JP2005113337A - ドクターブレード及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 抄紙機等に備えられるドクターブレード及びその製造方法に関し、ロール表面にかす回りが発生するのを防止できるようにする。
【解決手段】 補強繊維1にマトリクス材が含浸されてなる繊維強化材により成形され、ロールの表面にブレード先端部1aを当接して該ロール表面の付着物を掻き取るドクターブレードであって、該補強繊維1の該ブレード先端部1aに対応する部分を、該ロール表面に垂直な一方向に配向して形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】 補強繊維1にマトリクス材が含浸されてなる繊維強化材により成形され、ロールの表面にブレード先端部1aを当接して該ロール表面の付着物を掻き取るドクターブレードであって、該補強繊維1の該ブレード先端部1aに対応する部分を、該ロール表面に垂直な一方向に配向して形成する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば抄紙機等のロール表面に付着した紙かす等の付着物を掻き取るためのドクターブレード及びその製造方法に関するものである。
従来より、例えば図6(a)に示すように、抄紙機等に設けられたワイヤロール,ドライヤロール,カレンダロールなどの各種ロール20には、ロール表面20aに当接してロール表面20aに付着した紙かす,ピッチ,紙粉,松やに等の粘着物(以下、まとめて「かす」という)、あるいは水膜等を掻き取るドクターブレード30が備えられている。
ドクターブレード30は、長手方向の長さがロール20の軸方向長さと略同等の長さ(例えば4〜9m)、短手方向の長さが例えば75mm程度、厚さが例えば0.5〜6mm程度(代表的には1.2〜2.0mm)で形成されている。このようにドクターブレード30はロール20の軸方向にわたって掛け渡された長板状の形状をしており、その長辺側端部、即ち刃先30aは例えば50g〜600g/cm程度の荷重でロール表面20aに当接するようになっている。
ドクターブレード30は、長手方向の長さがロール20の軸方向長さと略同等の長さ(例えば4〜9m)、短手方向の長さが例えば75mm程度、厚さが例えば0.5〜6mm程度(代表的には1.2〜2.0mm)で形成されている。このようにドクターブレード30はロール20の軸方向にわたって掛け渡された長板状の形状をしており、その長辺側端部、即ち刃先30aは例えば50g〜600g/cm程度の荷重でロール表面20aに当接するようになっている。
さらに、ドクターブレード30の材質としては、例えばベークライト,高分子ポリエチレン,テフロン(登録商標),炭素鋼,ステンレス(SUS),銅,りん青銅などが挙げられ、相手側のロール表面20aの材質に応じて適宜選択して使用される。例えば、ロール表面20aの材質がゴムである場合には、ベークライトなどの軟質の材料で形成されたドクターブレード30を使用したり、ロール表面20aの材質が鋳物である場合には、りん青銅などの硬質の材料で形成されたドクターブレード30を使用したりする。
しかし、例えば上述した樹脂製のドクターブレード30の場合、ドクターブレード30の刃先30aが軟質であるためロール表面20aへの刃当たりを均一にできず、また、摩耗量が多いためドクターブレード30の寿命が短いという課題があった。一方、金属製のドクターブレード30の場合、ドクターブレード30の刃先30aがロール表面20aに当接してロール表面20aとの摩擦により次第に摩耗していく時に、ロール表面20aとの摩擦熱により金属が粘性を帯びて刃先30aが少しずつ裏側に捲れるが(この捲れたものをバリという)、このようなバリにかすが付着し、このかすがロール表面の周方向に発生してしまう(これを「かす回り」という)ため、抄紙機において良質な紙が形成できないおそれがある。
そこで、近年では、ガラス繊維から形成したシートなどのガラス繊維集合体に熱硬化性樹脂を含浸させ、これを複数層積層し、加熱,加圧して硬化することにより成形したドクターブレードも利用されている。このようなドクターブレードは、単なる樹脂製のものよりも強度が高くロール表面への刃当たりも良い。また、ロール表面20aとの摩擦により摩耗していくため、金属製のドクターブレードのように摩擦熱で粘性を帯びて刃先の裏側にバリが発生してしまうことはなく、金属製のものよりもかす回りの発生を抑制することができる。
