液滴吐出装置1は、図2に示すように、材料液を液滴として吐出するヘッド部20を有するヘッド機構部2と、ヘッド部20から吐出された液滴の吐出対象であるワーク30を有するワーク機構部3と、通常ヘッド部20に主として液滴となる材料液を供給する材料液供給部4と、ヘッド部20の保守を行うメンテナンス機構部5と、これら各機構部および供給部を総括的に制御する制御部6を備えている。この場合、材料液供給部4は洗浄機構としての機能を兼ね備えている。
液滴吐出装置1は、床上に設置された複数の支持脚8と、支持脚8の上側に設置された定盤9を備えている。定盤9の上側には、ワーク機構部3が定盤9の長手方向(X軸方向)に延在するように配置されており、ワーク機構部3の上方には、定盤9に固定された2本の支持柱22で支持されているヘッド機構部2が、ワーク機構部3と直交する方向(Y軸方向)に延在して配置されている。また、定盤9の一方の端部上には、ヘッド機構部2のヘッド部20から連通して主に材料液を供給する材料液供給部4が配置されている。そして、ヘッド機構部2の一方の支持柱22近傍には、メンテナンス機構部5がワーク機構部3と並んでX軸方向に配置されている。さらに、定盤9の下側には、制御部6が収容されている。
ヘッド機構部2は、材料液を吐出するヘッド部20と、ヘッド部20を懸架したヘッドキャリッジ21と、ヘッドキャリッジ21のY軸方向への移動をガイドするY軸ガイド23と、Y軸ガイド23の側方にY軸ガイド23と平行に設置されたY軸リニアモータ24と、を備えている。
ワーク機構部3は、ヘッド機構部2の下方に位置し、ヘッド機構部2とほぼ同様の構成でX軸方向に配置されており、ワーク30と、ワーク30を載置しているワーク載置台31と、ワーク載置台31の移動をガイドするX軸ガイド33と、X軸ガイド33の側方にX軸ガイド33と平行に設置されたX軸リニアモータ34と、を備えている。
また、ヘッド機構部2およびワーク機構部3には、図示していないが、ヘッド部20とワーク載置台31の移動した位置を検出する位置検出手段が、それぞれ備えられている。また、ヘッドキャリッジ21とワーク載置台31には、回転方向(いわゆるΘ軸)を調整する機構が組込まれ、ヘッド部20の中心を回転中心とした回転方向調整、およびワーク載置台31の回転方向調整が可能である。
これらの構成により、ヘッド部20とワーク30とは、それぞれY軸方向およびX軸方向に往復自在に移動することができる。まず、ヘッド部20の移動について説明する。ヘッド部20を懸架したヘッドキャリッジ21は、Y軸ガイド23に移動可能に取り付けられている。図示されていないが、ヘッドキャリッジ21からY軸リニアモータ24側へ張り出している突起部が、Y軸リニアモータ24と係合して駆動力を得ることにより、ヘッドキャリッジ21がY軸ガイド23に沿って任意の位置に移動する。同様に、ワーク載置台31に載置されたワーク30もX軸方向に自在に移動する。
このように、ヘッド部20は、Y軸方向の吐出位置まで移動して停止し、下方にあるワーク30のX軸方向の移動に同調して、液滴を吐出する構成となっている。X軸方向に移動するワーク30と、Y軸方向に移動するヘッド部20とを相対的に制御することにより、ワーク30上に所定の描画等を行うことができる。
この場合、ワーク載置台31をX軸方向に移動させるように設定しているが、ヘッド部20をX軸方向に移動させる構成でもよい。また、ヘッド部20を固定として、ワーク載置台31をX軸方向およびY軸方向に移動させる構成でもよいし、逆にワーク載置台31を固定とし、ヘッド部20をX軸方向およびY軸方向に移動させる構成であってもよい。
なお、ヘッド機構部2のY軸リニアモータ24が、Y軸ガイド23の両側に対になって配置され、ヘッドキャリッジ21を両側から駆動する構成にすれば、ヘッドキャリッジ21の両側からバランスよく駆動力が伝わり、ヘッドキャリッジ21の移動にとってより好ましい。ワーク機構部3のX軸リニアモータについても同様である。
次に、ヘッド部20に主として材料液を供給する材料液供給部4は、ヘッド部20に連通して材料液を供給する経路と、洗浄液を専用に供給する経路の2系統がある。材料液を供給する経路は、材料液タンク45と、流路切替バルブ41と、材料液ポンプ46と、Y軸ガイド23上のサブタンク25と、ヘッド部切替バルブ42と、材料液タンク45からヘッド切替バルブ42を経てヘッド部20までを上記順序で接続する流路チューブ49と、を備えている。洗浄液を専用に供給する経路は、洗浄液タンク43と、洗浄液ポンプ44と、洗浄液タンク43から洗浄液ポンプ44を経てヘッド部切替バルブ42までを接続する流路チューブ49と、を備えた第一の洗浄系統と、洗浄液タンク43から流路切替バルブ41までを流路チューブ49で接続する第二の洗浄系統と、を有している。
