JP2005131833A - セラミックス焼結体の製造方法及び光通信用コネクタ - Google Patents

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Abstract

【課題】
セラミックス焼結体をミクロン以下の寸法公差の範囲内に入れる製造方法を提供する。
【解決手段】
セラミックスに熱可塑性のバインダを混合した成形前原料を金型に充填するとともに、上記成形前原料をプレス成形により成形体を形成し、しかる後、焼成してなるセラミック焼結体の製造方法において、上記成形体は、上記バインダのガラス転移点に対して5〜20℃低く、かつ可塑性を示す温度でプレス成形を開始し、上記成形前原料の軟化温度以下になるまでプレス圧を保持して形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、精密な寸法精度を要求されるセラミックス焼結体の製造方法及び光通信用コネクタに関する。
近年、セラミックス焼結体は、高強度、耐磨耗性、高剛性、低熱膨張性、耐熱性、高硬度などの特性を利用して、機械材料として工作機械部品、測定装置、エンジン、送風機、軸受、工具、潤滑剤、もしくは光通信用部品などに用いられている。また、化学的な安定性を利用して化学装置や断熱性あるいは伝熱性を利用した機器への応用も図られている。
また、常温環境下で使用される精密機器の重要な要素部品にセラミックス焼結体が採用されるようになってきた。その背景には、半導体に代表される電子部品の超精密化、微細化が急速に進み、それらを製造する加工機や測定器にサブミクロンもしくはそれ以下の精度が要求されるようになってきたことが挙げられる。
従来、精密機器の構造用部品としては、ステンレス、アルミ系合金、防錆処理した鉄系材料および石材が使われてきた。しかし、加工精度がミクロン以下を要求する超精密・超微細加工分野においては、構造体の自重による変形や温湿度変化による微小な変形も問題になるほど要求仕様が厳しい。しかも、機械の高速化による能率向上のため、部材の軽量化への要求も強い。このような高い品質要求に対し、従来の材料では対応しきれないため、セラミックス焼結体が使われ始めている。
また、近年、通信分野における情報量の増大に伴い、光ファイバを用いた光通信が使用されている。この光通信において、光ファイバ同士の接続、あるいは光ファイバと各種光素子との接続には光コネクタが用いられている。
例えば、特許文献1に示す光ファイバ同士を接続するコネクタでは、図3に示すように、金属製の支持体2に保持されたフェルール1に形成された貫通孔1aに光ファイバ3の端部を保持し、一対のフェルール1をスリーブ4の両端から挿入して、内部で必要に応じて凸球面状に加工した先端面1d同士を当接させた構造となっている。
上記フェルール1の材質として、金属、プラスチック、ガラスなど、さまざまなものが試作されてきたが、現在は大半がセラミックスとなっている。その理由としては、セラミックスは高精度に加工することができるため、内径、外径の公差を1μm以下と高精度にすることができる点、摩擦係数が低いため光ファイバの挿入性に優れる点、剛性が高く熱膨張係数が低いことから外部応力や温度変化に対して安定であり、耐食性にも優れている点などが挙げられる。
さらに、セラミックスの中でも、アルミナからジルコニアに大半が置きかわりつつある。例えば、特許文献2にはスリーブ4とフェルール1(中子)をジルコニアにより形成することが示されている。そして、ジルコニアはアルミナと比べて、ヤング率が1/3であり適度な弾性を有するので、スリーブ4内にフェルール1を嵌入したときにも割れることがない点や、従来の金属よりも高硬度なので変形による保持力低下や、擦り傷や摩耗が生じにくく、長期間にわたって安定した高い接続性能を維持する点が記載されている。
上記セラミック製品の成形には、一般的には、セラミック粉末に、バインダとして水溶性セルロース、ワックスエマルジョン等を混合した水系材料、または、バインダとして熱可塑性樹脂、ワックス等を混合した非水系材料をスクリューまたはプランジャーにて金型から押し出して成形する押出成形、および、セラミック粉末に、バインダとして樹脂、ワックスなどを混合した材料を溶融し金型に流し込んで成形する射出成形、および、セラミック粉末とバインダを混合してスラリー状にしたものを噴霧乾燥して得た顆粒を加圧して成形するプレス成形が用いられる。これらの中で、保形性があって寸法精度の高いセラミックを成形する方法としては、例えば、特許文献3には、セラミックス粉末と低密度ポリエチレン、パラフィンワックス、アクリル系樹脂を含む有機バインダとからなるセラミックス粉末射出成形用組成物を射出成形した後、脱バインダ処理、焼結する方法が開示されている。また、特許文献4には、押出成形機の口金から出てきた成形物を直ちに冷水、冷風等で急冷する方法が開示されている。