このような繊維体で形成されたドクターブレードは種々開発されているが、さらに最近では、耐摩耗性などをより向上させるために繊維体の織り方や繊維体の積層の仕方などを工夫したものが開発され実用されている。例えば特許文献1には、ポリアミド系繊維やポリエステル系繊維等を経緯糸(縦横糸)とした平織の基材と繊維層とをニードルパンチングによって絡合一体化させた繊維積層体に、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含浸させて硬化したドクターブレードが開示されている。
また、特許文献2には、補強繊維としての平織クロスにマトリックスとなるエポキシ樹脂を含浸した平織クロス基材エポキシ樹脂のプリプレグと、補強繊維としての一方向ストランドにエポキシ樹脂を含浸した一方向ストランド基材エポキシ樹脂のプリプレグとを交互に積層した材料を、プレス機にて加熱,加圧することで、補強繊維とエポキシ樹脂とが一体化された繊維補強熱硬化性樹脂複合シートを成形し、この複合シートをドクターブレードとして用いることが開示されている。
ここで、上記の平織又は平織クロスと称されるクロス織物は、図7(a)に示すように、略同数の縦糸a1と横糸a2とで交互に交差するように織られ、縦方向及び横方向に均等な強度を有する織物のことをいい、一般に、一束当たりのフィラメント(繊維)数が3000〜24000本(一本の径は約数ミクロン)程度であり、また、縦糸a1及び横糸a2ともに2〜5束/cmのピッチで形成されている(即ち、縦糸a1の束のピッチと横糸a2の束のピッチとがともにΔxである)。
一方、上記の一方向ストランドと称される一方向織物は、図7(b)に示すように、縦糸b1の本数を横糸b2よりも増やして縦方向の強度を高めた織物のことをいい、一般に、一束当たりのフィラメント数が3000〜6000本程度(縦糸b1には一束当たり12000本以上用いられる場合もある)であり、また、縦糸b1は3〜5束/cm、横糸b2は1〜3束/cmのピッチで形成されている(即ち、縦糸b1の束のピッチΔxと横糸b2の束のピッチΔyとの関係がΔx<Δy)。
特開2003−89992号公報
特開2002−173887号公報
一般にドクターブレード30は、図6(a)〜(c)に示すように刃先30aがロール20の表面20aに当接し、ドクターブレード30の刃先30aが次第に摩耗していく。
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2のようなクロス織物を含む従来のドクターブレード30では、ドクターブレード30が摩耗していく過程において、次に示すような課題が生じる。
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2のようなクロス織物を含む従来のドクターブレード30では、ドクターブレード30が摩耗していく過程において、次に示すような課題が生じる。
図8(a)はクロス織物の拡大図、図8(b)は図8(a)のA−A断面図を示すものであるが、これら図8(a)及び図8(b)に示すように、クロス織物では縦糸a1の束と横糸a2の束とがクロスする部分の周辺に隙間Sが形成される。この隙間Sは、縦糸a1の束のピッチと横糸a2の束のピッチとを小さくすることで、より小さくすることができるが、完全になくすことはできない。また、ドクターブレード30はこのようなクロス織物に樹脂を含浸させることにより成形されるが、ドクターブレード30の耐摩耗性は繊維体の強度で決定され、樹脂は繊維体を保持するための機能しか持っておらず強度は極めて低い。つまり、隙間Sの箇所は樹脂の強度しかないため、この隙間Sの箇所の強度が極めて低いものとなる。このため、例えば図9に示すように、ドクターブレード30の刃先30aがロール表面20aとの摩擦により次第に摩耗していく際、ドクターブレード30が図9に示すような刃先(面)30aでロール表面20aに当接している場合、隙間Sの箇所の強度が非常に低く、これら各隙間Sに介在している樹脂31が欠けてしまう。これにより、ロール表面20aの隙間Sの箇所におけるかすを掻き取れなくなり、この箇所においてかす回りが発生してしまうという課題がある。
