本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。尚、図1〜図3は、実施例の機構部を説明するためのものであって、図1は、絞り口径が最大のときの平面図であり、図2は、各部材の重なり関係を分かり易くするために示した図1の一部断面図であり、図3は、絞り口径が最小のときの平面図である。また、図4〜図9は実施例の絞り機構を駆動するステップモータの作動説明図であって、図4は、2相励磁駆動によって、撮影時に駆動リングを図1の初期位置から作動させる場合を説明するためのものであり、図5は、2相励磁駆動によって、撮影終了後、駆動リングを図1の初期位置に復帰させる作動を説明するためのものであり、図6は、2相励磁駆動によって、駆動リングをイニシャライズさせたときの問題点を説明するためのものである。また、図7は、1−2相励磁駆動によって、駆動リングをイニシャライズさせるときの基本的な作動を説明するためのものであり、図8は、駆動リングを1−2相励磁駆動でイニシャライズすると、必ず初期位置で停止することを説明するためのものである。更に、図9は、駆動リングを1−2相励磁駆動でイニシャライズするとき、どのような位置からでも、好適に作動を開始させることができることを説明するためのものである。
最初に、実施例の構成を、主に図1及び図2を用いて説明する。主地板1と補助地板2とは、合成樹脂製であって、適宜な手段によって相互に取り付けられ、それらの間に羽根室を構成している。また、主地板1と補助地板2とは、外形が略同じ形状をしており、光軸を中心にした円形の開口部1a,2aを有しているが、開口部2aよりも開口部1aの直径の方が小さいため、開口部1aが、絞りの最大開口を規制するようになっている。尚、図1においては、主地板1の一部を破断して示してある。また、本実施例の場合には、カメラに組み込まれたとき、主地板1が被写体側に配置されるものとする。
主地板1には、光軸を中心にした円周上の略等角度間隔の位置に、五つの孔1bが形成されているが、図1では、主地板1の一部を破断しているので、それらのうちの四つだけが示されている。また、主地板1の羽根室側の面には、円弧状の段部1cが形成されており、その長さ方向の一端面には、ストッパの役目をする突部1dが形成されている。更に、主地板1には、被写体側に突き出た筒状の収容室1eが、一体成形加工によって形成されているが、この収容室1eには、後述の回転子5が、羽根室側の開放部から収容されるようになっている。
羽根室内には、駆動リング3が、光軸を中心にして回転可能に配置されており、その外周の一部から径方向に張出した張出部3aが、上記の段部1cに対向して作動し、上記の突部1dに当接し得るようになっている。また、この駆動リング3は、五つの細長いカム溝3bを形成し、且つ外周の一部には所定の角度範囲にわたって歯部3cを形成している。更に、羽根室内には、主地板1と駆動リング3との間に5枚の絞り羽根4が配置されていて、各々の絞り羽根4は、一方のピン4aを地板1の孔1bに回転可能に嵌合させ、他方のピン4bを駆動リング3のカム溝3bに挿入している。
次に、本実施例のステップモータを説明するが、その構成は、実質的に特許文献2に記載のものと同じである。即ち、回転子5は、4極に着磁された円筒形の永久磁石5aを有していて、収容室内に立設された軸に対して回転可能に取り付けられており、永久磁石5aの羽根室側には出力歯車5bを一体的に形成している。固定子は、二つのヨーク6,7と、図示していない二つのコイルとで構成されている。そして、ヨーク6,7は、回転子5を間にしてその両側に配置され、主地板1の被写体側の面に適宜な手段によって取り付けられており、各々の二つの脚部の先端を磁極部6a,6b,7a,7bとして、収容室1eの外壁に設けられた孔に挿入し、永久磁石5aの円周面に対向させている。また、上記の図示していない二つのコイルは、ヨーク6,7の一方の脚部に嵌装されたボビン8,9に巻回されている。
主地板1と補助地板2との間には、減速歯車10が回転可能に取り付けられている。この減速歯車10は、親歯車10aと子歯車10bとからなる2段歯車(親子歯車)であって、親歯車10aは回転子5の出力歯車5bに噛合し、子歯車10bは駆動リング3の歯部3cに噛合している。尚、説明するまでもないことであるが、主地板1の羽根室側の面は、出力歯車5bと減速歯車10とを回転可能に配置することが可能な形状をしている。
