本明細書において、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子、負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子などのトナー母粒子に外部から添加する材料を外部添加剤あるいは外添剤といい、トナー母粒子の外部(表面)にこれらの外部添加剤(外添剤)を添加することを外添という。
まず、本発明に用いられる材料である、(i)トナー母粒子並びにトナー母粒子を構成する材料(結着樹脂および着色剤、並びに離型剤、分散剤、帯電制御剤、磁性剤などのいわゆる内添剤)、(ii)長鎖脂肪酸またはその塩、(iii)負帯電性シリカ微粒子、(iv)酸化チタン微粒子、(v)正帯電性シリカ微粒子、および必要に応じて添加される(vi)無機微粒子について説明し、ついで、本発明のトナーについて説明する。
(I)本発明に用いられる材料
(i)トナー母粒子
トナー母粒子は、結着樹脂および着色剤を含み、必要に応じて、離型剤、分散剤、帯電制御剤、磁性剤などの内添剤を含有する。トナー母粒子は、正または負に帯電されており、好適には負に帯電されている。トナー母粒子を適切な範囲の負の帯電量を有するように帯電させるためには、いくつかの方法がある。例えば、正帯電性の結着樹脂に負帯電制御剤を配合する、負帯電性樹脂の帯電性が不充分である場合にはさらに負帯電制御剤を配合する、あるいは結着樹脂自体を負帯電性樹脂とするなどの方法がある。以下にトナー母粒子を構成する材料、およびトナー母粒子の製造方法について、順次説明する。
(i-1) トナー母粒子を構成する材料
(結着樹脂)
結着樹脂としては、トナーとして一般的に用いられる樹脂が用いられる。このような結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、アクリレート系樹脂あるいはメタアクリレート系樹脂(以下、(メタ)アクリレート系樹脂という)、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびこれらの樹脂の構成成分を含む共重合体などが用いられる。
中でも、ポリスチレン系樹脂およびスチレン−(メタ)アクリレート系樹脂共重合体が好ましく用いられる。
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、水素添加スチレン樹脂、スチレン−イソブチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−塩化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン架橋ポリマー、スチレン−ブタジエン−塩素化パラフィン共重合体、スチレン−アリルアルコール共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
スチレン−(メタ)アクリレート系樹脂共重合体としては、例えば、アクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(ASA樹脂)、スチレン−ジエチルアミノ−エチルメタアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体、スチレン−n−ブチルメタアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート−ブチルアリレート−N−(エトキシメチル)アクリルアミド共重合体、スチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、スチレン−ブタジエン−ジメチルアミノエチルメタアクリレート共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−マレイン酸エステル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、スチレン−n−ブチルアリレート−エチルグリコールメタアクリレート共重合体、スチレン−n−ブチルメタアクリレート−アクリル酸共重合体、スチレン−n−ブチルメタアクリレート−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブチルアクリレート−イソブチルマレイン酸ハーフエステル−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体などが挙げられる。
本発明に用いられる結着樹脂の質量平均分子量は特に制限はないが、通常2,000〜30,000であることが好ましく、4,000〜25,000がより好ましく、6,000〜20,000であることがさらに好ましい。分子量が2,000よりも小さいと混練時の粘度が低くなり、着色剤の分散が十分に行うことができなくなるおそれがある。そのため、得られたトナーの彩度あるいは透明性が低下することがある。分子量が30,000より大きいと粘度が高くなり過ぎて、着色剤の分散を十分に行うことができず、トナーの彩度あるいは透明性が低下することがある。なお、結着樹脂は、上記範囲内にある分子量を有する樹脂が複数混合されていてもよい。
結着樹脂の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
画像形成におけるトナーの定着を熱定着法により行う場合、結着樹脂のフロー軟化点(Tm)は低いことが好ましい。Tmは、例えば、85〜140℃であることが好ましく、90〜120℃がより好ましく、100〜110℃であることがさらに好ましい。結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜90℃であることが好ましく、50〜80℃であることがさらに好ましい。なお、フロー軟化点(Tm)は、結着樹脂1.0gをペレット状に加圧成形してサンプルとし、(株)島津製作所製「フローテスターCFT−500D」を用いて、下記条件にて測定する。昇温速度 5℃/分;シリンダー圧力2.0MPa;ダイ穴径1.0mm;ダイ穴長1.0mm;Tm算出法1/2法。さらに、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、結着樹脂10mgをアルミニウム製セルにパッキングし、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」を用いて下記の条件で測定する。測定温度0〜200℃;昇温速度10℃/分:2度目の昇温時のDSC曲線より読み取る。
圧力定着法によりトナーの定着が行われる場合、結着樹脂としてはワックス状の樹脂が好ましく用いられる。ワックス状の樹脂としては、上記結着樹脂のうち、ポリエチレン樹脂、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体、天然ワックスなどが例示される。
上記結着樹脂は、乳化重合、分散重合、懸濁重合などの重合法、混錬・粉砕・分級工程を含む粉砕法などの方法によって、製造される。最終的に得られるトナー粒子の均一性あるいは流動性などを考慮すると、結着樹脂は重合法で得られる樹脂が好ましい。
また、上記結着樹脂は単独で用いてもよく、2種類以上をブレンドして用いてもよい。上記結着樹脂は例示であり、これらに限定されないことはいうまでもない。
(着色剤)
着色剤としては、以下に示すような、有機顔料、無機顔料、および染料が使用できる。有機および無機顔料のうち、黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などが用いられる。
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、ハンザエロー、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどが用いられる。
橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどが用いられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが用いられる。
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが用いられる。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどが用いられる。
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどが用いられる。
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが用いられる。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどが用いられる。
また、染料としては、塩基性染料、酸性染料、分散染料、直接染料などが用いられる。このような染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどが例示される。
本発明が、透光性カラートナーである場合、着色剤としては、以下に示す種々の顔料、染料が用いられる。
黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などが用いられる。
赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などが用いられる。
青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などが用いられる。
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部使用することが望ましい。20質量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、1質量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