この構成の材料液供給部4において、ヘッド部切替バルブ42は、材料液を供給する経路と、洗浄液を専用に供給する第一の洗浄系統の経路と、を選択して、いずれかの液をヘッド部20へ供給する。流路切替バルブ41は、通常、材料液を選択して材料液を供給する経路へ供給するが、洗浄時には第二の洗浄系統の洗浄液を選択して、材料液を供給する経路へ洗浄液を供給することができる。流路切替バルブ41、洗浄液ポンプ44、および材料液ポンプ46は定磐9上に設置されている。また、サブタンク25と、ヘッド部切替バルブ42とは、Y軸ガイド23上に設置され、ヘッド部20へ重力により材料液の自然供給がなされる。従って、サブタンク25の材料液量は、サブタンク25に設置された液面センサの検出結果により管理され、具体的には、サブタンク25底面から上部液面までの高さが1mm以内の変動となるように、材料液ポンプ46によって供給調整されている。
材料液タンク45は一本だけでなく複数本備えることも可能である。この場合、複数のタンクは、それぞれ専用の流路チューブによって、流路切替バルブ41へ接続されている。それにより、色や機能の異なる材料液を、流路切替バルブ41の操作で容易に選択することができる。なお、材料液の変更時には、流路切替バルブ41からヘッド部20までの材料液を供給する経路を洗浄しておくことが必要である。
ヘッド部20は、図3(a)に示すように互いに同じ構造を有する複数の吐出ヘッド26を保持している。ここで、図3(a)は、ヘッド部20をワーク載置台31側から観察した図である。ヘッド部20には6個の吐出ヘッド26からなる列が、それぞれの吐出ヘッド26の長手方向がX軸方向に対して角度をなすように2列配置されている。また、材料液を吐出するための吐出ヘッド26は、図3(b)に示すように、それぞれが吐出ヘッド26の長手方向に延びる2つのノズル列28、28を有している。1つのノズル列は、それぞれ180個のノズル27が一列に並んだ列のことであり、このノズル列28、28の方向に沿ったノズル27の間隔は、約140μmである。2つのノズル列28、28間のノズル27はそれぞれ半ピッチ(約70μm)ずれて配置されている。各吐出ヘッド26はノズル27がY軸方向に一定ピッチで連続するように配置されており、吐出ヘッド26のX軸方向に対して角度を調整すれば、ピッチを変えることができる。
この配列パターンは一例であり、各種のワーク30に対し吐出ヘッド26を専用部品とすれば、ワーク30に合致したノズルの配設をすれば良い。あるいは、6個の吐出ヘッド26の列を一つの吐出ヘッドで構成しても良い。すなわち、吐出ヘッド26の個数や列数、さらに配列パターンは任意に設定できる。いずれにしても、12個の吐出ヘッド26の全吐出ノズル27によるドットが、Y軸方向において連続していればよい。また、ヘッド部切替バルブ42は、各吐出ヘッド26毎に取り付けても、複数の吐出ヘッド26に対して一個取り付ける構成であっても良い。
図4(a)(b)に示すように、それぞれの吐出ヘッド26は、振動板63と、ノズルプレート64とを、備えている。振動板63と、ノズルプレート64との間には、材料液タンク45から孔67を介して供給される材料液が常に充填される液たまり65が位置している。また、振動板63と、ノズルプレート64との間には、複数の隔壁61が位置している。そして、振動板63と、ノズルプレート64と、1対の隔壁61とによって囲まれた部分がキャビティ60である。キャビティ60はノズル27に対応して設けられているため、キャビティ60の数とノズル27の数とは同じである。キャビティ60には、1対の隔壁61間に位置する供給口66を介して、液たまり65から材料液が供給される。
振動板63上には、それぞれのキャビティ60に対応して、振動子62が位置する。振動子62は、ピエゾ素子62cと、ピエゾ素子62cを挟む1対の電極62a、62bとから成る。この1対の電極62a、62bに駆動電圧を与えることで、対応するノズル27から材料液が液滴10となって吐出される。なお、ノズル27のそれぞれから吐出される液滴10の体積は、0pl〜42pl(ピコリットル)の間で可変である。なお、材料液を吐出させるために、振動子62の代わりに電気熱変換素子を用いてもよく、これは電気熱変換素子による材料液の熱膨張を利用して、材料液を吐出する構成である。
