上記「特許文献1」に記載されているように、第1灯具ユニットのほかに第2灯具ユニットを備えた構成とすることにより、通常のロービーム用配光パターンでは十分な前方視認性が得にくい走行状況下においても十分な前方視認性を確保することが可能となる。例えば、旋回走行時この第2灯具ユニットを追加点灯させるようにすれば、旋回方向前方路面を十分に照射することができる。しかしながら、このような灯具構成では基本灯具ユニットのほかに付加灯具ユニットが必要となるので、その分だけ灯具構成が複雑となり高価なものとなってしまう、という問題がある。
これに対し、上記「特許文献2」に記載されているように、主反射面の側端縁に沿って補助反射面が形成された構成を採用すれば、基本配光パターンの側方に付加配光パターンが付加されたロービーム用配光パターンを、単一の灯具ユニットからの光照射により形成することが可能となるが、このようにした場合には次のような問題がある。
すなわち、リフレクタの側端縁に位置する反射領域は光源からの距離が遠くなるので、その反射光により形成される光源像は小さくて明るい像となるが、上記補助反射面はリフレクタの側端縁に位置しており、かつ光源からの光を側方へ単に偏向反射させるだけの構成となっているので、付加配光パターンは小さくて明るい配光パターンとなる。一方、基本配光パターンは、その中心部から側端縁にかけて徐々に明るさが減少する配光パターンとなっているので、この基本配光パターンの側端縁の比較的暗い部分に明るい付加配光パターンが付加されると、車両斜め前方路面に大きな配光ムラが発生してしまい、その視認性が損なわれてしまう、という問題がある。
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ロービーム用配光パターンを形成するための光照射を行い得るように構成された車両用前照灯において、簡単かつ安価な灯具構成により、大きな配光ムラを発生させることなく車両斜め前方路面の視認性を高めることができる車両用前照灯を提供することを目的とするものである。
本願発明は、リフレクタの反射面の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
すなわち、本願発明に係る車両用前照灯は、
ロービーム用配光パターンを形成するための光照射を行い得るように構成された車両用前照灯において、
車両前後方向に延びる光軸上近傍に配置された光源と、この光源からの光を前方へ反射させるリフレクタとを備えてなり、
上記リフレクタの反射面が、所定の放物面を基準面として形成された複数の反射素子からなり、
これら複数の反射素子のうち、上記反射面の車幅方向内側の側端縁上部に位置する反射素子が、上記光源からの光を他の反射素子よりも車幅方向外側へ向けて水平方向に拡散反射させる側方照射用反射素子として構成されている、ことを特徴とするものである。
上記「車両用前照灯」は、ロービーム用配光パターンを形成するための光照射のみを行うように構成されたものであってもよいし、ロービーム用配光パターンを形成するための光照射とハイビーム用配光パターンを形成するための光照射とを選択的に行い得るように構成されたものであってもよい。
上記「所定の放物面」は、光軸を中心軸とする放物面であってもよいし、光軸以外の軸線を中心軸とする放物面であってもよい。ここで「放物面」とは、互いに直交する2つの断面の形状がいずれも放物線で構成された曲面を意味するものであって、両放物線の焦点距離は同一の値に設定されていてもよいし異なる値に設定されていてもよい。
上記「複数の反射素子」は、所定の放物面を基準面として形成されたものであれば、その反射素子と反射素子との境界部分は、段差や折れ曲がりによって不連続に形成されていてもよいし、滑らかにつながるように形成されていてもよい。
上記「側方照射用反射素子」は、反射面の車幅方向内側の側端縁上部において、光源からの光を他の反射素子よりも車幅方向外側へ向けて水平方向に拡散反射させるように形成されたものであれば、その外形形状、サイズ、表面形状等の具体的な構成は特に限定されるものではない。