(離型剤)
離型剤としては、パラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖脂肪酸またはそのエステル、長鎖脂肪酸金属塩(金属石鹸)、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアミド等が使用される。上記離型剤のうち、パラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックスおよび金属石鹸が好ましく用いられる。
パラフィン系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス(日本石油(株)製あるいは日本精蝋(株)製)、マイクロワックス(日本石油(株)製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋(株)製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋(株)製)、PE−130(ヘキスト製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学(株)製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学(株)製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学(株)製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst Wax PE520、Hoechst Wax PE130、Hoechst Wax PE190(ヘキスト製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業(株)製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業(株)製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wax PED121、Hoechst Wax PED153、Hoechst Wax PED521、Hoechst Wax PED522、同Ceridust 3620 、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同 Ceridust 3715 (ヘキスト製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業(株)製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業(株)製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechist Wachs PP230(ヘキスト製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業(株)製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、およびビスコールTS−200(三洋化成工業(株)製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスが例示される。
長鎖脂肪酸金属塩(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等が好ましく用いられる。
これらの離型剤は、単独であるいは組合せて使用することができる。離型剤としては、低軟化点(融点)の化合物が好ましく、軟化点が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものが、好ましく使用される。なお、軟化点は、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値で表される。
(分散剤)
分散剤としては、金属石鹸、ポリエチレングリコール等が用いられる。
(帯電制御剤)
帯電制御剤は、トナー母粒子の帯電性を制御するために、必要に応じて、用いられる。結着樹脂自体の負帯電性の度合いが低い場合、あるいは結着樹脂自体が正に帯電している場合には、負帯電制御剤を用いて、トナー母粒子全体が所望のレベルの負帯電性を有するようにする。
負帯電制御剤としては、サリチル酸誘導体の金属塩あるいは金属錯体、ベンジル酸誘導体の金属塩、フェニルボレイト4級アンモニウム塩などが挙げられる。サリチル酸誘導体あるいはベンジル酸誘導体の金属塩としては、これらの亜鉛塩、ニッケル塩、銅塩、クロム塩などが好ましく用いられる。
市販の負帯電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY(オリエント化学工業(株)製)、ボントロンS−22(オリエント化学工業(株)製)、サリチル酸金属錯体E−81(オリエント化学工業(株)製)、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH(保土谷化学工業(株)製)、ボントロンS−34(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシンSO(オリエント化学工業(株)製)、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ製)、クロモーゲンシュバルツETOO(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましく用いられる。これらの負帯電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。
負帯電制御剤は、好ましくは、トナー母粒子の帯電量が−5〜−60μC/gとなるように結着樹脂に配合される。従って、用いる結着樹脂により、結着樹脂に対する添加量が決定されるが、一般的には、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で配合される。
正帯電性制御剤は、トナー母粒子の負帯電量の調整のため、必要に応じて、負帯電性樹脂に内添される。正帯電制御剤としては、市販の正帯電制御剤が用いられる。例えば、ニグロシンベースEX(オリエント化学工業(株)製)、第4級アンモニウム塩P−51(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシン ボントロンN−01(オリエント化学工業(株)製)、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3:Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト製)が挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましく用いられる。上記の他に、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料なども正帯電制御剤として用いられる。これらの正帯電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。
(磁性剤)
磁性剤としては、例えば、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zn等の金属粉、Fe3O4、Fe2O3、Cr2O3、フェライト等の金属酸化物、マンガンと酸を含む合金等の熱処理によって強磁性を示す合金等が挙げられる。これらは、予めカップリング剤等で処理したものを用いてもよい。
(i-2) トナー母粒子の製造
トナー母粒子は上記結着樹脂に、上記着色剤、並びに必要に応じて、離型剤、分散剤、帯電制御剤、磁性剤などの内添剤を添加して、製造される。例えば、混練・粉砕・分級工程を含む粉砕法により、トナー母粒子を作成する方法を説明する。まず、結着樹脂、着色剤、および離型剤等の添加剤を所定量、例えば、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))などの混合機に投入し、均一に混合する。結着樹脂、着色剤、帯電制御剤、および離型剤等の添加剤の混合割合は、トナーの色、帯電性などを考慮して、適宜決定される。
上記混合物は、ついで、二軸混練押出機(池貝化成(株)製PCM−30)に投入されて、均一に溶融混練される。溶融混練手段としては、他に「TEM−37」(東芝機械(株))、「KRCニーダー」((株)栗本鉄工所)等の連続式混練機や加熱・加圧ニーダーのようなバッチ式混練機等が挙げられる。得られた溶融混練物を、粉砕手段を用いて、微粉砕し、所望の平均粒子径のトナー母粒子が得られる。粉砕は、例えば、ジェット粉砕機200AFG(ホソカワミクロン(株))あるいはIDS−2(日本ニューマチック工業(株))を使用するジェットエアーによる衝突粉砕の他に、機械式粉砕機ターボミル(川崎重工(株))、スーパーローター(日清エンジニアリング(株))等により行われる。
次に、例えば、風力又はローター回転を用いて、得られたトナー母粒子の粒度が調整される。例えば、風力分級装置100ATP(ホソカワミクロン(株))又はDSX−2(日本ニューマチック工業(株))又はエルボージェット(日鉄鉱業(株))等を使用すると、シャープな粒径分布となる。
トナー母粒子は、また、トナー母粒子を構成する樹脂並びに着色剤などの内添剤を有機溶媒に溶解し、水性溶媒にて、分級剤・乳化剤と共に分散・造粒し、分離・乾燥する方法で作製してもよい。
トナー母粒子の帯電量は、−5〜−60μC/gであることが好ましい。帯電量がこの範囲より小さいと、現像器からのトナー漏れが激しくなり、また−60μC/gより大きいと、十分な画像濃度を得るためには過剰な現像バイアスを付与することが必要となるなどの問題が生じる。