メンテナンス機構部5は、図2に示すように、キャッピングユニット56、ワイピングユニット57、およびフラッシングユニット58のメンテナンスユニットを備えている。さらに、メンテナンスユニットを載置するメンテキャリッジ51と、メンテキャリッジ51の移動をガイドするメンテキャリッジガイド52と、メンテキャリッジ51と一体の螺合部55と、螺合部55が螺合するボールねじ54と、ボールねじ54を回転させるメンテモータ53と、を備えている。これにより、メンテモータ53が正逆回転すると、ボールねじ54が回転し、螺合部55を介してメンテキャリッジ51が、X軸方向に移動する。メンテキャリッジ51がヘッド部20のメンテナンスのために移動するときには、Y軸ガイド23に沿ってヘッド部20が移動して、メンテナンスユニットの直上部に臨んでいる。
メンテナンスユニットのキャッピングユニット56は、液滴吐出装置1が稼動していない時に、ヘッド部20の12個の吐出ヘッド26のそれぞれと密着してキャッピングし、材料液が乾燥してノズル27が詰まるなどの不具合が生じないようにする。ヘッド部20がキャッピングユニットの直上へ位置すると、キャッピングユニットはエレベータ機構により上昇し吐出ヘッド26と密着する。また、キャッピングユニット56は吸引ポンプと連動してノズル27から材料液、洗浄液を高速で吸引することができる。この機能により、吐出ヘッド26や流路チューブ49内に洗浄液などを高速で通過させて、流路内の付着物等を洗い流し、流路が塞がれるような事態を未然に防ぐ。ワイピングユニット57は、材料液の連続吐出後やキャッピング時にノズル27に付着した材料液などを、洗浄液を含むワイピング布で拭い、全ノズルの清浄な状態を維持する。微小な液滴10を吐出するノズル27は、材料液がノズル27先端に付着して残っていると、液滴10がまっすぐに吐出しないなどの不具合が生じる場合があり、ワイピングはこのような現象を防げる。フラッシングユニット58は、液滴吐出装置1の稼動開始時やワーク30への加工前に、ノズル27から吐出される材料液を受け、ノズル27の吐出状態を確認する。
これらのメンテナンスユニットにより、液滴吐出装置1の非稼動時やワーク30を交換載置している加工待ち時などに、吐出ヘッド26の状態を保全して良好な吐出状態を保つことができる。
次に、以上述べた構成を制御する制御部6について図5を参考に説明する。制御部6は、指令部70と駆動部80とを備え、指令部70は、CPU72、ROM73、RAM74および入出力インターフェイス71からなり、CPU72が入出力インターフェイス71を介して入力される各種信号を、ROM73、RAM74のデータに基づき処理し、入出力インターフェイス71を介して駆動部80へ制御信号を出力して、それぞれを制御する。
駆動部80は、ヘッドドライバ81、モータドライバ82、ポンプドライバ83、バルブドライバ84、およびメンテドライバ85から構成されている。モータドライバ82は、指令部70の制御信号により、X軸リニアモータ34、Y軸リニアモータ24を制御し、ワーク30、ヘッド部20の移動を制御する。さらに、メンテモータ53を制御してメンテナンス機構部5の必要なユニットをメンテナンス位置へ移動させる。ヘッドドライバ81は、吐出ヘッド26からの材料液の吐出を制御し、モータドライバ82の制御と同調して、ワーク30上に所定の描画が行えるようにする。また、ポンプドライバ83は、材料液の吐出状態に対応して材料液ポンプ46を制御し、吐出ヘッド26への材料液供給を最適に制御し、洗浄時には洗浄液ポンプ44を制御して吐出ヘッド26へ洗浄液を供給する。バルブドライバ84は、ヘッド切替バルブ41と流路切替バルブ42とを制御して、ヘッド部20へ材料液あるいは洗浄液のどちらかを供給する。そして、メンテドライバ85は、メンテナンス機構部5のキャッピングユニット56、ワイピングユニット57およびフラッシングユニット58を制御して、吐出ヘッド26のノズル27を常に良好な状態に保つ。
指令部70は、ヘッドドライバ81を介して、複数の振動子62のそれぞれに互いに独立な信号を与えるように構成されている。このため、ノズル27から吐出される液滴10の体積は、ヘッドドライバ81からの信号に応じてノズル27毎に制御される。さらに、ノズル27のそれぞれから吐出される液滴10の体積は、0pl〜42plの間で可変であり、液滴10の体積の選択が、この範囲内で自由に選択できるメリットがある。