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用前照灯は、ロービーム用配光パターンを形成するための光照射を行い得るように構成されているが、そのリフレクタの反射面が、所定の放物面を基準面として形成された複数の反射素子からなり、これら複数の反射素子のうち反射面の車幅方向内側の側端縁上部に位置する反射素子が、光源からの光を他の反射素子よりも車幅方向外側へ向けて水平方向に拡散反射させる側方照射用反射素子として構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、上記ロービーム用配光パターンは、側方照射用反射素子以外の反射素子からの反射光により形成される基本配光パターンの側方に、側方照射用反射素子からの反射光により形成される付加配光パターンが付加された配光パターンとなる。その際、側方照射用反射素子は、反射面の車幅方向内側の側端縁上部に位置しており、光源からの光を他の反射素子よりも車幅方向外側へ向けて水平方向に拡散反射させるようになっているので、付加配光パターンは基本配光パターンの車幅方向外側において水平方向に細長く延びる比較的明るい配光パターンとなる。
したがって、この付加配光パターンを、配光ムラが目立ちやすい車両斜め前方路面の手前側領域を避けてその遠方領域に形成するようにすれば、車両斜め前方路面に大きな配光ムラを発生させないようにした上で、曲線路等での旋回走行時における遠方視認性を十分に確保することができる。
このように本願発明によれば、ロービーム用配光パターンを形成するための光照射を行い得るように構成された車両用前照灯において、簡単かつ安価な灯具構成により、大きな配光ムラを発生させることなく車両斜め前方路面の視認性を高めることができる。
また本願発明においては、側方照射用反射素子が、反射面における車幅方向内側の側端縁全体ではなく側端縁上部に位置しているので、この側方照射用反射素子の下方に隣接する反射素子を、ロービーム用配光パターンのホットゾーンやカットオフラインを形成するために利用することができる。
ところで、多くの車両用前照灯は、その表面形状が車幅方向内側から車幅方向外側へ向けて後方へ回り込むように形成されているので、リフレクタの反射面の奥行き寸法を、車幅方向外側の反射領域に対して車幅方向内側の反射領域の方が大きい値となるように設定することが容易に可能である。したがって本願発明のように、反射面の車幅方向内側の側端縁上部に形成された側方照射用反射素子からの反射光が、リフレクタ自体によって遮蔽されてしまうことなく車両斜め前方路面へ照射されるようにすることも容易に可能となる。
その際、光軸を含む水平断面内における反射面の奥行き寸法を、車幅方向外側の反射領域に対して車幅方向内側の反射領域が2倍以上の値になるように設定すれば、側方照射用反射素子からの反射光の側方照射角度をかなり大きな値に設定しても、反射光がリフレクタ自体によって遮蔽されてしまわないようにすることができる。
上記構成において、リフレクタの反射面の基準面を構成する放物面の焦点距離を20mm以下の値に設定すれば、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、上記放物面の焦点距離は、通常25mm程度であるが、これよりも大幅に小さい20mm以下の値に設定することにより、反射面の立体角を十分に確保して灯具効率を高めることができる。そしてこれにより、複数の反射素子のうちの一部が側方照射用反射素子として付加配光パターンの形成に用いられているにもかかわらず、他の反射素子によって形成される基本配光パターンの明るさを十分に確保することができる。また、このように焦点距離を小さい値に設定した場合には、リフレクタの側端縁に位置する反射領域からの反射光により形成される光源像は一層小さくて明るい像となるので、本願発明の構成を採用することが特に効果的である。
また上記構成において、側方照射用反射素子を、光源からの光を下方側へ拡散反射させるように構成すれば、車両斜め前方路面を遠方領域から手前側領域まで幅広く照射することができ、これにより交差点等での旋回走行時における前方視認性を高めることができる。また、このようにした場合には、付加配光パターンの明るさが緩和されるので、基本配光パターンの側端縁部分と付加配光パターンとの明るさの差を小さくすることができる。そしてこれにより、付加配光パターンが車両斜め前方路面において手前側へ拡張された形状になっているにもかかわらず、大きな配光ムラを発生させないようにすることができる。
ところで、一般に車両用前照灯は、車両前端部の左右両側に1対の灯具として設けられるが、これら各灯具に対して本願発明の構成を適用すれば、左右いずれの方向へ旋回する場合においても、旋回方向前方路面を十分に照射して、その視認性を高めることができる。
