JP2006062944A - セラミック焼結体の製造方法とこれにより得られた光通信用フェルール - Google Patents
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Abstract
【課題】セラミック焼結体を製造する際に、ミクロンオーダーの寸法公差を小さなものとして寸法制度の高いセラミック焼結体を得ることが困難である。
【解決手段】セラミックス粉末にメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方を含む水溶性バインダを混練し、押出成形した後、得られた成形体を上記セルロースのゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体中に浸漬し、次いで上記セルロースのゲル化温度以上で乾燥させ、焼成する。
【選択図】図1
【解決手段】セラミックス粉末にメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方を含む水溶性バインダを混練し、押出成形した後、得られた成形体を上記セルロースのゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体中に浸漬し、次いで上記セルロースのゲル化温度以上で乾燥させ、焼成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、精密な寸法精度のセラミック焼結体の製造方法及びそれを用いた光通信用コネクタに関する。
近年、セラミック焼結体は、高強度、耐磨耗性、高剛性、低熱膨張性、耐熱性、高硬度などの特性を利用して、機械材料として工作機械部品、測定装置、エンジン、送風機、軸受、工具、潤滑剤、もしくは光通信用部品などに用いられている。また、化学的な安定性を利用して化学装置や断熱性あるいは伝熱性を利用した機器への応用も図られている。
常温環境下で使用される精密機器の重要な要素部品にセラミック焼結体が採用されるようになってきた。その背景には、半導体に代表される電子部品の超精密化、微細化が急速に進み、それらを製造する加工機や測定器にサブミクロンもしくはそれ以下の精度が要求されるようになってきたことが挙げられる。
さらに、近年、通信分野における情報量の増大に伴い、光ファイバを用いた光通信が使用されており、これら光通信に用いられる部材として光ファイバを保持するフェルールとしても高精度に加工することができることからセラミックスが用いられており、その中でもジルコニアが多用されている。
これら種々の部材として用いられるセラミック焼結体を得るための成形方法としては、一般的にセラミックス粉末に、バインダとして水溶性セルロース、ワックスエマルジョン等を混合した水系材料、または、バインダとして熱可塑性樹脂、ワックス等を混合した非水系材料をスクリュまたはプランジャーにて金型から押し出して成形する押出成形、セラミックス粉末に、バインダとして樹脂、ワックスなどを混合した材料を溶融し金型に流し込んで成形する射出成形、セラミックス粉末とバインダを混合してスラリー状にしたものを噴霧乾燥して得た顆粒を加圧して成形するプレス成形が用いられる。これらの中で、単純な形状の成形体、特に管状、棒状の成形体を必要とする場合は、生産性および寸法精度の面から押出成形が最も適している。
通常、押出成形には、すべり性に優れたものを選択し、混合後の成形材料にはできるだけ添加する水分量を減らすため、成形後の乾燥、焼成によってクラックや、型くずれが生じやすいものであった。
この問題を防止するために、特許文献1〜3には、セラミックス粉末にメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤を添加したものを、所望の断面形状で押出成形し、必要な長さに切断した後、得られた成形体を熱水中にタンニン酸とともに界面活性剤を混合した熱水中に浸漬し、乾燥、焼成することで、結合剤を短時間でゲル化させ、タンニン酸で不溶化させることにより、保形された成形体を乾燥工程に移るまでに冷却されても機械的強度を損なわないまま型崩れも防止できることが提案されている。
また、特許文献4には、セラミックス成形体をその外形を保持する保持型の中に入れ、保持型の雰囲気温度がセラミックス押し出し成形体に含まれるメチルセルロースがゲル化する温度に上昇するまでは水蒸気を多く含む雰囲気とし、それより高い温度では水蒸気を減じた雰囲気で乾燥することにより成形体の変形を抑制する方法が提案されている。
特開平1−294570号公報
特開平2−233551号公報
特開平3−37153号公報
