JP2005116991A - 複合希土類異方性ボンド磁石、複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンドおよびそれらの製造方法 - Google Patents

複合希土類異方性ボンド磁石、複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンドおよびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末からなり、磁気特性および耐熱性に優れるボンド磁石を提供する。
【解決手段】本発明のボンド磁石は、平均粒径および配合比が特定された、界面活性剤で表面被覆されたCoレスR1系d−HDDR粗粉末と、界面活性剤で表面被覆されたR2系微粉末とバインダである樹脂とからなり(R1、R2は希土類元素である)、CoレスR1系d−HDDR粗粉末の周囲が樹脂中にR2系微粉末が均一に分散してなる強磁性緩衝体で囲繞されてなる。本発明のボンド磁石は、耐酸化性に劣り割れ感受性の高いCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末を使用しているにも拘わらず、高磁気特性と共に優れた耐熱性を発揮する。
【選択図】図7

Description

本発明は、磁気特性に優れると共にその経時変化が非常に少ない複合希土類異方性ボンド磁石と、それに用いるコンパウンドおよびそれらの製造方法に関するものである。
近年、各種モータ、電磁アクチュエータの小型化・高性能化のニーズが高まる中、それらに使用される磁石性能の向上が要求されている。中でも、磁気特性に優れる希土類磁石の高性能化のニーズが高く、特に、寸法精度の高さや一体成形性等の特徴を有する希土類異方性ボンド磁石の性能向上が強く要求されている。希土類異方性ボンド磁石が高性能化すれば、ハイブリット車や電気自動車等に使用される動力用モータへの適用が可能となる。但し、そのモータの信頼性を確保する観点から、磁気特性に優れるのみならず、高い耐熱性、つまり、高温環境下で使用しても経時劣化が少ないことも要求されている。
以下では、その希土類異方性ボンド磁石(以下、適宜単に「ボンド磁石」という。)の磁気特性および耐熱性について詳しく説明する。
先ず、その磁気特性という観点から、現在では、希土類元素(R)とホウ素(B)と鉄(Fe)とからなるRFeB系希土類磁石の開発が盛んに行われている。これに関して、例えば、約20年程前に出願された特許文献1(米国特許4851058号公報)や特許文献2(米国特許5411608号公報)に、磁気等方性を有するRFeB系磁石合金(組成物)の開示がある。
ところが従来の希土類磁石は、その主成分であるRやFeの酸化等により劣化し易く、初期磁気特性が安定的に持続することはなかった。特に、室温以上で希土類磁石を使用すると、その磁気特性が低下する。このような磁気特性の経時変化は、通常、永久減磁率(%)により定量的に指標される。永久減磁率とは、高温(100℃または120℃)下で長時間(1000時間)経過後に再着磁しても復元しない磁束の減少割合である。従来の希土類異方性磁石の多くは、この永久減磁率が−10%を超えていた。
また、特許文献1または2に開示された磁石合金から希土類異方性ボンド磁石を製造する場合、液体急冷法によって製造した磁石合金を粉砕後、さらにその粉砕物に熱間で強圧化を施して異方性を付与する必要がある。しかし、その磁石粉末の磁気特性は低く、それから得られたボンド磁石の磁気特性も当然に不十分なものであった。
ボンド磁石の磁気特性のさらなる向上を図るために、下記特許文献3〜11では、粒径の異なる複数種の磁石粉末とバインダである樹脂とを混合、成形したボンド磁石を提案している。このボンド磁石は、大粒径の磁石粉末間の隙間に小粒径の磁石粉末が入り込むため、全体的な充填率(相対密度)が高く、磁気特性に優れたものとなる。特に、異方性磁石粉末を磁場中成形した複合希土類異方性ボンド磁石は優れた磁気特性を発現する。以下、各特許文献に開示されたボンド磁石について個別に説明する。
特許文献3(特開平5―152116号公報)には、NdFe14B合金からなる粒径500μm以下の磁石粉末(以下、適宜「NdFeB系磁石粉末」という。)と、SmFe17N合金からなる粒径5μm以下の磁石粉末(以下、適宜「SmFeN系磁石粉末」という。)とを種々の割合で混合した混合粉末に、バインダであるエポキシ樹脂を添加し磁場中成形して、エポキシ樹脂を熱硬化させたボンド磁石が開示されている。この複合希土類異方性ボンド磁石は全体的な充填率の向上により、最大エネルギー積(BH)maxが128kJ/m3となっており、NdFeB系磁石粉末単体からなるボンド磁石の最大エネルギー積(BH)max:111kJ/m3に対して磁気特性が向上している。ちなみに、NdFeB系磁石粉末の粒径は、NdFe14B合金を単に微粉砕してしまうとその特性が低下することを考慮して定められており、SmFeN系磁石粉末の粒径はその単軸粒子の保磁力機構を考慮して定められている。
特許文献4(特開平6―61023号公報)には、SmFeN系磁石粉末と、SmCo系磁石粉末および/またはNdFeB系磁石粉末と、滑剤又はカップリング剤およびエポキシ樹脂の混合物を磁場中で加圧成形した複合希土類異方性ボンド磁石が開示されている。この開示内容は、カップリング剤等を使用する点を除いて上記特許文献3と大差ない。具体的にいえば、そのボンド磁石の最大エネルギー積(BH)maxが110kJ/m3程度に過ぎない。なお、特許文献3および特許文献4には磁気特性しか開示されておらず、その耐熱性や永久減磁率等については何ら記載等されていない。
特許文献5(特開平6―132107号公報)にも、上記特許文献3と同様に、NdFeB系磁石粉末、SmFeN系磁石粉末およびバインダ樹脂の混合物を磁場中成形したボンド磁石が開示されている。但し、この特許文献では、ボンド磁石の磁気特性に大きな影響を与える磁石粉末の磁気特性やその製造方法について何ら具体的な開示がなされていない。その実施例中に記載されたボンド磁石の最大エネルギー積(BH)maxは最大で239(30.3MGOe)kJ/m3となっているが、その出願当時の技術レベルを考慮すれば、そのような異常に高い磁気特性はあり得ない。従って、そこで開示されたデータは勿論のこと、特許文献5の開示内容全体も信憑性が非常に薄いものといえる。例えば、特許文献5の表1には、すべての試料がBr値からみて、理論値相当の(BH)max値が列記してある。
さらに、試料No.22の(BH)max値では理論値を0.5MGOe超えている。具体的に計算してみると、残留磁束密度(Br)の値は9.7KGであり、(BH)maxの理論値は(Br/2)2から23.5MGOeと求まる。これに対し、その特許文献中の(BH)max値は24.0MGOeとなっており、理論値を超えているのは明らかであるから、現実に存在しえない事がその特許文献には記載されている。しかも、理論値は、角形性を100%とした理想状態に基づいて算出したものであるが、当時のNdFeB系異方性磁石粉末及びSmFeN系異方性磁石粉末の角形比はせいぜい40〜70%程度に過ぎない。このような事情から、その特許文献の記載の信憑性を疑わざるおえない。しかも、特許文献5には、ボンド磁石の耐熱性や永久減磁率等について何らの開示もない。
ところで、上述の各ボンド磁石に使用していたNdFeB系磁石粉末は、異方化するために、液体急冷法で製作されたリボン片等に熱間加工を施しているが、その異方化は不十分であった。これとは別に、異方性磁石粉末を製造する水素化処理法(HDDR法)が開発された。このHDDR法によって製造された磁石粉末(以下、適宜単に「HDDR磁石粉末」という。)を利用した複合希土類異方性ボンド磁石は、例えば、下記特許文献6〜11に開示されている。
特許文献6(特開平9―92515号公報)には、Coを含み、NdFe14B正方晶相からなる再結晶粒の集合組織を有する平均粒径150μmのHDDR磁石粉末と、平均粒径0.5〜10.7μmで0〜50質量%のSrO・6Feからなるフェライト磁石粉末と、バインダである3質量%のエポキシ樹脂とを常温で混合し、真空乾燥、磁場中成形および熱硬化させたボンド磁石が開示されている。
ここで、上記Coは上記HDDR磁石粉末に異方性を付与する上で必須な元素である。またCoの含有により、HDDR磁石粉末の温度特性が改善されて、ボンド磁石の耐熱性も高いものとなっている。このことは非特許文献1でも紹介されている。
特許文献6の実施例に開示されたボンド磁石の場合、例えば、最大エネルギー積(BH)maxが132〜150.14kJ/m3で、永久減磁率(100℃x1000時間)が−3.5〜−5.6%と優れた磁気特性および耐熱性を示す。但し、この磁気特性は、ボンド磁石を上記Co入りHDDR磁石粉末単体で形成した場合と大差ない。つまり、磁石粉末を複合化したメリットが磁気特性に現れていない。
ちなみに、この特許文献には、粒径の異なる2種の磁石粉末を混合してボンド磁石を製造する利点として次のような説明がなされている。すなわち、ボンド磁石の成形に際して、HDDR磁石粉末であるNdFeB系磁石粉末の粒子間隙にフェライト磁石粉末が優先的に充填させる結果、ボンド磁石の空孔率が減少する。これにより、(a)O、HOのボンド磁石中への侵入が抑制されて、耐熱性が向上する。(b)従来空孔であった部分がフェライト磁石粉末粉末で置換されることで磁気特性が向上する。さらに、(c)ボンド磁石の成形時に生じるNdFeB系磁石粉末への応力集中をフェライト磁石粉末が緩和する結果、NdFeB系磁石粉末の割れが抑制される。そのため、ボンド磁石中で非常に活性な金属破面が露出することが抑制されて、ボンド磁石の耐熱性がさらに向上する。加えて、(d)そのフェライト磁石粉末による応力集中の緩和により、その磁石粉末内への歪みの導入も抑制され、磁気特性がさらに向上する。
なお、この特許文献には、永久減磁率の低下(耐熱性の劣化)が磁石粉末の割れに起因していることが記載されているが、界面活性剤が耐熱性の改善に効果のないことも記載されており、界面活性剤を使用した実施例は一切ない。
特許文献7(特開平9―115711号公報)には、上記特許文献6のフェライト磁石粉末に替えて、平均結晶粒径50nm以下の体心立方鉄および鉄ホウ化物を含む軟質磁性相とNdFe14B型結晶を有する硬質磁性相とからなる平均粒径3.8μmの等方性ナノコンポジット磁石粉末を使用したボンド磁石が開示されている。このボンド磁石は、最大エネルギー積(BH)maxが136.8〜150.4kJ/m3である。特許文献6のボンド磁石よりも磁気特性が多少向上しているが、未だ不十分である。また、その永久減磁率は−4.9〜−6.0%と、耐熱性に優れるものの、これはCoの含有に依る。
ちなみに、この特許文献7中には、比較例として、Co入りNdFeB系磁石粉末とそれよりも粒径の小さいSmFeN磁石粉末とからなるボンド磁石も開示されている。このボンド磁石は、最大エネルギー積(BH)maxが146.4〜152.8kJ/m3で初期磁気特性が優れるものの、永久減磁率が−13.7〜−13.1%となっている。つまり、Co入りNdFeB系磁石粉末単体からなるボンド磁石(永久減磁率:−10.4〜−11.3%)よりも、耐熱性がむしろ劣化している。
特許文献7には、その原因がSmFeN系磁石粉末の酸化劣化にあることが記載されている。この事実に基づき、それ以降、Co入りHDDR磁石粉末からなるボンド磁石の耐熱性を改善するために、SmFeN系磁石粉末を複合化させることはなくなった。これは下記特許文献8〜11を観ても明らかである。
特許文献8(特開平9−312230号)、特許文献9(特開平9−320876号)、特許文献10(特開平9−330842号)および特許文献11(特開平10−32134号)には、Co入りHDDR磁石粉末と、それよりも粒径の小さい他の磁石粉末(フェライト磁石粉末、ナノコンポジット、液体急冷NdFeB系磁石粉末等)とを複合化したボンド磁石が開示されている。これらのボンド磁石は、各磁石粉末を常温で混合した後、熱硬化性樹脂の軟化点以上かつ硬化開始点以下の温度範囲で温間磁場中成形して製造されている。温間磁場中成形により、磁石粉末の流動性が向上し、全体的な充填率および磁石粉末の粒子間の応力集中が緩和された結果、得られたボンド磁石は、最大エネルギー積(BH)maxが142.5〜164.7kJ/m3で永久減磁率が−2.6〜−4.7%といった、優れた磁気特性および耐熱性を発揮している。
しかし、磁石粉末の複合化による最大エネルギー積(BH)maxの向上率を微粉末ごとに観ると、Co入りHDDR磁石粉末単体の場合に比べて、フェライト磁石粉末を複合化したときは5.1〜5.3%、液体急冷NdFeB磁石粉末を複合化したときは9.3〜12.7%、液体急冷NdFeB磁石粉末+Sr−フェライト磁石粉末を複合化したときは5.0〜5.6%程度となっている。いずれの場合も磁気特性の向上率が少ない。永久減磁率が十分に向上したにも拘わらず、最大エネルギー積(BH)maxがあまり向上していないのは、複合化に使用した上記の磁石粉末の磁気特性が主たるCo入りHDDR磁石粉末に対してかなり劣るためであると考えられる。
ちなみに、上述した特許文献6〜11で使用しているCo入りHDDR磁石粉末はCoを必須元素としているが、周知のように、Coは希少資源であるため、高価で供給性も安定していない。従って、ボンド磁石の需要拡大を図るには、上述のCo入りHDDR磁石粉末は好ましくない。従って、Coレス異方性磁石粉末を使用しつつ、Co入り異方性磁石粉末を使用した場合と同等以上の磁気特性および耐熱性を備えたボンド磁石の開発が望まれていた。
本発明者等は、上記HDDR法に変わる新たな水素化処理法であるd−HDDR法を開発して、Co含有の有無に拘わらず、RFeB系磁石粉末の異方化に成功した。このd−HDDR法は、例えば、特許文献12(特開2001−76917号)にその内容が具体的に開示されている。また、本明細書でもその内容については後述する。
このd−HDDR法により製造した異方性磁石粉末(以下、適宜、単に「d−HDDR異方性磁石粉末」という。)単体からなるボンド磁石は、最大エネルギー積(BH)maxが137.7〜179.1kJ/m3と、Coレスの磁石粉末からなるボンド磁石としては、現状で最高の磁気特性を発揮している。