また、例えば図10に示すように、ロール表面20aに垂直に当接する縦糸a1と、ロール表面20aに平行に当接する横糸a2との強度を比べると、縦糸a1は樹脂により繊維方向(図10では上下方向)に強固に支持されておりロール表面20aに対する強度が高い一方、横糸a2は樹脂により繊維方向(図10では左右方向)に強固に支持されてはいるがロール表面20aに対する強度は縦糸a1よりも低く、横糸a2がロール表面20aとの摩擦により何本か切れてしまうと、この切断箇所から横糸a2が欠けてしまう。これにより、ロール表面20aの横糸a2が欠けた箇所32の強度が低下してかすを十分に掻き取れなくなり、この箇所32においてかす回りが発生してしまうという課題がある。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、ロール表面にかす回りが発生するのを防止できるようにした、ドクターブレード及びその製造方法を提供することを目的とする。
このため、本発明のドクターブレード(請求項1)は、補強繊維にマトリクス材が含浸されてなる繊維強化材により成形され、ロールの表面にブレード先端部を当接して該ロール表面の付着物を掻き取るドクターブレードであって、該補強繊維の該ブレード先端部に対応する部分が、該ロール表面に垂直な一方向に配向されていることを特徴としている。なお、ここでいう先端部とは、ドクターブレードの使用にしたがって摩耗していく部分をいい、通常は、未使用状態のドクターブレードの刃先から少なくとも約10mm程度以上の範囲をいう。
また、該ドクターブレードの本体は、該ロール表面に垂直に配向された補強繊維と該ロール表面に平行に配向された補強繊維とが織り込まれたクロス織物により形成されていることが好ましい(請求項2)。さらに、該マトリクス材は、樹脂であることが好ましく(請求項3)、また、該補強繊維は、カーボン繊維であることが好ましい(請求項4)。
また、該先端部の該ロールの両端部における該補強繊維の体積含有率が該ロールの中心部よりも大きくなるように形成されていることが好ましい(請求項5)。
また、該先端部の該ロールの両端部における該補強繊維の体積含有率が該ロールの中心部よりも大きくなるように形成されていることが好ましい(請求項5)。
本発明の第1のドクターブレードの製造方法(請求項6)は、補強繊維にマトリクス樹脂を含浸させて成形する、ドクターブレードの製造方法であって、ロールの表面に当接するブレード先端部に対応する部分が該ロール表面に垂直な一方向に配向されてなる補強繊維を用意し、下型に該補強繊維を同一方向に複数積層して補強繊維積層体とし、該補強繊維積層体を該下型とで挟むように上型を配置して該下型と該上型とで形成される空間を閉空間とし、該閉空間の一端から該閉空間内の空気を吸引しながら、該閉空間の他端から該マトリクス樹脂を該補強繊維積層体に供給して、該マトリクス樹脂を該補強繊維積層体に含浸させた後、該マトリクス樹脂を硬化させることを特徴としている。
また、該下型及び該上型の該先端部に対応した箇所が、テーパ形状に形成されていることが好ましい(請求項7)。
本発明の第2のドクターブレードの製造方法(請求項8)は、補強繊維にマトリクス樹脂を含浸させて成形する、ドクターブレードの製造方法であって、ロールの表面に当接するブレード先端部に対応する部分が該ロール表面に垂直な一方向に配向されてなる補強繊維を用意し、該補強繊維に該マトリクス樹脂を含浸させてプリプレグを形成し、該プリプレグを同一方向に複数積層してプリプレグ積層体とした後、該プリプレグ積層体を加圧及び加熱することを特徴としている。
本発明の第2のドクターブレードの製造方法(請求項8)は、補強繊維にマトリクス樹脂を含浸させて成形する、ドクターブレードの製造方法であって、ロールの表面に当接するブレード先端部に対応する部分が該ロール表面に垂直な一方向に配向されてなる補強繊維を用意し、該補強繊維に該マトリクス樹脂を含浸させてプリプレグを形成し、該プリプレグを同一方向に複数積層してプリプレグ積層体とした後、該プリプレグ積層体を加圧及び加熱することを特徴としている。
