーズに適した記録方式として認知され、近年、プリンターの販売台数を急速に伸ばしてきた。その普及に伴ってハードウエアの改良も進み、フルカラー化や、高速化、高画質化が急速に進展したため、出力用途も単純なモノクロ文字出力から銀塩写真の代替えとなるデジタル画像出力までに拡大しつつあり、必然的に記録体側に要求される品質も厳しくなってきた。中でも、高画質、高光沢、高保存性、速乾性等が要求されるフルカラーの写真印刷向けインクジェット記録体は、その要求品質を満たすために高塗工量化、多層構成化する傾向にある。
現在、市販されているインクジェット記録体の中でも特に優れた性能を有するものとして、高細孔容積の微細顔料を最小量のバインダー樹脂で固めたインク受容層を有する記録体があげられる。このタイプのインク受容層は主成分に高細孔容積の微細顔料を用いることで、高光沢、高印字濃度、高インク吸収量を達成しているが、微細顔料が高細孔容積で細孔径も非常に小さいために、塗工後の乾燥工程で毛管力による受容層のひび割れが生じ易く、インク吸収に十分な塗工量を一回の塗工で得ることが非常に困難である。そこで通常は、低塗工量の塗工を多数回繰り返すことで必要とする塗工量を確保しているが、製造工程が煩雑となるだけでなく、多数回塗工による歩留り低下が生じるため、コストも嵩みがちである。
この状況を打破するため、本発明者らは、乾燥前の塗工層を電子線照射によりハイドロゲル化することで強度を高め、乾燥工程で発生する塗工層のひび割れを抑制したインクジェット記録体を提案した(例えば、特許文献1参照)。この記録体は、ひび割れ易い微細顔料を主成分とするインク受容層を有していながら、一回の塗工でひび割れのない高塗工量の塗膜が得られるため生産性が高い。また、この電子線照射による塗工層のハイドロゲル化は、多層塗工技術との組み合わせで、多層構成のインク受容層の製造にも有益に利用できる。
本発明者らは、電子線照射により塗工層をハイドロゲル化する手法について更に検討を進めた。その結果、基材と塗工層の密着性が不十分であると塗工層に欠陥が発生し、乾燥塗膜の光沢を含む目視外観が劣ったり、塗膜耐水性が下がる傾向がある事が判明した。この現象は、ハイドロゲル化した塗工層が不動化状態にあるため、通常の塗工方法の場合よりも乾燥収縮により塗工層内部に発生する応力を緩和し難いことに起因するものと推定した。このような問題は電子線を照射して塗工層をハイドロゲル化させる工程を含む製法特有の問題であり、ハイドロゲル化により塗料の流動性が悪くなることが影響していると思われる。即ち、基材と塗工層の密着性に少しでも不具合があると、乾燥収縮によりその歪みが増幅されて明白な塗工層欠陥が生じるのであろう。
本発明者らは、この現象を回避する手法を種々検討したところ、塗料に各種添加物を添加したり、塗料粘度の調整でも一定の効果が見られたが、特にハイドロゲル化させる塗工層の基材として、TAPPI T458 cm−94に準じて測定した蒸留水を滴下後60秒後の接触角が80°以下である特定の基材を用いることが効果的であることを見出した(例えば、特願2002−127838号公報:特許文献2参照)。この特定基材を用いることにより塗工層の欠陥をかなり抑制できるようになったが、開発を進めていく中で、さまざまな基材や下塗り層に対応する必要が生じたため更なる欠陥抑制対策が必要となってきた。また、基材の種類や下塗り層状況によっては、得られるインクジェット記録体のインク受容層の密着性が不十分となることがあることも確認された。
インクジェット記録体の支持体とインク受容層の密着性を高めるためには、支持体表面上に親水性バインダーを主成分とした下引き層を設ける手段が一般的である(例えば、特許文献3参照)。しかし、ハイドロゲル化させる塗工層の基材の場合、下引き層の導入だけでは充分な性能を得ることが出来なかった。
特開2002−160439号公報 特開2002−127838号公報 特開2000−351270号公報
これらの状況を鑑み、検討を重ねた結果、本発明者らは、製造現場において安定的にインクジェット記録体としての基本品質を満たす製品を製造するためには、前述の特定基材を使用するだけでなく、別途対策をたてる必要があると判断した。本発明は、特に「基材の種類を大幅に限定することなく、欠陥の無い密着性の高いインク受容層を形成する」ことに重点を置いたインクジェット記録体の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、下記の発明を包含する。
(1)基材もしくは下塗り層を設けた基材に、水を主成分とする溶液(a)を均一に塗布し、湿潤状態の内に、水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを形成する電子線硬化性成分を含有する水性塗料(b)を積層塗布し、ついで電子線を照射して該塗工層をハイドロゲル化させたのち乾燥してインク受容層を形成するインクジェット記録体の製造方法。
(2)水を主成分とする溶液(a)として、水性塗料(b)と混合するとゲル化する性質を有する溶液を使用することを特徴とする(1)項に記載のインジェット記録体の製造方法。
(3)水を主成分とする溶液(a)のpH(a)と、水性塗料(b)のpH(b)の関係が、
[pH(a)−7]×[pH(b)−7]≦0
であることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
(4)水を主成分とする溶液(a)中にホウ素系化合物及びポリエチレンイミンから選ばれる少なくとも1種を含有し、水性塗料(b)にポリビニルアルコール又はその誘導体を含有することを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
(5)水性塗料(b)が平均粒径1μm以下の微細顔料を含み、細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積が0.2〜2.0ml/gの多孔質塗工層を形成することを特徴とする(1)項〜(4)項のいずれかに記載のインクジェット記録体の製造方法。。
(6)微細顔料が、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも一種である(5)項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
(7)電子線硬化性成分が、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、カゼイン、及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性樹脂であることを特徴とする(1)項〜(6)項いずれか1項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
(8)下塗り層を設けた基材が、難吸水性又は非吸水性の基材に親水性樹脂を含有する下塗り層を設けててなることを特徴とする(1)項〜(7)項のいずれか1項に記載のインクジェット記録体の製造方法。。
(9)下塗り層が、平均粒径1μm以下の微細顔料を含有することを特徴とする(1)項〜(8)項のいずれか1項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
(10)基材もしくは下塗り層を設けた基材に、コロナ放電処理又はプラズマ放電処理などの活性エネルギー照射処理が施されていることを特徴とする(1)項〜(9)項のいずれか1項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
本発明者らは、電子線照射によりハイドロゲル化する塗工層の欠陥防止や乾燥塗膜の層間強度を増強する方法に関して種々検討した結果、インクジェット記録体のインク受容層を形成する「水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを形成する電子線硬化性成分を含有する水性塗料(b)」を塗布する前に、基材もしくは下塗り層を設けた基材に水を主成分とする溶液(a)を塗布する方法が有効であることを見出した。塗工層の乾燥時に生じる欠陥は、前述の通り塗工層と基材もしくは基材に設けられた下塗り層との密着性に不具合がある場合に発生すると想定しているが、水を主成分とする溶液(a)を塗布することで両者のなじみが良くなり、密着状態が均一化されて欠陥が生じ難くなるものと推測される。この効果を最大限に発揮するためには、水を主成分とする溶液(a)を過剰にならないよう基材の表面保水量とほぼ同量を均一に塗布することが重要であった。