トナー母粒子の帯電量は、例えば、以下のように測定される。気温25℃、45%RHの環境下、20mlのポリエチレン容器中で、トナー母粒子0.03gとフェライトキャリア0.97gとを混合し、100rpmで15分攪拌してトナー母粒子を帯電させる。その後、この混合物を0.3g採取して、0.3kg/cm2の圧力の窒素ガスをトナー母粒子とキャリアとの混合物に吹き付けることにより、トナー母粒子とフェライトキャリアとを分離する。ついで、トナー1個毎の帯電量(Q/m)を測定して、トナー母粒子の帯電量を測定する。帯電量の測定には、例えば、ホソカワミクロン(株)製のE−SPARTアナライザーが用いられる。
(ii)長鎖脂肪酸またはその塩、
本発明に用いられる長鎖脂肪酸またはその塩に特に制限はない。長鎖脂肪酸としては、好ましくは炭素数10〜30、より好ましくは炭素数12〜28、さらに好ましくは炭素数12〜18の長鎖脂肪酸が用いられる。長鎖脂肪酸としては、長鎖飽和脂肪酸あるいは長鎖不飽和脂肪酸が挙げられる。好ましくは長鎖飽和脂肪酸が用いられる。長鎖脂肪酸は分岐を有していてもよいが、直鎖飽和脂肪酸、例えばステアリン酸が好ましく用いられる。
前記長鎖脂肪酸は、塩の形態で用いることが好ましく、金属塩(いわゆる金属石鹸)の形態であることがさらに好ましい。長鎖脂肪酸の金属塩としては特に制限はないが、例えば、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、リチウム塩等が挙げられる。金属石鹸としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられ、これらの粒子が好ましく用いられる。長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
長鎖脂肪酸またはその塩、特に長鎖脂肪酸金属塩(金属石鹸)は、体積平均粒子径もしくは長軸の径が0.5〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。平均粒子径または長軸の径がこの範囲を外れると、結着剤、滑剤、流動補助剤としての効果、あるいはトナー凝集防止効果が十分に発揮できない傾向にある。
上記長鎖脂肪酸またはその塩、特に金属石鹸は、耐熱性および潤滑性の観点から、融点が100〜150℃程度のものが好ましい。融点が100℃より低いとトナーの耐熱性が低下し、高温環境で保管した場合にトナーが凝集するおそれがある。150℃より高いと潤滑作用が低減するおそれがある。
金属石鹸としては、直接法で製造された金属石鹸と複分解法で製造された金属石鹸とが知られているが、不純分の少ない直接法で得られたものを粉砕して、上記平均粒子径になるように、粒度を調整して用いることが好ましい。
長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部添加される。添加量が0.1質量%より少ないと、上記結着剤としての効果、凝集防止効果、流動補助剤、滑剤などの効果を十分に発揮することができないおそれがある。また、添加量が1.0質量%より多いと流動性に劣り、帯電立ち上がり性が著しく悪化し、カブリなどのノイズが発生するおそれがある。
(iii)負帯電性シリカ微粒子
本発明に用いられる負帯電性シリカ微粒子には、特に制限がない。負帯電性シリカ微粒子として、一般に、平均粒子径が4〜120nm、好ましくは5〜50nm、さらに好ましくは平均粒子径が6〜40nmの負帯電性シリカ微粒子が用いられる。負帯電性シリカ微粒子の平均粒子径が小さい程、得られるトナーの流動性が高くなる。4nmより小さいとトナー母粒子に埋没してしまう虞がある。120nmを超えると、流動性が極端に悪くなる虞がある。なお、本明細書において、負帯電性シリカ、トナー母粒子、トナー粒子などの微粒子について平均粒子径というときは、特に断らない限り、体積平均粒子径を意味する。
本発明においては、粒子径が均一な負帯電性シリカ微粒子を単独で用いてもよいし、平均粒子径が異なる2以上の負帯電性シリカ微粒子を併用してもよい。一般には、平均粒子径の小さい負帯電性シリカ微粒子(小粒子径のシリカ)が単独で用いられている。しかし、小粒子径のシリカと平均粒子径の大きい負帯電性シリカ微粒子(大粒子径のシリカ)とを併用することにより、小粒子径のシリカのみを用いる場合に比べて、帯電量の絶対値を大きくすることができるとともに、大粒子径のシリカが抵抗となり、小粒子径のシリカがトナー母粒子内に埋没されることを防止できるため、長期の帯電の安定に優れるようになる。さらに、トナーの流動性を向上させ、熱に対するブロッキング効果を発揮して、トナーの保存性を高めることが可能となる。
負帯電性シリカ微粒子を単独で用いる場合、一般には、平均粒子径の小さい負帯電性シリカ微粒子が好ましく用いられる。負帯電性シリカ微粒子の平均粒子径が5〜20nmであることが好ましく、6〜15nmであることがより好ましい。
平均粒子径が異なる2以上の負帯電性シリカ微粒子を併用する場合には、平均粒子径が5〜20nm、好ましくは6〜15nmの小粒径のシリカと平均粒子径が20〜50nm、好ましくは20〜40nmの大粒径のシリカとを用いることが好ましい。また、大粒子径のシリカと小粒子径のシリカとの平均粒子径の差は、10nm以上あることが好ましく、20nm以上あることがさらに好ましい。
大粒子径のシリカと小粒子径のシリカとの添加比は質量比で1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1、さらに好ましくは1:1.5〜1.5:1であることが好ましい。この範囲内にあると、トナーに流動性が付与され、かつ帯電の長期安定性を得ることができる。
大粒子径シリカと小粒子径シリカとを用いる場合に、後述の製造時において、これらを同時に混合して添加してもよく、いずれかを先に添加し、次いで、他方を添加してもよい。
負帯電性シリカ微粒子の添加量は、トナー母粒子の粒子径分布あるいは流動性などにより、または外添剤の粒子径分布、所望の帯電量などにより、変動し得る。例えば、上記小粒子径のシリカであれば、トナー母粒子100質量部に対して0.5〜2.0質量部、好ましくは0.7〜1.5質量部添加される。大粒子径シリカの場合、0.2〜2.0質量部、好ましくは、0.3〜1.5質量部添加される。大粒子径シリカと小粒子径シリカとを併用する場合、上記混合比率を考慮しつつ、トナー母粒子100質量部に対して合計量で0.5〜3.0質量部、好ましくは0.7〜2.5質量部添加される。
負帯電性シリカ微粒子は疎水化処理されていることが好ましい。負帯電性シリカ微粒子の表面を疎水性にすることにより、トナーの流動性および帯電性がさらに向上する。シリカ微粒子の疎水化は、アミノシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシランなどのシラン化合物;あるいはジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、フッ素変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルを用いて、例えば、湿式法、乾式法など当業者が通常使用する方法により行われる。
疎水性負帯電性シリカ微粒子としては、市販の日本アエロジル(株)製のRX200、同RX50、キャボット(株)製のTG811F、同TG810G、同TG308Fなどが用いられる。
(iv)酸化チタン微粒子
本発明において、酸化チタン(チタニア)微粒子は、トナーの電荷調整などのために、必要に応じて用いられる。この酸化チタン微粒子は正帯電性シリカ微粒子と同様、負帯電性シリカ微粒子の添加後で、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の添加前に添加することが、負帯電性シリカ微粒子を強固にトナー母粒子に結合させ、かつ長鎖脂肪酸またはその塩の結着剤としての効果、並びに滑剤としての効果を発揮させる上で、好ましい。
本発明で用いられる酸化チタン微粒子には、特に制限はない。比較的電気抵抗率の小さい酸化チタンの微粒子が好ましく用いられる。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ルチル−アナターゼ型などの結晶形を取り得る。いずれの結晶系の酸化チタンを用いてもよいが、ルチル−アナターゼ型の酸化チタンが、電荷の調整をしやすい点、印字枚数が増えても、酸化チタン粒子がトナー母粒子内に埋没し難いなどの点で好ましく用いられる。
酸化チタン微粒子の大きさに特に制限はないが、粒径あるいは長軸の大きさが10〜30nmの大きさであることが好ましい。ルチル−アナターゼ型の酸化チタンの場合、長軸が10〜30nm程度の酸化チタン微粒子であることが好ましい。
酸化チタン微粒子は、トナー母粒子100質量部に対して0.2〜2.0質量部、好ましくは0.3〜1.5質量部添加される。なお、酸化チタン微粒子と正帯電性シリカ微粒子とは、質量比で1:3〜3:1の範囲で添加されることが、トナーの電気抵抗の極端な低下を引き起こすことなく電荷の調整が行える点で、好ましい。
酸化チタンの微粒子の表面が疎水性であることが、トナーの外部環境の変化に対する帯電性の変化を小さくし(すなわち、安定な帯電性を維持し)、かつトナーの流動性を良好にするために、好ましい。酸化チタン微粒子の疎水化は、上記負帯電性シリカ微粒子の疎水化と同じ方法で行われる。
疎水性酸化チタン微粒子としては、チタン工業(株)製のSTT−30Sなどが用いられる。
(v)正帯電性シリカ微粒子
本発明において、正帯電性シリカ微粒子は、トナーの電荷調整などのために、必要に応じて用いられる。この正帯電性シリカ微粒子は、負帯電性シリカ微粒子の添加後で、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の添加前に添加することが、負帯電性シリカ微粒子を強固にトナー母粒子に結合させ、かつ長鎖脂肪酸またはその塩の結着剤としての効果、並びに滑剤としての効果を発揮させる上で、好ましい。