米国特許4851058号公報 米国特許5411608号公報 特開平5―152116号公報 特開平6―61023号公報 特開平6―132107号公報 特開平9―92515号公報 特開平9―115711号公報 特開平9−312230号 特開平9−320876号 特開平9−330842号 特開平10−32134号 特開2001−76917号 Journal of Alloys and Compounds 231(1995)51−59(特に、第4頁右欄〜第5頁左欄の記載)
しかし、d−HDDR異方性磁石粉末がCoを含まない場合、Coによる耐酸化効果が期待できない。しかも、d−HDDR異方性磁石粉末は、液体急冷磁石粉末に比べ水素粉砕の際に生じるクラックを有するため割れ感受性が高く、ボンド磁石の成形中にその構成粒子が割れ易い。この構成粒子の割れが生じると、破面が著しく酸化されて、ボンド磁石の永久減磁率が大きく悪化する。具体的には、温間磁場中成形したとしても、Coレスd−HDDR異方性磁石粉末単独からなるボンド磁石は、例えば、保磁力が880〜1040kA/mの場合、その永久減磁率が100℃×1000hrでは−23.0〜−18.0%に過ぎない。特に、自動車等の使用環境下で求められる120℃×1000hrでは、−28.0〜−35.0%と著しく劣る。本発明はこのような事情に鑑みて為されたものである。
すなわち、Coレスd−HDDR異方性磁石粉末を用いた初期磁気特性の高いボンド磁石であって、Co入りHDDR磁石粉末等を用いたボンド磁石と同等以上の十分な耐熱性を備える複合希土類異方性ボンド磁石およびその製造方法を提供する。更に、120℃の高温での十分な耐熱性を備える複合希土類異方性ボンド磁石およびその製造方法を提供する。また、そのようなボンド磁石の原料として好適な複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンドおよびその製造方法を提供する。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、これまでの技術常識に反して、耐酸化性に劣る粗いCoレスNdFeB系異方性磁石粉末に、同じく耐酸化性に劣る細かなSmFeN系異方性磁石粉末を組み合わせることで、初期磁気特性に優れるのは勿論のこと、Co入り異方性磁石粉末等を用いたボンド磁石と同等以上の十分な耐熱性(永久減磁特性)を発揮する複合希土類異方性ボンド磁石を得ることに成功した。この新たな複合希土類異方性ボンド磁石の開発に基づき、CoレスR1系d−HDDR粗粉末とSmFeN系磁石粉末を包含するR2系微粉末とについても広く同様の効果が得られることを思いつき、本発明は完成させるに至った。
(複合希土類異方性ボンド磁石)
すなわち、本発明の複合希土類異方性ボンド磁石は、イットリウム(Y)を含む希土類元素(以下、「R1」と称する。)と鉄(Fe)とホウ素(B)とを主成分としコバルト(Co)を基本的に含有しないCoレスR1系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末および該CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子表面の少なくとも一部を被覆する第1界面活性剤からなり、平均粒径が40〜200μmであるCoレスR1系d−HDDR粗粉末と、Yを含む希土類元素(以下、「R2」と称する。)を主成分の一つとし最大エネルギー積(BH)maxが240kJ/m3以上であるR2系異方性磁石粉末および該R2系異方性磁石粉末の粒子表面の少なくとも一部を被覆する第2界面活性剤からなり、平均アスペクト比が2以下で平均粒径が1〜10μmであるR2系微粉末と、バインダである樹脂とからなるボンド磁石であって、
該ボンド磁石中に該CoレスR1系d−HDDR粗粉末が50〜84質量%、該R2系微粉末が15〜40質量%および該樹脂が1〜10質量%含有されており、該ボンド磁石の理論密度(ρth)に対する嵩密度(ρ)の比である相対密度(ρ/ρth)が91〜99%であり、該ボンド磁石中のCoレスR1系d−HDDR粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数が1.2×109個/m2以下である磁気特性および耐熱性に優れることを特徴とする。
本発明の複合希土類異方性ボンド磁石(以下、適宜、「ボンド磁石」という。)は、従来になく優れた初期磁気特性を示し、かつ、高温環境下で使用してもその経時変化が非常に少ないという優れた耐熱性を示す。つまり、本発明のボンド磁石は、長期間安定した高磁気特性を発揮する。
その一例を挙げれば、本発明のボンド磁石は、例えば、最大エネルギー積(BH)maxが167kJ/m3以上、180kJ/m3以上、190kJ/m3以上、200kJ/m3以上さらには210kJ/m3以上といった高い初期磁気特性を示す。また、本発明のボンド磁石は、例えば、永久減磁率が−6%以下、−5%以下さらには−4.5%以下といった優れた耐熱性を示す。この永久減磁率は、100℃で1000時間経過後に再着磁して得られる磁束の減少割合である。また、120℃で1000時間における永久減磁率では−7%以下、−6%以下さらには−5.5%以下といった優れた耐熱性を示す。
本明細書でいうCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末、CoレスR1系d−HDDR粗粉末またはCoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末等の「Coレス」の意味は、Coを基本的に含有しない磁石粉末であっても、d−HDDR処理によって異方性を発現し磁気特性に優れるものであることを意味する。従って、Coを全く含有しない異方性磁石粉末という意味ではない。例えば、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末やCoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末に多少のCoを含有させて、ボンド磁石の磁気特性や耐熱性をより一層向上させても良い。具体的には、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末が、Coを1.0at%〜6.0at%程度含有していても良い。これにより、CoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末のキュリー点を向上させることができる。本発明のCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末は、(BH)maxが279.3kJ/m3以上、320kJ/m3以上であり、R2系異方性磁石粉末は、(BH)maxが240kJ/m3以上、303.2kJ/m3以上であると好ましい。
本発明のR2系微粉末は、(BH)maxが240kJ/m3以上のR2系異方性磁石粉末からなるものであれば良く、その組成や製造方法を問わない。このR2系異方性磁石粉末として、サマリウム(Sm)とFeと窒素(N)とを主成分とするSmFeN系異方性磁石粉末やR2とFeとBとを主成分としCoを基本的に含有しないCoレスR2系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末等がある。以下では、便宜上、R2系異方性磁石粉末の一例としてSmFeN系異方性磁石粉末を取りあげて説明することもあるが、これはR2系異方性磁石粉末をSmFeN系異方性磁石粉末に限定する意味でない。
本明細書でいう「d−HDDR処理」は、水素化処理の1種であり、低温水素化工程(第1工程)、高温水素化工程(第2工程)、第1排気工程(第3工程)および第2排気工程(第4工程)の4つの工程を基本的に備えてなる。CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末やCoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末は、このd−HDDR処理を原料合金に施して得られるものである。それらd−HDDR異方性磁石粉末は、実質的に前記4工程が施される限り、それらの工程終了後に付加されたり、それらの工程中に介在したりまたはいずれかの工程と融合した別の工程がさらに施されたものであっても良い。このような工程として、d−HDDR異方性磁石粉末に希土類元素(R3)やランタン(La)を拡散させる拡散熱処理工程がある。各工程の詳細は後述する。
ちなみに、「d−HDDR」は、dynamic−Hydrogenation−Decomposition−Dispropotionation−Recombinationの略語であり、「d−HDDR」という用語は、「電子部品大辞典」(工業調査会、2002年12月25日発行)にも掲載されている学術用語である。
ところで、本発明のボンド磁石は、従来になく高次元で磁気特性および耐候性を両立し得るが、ボンド磁石の用途に応じて、いずれか一方の特性のみをさらに高めても良い。例えば、高温環境下で使用されるボンド磁石の場合、磁気特性より耐候性が優先されることがある。このような場合、例えば、磁気特性を(BH)maxで160〜165kJ/m3程度にしつつ、耐候性を永久減磁率で−4%以下さらには−3.5%以下にまで高めても良い。また、均質化熱処理の省略による低コスト化を図るために、従来のRFeB系異方性磁石粉末よりもBを多く含有させたり、耐候性の向上を図るためにLaを含有させても良い。このようなボンド磁石では、磁気特性を(BH)maxで140〜160kJ/m3程度にしつつ、耐候性を永久減磁率で−4%以下さらには−3.5%以下にまで高めても良い。
(複合希土類異方性ボンド磁石の製造方法)
本発明の上記ボンド磁石は、例えば、次のような本発明の製造方法によって製造できる。
すなわち、本発明の複合希土類異方性ボンド磁石の製造方法は、R1とFeとBとを主成分としCoを基本的に含有しないCoレスR1系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末および該CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子表面の被覆する第1界面活性剤からなり、平均粒径が40〜200μmであるCoレスR1系d−HDDR粗粉末が50〜84質量%と、R2を主成分の一つとし最大エネルギー積(BH)maxが240kJ/m3以上であるR2系異方性磁石粉末および該R2系異方性磁石粉末の粒子表面の被覆する第2界面活性剤からなり、平均アスペクト比が2以下で平均粒径が1〜10μmであるR2系微粉末が15〜40質量%と、バインダである樹脂が1〜10質量%とからなり、該CoレスR1系d−HDDR粗粉末の各粒子が、該樹脂中に該R2系微粉末が均一分散してなる強磁性緩衝体で囲繞されて直接的な接触が回避されているコンパウンドを、該強磁性緩衝体を構成する樹脂の軟化点以上の温度に加熱して該強磁性緩衝体を軟化状態または溶融状態としつつ配向磁場を印加し、該CoレスR1系d−HDDR粗粉末および該R2系微粉末を特定方向に配向させる加熱配向工程と、該加熱配向工程後にまたは該加熱配向工程と併行して、加熱しつつ加圧成形する加熱成形工程とからなり、
該CoレスR1系d−HDDR粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数が1.2×109個/m2以下である共に理論密度(ρth)に対する嵩密度(ρ)の比である相対密度(ρ/ρth)が91〜99%である磁気特性および耐熱性に優れる複合希土類異方性ボンド磁石が得られることを特徴とする。
ところで、本発明のボンド磁石が初期磁気特性を安定的に発揮するメカニズムおよびそのようなボンド磁石が上記製造方法によって得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、現状考えられる範囲内でそのメカニズムまたは理由を以下に説明する。
本発明のボンド磁石は、前述したように、Co入り異方性磁石粉末に対して耐熱性の点で不利といわれてきたCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末から主になる。ここでCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末が耐熱性に劣る理由として、従来、耐熱性向上元素であるCoを含まないことによって磁石粉末が酸化し易くなるためであるといわれてきた。
しかし、本発明者は、そのボンド磁石の耐熱性の劣化の主原因は、単なるCoの含有の有無によるのではなく、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末に生じる割れに起因して酸化が促進されるためではないかと考えた。また、その割れの主要因は、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末への応力集中に依るのではないかと考えた。そして、本発明者が鋭意研究したところ、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末(特に、CoレスR1FeB系d−HDDR異方性磁石粉末)からなるボンド磁石の場合、耐熱性劣化の主要因は、ボンド磁石の加圧成形時にその粉末粒子に生じる割れにあることを突き止めた。この割れが発生すると、非常に活性な金属破面が露出して、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の酸化が促進されて、ボンド磁石の経年劣化が生じると考えられる。特に、水素化処理されて得られたCoレスR1系異方性磁石粉末は既にマイクロクラックを有し割れ感受性が高いため、成形時に割れを生じ易い。
本発明者はさらに、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末が割れにいたる経過を観察した。これによると、その割れの原因は(a)CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子同士が接触する部分への応力集中と、(b)CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子同士が直接的に接触していると、接触している各粒子は回転等による姿勢変化を容易に行い得ないことに依ると思われる。そのような状態が繰り返されると、磁石粉末の粒子の割れが際限なく進行して、ボンド磁石の耐熱性が低下したと考えられる。