中でも、水を主成分とする溶液(a)として積層する水性塗料(b)と混合するとゲル化する性質を有する溶液を使用すると、形成されるインク受容層の密着性は大幅に向上した。具体的には、酸・アルカリによる中和反応や、水性塗料(b)の成分として好適に利用されるポリビニルアルコールに対して、ゲル化剤であるホウ素系化合物やポリエチレンイミンを、水を主成分とする溶液(a)に含有させた場合、最も高い効果が得られた。
前述の通り、この手法においては層間の密着性にむらを無くすため、水を主成分とする溶液(a)を均一に塗布することが重要となるが、基材もしくは下塗り層を設けた基材にコロナ放電処理又はプラズマ放電処理が施こすことで、水を主成分とする溶液(a)をより均一に塗布することができることを確認し、本発明に至った。
本発明により、特に基材の種類を限定せずとも、欠陥が少なく層間密着性の高いインク受容層を有する銀塩写真調の光沢を有するインクジェット記録体を提供することができる。
本発明に用いられる基材の支持体としては、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、板紙、合成樹脂ラミネート紙、金属蒸着紙、合成紙(ポリオレフィン系多孔質フィルムを含む)、白色フィルム等、インクジェット記録体の基材として一般的に用いられるシートを利用することが出来るが、これらに限定されるものではない。また、基材にポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の透明性が優れているプラスチックフィルムを用いると、バックプリントやOHPシート等の光透過性記録媒体として利用できるインクジェット記録体を作製することができる。この場合、透明な樹脂成分だけで構成したインク受容層や、粒径が光の波長以下の微細顔料を用いたインク受容層を組み合わせると、記録体全体の透明性が高くなるため、これらの媒体にも好適に利用できる。
前述の通り、本発明の基材は特に種類を限定されないため、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、又はキャストコート紙などの吸水性の高いシートを使用する事もできる。しかし、これらの基材表面に適量の水を主成分とする溶液(a)を塗工した後、更に水系塗料(b)を塗工すると、塗料を吸収して基材が膨らみ変形し易いため、目視外観の良好なインクジェット記録体を得る事はやや難しい。従って、本発明に用いる基材の表面は、難吸水性又は非吸水性であると好適である。
基材の吸水性の目安として、TAPPI T458 cm−94に準じて基材の接触角測定をする方法で滴下した蒸留水の液滴体積量の経時変化量(式2)を用いる。この液滴体積量とは(式1)によって得られる概算値である。基材表面の吸水性が著しく高い場合、液滴は基材に吸収されて測定不能となる場合もある。基材表面が、難吸水性又は非吸水性である目安としては、この経時変化量が5%以下である。
n=π×H×(0.75×B2+H2)/6 (式1)
(Vn:滴下n秒後の液滴体積量、 H:液滴高さ、B:液滴直径)
経時変化(%)=(1−V60/V5)×100 (式2)
基材表面を難吸水性又は非吸水性とする手段としては、紙シートの表面を合成樹脂のラミネート加工により被覆することが効果的である。ラミネート加工は、紙シート自体のインク吸収性を損なうという欠点はあるが、紙のコシを保ちつつ、基材表面の吸水性を下げることで水分吸収によるボコツキを抑制でき、かつ高平滑表面が容易に作製できる。従って、光沢銀塩写真のような目視光沢感を有するインクジェット記録体を作製したい場合は、基材として樹脂ラミネート紙が最も好適に利用できる。
被覆に使用する合成樹脂としては、ラミネート適性を有する樹脂であれば特に限定するものではないが、吸水性の低い樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、他のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂など、又は、それらの混合物を主成分とするものを例示することができる。ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂などが例示できる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル系生分解性樹脂などがある。これら合成樹脂の中でも、特にポリエチレン系樹脂が好適に利用できる。被覆層の厚さは、2〜100μmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは5〜50μmであり、更に好ましくは7〜35μmである。被覆層の厚さが薄すぎると被覆の効果が不足し、また、厚すぎるとラミネート表面の風合いが調整し難くなる。
また、目視外観を更に向上させるためには、被覆用樹脂に白色顔料を混合すると効果的である。使用できる白色顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、合成シリカ、酸化亜鉛、タルク、カオリンなどの顔料が使用できる。あるいはこれらの表面改質品や2種以上の混合物等が挙げられるが、これらに限定するものではない。中でも酸化チタンを用いることがもっとも好ましい。更に、ラミネート加工性を向上させるために、酸化防止剤等の各種添加物を混合してもよい。
本発明のインクジェット記録体は、インク受容層が片面のみであっても、両面であってもよい。同様に樹脂ラミネート処理も片面処理のみであっても、両面処理であってもよい。インク受容層が片面のみの場合、裏面(インク受容層側の反対)のみにラミネート処理を実施すると、写真調の手触り感を付与しボコツキを抑制しつつ、紙の吸収性を維持することが可能である。一方、インク受容層側だけに樹脂ラミネート処理を施した支持体を用いると、得られるインクジェット記録体がインク受容層を内側にカールしやすくなる。そのため、インク受容層側に樹脂ラミネート処理を行なう必要がある場合は、カール制御を目的として、両面ラミネート加工するか、裏面にカール矯正層を設けることが好ましい。裏面ラミネート層やカール矯正層に関しては、記録体のカールを考慮して、処方や厚さを調整する。
基材には下塗り層を設けてもよい。保水性のある下塗り層があると、水を主成分とする溶液(a)の均一塗布が容易になるため、好適である。下塗り層を設ける場合、塗料処方は特に限定されないが、積層する水系塗料(b)との親和性や下塗り層塗工工程の作業性を考慮すると水系塗料が好適である。具体的には、一般的な親水性樹脂であるポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、カゼイン、及びこれらの水溶性誘導体の水溶液や、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカルボン酸などの単独もしくは共重合体の水系エマルジョンが挙げられるが、これに限定されるものではない。塗料中に架橋剤を添加したり、自己架橋型のエマルジョンを用いたりして下塗り層の耐水性を高めると上層の塗工性が向上するため好ましい。
また、下塗り層に顔料を配合しても、顔料同士の結着力で耐水性が高まるため、好適である。その場合、特に顔料として平均粒径1μm以下の微細顔料を用いると、下塗り層の平滑性が高まるため、より好適である。顔料を配合する場合の添加比率は、質量換算で樹脂などの結着成分/顔料成分=90/10〜10/90が望ましい。下塗り層の顔料添加比率が高まると塗工層が多孔質になるが、水を主成分とする溶液(a)の均一塗布に支障が無ければ、問題ないばかりか、下塗り層が上層のインク受容層のインク吸収力を補填することが出来るため、好ましい。