その際、車両の旋回半径は、路肩側への旋回走行時よりも対向車線側への旋回走行時の方が大きくなるので、側方照射用反射素子からの反射光の側方照射角度を、路肩側の灯具よりも対向車線側の灯具の方が大きい値となるように設定すれば、左右いずれの方向へ旋回する場合においても旋回方向前方路面を的確に照射することができる。
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
まず、本願発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用前照灯を示す正面図であり、図2は、図1のII-II 線断面図である。
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用前照灯10Rは、車両前端部右側(すなわち対向車線側)に設けられる灯具であって、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、リフレクタユニット20が、図示しないエイミング機構を介して上下方向および左右方向に傾動し得るように収容された構成となっている。そして、上記灯室内には、リフレクタユニット20を囲むインナパネル16が、透光カバー14に沿って設けられている。
透光カバー14は、その車幅方向外側端部が後方側へ大きく回り込むように形成されている。
リフレクタユニット20は、図3に単品でも示すように、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置された光源バルブ22と、この光源バルブ22の後方側に配置されたリフレクタ24とを備えてなっている。そして、このリフレクタユニット20は、上記エイミング機構によるエイミング調整が完了した段階では、その光軸Axが車両前後方向に対して0.5〜0.6°程度下向きの方向に延びるように構成されている。
光源バルブ22は、インナシェードが近接配置されたロービーム用フィラメント22aと、その後方近傍に配置されたハイビーム用フィラメント22bとを備えた、いわゆるH4タイプのハロゲンバルブであって、その後端部においてリフレクタ24に固定されている。
リフレクタ24は、その反射面24aが、光軸Axを中心軸とする回転放物面Pを基準面として形成された複数の反射素子24sからなり、これら各反射素子24sにより、光源バルブ22からの光を前方へ向けて拡散偏向反射させるようになっている。
その際、反射面24aの基準面を構成する回転放物面Pは、ハイビーム用フィラメント22aの前端近傍位置を焦点としており、その焦点距離は20mm以下の値(例えば19mm程度の値)に設定されている。また、光軸Axを含む水平断面内における反射面24aの奥行き寸法は、車幅方向外側の反射領域の奥行き寸法Doに対して車幅方向内側の反射領域の奥行き寸法Diが2倍以上の値に設定されている。
この反射面24aは、その光軸Axの左側(灯具正面視では右側)に位置する反射領域における、光軸Axを含む水平面と交差する水平ラインL1の上下近傍領域が、ロービーム用配光パターンの水平カットオフライン(これについては後述する)を形成するための水平カットオフライン形成領域として構成されており、また、光軸Axの右側に位置する反射領域における、光軸Axを含む15°下向きの平面と交差する斜めラインL2の上下近傍領域が、ロービーム用配光パターンの斜めカットオフライン(これについても後述する)を形成するための斜めカットオフライン形成領域として構成されている。
この反射面24aを構成する複数の反射素子24sは、光軸Ax近傍に位置する反射素子24s1からの反射光の左右方向拡散角度が最も大きく、反射面24aの左右両側の側端縁に近づくに従って反射素子24s1からの反射光の左右方向拡散角度が徐々に小さくなるように設定されている。ただし、反射面24aの車幅方向内側の側端縁上部に位置する反射素子24s1は、光源バルブ22からの光を他の反射素子24sよりも車幅方向外側へ向けて水平方向に拡散反射させる側方照射用反射素子として構成されている。
具体的には、この側方照射用反射素子24s1以外の反射素子24sは、その反射光の左右方向の最大拡散角度が左右各々30°程度の値となるように形成されているのに対して、側方照射用反射素子24s1は、その反射光の最大側方照射角度θR が60°程度の値となるように形成されている。これを実現するため、側方照射用反射素子24s1は、回転放物面Pから前方へ大きく突出するように形成されている。その際、側方照射用反射素子24s1は、光源バルブ22からの光を上下方向には拡散させないよう、その鉛直断面形状が放物線形状に維持されている。なお、側方照射用反射素子24s1からの反射光の最小側方照射角度は、それ以外の反射素子24sの最大拡散角度よりもある程度小さい値(例えば20°程度の値)に設定されている。