こららのことを踏まえて、本発明者は、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の割れを防止するため、ボンド磁石の成形工程中に、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末に生じる応力集中を極限まで低減する動的構造を模索した。そして、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の各構成粒子に割れが生じ易い加圧成形中に、その各構成粒子が流体層中に浮遊したような状態を形成することを着想した。こうすれば、耐酸化性に劣り割れ感受性の高いCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末を用いても、その構成粒子は流動し易くなり姿勢変化が容易となって、その構成粒子間に応力集中が可能な限り生じないようになると考えた。
これを実現するために、本発明では次のような方策をとった。
(i)成形工程中に、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子同士が直接的に接触しないようにするために、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の各粒子の外周囲に、それらの粒子よりも粒径の小さい磁石粉末の粒子を均一に分散配置させた。この際に使用する粒径の小さい磁石粉末(R2系異方性磁石粉末)は、ボンド磁石の磁気特性を低下させないために、最大エネルギー積(BH)maxの高いものを選択する。
(ii)その成形工程中に、粗いCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末および細かいR2系異方性磁石粉末の各粒子間の流動性をさらに高めるために、それらの各粒子が高い流動性をもつ樹脂中に浮遊した状態をつくった。つまり、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子同士は勿論、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子とR2系異方性磁石粉末の粒子もあまり直接的には接触しないように、それぞれの磁石粉末の各粒子間にできるだけ流動性または潤滑性のある樹脂が介在する状態とした。この際、そのような状態が形成され易くするために、各粒子と樹脂とのなじみ性を高める界面活性剤を利用した。樹脂等が高い流動性または潤滑性を発揮できるように、成形工程はその樹脂の軟化点以上の温度で行う。つまり、ボンド磁石を加熱成形(温間成形)する。
(iii)成形工程中に生じる、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末への応力集中は、結局、それよりも細かなR2系異方性磁石粉末および樹脂が一体となった疑似流体層によって緩和、抑止される。その疑似流体層の流動性をより高めるために、本発明では、R2系異方性磁石粉末の粒形状を可能な限り球形に近づけた。R2系異方性磁石粉末が球形に近いと、引っかかり等が少なく、流動性が増して、R2系異方性磁石粉末と接触した磁石粉末への応力集中も抑止される。例えば、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の構成粒子同士が接触して、その粒子間に応力集中が生じたとしても、その間に略球形状のR2系異方性磁石粉末が介在していれば、そのR2系異方性磁石粉末がコロのような役割を果たす。その結果、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の構成粒子の移動、回転等が容易になり、耐酸化性に劣り割れ感受性の高いCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末への応力集中が回避される。本発明では、このような観点から、R2系微粉末の平均アスペクト比を1〜2(2以下)とした。アスペクト比は粒子の最長径/最短径から求まる。平均アスペクト比は、そのアスペクト比を平均したものである。EPMAを使用して観察し、100個の粒子のアスペクト比の平均をとった。
本発明者は、種々実験を重ねた結果、上述のことをすべて満たした、本発明の複合希土類異方性ボンド磁石の製造方法を完成させるに至った。そして、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末を用いて、従来のCo入りHDDR磁石粉末からなるボンド磁石と同等以上の耐熱性(永久減磁特性)を有する高磁気特性のボンド磁石を得ることに成功した。このような優れたボンド磁石が得られたのは、前述した疑似流体層がボンド磁石の加熱成形工程で出現するからである。この疑似流体層は、軟化または溶融した樹脂中にR2系微粉末が均一分散したものであり、本明細書ではこれを「強磁性流体層」という。本発明でいう強磁性緩衝体は、この強磁性流体層と、強磁性流体層が硬化または固化したものとの両方を意味する。逆に言えば、固体状の強磁性緩衝体は、軟化または溶融して強磁性流体層となる。
ところで、本発明の複合希土類異方性ボンド磁石の場合、その優れた耐熱性は、ボンド磁石中のCoレスR1系d−HDDR粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数とボンド磁石の相対密度とによって間接的に指標される。
先ず、「単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数」について説明する。
「見かけの粒子径」とは、ボンド磁石の任意の切断面における単位断面積あたりの実測した粒子径を意味する。即ち、ボンド磁石をある面でカットし、その切断面に現れたCoレスR1系d−HDDR粗粉末の粒子径を特定方法で測定したときの二次元的な粒子径を意味し、粒子そのものを測定して得られる三次元的な粒子径ではない。この「見かけの粒子径」の具体的な測定方法を説明する。初めにボンド磁石をそのほぼ中心部で切断する。得られた切断面を研磨して鏡面状態とする。その面をEPMAにより分析し、R1(例えば、Nd)とR2(例えば、Sm)を分析し、マッピングした画像を得る。この時の倍率は200〜600倍が望ましい。
この画像に現れるすべての特定粒子(例えば、Nd粒子等のR1粒子)の縦方向のはさみ直径を測定し、これをその粒子径とする。ここで「はさみ直径」とは、いわゆる粉末の粒子径を現すFeretの直径を意味する。「縦方向」とは、観察している画像上で任意に設定した特定の一方向である。従って、同一画像上にある各粒子径を測定する際、その測定方向は同一であり、変更されない。なお、この測定方法は、粉末の粒子径を表すFeret径を基にして、発明者が考案したものである。
そして、割れて微細となったCoレスR1系d−HDDR粗粉末(以下、適宜単に「粗粉末」という。)の粒子とR2系微粉末(以下、適宜単に「微粉末」という。)の粒子との峻別は、それらの構成元素であるR1とR2との分析結果により可能である。特に、EPMAによる分析画像がカラーの場合、それら粉末粒子の峻別は色分けにより容易に行える。R1とR2とが同一元素であるときは、粉末粒子の割れ等に悪影響を及さず、EPMAによって区別し得る元素(Dy、Alなど)を、各粉末へ別々に含有させておく。そうすれば、それらの元素を分析することで、CoレスR1系d−HDDR粗粉末の粒子とR2系微粉末の粒子との峻別を行える。」
こうして測定された見かけの粒子径から、単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数を求める。すなわち、上記の見かけの粒子径の測定方法に従って20μm以下の粒子の個数を求め、それを測定面積で除して、単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である全体的な粒子数を算出する。それは、CoレスR1系d−HDDR粗粉末の粒子数とR2系微粉末の粒子数との和であるから、その全体的な粒子数に対してR2系微粉末の粒子数を除いたCoレスR1系d−HDDR粗粉末の粒子数の割合を規格化する必要がある。そこで、先に求めておいた全体的な粒子数をCoレスR1系d−HDDR粗粉末の存在割合で除して、「単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数」とした。具体例を挙げてに説明すると、20μm以下の全体的な粒子数が1000個/mm2で、全磁石粉末(微粉末+粗粉末)に対する粗粉末の存在割合が80%である場合、1000/0.8、すなわち、1250個/mm2が粗粉末の規格化粒子数となる。
ちなみに、本発明で見かけの粒子径を20μm以下である場合に限定したのは、その粒子径が20μ以下のとき、比表面積が大きくて酸化し易くなって、永久減磁率低下の主要因となるためである。一般的には、平均粒径によって粒子径による耐熱性等への影響を指標することも多いかもしれないが、本発明の場合、CoレスR1系d−HDDR粗粉末が微細に割れてできた粒子がボンド磁石の永久減磁特性を劣化させている。その微細な割れの程度は平均粒径で指標することは困難であり、本発明のような指標を導入することとした。ここで一例として、単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数と永久減磁率との関係を図7に示した。ここで用いたボンド磁石のCoレスR1系d−HDDR粗粉末成は、Nd:12.7%、Dy:0.2%、Ga:0.2%、Nb:0.2%、B:6.3%で残部FeからなるNdFeB系粗粉末である。R2系微粉末はSmFeN系微粉末(日亜化学工業株式会社製)を用いた。そのSmFeN系微粉末の平均粒径は3μmで組成はSm:10at%,Fe:77at%,N:13at%である。試料となるボンド磁石の製造方法は、成形圧力を除き後述する第1実施例の場合と同様である。各試料の成形圧力と規格化粒子数と120℃における永久減磁率とを表5に合わせて示した。図7の結果から、成形されたボンド磁石中のNdFeB系粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数は、1.2×109個/m2を超えると、急激に永久減磁率が低下していることがわかる。
次に、本発明のボンド磁石の相対密度は91〜99%と高い。相対密度が高い程、ボンド磁石中の空隙(空孔)が減少して、磁気特性を向上させ得ることは勿論、ボンド磁石内部への酸素侵入等も抑止されてボンド磁石の耐熱性が向上する。相対密度が91%未満では十分な磁気特性や耐熱性が得られない。もっとも、相対密度が99%を超えるボンド磁石を製造するのは現実的に困難であるため、本発明ではその上限を99%としてある。なお、その相対密度の下限は93%であるとより好ましい。
本明細書では、便宜上、粗いCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の表面が第1界面活性剤で被覆されたものをCoレスR1系d−HDDR粗粉末と呼び、細かいR2系異方性磁石粉末の表面が第2界面活性剤で被覆されたものをR2系微粉末と呼んでいる。両粉末は粒径が異なれば良く、組成は同じでも良い。両界面活性剤は同種でも異種でも良い。樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも良い。樹脂が熱硬化性樹脂を使用する場合、加熱配向工程中や加熱成形工程中の短時間なら、それを硬化点以上に加熱しても良い。硬化点以上に加熱していても、直ぐに熱硬化性樹脂が架橋等によって硬化を開始することはない。むしろ、加熱成形の初期から硬化点以上に加熱することで、流動性に優れた強磁性流体層が素早く形成される。これにより、ボンド磁石の製造タクトの短縮も図れる。
なお、いうまでもないが、硬化点以上の温度で加熱する場合、所定時間を経過すると熱硬化性樹脂は硬化を開始して、上記強磁性流体層は固体状の強磁性緩衝体となる。樹脂が熱可塑性樹脂の場合なら、一旦形成された強磁性流体層もその後の冷却によって固化層となる。なお、樹脂は、受ける熱履歴によって、その軟化点等が変動し得る。例えば、各磁石粉末と樹脂とを混合し加熱混練してコンパウンドを形成するときの軟化点と、そのコンパウンドを金型内で加熱して加熱配向工程や加熱成形工程中に強磁性流体層を形成するときの軟化点とは相違することがある。従って、本発明でいう軟化点は、各工程毎の樹脂の軟化点を意味する。また、本発明でいう「樹脂」は、単に樹脂単体を意味するに留まらず、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、可塑剤、成形助剤等の添加剤も含む。
(複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンド)
本発明の複合希土類異方性ボンド磁石の製造に際して、例えば、次のような本発明のコンパウンドを使用すると好適である。
すなわち、本発明の複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンドは、R1とFeとBとを主成分としCoを基本的に含有しないCoレスR1系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末および該CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子表面を被覆する第1界面活性剤からなり、平均粒径が40〜200μmであるCoレスR1系d−HDDR粗粉末と、R2を主成分の一つとし最大エネルギー積(BH)maxが240kJ/m3以上であるR2系異方性磁石粉末および該R2系異方性磁石粉末の粒子表面を被覆する第2界面活性剤からなり、平均アスペクト比が2以下で平均粒径が1〜10μmであるR2系微粉末と、バインダである樹脂とからなるコンパウンドであって、
該コンパウンド中に該CoレスR1系d−HDDR粗粉末が50〜84質量%、該R2系微粉末が15〜40質量%および該樹脂が1〜10質量%含有されており、該CoレスR1系d−HDDR粗粉末の各粒子は、該樹脂中に該R2系微粉末が均一分散してなる強磁性緩衝体で囲繞されて直接的な接触が回避されていることを特徴とする。
(複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンドの製造方法)
上記コンパウンドは、例えば、次のような本発明の製造方法により得られる。