下塗り層の塗工量は0.1〜30g/m2が好ましく、より好ましくは0.6g/m2〜25g/m2である。特に塗工量が多い場合、積層する水系塗料(b)の塗工適性や、得られるインクジェット記録体の塗膜耐水性の観点から、この耐水化が重要となる。また、塗工量が30g/m2を超えると、コストも嵩むため、好ましくない。一方、下塗り層の塗工量が0.1g/m2未満であっても、下塗り層を均一に塗布する事が困難となるために基材の表面状態が不均一になり易いので好ましくない。下塗り層の塗工方法に関しては特に限定するものではないが、通常利用される各種塗工装置、例えばバーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、キャストコーター等を使用できる。
本発明に用いる基材の接触角は特に限定されるものではないが、水を主成分とする溶液(a)を均一に塗布するためには接触角が低い方が好ましい。本発明における接触角とは、TAPPI T458 cm−94に準じて測定した蒸留水を滴下後60秒後の基材の接触角(単位:°)を指す。具体的には100°以下、より好ましくは80°以下が好適であるが、それに限定されるものではない。 また、基材もしくは下塗り層を設けた基材に、コロナ放電処理又はプラズマ放電処理などの活性エネルギー照射処理を施して接触角を低下させる処置も、好適に利用できる。これらの処理条件は充分に最適化する必要があるが、具体的な最適値は、処理手段や出力源、照射環境の温度や湿度などによっても大きく異なるため、一概に規定することはできない。また、これらの処理は前処理として行なってもよいし、処理と塗工を連続的に行なってもよい。
基材の厚さは記録体使用時の状況によって調整するものであるため、特に限定されるものではないが、プリンターの通紙性を考慮すると50〜500μmが好ましい。また、基材の不透明度に関しても特に限定するものではないが、特に銀塩写真調の目視風合いを求める場合は、JIS P 8138に準じて測定した不透明度が85%以上である事が望ましく、更に好ましくは93%以上であるとよい。
基材もしくは下塗り層を設けた基材に塗布する「水を主成分とする溶液(a)」の処方は特に限定されるものではないが、均一に塗布するため、粘度向上、濡れ性向上、消泡、pH調整などを目的として、各種水溶性成分を添加することが出来る。添加剤として利用する界面活性剤としては、一般に市販されている陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性系界面活性剤が挙げられ、支持体の種類や塗料の組成によって最適なものを選択して単独、又は混合して使用できる。中でも、グリコール型、エーテル型、ジオール型などが好適である。
また、得られるインクジェット記録体の性能向上のため、印字耐水化剤やにじみ防止剤として各種カチオン性樹脂や金属塩、耐光性向上剤などを添加することも出来る。
中でも、積層する水性塗料(b)と混合するとゲル化する性質を有する成分を水を主成分とする溶液(a)として使用すると、層間強度が大幅に向上するため好適である。例えば、水を主成分とする溶液(a)のpH(a)と、水性塗料(b)のpH(b)の関係が、
[pH(a)−7]×[pH(b)−7]≦0
であると、酸・アルカリによる中和反応により水性塗料(b)を積層した際、層間がゲル化する。同様に、水性塗料(b)の成分として好適に利用されるポリビニルアルコールを利用する場合、ゲル化剤であるホウ素系化合物やポリエチレンイミンを、水を主成分とする溶液(a)に含有させても、高い効果が得られた。
本発明においては、インク受容層を形成する水系塗料(b)の塗布面を表面保水量とほぼ同量の水を主成分とする溶液(a)で均一に濡らすことが重要となる。過剰量の塗布はインク受容層の密着性に悪影響を及ぼすため逆効果となりかねないため注意を要する。そのため、水を主成分とする溶液(a)の塗工量は、塗布面を形成する基材もしくは下塗り層の保水力によって大きく異なる。具体的には、水溶液の状態で1〜100g/m2が、より好ましくは2〜50g/m2程度が好適である。1g/m2以下であると均一塗布に支障を来たし、100g/m2以上でも均一塗布が難しくなる。
水を主成分とする溶液(a)の塗工方法に関しては特に限定するものではないが、通常利用される各種塗工装置、例えばバーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、キャストコーター等もしくは、スプレーなどの各種噴霧装置を使用できるが、塗布面の均一性が重要であるため、水を主成分とする溶液(a)の塗布後直ちに(塗工面が湿潤状態である内に)水性塗料(b)を積層することが望ましい。
本発明の水性塗料(b)は、溶媒を含んだ状態で電子線を照射される。この塗料中に含まれる溶媒の主成分は水であるが、副成分として各種溶剤を添加することもできる。その場合、比較的沸点が低い、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が好適に用いられるがこれらに限定するものではない。また、これらの溶媒を2種類以上混合して使用してもよい。
本発明の水性塗料(b)に用いられる電子線硬化性成分としては、水性塗料中に溶解もしくは分散した状態で電子線を照射されると、重合反応や架橋反応のように分子量が増加する反応を起こし、塗料をハイドロゲル化する性質を有している物質であれば、特に種類を限定するものではない。一例として、一般的に電子線硬化型樹脂と言われる分子末端或いは側鎖にアクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有するポリマー又はオリゴマーがあり、それらの中にはポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエポキシ系、ポリエーテル系がありいずれも使用できる。また1分子の中に複数のアクリロイル基又はメタクリロイル基を含むモノマーも使用でき、上記の電子線硬化性ポリマー又はオリゴマーと混合して使用してもよい。
その他にも、ラジカル重合性の不飽和結合は有さないが、水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを形成する親水性樹脂も電子線硬化性成分として用いることができる。これらの具体例としては、完全けん化ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、カゼイン及びこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。誘導体には、カチオン変性品、アニオン変性品や、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの官能基を例えばエステル化、エーテル化、アミド化して化学修飾した誘導体、グラフト重合によって他の側鎖を導入した重合体を例示できる。
また、誘導体には前記各樹脂の構成単位を含む共重合体も含まれる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリル酸などを構成するビニルモノマーからなる共重合体、また、これらのモノマーとそれ以外のモノマーを含む共重合体を例示できる。また、これらの樹脂を単独で使用するだけでなく二種類以上混合して用いることもできる。これらの樹脂は汎用の樹脂であるので安価であり、皮膚刺激性も弱く、分子量を選択する事で電子線照射後に得られるゲルの強度も容易に調整できるため、電子線硬化性成分として好適に用いられる。また、水溶性樹脂であることが好ましい。また、前記のアクリロイル基又はメタクリロイル基を含む電子線硬化性ポリマー、オリゴマー、及びモノマーよりも親水性が高い点も好ましい点である。これらの樹脂の中でも、扱いやすく種類も豊富である事からポリビニルアルコールが特に好適に用いられる。
電子線硬化性成分として前記の特定親水性樹脂を用いる場合、その分子量の最適値は樹脂の種類毎に性状が異なるので一概にいえないが、あまり高すぎると塗料の保存性や塗工性に問題を生じるおそれがある。逆に、分子量が低すぎても、電子線照射によって得られるハイドロゲルのゲル強度が不十分となるため乾燥後の塗膜のひび割れが発生し、記録体の外観を妨げるおそれがある。分子量の目安としては1万〜500万程度がよく、より好ましくは、5万〜100万である。