以上、洗浄機構を備えた液滴吐出装置1について説明をした。さらに、洗浄機構について、図1に基づき詳細に説明する。洗浄機構は、吐出装置を一定期間使用した後、あるいは材料液の種類を変更する時に、吐出部や材料液の供給経路を自動的に洗浄する機構である。液滴吐出装置1においては、材料液供給部4がこれに該当する。
洗浄機構は、洗浄液を専用に供給する2つの系統からなり、吐出ヘッド26を直接洗浄する第一の洗浄系統と、材料液の供給経路に洗浄液を供給する第二の洗浄系統と、を備えている。概説した材料液の供給経路の詳細は、材料液を貯蔵する材料液タンク45と、流路切替バルブ(第2のバルブ)41と、材料液タンク45から流路切替バルブ41へ連通する流路チューブ49aと、材料液を吸引・排出する材料液ポンプ46と、流路切替バルブ41から材料液ポンプ46へ連通する流路チューブ4eと、吐出ヘッド26上方のサブタンク25と、材料液ポンプ46からサブタンク25を連通する流路チューブ49fと、ヘッド切替バルブ(第1のバルブ)42と、サブタンク25からヘッド切替バルブ42へ連通する流路チューブ49gと、ヘッド切替バルブ42から吐出ヘッド26へ連通する流路チューブ49hとを有している。
また、洗浄液を専用に供給する経路は、洗浄液を貯蔵する洗浄液タンク43と、洗浄液タンク43からヘッド部切替バルブ42へ連通する流路チューブ49cと、流路チューブ49cに設けられている図示されていないポンプ又は吸引機構と、を有する第一の洗浄系統と、洗浄液タンク43と流路切替バルブ41とを連通している流路チューブ49bを有する第二の洗浄系統とから成っている。流路切替バルブ41は、流路チューブ49aからの材料液あるいは流路チューブ49bからの洗浄液のいずれかを選択して、流路チューブ4eへ供給する機能を持つ。同様に、ヘッド切替バルブ42は、流路チューブ49gからの材料液あるいは洗浄液と流路チューブ49cからの洗浄液とのいずれかを選択して、流路チューブ49hへ供給する機能を持つ。
ここで流路チューブ49のうち、ヘッド部切替バルブ42と吐出ヘッド26を連通する流路チューブ49hについては、吐出ヘッド26の移動に追随するための柔軟性が必要である。他の流路チューブ49は、柔軟性である必要がなく、液滴吐出装置1へ固定されていてもよい。なお、流路チューブ49は、耐久性の良いステンレス性のものを用い、ステンレス材と材料液との親液性を排除して材料液のスムーズな通過を図る目的で、ステンレス材の表面に撥水性の共析めっきが施されている。一定期間、液滴吐出装置1を稼動させると、流路チューブ49内に材料液が付着して材料液の流動を妨げる場合がある。特に、ワーク30へ材料液を吐出する吐出ヘッド26は、材料液とともに外部雰囲気に直接触れており、吐出時に材料液が汚れなどとなって付着しやすい。汚れなどが付着すると、液滴が曲がって吐出され、正しい描画がなされない。長期的には固着して吐出不良を起こす。事前にこのような事態を防ぐために、メンテナンスユニットによる保守だけでなく、洗浄液を用いた定期的な洗浄を行うことが有効である。
まず、この洗浄機構の洗浄液を専用に供給する第一の洗浄系統の経路によって、吐出ヘッド26を洗浄する場合について説明する。通常、流路切替バルブ41は、流路チューブ49aと流路チューブ4eとを連通して材料液を供給する状態にあり、洗浄液を供給する流路チューブ49b側(第二の洗浄系統)は閉鎖されている。ヘッド部切替バルブ42は、通常、流路チューブ49gと流路チューブ49hとを連通して材料液を供給する状態にあり、洗浄液を供給する流路チューブ49c側(第一の洗浄系統)は閉鎖されている。そこで、ヘッド部切替バルブ42を切り替えて、吐出ヘッド26へ繋がっている流路チューブ49hと洗浄液を供給する流路チューブ49cとを連通させる。このとき、吐出ヘッド26は、キャッピングユニット56と密着している状態である。ここで洗浄液を供給するポンプ又は吸引機構が作動して洗浄液タンク43から洗浄液が、流路チューブ49c、ヘッド部切替バルブ42、流路チューブ49hを経て吐出ヘッド26に供給される。さらに、キャッピングユニット56の吸引ポンプの作動により洗浄液が高速で流れ、直前まで吐出ヘッド26に充満していた材料液や付着物を洗い流して、吐出ヘッド26を清浄にする。