すなわち、本発明の複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンドの製造方法は、R1とFeとBとを主成分としCoを基本的に含有しないCoレスR1系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末および該CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子表面を被覆する第1界面活性剤からなり、平均粒径が40〜200μmであるCoレスR1系d−HDDR粗粉末と、R2を主成分の一つとし最大エネルギー積(BH)maxが240kJ/m3以上であるR2系異方性磁石粉末および該R2系異方性磁石粉末の粒子表面を被覆する第2界面活性剤からなり、平均アスペクト比が2以下で平均粒径が1〜10μmであるR2系微粉末と、バインダである樹脂とを、該CoレスR1系d−HDDR粗粉末を50〜84質量%、該R2系微粉末を15〜40質量%および該樹脂を1〜10質量%の割合で配合して混合する混合工程と、該混合工程後の混合物を該樹脂の軟化点以上の温度に加熱して混練する加熱混練工程とからなり、該CoレスR1系d−HDDR粗粉末の各粒子が、該樹脂中に該R2系微粉末が均一分散してなる強磁性緩衝体で囲繞されて直接的な接触が回避されたコンパウンドが得られることを特徴とする。
本発明のコンパウンドは、略球状のR2系微粉末が樹脂中にほぼ均一に分散した強磁性緩衝体によって、CoレスR1系d−HDDR粗粉末の各粒子が囲繞されており、その粒子同士は直接的な接触が回避されている。このコンパウンドを用いてボンド磁石を加熱磁場中成形すると、その成形中に強磁性緩衝体が軟化または溶融して、前述の強磁性流体層が出現する。その結果、CoレスR1系d−HDDR粗粉末の姿勢変動が容易になると共に構成粒子への応力集中が回避されて、構成粒子の割れが少なく高密度で磁気特性および耐熱性に優れるボンド磁石が得られる。
ちなみに、本発明のコンパウンドがこのような効果を発揮するのは、R2系微粉末が樹脂中に均一分散した強磁性緩衝体によってCoレスR1系d−HDDR粗粉末の粒子が囲繞されているからである。そのような均一分散性を有する強磁性緩衝体を形成する上で、CoレスR1系d−HDDR粗粉末、R2系微粉末および樹脂を単なる室温混練ではなく加熱混練することが非常に有効となる。なお、バインダとして熱硬化性樹脂を使用する場合、加熱混練中の温度(加熱混練温度)は、その段階における樹脂の軟化点以上、硬化点未満とするのが良い。硬化点以上の温度で加熱混練して製造したコンパウンドを用いると、得られたボンド磁石に割れ等を生じ易くなる。
本発明のボンド磁石を製造するに際して、各工程を、連続的に一段階で行っても良いし、生産性、寸法精度、品質安定性等を考慮して多段階で行っても良い。例えば、加熱配向工程とその後の加熱成形工程とを一つの成形型中で連続的に行っても良いし(一段成形)、異なる成形型中で行っても良い(二段成形)。また、加熱配向工程中に加圧を伴っても良い。さらに、ボンド磁石の原料として使用するコンパウンドを秤量する工程を、別の成形型で別途行っても良い(三段成形)。その場合、加熱配向工程は、コンパウンドを加圧成形しておいた予備成形体を、少なくとも加熱し磁場配向させる工程となる。このように、ボンド磁石の成形を多段階で行うことで、生産性の向上を図り易くなり、設備の稼働率も高められる。
発明の実施形態を挙げて、本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含め、本明細書で説明する内容は、本発明に係る複合希土類異方性ボンド磁石、複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンドおよびそれらの製造方法にも適宜該当するものであることを断っておく。また、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なることを断っておく。
(1)CoレスR1系d−HDDR粗粉末
CoレスR1系d−HDDR粗粉末は、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末とその粒子表面を被覆する第1界面活性剤とからなる。
ボンド磁石の加圧成形前のCoレスR1系d−HDDR粗粉末は、CoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末の全表面がほぼ均一に第1界面活性剤によって被覆されていると考えて良い。勿論、d−HDDR処理によりCoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末の表面にマイクロクラックが存在する場合、そのクラックまで第1界面活性剤によって完全に被覆されているとは限らないが、本発明ではそのような場合も含めて第1界面活性剤によって被覆されていることとする。ボンド磁石の成形中に現れる本発明でいう強磁性流体層は、界面活性剤がそのクラック内部まで浸透していなくても機能を発揮するからである。
一方、ボンド磁石を加圧成形した後のCoレスR1系d−HDDR粗粉末の場合、一部の粒子は成形圧力の印加によって割れを生じる。その割れた粒子の破面には、当然に第1界面活性剤による被覆はほとんどされていない。そこで、本発明のボンド磁石では、その中のCoレスR1系d−HDDR粗粉末の「少なくとも一部」が第1界面活性剤によって被覆されているとした。このような事情は、後述するR2系微粉末についても同様である。
CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末は、R1とFeとBとを主成分とするR1FeB系合金にd−HDDR処理を施して得られた粉末である。d−HDDR処理は、前述した「電子部品大辞典」等にも掲載されている他、公知文献(三嶋ら:日本応用磁気学会誌、24(2000)、p.407)にも詳細に報告されている。このd−HDDR処理は、室温から高温にかけて、R1FeB系合金と水素との反応速度を制御することによりなされる。
具体的には、室温でその合金に水素を十分に吸収させる低温水素化工程(第1工程)と、低水素圧力下で三相分解不均化反応を起こさせる高温水素化工程(第2工程)と、可能な限り高い水素圧力下で水素を解離させる第1排気工程(第3工程)と、その後の材料から水素を除去する第2排気工程(第4工程)の4つの工程から主になる。従来のHDDR処理と異なる点は、温度や水素圧力の異なる複数の工程を設けることで、R1FeB系合金と水素との反応速度を比較的緩やかに保ち、均質な異方性磁石粉末が得られるように工夫されている点である。
より詳細にいうと、低温水素化工程は、例えば、水素圧力が30〜200kPaで600℃以下の水素ガス雰囲気中に保持する工程である。高温水素化工程は、水素圧力が20〜100kPaで750〜900℃の水素ガス雰囲気中に保持する工程である。第1排気工程は、水素圧力が0.1〜20kPaで750〜900℃の水素ガス雰囲気中に保持する工程である。第2排気工程は、水素圧力を10−1Pa以下の雰囲気に保持する工程である。なお、本明細書でいう水素圧力は、特に断らない限り水素の分圧を意味する。従って、各工程中の水素分圧が所定値内であれば、真空雰囲気でも不活性ガス等との混合ガス雰囲気でも良い。このd−HDDR法を用いると、資源量が少なく高価で入手も容易ではないCoを使用するまでもなく、高磁気特性のR1FeB系異方性磁石粉末を工業レベルで量産できる。
ボンド磁石成形前のCoレスR1系d−HDDR粗粉末の平均粒径は40〜200μmとした。40μm未満では最大磁気エネルギー積(BH)maxが低下し、200μmを超えると残留磁束密度(Br)が低下するからである。その平均粒径は、74〜150μmであるとより好ましい。ちなみに、ボンド磁石成形後のCoレスR1系d−HDDR粗粉末の平均粒径は、加熱成形工程中に生じる割れを考慮すると、上記平均粒径よりも小さくなる。もっとも、その割れの生じる割合は、本発明の場合、従来よりも遙かに少ない。このため、成形後のボンド磁石中のCoレスR1系d−HDDR粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数が1.2×109個/m2以下の範囲内であれば、得られたボンド磁石は優れた磁気特性および耐熱性を発揮する。
本発明では、CoレスR1系d−HDDR粗粉末の配合比を50〜84質量%とした。50質量%未満では最大エネルギー積(BH)maxが低下し、84質量%を超えると強磁性流体層が相対的に少なくなり、永久減磁の抑制効果が薄れるからである。その配合比が70〜80質量%であるとより好ましい。なお、本明細書でいう質量%は、ボンド磁石全体またはコンパウンド全体を100質量%としたときの割合である(以下、同様)。
CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の組成は、例えば、R1が11〜16原子%(at%)、Bが5.5〜15原子%(at%)およびFeを主成分とするものであり、適宜、不可避不純物を含み得る。代表的なものは、R1Fe14Bを主相とするものである。この場合、R1が11at%未満ではαFe相が析出して磁気特性が低下し、16at%を超えるとR1Fe14B相が減少し磁気特性が低下する。また、Bが5.5at%未満では、軟磁性のR1Fe17相が析出して磁気特性が低下し、15at%を超えると、磁石粉末中のBリッチ相の体積分率が高くなり、R1Fe14B相が減少して磁気特性が低下するため好ましくない。
このようなR1は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイドからなる。もっとも、磁気特性に優れる元素として、R1が、Y、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびルテチウム(Lu)の少なくとも1種以上からなると好適である。この点は、後述のR2に関しても同様である。特に、コスト及び磁気特性の観点から、R1は主にNd、PrおよびDyの一種以上からなると好ましい。
さらに、本発明に係るCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末は、上記R1とは別に、Dy、Tb、NdまたはPrの少なくとも一種以上の希土類元素(R3)を含有していると好ましい。具体的には、各磁石粉末全体を100at%としたときに、R3を0.05〜5.0at%含有すると好ましい。これらの元素は、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の初期保磁力を高め、ボンド磁石の経年劣化抑制にも効果を発揮する。R3が0.05at%未満では、初期保磁力の増加が少なく、5at%を超えると(BH)maxの低下を生じる。R3は0.1〜3at%であるとより好ましい。
本発明のCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末は、上記R1とは別に、Laを含有していると好ましい。具体的には、各粉末全体を100at%としたときに、Laを0.001〜1.0at%含有すると良い。これにより、その磁石粉末やボンド磁石の経年劣化が抑制されるからである。Laが経年劣化の抑制に有効なのは、Laは希土類元素(R.E.)中で最も酸化電位の大きな元素である。このため、Laがいわゆる酸素ゲッタとして作用し、前記R1(Nd、Dy等)よりもLaが選択的に(優先的に)酸化され、結果的にLaを含有した磁石粉末やボンド磁石の酸化が抑制されるからである。
ここで、Laは、不可避不純物のレベルを越える微量含有されている程度で、耐熱性等の向上効果を発揮する。そして、Laの不可避不純物レベル量が、0.001at%未満であることから、本発明では、La量を0.001at%以上とした。一方、Laが1.5at%を超えると、iHcの低下を招き好ましくない。ここで、La量の下限が、0.01at%、0.05at%、さらには0.1at%であると、十分な耐熱性等の向上効果が発揮されより好ましい。そして、耐熱性等の向上およびiHcの低下抑制の観点から、La量が0.01〜1.0at%であると一層好ましい。
なお、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末中のBが10.8〜15 at%の場合、Laを含有する磁石粉末の組成は、R1Fe14相を単一相若しくはほぼ単一相として存在させ得る合金組成ではなく、R1Fe14相とB−rich相等の多相組織からなる合金組成となる。
CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末は、R1、BおよびFe以外に、その磁気特性等を向上させる種々の元素を含有しても良い。例えば、0.01〜1.0at%のガリウム(Ga)、0.01〜0.6at%のニオブ(Nb)の1種または2種を含有することが好ましい。Gaを含有することで、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の保磁力が向上する。Gaの含有量が0.01at%未満では保磁力の向上の効果が得られず、1.0at%を超えると逆に保磁力を減少させる。Nbを含有することで、水素化処理における順組織変態および逆組織変態の反応速度を容易にコントロールできるようになる。Nbの含有量が0.01at%未満では反応速度をコントロールするのが難しく、0.6at%を超えると保磁力を減少させる。特に上記範囲内のGaおよびNbを共に含有すると、単体で含有した場合に比べ保磁力及び異方化とも向上させることができ、その結果(BH)maxを増加させる。また、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ハウニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、鉛(Pb)のうち1種または2種以上を合計で0.001〜5.0at%含有することが好ましい。これらの原子を含有することで、得られた磁石の保磁力、角形比を改善することができる。また、含有量が0.001at%未満では磁気特性の改善の効果が現れず、5.0at%を超えると析出相などが析出し保磁力が低下する。