本発明で用いられる正帯電性シリカ微粒子には、特に制限がない。正帯電性シリカ微粒子の体積平均粒子径は、流動性などを考慮して、10〜50nmであることが好ましく、15〜40nmであることがさらに好ましい。
正帯電性シリカ微粒子は、疎水化処理されていることが好ましい。正帯電性シリカ微粒子の表面を疎水性にすることにより、トナーの外部環境の変化に対する帯電性の変化を小さくし(すなわち、安定な帯電性を維持し)、かつトナーの流動性を良好にするために、好ましい。正帯電性シリカ微粒子の疎水化は、上記負帯電性シリカ微粒子の疎水化と同じ方法により行われる。
疎水性正帯電性シリカ微粒子としては、市販の日本アエロジル(株)製のNA50H、キャボット(株)製のTG820Fなどが用いられる。
正帯電性シリカ微粒子は、必要に応じて、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜1.0質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部添加される。
(vi)無機微粒子
酸化チタン微粒子以外の無機微粒子も、帯電性の制御、流動性の向上を目的として外添され得る。この酸化チタン微粒子以外の無機微粒子も、負帯電性シリカ微粒子の添加後で、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の添加前に添加することが、負帯電性シリカ微粒子を強固にトナー母粒子に結合させ、かつ長鎖脂肪酸またはその塩の結着剤としての効果、並びに滑剤としての効果を発揮させる上で、好ましい。
例えば、無機微粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化錫、酸化ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化インジウム等の金属酸化物の微粒子;窒化珪素等窒化物の微粒子;炭化珪素等の炭化物の微粒子;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩の微粒子;並びにこれらの複合物等の無機微粒子が挙げられる。電気抵抗率が109Ωcm以下の、比較的電気抵抗率の小さい金属酸化物の微粒子が好ましく用いられる。
添加する無機微粒子の大きさに特に制限はないが、粒径が10〜30nmの大きさであることが好ましい。これらの無機微粒子は、帯電特性の安定化を目的として、その表面を疎水化処理することが好ましい。疎水化処理は、上記負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子の疎水化方法のいずれかと同じ方法が採用される。
(II)本発明のトナーおよびその製造方法
上記のように、本発明のトナーは、外添剤を多段処理により添加し、最後の段階で長鎖脂肪酸またはその塩を他の段階よりも高いシェアで添加して得られる。トナー母粒子への上記外添剤(例えば、負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子など)の添加は、ヘンシェルミキサー、パーペンマイヤー等の高速流動混合機、メカノケミカル法を用いる混合機等の、当業者が通常用いる機械あるいは方法を用いて行われる。多段処理のそれぞれの工程における攪拌速度および時間は、独立に設定し得るが、最後の段階である長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の外添は他の段階よりもシェアを高くして行われる。
長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の外添時のシェア(例えば、混合シェア)を高くする方法は、トナー母粒子に外添剤を外添する装置に依存して、決定すればよい。上記装置のうち、回転翼を有するヘンシェルミキサー、パーペンマイヤー等の高速流動混合機を用いる場合、(1)回転翼の回転数を大きくすることにより、(2)回転翼と混合機壁との間隔(ギャップ)を小さくするなどの方法により、長鎖脂肪酸またはその塩からなる粒子の混合時のシェアを高めることができる。長鎖脂肪酸またはその塩からなる粒子の外添に際しては、他の微粒子外添剤の外添時よりも1.02倍以上、好ましくは、1.2倍以上、より好ましくは、1.5倍以上の高いシェアをかけることが好ましい。あまり高いシェアをかけすぎると他の微粒子に影響を与えるので、3倍以下が好ましい。
本発明のトナーは、具体的には、例えば、負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子および正帯電性シリカ微粒子からなる群から選択される少なくとも一つの外添剤をトナー母粒子に添加し、最終段階で長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を含む外添剤を他の段階よりも高いシェアで添加することにより得られる。ここで、「長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を含む外添剤」は、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子のみでなる場合、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子と多段処理で使用されていない外添剤との組み合わせである場合があり得る。
以下、本発明のトナーを得るための他段処理について、種々の組み合わせを例示しつつ説明する。なお、多段処理に際して、トナー母粒子が正〜弱い負帯電性である場合、最初に負帯電性シリカ微粒子を添加する(II-1)、最初に負帯電性シリカ微粒子と酸化チタン微粒子を添加する(II-2)、あるいは最初に酸化チタン微粒子を添加する(II-3)ことなどが行われる。トナー母粒子が強い負帯電性である場合には、最初に正帯電性シリカ微粒子を添加する(II-4)、最初に正帯電性シリカ微粒子および他の外添剤を添加する(II-5)が行われる。以下、これらの場合について説明する。
(II-1)最初に負帯電性シリカ微粒子を添加して得られるトナー
負帯電性シリカ微粒子を単独で添加すると、トナー母粒子と負帯電性シリカ微粒子との間の静電的引力が正帯電性シリカ微粒子などに妨害されることがなく、さらに、負帯電性シリカ微粒子の仕事関数とトナー母粒子の仕事関数との差異が大きいため、負帯電性シリカ微粒子を強くトナー母粒子に付着させることができる。これによって、負帯電性シリカ微粒子の脱離が防止され、帯電性の変化が小さくなり、帯電性が長期的に安定化するという効果が得られる。
負帯電性シリカ微粒子として、小粒子径のシリカと大粒子径のシリカを併用することが好ましい。平均粒子径が異なる負帯電性シリカ微粒子を用いることにより、小粒子径の負帯電性シリカ微粒子のみを用いる場合に比べて、帯電量の絶対値を大きくすることができるとともに、大粒子径の負帯電性シリカ微粒子が抵抗となり、小粒子径のシリカがトナー母粒子内に埋没されることが防止でき、長期の帯電の安定に優れるようになる。さらに、トナーの流動性を向上させ、熱に対するブロッキング効果を発揮して、トナーの保存性を高めることが可能となる。
小粒子径のシリカと大粒子径のシリカを併用する場合、これらのシリカを同時に添加してもよく、最初に小粒子径のシリカを添加し、ついで、大粒子径のシリカを添加してもよい。
負帯電性シリカ微粒子を最初に添加した後、最後に長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を他の処理段階よりも高いシェアで添加することにより、本発明のトナーが得られる。この場合、最初に、小粒子径のシリカと大粒子径のシリカを同時にトナー母粒子に添加し、最後に長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を他の処理段階よりも高いシェアで添加する2段処理、あるいは、最初に、小粒子径のシリカを外添し、次に大粒子径のシリカ外添し、最後に長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を他の処理段階よりも高いシェアで添加する3段処理が挙げられる。
最初に負帯電性シリカ微粒子をトナー母粒子に添加した後、酸化チタン微粒子と正帯電性シリカ微粒子とを添加してもよい。酸化チタン微粒子と正帯電性シリカ微粒子とを同時に加えてもよいが、酸化チタン微粒子を先に添加し、ついで、正帯電性シリカ微粒子を添加する方がより好ましい。正帯電性シリカ微粒子は、正帯電しており、かつ電気抵抗値も高い。そこで、酸化チタン微粒子を添加しておき、次に正帯電性シリカ微粒子を添加することにより、正帯電性シリカ微粒子が電荷調整剤として機能し、トナーの電気抵抗率の低下が抑制され、電荷が均一化される。さらに、トナー中に正帯電性シリカ粒子が適切な割合で遊離して存在することとなり、トナーの流動性が良好となるとともに、遊離している正帯電性シリカ微粒子がキャリアの働きをして、帯電性がより均一となる。
負帯電性シリカ微粒子−酸化チタン微粒子の順で添加されたトナー母粒子に正帯電性シリカ微粒子を単独で加え、最後に長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を他の処理段階よりも高いシェアで添加する4段処理、あるいは、負帯電性シリカ微粒子−酸化チタン微粒子の順で添加されたトナー母粒子に、最後に、正帯電性シリカ微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を同時に、他の処理段階よりも高いシェアで添加する3段処理がある。さらに、負帯電性シリカ微粒子が外添されたトナー母粒子に、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を同時に添加して、2段処理としてもよい。なかでも、最後に正帯電性シリカ微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を他の処理段階よりも高いシェアで添加して3段処理することが、正帯電性シリカ微粒子と酸化チタン微粒子による表面電荷の調整を、電気抵抗を極端に低下させることなく行うことが最も効率よくできる点で好ましい。