図4は、本実施形態に係る車両用前照灯10Rから前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であって、同図(a)がロービーム用配光パターン、同図(b)がハイビーム用配光パターンを示している。
同図(a)に示すロービーム用配光パターンPLは、ロービーム用フィラメント22aの点灯により形成される左配光の配光パターンであって、側方照射用反射素子24s1以外の反射素子24sからの反射光により形成される基本配光パターンPLOの右側方(すなわち車幅方向外側)に、側方照射用反射素子24s1からの反射光により形成される付加配光パターンPLaが付加された配光パターンとなっている。
基本配光パターンPLOは、上端縁に水平カットオフラインCL1とこの水平カットオフラインCL1から15°で立ち上がる斜めカットオフラインCL2とを有しており、両カットオフラインCL1、CL2の交点であるエルボ点Eは、灯具正面方向の消点であるH−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。この基本配光パターンPLOは、その左右方向の最大拡散角度が左右各々30°程度であって、その左右方向中心部には、エルボ点Eを囲むようにして高光度領域であるホットゾーンHZLが形成されている。その際、各反射素子24sからの反射光の左右方向拡散角度は、光軸Ax近傍に位置する反射素子24s1が最も大きく、反射面24aの車幅方向内側の側端縁に近づくに従って徐々に小さくなるように設定されているので、基本配光パターンPLOは、ホットゾーンHZLからそのその周縁部へ向けて徐々に明るさが減少する滑らかな光度分布を有している。
付加配光パターンPLaは、リフレクタ24の反射面24aにおける車幅方向内側の側端縁上部に位置する側方照射用反射素子24s1からの反射光により形成されるので、基本配光パターンPLOの右側方において水平方向に細長く延びる比較的明るい配光パターンとなる。この付加配光パターンPLaは、HーVを通る鉛直線であるVーV線から右側方20〜60°程度の角度範囲にわたって拡散している。この付加配光パターンPLaの上端縁は、基本配光パターンPLOの水平カットオフラインCL1と略同じ高さに位置しているが、これは側方照射用反射素子24s1の向きを僅かに上向きに設定することにより実現されている。そしてこれにより、付加配光パターンPLaを、配光ムラが目立ちやすい車両斜め前方路面の手前側領域を避けてその遠方領域に形成し、車両斜め前方路面に大きな配光ムラを発生させないようにした上で、曲線路等での右旋回走行時における遠方視認性を十分に確保するようになっている。
一方、同図(b)に示すように、ハイビーム用配光パターンPHは、ハイビーム用フィラメント22bの点灯により形成される配光パターンであって、側方照射用反射素子24s1以外の反射素子24sからの反射光により形成される基本配光パターンPHOの右側方に、側方照射用反射素子24s1からの反射光により形成される付加配光パターンPHaが付加された配光パターンとなっている。
基本配光パターンPHOは、H−Vを中心として左右方向に拡がっており、H−Vの近傍領域にホットゾーンHZHが形成されている。この基本配光パターンPHOの左右方向の最大拡散角度は、基本配光パターンPLOよりもやや小さい値となっている。
付加配光パターンPHaは、付加配光パターンPLaと同様、基本配光パターンPHOの右側方において水平方向に細長く延びる比較的明るい配光パターンとなっている。この付加配光パターンPHaは、付加配光パターンPLaと略同じ拡散角度を有しているが、付加配光パターンPLaに対して左斜め上方に多少変位している。これはハイビーム用フィラメント22bとロービーム用フィラメント22aとの位置ズレに起因するものである。そして、このように付加配光パターンPHaが付加配光パターンPLaに対して左斜め上方に変位していることにより、曲線路等での旋回走行時における遠方視認性が一層高められることとなる。