本発明では、Coを含有させるまでもなく、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末が異方性を発現し、その磁石粉末からなるボンド磁石は十分な磁気特性を発揮する。そこで本明細書では、Coを必須元素とする必要がないという意味で「Coレス」という表現を用いている。しかし、Co自体は、磁石粉末のキュリー温度を高め、温度特性を改善する元素である。つまり、R1系d−HDDR異方性磁石粉末の磁気特性や耐酸化性をさらに高める元素である。従って、本発明の磁石粉末であっても、Coの含有を敢えて否定する必要もないので、本発明のCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末は、0.001〜6at%のCoを含有しても良いこととした。もっとも、Coの含有量が0.001at%未満ではその効果が見られず、6at%を超えると材料が高価となる上、逆に磁気特性の低下を招く。
CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の原料合金の調製方法は、特に限定されない。一般的には、高純度の合金材料を所定組成に配合し、それを高周波溶解法等によって溶解し、鋳造して合金のインゴットを作成すれば良い。勿論、このインゴットを粉砕した粗粉末状のものを原料合金としても良い。さらに、均質化処理を施して組成分布の偏りを減少させた合金を原料合金とすればより良い。なお、インゴットの粉砕や、上記水素化処理後に行う粉末化は、乾式若しくは湿式の機械粉砕(ジョークラッシャ、ディスクミル、ボールミル、振動ミル、ジェットミル等)等を用いて行うことができる。前述した、Dy、Tb、NdまたはPr(R3)、La、Ga、Nb、Co等の合金元素も、上記調製中に原料合金に含有させれば効率的である。
もっとも、前述したように、R3やLaはCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末等の耐熱性を向上させる元素であるから、R3やLaが磁石粉末の構成粒子等の表面またはそれらの近傍に存在する方が好ましい。従って、原料合金中に最初からR3やLaを含有させておくよりも、磁石粉末の製造途中または製造後に、R3系粉末やLa系粉末をCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末に混合して、その粉末粒子の表面または内部にR3やLaを拡散等させる方と、より耐熱性に優れる磁石粉末が得られる。このような製造方法で得られた磁石粉末も、本発明でいうCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末に含まれる。
なお、そのR3系粉末は、少なくとも上記R3を含有していれば良く、例えば、R3単体、R3合金、R3化合物およびそれらの水素化物等の一種以上からなる。また、同様に、La系粉末は、少なくともLaを含有しておれば良く、例えば、La単体、La合金、La化合物およびそれらの水素化物等の一種以上からなる。R3合金やLa合金には、磁気特性への影響等を考慮して、遷移金属元素(TM)とLaとの合金、化合物(金属間化合物を含む)または水素化物からなると好ましい。これらの具体例を挙げれば、例えば、LaCo(Hx)、LaNdCo(Hx)、LaDyCo(Hx)、R3Co(Hx)、R3NdCo(Hx)、R3DyCo(Hx)等がある。ここで、遷移金属としてCoのみが記載しているが、Fe等でもよい。R3系粉末についても同様である。それらの粉末が合金または化合物(水素化物を含む)からなる場合、その合金等に含有されるR3やLaは20at%以上、さらには60at%以上であれば好適である。
また、磁石粉末の表面または内部へのR3やLaの拡散は、例えば、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末にR3系粉末やLa系粉末を混合した混合粉末を、673〜1123Kに加熱する拡散熱処理工程により行える。この拡散熱処理工程は、R3系粉末やLa系粉末の混合後に行っても、その混合と同時に行っても良い。この処理温度が673K未満では、R3系粉末やLa系粉末が液相になり難く、十分な拡散処理が困難となる。一方、1123Kを超えると、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末等の結晶粒成長を生じ、iHcの低下を招き、耐熱性(永久減磁率)を十分に向上させることができない。その処理時間は、0.5〜5時間が好ましい。0.5時間未満ではR3やLaの拡散が不十分となり、磁石粉末の耐熱性等があまり向上しない。一方、5時間を超えるとiHcの低下を招く。なお、言うまでもないが、この拡散熱処理工程は、酸化防止雰囲気(例えば、真空雰囲気)中で行われるのが好ましい。また、この拡散熱処理工程をd−HDDR処理の第1排気工程または第2排気工程に融合させて行う場合、それらの処理温度、処理時間および処理雰囲気を両者の共通する範囲に調整する。
これらの処理を行う際のCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末、R3系粉末またはLa系粉末の形態(粒径等)は問わないが、拡散熱処理工程を効率的に進める観点から、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の平均粒径が1mm以下、R3系粉末やLa系粉末の平均粒径が25μm以下程度であれば好適である。なお、このCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末は、水素化処理の進行具合により、水素化物であったり磁石粉末であったり、組織が3相分解したものであったり、それらが再結晶したものであったりしても良い。
CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の製造途中でR3やLaを添加する場合、相手材であるCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末は、多かれ少なかれ水素化物の状態となっている(以下、この水素化物の粉末を「R1FeBHx粉末」という。)。何故なら、水素化工程後、脱水素工程終了前または高温水素化工程後、第2排気工程終了前にR3やLaを添加することになるからである。このR1FeBHx粉末等は、水素を含有しない場合に比べて、R1やFeが非常に酸化され難い状態にある。このため、酸化が抑制された状態でR3やLaの拡散やコーティングを行うことでき、耐熱性に優れる磁石粉末が安定的に得られる。同理由により、R3系粉末やLa系粉末も水素化物の状態にあることが好ましい。例えば、R3CoHxやLaCoHx等であれば良い。さらに、本発明の優れた磁気特性をもつボンド磁石を得る上で、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末は、279.3kJ/m3以上、さらには344kJ/m3以上が好ましい。
上述したことは、R2系異方性磁石粉末(特に、CoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末の場合)についても同様に該当する。ちなみに、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末とR2系異方性磁石粉末とは、R1およびR2が同一でも良いし、さらには、両磁石粉末の組成が同一でも良い。
(2)R2系微粉末
R2系微粉末は、R2系異方性磁石粉末とその粒子表面のを被覆する第2界面活性剤とからなる。当然ながら、CoレスR1系d−HDDR粗粉末よりも平均粒径が小さい。なお、その平均粒径は、界面活性剤を含めた粒径である。本発明の場合、R2系微粉末のベースとなるR2系異方性磁石粉末は、磁気特性((BH)max)およびその形状(アスペクト比)が特定されるものの、その組成や製造方法は問わない。その代表的なものは、SmFe17Nを主相とするSmFeN系異方性磁石粉末やR2系d−HDDR異方性磁石粉末である。勿論、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末と同様、主成分以外にその磁気特性等を向上させるCo等の種々の元素を含有していても良い。
ちなみに、上記SmFeN系異方性磁石粉末は、例えば、次のようにして製造される。所望する組成のSm−Fe合金を溶体化処理して窒素ガス中で粉砕する。その粉砕後、NH3+H2混合ガス中で窒化処理を行った後に冷却する。そして、ジェットミル等で微粉砕すれば、10μm以下の細かなSmFeN系異方性磁石粉末が得られる。このSmFeN系異方性磁石粉末の粒径を、単磁区粒子サイズとすることで、高い保磁力が得られる。
本発明では、R2系微粉末の平均粒径を1〜10μmとしている。この平均粒径が1μm未満では、酸化し易くなり、残留磁束密度(Br)も低下して最大エネルギー積(BH)maxが減少する。その平均粒径が10μmを超えると保磁力が低下する。また、R2系微粉末の粒径が大きくなると、ボンド磁石の相対密度(充填率)の低下やボンド磁石の成形時に強磁性流体層の流動性が低下するので好ましくない。さらに、このR2系微粉末の平均粒径は、前記SmFeN系異方性磁石粉末の平均粒径にも合致するものである。R2系微粉末の平均粒径は1〜5μmであるとより好ましい。
なお、本発明では、ボンド磁石の成形前後でR2系微粉末の平均粒径の範囲を変更していない。これは、R2系微粉末がCoレスR1系d−HDDR粗粉末に対して相当に微細でかつ略球状をしていると共にボンド磁石の加熱成形の際にR2系微粉末は流動性に富んだ樹脂中に浮遊した状態となっており、応力集中等により割れて粒径が変化することはほとんどないからである。ちなみに、R2系微粉末の平均粒径は、界面活性剤による被覆後の粒径である。但し、通常、その被覆層は非常に薄いため、磁石粉末のみの平均粒径と大差ない。
本発明ではR2系微粉末の配合比を15〜40質量%としている。15質量%未満ではCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の構成粒子間が十分に充填されず、加熱成形工程におけるCoレスR1系d−HDDR粗粉末への応力集中が十分に回避されない。一方、40質量%を超えると、相対的にCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末が少なくなり、ボンド磁石の磁気特性が低下するからである。
(3)界面活性剤および樹脂
界面活性剤を用いるのは、ボンド磁石を加熱成形する際に、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末およびR2系異方性磁石粉末の樹脂中での流動性を高めるためである。これにより、その加熱成形時に高潤滑性、高充填性、高配向性等が発現されて、磁気特性および耐熱性に優れたボンド磁石が得られる。
例えば、粒径の大きなCoレスR1系d−HDDR粗粉末に着目すれば、上記加熱成形時、CoレスR1系d−HDDR粗粉末はその表面を覆う第1界面活性剤の存在によって、強磁性流体層の海の中に浮遊したような状態で存在していると考えられる。その結果、割れ感受性の高いCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末に成形圧力を印加しても、その構成粒子は容易に回転等して姿勢を変化させ、応力集中が大幅に緩和され、マイクロクラックの進展が防止される。また、界面活性剤の存在により、バインダである樹脂とR2系異方性磁石粉末との結合度が強まり、ボンド磁石の加熱磁場中成形時、両者は一体となって擬似的な流体層(強磁性流体層)を形成し易くなる。
界面活性剤の種類は、特に限定されないが、バインダである樹脂の種類を考慮して決定される。例えば、その樹脂がエポキシ樹脂なら、界面活性剤としてチタネート系カップリング剤あるいはシラン系カップリング剤を利用できる。このほか、樹脂と界面活性剤との組み合わせとして、フェノール樹脂ならシラン系カップリング剤を利用できる。
CoレスR1系d−HDDR粗粉末は、例えば、CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末と上記第1界面活性剤の溶液とを攪拌後に乾燥させる第1被覆工程により得られる。同様に、R2系微粉末は、例えば、R2系微粉末と上記第2界面活性剤の溶液とを攪拌後に乾燥させる第2被覆工程により得られる。配合したCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末とR2系異方性磁石粉末に対して共通の界面活性剤を用いて、上記第1被覆工程および第2被覆工程を同時に行うと、生産効率が向上して好ましい。ちなみに、界面活性剤による被覆層の膜厚は、0.5〜2μm程度のものである。原料(コンパウンド)の状態ではその構成粒子の全面が界面活性剤で被覆されていたとしても、ボンド磁石中に存在するCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子表面の一部しか、界面活性剤によって被覆されていないこともあり得る。CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の一部が成形中に割れて、新たな破面を生じるからである。
本発明でバインダとして用いる樹脂は、熱硬化性樹脂に限らず熱可塑性樹脂でも良い。熱硬化性樹脂には、例えば、前述のエポキシ樹脂、フェノール樹脂等あり、熱可塑性樹脂には、例えば12ナイロン、ポリフェニレンサルファイド等がある。
本発明で樹脂の配合比を1〜10質量%としたのは、1質量%未満では、バインダとしての結合力に欠け、10質量%を超えると(BH)max等の磁気特性が低下するからである。
(4)コンパウンドとボンド磁石
本発明のコンパウンドは、例えば、CoレスR1系d−HDDR粗粉末とR2系微粉末と樹脂とを混合した後、それらの混合物を加熱混錬して得られるものである。その形態は平均粒径が50〜500μm程度の顆粒状である。一例として、コンパウンドの様子を模式的に図1Aに示した。これは、CoレスNdFeB系d−HDDR粗粉末とSmFeN系微粉末とからなるコンパウンドについて、SEM観察により撮影したEPMA写真に基づき模式的に転写したものである。図1Bは、NdFeB系d−HDDR異方性磁石粉末と樹脂とからなる従来のコンパウンドの様子を模式的に示したものである。図1Bからわかるように、従来のコンパウンドでは、NdFeB系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子表面に樹脂が吸着しているだけである。これに対し、本発明のコンパウンドの場合、図1Aに示すように、NdFeB系粗粉末は、SmFeN系微粉末が樹脂中に均一に分散した強磁性緩衝体によって囲繞された状態となっている。