最初に負帯電性シリカ微粒子を添加して、最後に長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子を他の処理段階よりも高いシェアで添加する多段処理としては、例えば、以下の(a)〜(h)の多段処理が例示される:(a)負帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(b)負帯電性シリカ微粒子−酸化チタン微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(c)負帯電性シリカ微粒子−正帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(d)負帯電性シリカ微粒子−酸化チタン微粒子−正帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(e) 負帯電性シリカ微粒子−(正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子);(f) 負帯電性シリカ微粒子−酸化チタン微粒子−(正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子);(g) 負帯電性シリカ微粒子−(酸化チタン微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子);(h) 負帯電性シリカ微粒子−(酸化チタン微粒子+正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子);など。
なお、工程の順序において、負帯電性シリカ微粒子の添加には、特に断らない限り、小粒子径のシリカを単独で添加する場合、小粒子径のシリカと大粒子径のシリカとを同時に添加する場合、および小粒子径のシリカ−大粒子径のシリカの順で2段階の処理を行う場合を含む。例えば、(a) 負帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子には、(a1) 小粒子径のシリカ−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(a2)小粒子径のシリカ−大粒子径のシリカ−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;および(a3)(小粒子径のシリカ+大粒子径のシリカ)−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;が含まれる。また、(h) 負帯電性シリカ微粒子−(酸化チタン微粒子+正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子)には、(h1) (小粒子径のシリカ+大粒子径のシリカ)−(酸化チタン微粒子+正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子);などが含まれる。
(II-2)最初に負帯電性シリカ微粒子および酸化チタン微粒子を添加して得られるトナー
負帯電性シリカ微粒子と酸化チタン微粒子とを同時に、最初にトナー母粒子に添加する場合、負帯電性シリカ微粒子の仕事関数、酸化チタン微粒子の仕事関数、およびトナー母粒子の仕事関数との関係から、負帯電性シリカ微粒子が比較的強くトナー母粒子に付着するため、シリカ微粒子の遊離が抑制される。これに加えて、上記最後に長鎖脂肪酸またはその塩を他の処理段階よりも高いシェアで添加する多段処理を行うことによる効果が発揮される。
このような多段処理としては、(i)(負帯電性シリカ微粒子+酸化チタン微粒子)−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(j)(負帯電性シリカ微粒子+酸化チタン微粒子)−正帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩;(k)(負帯電性シリカ微粒子+酸化チタン微粒子)−(正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩);などが例示される。なお、負帯電性シリカ微粒子と酸化チタン微粒子とを同時に添加する場合、(i)(負帯電性シリカ微粒子+酸化チタン微粒子)−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子には、(i1)(小粒子径のシリカ+酸化チタン微粒子)−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(i2)(小粒子径のシリカ+大粒子径のシリカ+酸化チタン微粒子)−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(i3)小粒子径のシリカ+(大粒子径のシリカ+酸化チタン微粒子)−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;などの処理が含まれる。
(II-3) 最初に酸化チタン微粒子を添加して得られるトナー
最初に酸化チタン微粒子を添加する場合、次に、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を添加してもよい。酸化チタン微粒子の次に負帯電性シリカ微粒子を添加し、最後に長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を添加してもよい。必要に応じて、正帯電性シリカ微粒子を、長鎖脂肪酸またはその塩より前に、あるいは長鎖脂肪酸またはその塩と同時に添加することにより、帯電量の急激な低下を防止しながら、帯電量を調整できる。この効果に加えて、上記長鎖脂肪酸またはその塩による効果が発揮される。
このような多段処理としては、(l)酸化チタン微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(m)酸化チタン微粒子−負帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(n)酸化チタン微粒子−負帯電性シリカ微粒子−正帯電性シリカ微粒子−長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子;(o) 酸化チタン微粒子−負帯電性シリカ微粒子−(正帯電性シリカ微粒子+長鎖飽和脂肪酸またはその塩でなる粒子);などが例示される。特に、(n)および(o)の処理工程は、トナー母粒子が強く負に帯電している場合にも有効な工程である。
(II-4)最初に正帯電性シリカ微粒子を添加して得られるトナー
トナー母粒子が強い負帯電性である場合には、最初に正帯電シリカ微粒子を添加する;最初に正帯電性シリカ微粒子と他の外添剤とを添加する;などの処理が挙げられる。なかでも、最初に正帯電シリカ微粒子を単独で加えるのが最も好ましい。この工程によれば、負帯電性トナー母粒子と正帯電性シリカ微粒子との間の静電的引力が妨げられることがなく、かつ、正帯電性シリカ微粒子の仕事関数とトナー母粒子の仕事関数との差異が大きいため、正帯電性シリカ微粒子が強くトナー母粒子に付着される。従って、正帯電性シリカ微粒子の脱離が防止され、帯電性の変化が小さくなり、帯電性が長期的に安定化するという効果が得られる。
正帯電性シリカ微粒子の添加後に、酸化チタン微粒子を単独で、あるいは長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子と共に添加する。予め、電気抵抗値の高い正帯電性のシリカ微粒子を外添しておくことにより、低電気抵抗性の酸化チタン微粒子が外添されたときの表面電荷が大きく低下することがなく(すなわち、正帯電性シリカ微粒子が電荷調整剤として機能し)、トナーの電気抵抗率の低下が抑制され、電荷が均一化される。これらの効果に加えて、長鎖脂肪酸またはその塩を最後に添加する効果が発揮される。
このような多段処理としては、(p)正帯電性シリカ微粒子−長鎖脂肪酸またはその塩;(q) 正帯電性シリカ微粒子−(酸化チタン微粒子+長鎖脂肪酸またはその塩);などが例示される。
この多段処理には、外添剤として負帯電性シリカ微粒子は含まれていない。負帯電性シリカ微粒子が外添剤として含まれないトナーは、良好な帯電特性、流動性を有している。また、このトナーを定着する際の温度を低くできる(定着器の温度を低く設定できる)とともに、定着後の画像の定着強度も良好となるという利点を有している。なお、多段処理の例である(p)において、酸化チタン微粒子が添加されていないが、帯電量が適切な範囲であれば、特に加えなくてもよいことによる。
(II-5)最初に正帯電性シリカ微粒子と他の外添剤とを添加して得られるトナー
他の外添剤が負帯電性シリカ微粒子である場合、トナー母粒子が負に帯電していることを考慮して、最初に正帯電性シリカ微粒子と同時に負帯電性シリカ微粒子を添加することが、帯電制御の点から好ましい。正帯電性シリカ微粒子と負帯電性シリカを最初に添加する多段処理の例としては、(r)(正帯電性シリカ微粒子+負帯電性シリカ微粒子)−酸化チタン微粒子−長鎖脂肪酸またはその塩);(s) (正帯電性シリカ微粒子+負帯電性シリカ微粒子+酸化チタン微粒子)−長鎖脂肪酸またはその塩;(t) (正帯電性シリカ微粒子+負帯電性シリカ微粒子)−長鎖脂肪酸またはその塩;などが例示される。
上記(a)〜(t)の多段処理の順序は、いずれも例示であって、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて、電荷調整、流動性改善等を目的として上記(vi)の無機微粒子を添加してもよい。無機微粒子の添加は、長鎖脂肪酸またはその塩の添加前か同時であれば、どの段階で加えてもよい。