特開平3−193671号公報
ところが、特許文献1〜3の製造方法では、熱水中で成形体をゲル化させ機械的強度を発現させているため、型くずれ等を防ぐことはできるものの、通常のセラミック成形体は水溶性のメチルセルロースを結合剤として用いているため、熱水等の水溶性の液体に浸漬すると成形体の表面から溶け出したり、浸漬に用いた液体が局所的に付着した場合、乾燥させる時に成形体にクラック等の欠陥を生じる等の問題があり、ミクロンオーダーで高い寸法精度の成形体を得ることができないという問題があった。
また、特許文献4の製造方法により成形後に乾燥を行った場合、ゲル化する温度まで上昇させている間に水分の蒸発による変形が始まり、成形体の表面が濡れる程の雰囲気で行うと成形体の表面が溶けだし、表面が荒れてしまうので、ミクロンオーダーで高精度の成形体を得ることができないという問題があった。
さらに、押出成形機から出てきた成形体を引き取る際や必要な長さに切断する際にはゲル化による強度が発現する前なので、成形体に充分な強度が無く変形を生じ、ミクロンオーダーで高い寸法精度の成形体を得ることができないという問題があった。
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、セラミックス粉末にメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方を含む水溶性バインダを添加、混練し、押出成形した後、得られた成形体を上記水溶性バインダのゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体中に浸漬し、次いで上記水溶性バインダのゲル化温度以上で乾燥させ、焼成することを特徴とするものである。
また、上記押出成形は、押出原料を押出成形機に充填、押圧することにより成形体を得てなり、上記押出成形機先端より押出される成形体を押出直後から上記非水溶性の液体を満たしたパイプ内に通過させることを特徴とするものである。
さらに、上記非水溶性の液体は、その沸点が上記水溶性バインダのゲル化温度以上であるとともに、水溶性バインダの熱分解温度以下であることを特徴とするものである。
またさらに、本発明の光通信用フェルールは、上記製造方法によって得られたことを特徴とするものである。
本発明は、セラミックス粉末にメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方を含む水溶性バインダを添加、混練し、押出成形した後、得られた成形体を上記水溶性バインダのゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体中に浸漬し、次いで上記セルロースのゲル化温度以上で乾燥させ、焼成することから、乾燥の際に成形体の変形及びクラックの発生を抑えることができ、成形体の寸法のばらつきを抑制することができ、これにより高い寸法精度をもつセラミック焼結体を製造することができる。
また、本発明は、セラミックス粉末にメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方を含む水溶性バインダを添加、混練し、押出成形する時に、金型から出た直後の成形体を、ゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体で満たしたパイプ中を通過させ、次いで、乾燥させた後、焼成することから、成形時に成形体を引き取る際や成形体を必要な長さに切断する際、及び、乾燥の際に成形体の変形及びクラックの発生を抑えることができ、成形体の寸法のばらつきを抑制することができ、これにより高い寸法精度をもつセラミック焼結体を製造することができる。
また、上記非水溶性の液体は、その沸点が上記水溶性バインダのゲル化温度以上であるとともに、水溶性バインダの熱分解温度以下であることから、非水溶性の液体の沸騰に伴った成形体の変形を生じることがなく、熱分解温度以下のため、水溶性バインダが分解することによる結合強度の低下に伴った成形体の変形を生じることはない。
さらに、本発明の光通信用フェルールは、上記製造方法によって得られたことから、光ファイバ同士を接続するための光コネクタや、レーザダイオードやフォトダイオード等の光素子と光ファイバを接続する光モジュールに用いることができ、寸法精度が非常に高いため、外径、内径の寸法にばらつきがなく、光ファイバを挿通保持した際に、接続損失を小さいものとすることができる。
先ず、本発明のセラミック焼結体の製造方法の第1の実施形態について説明する。