なお、NdFeB系粗粉末はCoレスR1系d−HDDR粗粉末に相当し、SmFeN系微粉末はR2系微粉末に相当する。また、図1Aでは、NdFeB系粗粉末が一粒毎に分離している様子を示しているが、本発明のコンパウンドはこのようなものに限られない。すなわち、本発明のコンパウンドは、NdFeB系粗粉末の構成粒子が複数結着していても良いし、さらには、一粒毎に分離したものと複数粒が結着したものが混在していても良い。
次に、これらのコンパウンドを加熱磁場中成形して得たボンド磁石の一部を拡大し、図1A、Bと同様に図2A、Bに模式的に示した。図2Aは本発明のボンド磁石を示し、図2Bは従来のボンド磁石を示す。図2Bから明らかなように、従来のボンド磁石の場合、加圧成形によって、NdFeB系粗粉末の粒子同士が直接接触し合って、局部的な応力集中が生じている。NdFeB系d−HDDR異方性磁石粉末は、d−HDDR処理によるマイクロクラックを表面に有するために割れ感受性が高くなっているため、上記応力集中により割れが容易に生じる。そして新たに生成された活性な破面は酸化されて、磁気特性の劣化原因となる。
一方、本発明のボンド磁石の一例を示す図2Aの場合、NdFeB系粗粉末の各粒子表面は、SmFeN系微粉末が分散したエポキシ樹脂からなる強磁性緩衝体によって均一に囲繞された状態となっている。言い換えると、SmFeN系微粉末とNdFeB系粗粉末との間にエポキシ樹脂が存在し、かつ、NdFeB系粗粉末の表面近傍にSmFeN系微粉末が均一に分布した状態となっている。
この場合にできる「強磁性流体層」は、先に定義したように、界面活性剤で覆われたNdFeB系粗粉末の表面を濡れた状態で覆う軟化または溶融した樹脂中に、SmFeN系微粉末が均一分散した構造を有する。加熱によりこの強磁性流体層が出現すると、樹脂が軟化または溶融して広がると共にSmFeN系微粉末がその樹脂に界面活性剤を介して濡れた状態となっているため、SmFeN系微粉末は加熱と共に移動性を増す。これに対し仮に、SmFeN系微粉末が樹脂中に均一に分散しておらず、凝集、偏在した状態にある場合、SmFeN系微粉末は樹脂により十分に囲まれた状態とはなっていないため、SmFeN系微粉末の流動性(移動性)は低下する。従って、SmFeN系微粉末の樹脂中への均一分散性が高い程、本明細書でいう強磁性流体層の流動性は増す。また、SmFeN系微粉末の均一分散性が高いと、ボンド磁石の加熱成形時にNdFeB系粗粉末の粒子同士が樹脂のみを介して直接接触することもないため、前記流動性と併せて強磁性流体層によるNdFeB系粗粉末の割れ抑制性が増す。
さらに、その均一分散性によって、加熱成形時、NdFeB系粗粉末の粒子間隙は樹脂をまとったSmFeN系微粉末によって容易に埋め尽くされるため、早期に充填率(相対密度)が上昇する。よって、その均一分散性を増すことで、通常の成形圧力でも非常に高い充填率が得られる。ちなみに、このような樹脂中へのSmFeN系微粉末の均一分散性は、それらの単なる混合物を加熱しただけで容易に得られるものではなく、コンパウンドの段階から存在していることが好ましい。
強磁性流体層の持つ作用を上述の「流動性」と「容易充填性」とに分けてさらに詳述する。
ボンド磁石を加熱磁場中成形する際、SmFeN系微粉末が樹脂中に均一分散した強磁性流体層(前記強磁性緩衝体の硬化前または固化前の状態)中に、NdFeB系粗粉末がまるで浮遊しているかのような状態となっている。このため、その加熱磁場中成形の際に、NdFeB系粗粉末の粒子は、大きな姿勢自由度を得ると共にその強磁性流体層がいわゆるクッションの役割を果して、NdFeB系粗粉末の各構成粒子は直接的な接触が回避され、局部的な応力集中の発生が抑止されたと考えられる。強磁性流体層に依るこのような作用を本明細書で「流動性」という。また、「容易充填性」とは、強磁性流体層の均一分散性により、低い成形圧力でボンド磁石を成形したときでも、その密度を容易に高められることをいう。この両特性ともに、強磁性流体層による作用であり厳密にわけることはできない。以下にその作用を具体例に基づき説明する。
流動性および容易充填性は、例えば、使用するコンパウンドの加熱時の粘度、ボンド磁石の成形時におけるせん断トルク、任意の成形圧力下での成形したボンド磁石の相対密度等によって指標される。但し、本明細書では、相対密度をその流動性および容易充填性の指標とした。なぜなら、相対密度を測定した試料(ボンド磁石)をそのまま利用して、目的である永久減磁率を測定できるからである。ここで相対密度とは、原料の配合比から決る理論密度(ρth)に対する成形体の密度(ρ)の比(ρ/ρth)である。
実際に、種々の成形圧力下で成形した成形体の相対密度と成形圧力との関係を調べた結果を図3に示した。同図中、▲は第3実施例の試料No.3−2の成形圧力を種々変更した場合の相対密度を示す。同様に、◆は後述する第2比較例の試料No.H1に係る相対密度であり、■は試料No.H4に係る相対密度である。
試料No.3−2(▲)は、磁石粉末に界面活性剤を付与したNdFeB系粗粉末およびSmFeN系微粉末と樹脂とを加熱混練したコンパウンドを使用して、ボンド磁石を加熱磁場中成形した場合である。この場合、成形圧力が低い段階から相対密度が急増している。そして、成形圧力が198MPa(2ton/cm2)程度で、ほぼその相対密度が飽和状態に到達する。このため、所望の特性をもつボンド磁石を成形する際、非常に低い成形圧力で行うことができる。このことは、優れた流動性と容易充填性を発現していることを示している。すなわち、加熱磁場中成形時に強磁性流体層が非常に優れた流動性を発揮し、NdFeB系粗粉末の姿勢変動が容易になり構成粒子への応力集中が回避されたと共に容易に高い充填率に到達し得たことがわかる。
その上、充填率の向上に起因して含有酸素量を低減させる共に外部からの酸化因子を遮断することで、耐熱性(永久減磁率)の非常に優れたボンド磁石が得られる。強磁性流体層が形成されている状態では、通常の成形圧力である882MPaで成形した場合でも、強磁性流体層の優れた流動性と容易充填性とにより、結果的に、高充填率とNdFeB系粗粉末の高い割れ抑制性が発現する。そして得られたボンド磁石は、(BH)maxが180.0kJ/m3と磁気特性が非常に高レベルで、かつ、規格化粒子数も0.8×109個/m2と少なく、永久減磁率が−3.7%と良好であった。
試料No.H4(■)は、各磁石粉末と樹脂とを室温で混練したものを加熱磁場成形した場合である。この場合、成形圧力に対する相対密度の立上がりが鈍く、試料No.3−2(▲)の場合のような高い流動性及び容易充填性は得られない。この場合、加熱混練を行っていない為、相対密度上昇が遅く、流動性が劣り、CoレスR1系d−HDDR粗粉末の姿勢変動が困難で、潤滑性、クッション性も劣ることとなる。よって、永久減磁率も加熱混練したものに比べ劣るものとなっている。ここで、永久減磁率が大きく低下していないのは、界面活性剤の両磁石粉末への被覆、両粉末のサイズ、配合比等の限定により割れにくくなっているためである。この場合、通常の成形圧力である882MPaでは、磁気特性および耐熱性(永久減磁率)を両立したボンド磁石を得ることはできない。
ここで、加熱混練を行わない場合に、加熱混練したものと同レベルの相対密度を得るようにしたときの結果を示す。すなわち、加熱混練行わない場合でも、生産性は別として、通常ありえないような高い成形圧力を加えたときに、本発明のような高充填率と割れ抑制性を同時に満足した物が得られるか否かを検証した。表4の比較例H7は、実施例3−1の2倍以上の成形圧力である1960MPaを加えて、加熱混練しない点以外は実施例3−1と同一条件で行ったものである。その結果、相対密度が同一の場合、規格化粒子数も1.5×109個/m2と1.2×109個/m2を大きく超え、それに伴い、永久減磁率も大幅に低下した。
以上のことから、本発明以外の製造方法では、強磁性流体層の形成が困難で、成形中に高い流動性及び容易充填性も得難く、高い充填率と割れ抑制性も達成し得ないため、高い(BH)max値および優れた永久減磁特性の両立も困難であることがわかる。
試料No.H1(◆)は、室温で混練し室温で磁場成形したものである。この場合、成形圧力に対する相対密度の立上がりがさらに鈍く、高い流動性及び容易充填性は得られない。さらに、表4から明らかなように、磁気特性および耐熱性(永久減磁率)も他のボンド磁石に比べて大幅に劣っている。
ところで、試料No.3−2(▲)のように低圧成形した場合であっても、非常に優れた磁気特性および耐熱性を備えるボンド磁石が得られるのは、加熱磁場中成形のときに出現する強磁性流体層が大きく寄与していると考えられる。
結局、強磁性流体層は以下のような効果を有する。
ボンド磁石を加熱磁場中成形する際において、異方性磁石粉末の回転容易性および姿勢制御容易性を向上させる。そして、成形時のCoレスR1系d−HDDR粗粉末の割れを抑止し、永久減磁率を向上させる。また、異方性磁石粉末の充填率および配向性を高め、さらには、これら充填率および配向性の向上は(BH)maxを向上させる。
強磁性流体層は、ボンド磁石を加熱磁場中成形する際において、R2系微粉末および樹脂の移動距離短縮化とR2系微粉末の偏在抑止を可能とする。また強磁性流体層がCoレスR1系d−HDDR粗粉末の構成粒子間に均一に分散することにより、CoレスR1系d−HDDR粗粉末の粒子同士の直接的な接触が防止され割れ防止効果が高まる。特に、R2系微粉末の偏在に伴う応力集中の緩和やCoレスR1系d−HDDR粗粉末の全面に渡って均一に存在する略球状のR2系微粉末のコロ作用による潤滑効果の発現によって、CoレスR1系d−HDDR粗粉末の割れ抑止や永久減磁率の低下に貢献する。また、CoレスR1系d−HDDR粗粉末の構成粒子間に形成される空隙を埋めて充填率を向上させ、ボンド磁石の(BH)maxおよび永久減磁率を高める。なお、R2系微粉末の偏在抑止により、ボンド磁石の表面磁束の均一性も得られ、ボンド磁石の量産時、その品質が安定し易い。
上述のように、本明細書では、この強磁性流体層の有効性を客観的に対比可能とするために、成形温度120℃、磁場2.0MA/m(2.5T)での成形圧力を変えて加熱磁場成形したときにえられる相対密度を測定して、流動性と容易充填性を評価した。基本的に、流動性と容易充填性を分離することはできないが、便宜的に、実施例においては、以下のように評価した。
流動性に関しては、主として、成形温度120℃、磁場2.0MA/m(2.5T)、392MPaの条件下で加熱磁場成形したときに得られるボンド磁石の相対密度を使用した。ボンド磁石を加熱磁場中成形する際、強磁性流体層によって十分な流動性が得られた場合、ボンド磁石の相対密度は91〜99%、93〜99%さらには95〜99%という非常に高い値となる。逆に、強磁性流体層が形成されていない状態では相対密度が91%未満となり、流動性が不十分で、CoレスR1系d−HDDR粗粉末およびR2系微粉末の回転容易性や姿勢制御容易性も低いといえる。そして、このとき得られたボンド磁石は、高い磁気特性および良好な耐熱性を併せ持つことができない。一方、相対密度の上限を99%以下としたのは、それが量産レベルでの製造限界だからである。
容易充填性については、主として、成形温度150℃、磁場2.0MA/m(2.5T)、成形圧力882MPa(工業上、最終的な製品成形時に付与される圧力)の条件下で加熱磁場成形したときに得られるボンド磁石の相対密度を使用した。相対密度が91%未満では、高い磁気特性および良好な耐熱性を併せ持つことができない。この相対密度の上限が99%である理由は前述した通りである。
実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(A)第1実施例および第2実施例
(試料の製造)
(1)NdFeB系粗粉末(CoレスR1系d−HDDR粗粉末)
(i)ボンド磁石の原料粉末として、表1A(第1実施例)、表2A(第2実施例)および表3A(第1比較例)に示す組成をもつ異方性磁石粉末をd−HDDR処理により製造した。具体的には、先ず、各表に示した組成に調製した合金インゴット(30kg程度)を溶解・鋳造して製造した。このインゴットにアルゴンガス雰囲気中で1140〜1150℃x40時間の均質化処理を施した(但し、試料No.2−2、2−3は除く)。さらに、このインゴットをジョークラッシャにより平均粒径が10mm以下の粗粉砕物に粉砕した。この粗粉砕物に、次の条件の低温水素化工程、高温水素化工程、第1排気工程および第2排気工程とからなるd−HDDR処理を施した。すなわち、室温、水素圧力100kPaの水素ガス雰囲気下で、各試料の合金へ十分に水素を吸収させた(低温水素化工程)。
次に、800℃で30kPa(水素圧力)の水素ガス雰囲気下で、480分間の熱処理を施した(高温水素化工程)。引き続き、800℃に保持したまま、水素圧力0.1〜20kPaの水素ガス雰囲気下で、160分間の熱処理を施した(第1排気工程)。最後に、60分間、ロータリポンプおよび拡散ポンプで真空引きして、10−1Pa以下の真空雰囲気下で冷却した(第2排気工程)。こうして、1バッチ当たり、各10kg程度のNdFeB系d−HDDR異方性磁石粉末(CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末)をそれぞれ作製した。
表1Aに示したNdFeB系粗粉末は、Coを含有しない本来的なCoレスNdFeB系d−HDDR異方性磁石粉末からなり、表2Aに示したNdFeB系粗粉末は、Coをあえて含有させたCo入りNdFeB系d−HDDR異方性磁石粉末からなる。以下では、両方の異方性磁石粉末をまとめて単に「NdFeB系異方性磁石粉末」という。なお、表中に示した平均粒径は、ボンド磁石成形前の原料粉末としての平均粒径である。この平均粒径は、ふるい分級後の各級の重量を測定し、おもみつき平均により求めた。
(ii)次に、上記の各NdFeB系異方性磁石粉末に、界面活性剤の溶液を加えて、攪拌させならがら真空乾燥させた(第1被覆工程)。界面活性剤の溶液は、シラン系カップリング剤(日本ユリカー株式会社製、NUCシリコーンA−187)をエタノールで2倍に稀釈したものである。但し、試料No.1−3については、界面活性剤の溶液として、チタネート系カップリング剤(味の素株式会社製、プレンアクトKR41(B))をメチルエチルケトンで2倍に稀釈したものを使用した。
こうして、界面活性剤によって粒子表面が被覆されたNdFeB系異方性磁石粉末からなるNdFeB系粗粉末(CoレスR1系d−HDDR粗粉末)が得られた。但し、表3A中の試料No.C1およびC2については、界面活性剤の被覆を行わなかった。
(2)SmFeN系微粉末(R2系微粉末)