以上詳述したように、本実施形態に係る車両用前照灯10Rは、ロービーム用配光パターンPLを形成するための光照射を行い得るように構成されているが、そのリフレクタ24の反射面24aが、光軸Axを中心軸とする回転放物面Pを基準面として形成された複数の反射素子24sからなり、これら複数の反射素子24sのうち反射面24aの車幅方向内側の側端縁上部に位置する反射素子24s1が、光源バルブ22からの光を他の反射素子24sよりも車幅方向外側へ向けて水平方向に拡散反射させる側方照射用反射素子として構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、ロービーム用配光パターンPLは、側方照射用反射素子24s1以外の反射素子24sからの反射光により形成される基本配光パターンPLOの右側方に、側方照射用反射素子24s1からの反射光により形成される付加配光パターンPLaが付加された配光パターンとなる。その際、側方照射用反射素子24s1は、反射面24aの車幅方向内側の側端縁上部に位置しており、光源バルブ22からの光を他の反射素子24sよりも車幅方向外側へ向けて水平方向に拡散反射させるようになっているので、付加配光パターンPLaは基本配光パターンPLOの右側方において水平方向に細長く延びる比較的明るい配光パターンとなる。そして、この付加配光パターンPLaは、配光ムラが目立ちやすい車両右斜め前方路面の手前側領域を避けてその遠方領域に形成されるようになっているので、車両右斜め前方路面に大きな配光ムラを発生させないようにした上で、曲線路等での右旋回走行時における遠方視認性を十分に確保することができる。
このように本実施形態によれば、簡単かつ安価な灯具構成により、大きな配光ムラを発生させることなく車両右斜め前方路面の視認性を高めることができる。
また本実施形態においては、側方照射用反射素子24s1が、反射面24aにおける車幅方向内側の側端縁全体ではなく側端縁上部に位置しているので、この側方照射用反射素子24s1の下方に隣接する反射素子24sを、ロービーム用配光パターンPLのホットゾーンHZLや水平カットオフラインCL1を形成するために利用することができる。
本実施形態においては、光源バルブ22の点灯切換えによって、ロービーム用配光パターンを形成するための光照射とハイビーム用配光パターンPHを形成するための光照射とを選択的に行い得るように構成されているが、このハイビーム用配光パターンPHにおいても、付加配光パターンPHaが基本配光パターンPHOの右側方において水平方向に細長く延びる比較的明るい配光パターンとして形成されるので、曲線路等での右旋回走行時における遠方視認性を十分に確保することができる。
また、本実施形態に係る車両用前照灯10Rのように、その表面形状が車幅方向内側から車幅方向外側へ向けて後方へ回り込むように形成されている場合には、リフレクタ24の反射面24aの奥行き寸法を、車幅方向外側の反射領域に対して車幅方向内側の反射領域の方が大きい値となるように設定することが容易に可能であるので、本実施形態のように、反射面24aの車幅方向内側の側端縁上部に形成された側方照射用反射素子24s1からの反射光が、リフレクタ24自体によって遮蔽されてしまうことなく車両右斜め前方路面へ照射されるようにすることも容易に可能となる。
その際、本実施形態においては、光軸Axを含む水平断面内における車幅方向外側の反射領域の奥行き寸法Doに対して車幅方向内側の反射領域の奥行き寸法Diが2倍以上の値に設定されているので、側方照射用反射素子24s1からの反射光の側方照射角度を本実施形態のようにかなり大きな値に設定しても、反射光がリフレクタ24自体によって遮蔽されてしまわないようにすることができる。
本実施形態においては、リフレクタ24の反射面24aの基準面を構成する回転放物面Pの焦点距離が20mm以下の値に設定されているので、反射面24aの立体角を十分に確保して灯具効率を高めることができる。そしてこれにより、複数の反射素子24sのうちの一部が側方照射用反射素子24s1として付加配光パターンPLaの形成に用いられているにもかかわらず、他の反射素子24sによって形成される基本配光パターンPLOの明るさを十分に確保することができる。また、このように焦点距離が小さい値に設定されている場合には、リフレクタ24の側端縁に位置する側方照射用反射素子24s1からの反射光により形成される光源像が一層小さくて明るい像となるので、本実施形態の構成を採用することが特に効果的である。
次に、本願発明の第2実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係る車両用前照灯を示す正面図であり、図6は、図5のVI-VI 線断面図である。