インクジェットプリンターに用いられるインク中の着色成分である染料や顔料はアニオン性基を有するものが多いため、インク受容層にはカチオン性のインク定着剤を添加することが望ましい。そのため本発明の電子線硬化性成分としてカチオン性のものを使用すると、インク定着剤として機能するため好適である。例えばカチオン性ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルピロリドン、カチオン性水溶性ポリビニルアセタール、カチオン性ポリ−N−ビニルアセトアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリロイルモルホリン、カチオン性ポリヒドロキシアルキルアクリレート、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース、カチオン性メチルセルロース、カチオン性ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン性ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン性ゼラチン、カチオン性カゼイン等が挙げられる。インク定着剤は受容層の中でも表層部分に多く添加すると、インクの発色や耐水性により効果的である。従って、本発明を利用して多層構成の受容層を作製する場合、特に前記カチオン性の電子線硬化性成分を含有する層を最表層として設けると好適である。
本発明において、電子線を照射される塗工層に顔料が含まれていると、電子線照射後に得られるハイドロゲルの強度が高くなるため好適である。特に、粒径が小さく、細孔容積が大きい微細顔料を主成分とする塗料を使用して多孔質のインク受容層を作製すると毛細管現象により素早くインクを吸収し緻密な画像を記録する事ができるため、非常に好ましい。塗料に使用する顔料の種類は特に限定するものではないが、市販の顔料、例えばシリカ、アルミノシリケート、ゼオライト、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化錫、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナ、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗工紙の分野で公知の各種顔料が挙げられる。これらの顔料の中でもインク受容層を製造する場合は特に、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナなどの細孔容積が大きく、インク吸収性に優れるものが好適に用いられる。
また、インク受容層を形成する場合は、顔料の平均粒径が1μm以下であると、インク吸収性に優れ、透明性、光沢性にも優れるインク受容層が得られるため、より好ましい。ここで平均粒径とは動的光散乱法によって測定した粒径(キュムラント法で求められる値)である。
特にシリカは細孔容積が大きいためインク受容層として用いるのに最も適している。シリカにはケイ酸アルカリ塩を原料とする湿式法シリカと、四塩化珪素などの揮発性珪素化合物を火炎中で分解する乾式法シリカがあるが、いずれも好ましい。好適なシリカの、細孔径100nm以下の細孔容積は0.4〜2.5ml/gである。また、一般にコロイダルシリカと呼ばれるシリカもあるが、これは、通常、ケイ酸アルカリ塩水溶液をイオン交換樹脂で処理して活性ケイ酸水溶液を製造し、アルカリを添加して活性ケイ酸水溶液を安定化したのち、加熱して微細なシリカが単分散した液(シード液)を作り、ケイ酸水溶液を徐々に添加して該シリカ微粒子を成長させて製造されるものであり、これも本発明に使用することができる。但し、コロイダルシリカは製造方法からわかるように、シリカ粒子は二次粒子を形成していないため細孔径100nm以下の細孔容積は0.2〜0.3ml/gの範囲であり、インク受容層に用いるにはインク吸収量が多少少ない。
高光沢、高透明性のインク受容層を得るためには平均粒径1μm以下の微細顔料を使用するのが好ましいが、中でも、その微細顔料が平均粒径3〜60nmの一次粒子が凝集してなる平均粒径20〜800nmの二次粒子であるとより好適である。特に二次粒子の粒径は、より好ましくは30〜700nm、最も好ましくは40〜500nmである。このような二次粒子は二次粒子内部に空隙があるので細孔容積が大きい。さらに二次粒子間の空隙もインク吸収に利用できるためインク吸収能力が高い。また一次粒子は光の波長に比べて充分小さいので二次粒子を形成していない顔料と比較して光の散乱能力が小さく、インク受容層の透明性が高くなる利点がある。顔料の一次粒子径や二次粒子径が小さすぎるとインク吸収に寄与する空隙を形成し難くなるため、受容層のインク吸収性が劣るおそれがある。逆に、一次粒子径や二次粒子径が大きすぎると記録層の透明性が低下し、高印字濃度を得にくいおそれがある。また、二次粒子径が大きすぎると、受容層の光沢が低下するだけでなく、表面のざらつきや、粉落ちの原因となるおそれがある。なお、本発明でいう顔料の一次粒子径はすべて電子顕微鏡(SEM及びTEM)で観察した粒径(マーチン径)である(「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52参照)。また、二次粒子径は、動的光散乱法によって測定した粒径である。
また、インク吸収能の高いインク受容層を得るためには、使用する微細顔料の細孔容積は高いほうが好ましいが、0.4〜2.5ml/gが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0ml/gであり、更に好ましくは0.6〜1.9ml/g、最も好ましくは0.7〜1.8ml/gである。この細孔容積はガス吸着法による比表面積・細孔分布測定装置を用いて求めた値であり、細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積である。
これらの微細顔料の製造方法は特に限定されないが、その手段の一つとして市販の顔料(数μm〜数十μm)に機械的手段で強い力を与えることにより粉砕、分散して得る方法が挙げられる。つまり、breaking down法(塊状原料を細分化する方法)によって得られるものである。機械的手段としては、超音波ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、ナノマイザー、高速回転ミル、ローラーミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー等の機械的手法が挙げられる。得られる微細顔料はコロイド状であっても、スラリー状であってもよい。その他の好ましい微細顔料の製造方法として、特開平5−32413号公報や特開平7−76161号公報などに開示されている金属アルコキシドの加水分解による方法が挙げられる。
最も好ましい微細顔料は、活性ケイ酸を縮合して製造され、平均二次粒子径が1μm以下で、細孔径100nm以下の細孔容積が0.4〜2.5ml/gの微細シリカである。このような微細シリカとして特開2001−354408号公報において開示されている微細シリカが好ましい。特開2001−354408号公報で開示されている活性ケイ酸の縮合による方法は、機械的手段によらずに直接、上記の粒子径や細孔容積を有する微細シリカを製造でき、かつ粒度分布が狭いのでインク受容層の透明度や光沢が良好なので本発明に好ましく用いることができる。
ここで、活性ケイ酸とは、例えばアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を水素型陽イオン交換樹脂でイオン交換処理して得られるpH4以下のケイ酸水溶液をさす。SiO2濃度として1〜6質量%が好ましく、より好ましくは2〜5質量%でかつpH2〜4である活性ケイ酸水溶液が望ましい。アルカリ金属ケイ酸塩としては、市販工業製品として入手できるものでよく、より好ましくはSiO2/M2O(但し、Mはアルカリ金属原子を表す)モル比として2〜4程度のナトリウム水ガラスを用いるのが好ましい。活性ケイ酸の縮合方法としては、熱水に活性ケイ酸水溶液を滴下するか、活性ケイ酸水溶液を加熱してシード粒子を生成させ、分散液が沈殿を生じる前、若しくはゲル化する前にアルカリを添加してシード粒子を安定化し、次いで該安定状態を保ちながら活性ケイ酸水溶液をシード粒子に含まれるSiO21モルに対してSiO2に換算して0.001〜0.2モル/分の速度で添加してシード粒子を構成する各一次粒子を成長させたものが好ましい。平均二次粒子径は1μm以下であり、好ましくは20nm〜800nm、最も好ましくは30nm〜700nmである。なお、この平均二次粒子径は動的光散乱法を採用した粒度計で測定し、キュムラント法で解析した値である。