R2系異方性磁石粉末として、平均アスペクト比が1〜2である市販のSmFeN系異方性磁石粉末(住友金属鉱山株式会社製)または市販のSmFeN系異方性磁石粉末(日亜化学工業株式会社製)を用意した。試料No.1−1〜1−4及びNo.2−1〜2−4の平均アスペクト比は1.6であり、試料No.1−5〜1−10、No.2−5〜2−6、No.B1〜F2およびNo.H1〜H6の平均アスペクト比は1.1であった。
このSmFeN系異方性磁石粉末に上記NdFeB系異方性磁石粉末の場合と同様の界面活性剤(シラン系カップリング剤)の溶液を加えて、攪拌させならがら真空乾燥させた(第2被覆工程)。こうして、界面活性剤で表面が被覆された粒子からなる各種のR2系微粉末(SmFeN系微粉末)が得られた。但し、表3A中の試料No.C2およびC3については、この界面活性剤の被覆を行わなかった。また、表3A中の試料No.B1およびB2では、SmFeN系微粉末を使用せず、NdFeB系粗粉末のみ用いた。
なお、界面活性剤の被覆方法は、上述した方法の他に、例えば、配合したNdFeB系異方性磁石粉末とSmFeN系異方性磁石粉末とをヘンシェルミキサー等で混合し、そこへ界面活性剤の溶液を加えて攪拌、真空乾燥させて、両異方性磁石粉末を同時に界面活性剤で被覆しても良い。
(3)コンパウンド
表1A、表2Aおよび表3Aに示した配合比(質量%)で、上記のNdFeB系粗粉末とSmFeN系微粉末とをヘンシェエルミキサーによりそれぞれ混合した。その混合物に各表に示した割合でエポキシ樹脂を加えて(混合工程)、バンバリーミキサーにより、110℃で加熱混錬を行ってコンパウンドを得た(加熱混練工程)。この混錬には、上記バンバリーミキサーの他、ニーダー等の混錬機を使用しても良い。
ここで使用した上記エポキシ樹脂は、熱履歴を受けていない状態で、軟化点が90℃、硬化温度(硬化点)が150℃である。(定義)そこで、上記加熱混練工程は、そのエポキシ樹脂の軟化点以上で硬化点未満の温度範囲(90〜130℃)で行った。なお、硬化温度とは、30分間加熱したときに、樹脂の95%が硬化反応を終了する温度を示す。
ちなみに、加熱混練温度が樹脂の軟化点未満では、樹脂が溶融状態とはならなずSmFeN系微粉末を樹脂中に均一分散させることができない。加熱混練温度が樹脂の硬化点以上では、樹脂が磁石粉末の周りをコーティングし均一に分散し得るとしても、エポキシ樹脂の硬化が進行する。このため、その後の磁場配向が困難となり、ボンド磁石の磁気特性の大幅な低下を招き得る。ここでいう「均一に分散」とは、SmFeN系微粉末とNdFeB系粗粉末との間にエポキシ樹脂が存在し、かつ、NdFeB系粗粉末の表面をSmFeN系微粉末が均一に分布している状態をいう。
なお、表3A中の試料No.B1およびB2では、NdFeB系粗粉末および樹脂のみを加熱混練してコンパウンドとした。
(4)ボンド磁石
各コンパウンドを用いて、磁気測定用ボンド磁石を製造した。ボンド磁石の成形は、成形温度150℃、2.0MA/mの磁場を印加しつつ(加熱配向工程)、成形圧力882MPa(9ton/cm2)で加熱成形して行った(加熱成形工程)。
また、本発明の低圧成形性を確認するために、成形温度150℃、2.0MA/mの磁場を印加しつつ(加熱配向工程)、成形圧力392MPa(4ton/cm2)でも加熱成形した(加熱成形工程)。なお、上記の各工程は、コンパウンドを充填した成形用金型中で連続的に行った(つまり、一段成形した)。こうして、7x7x7mmの立方体状の成形体を得た。得られた成形体に、空芯コイルを用いて励磁電流10000Aを加えることにより、4.0Tの磁場中で着磁を行い(着磁工程)、複合希土類異方性ボンド磁石とした。
なお、本実施例では硬化処理を実施していないが、ボンド磁石を各種製品に実際に用いる場合、強度アップ等のために硬化処理を行っても良い。そのときの熱処理条件も、ボンド磁石の用途に応じて適宜選択すれば良い。また、上記加熱成形工程では、圧縮成形したが、これに限らず、射出成形、押し出し成形等の公知の成形方法を利用しても良い。
(試料の測定)
(1)表1A、表2Aおよび表3Aに示す各試料からなる磁気測定用ボンド磁石について、磁気特性、永久減磁率、相対密度およびボンド磁石中におけるNdFeB系粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数をそれぞれ、前述した測定方法により測定した。具体的には次の通りである。
ボンド磁石の最大エネルギー積はBHトレーサー(理研電子販売株式会社製、BHU−25)で測定して求めた。永久減磁率は、成形されたボンド磁石の初期磁束と、100℃及び120℃の大気雰囲気中に1000時間保持した後に再着磁して得られた磁束との差から、その減少分の初期磁束に対する割合を求めたものである。この磁束の測定には、電子磁気株式会社製、MODEL FM−BIDSCを用いた。
相対密度は、加圧成形後の成形体の寸法をマイクロメータで測定してその体積を算出すると共に電子天秤でその重量を測定して、それらの結果から成形体の嵩密度(ρ)を求めた。さらにそれを各試料で使用した磁石粉末および樹脂の真密度および配合比から求まる成形体の理論密度(ρth)で除して成形体の相対密度(ρ/ρth)を求めた。ボンド磁石中におけるNdFeB系粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数は、前述したとおりの手法により求めた。こうして得られた結果を表1B、表2B3および表3Bに示す。
(2)表1A、Bの試料No.1−1からなるボンド磁石について、SEM観察した写真を図4〜6に示す。この写真は、島津製作所株式会社製、EPMA−1600を用いて撮影したものである。
図4は、2次電子像を示す。図5は、Nd元素のEPMA像を示す。この図5中では、青→黄→赤の順でNd元素の濃度が濃くなっていることが示されており、大径粒子にNdが濃化していることから、その粒子がNdFeB系異方性磁石粉末の粒子であることが解る。
図6は、Sm元素のEPMA像を示す。図6中では、青→黄→赤の順でSm元素の濃度が濃くなっていることが示されている。この図6から、全ての大径粒子(NdFeB系異方性磁石粉末の粒子)の周囲全面が、SmFeN系異方性磁石粉末の粒子で覆いつくされていることと、NdFeB系異方性磁石粉末からなる大径粒子間に形成された隙間にSmFeN系異方性磁石粉末の小径粒子が均一にかつ密に分散していることが解る。
(評価)
以上の結果から次のことが解る。
(1)第1実施例および第2実施例について
第1実施例および第2実施例のいずれの試料も、本発明でいう平均粒径、配合比を備えたものである。いずれのボンド磁石も、(BH)maxが134kJ/m3 以上の高い磁気特性を示している。
その耐熱性の指標となる永久減磁率は、全ての試料で−10%未満の−5%以下(100℃環境下)という優れた永久減磁特性を示した。特に、120℃環境下での永久減磁率でも、全ての試料で−6.5%以下という優れた永久減磁特性を示した。また、ボンド磁石の加熱成形時におけるNdFeB系粗粉末の流動性を指標すると共に磁気特性および耐熱性に大きく影響する相対密度は、いずれも91%以上の高密度である。しかも、いずれの試料の場合も、成形圧力の高低に拘わらず相対密度が高かった。これにより、高いレベルの流動性と均一分散性(容易充填性)がボンド磁石の加熱成形時に発揮されて、割れ抑制性と充填率が高いレベルで両立されることが確認された。
試料No.2−2および2−3のボンド磁石は、B含有量を高くして、均質化熱処理を省略し、製造コストの低減を図ったものである。試料No.1−4、2−2および2−3のボンド磁石は、酸素ゲッタとして機能するLaを含有させることで、永久減磁率をさらに高めたものである。これらのボンド磁石は、試料No.1−1等のボンド磁石に比べて(BH)maxが若干低くなっているが、永久減磁率はいずれも−3.4%以下(100℃)で非常に耐熱性に優れたものとなっている。
さらに、試料No.1−5のボンド磁石は、NdFeB系粗粉末の配合量を低減した低コストタイプのものである。NdFeB系粗粉末の低減によって、ボンド磁石の(BH)maxは若干低くなるが、その永久減磁率は−4.5%(100℃)であり優れた耐熱性を示した。
第1実施例および第2実施例の各ボンド磁石中に含まれるNdFeB系粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数が、いずれも0.7〜0.9×109個/m2であり、非常に少ないものであった。
第1実施例のボンド磁石および第2実施例のボンド磁石を比較すると、(BH)maxおよび永久減磁率共に大差なく、いずれも磁気特性および耐熱性に優れるものであった。特に、永久減磁率を観ればわかるように、第1実施例のCoレスボンド磁石は第2実施例のCo入りボンド磁石と同等程度であることがわかる。
以上から、経済性や耐熱性を特別に重視したタイプのボンド磁石を除いて考えれば、CoレスNdFeB系d−HDDR異方性磁石粉末を利用しつつも、Coを含有させることなく、最大エネルギー積(BH)maxが164.0〜.207kJ/m3で100℃で1000Hrの永久減磁率が−3.3〜−3.9%、120℃で1000Hrの永久減磁率が−5.0〜−6.1%といった非常に高性能なボンド磁石を得ることに成功した。特に、前述した特許文献8〜11では、Co入りHDDR異方性磁石粉末を用いることで最大エネルギー積(BH)max:142.5〜164.7kJ/m3、100℃x1000Hrの永久減磁率:−2.6〜−4.7%のボンド磁石を得ているのに対して、本実施例では、Coを含有させた異方性磁石粉末を用いるまでもなく、それら従来のボンド磁石と同等レベルの高磁気特性および高耐熱性を発揮するボンド磁石を得ることができた。
(2)第1比較例について
試料No.B1、B2はSmFeN系微粉末なしのボンド磁石であり、従来技術に相当する。いずれも(BH)maxおよび永久減磁率が劣っている。これは相対密度およびボンド磁石中の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数が1.2×109個/m2より大きく増加していることからも明らかである。特に、試料No.B2は、高圧成形によって高密度化を図っているにも拘わらず、その相対密度は高々89%に過ぎなかった。この場合、特に120℃での永久減磁率が著しく劣るっている。
試料No.C1〜C2は、一方または両方の磁石粉末に界面活性剤による被覆処理を施さなかったものである。いずれの場合も、低圧成形(392MPa)した際の相対密度が低くなっている。試料No.C1の場合は、NdFeB系異方性磁石粉末の表面に界面活性剤の被覆がないために、ボンド磁石の加熱成形中に、NdFeB系異方性磁石粉末と強磁性流体層との流動性が低かったためと思われる。試料No.C2の場合は、SmFeN系異方性磁石粉末が界面活性剤で被覆されていないために、それが樹脂中に均一分散した強磁性流体層がそもそも形成されず、ボンド磁石の加熱成形中に強磁性流体層による流動性が得られなかったためと思われる。試料No.C3の場合は、両異方性磁石粉末が界面活性剤で被覆されていないために、ボンド磁石の加熱成形中における磁石粉末と樹脂との流動性が非常に低下していたためと思われる。当然、この場合の(BH)maxおよび永久減磁率が最も悪くなっている。
また、試料No.C1〜C3では、成形圧力を392MPaとしたときの相対密度が85〜87%と低く充填性に劣る。また、流動性の低下により、ボンド磁石の加熱成形中にNdFeB系粗粉末が割れて、ボンド磁石中のNdFeB系粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数が、いずれの試料でも1.2×109個/m2より大きくなっている。そして、その規格化粒子数の増加と共に永久減磁率も低下している。これは、磁石粉末の表面に界面活性剤がなく、樹脂との密着性(濡れ性)が劣り酸化が進行し易くなったためとも思われる。
試料No.D1は、NdFeB系粗粉末の平均粒径が過小な場合である。試料No.D2は、逆にその平均粒径が過大な場合である。いずれの場合でも、(BH)maxが大きく低下している。従って、高耐熱性と共に高磁気特性を得るには、NdFeB系粗粉末の平均粒径が本発明の範囲内であることも重要である。
試料No.E1は、NdFeB系粗粉末の配合量が過少な場合である。試料No.E2は、その配合量が過多な場合である。NdFeB系粗粉末の配合量が少ないと、その分、磁気特性は低下している。これは、SmFeN微粉末は高圧(980MPa以上)で成形しないと十分な密度が得られないことは公知であることから、NdFeB系粗粉末の配合量が少ない(すなわち、SmFeN微粉末の配合量が増える)と高密度化が図れず、磁気特性が低下する。一方、その配合量が多くなっても、SmFeN系微粉末の配合量が相対的に少ないため、ボンド磁石の成形時に十分な強磁性流体層が形成されなくなる。その結果、相対密度が低下し、SmFeN粒子がNdFeB粒子の全面を覆うこともできず、NdFeB系粗粉末の割れ等が発生し易くなって、耐熱性(永久減磁率)が低下している。このことは、ボンド磁石中のNdFeB系粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数が1.2×109個/m2より大きくなっていることからもわかる。
試料No.F1は、エポキシ樹脂の配合量が過少な場合である。試料No.F2は、その配合量が過多な場合である。試料No.F1の場合、ボンド磁石の加熱成形時に、強磁性流体層の形成が不十分となり、NdFeB系粗粉末の割れによって永久減磁率が低下している。試料No.F2の場合、相対的に磁石粉末の配合量が少なくなるため、ボンド磁石の磁気特性が低下する。
以上のことから、磁気特性および耐熱性に優れたボンド磁石を得るには、界面活性剤による被覆処理を行ったNdFeB系粗粉末およびSmFeN系微粉末を用いると共に、それらの平均粒径、配合比を適切な範囲とすることが必要なことがわかった。
(B)第3実施例
(試料の製造および測定)
ボンド磁石の成形に使用したコンパウンドの製造条件(加熱混練温度)およびそのコンパウンドを用いたボンド磁石の成形条件(成形温度および成形圧力)を種々変更して、第3実施例および第2比較例に係る各種のボンド磁石を用意した。コンパウンドの製造条件およびボンド磁石の成形条件と、得られたボンド磁石について調べた磁気特性、相対密度、永久減磁率および均一分散性を表4に示した。