特開平10−48472号公報(図1等) 特開平5−333239号公報(請求項1) 特開平4−198057号公報(請求項3) 特開2001−220246号公報(段落番号0015、0027)
ところが、上記の従来の製造方法においても、成形後にひけ等の変形が発生する不具合の為、数ミクロンオーダーの寸法精度をもつ成形体を製造することは困難であった。また、冷水等で急速に冷却してはいるものの金型を出た直後から冷却されるまでの間の変形を抑えられないために、既にその間で寸法のばらつきを生じてしまい、成形、焼成されたセラミックス焼結体がミクロン以下の所望の寸法公差範囲内に入らないという問題を生じていた。
そのセラミックス焼結体が所望の寸法に対して、削り代があれば、研磨等で所望の寸法に仕上げなければならず、そのために多大な作業時間を要し、製造コストを増大させる要因となっていた。
また、そのセラミックス焼結体が所望寸法に対して、削り代のない場合は使用できなくなるので廃棄処分をしなければならず、廃棄処分をしたくないために大半の製造ロットで削り代が残るように上記平均的な収縮率を削り代の多い側へシフトして製造していた。
そのために、更に削り代が多くなり、研削や研磨等で所望の寸法に仕上げなければならず、更に多大な作業時間を要し、製造コストを増大させる要因となっていた。
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、セラミックスに熱可塑性バインダを混合した材料を成形する方法において、バインダのガラス転移点に対して5〜20℃低く、かつ可塑性をもつ温度でプレス成形し、材料の軟化温度以下までプレス圧を保持した後、離型、脱脂、焼成することを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法である。
更には、上記セラミックス焼結体がジルコニアセラミックスからなることを特徴とする。
そして、上記セラミックス焼結体が光通信用コネクタ部材に使用されることを特徴とする。
本発明は上述の構成により、セラミックスに熱可塑性バインダを混合した材料を成形する方法において、バインダのガラス転移点に対して5〜20℃低く、かつ可塑性をもつ温度でプレス成形し、材料の軟化温度以下までプレス圧を保持した後、離型、脱脂、焼成することで、変形、割れ、折れの無い、高い寸法精度をもつセラミックス焼結体を製造することができる。
従って、この製造方法により製造されたジルコニア焼結体を光コネクタ用フェルールに使用した光通信用コネクタは高い寸法精度が得られることから接続損失を小さくすることが可能となる。
以下本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明のセラミックス焼結体の製造方法を示す流れ図である。図に示すように成形用のバインダとして熱可塑性樹脂およびワックスの少なくとも一方をジルコニア粉末に混練したものを成形前原料とする。これをプレス金型に充填して可塑性を示す温度以上、かつバインダのガラス転移点に対して5〜20℃よりも低い温度で加熱してプレスを開始する。これをプレス開始温度とする。次に加熱をやめて成形前原料の軟化温度以下になるまでプレス圧を保持する。その後プレス圧を開放し、プレス金型から離型して、炉に入れて得られた成形体を脱脂、焼成し、次に必要部分を研削もしくは研磨等の機械仕上げ加工を行い製品化するものである。
上述の製造方法を用いることができるセラミックスとしては、ジルコニア、アルミナ、チタニア、ムライト、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムが好ましい。
上記バインダとしては、プレス開始温度で可塑性を持ち、プレス開始温度よりも高いガラス転移温度を持つものであれば特に限定されないが、プレス成形の生産性を考えると、プレス開始温度があまり高温ではなく、室温にて離型できるようになるバインダが好ましい。従って、軟化温度が室温よりも高く、かつ、プレス開始温度にも依るがガラス転移温度が80〜100℃程度のものが好ましく、例えば、メタクリレート、エステル、アミド化合物、パラフィンワックスの混合物等が挙げられる。