以上のように、本発明のトナーは、多段処理において、各外添剤の仕事関数およびトナー母粒子の仕事関数などによって、外添剤がトナー母粒子に強く付着される。そして、最後の段階で、他の段階よりも高いシェアで添加された長鎖脂肪酸またはその塩の結着作用により、外添剤の遊離制御効果などの効果が、さらに強化される。さらに、帯電均一性、帯電の長期安定性などの効果が強化され、繰り返し使用においても、帯電安定性が維持される。その上、トナーの凝集防止効果、流動補助剤、滑剤などが発揮され、トナーと感光体との接触により、感光体表面へ長鎖脂肪酸またはその塩が移行し、感光体表面を潤滑にし、感光体がトナー表面の外添剤により研磨されることを防止する効果がさらに発揮されると考えられる。
これに対して、従来のトナー、例えば、上記特許文献1に記載のトナーは、正帯電性シリカ微粒子と負帯電性シリカ微粒子とを同時に外添して得られたものであるが、正帯電性シリカ微粒子と負帯電性シリカ微粒子とを同時に添加することにより、トナー母粒子と負帯電性シリカ微粒子との間の静電的引力が小さくなり、負帯電性シリカ微粒子の離脱が起こりやすくなっていると考えられる。さらに、長鎖脂肪酸またはその塩を用いないことも、負帯電性および/または正帯電性シリカ微粒子あるいは酸化チタン微粒子の遊離を抑制することができない原因であると思われる。
本発明のトナーは、どのようなタイプの画像形成装置にも用いられる。1成分系のトナーを用いる画像形成装置でもよく、2成分系のトナーを用いる画像形成装置でもよい。また、接触現像方式の画像形成装置であってもよく、非接触式方式の画像形成装置であってもよい。本発明のトナーを用いることができる一成分系の接触式画像形成装置は、例えば、特許文献8に詳細に説明されている。本発明の画像形成装置は、感光体で代表される静電潜像が形成される潜像担持体;この潜像担持体上の静電潜像を現像するためにトナーを潜像担持体に搬送する、現像ロールで代表されるトナー担持体;およびこのトナー担持体により潜像担持体へ搬送されるトナー量を規制するトナー規制部材を有する現像器を少なくとも備えている。本発明のトナーはトナー収容部に収容されており、トナー収容部から現像ロール(トナー担持体)に搬送され、現像ロール(トナー担持体)を介して感光体(潜像担持体)に供給され、転写されて画像を形成する。トナー規制部材は、現像ロール(トナー担持体)から感光体(潜像担持体)に過剰な供給がされないように、トナー供給量を調整する。
以下、本発明を、実施例をもとに説明する。まず、本発明のトナーの評価方法について説明する。評価項目および評価方法は、以下の通りである。
(A)帯電量および帯電の均一性の評価
トナーの帯電量は、ホソカワミクロン(株)製のE−SPARTアナライザーを用いて以下の様にして測定した。実施例および比較例で調製したトナーとキャリア(日立金属(株)製KBN100フェライトキャリア)とを0.1質量%トナー濃度となるように混合し、100rpmで15分間攪拌してトナーを帯電させた。その後、窒素ガスをトナーとキャリアとの混合物に吹き付けることにより、トナーとキャリアとを分離した。ついで、トナー1個毎の帯電量(Q/m)を測定して、コールターカウンターで求められた平均粒子径±0.1μmの粒径を有する少なくとも100個以上のトナー粒子n個について、測定トナーの個数をX軸に、また以下の式で示される帯電量の総和を、総和帯電量としてY軸にプロットした。
ここで、粒径および帯電量が同じトナー粒子であれば、トナーの個数と総和帯電量とをプロットすると、相関係数=1で原点を通る直線となるはずである。トナーの個数と総和帯電量の実測値をプロットし、直線からのずれを相関係数で評価した。
(B)イレギュラートナーの発生率
(1)のE−SPARTアナライザーを用いて、イレギュラートナーである正帯電トナー(逆帯電トナー)の個数を測定し、イレギュラートナーの発生率を求めた。
(C)外添剤(シリカ微粒子、酸化チタン微粒子)の遊離率
外添剤(シリカ微粒子、酸化チタン微粒子)の遊離率は、PT1000パーティクルアナライザー(横河電気(株)製)を用いて遊離率を測定した。この外添剤の遊離率の測定方法の詳細は、特許文献8に記載されている。簡単に述べると、この原理は、トナー粒子をプラズマ中に導入して、トナー粒子を励起・発光させ、その強さと時間を測定することにより、遊離率を求めるものである。例えば、SiO2の遊離率は、SiO2が外添されたトナー粒子をプラズマ中に導入し、トナー粒子中のSiO2の発光強度を測定する。その発光強度から、SiO2が外添されたトナー粒子を真球粒子と仮定して真球粒子の粒径(等価粒径)を求める。遊離したSiO2も、トナー粒子の場合と同様に、その発光強度からSiO2の等価粒径が求められる。ただし、遊離したSiO2の発光強度は小さいので、等価粒径は小さくなる。従って、等価粒径を比較することにより、トナー粒子と遊離している外添剤とが区別される。従って、外添剤SiO2の全検出個数を求め、等価粒径の小さい個体を遊離外添剤粒子数とすると、以下の式(X)により求められる。
また、トナー粒子に付着したSiO2は、トナー粒子と同期して同時に発光するが、トナー粒子に付着していないSiO2は、トナー粒子とは同時に発光せず、時間がずれて発光する(非同期)ことを利用して、SiO2がトナー粒子に付着しているか、遊離しているかを区別する。この測定値をもとに、遊離率は以下の式(Y)により求められる。
本実施例においては、式(Y)で示される方法を採用した。なお、酸化チタン微粒子の遊離率を測定する場合は、プラズマ中で酸化チタン微粒子を発光させて、同様に測定すればよい。また、トナー母粒子の体積平均粒子径も、例えば、トナー母粒子に含まれる着色剤をプラズマ中で発光させ、等価粒径を求めることにより、求められる。
(D)耐久試験
トナーを、コピー機(セイコーエプソン(株)製LP−9300機)に投入し、5%消費印字パターンで3000枚の印字を行い、印字前後のトナーについて、帯電量の分布、電気抵抗率を測定した。
(トナー母粒子の調製)
スチレン−アクリル系の結着樹脂100質量部に、赤色顔料C.I.12055を3.5質量部、およびサリチル酸クロム錯体1.0質量部を、それぞれヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))に投入し、均一に混合した。この混合物を二軸混練押出機(池貝化成(株)製PCM−30)を用いて溶融混練し、冷却後、ジェット粉砕機200AFG(ホソカワミクロン(株))を用いて、ジェットエアーにより、粉砕した。次に、風力分級装置100ATP(ホソカワミクロン(株))を使用して、体積平均粒径8.5μmのトナー母粒子を調製した。
(外添剤)
本実施例でトナー母粒子に外添する外添剤を、表1に示す。
(外添処理)
本発明の実施例においては、外添処理は、トナー母粒子100質量部に対して、外添剤を所定量添加し、ヘンシェルミキサーFM20B(三井鉱山(株)製)を用いて、Z0S0型の攪拌羽根を用い、攪拌・混合処理を行った。
以下、(I)負帯電性シリカ微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添したトナー、(II)平均粒子径が異なる負帯電性シリカ微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添したトナー、(III)負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添したトナー、(IV)負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子と、さらに必要に応じて二酸化チタン微粒子を外添したトナー、および(V)負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子、二酸化チタン微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添したトナーについて、それぞれ、説明する。
(I)負帯電性シリカ微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添したトナー
(実施例1)
上記調製したトナー母粒子100質量部をヘンシェルミキサーFM20Bに投入し、これに疎水性負帯電性シリカRX200(日本エアロジェル社製)を1.0質量部添加して、3000rpm、2分の処理を行った。次に、この処理物にステアリン酸マグネシウムを0.2質量部投入し、4000rpm、2分の処理を行い、トナーAを得た。なお、このときの混合機の回転翼と混合機壁とのギャップ(以下、単にギャップという)は、どちらの処理の場合も5mmであった。トナーAの製造条件を表2に示す。この長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添したときのシェアは、他の外添剤添加時のシェアの約1.3倍であった。
(比較例1)
負帯電性シリカ微粒子の外添処理とステアリン酸マグネシウムの外添処理を同一条件とした以外は実施例1と同様にして、トナーaを得た。トナーaの製造条件を表2に示す。
(実施例2、比較例2〜4)
以下、表2に記載のトナーの製造条件に従って、実施例2のトナーB、比較例2〜4のトナー(トナーb〜d)を製造した。なお、実施例2においては、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子は、回転翼と混合壁のギャップを小さくすることによって、シェア高めて外添したが、外添時のシェアは、他の外添剤添加時のシェアの約1.5倍であった。
実施例のトナーA〜B、比較例のトナーa〜dについて評価を行った。結果を図1および表3に示す。図1はトナーBについての相関関係を示す図である。表3には、実施例のトナーAおよびB、並びに比較例のトナーa〜dについて、図1に示すようなプロット(トナーB以外は図示せず)から求めたトナーの個数と総和帯電量との相関係数、並びにイレギュラートナーの発生率を示す。