ここで使用したNdFeB系粗粉末、SmFeN系微粉末および樹脂の種類と配合量は、第1実施例の試料No.1−1と同様である。また、それ以外のボンド磁石の製造条件、ボンド磁石の測定方法等も第1実施例の場合と同様である。
(評価)
表4の結果から次のことが解る。
試料No.3−1、3−2は、樹脂の軟化点以上硬化点未満の温度で、磁石粉末と樹脂とを加熱混練し、得られたコンパウンドを用いてその温度内で加熱磁場中成形したものである。いずれも、良好な磁気特性および耐熱性を示している。
試料No.H1〜H5は、各磁石粉末と樹脂とを室温で混練して製造したコンパウンドから、ボンド磁石を成形したものである。このようなコンパウンド中における各磁石粉末と樹脂とは、それぞれが偏在して混在しているに過ぎないと考えられる。すなわち、良好な強磁性流体層の形成が困難で、ボンド磁石の成形時に、SmFeN系微粉末とNdFeB系粗粉末との間にエポキシ樹脂が必ず存在し、かつ、NdFeB系粗粉末の周囲をSmFeN系微粉末が均一に分布している状態が形成されていないと思われる。このため、成形圧力が392MPaの相対密度を観ればわかるように、加熱磁場中成形時の流動性は低いことがわかる。本発明の相対密度が97.0%程度であるのに対し試料No.H1〜H5の場合、図3でも詳述したように、その流動性が劣るため、通常の成形圧である882MPaでの相対密度が最下限85.0%まで低下しおり、従来技術を上回る高レベルな磁気特性がえられていない。
そこで、ボンド磁石の相対密度を試料No.3−1と同一の97.0%程度とすべく、試料No.H2の成形圧力をその2倍以上の1960MPaにまで上げて加熱磁場中成形を行った(試料No.H7)。相対密度を97.0%まで高めることで磁気特性は向上するものの、試料No.3−1と同一レベルの磁気特性は得られなかった。このときの規格化粒子数は1.5×109個/m2となっており、本発明でいう1.2×109個/m2を大きく超えていた。それに伴い、永久減磁率も大幅に低下した。
このことから、本発明の製造方法に依らない限り、強磁性流体層が形成されず、成形中に高い流動性及び容易充填性を得ることが困難である。そして、高い充填率と割れ抑制性も得られず、結果的に優れた(BH)max値と優れた永久減磁特性との両立もなし得ない。
試料No.H6は、各磁石粉末と樹脂とを樹脂の硬化点以上で加熱混練して製造したコンパウンドを、同温度で加熱磁場中成形したものである。この場合、SmFeN系微粉末のNdFeB系粗粉末の表面における均一分散性は良好である。しかし、コンパウンドの製造段階で樹脂の硬化が進行しているため、その後のボンド磁石の加熱成形中に樹脂が十分に軟化しない。その結果、流動性に富んだ強磁性流体層が得られず、NdFeB系粗粉末等の磁場配向も不十分となり、ボンド磁石の磁気特性は大きく低下した。
以上から、高磁気特性および高耐熱性のボンド磁石を得るには、界面活性剤による被覆処理した磁石粉末と樹脂とを加熱混練したコンパウンドを用いると共にそのコンパウンドを加熱磁場中成形してボンド磁石を製造するのが好適であることがわかる。
Figure 2005116991
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本発明に係る複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンドを模式的に示した図である。 従来のボンド磁石用コンパウンドを模式的に示した図である。 本発明に係る複合希土類異方性ボンド磁石を模式的に示した図である。 従来のボンド磁石を模式的に示した図である。 成形圧力と相対密度との関係を示すグラフである。 本発明に係る複合希土類異方性ボンド磁石を観察したSEM2次電子像写真であり、ボンド磁石の金属粉末に注目したものである。 本発明に係る複合希土類異方性ボンド磁石を観察したNdのEPMA像写真であり、NdFeB系粗粉末のNd元素に注目したものである。 本発明に係る複合希土類異方性ボンド磁石を観察したSmのEPMA像写真であり、R2系微粉末のSm元素に注目したものである。 ボンド磁石中のNdFeB系粗粉末の単位面積あたりの規格化粒子数と永久減磁率との関係を示すグラフである。

Claims (16)

  1. イットリウム(Y)を含む希土類元素(以下、「R1」と称する。)と鉄(Fe)とホウ素(B)とを主成分としコバルト(Co)を基本的に含有しないCoレスR1系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末および該CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子表面の少なくとも一部を被覆する第1界面活性剤からなり、平均粒径が40〜200μmであるCoレスR1系d−HDDR粗粉末と、
    Yを含む希土類元素(以下、「R2」と称する。)を主成分の一つとし最大エネルギー積(BH)maxが240kJ/m3以上であるR2系異方性磁石粉末および該R2系異方性磁石粉末の粒子表面の少なくとも一部を被覆する第2界面活性剤からなり、平均アスペクト比が2以下で平均粒径が1〜10μmであるR2系微粉末と、
    バインダである樹脂とからなるボンド磁石であって、
    該ボンド磁石中に該CoレスR1系d−HDDR粗粉末が50〜84質量%、該R2系微粉末が15〜40質量%および該樹脂が1〜10質量%含有されており、
    該ボンド磁石の理論密度(ρth)に対する嵩密度(ρ)の比である相対密度(ρ/ρth)が91〜99%であり、
    該ボンド磁石中のCoレスR1系d−HDDR粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数が1.2×109個/m2以下であることを特徴とする磁気特性および耐熱性に優れる複合希土類異方性ボンド磁石。
  2. 前記R2系異方性磁石粉末は、サマリウム(Sm)とFeと窒素(N)とを主成分とするSmFeN系異方性磁石粉末である請求項1に記載の複合希土類異方性ボンド磁石。
  3. 前記R2系異方性磁石粉末は、R2とFeとBとを主成分としCoを基本的に含有しないCoレスR2系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末である請求項1に記載の複合希土類異方性ボンド磁石。
  4. 前記CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末または前記R2系異方性磁石粉末の少なくとも一方は、全体を100at%としたときに、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、ネオジム(Nd)またはプラセオジム(Pr)の少なくとも一種以上の希土類元素(以下、「R3」という。)を0.05〜5at%含有する請求項1または3に記載の複合希土類異方性ボンド磁石。
  5. 前記CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末または前記R2系異方性磁石粉末の少なくとも一方は、全体を100at%としたときにランタン(La)を0.01〜1.5at%含有する請求項1または3に記載の複合希土類異方性ボンド磁石。
  6. 前記CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末または前記CoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末は、Coを0.001〜6.0at%有する請求項1または3に記載の複合希土類異方性ボンド磁石。
  7. R1とFeとBとを主成分としCoを基本的に含有しないCoレスR1系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末および該CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子表面を被覆する第1界面活性剤からなり、平均粒径が40〜200μmであるCoレスR1系d−HDDR粗粉末と、
    R2を主成分の一つとし最大エネルギー積(BH)maxが240kJ/m3以上であるR2系異方性磁石粉末および該R2系異方性磁石粉末の粒子表面を被覆する第2界面活性剤からなり、平均アスペクト比が2以下で平均粒径が1〜10μmであるR2系微粉末と、
    バインダである樹脂とからなるコンパウンドであって、
    該コンパウンド中に該CoレスR1系d−HDDR粗粉末が50〜84質量%、該R2系微粉末が15〜40質量%および該樹脂が1〜10質量%含有されており、
    該CoレスR1系d−HDDR粗粉末の各粒子は、該樹脂中に該R2系微粉末が均一分散してなる強磁性緩衝体で囲繞されて直接的な接触が回避されていることを特徴とする複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンド。
  8. 前記R2系異方性磁石粉末は、SmとFeとNとを主成分とするSmFeN系異方性磁石粉末である請求項7に記載の複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンド。
  9. 前記R2系異方性磁石粉末は、R2とFeとBとを主成分としCoを基本的に含有しないCoレスR2系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末である請求項7に記載の複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンド。
  10. 前記CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末または前記R2系異方性磁石粉末の少なくとも一方は、全体を100at%としたときに、R3を0.05〜5at%含有する請求項7または9に記載の複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンド。
  11. 前記CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末または前記R2系異方性磁石粉末の少なくとも一方は、全体を100at%としたときにLaを0.01〜1at%含有する請求項7または9に記載の複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンド。
  12. 前記CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末または前記CoレスR2系d−HDDR異方性磁石粉末は、Coを0.001〜6.0at%有する請求項7または9に記載の複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンド。
  13. 請求項1に記載した複合希土類異方性ボンド磁石の製造に利用される請求項7に記載の複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンド。
  14. R1とFeとBとを主成分としCoを基本的に含有しないCoレスR1系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末および該CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子表面を被覆する第1界面活性剤からなり、平均粒径が40〜200μmであるCoレスR1系d−HDDR粗粉末が50〜84質量%と、R2を主成分の一つとし最大エネルギー積(BH)maxが240kJ/m3以上であるR2系異方性磁石粉末および該R2系異方性磁石粉末の粒子表面を被覆する第2界面活性剤からなり、平均アスペクト比が2以下で平均粒径が1〜10μmであるR2系微粉末が15〜40質量%と、バインダである樹脂が1〜10質量%とからなり、該CoレスR1系d−HDDR粗粉末の各粒子が、該樹脂中に該R2系微粉末が均一分散してなる強磁性緩衝体で囲繞されて直接的な接触が回避されているコンパウンドを、該強磁性緩衝体を構成する樹脂の軟化点以上の温度に加熱して該強磁性緩衝体を軟化状態または溶融状態としつつ配向磁場を印加し、該CoレスR1系d−HDDR粗粉末および該R2系微粉末を特定方向に配向させる加熱配向工程と、
    該加熱配向工程後にまたは該加熱配向工程と併行して、加熱しつつ加圧成形する加熱成形工程とからなり、
    該CoレスR1系d−HDDR粗粉末の単位面積当たりの見かけの粒子径が20μm以下である規格化粒子数が1.2×109個/m2以下であると共に理論密度(ρth)に対する嵩密度(ρ)の比である相対密度(ρ/ρth)が91〜99%である磁気特性および耐熱性に優れる複合希土類異方性ボンド磁石が得られることを特徴とする複合希土類異方性ボンド磁石の製造方法。
  15. 前記加熱配向工程は、前記コンパウンドを加圧成形してなる予備成形体を、加熱し磁場配向させる工程である請求項12に記載の複合希土類異方性ボンド磁石の製造方法。
  16. R1とFeとBとを主成分としCoを基本的に含有しないCoレスR1系合金にd−HDDR処理を施して得られたCoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末および該CoレスR1系d−HDDR異方性磁石粉末の粒子表面を被覆する第1界面活性剤からなり、平均粒径が40〜200μmであるCoレスR1系d−HDDR粗粉末と、R2を主成分の一つとし最大エネルギー積(BH)maxが240kJ/m3以上であるR2系異方性磁石粉末および該R2系異方性磁石粉末の粒子表面を被覆する第2界面活性剤からなり、平均アスペクト比が2以下で平均粒径が1〜10μmであるR2系微粉末と、バインダである樹脂とを、該CoレスR1系d−HDDR粗粉末を50〜84質量%、該R2系微粉末を15〜40質量%および該樹脂を1〜10質量%の割合で配合して混合する混合工程と、
    該混合工程後の混合物を該樹脂の軟化点以上の温度に加熱して混練する加熱混練工程とからなり、
    該CoレスR1系d−HDDR粗粉末の各粒子が、該樹脂中に該R2系微粉末が均一分散してなる強磁性緩衝体で囲繞されて直接的な接触が回避されたコンパウンドが得られることを特徴とする複合希土類異方性ボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
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