図1に本発明のセラミック焼結体の製造方法の工程を示す。本発明のセラミックス焼結体の製造方法は、セラミックス粉末にメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方を含む水溶性バインダを添加、混練し、押出成形した後、得られた成形体を上記水溶性バインダのゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体中に浸漬し、成形体をゲル化させ、次に、成形体を乾燥した後、炉に入れて、脱脂、焼成し、次に必要部分を研削もしくは研磨等の機械仕上げ加工を行うものである。
先ず、セラミックス粉末として、ジルコニア、アルミナ、チタニア、ムライト、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム等を準備する。
次いで、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方からなる水溶性バインダを添加、混錬する。
上記メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースとしてはバインダとしての結合力があれば特に限定されないが、成形前原料の粘度やゲル化、乾燥工程での操作性等を考えると、平均分子量が60,000〜110,000で、ゲル化温度が50〜85℃程度のものが挙げられる。
なお、この他、成形性を考慮してワックスエマルジョン等の潤滑剤や可塑剤等も含んでいることが好ましい。
また、上記水溶性バインダのセラミック粉末に対する添加量は、セラミックス粉末100重量部に対して4〜40重量部であることが好ましい。この添加量が4重量部未満であると、結合剤としての作用が弱くなり、成形体に折れ、割れ、伸び、曲がり等が生じ精密な寸法精度の成形体が得られない。一方、40重量部を超えると、成形体中のセラミックス粉末の充填量が少なすぎて、脱脂、焼成工程での収縮、変形等が大きくなり精密な寸法精度の成形体が得られず、得られる焼結体に気孔が残りやすく、充分な密度、強度が得られない。
その後、所望の形状に押出成形することで成形体を得、得られた成形体を原料粉末に添加した水溶性バインダのゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体中に浸漬する。
ここで、本発明の製造方法では、非水溶性の液体を用いることが重要である。このように非水溶性の液体を用いることで、成形体に結合剤として含まれる水溶性のメチルセルロースや、添加した水がこの液体に浸漬しても溶け難いため、溶け出して形状が崩れたり、クラック等の欠陥を生じたりすることを有効に防止することができる。よって、水溶性バインダに含まれるセルロースが加熱によりゲル化するため機械的強度を向上させることができ、また、乾燥工程において成形体にクラック等の欠陥を生じさせないため、成形体の変形を防ぎミクロンオーダーで高精度の成形体を得ることができる。
また、現象は可逆的であるので、成形体の強度を保つために上記セルロースのゲル化温度以上の雰囲気を維持したまま成形体を乾燥し高精度の成形体を得ることにある。
ここで用いる非水溶性の液体としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等を用いることができ、その沸点が上記水溶性バインダのゲル化温度以上であるとともに、水溶性バインダの熱分解温度以下であることが好ましい。
ここで、水溶性バインダのゲル化温度とは、添加した水溶性バインダがメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの双方を含む場合、または、ゲル化温度が異なるヒドロキシプロピルメチルセルロースを2種類以上含む場合は、ゲル化温度の低いほうの温度を選択し、沸点をこのゲル化温度以上とすることで、非水溶性の液体の沸騰に伴った成形体の変形を生じることがない。
また、ゲル化温度とは、非水溶性の液体を加熱した際に急速に粘度が上昇する温度を表し、水溶性バインダの重合度やメトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基の比率等で異なるが、セラミックスの水溶性バインダとして用いられるものは一般的にゲル化温度は50〜90℃程度である。
また、熱分解温度とは、水溶性バインダとしてメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの双方を含む場合、または、ゲル化温度が異なるヒドロキシプロピルメチルセルロースを2種類以上含む場合は、熱分解温度の低い方を選択し、沸点をこの熱分解温度以下とすることで、水溶性バインダが分解することによる結合強度の低下に伴った成形体の変形を生じることはない。