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用前照灯10Lは、車両前端部左側(すなわち路肩側)に設けられる灯具であって、その構成要素の多くは車両用前照灯10Rの構成要素と左右対称の関係となっているが、そのリフレクタユニット120に関しては、その構成が車両用前照灯10Rのリフレクタユニット20と一部異なっている。
すなわち、このリフレクタユニット120は、図7に単品でも示すように、そのリフレクタ124の形状自体はリフレクタ24と左右対称であるが、その反射面124aを構成する複数の反射素子124sは、リフレクタユニット20の反射面24aを構成する複数の反射素子24sを平行移動させた配置となっている。ただし、側方照射用反射素子124s1については、側方照射用反射素子24s1と左右対称の位置関係で、反射面124aの車幅方向内側の側端縁上部に配置されている。そして、この側方照射用反射素子124s1により光源バルブ22からの光を他の反射素子124sよりも車幅方向外側へ向けて水平方向に拡散反射させるようになっている。
図8は、本実施形態に係る車両用前照灯10Lから前方へ照射される光により上記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であって、同図(a)がロービーム用配光パターン、同図(b)がハイビーム用配光パターンを示している。
同図(a)に示すロービーム用配光パターンPLは、図4(a)に示すロービーム用配光パターンPLと略同様の基本配光パターンPLOの左側方に、図4(a)に示す付加配光パターンPLaを左右反転させた形状の付加配光パターンPLaが付加された配光パターンとなっている。
一方、同図(b)に示すハイビーム用配光パターンPHは、図4(b)に示すハイビーム用配光パターンPHと略同様の基本配光パターンPHOの左側方に、図4(b)に示す付加配光パターンPHaを左右反転させた形状の付加配光パターンPHaが付加された配光パターンとなっている。
本実施形態の構成を採用することにより、ロービーム用配光パターンPLおよびハイビーム用配光パターンPHいずれの配光パターンで光照射を行う場合においても、曲線路等での左旋回走行時における遠方視認性を十分に確保することができる。
また本実施形態においては、側方照射用反射素子124s1が、反射面124aにおける車幅方向内側の側端縁全体ではなく側端縁上部に位置しているので、この側方照射用反射素子124s1の下方に隣接する反射素子124sを、ロービーム用配光パターンPLのホットゾーンHZLや斜めカットオフラインCL2を形成するために利用することができる。
そして、車両として、第1実施形態に係る車両用前照灯10Rと第2実施形態に係る車両用前照灯10Lとを備えた構成とすることにより、左右いずれの方向へ旋回する場合においても、旋回方向前方路面を十分に照射して、その視認性を高めることができる。
次に、上記第1および第2実施形態の変形例について説明する。
図9は、第1実施形態の変形例に係るリフレクタユニット30を示す、図3と同様の図である。
同図に示すように、このリフレクタユニット30のリフレクタ34は、その反射面34aを構成する側方照射用反射素子34s1以外の反射素子34sについては、反射素子24sと全く同様の構成であるが、側方照射用反射素子34s1が光源バルブ22からの光を下方側へ拡散反射させるように構成されている。これを実現するため、側方照射用反射素子34s1の鉛直断面形状は、放物線形状に比して、その下端縁から上端縁へ向けて曲率が徐々に大きくなる形状に設定されている。
図10は、本変形例に係るリフレクタユニット30を備えた車両用前照灯10Lから前方へ照射される光により上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンを透視的に示す図である。
このロービーム用配光パターンPLは、基本配光パターンPLOの右側方に付加配光パターンPLaが付加された配光パターンとなっている。その際、基本配光パターンPLOは、図4(a)に示す基本配光パターンPLOと全く同様であり、付加配光パターンPLaは、図4(a)に示す付加配光パターンPLaを手前側へ拡張させたような形状となっている。