次に、このような絞り装置の作動を説明するが、説明の都合上、先ずは、既に電源がオンとなっていてイニシャライズが完了している状態から、実際に撮影が行なわれる場合の作動を、図1,図3,図4,図5を用いて説明する。図1は、そのような撮影の待機状態を示したものであって、5枚の絞り羽根4は、開口部(撮影光路用開口)1aを全開にした最大絞り開口の制御状態となっている。また、駆動リング3は初期位置にあり、その張出部3aが、ストッパの役目をする突部1dから若干離れているが、その理由は、後述の作動説明から理解することができる。
尚、図4(a)〜(e)は、撮影時に駆動リング3を図1の初期位置から作動させるに際し、ステップモータを2相励磁駆動する場合の説明図であり、図5(a)〜(e)は、撮影終了後、駆動リング3を図1の初期位置に復帰させるに際し、ステップモータを2相励磁駆動する場合の説明図であるが、回転子5と、ヨーク6,7の磁極部6a,6b,7a,7bの符号は、図4(a)と図5(a)にだけ付けてある。また、図4(a)は、図1と同じ待機状態を示したものであり、この状態においては、ボビン8,9に巻回された図示していない二つのコイルが非通電状態であって、ヨーク6,7の磁極部6a,6b,7a,7bには磁極が現れていないが、回転子5の四つの磁極との間に働く磁力がバランスしたところで、回転子5の静止状態が維持されている。
この状態においてカメラのレリーズが行なわれると、測光回路の測定結果によって絞り開口が回路上で決定され、ステップモータが、その絞り開口の制御に必要なパルス数の信号によって2相励磁駆動させられ、図1において、回転子5を反時計方向へ回転させる。そこで、回転子5が具体的に、どのようにして回転させられるのかを、図4を用いて説明する。先ず、図4(a)において、ヨーク6側のコイルにはLレベルのパルス信号が与えられ、ヨーク7側のコイルにはHレベルのパルス信号が与えられる。そのため、磁極部6aにはN極が、磁極部6bにはS極が現れ、磁極部7aにはN極が、磁極部7bにはS極が現れる。そのため、回転子5は反時計方向へ回転して、図4(b)の状態になる。
そこで、次に、ヨーク7側のコイルにLレベルのパルス信号が与えられる。それによって、磁極部7aはS極になり、磁極部7bはN極になるから、回転子5は更に反時計方向へ回転して図4(c)の状態になる。その後、ヨーク6側のコイルにHレベルのパルス信号が与えられ、磁極部6aがS極になり、磁極部6bがN極になると、回転子5は更に反時計方向へ回転して図4(d)の状態になる。更に、その状態で、ヨーク7側のコイルにHレベルのパルス信号が与えられ、磁極部7aがN極になり、磁極部7bがS極になると、回転子5はなおも反時計方向へ回転して図4(e)の状態になる。そして、この図4(e)の状態は、回転子5が図4(a)の位置から180°反時計方向へ回転した状態であって、図4(a)の場合と同じ関係位置になっているから、このあとは、図4(b)〜図4(e)の制御シーケンスを繰り返すことによって、回転子5を反時計方向へ回転させ続けることになる。
このようにして、回転子5が反時計方向へ回転させられると、出力歯車5bの回転が減速歯車10を介して駆動リング3に伝えられるので、駆動リング3も反時計方向へ回転させられる。それによって、駆動リング3は、五つのカム溝3bによって、5枚の絞り羽根4を同時に反時計方向へ回転させ、開口部1aを覆って行く。そして、予め決定された絞り開口に対応するパルス数の付与が終わると、駆動リング3の回転が停止し、5枚の絞り羽根4によって、絞り開口が規制される。従って、その場合の回転子5の停止状態は、図4(b)〜(e)のいずれかということになるが、本実施例の作動説明においては、予め測光結果によって決められた絞り開口が最小絞り開口であって、その場合の回転子5の停止状態が、図4(e)の状態であるとする。図3は、その最小絞り開口の規制状態を示したものであり、この状態で撮影が行なわれる。
撮影が終了すると、ステップモータは、上記と同じパルス数の信号によって2相励磁駆動させられ、回転子5を時計方向へ回転させる。そこで、図5を用いて、回転子5の回転制御を具体的に説明するが、この場合には、図4の制御シーケンスを逆に行なうことになる。図5(a)は、上記のように、回転子5が図4(e)の状態になって、停止したままになっている状態である。そして、撮影中は、ヨーク6,7の磁極部6a,6b,7a,7bには磁極が現れていないが、回転子5の四つの磁極との間に働く磁力がバランスして、回転子5の静止状態が維持されている。