また、生産効率を考え、成形体の水分を蒸発させて乾燥する時に、上記液体も同時に蒸発させるために、沸点が200℃程度より低い方が好ましい。
さらに、成形体を浸漬する時間は、成形体の寸法や液体の温度により異なるので一概には決められないが、一般的な押出成形体であれば、上記水溶性バインダのゲル化温度より10〜20℃高い温度で、数分から数十分で充分である。
その後、添加した水溶性バインダのゲル化温度以上で成形体を乾燥する。ここで、乾燥温度をゲル化温度以上の雰囲気とすることで、ゲル化現象は可逆的であり、成形体を乾燥固化させて乾燥体にする前にゲル化温度未満にすると強度が下がって元に戻るため、乾燥固化前はゲル化によって成形体の強度を保つことができ、成形体を乾燥固化させ寸法精度を高くすることができる。なお、このゲル化温度とは上述と同様に添加した水溶性バインダの種類によって選択するものである。
最後に、脱脂工程にて残ったバインダを除去した後、焼成する。また、必要に応じて研削もしくは研磨等の機械仕上げ加工を行うことによりセラミック焼結体を得ることができる。
本発明の製造方法によれば、脱脂方法として、常圧乾燥、減圧乾燥等、焼成方法として、バッチ炉、連続炉等様々な脱脂、焼成方法を用いても、同一の効果を得ることができる。
このような製造方法を用いることで、ミクロンオーダーの寸法公差で高精度に加工することができ、焼成後の削り代が少なく、製造コストを大幅に低減することができる。
次いで、本発明のセラミックス焼結体の製造方法の第2の実施形態について説明する。
図2は、本発明のセラミックス焼結体の製造方法の第2の実施形態の一例を示している。
本発明のセラミックス焼結体の製造方法の第2の実施形態は、セラミックス粉末にメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方を含む水溶性バインダを添加、混練した押出原料を押出成形機先端5から押出成形する時に、成形体8が金型53から押出された直後から、ゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体で満たしたパイプ54中を通過させ、成形体8をゲル化させて強度を発現させた後、成形体8を搬送するコンベア及び切断機62等で構成された引取機6で必要に応じた長さに切断し、開閉式コンベア71及び収納容器72等で構成された収納機7で成形体8を収納する。この時、ゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体は、例えば、パイプ54の上部に設けられた非水溶性液体の供給口55から供給し、パイプ54の下部に設けられた非水溶性液体の排出口56から排出される。
次に、成形体8を乾燥後、炉に入れて、脱脂、焼成し、次に必要部分を研削もしくは研磨等の機械仕上げ加工を行うものである。
なお、上記押出成形に用いるセラミックス粉末、バインダ等の押出原料は、上述の第1の実施形態と同様に、種々の材料を用いることができ、バインダの添加量も同様である。
ここで、本発明の製造方法の第2の実施形態では、金型53から出た直後の成形体8を、金型53の出口に取り付けたゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体で満たしたパイプ54に通過させることが重要である。このように金型53から出た直後の成形体8を、金型53の出口に取り付けたゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体で満たしたパイプ54に通過させることで、成形体8に含まれるセルロースが加熱によりゲル化するため、金型53から出た直後に成形体8の機械的強度が向上し、引取機6等で成形体8を引き取る時に、ベルトコンベア61、63,71等に載っていない部分で生じる成形体8のたわみや、ベルトコンベア61、63,71等で引き取る時に成形体8に生じる張力や、搬送時の自重による変形を防ぎ、ミクロンオーダーで高精度の成形体8を得ることができる。
ここで用いるパイプ54の形状は、成形体8をパイプ54に通過させる時に、成形体8が詰まったり、成形体8に傷等が付かなければ特に制約はされず、例えば円形のパイプや角状のパイプを用いることができる。パイプ54の内径は、成形体8が詰まらずに通過すれば特に制約はされないが、例えば円柱状の成形体の場合、成形体の外径の1.1〜5倍が好ましい。内径が1.1倍より小さいと、成形体が非水溶性の液体に充分に浸からずに、部分的にゲル化が不十分な所が残り充分な強度を発現しない。逆に内径が5倍よりも大きいと、非水溶性の液体の圧力により成形体に変形が生じ好ましくない。パイプ54の長さは、成形体8をパイプに通過させる間に充分にゲル化するだけの距離があれば特に制約されず、例えば円柱状の成形体の場合、成形体の外径または厚み等と、成形体を押し出す速度つまりは成形体8をパイプ54に通過させる速度との両方を考慮して適宜パイプ54の長さを決定すれば良い。また、パイプ54の取り付け方は、パイプ54中を流す液体が成形機側に流れず、また、液体を回収しやすいように成形機側を上にして、傾けて取り付けるのが好ましい。この時金型53とパイプ54のつなぎ部分で成形体8が変形しないように成形機本体もパイプ54と同じだけ傾けておくのが好ましい。