次いで、キャッピングユニット56の吸引ポンプ、そして洗浄液を供給するポンプ又は吸引機構を順次停止すると、吐出ヘッド26内に洗浄液が満たされる。吐出ヘッド26内に洗浄液が満たされた状態で液滴吐出装置1を停止することが、吐出ヘッド26の清浄さを保つことになり、次の液滴吐出装置1の稼動のために望ましい。再度稼動するときには、ヘッド部切替バルブ42を切り替え、材料液を供給する流路チューブ49gと流路チューブ49hとを連通させる。そして、キャッピングユニット56の吸引ポンプが作動し、吐出ヘッド26内の洗浄液が吸い出され、新しい材料液が吐出ヘッド26へ供給される。この後、吸引ポンプが停止してから、キャッピングユニット56が吐出ヘッド26から離反し、ワイピングユニット57が吐出ヘッド26へ移動して来て、キャッピング時にノズル27に付着した材料液を拭ってノズル27を清浄にし、次いでフラッシングユニット58が吐出ヘッド26へ移動して来て、吐出ヘッド26からの液滴10の吐出確認が行なわれる。一連のメンテナンス作業後、吐出ヘッド26はワーク30の加工を行うための所定位置へ移動する。
次に、材料液の供給経路および吐出ヘッド26を洗浄する場合について説明する。まず、キャッピングユニット56が吐出ヘッド26へ密着し、ヘッド部切替バルブ42が切り替わり、材料液を供給する流路チューブ49gと流路チューブ49hとが連通する。そして、キャッピングユニット56の吸引ポンプが作動し、吐出ヘッド26、流路チューブ49h、ヘッド部切替バルブ42、流路チューブ49g、サブタンク25の材料液がすべて吸引される。吸引された材料液は、材料タンク45へ戻され、無駄なく再利用される。
サブタンク25内の材料液がなくなったところで、一旦キャッピングユニット56の吸引ポンプが止まる。そして、流路切替バルブ41が切り替わり、洗浄液を供給する流路チューブ49b(第二の洗浄系統)と流路チューブ49eとが連通した状態で、材料液ポンプ46が作動して、洗浄液をサブタンク25へ導入する。洗浄液でサブタンク25が一定量満ちると、キャッピングユニット56の吸引ポンプが再び作動して、高速で洗浄液を吸引する。これらの一連の動作によって、洗浄液が、流路チューブ49b、流路切替バルブ41、流路チューブ49e、材料液ポンプ46、流路チューブ49f、サブタンク25、流路チューブ49g、ヘッド部切替バルブ42、流路チューブ49h、吐出ヘッド26を順に洗浄する。一定時間、洗浄を行った後、キャッピングユニット56の吸引ポンプおよび材料液ポンプ46を止め、次の加工開始まで、材料液の供給経路を洗浄液で満たしておく。
次の加工を開始する前に、流路切替バルブ41が切り替わり、材料液を供給する流路チューブ49aと流路チューブ49eとが連通した状態で、材料液ポンプ46が作動する。材料液ポンプ46の作動により、材料液タンク45から材料液が供給され、流路チューブ49e、材料液ポンプ46、流路チューブ49f内の洗浄液をサブタンク25へ押し出す。ここで材料液ポンプ46が停止し、キャッピングユニット56の吸引ポンプが作動して、吐出ヘッド26、流路チューブ49h、ヘッド部切替バルブ42、流路チューブ49g、サブタンク25の洗浄液が吸引される。サブタンク25内の洗浄液がなくなったところで、キャッピングユニット56の吸引ポンプが止まる。吸引ポンプが止まると材料液ポンプ46が作動して材料液をサブタンク25へ供給する。サブタンク25に材料液が一定量満ちると、キャッピングユニット56の吸引ポンプが、再び作動して材料液を吸引し、材料液の供給経路に材料液が充填された状態となって、吸引ポンプが停止する。なお、キャッピングユニット56の吸引ポンプ作動中、液滴吐出のためのピエゾ素子62cを含む振動子62は、振動させても良いし、止めておいても良い。
この後、キャッピングユニット56が吐出ヘッド26から離反し、ワイピングユニット57が吐出ヘッド26へ移動して来て、ノズル27を清浄にし、次いでフラッシングユニット58が吐出ヘッド26へ移動して来て、吐出ヘッド26からの液滴10の吐出確認が行なわれる。一連のメンテナンス作業後、吐出ヘッド26はワーク30の加工を行うための所定位置へ移動する。
この洗浄機構は、以上述べた洗浄を自動で行うことができ、吐出ヘッド26のみの洗浄あるいは材料液供給経路および吐出ヘッド26の洗浄のどちらかを選択すれば、制御部6がそれぞれの各作動工程を順に制御して、目的部分の洗浄が行える。材料液ポンプ46によって材料液が供給される、材料液タンク45からサブタンク25までの経路の流速に比べて、材料液の流速が遅く材料液の付着が生じやすいサブタンク25から吐出ヘッド26までの経路の洗浄が重要であり、この経路を含めた洗浄が、効率的に行える。具体的には、装置の分解組み立てなどの付帯作業が不必要で、洗浄時間も従来の五分の一の短時間で行える。さらに、定期的に洗浄を行うことにより、吐出ヘッド26の寿命を従来の3倍に伸ばすことが可能となる。