一次粒子径については特に限定されないが、好ましくは、直径5nm〜60nmである。ただし、該微細シリカはシリカ一次粒子が化学結合して二次粒子を形成しているため、一次粒子の直径を正確に求めることは困難である。このため、一次粒子の平均粒子径の尺度として窒素吸着法による比表面積を採用すると、好ましい比表面積は50m2/g〜500m2/gである。比表面積がこの範囲よりも小さい場合には、光散乱が強くなり、乾燥塗膜の透明性が低下する。ひいては印字濃度が低下する。一方、比表面積が上記範囲よりも大きい場合には、塗工液がゲル化を起こしやすくなり、作業性を損ねるおそれがある。また、バインダーと混合して乾燥塗膜を作成する場合にひび割れが起こり易くなり、良好な塗膜が得られにくくなるおそれがある。より好ましくは100m2/g〜400m2/g、更に好ましくは150m2/g〜350m2/gである。なお、凝集していない真球状シリカ粒子の場合、一次粒子径(nm)=2720/比表面積(m2/g)の間系が成立するが凝集粒子の場合でも近似的にはこの関係が成立する。
微細顔料と電子線硬化性成分の配合比は、微細顔料100質量部に対して、電子線硬化性成分を1〜100質量部混合することが好適である。前述したように電子線硬化性成分としてはラジカル重合性の不飽和結合は有さないが、水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを形成する親水性樹脂が好ましい。インク吸収の観点から前記電子線硬化性成分は最小量に抑えることが望ましい。また、電子線硬化性成分は受容層中の微細顔料の周囲に付着して見かけ粒径を増大させる可能性もあるため、受容層の透明性の観点からも電子線硬化性成分はひび割れが発生しない範囲内で少ないほうがよい。以上の理由から、顔料と電子線硬化性成分の配合比は、さらに好ましくは微細顔料100質量部に対して前記電子線硬化性成分を3〜30質量部、最も好ましくは5〜25質量部である。
インク受容層は細孔容積が0.2〜2.0ml/gの範囲になるよう調節することが好ましい。この値は、前述したような適当な細孔容積を有する微細顔料の選択や、電子線硬化性成分の添加量により調節されるものである。インク受容層の細孔容積が0.2ml/g未満の場合、塗工量を多くしないとインクを吸収できないのでインクジェット記録体が嵩高くなり、製造コストも高くなる。また、2.0ml/gを越える細孔容積ではインク受容層の機械的強度が低下し、受容層に傷がついたり、剥がれたり、割れたりしやすくなり好ましくない。なお、この細孔容積はガス吸着法による比表面積・細孔分布測定装置を用いて求めた値であり、細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積である。
本発明に用いる水系塗料(b)の好適な固形分濃度は、塗料の組成によって大きく異なるが、塗料が安定かつ塗工可能な範囲内で、より高濃度であることが好ましい。それは、塗料が高濃度である程、電子線照射によって進行する架橋反応の効率が高まるので、ゲル化後の塗工層の強度が上がり、基材との密着安定性が向上するためである。また、塗工層が顔料を含む場合は、ひび割れ防止効果も高まるため好適である。更に言うまでもなく、乾燥負荷が軽くなる利点もある。しかし、実際には塗料の粘度及び安定性の面で濃度の上限が決まる場合が多い。以上の点を考慮すると、塗料の固形分濃度は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜25質量%である。
主成分以外にも、インクジェット印字品質の向上を目的として、インク受容層となる水性塗料(b)に他の成分を添加することもできる。これらの添加物自体は、電子線硬化性成分でなくてもよい。その一例としては、カチオン性樹脂が挙げられる。カチオン性樹脂の種類も特に限定されるものではないが、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド四級化物、ビニルイミダゾリウムメトクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、メチルジアリルアミン塩、モノアリルアミン塩、ジアリルアミン塩等のカチオン性を有する構造単位を含む樹脂が挙げられる。その他、ジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、2級アミン・エピクロロヒドリン付加重合物、ポリエポキシアミン等を含むカチオン性樹脂も利用可能である。また、カチオン性物質として、無機塩、有機塩、アルミナゾルなどを配合することも可能である。カチオン性物質の添加により印字の耐水保存性が向上する。
その他にも、水系塗料(b)に消泡剤を添加して塗工時の作業性を向上したり、基材との密着性を高めるために界面活性剤を添加することもできるし、得られる記録体の貼りつき防止や通紙性向上のため、デンプンや合成樹脂粒子を混合してもよい。また、透明性や表面光沢の調整に、主成分以外の各種顔料を添加することもできるし、例えば印字画像の保存性向上のため、紫外線吸収剤や光安定化剤などの耐光性向上剤を添加することもできる。
これら添加物の添加方法としては、予め水系塗料(b)に混合しておいてもよいし、まず塗工層を形成してから添加物を含む溶液を上塗り、噴霧、含浸するなどの方法で、後から添加してもよい。添加物を水系塗料(b)に予め添加する場合、添加のショックで塗料がゲル化してしまった時には、機械的手段を用いて再分散させることも有効な手段である。例えば、シリカなどのアニオン性顔料の分散液にカチオン性樹脂を添加すると、両者の静電特性のため塗料は一時的にゲル化するが機械的手段を用いて再分散させれば塗工は可能であり、乾燥後の塗膜中では両者が静電気的に強固に結着しているため、水溶性のカチオン性樹脂が特に架橋されていなくても塗膜の耐水性は充分に保たれる。また、これらの成分を、水を主成分とする溶液(a)に添加してもよい。
本発明のインクジェット記録体は、水性塗料(b)からなる「主としてインクを吸収する塗工層(インク受容層)」が水を主成分とする溶液(a)の上に積層され、電子線硬化性成分及び溶媒を含んだ状態で電子線を照射された後、乾燥されて製造される。即ち、前述の下塗り層や最表層を通常の塗工方式(即ち塗工後に直ちに乾燥する方式)で設けてもよいし、塗工工程と電子線照射工程を数回繰り返して、インク受容層を多層化してもよい。また、電子線照射工程の前に、塗工層中に含まれる溶媒の一部を蒸発させるために予備乾燥を行ってもよい。しかし、生産性を最大限に高くしたい場合には、基材もしくは下塗り層を設けた基材上に、直にインク受容層を単層もしくは同時多層塗工で形成し、電子線照射を行なった後、塗工層を一括して乾燥する方法がコストや各層の密着性の観点から最も好ましい。また、必要に応じて、塗工層の表面に光沢発現液を塗布したり、金属光沢ロールを使用して塗工層表面の平滑化処理を実施することも可能である。
水系塗料(b)の塗工には公知の塗布装置、例えばバーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、キャストコーターなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、インク受容層を高機能化等の目的で多層化した場合、単層塗工を繰り返し行なってもよいが、専用の多層式スロットダイコーター、多層式スライドダイコーター、多層式カーテンコーター等の同時多層塗工装置を使用して同時多層塗工を行なってもよい。
水系塗料(b)の塗工量は記録体の用途によっても大きく異なるが、塗料状態で質量として10〜500g/m2程度が好ましく、さらに好ましくは20〜400g/m2、最も好ましくは50〜300g/m2程度である。塗工量が大きすぎると、カールが発生しやすくなるし、コストもかさむので好ましくない。また層全体を十分にゲル化させることができないおそれがある。塗工量が10g/m2より少ないとインクの吸収が不十分となるおそれがある。また、インク受容層は、前述の通り基材の片面だけでも両面であっても良く、両面の場合はその層構成が異なっていてもよい。多層塗工の場合の各層塗工量も特に限定はしないが、あまり少ないと塗工量を制御するのが難しくなる。