また、成形時にパイプ54中の非水溶性の液体温度をバインダのゲル化温度以上に保てれば、パイプ54中を流す非水溶性液体の流量も特に制約されない。
これら、第1の実施形態、第2の実施形態に示すセラミックス焼結体の製造方法は、寸法精度の高い種々のセラミック部材に有効に用いることができるが、特に高い寸法精度が要求される図3に示すような光通信用フェルールを成形するのに好適に用いることができる。
図3に示すように、例えば光コネクタ用のフェルール1は、中央に光ファイバを挿入する貫通孔1aを有し、その貫通孔1aの後端側には光ファイバの挿入を容易にするために円錐部1bを備え、先端外周にはスリーブ挿入時にガイド面となるC面部1cを備えている。
このフェルール1は、光コネクタに利用する場合は、詳細を後述するジルコニア焼結体で形成するのが好ましく、図4に示すように、その後方を金属製の支持体2に接合し、フェルール1の貫通孔1aに光ファイバ3を挿入して接合した後、先端面1dを曲率半径10〜25mm程度の凸球面状に研摩する。このような一対のフェルール1をスリーブ4の両端から挿入し、バネ等で押圧して先端面1d同士を当接させることによって、光ファイバ3同士の接続を行うことができる。
また、フェルール1を成すジルコニア焼結体は、ZrO2を主成分とし、安定化剤としてY2O3を含有し、正方晶の結晶相を主体とし、平均結晶粒径を0.3〜0.5μm、ビッカース硬度を1240〜1300としており、フェルール1の先端面1dの研磨性を良好にしている。
さらに、フェルール1は、正方晶相を主体とすることによって、応力を受けた際に、この正方晶結晶が単斜晶結晶に変態して体積膨張し、クラックの進展を防止するという応力誘起変態のメカニズムによって、焼結体の強度、靱性を向上でき、部分安定化ジルコニアと呼ばれている。
また、本発明の製造方法により作製されるフェルール1は、単斜晶相を含まず、主体をなす正方晶相の他に相変態に対して安定な立方晶を含むことで、前記応力誘起変態のメカニズムをほとんど損なわずに高温水中での相変態特性を大きく向上させることができるので好ましい。
本発明のフェルール1を作製するには、上述の製造方法と同様であるが、まず、出発原料のZrO2には不純物としてAl2O3やSiO2、TiO2、あるいはCaO、Na2O、Fe2O3等が含まれているが、この原料を酸やアルカリ等の薬品で処理したり、あるいは比重差を利用した重力選鉱等の手法にて精製したりして純度を高める。そして、ZrO2にY2O3を3〜5モル%添加混合し、中和共沈または加水分解等の方法により反応・固溶させる。
次に、得られた原料に、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方とワックスエマルジョン等を成形用のバインダとして添加して混練して成形前原料を得る。ここで、セラミックス粉末とバインダを混練する装置としては、一般的にセラミックスや金属等の粉体とバインダとの混練に用いられる混練装置であれば特に限定はされず、例えばスーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、三本ロール、加圧式ニーダー等が挙げられる。
混練終了後、この成形前原料を押出成形機に投入し、押出成形を行い、成形体を得る。押出成形機は、一般的にセラミックスや金属等の押出成形に用いられているものであれば特に限定はされず、押出方式もスクリュー式またはプランジャー式等にこだわらない。
次に、バインダに用いたメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方のゲル化温度以上に加熱したヘキサン等の液体中に成形体を浸してゲル化させた後、同じくゲル化温度以上の雰囲気で水分を蒸発させて成形体を乾燥固化させ、その後、脱脂工程にて残ったバインダを除去した後、焼成し、その後必要部分を研削もしくは研磨等の機械仕上げ加工を行い製品化する。