撮影後、駆動リング3を図1の初期位置へ復帰させる場合には、図5(a)において、ヨーク6側のコイルにはHレベルのパルス信号が与えられ、ヨーク7側のコイルにはLレベルのパルス信号が与えられる。そのため、磁極部6aにはS極が、磁極部6bにはN極が現れ、磁極部7aにはS極が、磁極部7bにはN極が現れる。そのため、回転子5は時計方向へ回転して、図5(b)の状態になる。次に、ヨーク6側のコイルにLレベルのパルス信号が与えられると、磁極部6aはN極になり、磁極部6bはS極になるから、回転子5は更に時計方向へ回転して図5(c)の状態になる。
その後、ヨーク7側のコイルにHレベルのパルス信号が与えられ、磁極部7aがN極になり、磁極部7bがS極になると、回転子5は更に時計方向へ回転して図5(d)の状態になる。更に、その状態で、ヨーク6側のコイルにHレベルのパルス信号が与えられ、磁極部6aがS極になり、磁極部6bがN極になると、回転子5はなおも時計方向へ回転して図5(e)の状態になる。そして、その後は、図5(b)〜図5(e)の制御シーケンスを繰り返すことによって、回転子5を時計方向へ回転させ続けることになる。
このようにして、回転子5が時計方向へ回転すると、出力歯車5bの回転が減速歯車10を介して駆動リング3に伝えられるので、駆動リング3も時計方向へ回転し、5枚の絞り羽根4を同時に時計方向へ回転させて、開口部1aから退かせていく。そして、ヨーク6側のコイルとヨーク7側のコイルとに与えられるパルス信号が、共に図5(e)に示したようなHレベルのときであって、かつ駆動リング3が、図1に示された初期位置に達したとき、以後のパルス信号は与えられず、回転子5の回転が停止する。
ところが、そのようにして回転子5が停止したとしても、駆動リング3は、その初期位置で直ちに停止せず、慣性によって、歯車列のバックラッシなどの遊びの範囲でオーバーランさせられることになるが、その場合には、その直後に、張出部3aが突部1dに当接するので、既に停止した回転子5に対して、さらに時計方向へ回転させる力を与えることなく停止する。従って、その後は、パルス信号が与えられないので、四つの磁極部6a,6b,7a,7bは励磁されず、図4(a)に示した撮影待機状態に復帰したことになる。
次に、それまではカメラを不使用状態にしておいたが、撮影に先立って電源をオンにしたときに行なわれるイニシャライズの作動を説明する。既に説明したことではあるが、カメラを長いこと不使用状態にしておいたときには、衝撃等の影響によって、駆動リング3が初期位置から移動させられ、初期位置以外の位置で停止させられたままになっている場合がある。また、前回の撮影中に電池が切れたので電池交換をしたときにも、駆動リング3が初期位置以外の位置で停止したままになっている場合がある。そのような場合を考慮して、カメラの電源をオンにしたとき、ステップモータを回転させ、駆動リング3を初期位置へ復帰させるようにすることをイニシャライズという。
そして、撮影後に駆動リング3を初期位置へ復帰させる場合と異なり、イニシャライズを行なう場合には、駆動リング3が、実際に、初期位置からどこまで回転して停止しているのかが不明であることから、常に、少なくとも最小絞り開口の制御位置まで回転してしまっていることを想定して、回転子5を時計方向へ回転し続けさせなければならない。ところが、実際には、駆動リング3が最小絞り開口制御位置まで回転してしまっていることは稀であり、殆どの場合は、途中の絞り開口制御位置からイニシャライズをすることになるので、駆動リング3が初期位置を越え、張出部3aが突部1dに当接した後も、イニシャライズのためのパルス制御は続けられることになる。
このことを念頭においておき、本実施例におけるイニシャライズの作動を説明するが、その前に、先ず、上記した撮影時の場合と同じ2相の励磁駆動でイニシャライズさせると、どのような不都合が生じるかを、図5との比較において、図6を用いて説明する。図5は、上記したように、撮影直後に、回転子5を時計方向へ回転させ、駆動リング3を初期位置まで回転させる場合の説明図である。そのため、2相の励磁駆動でイニシャライズする場合にも、実質的にはこれと同じ励磁駆動が行われることになるが、イニシャライズを行なうときのパルス制御は、後述の実施例の作動説明からも分かるように、ヨーク6側のコイルにも、ヨーク7側のコイルにも、同時にHレベルのパルス信号を与える場合から開始される。従って、図5においては、先ず、図5(a)において、ヨーク6,7のコイルに、共にHレベルのパルス信号を与えた後、図5(b)〜図5(e)の繰り返しが行なわれることになる。