本発明における電子線の照射方式としては、例えば、スキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが採用され、電子線を照射する際の加速電圧は50〜300kV程度が適当である。電子線の照射量は1〜200kGy程度の範囲で調節するのが好ましい。1kGy未満では塗工層をゲル化させるのに不十分であるおそれがあり、200kGyを越えるような照射は基材や塗工層の劣化や変色をもたらすおそれがある。
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、本実施例で表示する%、部は質量パーセント、質量部を意味する。
<基材の製造方法>
(シートA)
CSF(JIS P−8121)が250mlまで叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、CSFが280mlまで叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とを、質量比2:8の割合で混合し、濃度0.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリー中にパルプ絶乾質量に対しカチオン化澱粉2.0%、アルキルケテンダイマー0.4%、アニオン化ポリアクリルアミド樹脂0.1%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.7%を添加し、十分に撹拌して分散させた。上記組成のパルプスラリーを長網マシンで抄紙し、ドライヤー、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量101g/m2 、緊度1.0g/cm3 の原紙を製造した。上記サイズプレス工程に用いたサイズプレス液は、カルボキシル変性ポリビニルアルコールと塩化ナトリウムとを2:1の質量比で混合し、これを水に加えて加熱溶解し、濃度5%に調製したもので、このサイズプレス液を紙の両面にトータルして25ml/m2塗布してシートAを得た。シートAは接触角107°、平滑度380秒であった。
(シートB)
シートAの両面にコロナ放電処理を施した後、バンバリーミキサーで混合分散した下記のポリオレフィン樹脂組成物1を原紙のフェルト面側に塗工量が15g/m2 になるようにして、またポリオレフィン樹脂組成物2(裏面用樹脂組成物)をワイヤー面側に塗工量が25g/m2 になるようにして、T型ダイを有する溶融押し出し機(溶融温度320℃)で塗布し、フェルト側を鏡面、ワイヤー側を粗面のクーリングロールで冷却固化して、不透明度(JIS P8138)が93%の鏡面ラミネート紙であるシートBを製造した。シートBは接触角102°、平滑度26000秒であった。
(ポリオレフィン樹脂組成物1)
長鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm3 、メルトインデックス20g/10分)35部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)50部、アナターゼ型二酸化チタン(A−220;石原産業製)15部、ステアリン酸亜鉛0.1部、酸化防止剤(Irganox1010;チバガイギー製)0.03部、群青(青口群青No. 2000;第一化成製)0.09部、蛍光増白剤(UVITEX OB;チバガイギー製)0.3部
(ポリオレフィン樹脂組成物2)
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/cm3 、メルトインデックス20g/10分)65部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3 、メルトインデックス4g/10分)35部
(シートC)
シートBのポリオレフィン樹脂組成物1をラミネートした側(シートAのフェルト面側)にコロナ放電処理をした後、市販の写真用ゼラチン(宮城化学工業株式会社製、品名:P−487)の1%熱水溶液を乾燥質量で0.3g/m2になるように塗工し、80℃で熱風乾燥してシートCを製造した。シートCの接触角は52°、平滑度は27000秒であった。
(シートD)
シートCのゼラチンを下引き塗布した側(原紙のフェルト面側)に、下記の方法で作成した下塗り層塗料を乾燥質量で20g/m2になるように塗工し、105℃で熱風乾燥してシートDを製造した。
(下塗り層塗料)
平均粒径3μmの合成無定型シリカ(日本シリカ工業(株)製、商品名:Nipsil HD−2、一次粒径=11nm)を水に分散し、サンドグラインダーにより粉砕分散した後、油圧式超高圧ホモジナイザー(みづほ工業(株)製、マイクロフルイダイザーM110−E/H)で、下記の方法で測定した平均粒径(平均二次粒径)が168nmになるまで繰り返し粉砕分散し、20%のシリカゾル水分散液bとした。この水分散液bに下記に示す固形分比率で完全けん化ポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:PVA―140H、重合度=4000、けん化度=99%以上〕の6%水溶液を混合し、固形分濃度15%の下塗り層用塗料を調製した。
(下塗り層塗料の処方)
シリカの水分散液b:100部
完全けん化ポリビニルアルコール:15部
(微細顔料の平均二次粒径測定方法)
微細顔料の水分散液100mlを500ml容のステンレス製カップに入れ、特殊機化工業(株)製T.K.ホモディスパーを用いて分散処理(3000rpm、5分間)し、水分散液中の3次粒子を粉砕分散した。処理後の分散液を充分に蒸留水で希釈して試料液とし、動的光散乱法によるレーザー粒度計〔大塚電子(株)製、LPA3000/3100〕を用いて、平均粒径を測定した。平均粒径はキュムラント法を用いた解析から算出される値を用いた。
(インク受容層用水系塗料の製造方法)
(インク受容層用水系塗料1)
(活性ケイ酸水溶液の調製)
SiO2濃度30%、SiO2/Na2Oモル比3.1のケイ酸ソーダ溶液〔(株)トクヤマ製、三号珪酸ソーダ〕に蒸留水を混合し、SiO2濃度4.0%の希ケイ酸ソーダ水溶液を調製した。この水溶液を、水素型陽イオン交換樹脂〔三菱化学(株)製、ダイヤイオンSK−1BH〕が充填されたカラムに通じて活性ケイ酸水溶液を調製した。得られた活性ケイ酸水溶液中のSiO2濃度は4.0%、pHは2.9であった。
(シード液の調製)
還流器、攪拌機、温度計を備えた5リットルのガラス製反応容器中で、500gの蒸留水を100℃に加温した。この熱水を100℃に保ちながら、上記の活性ケイ酸水溶液を1.5g/分の速度で合計450g添加し、シード液を調製した。このシード液中のシード粒子の物性は、平均二次粒子径184nm、比表面積832m2/g、細孔容積0.60ml/g、細孔径4nmであった。
(微細シリカ分散液の調製)
上記のガラス製反応容器中で、950gの上記シード液に対しアンモニアを0.015モル添加し安定化させ、100℃に加温した。このシード液に対して、上記の活性ケイ酸水溶液を1.5g/分の速度で合計550g添加した。活性ケイ酸の添加終了後、そのまま溶液を100℃に保って9時間加熱還流を行い、微細シリカ分散液を得た。分散液は青みを帯びた透明溶液であり、pHは7.2であった。この微細シリカ分散液の性状は、平均二次粒子径130nm、比表面積257m2/g、細孔容積1.0ml/g、細孔径16nmであった。この分散液をエバポレーターでシリカ濃度11%に濃縮した。
この分散液100部にジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体〔日東紡績(株)製、商品名:PAS−J−81〕の11%水溶液10部を添加し、前記の油圧式超高圧ホモジナイザーにて分散し、平均粒径376nmのカチオン性シリカの水分散液Aを製造した。この分散液は固形分濃度が11%であり、シリカ濃度は10%、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体濃度は1%であった。この水分散液Aを乾燥して得られる、該共重合体を含んだ状態のゲルについて細孔容積を測定したところ0.9ml/gであった。この水分散液Aに、下記に示す固形分比率で前述の完全けん化ポリビニルアルコールの6%水溶液を混合し、固形分濃度10%、25℃で測定したpHが3.5のインク受容層用水系塗料1を調製した。