このようにして得られた光通信用フェルール1は、図4に示すような光ファイバ3同士を接続するための光コネクタや、レーザダイオードやフォトダイオード等の光素子と光ファイバを接続する光モジュールに用いることができ、寸法精度が非常に高いため、外径、内径の寸法にばらつきがなく、光ファイバを挿通保持した際に、接続損失を小さいものとすることができる。
以下本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
図1に示す製造方法にて円柱状のセラミック焼結体サンプルを作製した。
図1に示す製造方法にて円柱状のセラミック焼結体サンプルを作製した。
セラミックス粉末として、ZrO2を主成分とし、Y2O3を3モル%添加した部分安定化ジルコニアを用い、水溶性バインダとして、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを、セラミックス粉末100重量%に対し、1重量%添加し、さらに水、ワックスエマルジョン、ノニオン系界面活性剤を混合した。
そして、得られた材料を3本ロールを使って混練し、内径φ3.501mmの金型で押出成形し、得られた成形体を90℃のn−ヘキサン中に5分間浸漬した後、直ちに90℃に設定した乾燥機内に1時間放置して充分に乾燥させた。その後、脱脂、焼成し、長さ14.1mmにカットして焼結体サンプルを得た。サンプルNo.毎にそれぞれ20個ずつ両端および中央部の外径寸法を測定した。
また、比較例として、セラミックス粉末として、ZrO2を主成分とし、Y2O3を3モル%添加した部分安定化ジルコニアを用い、水溶性バインダとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、セラミックス粉末100重量%に対し、1重量%添加し、さらに水、ワックスエマルジョン、ノニオン系界面活性剤を混合した。その後、上述と同様に押出成形によって成形体を得た。
そして、得られた成形体を液体中に浸漬しないでゲル化させずに乾燥したもの(サンプルNo.5、6)、非水溶性の液体中でゲル化させた後、一度室温に戻してから乾燥したもの(サンプルNo.7)、熱水中でゲル化させた後、乾燥したもの(サンプルNo.8)は、実施例と同様の条件でサンプルを作製し、サンプルNo.毎にそれぞれ20個の焼結体の両端および中央部の外径寸法をレーザー式寸法測定機で測定した。
以上より、本発明の製造方法にように、成形体をゲル化温度以上の非水溶性の液体中に浸漬し、ゲル化温度以上で乾燥したもの(サンプルNo.1〜4)は、外径ばらつきが3〜4μmと精密な寸法精度の焼結体を得ることができた。
これに対し、比較例の方法で作製したもの(サンプルNo.5〜8)のうち、液体に浸漬していないもの(サンプルNo.5、6)は、クラックが多数発生したものや、外径ばらつきが35μmと非常に大きいものとなった。また、ゲル化温度以上で乾燥させなかったもの(サンプルNo.7)は、クラックが多数発生し、水中でゲル化したもの(サンプルNo.8)は、外径ばらつきが18μmと非常に大きいものとなった。
(実施例2)
実施例1と同様に、セラミックス粉末として、ZrO2を主成分とし、Y2O3を3モル%添加した部分安定化ジルコニアを用い、水溶性バインダとして、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを、セラミックス粉末100重量%に対し、1重量%添加し、さらに水、ワックスエマルジョン、ノニオン系界面活性剤を混合した。
実施例1と同様に、セラミックス粉末として、ZrO2を主成分とし、Y2O3を3モル%添加した部分安定化ジルコニアを用い、水溶性バインダとして、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを、セラミックス粉末100重量%に対し、1重量%添加し、さらに水、ワックスエマルジョン、ノニオン系界面活性剤を混合した。
そして、得られた材料を3本ロールを使って混練し、水平から15°傾けた押出成形機に内径φ3.501mmの金型を取り付けて押し出した。この時、金型出口に予め、φ5mm、長さ50cmの透明なプラスチック製パイプを取り付け、パイプの上側から、90℃に加熱したn−ヘキサンを140ml/minでパイプの中に流し込みながら、成形体を押し出した。次に、ゲル化により強度が発現した成形体を引取機で引き取り、所定の長さに切断して、収納機に収めた後、直ちに90℃に設定した乾燥機内に1時間放置して充分に乾燥させた。その後、脱脂、焼成し、長さ14.1mmにカットして焼結体サンプルを得た。サンプルNo.毎にそれぞれ20個ずつ両端および中央部の外径寸法を測定した。