本変形例の構成を採用することにより、付加配光パターンPLaは車両右斜め前方路面を遠方領域から手前側領域まで幅広く照射する配光パターンとして形成されるので、交差点等での右折旋回走行時における前方視認性を高めることができる。また、このようにすることにより、付加配光パターンPLaの明るさが緩和されるので、基本配光パターンPLOの右側端縁部分と付加配光パターンPLaとの明るさの差を小さくすることができる。そしてこれにより、付加配光パターンPLaが車両右斜め前方路面において手前側へ拡張された形状になっているにもかかわらず、大きな配光ムラを発生させないようにすることができる。
一方、図11は、第2実施形態の変形例に係るリフレクタユニット130を示す、図7と同様の図である。
同図に示すように、このリフレクタユニット130のリフレクタ134は、その反射面134aを構成する側方照射用反射素子134s1以外の反射素子134sについては、反射素子124sと全く同様の構成であるが、側方照射用反射素子134s1が光源バルブ22からの光を下方側へ拡散反射させるように構成されている。これを実現するため、側方照射用反射素子134s1の鉛直断面形状は、放物線形状に比して、その下端縁から上端縁へ向けて曲率が徐々に大きくなる形状に設定されている。
その際、側方照射用反射素子134s1からの反射光の側方照射角度は、側方照射用反射素子34s1からの反射光の側方照射角度よりも小さい値に設定されている。
具体的には、側方照射用反射素子34s1からの反射光は、その最大側方照射角度θR が60°程度、最小側方照射角度が20°程度の値に設定されているのに対し、側方照射用反射素子134s1からの反射光は、その最大側方照射角度θL が50°程度、最小側方照射角度が15°程度の値に設定されている。
図12は、本変形例に係るリフレクタユニット130を備えた車両用前照灯10Lから前方へ照射される光により上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンを透視的に示す図である。
このロービーム用配光パターンPLは、基本配光パターンPLOの左側方に、付加配光パターンPLaが付加された配光パターンとなっている。その際、基本配光パターンPLOは、図8(a)に示す基本配光パターンPLOと全く同様であり、付加配光パターンPLaは、図8(a)に示す付加配光パターンPLaよりもやや右寄りの位置においてこれを手前側へ拡張させたような形状となっている。
本変形例の構成を採用することにより、付加配光パターンPLaは車両左斜め前方路面を遠方領域から手前側領域まで幅広く照射する配光パターンとして形成されるので、交差点等での左折旋回走行時における前方視認性を高めることができる。しかも、このようにすることにより、付加配光パターンPLaの明るさが緩和されるので、基本配光パターンPLOの左側端縁部分と付加配光パターンPLaとの明るさの差を小さくすることができる。そしてこれにより、付加配光パターンPLaが車両左斜め前方路面において手前側へ拡張された形状になっているにもかかわらず、大きな配光ムラを発生させないようにすることができる。
上記第1および第2実施形態の変形例の構成を併用することにより、交差点等を左右いずれの方向へ旋回する場合においても、旋回方向前方路面を十分に照射して、その視認性を高めることができる。
その際、車両の旋回半径は左旋回走行時よりも右旋回走行時の方が大きくなるが、上記両変形例においては、右側灯具の側方照射用反射素子34s1からの反射光の側方照射角度が、左側灯具の側方照射用反射素子134s1からの反射光の側方照射角度よりも大きい値となるように設定されているので、左右いずれの方向へ旋回する場合においても旋回方向前方路面を的確に照射することができる。
上記各実施形態および各変形例においては、リフレクタ24、124、34、134の反射面24a、124a、34a、134aが、回転放物面Pを基準面として形成されているものとして説明したが、このようにする代わりに、水平断面形状を構成する放物線の焦点距離と鉛直断面形状を構成する放物線の焦点距離とが異なる値に設定された放物面を上記基準面として採用することも可能であり、このようにした場合においても、上記各実施形態および各変形例と同様の作用効果を得ることができる。その際、これら2つの放物線の焦点距離を20mm以下の値に設定すれば、反射面の立体角を十分に確保して灯具効率を高めることができる。
なお、上記各実施形態および各変形例においては、光源としてH4タイプのハロゲンバルブ22が用いられているものとして説明したが、これ以外のハロゲンバルブあるいは放電バルブが用いられた構成とすることも可能である。