(インク受容層用水系塗料1の処方)
カチオン化シリカA:100部
完全けん化ポリビニルアルコール:15部
(インク受容層用水系塗料2)
気相法にて製造された平均一次粒径9nmのシリカ〔日本アエロジル(株)製、商品名:AEROSIL 300〕の11%水分散液を、前記の油圧式超高圧ホモジナイザーにて3回分散した。この水分散液中のシリカの細孔容量を上記の測定方法で測定したところ、1.6ml/gであった。また平均粒径(平均二次粒径)は228nmであった。該分散液100部に前記のジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体の11%水溶液10部を添加し、ゲル化した混合物を同ホモジナイザーにて更に分散を繰り返し、平均二次粒径376nmのカチオン化シリカの水分散液Bを製造した。この分散液は固形分濃度11%であり、シリカ濃度は10%、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体濃度は1%であった。また、該共重合体を含んだ状態で細孔容量を測定したところ1.4ml/gであった。この水分散液Bに、下記に示す固形分比率で前述の完全けん化ポリビニルアルコールの6%水溶液を混合し、固形分濃度10%、25℃で測定したpHが3.3のインク受容層用水系塗料2を調製した。
(インク受容層用水系塗料2の処方)
カチオン化シリカB:100部
完全けん化ポリビニルアルコール:15部
実施例1
シートCのポリオレフィン樹脂組成物1をラミネートした側(原紙のフェルト面側)に下記条件下でコロナ放電処理を行なった。
(コロナ処理条件)
高周波電源:春日電気株式会社製、AGI−021(出力電力量=1kW)
コロナ電極:春日電気株式会社製、アルミ5型6山(電極長500mm)
処理速度15m/分
この処理面に、水を3g/m2均一に塗工した後、続けてインク受容層用水系塗料1を乾燥質量で塗工量が25g/m2となるように塗工した。これに直ちに窒素ガス環境下で電子線照射装置(ESI社製エレクトロカーテン)により加速電圧175kV、照射線量30kGyの電子線を照射した。照射後の塗工面に触ったところ塗料はゼリー状の固体となっており、ハイドロゲルとなったことがわかった。これを110℃で熱風乾燥して、インクジェット記録体を製造した。
実施例2
シートDの下塗り層を形成した面に水30g/m2を均一に塗工した後、続けてインク受容層用水系塗料1を乾燥質量で塗工量が10g/m2となるように塗工した。これに実施例1と同様の方法で電子線照射及び乾燥を行なってインクジェット記録体を製造した。
実施例3
シートAのフェルト面側に水10g/m2を均一に塗工した後、続けてインク受容層用水系塗料1を乾燥質量で塗工量が20g/m2となるように塗工した。これに実施例1と同様の方法で電子線照射及び乾燥を行なってインクジェット記録体を製造した。
実施例4
インク受容層用水系塗料1の代わりにインク受容層用水系塗料2を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
実施例5
インク受容層用水系塗料1の代わりにインク受容層用水系塗料2を使用したこと以外は、実施例2と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
実施例6
インク受容層用水系塗料1の代わりにインク受容層用水系塗料2を使用したこと以外は、実施例3と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
実施例7
水の代わりに0.3%ホウ砂水溶液3g/m2を均一に塗工したこと以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。0.3%ホウ砂水溶液とインク受容層用水系塗料1は混合するとゲル化した。
実施例8
水の代わりに0.3%水酸化ナトリウム水溶液(25℃でのpHが12.0)3g/m2を均一に塗工したこと以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。0.3%水酸化ナトリウム水溶液とインク受容層用水系塗料1は混合するとゲル化した。
実施例9
水の代わりに3%完全けん化ポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:PVA―140H、重合度=4000、けん化度=99%以上〕水溶液3g/m2を均一に塗工したこと以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
実施例10
水の代わりに3%に希釈したアルキルアミンエピクロルヒドリン重縮合物(「ジェットフィックス30」里田化工株式会社製)の水溶液3g/m2を均一に塗工したこと以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
ジェットフィックス30の3%水溶液とインク受容層用水系塗料1は混合するとゲル化した。
実施例11
シートCにコロナ処理を行なわずに使用したこと以外は、実施例10と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
実施例12
シートCの代わりにシートBを使用したこと以外は、実施例10と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
実施例13
シートAのフェルト面側に「ジェットフィックス30」の3%水溶液10g/m2を均一に塗工した後、続けてインク受容層用水系塗料1を乾燥質量で塗工量が20g/m2となるように塗工した。これに実施例1と同様の方法で電子線照射及び乾燥を行なってインクジェット記録体を製造した。
実施例14
シートDの下塗り層を形成した面に「ジェットフィックス30」の3%水溶液30g/m2を均一に塗工した後、続けてインク受容層用水系塗料1を乾燥質量で塗工量が10g/m2となるように塗工した。これに実施例1と同様の方法で電子線照射及び乾燥を行なってインクジェット記録体を製造した。
比較例1
水の塗工量を3g/m2から20g/m2に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を製造しようと試みたが、均一な塗布面が得られなかったため、インク受容層用水系塗料1の塗工面が乱れてしまった。
比較例2
0.3%ホウ砂水溶液の塗工量を3g/m2から20g/m2に変更したこと以外は、実施例7と同様の方法でインクジェット記録体を製造しようと試みたが、均一な塗布面が得られなかったため、インク受容層用水系塗料1の塗工面が乱れてしまった。
比較例3
0.3%水酸化ナトリウム水溶液の塗工量を3g/m2から20g/m2に変更したこと以外は、実施例8と同様の方法でインクジェット記録体を製造しようと試みたが、均一な塗布面が得られなかったため、インク受容層用水系塗料1の塗工面が乱れてしまった。
比較例4
3%ポリビニルアルコール水溶液の塗工量を3g/m2から20g/m2に変更したこと以外は、実施例10と同様の方法でインクジェット記録体を製造しようと試みたが、均一な塗布面が得られなかったため、インク受容層用水系塗料1の塗工面が乱れてしまった。
比較例5
3%のジェットフィックス30水溶液の塗工量を3g/m2から20g/m2に変更したこと以外は、実施例10と同様の方法でインクジェット記録体を製造しようと試みたが、均一な塗布面が得られなかったため、インク受容層用水系塗料1の塗工面が乱れてしまった。
比較例6
水の塗工量を30g/m2から120g/m2に変更したこと以外は、実施例2と同様の方法でインクジェット記録体を製造しようと試みたが、均一な塗布面が得られなかったため、インク受容層用水系塗料1の塗工面が乱れてしまった。
比較例7
水の塗工量を3g/m2から0.5g/m2に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
比較例8
水の塗工量を30g/m2から3g/m2に変更したこと以外は、実施例2と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
比較例9