本発明のドクターブレード及びその製造方法によれば、ドクターブレードの先端部の強度を向上させて、ロール表面にかす回りが発生するのを防止することが可能となる。また、抄紙機のワイヤ,フェルト,キャンバスなどの汚れを防止できるので、欠陥のない紙を生産できる。さらに、これらの寿命が延びるのでランニングコストを低減できるという利点もある。特に本発明のドクターブレードを抄紙機プレスのセンターロールに使用すると、ロール表面に付着しているかす(繊維含有物やピッチなど)を良好に除去できるので、ロールからの紙離れが良好となり、これにより断紙が減るので生産効率を向上させることができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1〜図3は、本発明の一実施形態としてのドクターブレード及びその製造方法を説明するためのもので、図1はドクターブレードを形成する補強繊維シートを示す模式図、図2はドクターブレードの先端部の拡大図、図3はドクターブレードの製造装置を示す模式図である。
図1〜図3は、本発明の一実施形態としてのドクターブレード及びその製造方法を説明するためのもので、図1はドクターブレードを形成する補強繊維シートを示す模式図、図2はドクターブレードの先端部の拡大図、図3はドクターブレードの製造装置を示す模式図である。
本実施形態に係るドクターブレード10は、図2に示すように、抄紙機等に設けられたワイヤロール,ドライヤロール,カレンダロールなどの各種ロール20の表面20aに、その刃先1aを当接して備えられ、ロール表面20aに付着した紙かす,ピッチ,紙粉,松やに等の粘着物(付着物。以下、まとめて「かす」という)を掻き取るようになっている。また、ドクターブレード10は、長手方向の長さがロール20の軸方向長さと略同等の長さ(例えば4〜9m。図2ではロール軸方向の長さを短く省略して示している)、短手方向の長さが例えば75mm程度、厚さが例えば0.5〜6mm程度(代表的には1.2〜2.0mm)で形成されている。このようにドクターブレード10はロール20の軸方向にわたって掛け渡された長板状の形状をしており、その長辺側端部、即ち刃先1aは例えば50g〜600g/cm程度の荷重でロール表面20aに当接するようになっている。
また、ドクターブレード10は、補強繊維としての炭素繊維(カーボン繊維)に、マトリクス樹脂(マトリクス材)としてのエポキシ樹脂11(図3参照)を含浸させて硬化することにより成形されている。なお、上記の補強繊維としては、炭素繊維以外の繊維を用いてもよいし、複数種類の繊維を組み合わせて用いても良い。また、補強繊維として用いることができるものの具体例としては、ガラス繊維,ボロン繊維等の無機繊維,アラミド繊維,ポリアミド繊維などの有機繊維などが挙げられる。一方、マトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂11以外の種々の樹脂を用いても良いし、複数種類の樹脂を組み合わせて用いても良い。ただし、マトリクス樹脂としては熱硬化性樹脂が好ましく、特に90〜120℃の温度で硬化する熱硬化性樹脂であることが好ましい。マトリクス樹脂として用いることができる樹脂の具体例としては、フェノール樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,ビニルエステル樹脂などが挙げられる。また、マトリクス樹脂に添加物を入れて、潤滑性を高めたり、耐摩耗性を高めるようにしても良い。
また、本実施形態に係る炭素繊維は、図1に示すように織り込まれてシート状に形成されている。つまり、本実施形態に係る炭素繊維シート1は、ロール表面20aに当接する刃先1a側の先端部(ブレード先端部)x1が、ロール表面20aに垂直に配向された炭素繊維からなる一方向繊維シートとして形成され、この先端部x1以外の部分はクロス織物シートとして形成されている。これは、例えばクロス織物の炭素繊維シート1を準備して、先端部x1の領域内にある横糸(図1中、左右方向に織り込まれた糸)だけを抜き取ることにより容易に形成できる。なお、ここでいう先端部x1とは、ドクターブレード10の使用にしたがって摩耗していく部分をいい、通常は、未使用状態のドクターブレード10の刃先1aから少なくとも約10mm程度以上の範囲をいう。
また、本実施形態に係る炭素繊維シート1は、縦糸c1及び横糸c2の一束当たりのフィラメント(繊維)数が約3000〜24000本(一本の径は約数ミクロン)程度であり、縦糸c1及び横糸c2ともに例えば2〜5束/cmのピッチで形成されている。さらに、炭素繊維シート1の厚さは約0.2〜0.7mm程度であり、本実施形態に係るドクターブレード10はこの炭素繊維シート1を同一方向に複数(例えば3〜5枚程度)積層することにより形成される。つまり、図2に示すように、ドクターブレード10のロール表面20a側(即ち、先端部x1の領域)の炭素繊維が全てロール表面20aに垂直に当接するようになっている。