また、比較例として、セラミックス粉末として、ZrO2を主成分とし、Y2O3を3モル%添加した部分安定化ジルコニアを用い、水溶性バインダとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、セラミックス粉末100重量%に対し、1重量%添加し、さらに水、ワックスエマルジョン、ノニオン系界面活性剤を混合した。その後、n−ヘキサンの温度が20℃であること以外は、上述と同様に押し出し、成形体を引取機で引き取り、所定の長さに切断して、収納機に収めた後、直ちに90℃に設定した乾燥機内に1時間放置して充分に乾燥させた。その後、脱脂、焼成し、長さ14.1mmにカットして焼結体サンプルを得た。サンプルNo.毎にそれぞれ20個ずつ両端および中央部の外径寸法を測定した。
以上より、本発明の製造方法にように、成形体が金型から出た直後にゲル化温度以上の非水溶性の液体中を通過させ、ゲル化温度以上で乾燥したもの(サンプルNo.1〜3)は、外径ばらつきが2〜3μmと精密な寸法精度の焼結体を得ることができた。
これに対し、比較例の方法で作製したものは、クラックが多数発生したものや、外径ばらつきが37μmと非常に大きいものとなった。
1:フェルール
1a:貫通孔
1b:円錐部
1c:C面部
1d:先端面
2:支持体
3:光ファイバ
4:スリーブ
5:押出成形機先端
51:押出成形機シリンダ
52:押出成形機スクリュ
53:金型
54:パイプ
55:非水溶性液体の供給口
56:非水溶性液体の排出口
6:引取機
61:引取用コンベア1
62:切断機
63:引取用コンベア2
7:収納機
71:収納用コンベア
72:収納容器
8:成形体
1a:貫通孔
1b:円錐部
1c:C面部
1d:先端面
2:支持体
3:光ファイバ
4:スリーブ
5:押出成形機先端
51:押出成形機シリンダ
52:押出成形機スクリュ
53:金型
54:パイプ
55:非水溶性液体の供給口
56:非水溶性液体の排出口
6:引取機
61:引取用コンベア1
62:切断機
63:引取用コンベア2
7:収納機
71:収納用コンベア
72:収納容器
8:成形体
Claims (4)
- セラミックス粉末にメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくとも一方を含む水溶性バインダを添加、混練して押出原料を得、押出成形を行った後、得られた成形体を上記水溶性バインダのゲル化温度以上に加熱した非水溶性の液体中に浸漬し、次いで、上記水溶性バインダのゲル化温度以上で乾燥させた後、焼成することを特徴とするセラミック焼結体の製造方法。
- 上記押出成形は、押出原料を押出成形機に充填、押圧することにより成形体を得てなり、上記押出成形機先端より押出される成形体を押出直後から上記非水溶性の液体を満たしたパイプ内に通過させることを特徴とする請求項1に記載のセラミック焼結体の製造方法。
- 上記非水溶性の液体は、その沸点が上記水溶性バインダのゲル化温度以上であるとともに、水溶性バインダの熱分解温度以下であることを特徴とする請求項1,2に記載のセラミック焼結体の製造方法。
- 請求項1〜3に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする光通信用フェルール。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2005091334A JP2006062944A (ja) | 2004-07-28 | 2005-03-28 | セラミック焼結体の製造方法とこれにより得られた光通信用フェルール |
Applications Claiming Priority (2)
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JP2004220729 | 2004-07-28 | ||
JP2005091334A JP2006062944A (ja) | 2004-07-28 | 2005-03-28 | セラミック焼結体の製造方法とこれにより得られた光通信用フェルール |
Publications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPWO2007111281A1 (ja) * | 2006-03-23 | 2009-08-13 | 日本碍子株式会社 | ハニカム構造体及びその製造方法、並びに接合材 |
-
2005
- 2005-03-28 JP JP2005091334A patent/JP2006062944A/ja active Pending
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