表3の結果は、負帯電性シリカ微粒子を最初に外添し、次に、攪拌翼の回転数を大きくして添加時のシェアを高めて長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添して得られたトナー(実施例1)、及び、混合機と回転翼とのギャップを小さくして、添加時のシェアを高めて長鎖脂肪酸またはその塩を外添して得られたトナー(実施例2)は、トナーの個数と総和帯電量との相関係数が0.99以上であり、イレギュラートナーの発生率も低くなることを示している。すなわち、トナー1個毎の帯電量が安定し、トナー全体の帯電も均一となることがわかった。
他方、長鎖脂肪酸またはその塩の添加時のシェアと負帯電性シリカ微粒子の添加時のシェアを同一にした場合(比較例1)、あるいは負帯電性シリカ微粒子の添加時のシェアを長鎖脂肪酸またはその塩の添加時のギャップを小さくしてシェアを高めて得られたトナーc(比較例3)は、実施例のトナーに比べて相関係数が低く、イレギュラートナーの発生率も高くなることがわかった。
さらに、負帯電性シリカ微粒子と長鎖脂肪酸またはその塩とを同時に添加し、通常よりも長い時間処理した場合(比較例2)と、同じシェアであるが、先に負帯電性シリカ微粒子を添加し、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を後で添加する場合(比較例1)とを比較すると、比較例1の方が、相関係数も高く、イレギュラートナーの発生率も低いことから、負帯電性シリカ微粒子と長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子とを、この順で添加することによって、帯電均一性に優れたトナーを得ることができることがわかる。また、これらの比較例と実施例とを比較すると、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の外添時のシェアを高めることによって、より一層、帯電均一性が向上することがわかる。また、長鎖脂肪酸またはその塩を添加しない比較例4は、正帯電トナーの出現率が極めて高いという問題がある。これは、長鎖脂肪酸またはその塩を添加しないため、負帯電性シリカ微粒子が固定されないためであると考えられる。
(II)平均粒子径が異なる負帯電性シリカ微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添したトナー
(実施例3)
上記調製したトナー母粒子100質量部をヘンシェルミキサーFM20Bに投入し、これに小粒径シリカである疎水性負帯電性シリカRX200(日本エアロジェル社製)を1質量部添加して、3000rpm、2分の処理を行った。次に、この処理物に大粒径シリカである疎水性負帯電性シリカRX50(日本エアロジェル社製)を1質量部添加して、3000rpm、2分の処理を行った。最後に、この処理物にステアリン酸マグネシウムを0.2質量部投入し、4000rpm、2分の処理を行い、トナーCを得た。なお、このときの混合機の回転翼と混合機壁との間隔(以下、単にギャップという)は、いずれの処理の場合も5mmであった。トナーCの製造条件を表4に示す。
(比較例5)
ステアリン酸マグネシウムの外添処理条件を、負帯電性シリカ微粒子の外添処理条件と同じ3000rpm、2分とした以外は、実施例3と同様にして、トナーeを得た。トナーeの製造条件を表4に示す。
(実施例4〜6、比較例6〜8)
以下、表4に記載のトナーの製造条件に従って、実施例4〜6のトナーD〜F、比較例6〜8のトナー(トナーf〜h)を製造した。
実施例のトナーC〜F、および比較例のトナーe〜hについて評価を行った。結果を図2および表5に示す。図2はトナーCについてのトナーの個数と総和帯電量との相関関係を示す図である。表5には、実施例のトナーD〜F並びに比較例のトナーe〜hについて、図1に示すようなプロット(トナーC以外は図示せず)から求めたトナーの個数と総和帯電量との相関係数(以下、単に相関係数という場合がある)、並びにイレギュラートナーの発生率を示す。
表5に示すように、小粒径シリカ−大粒径シリカの順で負帯電性シリカ微粒子を外添し、次に、攪拌翼の回転数を大きくして添加時のシェアを高めて長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添して得られたトナーC(実施例3)、あるいは混合機壁と回転翼との間隔(ギャップ)を小さくして添加時のシェアを高めて長鎖脂肪酸またはその塩を外添して得られたトナーD(実施例4)は、トナーの個数と総和帯電量との相関係数が0.99以上であり、イレギュラートナーの発生率も低くなることがわかる。すなわち、トナー1個毎の帯電量が安定し、トナー全体の帯電も均一となることがわかる。
また、小粒径シリカと大粒径シリカとを同時に外添処理し、次に長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を負帯電性シリカ微粒子添加時よりも高いシェアで外添して得られたトナーEおよびF(それぞれ、実施例5および6)も、トナーの個数と総和帯電量との相関係数が0.99以上であり、イレギュラートナーの発生率も低くなる。すなわち、トナー1個毎の帯電量が安定し、トナー全体の帯電も均一となることがわかる。
他方、長鎖脂肪酸またはその塩の添加時のシェアを負帯電性シリカ微粒子の添加時のシェアを同一にした場合(比較例5)、あるいは負帯電性シリカ微粒子の添加時のシェアを長鎖脂肪酸またはその塩の添加時のシェアより高くした場合(比較例7)は、実施例に比べて相関係数が低く、イレギュラートナーの発生率も高くなる。
さらに、負帯電性シリカ微粒子と長鎖脂肪酸またはその塩からなる粒子とを同時に添加した場合(比較例6:トナーf)は、最後に長鎖脂肪酸またはその塩からなる粒子をシェアを高くして添加する実施例に比べ、若干、相関関数とイレギュラートナーの出現率が高くなるが、他の比較例よりは、相関係数も高く、イレギュラートナーの出現率も小さい。さらに、これらの比較例と実施例とを比較すると、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の外添時のシェアを高めることによって、より一層、帯電均一性が向上することがわかる。また、長鎖脂肪酸またはその塩を添加しない比較例8は、正帯電トナーの出現率が極めて高いという問題がある。これは、長鎖脂肪酸またはその塩を添加しないため、負帯電性シリカ微粒子がトナー母粒子に強く固定されないためであると考えられる。
(III)負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添したトナー
(実施例7)
上記調製したトナー母粒子100質量部をヘンシェルミキサーFM20Bに投入し、これに疎水性酸化チタンSTT30S(チタン工業製)を1.0質量部添加して、3000rpm、2分の処理を行った。次に、この処理物にステアリン酸マグネシウムを0.2質量部投入し、4000rpm、2分の処理を行い、トナーGを得た。なお、このときの混合機の回転翼と混合機壁との間隔(以下、単にギャップという)は、どちらの処理の場合も5mmであった。トナーGの製造工程を表6に示す。
(比較例9)
トナー母粒子100質量部をヘンシェルミキサーFM20Bに投入し、疎水性酸化チタンSTT30Sを1.0質量部添加し、3000rpm、2分の処理を行った。この処理物になにも添加せずに、シェアを高めるため、4000rpm、2分の処理を行って、トナーiを得た。トナーiの製造工程を表6に示す。
(実施例8〜11、比較例10〜12)
以下、表6に記載のトナーの条件に従って、実施例8〜11のトナーH〜K、比較例10〜12のトナー(トナーj〜l)を製造した。
実施例のトナーG〜K、および比較例のトナーi〜lについて評価を行った。結果を図3および表7に示す。図3はトナーGについての相関関係を示す図である。表7には、実施例のトナーG〜K並びに比較例のトナーi〜lについて、図3に示すようなプロット(トナーG以外は図示せず)から求めた相関係数と、イレギュラートナーの発生率を示す。
図3および表7の結果は、酸化チタン微粒子を最初に外添し、次に、攪拌翼の回転数を大きくして添加時のシェアを高めて長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添して得られたトナーG(実施例7)、及び、混合機と回転翼とのギャップを小さくして、添加時のシェアを高めて長鎖脂肪酸またはその塩を外添して得られたトナーH(実施例8)は、トナーの個数と総和帯電量との相関係数が0.993以上であり、イレギュラートナーの発生率も低くなる。すなわち、トナー1個毎の帯電量が安定し、トナー全体の帯電も均一となることがわかる。
また、二酸化チタン微粒子と長鎖脂肪酸またはその塩を添加する場合、負帯電性シリカ微粒子(小粒径シリカ)を先に、あるいは酸化チタン微粒子と同時に添加し、ついで、攪拌翼の回転数を大きくして添加時のシェアを高めて長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添して得られたトナーI〜K(実施例9〜11)は、いずれもトナーの個数と総和帯電量との相関係数が0.99以上であり、イレギュラートナーの発生率も低くなる。すなわち、トナー1個毎の帯電量が安定し、トナー全体の帯電も均一となることがわかる。
他方、酸化チタン微粒子添加後にステアリン酸マグネシウムを添加せず、さらに回転数を上げて処理したトナーi(比較例9)は、酸化チタンの遊離率が極端に高かった。このトナーiと実施例7のトナーGとを比較すると、ステアリン酸マグネシウムを、最後に高いシェアで添加することにより、酸化チタン微粒子が保持されて帯電の均一性を高めるとともに、イレギュラートナーの発生が抑制されることが明かとなった。