次に、図3を参照しながら、本実施形態に係るドクターブレード10の製造方法について説明する。図3に示すように、まず、金型(下型)3の上に、炭素繊維シート1を同一方向に複数積層し、これら複数の炭素繊維シート1からなる積層体2の上に、繊維強化プラスチック(FRP)により形成された可撓性のカールプレート(上型)4と、ビニール等から成る不透気性の弾性シート5とを順に載置する。また、弾性シート5はカールプレート4よりも大きく形成されており、カールプレート4を覆うように被せられている。また、弾性シート5の長手方向および短手方向端部と金型3の長手方向および短手方向端部との間にはシール部材6が備えられている。そして、これら金型3とカールプレート4及び弾性シート5とにより形成された閉空間をまず真空ポンプ7により大気圧以下に減圧して空気を除去した後、積層体2の一端部側からマトリクス樹脂としてのエポキシ樹脂11を大気圧で注入(供給)する一方、さらに真空ポンプ7により積層体2の他端部側からエポキシ樹脂11を吸引する。このようにして、エポキシ樹脂11を積層体2の全体(即ち、各炭素繊維シート1の全領域)にわたって均等に含浸させることができる。なお、図3に示す矢印はエポキシ樹脂11が流れる向きを示している。
エポキシ樹脂11が積層体2に完全に含浸したら、金型3を加熱して上記の閉空間内を昇温し(例えば90℃程度に昇温し)、エポキシ樹脂11を硬化させて積層体2を一体にする。なお、このとき、真空ポンプ7により閉空間内が吸引されているので積層体2がカールプレート4及び弾性シート5により金型3に押し付けられた状態で一体化する。つまり、積層体2を一体化する際に余分なエポキシ樹脂11は真空ポンプ7により吸引されるため、繊維体積含有率(繊維密度に相当する)Vfの高い、即ち強度が高く耐摩耗性に優れたドクターブレード10を成形することが可能となる。また、真空ポンプ7により閉空間内を予め真空にして空気を除去した後に樹脂を注入するため、ドクターブレード10内に気泡が残ることがなく、より強度を高めることが可能となる。
なお、閉空間内が吸引される過程でカールプレート4が変形して積層体2に密着するので、積層体2の先端部x1の厚みは、先端部x1以外の厚みに比べて薄くテーパ状に成形される。このため、ドクターブレード10を成形した後に先端部x1を削ってテーパ状に形成する必要がない。また、このように先端部x1がテーパ状に形成されることで先端部x1の繊維体積含有率Vfが高くなるため、先端部x1の強度を先端部x1以外の部分よりも高めることが可能となる。
本発明の一実施形態としてのドクターブレード10は、上述したように、通常使用に供される先端部x1にはロール表面20aに垂直な縦糸c1の炭素繊維しか存在しないので、従来のクロス織物に存在していた隙間S(図9参照)は生じず、刃先1aが欠けてしまうことがない。また、先端部x1には横糸c2は存在しないため、従来のように横糸c2が切れた箇所の強度が低くなるということはない。さらに、先端部x1の縦糸c1はエポキシ樹脂11により繊維方向(例えば図1では上下方向)に強固に支持(固定)されておりロール表面20aに対する強度が高い。このように、ドクターブレード10の先端部の強度を向上させることにより、ドクターブレード10の刃先1aが欠けてしまうのを防止することができる。これにより、ロール表面20aにかす回りが発生するのを防止できる。
また、通常、ドクターブレード10を抄紙機内に固定する場合、先端部x1とは反対側の長辺端部を支持する必要があるが、上述したように先端部x1以外の部分をクロス織物として形成することで、ロール表面20aに垂直な方向だけでなく平行な方向においても強度を高めることができ、ドクターブレード10を安定して支持することができるという利点もある。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、本実施形態に係る炭素繊維シート1に代えて、シート全体が図4に示すような一方向織物として形成されたものを用いても良い。また、このような一方向繊維シートだけで積層したり、あるいは、本実施形態に係る炭素繊維シート1と交互に積層させたりしてドクターブレード10を成形してもよい。ただし、この場合、当然のことながら本実施形態に係る炭素繊維シート1と同様に、先端部x1には横糸c2が存在しないように形成する。なお、図4に示す一方向繊維シートの横糸d2は縦糸d1のハンドリング用のために織り込まれるものであり、横糸d2がなくても縦糸d1がばらつかない場合は横糸d2を抜き取って使用することももちろん可能である。