水3g/m2を塗布しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
比較例10
水30g/m2を塗布しなかったこと以外は、実施例2と同様の方法でインクジェット記録体を製造した。
比較例11
電子線を照射しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を製造しようと試みたが、塗工層がひび割れて、一部が剥離してしまった。
比較例12
電子線を照射しなかったこと以外は、実施例2と同様の方法でインクジェット記録体を製造しようと試みたが、塗工層がひび割れて、一部が剥離してしまった。
実施例及び比較例で作成したサンプルのインク受容層の細孔容積、層間強度、塗工面の品質を以下に示す方法で評価し、各記録体の作製条件を表1に、評価結果を表2に示した。但し、均一な塗工層が得られなかった場合は、正確な判定が困難であったため、インク受容層の細孔容積の測定は行なわなかった。
(サンプルの評価方法)
(インク受容層の細孔容積)
塗工シートの塗工層をカッターナイフで削りとって試料とした。下塗り層がある場合は、特に下塗り層がインク受容層に混合しないように注意して採取した。この試料をガス吸着法比表面積・細孔分布測定装置(Coulter社製、SA3100Plus型)を用い、前処理として150℃で2時間真空脱気した後、測定した。細孔容積は細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積(Total Pore Volume)を吸着等温線から求めた値を使用した。但し、乾燥中に塗工層が極端にひび割れたり剥離していた場合は、標準的な試料を得ることが不可能であったため測定できなかった。
(層間強度測定)
A4サイズに切り取った試料を23℃50%RH環境下で24時間調湿した後、インクジェットプリンター(EPSON製、PM−980C)の写真用紙推奨設定印刷モードで10cm角の100%ブラックベタを印字し、同環境下で24時間乾燥させた。20cm長に切り取ったニチバン株式会社製セロハンテープ(CT18)の粘着部5cm分を、印字部に貼り付け120°剥離を行なった。評価箇所を変えて、同試験を5回実施し、塗工層の剥離状況を目視にて次の5段階に評価した。
5点:塗工層は全く剥離しておらず、テープの粘着剤が塗工層に転写して、テープ基材のみが剥離した
4点:塗工層の表層の一部がテープ側に転写されたが、塗工層の大半は試料側に残った
3点:塗工層が部分的に全剥離することもあったが、試料側に残った部分の方が多かった
2点:試料側に残った塗工層もあったが、全剥離した部分の方が多かった
1点:塗工層の大半がテープといっしょに全剥離した
(塗工面の品質評価)
A4サイズに切り取った試料にインクジェットプリンター(EPSON製、PM−980C)の写真用紙推奨設定印刷モードで、ISO−400の画像(「高精細カラーディジタル標準画像データISO/JIS−SCID」、p13、画像名称:果物かご)を印字した上で、目視外観を次の5段階に評価した。
5点:塗工層に欠陥は無く、光沢感共に優れており、光沢銀塩写真調の外観である。
4点:塗工層に欠陥はほとんどないが、光沢感が光沢銀塩写真調に若干劣る。
3点:塗工層に数個の欠陥があるが、その部分を除けば光沢銀塩写真調の光沢感がある。
2点:塗工層に欠陥があり、光沢にも斑がある。
1点:塗工層に欠陥があり、厚み斑や、剥離している部分もある。
Figure 2005131899
Figure 2005131899
上記表1において、0.3%NaOHは0.3%水酸化ナトリウム水溶液を、3%PVAは3%完全けん化ポリビニルアルコール水溶液を、3%ポリマーは3%ジェットフィックス30水溶液を示す。
表1及び表2の実施例1〜14から明らかなように、本発明により基材や水を主成分とする溶液(a)を選ばずとも、溶液(a)を均一に適量塗工することで、欠陥がなくかつ層間密着性の高いインク受容層を有するインクジェット記録体が得られた。また、基材に多孔質の下塗り層を形成する場合は、層間強度が部分的に若干劣ることもあったが、水を主成分とする溶液(a)に積層する水系塗料(b)と混合するとゲル化する性質のある溶液を用いることで、更に良好な層間強度が達成できた(実施例2と13参照)。
一方、比較例1〜5のように水を主成分とする溶液(a)を、基材の保水量を越えた塗工量で塗布すると、均一塗布が不可能となるだけでなく、積層するインク受容層が乾燥収縮により剥離したり(比較例1)、水を主成分とする溶液(a)に水系塗料(b)と混合するとゲル化する溶液を使用した場合は、界面が乱れて塗工層の欠陥を生じるため、却って逆効果となった(比較例2〜6)。逆に、水を主成分とする溶液(a)の塗工量が少なすぎても、インク受容層の均一性が損なわれるため塗工層の欠陥を招いてしまった(比較例7,8)。一方、水を主成分とする溶液(a)を塗布しない場合は一定品質の塗工面が得られたが、適量塗布した塗工面と比較すると塗工面の品質、層間強度の点で若干劣っていた(比較例9,10)。また、電子線を照射してインク受容層となる水系塗料(b)をハイドロゲル化させなかった場合は、乾燥時に塗工層がひび割れて大部分が剥がれ落ちてしまった(比較例11、12)。
本発明で得られたインクジェット記録体は、高光沢、高印字濃度、高インク吸収性であり、ひび割れがなく、基材との密着性の高いインク受容層を備えており、特に写真画質のインクジェット記録用紙に適している。さらに、染料インク、顔料インクに対しても、優れた品質を備えたインクジェット記録用紙として適用できる。

Claims (9)

  1. 基材もしくは下塗り層を設けた基材に、水を主成分とする溶液(a)を均一に塗布し、湿潤状態の内に、水溶液に電子線を照射することによりハイドロゲルを形成する電子線硬化性成分を含有する水性塗料(b)を積層塗布し、ついで電子線を照射して該塗工層をハイドロゲル化させたのち乾燥してインク受容層を形成することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
  2. 水を主成分とする溶液(a)として、水性塗料(b)と混合するとゲル化する性質を有する溶液を使用することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  3. 水を主成分とする溶液(a)のpH(a)と、水性塗料(b)のpH(b)が
    [pH(a)−7]×[pH(b)−7]≦0
    であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  4. 水を主成分とする溶液(a)中にホウ素系化合物及びポリエチレンイミンから選ばれる少なくとも1種を含有し、水性塗料(b)にポリビニルアルコール又はその誘導体を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  5. 水性塗料(b)が平均粒径1μm以下の微細顔料を含み、細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積が0.2〜2.0ml/gの多孔質塗工層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  6. 微細顔料が、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  7. 電子線硬化性成分が、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、カゼイン、及びこれらの水溶性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  8. 下塗り層を設けた基材が、難吸水性又は非吸水性の基材上に親水性樹脂を含有する下塗り層を設けてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  9. 基材もしくは下塗り層を設けた基材に、コロナ放電処理又はプラズマ放電処理からなる活性エネルギー照射処理が施されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録体の製造方法。

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