次に、以上説明した洗浄機構を備えた液滴吐出装置1を用いて製造した各種の高品質な表示装置について代表的な例を述べる。ここでは、表示装置として液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置およびプラズマ表示装置について記述する。
図6は、液晶表示装置の構成を示す断面図である。同図に示すように、液晶表示装置100は、偏光板121、127が対向して配置され、偏光板121の内側表面にはカラーフィルタ115、画素電極114が形成されており、偏光板121の外側表面にはバックライト120がとりつけられ、偏光板127の内側表面には対向基板126が形成されている。また、画素電極114および対向基板126間には、配向膜122、124が構成され、対向基板126の内側の面には、図示していないTFT(薄膜トランジスタ)素子と対向電極123とがマトリクス状に形成されている。そして、配向膜122、124の間に設置されたシール部128に囲まれた空間へ、液晶125を封入することにより、液晶表示装置100が構成されている。
本発明の液滴吐出装置1を適用することによって、カラーフィルタ115を効率的に製造することができる。この場合、図2の液滴吐出装置1のワーク30に相当するカラーフィルタ115は、図6(b)に示すように、マトリクス状に並んだ画素領域110を備え、それらの境目は、ディスペンサやスクリーン印刷、もしくはフォトリソグラフィにより形成された樹脂境界層112により区切られている。画素領域110の1つ1つには、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかのカラーフィルタ材料が導入されている。より具体的には、カラーフィルタ115は、図6(a)のように透光性のフィルタ基板111と、遮光性の樹脂境界層112とを備え、樹脂境界層112が形成されていない部分は画素領域110を構成している。さらに樹脂境界層112及び画素領域110の上面には、オーバーコート層113が形成されている。なお、画素領域110は、図6(b)のようなモザイク状の配列だけでなく、ストライプ状やデルタ状の配列であっても良い。
樹脂境界層12で区切られて形成された画素領域110には、液滴吐出装置1を用いて、図4に示すノズル27からR・G・B各色のカラーフィルタ材料の液滴10が選択的に吐出される。そして、塗布した液滴10を乾燥させることにより、各色の画素領域110を得るようにしている。また、オーバーコート層113も液滴吐出装置1を用いて、オーバーコート材料を吐出ヘッド26により吐出して形成することもできる。
図7に示す液晶表示装置100の製造装置180は、カラーフィルタの画素領域110のそれぞれに対して、対応するカラーフィルタ材料の液滴10を吐出する吐出装置を含んだ装置群である。各吐出装置は本発明の液滴吐出装置1である。製造装置180は、赤のカラーフィルタ材料が塗布されるべき画素領域110のすべてに、赤のカラーフィルタ材料を塗布する吐出装置140Rと、画素領域110上のカラーフィルタ材料を乾燥させる乾燥装置150Rと、緑のカラーフィルタ材料が塗布されるべき画素領域110のすべてに緑のカラーフィルタ材料を塗布する吐出装置140Gと、画素領域110上のカラーフィルタ材料を乾燥させる乾燥装置150Gと、同様に青のカラーフィルタ材料が塗布されるべき画素領域110のすべてに、青のカラーフィルタ材料をそれぞれ塗布および乾燥させる吐出装置140B、乾燥装置150Bと、各色のカラーフィルタ材料を再度加熱(ポストベーク)するオーブン160と、ポストベークされたカラーフィルタ材料の層の上にオーバーコート層113を設ける吐出装置140Cと、オーバーコート層113を乾燥させる乾燥装置150Cと、乾燥されたオーバーコート層113を再度加熱して硬化する硬化装置165とを備えている。さらに製造装置180は、吐出装置140R、乾燥装置150R、吐出装置140G、乾燥装置150G、吐出装置140B、乾燥装置150B、吐出装置140C、乾燥装置150C、硬化装置165の順番にカラーフィルタ115を搬送する搬送装置170も備えている。各吐出装置は洗浄機構を備えており、定期的な洗浄により常に良好な吐出状態を維持でき、装置群を有する製造装置180全体の連続稼動に貢献できる。なお、カラーフィルタ材料を用いる場合の洗浄機構に用いられる洗浄液は、ブチルカルビトールなどのブチル系溶液である。