例えば、本実施形態に係る炭素繊維シート1に代えて、シート全体が図4に示すような一方向織物として形成されたものを用いても良い。また、このような一方向繊維シートだけで積層したり、あるいは、本実施形態に係る炭素繊維シート1と交互に積層させたりしてドクターブレード10を成形してもよい。ただし、この場合、当然のことながら本実施形態に係る炭素繊維シート1と同様に、先端部x1には横糸c2が存在しないように形成する。なお、図4に示す一方向繊維シートの横糸d2は縦糸d1のハンドリング用のために織り込まれるものであり、横糸d2がなくても縦糸d1がばらつかない場合は横糸d2を抜き取って使用することももちろん可能である。
また、本実施形態では、炭素繊維シート1の縦糸c1及び横糸c2ともに炭素繊維を用いたが、横糸c2だけをガラス繊維に代えても良い。さらに、縦糸c1の炭素繊維の中に、より径の太い炭素繊維を混在させて、ドクターブレード10の刃先1aの強度を高めるようにしても良い。
また、各ロール表面20aの状態などによりドクターブレード10の摩耗の仕方が長手方向で違う場合は、摩耗特性に応じて長手方向の繊維の太さを変えても良い。例えば抄紙機のドライヤロールなどは軸方向両端部の温度が軸方向中心部よりも低く、ドクターバックの熱変形により、ドクターブレード10の両端部付近が比較的摩耗しやすいことがある。この場合、ロール表面20aの両端部付近に当接する縦糸c1の炭素繊維の中に、通常の径よりも太い径を有する炭素繊維を混在させておくことで、ドクターブレード10の長手方向における摩耗量のばらつきを防止することができる。
また、各ロール表面20aの状態などによりドクターブレード10の摩耗の仕方が長手方向で違う場合は、摩耗特性に応じて長手方向の繊維の太さを変えても良い。例えば抄紙機のドライヤロールなどは軸方向両端部の温度が軸方向中心部よりも低く、ドクターバックの熱変形により、ドクターブレード10の両端部付近が比較的摩耗しやすいことがある。この場合、ロール表面20aの両端部付近に当接する縦糸c1の炭素繊維の中に、通常の径よりも太い径を有する炭素繊維を混在させておくことで、ドクターブレード10の長手方向における摩耗量のばらつきを防止することができる。
さらに、ドクターブレード10の長手方向だけでなく、厚み方向においても摩耗特性に応じて繊維体積含有率Vfを変えても良い。例えば、ドクターブレード10の刃先1aの上面(表面)側の炭素繊維の径を細くし、下面(裏面)側の炭素繊維の径は太くするようにしても良い。これにより、かすを掻き取る上面は繊維が細く、細かいかすまで良く掻き取ることができ、また、下面の繊維は太く磨耗し難いので寿命を延ばすことができる。
また、図5に示すように、積層体2の先端部x1において金型3及びカールプレート4により形成される空間がテーパ形状になるように金型3及びカールプレート4にそれぞれ傾斜部8,9を形成してもよい。このように形成することで、積層体2の先端部x1をより確実に且つ容易に任意のテーパ形状に形成することが可能となる。一般にドクターブレード10の厚みが薄いとかすを除去する面圧が高くなるので、かすの掻き取りが良好になる。従って、上記のようにテーパ形状にすることで先端だけを薄くできるので、刃先1aのたわみを低減してかすを確実に掻き取ることが可能となる。
さらに、本実施形態では、炭素繊維シート1を複数積層させた後エポキシ樹脂11を含浸させてドクターブレード10を製造したが、従来技術で説明したように、先に炭素繊維シート1にマトリクス樹脂を含浸させてプリプレグを形成し、このプリプレグを同一方向に複数積層させてプリプレグ積層体とした後、このプリプレグ積層体を加圧及び加熱することによりマトリクス樹脂を硬化させて、ドクターブレードを成形するようにしてもよい。