また、上記バインダのセラミック原料粉末に対する添加量は、セラミック原料粉末100重量部に対して、4〜40重量部であることが好ましい。添加量が4重量部未満であると、結合剤としての作用が弱くなり、成形体に折れ、割れ、伸び、曲がり等が生じ精密な寸法精度のセラミック成形体が得られない。
さらに、添加量が40重量部を超えると、成形体中のセラミック原料粉末の充填量が少なすぎて、乾燥、脱脂、焼成工程での収縮、変形等が大きくなり精密な寸法精度のセラミック成形体が得られない。
本発明のセラミックス焼結体の具体例として、光コネクタ用のフェルールを用いて説明する。
図2に示すように、光コネクタ用のフェルール1は、中央に光ファイバを挿入する貫通孔1aを有し、その貫通孔1aの後端側には光ファイバの挿入を容易にするために円錐部1bを備え、先端外周にはスリーブ挿入時にガイド面となるC面部1cを備えている。
フェルール1は、光コネクタに利用する場合は、詳細を後述するジルコニア焼結体で形成するのが好ましく、図2に示すように、その後方を金属製の支持体2に接合し、フェルール1の貫通孔1aに光ファイバ3を挿入して接合した後、先端面1dを曲率半径10〜25mm程度の凸球面状に研摩する。このような一対のフェルール1をスリーブ4の両端から挿入し、バネ等で押圧して先端面1d同士を当接させることによって、光ファイバ3同士の接続を行うことができる。
フェルール1を成すジルコニア焼結体は、ZrO2を主成分とし、安定化剤としてY2O3を含有し、正方晶の結晶相を主体とし、平均結晶粒径を0.3〜0.5μm、ビッカース硬度を1240〜1300としており、このようにすることによって、フェルール1の先端面1dの研磨性を良好にしている。
本発明のジルコニア焼結体は、正方晶相を主体とすることによって、応力を受けた際に、この正方晶結晶が単斜晶結晶に変態して体積膨張し、クラックの進展を防止するという応力誘起変態のメカニズムによって、焼結体の強度、靱性を向上でき、部分安定化ジルコニアと呼ばれている。
また、本発明の製造方法により作製されるジルコニア焼結体は、単斜晶相を含まず、主体をなす正方晶相の他に相変態に対して安定な立方晶を含むことで、前記応力誘起変態のメカニズムをほとんど損なわずに高温水中での相変態特性を大きく向上させることができる。
次に、上記フェルール1の製造方法について説明する。
まず、出発原料のZrO2には不純物としてAl2O3やSiO2、TiO2、あるいはCaO、Na2O、Fe2O3等が含まれているが、この原料を酸やアルカリ等の薬品で処理したり、あるいは比重差を利用した重力選鉱等の手法にて精製したりして純度を高める。そして、ZrO2にY2O3を3〜5モル%添加混合し、中和共沈または加水分解等の方法により反応・固溶させる。
次に、得られた原料に、下記プレス開始温度よりもガラス転移温度が高く、下記プレス終了温度よりも軟化温度が高い熱可塑性材料を成形用のバインダとして添加して混練して成形前原料を得る。混練方法は、均一に混練される方法であれば特に限定はされず、例えば、一般的によく知られている加圧式ニーダーで加熱しながら混練する方法が挙げられる。
混練終了後、この成形前原料をプレス金型に充填し、プレス開始温度に加熱した後、加熱をやめてプレス成形をおこない、その後、成形前原料の軟化温度以下になるまでプレス圧を保持したまま冷却し、軟化温度以下になってからプレス圧を解除し成形体を離型する。
プレス成形機は、電気ヒーターまたは熱媒をジャケットに通す等して成形温度の調節さえ出来れば、一般に用いられているものでかまわない。まず、プレス成形機のプレス開始温度を一定に制御して、成形前原料を供給する。成形前原料は、混練後に固化したものを粉砕した粉末状、ペレタイザーによりペレット状にしたもの、更には、予備成形したものでもかまわない。プレス開始温度は、バインダの種類、含有率、ZrO2添加率等の成形前原料の組成により決まり、生産性の面からプレス開始温度は80℃以下が好ましく、また、成形体を室温で扱い可能であるという点からプレス終了温度は40℃以上が好ましい。