次に、図6(b)に基づき液晶125の封入工程について簡単に説明する。第一基板130は既に説明した偏光板121と、カラーフィルタ115と画素電極114と、配向膜122とから成り、第二基板135は偏光板127と、対向基板126と、対向電極123と、配向膜124とから成っている。まず、第一基板130の表面に、液晶125の塗布領域を形成する矩形のシール部128を、ディスペンサやスクリーン印刷により形成する。このシール部128の内側に、液滴吐出装置1を用いて、カラーフィルタ材料と同様に液晶125を吐出ヘッド26のノズル27から吐出する。液晶125がシール部128の内側に満たされた後、第一基板130上のシール部128に第二基板135を張り合わせ、偏光板121へ光が入射するようにバックライト120を取り付けて液晶表示装置100ができあがる。
さらに、図8を参照して、エレクトロルミネッセンス表示装置について説明する。図8に示すように、エレクトロルミネッセンス表示装置200は、ガラス基板201上に回路素子部202が積層され、回路素子部202上に主体を為すエレクトロルミネッセンス表示素子204が積層されている。またエレクトロルミネッセンス表示素子204の上側には、不活性ガスの空間を存して封止用基板205が形成されている。
エレクトロルミネッセンス表示素子204には、無機物境界層212aおよびこれに重ねた有機物境界層212bにより境界層212が形成され、この境界層212により、図6(b)のカラーフィルタ材料の画素領域110に相当するマトリクス状の発光部220が画成されている。そして、各発光部220内には、下側から画素電極211、正孔注入/輸送層213、および赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの発光層210が積層され、且つ全体がCaやAl等の薄膜を複数層に亘って真空蒸着法などを用いて積層した対向電極203で覆われている。
発光層210の形成は、図6を基に既に説明したカラーフィルタ材料の塗布と同様に、本発明の液滴吐出装置1を用いて、境界層212で区切られて形成された各発光部220に、吐出ヘッド26のノズル27により、R・G・B各色のルミネッサンス発光材料を選択的に吐出して形成されている。そして、塗布したルミネッセンス発光材料を乾燥させることにより、各発光部220内に各色の発光層210R、210G、210Bが形成される。
図9に示すエレクトロルミネッセンス表示装置の製造装置230は、マトリックス状の発光部220のそれぞれに対して、対応するルミネッセンス発光材料を吐出する装置を含んだ装置群である。製造装置230は、画素電極211の上に正孔注入/輸送層213を形成する機能液を塗布する吐出装置260と、赤のルミネッセンス発光材料が塗布されるべき発光層210Rのすべてに赤のルミネッセンス発光材料を塗布する吐出装置240Rと、塗布した赤のルミネッセンス発光材料を乾燥させる乾燥装置250Rと、同様に、発光層210Gに緑のルミネッセンス発光材料をそれぞれ塗布および乾燥させる吐出装置240Gおよび乾燥装置250Gと、同様に、発光層210Bに青のルミネッセンス発光材料をそれぞれ塗布および乾燥させる吐出装置240Bおよび乾燥装置250Bとを備えている。さらに製造装置230は、吐出装置260、吐出装置240R、乾燥装置250R、吐出装置240G、乾燥装置250G、吐出装置240B、乾燥装置250B、の順番に発光層210を搬送する搬送装置270も備えている。各吐出装置は洗浄機構を備えた液滴吐出装置1であり、液晶表示装置100の製造装置180と同様、製造装置230全体の連続稼動に貢献できる。なお、ルミネッセンス発光材料を用いる液滴吐出装置1の洗浄機構に用いられる洗浄液は、エタノールである。
このように形成された発光部220と境界層212の上に、既述したように対向電極203を積層し、対向電極203と封止用基板205間に不活性ガスを封入してエレクトロルミネッセンス表示装置200ができあがる。