上記実施形態では、本発明のドクターブレードのマトリクス材として樹脂を用いたが、例えば摩擦熱を発生しにくい合金等の金属など、樹脂以外のものをマトリクス材として用いてもよい。
1 炭素繊維シート(補強繊維)
1a 刃先
2 積層体(補強繊維積層体)
3 金型(下型)
4 カールプレート(上型)
5 弾性シート
6 シール部材
7 真空ポンプ
8,9 傾斜部
10 ドクターブレード
11 エポキシ樹脂(マトリクス材,マトリクス樹脂)
20 ロール
20a ロール表面
x1 先端部(ブレード先端部)
1a 刃先
2 積層体(補強繊維積層体)
3 金型(下型)
4 カールプレート(上型)
5 弾性シート
6 シール部材
7 真空ポンプ
8,9 傾斜部
10 ドクターブレード
11 エポキシ樹脂(マトリクス材,マトリクス樹脂)
20 ロール
20a ロール表面
x1 先端部(ブレード先端部)
Claims (8)
- 補強繊維にマトリクス材が含浸されてなる繊維強化材により成形され、ロールの表面にブレード先端部を当接して該ロール表面の付着物を掻き取るドクターブレードであって、
該補強繊維の該ブレード先端部に対応する部分が、該ロール表面に垂直な一方向に配向されている
ことを特徴とする、ドクターブレード。 - 該ドクターブレードの本体は、該ロール表面に垂直に配向された補強繊維と該ロール表面に平行に配向された補強繊維とが織り込まれたクロス織物により形成されている
ことを特徴とする、請求項1記載のドクターブレード。 - 該マトリクス材は、樹脂である
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のドクターブレード。 - 該補強繊維は、カーボン繊維である
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のドクターブレード。 - 該先端部の該ロールの両端部における該補強繊維の体積含有率が該ロールの中心部よりも大きくなるように形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のドクターブレード。 - 補強繊維にマトリクス樹脂を含浸させて成形する、ドクターブレードの製造方法であって、
ロールの表面に当接するブレード先端部に対応する部分が該ロール表面に垂直な一方向に配向されてなる補強繊維を用意し、
下型に該補強繊維を同一方向に複数積層して補強繊維積層体とし、
該補強繊維積層体を該下型とで挟むように上型を配置して該下型と該上型とで形成される空間を閉空間とし、
該閉空間の一端から該閉空間内の空気を吸引しながら、該閉空間の他端から該マトリクス樹脂を該補強繊維積層体に供給して、該マトリクス樹脂を該補強繊維積層体に含浸させた後、該マトリクス樹脂を硬化させる
ことを特徴とする、ドクターブレードの製造方法。 - 該下型及び該上型の該先端部に対応した箇所が、テーパ形状に形成されている
ことを特徴とする、請求項6記載のドクターブレードの製造方法。 - 補強繊維にマトリクス樹脂を含浸させて成形する、ドクターブレードの製造方法であって、
ロールの表面に当接するブレード先端部に対応する部分が該ロール表面に垂直な一方向に配向されてなる補強繊維を用意し、
該補強繊維に該マトリクス樹脂を含浸させてプリプレグを形成し、
該プリプレグを同一方向に複数積層してプリプレグ積層体とした後、該プリプレグ積層体を加圧及び加熱する
ことを特徴とする、ドクターブレードの製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003350962A JP2005113337A (ja) | 2003-10-09 | 2003-10-09 | ドクターブレード及びその製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009518553A (ja) * | 2005-12-07 | 2009-05-07 | エクセル オーワイジェー | 抄紙機又は板紙抄紙機のロール用のドクターブレード、及びドクターブレードの製造方法 |
-
2003
- 2003-10-09 JP JP2003350962A patent/JP2005113337A/ja not_active Withdrawn
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