次に、脱脂工程にてバインダを除去した後、焼成し、その後必要部分を研削もしくは研磨等の機械仕上げ加工を行い製品化する。本発明の製造方法によれば、脱脂方法として、常圧乾燥、減圧乾燥等、焼成方法として、バッチ炉、連続炉等様々な脱脂、焼成方法を用いても、同一の効果を得ることが出来る。
なお、図3では光ファイバ3同士を接続するための光コネクタを示したが、上記フェルール1は、レーザダイオードやフォトダイオード等の光素子と光ファイバを接続する光モジュールに用いることもできる。
また、本発明におけるジルコニア焼結体は、上述した光ファイバ同士、又は光ファイバと各種光素子との接続に用いるさまざまな部材に適用することができ、上述したフェルール1に限らない。例えば、光ファイバ同士を完全に接続するために用いるスプライサや、光モジュールに用いるダミーフェルール等にも適用することができる。
また、本発明におけるジルコニア焼結体は、上述した光ファイバ同士、又は光ファイバと各種光素子との接続に用いるさまざまな部材に適用することができ、上述したフェルール1に限らない。例えば、光ファイバ同士を完全に接続するために用いるスプライサや、光モジュールに用いるダミーフェルール等にも適用することができる。
以下本発明の実施例を説明する。
サンプルは、図1に示す製造方法にて作製した。
セラミックス粉末にはZrO2へY2O3を添加した部分安定化ジルコニアを用い、ガラス転移温度が各々88℃、93℃、98℃になるように調合したメタクリレート、エステル、アミド化合物、パラフィンワックスの混合物のバインダと加圧ニーダーで混練した後、粉砕して成形前原料とした。次に、内径φ3.518mmのプレス金型に充填して80℃に加熱し、約3.5MPaでプレスした後、プレス圧を保持したまま冷却し40℃になった時点で金型から離型して、長さ14.1mmの成形体を得た。
得られた成形体を脱脂、焼成後、サンプルNo.毎にそれぞれ20個の焼結体の割れ、折れの発生数を双眼顕微鏡20倍にてカウントし、また両端および中央部の外径寸法をレーザー式寸法測定機で測定した。
比較例として、ガラス転移温度を63℃、73℃に調合した以外は実施例と同様の条件で、サンプルを作製し、焼成後、サンプルNo.毎にそれぞれ20個の焼結体の割れ、折れの発生数を双眼顕微鏡20倍にてカウントし、また両端および中央部の外径寸法をレーザー式寸法測定機で測定した。
各サンプルのガラス転移温度、割れ、折れの発生数および外径寸法ばらつきを表1に示す。
Figure 2005131833
以上より、従来の製造方法で作製したサンプルでは、割れ、折れの発生数が各々4個、3個、各値の最大値と最小値の差である外径ばらつきが各々0.074mm、0.039mmと大きいのにたいし、本発明の製造方法では、割れ、折れの発生数は0個、外径ばらつきが平均で0.005mmと精密な寸法精度の焼結体を得ることが出来た。
ミクロン以下の寸法精度を必要とするセラミック部品に利用可能である。例えば、1μm以下の高精度の同心度を要求される光コネクタ用セラミックフェルールの他、キャピラリ、ノズル、流体軸受のスリーブ等が挙げられる。
本発明のセラミックス焼結体の製造方法を示す流れ図である。 本発明の製造方法により得られるフェルールを示す端面図である。 本発明の製造方法により得られるフェルールを用いた光コネクタを示す断面図である。
符号の説明
1:フェルール
1a:貫通孔
1b:円錐部
1c:C面部
1d:先端面
2:支持体
3:光ファイバ
4:スリーブ

Claims (3)

  1. セラミックスに熱可塑性のバインダを混合した成形前原料を金型に充填するとともに、上記成形前原料をプレス成形により成形体を形成し、しかる後、焼成してなるセラミック焼結体の製造方法において、上記成形体は、上記バインダのガラス転移点に対して5〜20℃低く、かつ可塑性を示す温度でプレス成形を開始し、上記成形前原料の軟化温度以下になるまでプレス圧を保持して形成されることを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法。
  2. 上記セラミックスがジルコニアであることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス焼結体の製造方法。
  3. 請求項2に記載のセラミックス焼結体の製造方法により製造されたジルコニア焼結体を光コネクタ用フェルールに使用してなる光通信用コネクタ。
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