次に、図10を参照してプラズマ表示装置300について説明する。プラズマ表示装置は、背面基板315と前面基板316とを備えている。背面基板315は、格子状に配置された複数の蛍光部325を有している。詳細には、さらに支持基板301と、支持基板301上にストライプ状に形成された複数のアドレス電極302と、アドレス電極302を覆うように形成された誘電体ガラス層303と、格子状の形状を有するとともに複数の蛍光部領域を規定する境界層305とから成る。複数の蛍光部領域は格子状に位置しており、蛍光部領域からなる複数の列のそれぞれは、複数のアドレス電極302のそれぞれに対応する。アドレス電極302、誘電体ガラス層303はスクリーン印刷技術で形成される。
発光部325には、液滴吐出装置1を用い、既に説明したカラーフィルタ材料の塗布と同様に、境界層305で区切られて形成された各蛍光部領域内に、吐出ヘッド26のノズル27により、R・G・B各色のプラズマ蛍光材料を選択的に吐出して蛍光層320R、320G、320Bが形成されている。そして、塗布したプラズマ蛍光材料を乾燥させることにより、背面基板315が形成される。
図11に示す製造装置330は、背面基板315の蛍光部325のそれぞれに対して、対応するプラズマ蛍光材料を吐出する装置である。製造装置330は、赤のプラズマ蛍光材料が塗布されるべき蛍光層320Rのすべてに赤のプラズマ蛍光材料を塗布する吐出装置340Rと、塗布した赤のプラズマ蛍光材料を乾燥させる乾燥装置350Rと、同様に蛍光層320Gに緑のプラズマ蛍光材料をそれぞれ塗布および乾燥させる吐出装置340Gおよび乾燥装置350Gと、同様に蛍光層320Bに青のプラズマ蛍光材料をそれぞれ塗布および乾燥させる吐出装置340Bおよび乾燥装置350Bとを備えている。さらに製造装置330は、吐出装置340R、乾燥装置350R、吐出装置340G、乾燥装置350G、吐出装置340B、乾燥装置350Bの順番に背面基板315を搬送する搬送装置370も備えている。各吐出装置は洗浄機構を備えた液滴吐出装置1であり、常に良好な吐出状態を維持でき、製造装置330全体の連続稼動に貢献できる。なお、プラズマ蛍光材料を用いる液滴吐出装置1の洗浄機構に用いられる洗浄液は、エタノールである。
次に図10に示すように、背面基板315と、前面基板316とを貼り合わせてプラズマ表示装置300が得られる。この前面基板316は、ガラス基板313と、ガラス基板313上で互いに平行にパターニングされた表示電極および表示スキャン電極312と、表示電極および表示スキャン電極312とを覆うように形成された誘電体ガラス層311と、誘電体ガラス層311上に形成された保護層310とを有する。背面基板315と前面基板316とは、背面基板315のアドレス電極302と、前面基板316の表示電極・表示スキャン電極312とが、互いに直交するように位置合わせされている。そして、各境界層305で囲まれる領域には、所定の圧力で放電ガス314を封入する。
以上、本発明の洗浄機構によれば、材料液が流動する洗浄部分を取り外す等の必要が一切無く、洗浄作業開始を選択すれば自動的に洗浄が行われる。洗浄は、主要な洗浄部分のみの洗浄と、材料液が流動する経路を含めた洗浄と、を選択することができ、効率的に装置の洗浄が行える。
また、洗浄機構を備えた液滴吐出装置1によれば、主要部である材料液を吐出する吐出ヘッド26の洗浄と、材料液の供給経路を含めた洗浄と、を選択して洗浄できる。それぞれ定期的に実施することにより、材料液を安定して吐出ヘッド26から吐出でき、液滴吐出装置1の確実な稼動を維持できる。材料液の安定した吐出により、液晶表示装置の画素領域、エレクトロルミネッセンス表示装置の発光部、プラズマ表示装置の蛍光部などのカラー表示部に均一に材料液を塗布することができ、高品位な表示装置が提供できる。
このように、本発明の洗浄機構および液滴吐出装置1は、カラーフィルタ表示装置100、エレクトロルミネッセンス表示装置200、プラズマ表示装置300などの表示装置の製造に貢献でき、これらを搭載したテレビ、パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション、デジタルカメラ、携帯電話などの高品質な電子機器を提供できる。更に、本発明は、カラーフィルタ、エレクトロルミネッセンス、プラズマの表示装置(ディスプレイ)に加え、電子放出素子を備えた表示装置であるFED(Field Emission Display)やSED(Surface−Conduction Electron−Emitter Display)等の製造にも適用することができる。