また、酸化チタン微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩を逐次添加するが添加時のシェアを同一にした場合(比較例10)、あるいは酸化チタン微粒子と長鎖脂肪酸またはその塩とを同時に(すなわち同じシェアで)添加した場合(比較例11)は、実施例の各トナーに比べて相関係数が若干低くなり、イレギュラートナーの発生率も高くなる。このことは、酸化チタン微粒子を添加し、次に高いシェアで長鎖脂肪酸またはその塩の添加を行うことが好ましいことを示唆している。
さらに、最初に酸化チタン微粒子を高いシェアで添加し、ついで、酸化チタン微粒子の添加時よりも低いシェアで長鎖脂肪酸またはその塩を添加することにより得られたトナーl(比較例12)は、相関係数が0.93と低く、イレギュラートナーの発生率も高いことがわかった。
(IV)負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子と、さらに必要に応じて二酸化チタン微粒子を外添したトナー
(実施例12)
上記調製したトナー母粒子100質量部をヘンシェルミキサーFM20Bに投入し、これに、疎水性負帯電性シリカ(RX200)を1質量部添加して、3000rpm、2分の処理を行った。次に、この処理物にステアリン酸マグネシウムを0.2質量部および疎水性正帯電性シリカ(NA50H)を0.5質量部投入し、4000rpm、2分の処理(2段処理)を行い、トナーLを得た。なお、このときの混合機の回転翼と混合機壁との間隔(以下、単にギャップという)は、どちらの処理の場合も5mmであった。トナーLの製造条件を表8に示す。
(比較例13)
トナー母粒子100質量部をヘンシェルミキサーFM20Bに投入し、これに疎水性負帯電性シリカRX200(日本アエロジル製)を1質量部投入し、3000rpm、2分の処理を行い、トナーmを得た。トナーmの製造条件を表8に示す。
(実施例13〜15、比較例14〜16)
以下、表8に記載のトナーの製造条件に従って、実施例13〜15のトナーM〜O、比較例14〜16のトナー(トナーn〜p)を製造した。
実施例のトナーL〜O、および比較例のトナーm〜pについて評価を行った。結果を図4および表9に示す。図4はトナーLについての相関関係を示す図である。表9には、実施例のトナーG〜K並びに比較例のトナーi〜lについて、図4に示すようなプロット(トナーL以外は図示せず)から求めた相関係数と、イレギュラートナーの発生率を示す。
表9の結果から、負帯電性シリカ微粒子のみを添加した比較例13のトナーmと、これにシェアを高めて、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子および正帯電性シリカ微粒子を添加した実施例12のトナーLとを比較すると、明かにトナーLの方が、相関係数rが高く、イレギュラートナーの発生率も低いことがわかる。このことから、最後に、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子および正帯電性シリカ微粒子を添加することにより、帯電が均一となり、負帯電性シリカ微粒子が強固に結着されていること、すなわち、結着剤としての効果が発揮されていることがわかる。
また、実施例14および15のトナー(トナーNおよびO)と比較例14のトナーnとを比較すると、最後に、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子および正帯電性シリカ微粒子を、外添時のシェアを高めて添加することにより、相関係数rが高くなり、イレギュラートナーの発生率も低下する。さらに、トナーNおよびOは、外添剤と長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子とを同時に外添した比較例15のトナーoと比べても、相関係数rが高くなり、イレギュラートナーの発生率も低下している。これらのことから、多段処理とし、最後にシェアを高めて長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子および正帯電性シリカ微粒子を添加することにより、帯電の均一性、結着剤としての効果が発揮されることがわかる。
さらに、実施例12〜15のトナーL〜O、および比較例14のトナーnとを比較すると、小粒子径の負帯電性シリカ微粒子−大粒子径の負帯電性シリカ微粒子−酸化チタン微粒子をこの順で添加し、最後に長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子および正帯電性シリカ微粒子をこれらの外添剤よりも高いシェアで添加する多段処理により得られるトナーNおよびDが、最も相関係数rが高くなり、イレギュラートナーの発生率も極めて低くなる点で最も優れていた。すなわち、本発明の多段処理を行うことにより、トナー1個毎の帯電量が安定し、トナー全体の帯電も均一となることがわかる。
さらに、負帯電性シリカ微粒子および酸化チタン微粒子を、実施例12〜15よりも高いシェアで外添し、最後に、これらの外添剤を添加する時のシェアより低いシェアで長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子および正帯電性シリカ微粒子を外添した場合(比較例16)、相関係数rも低く、イレギュラートナーの発生率も比較的高かった。これらのことから、外添剤の添加に際して多段処理を行い、最後に、これらの外添剤を添加する時のシェアより高いシェアで、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子および正帯電性シリカ微粒子を外添する本発明の方法、およびそれによって得られるトナーが優れていることがわかる。
(V)負帯電性シリカ微粒子、正帯電性シリカ微粒子、二酸化チタン微粒子、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を外添したトナー
(実施例16)
上記調製したトナー母粒子100質量部をヘンシェルミキサーFM20Bに投入し、これに、疎水性負帯電性シリカ(RX200)および疎水性負帯電性シリカ(RX50)をそれぞれ1質量部添加して、3000rpm、2分の処理を行った。次に、この処理物に疎水性酸化チタンSTT30S(チタン工業(株)製)を添加して、3000rpm、2分の処理を行った。得られた処理物に疎水性正帯電性シリカ(NA50H)を0.5質量部投入し、3000rpm、2分の処理を行い、最後にステアリン酸マグネシウムを0.2質量部投入し、4000rpm、2分の処理(4段処理)を行い、トナーPを得た。なお、このときの混合機の回転翼と混合機壁との間隔(以下、単にギャップという)は、どの処理の場合も5mmであった。トナーPの製造条件を表10に示す。
(比較例17)
第4番目のステアリン酸マグネシウムの添加をその他の外添剤の添加と同じ1000rpm、2分とした以外は、実施例16と同様にして、トナーqを得た。トナーqの製造条件を表10に示す。
(実施例17〜19、比較例18)
以下、表10に記載のトナー製造条件に従って、実施例17〜19のトナーQ〜S、比較例18のトナー(トナーr)を製造した。
実施例のトナーP〜S、および比較例のトナーq〜rについて評価を行った。結果を図5および表11に示す。図5はトナーPについての相関関係を示す図である。表11には、実施例のトナーP〜S並びに比較例のトナーq〜rについて、図5に示すようなプロット(トナーP以外は図示せず)から求めた相関係数r、イレギュラートナーの発生率、シリカおよびチタンのそれぞれの遊離率を示す。また、実施例16のトナーPと比較例17および比較例18のトナーrについては、3000枚印字の耐久試験を行い、耐久試験後の帯電量の均一性を表す相関係数rを求めた。
長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の添加時のシェアを回転数によって高めた実施例16のトナーP、混合壁と回転翼とのギャップを小さくしてシェアを高めた実施例19のトナーS、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の添加時のシェアを弱くした比較例17のトナーq、および長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子の添加時のシェアを他の外添剤と同一にした比較例18のトナーrを比較すると、実施例のトナーPおよびトナーSは帯電の均一性に優れ、イレギュラートナーである正帯電性トナーの比率も少なく、シリカおよびチタンの遊離率も、比較例のトナーqおよびトナーrよりも小さいことがわかる(表11参照)。この結果から、最後に、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を高いシェアで添加することにより帯電が均一となり、負帯電性シリカ微粒子が強固に結着されていること、すなわち、結着剤としての効果が発揮されていることがわかる。
また、耐久試験後の相関係数rも実施例16のトナーPはほとんど変化がないのに対し、比較例17のトナーqは相関係数rが大きく低下していた。このことから、最後に、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を高いシェアで添加することにより、負または正帯電性シリカ微粒子および酸化チタンが強くトナー母粒子に付着し、耐久試験後も帯電の均一性が維持されることがわかり、最後に、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子を高いシェアで添加することの効果がより一層明確となった。
さらに、実施例17のトナーQおよび実施例18のトナーRからもわかるように、長鎖脂肪酸またはその塩でなる粒子とともに、酸化チタン微粒子および/または正帯電性シリカ微粒子を、シェアを高めて添加することにより、負帯電性シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、正帯電性シリカ微粒子などの外添剤が強固に付着することが明かとなった。