ところが、イニシャライズの場合には作動開始位置が決まっていないことから、上記した撮影時のように、図5(b)〜図5(e)の繰り返しで行なわれても、図5(e)の段階でパルス制御が終了するというようなことは殆どない。そこで、回転子5が、図5(b)〜図5(e)のシーケンスを何度か繰り返して図5(e)の状態になった後、ヨーク7側のコイルにLレベルのパルス信号が与えられて、磁極部7aがS極になり、磁極部7bがN極になって、回転子5がなおも時計方向へ回転する段階で、駆動リング3の張出部3aが主地板1の突部1dに当接した場合を想定して見る。即ち、回転子5が、図5(e)の状態から図5(b)の状態まで、時計方向へ45°回転する過程で、張出部3aが突部1dに当接した場合である。
その場合、張出部3aは、回転子5の励磁駆動中に、突部1dに当接させられることから、その強い衝撃で駆動リング3が大きくバウンドさせられる。また、そのバウンドによって、回転子5は、図5(b)の状態になる前に逆転させられることになる。図6(a)は、回転子5が、そのようなバウンドによって逆転させられ、図5(e)の回転位置を越えて図5(d)の回転位置まで回転させられてしまった状態を示したものである。従って、図6(a)では、図5(b)と同じように、ヨーク6側のコイルにHレベルのパルス信号が与えられ、ヨーク7側のコイルにLレベルのパルス信号が与えられている場合であるにもかかわらず、回転子5は、図5(b)の状態まで時計方向へ回転することができず、その前に逆転させられて、図5(d)の状態まで反時計方向へ回転させられてしまっている。尚、図6の場合にも、図6(a)にだけ符号を付けてある。
このように、回転子5が、駆動リング3のバウンドによって反時計方向へ逆転させられ、図6(a)の状態になると、次は、上記のシーケンスにしたがい、図5(c)に示されたように、ヨーク6側のコイルにLレベルのパルス信号が与えられることになる。その状態が、図6(b)に示されているが、このようなパルス信号が与えられると、回転子5は反時計方向へ回転させられてしまい、図6(c)の状態にさせられてしまう。また、その次には、図5(d)に示したように、ヨーク6側のコイルにHレベルのパルス信号が与えられるため、図6(d)に示すように、回転子5は、さらに反時計方向へ回転させられてしまうことになる。その結果、回転子5は、駆動リング3のバウンドによって逆転された後、駆動リング3の初期位置に対応した回転位置で停止することなく、パルス制御が終了するまで反時計方向への回転を続けてしまい、5枚の絞り羽根4による中間絞り開口規制状態のいずれかの位置で停止することになってしまう。
そこで、従来は、イニシャライズをする場合にも、撮影時と同様に2相励磁駆動をするときは、このような不都合な事態が発生じないようにするために、イニシャライズを行なうときのパルス幅を、撮影時のパルス幅よりも長く(広く)していた。そのように各パルス幅を長くすると、次のパルス信号が与えられるまでの時間が長くなって、それだけ回転子5の回転が遅くなるため、張出部3aが突部1dに当接したときの衝撃も小さくなって、駆動リング3のバウンドが少なくなるからである。
そのため、上記の場合と同じように、回転子5が、図5(e)の状態から図5(b)の状態に達する前に、駆動リング3のバウンドによって逆転された場合でも、上記のように回転子5が図5(d)の状態にまでは戻されてしまうことがないし、次のパルス信号が与えられるまでの時間が長いため、その間に、回転子5にはそのステップでの時計方向への回転力が作用して、駆動リング3を、張出部3aが突部1dに当接する位置まで回転させることになる。従って、ステップモータは、逆転モードに入ってしまうことがなく、駆動リング3が一時的にバウンドした後は、張出部3aを突部1dに接触させ続け、最終パルス信号の付与が終了したとき、回転子5の永久磁石と磁極部6a,6b,7a,7bとの間に働く吸引力がバランスした状態となるために若干反時計方向へ回転し、駆動リング3を、図1に示された初期位置にイニシャライズすることになる。
このように、従来は、駆動リング3を初期位置にイニシャライズするときも、撮影時の場合と同様に、ステップモータを2相励磁駆動しており、しかも、撮影時と同じパルス幅で励磁駆動すると、ステップモータが逆転モードになってしまうおそれがあるため、撮影時の場合よりも長い(広い)パルス幅で行なっていた。しかしながら、そのような長い(広い)パルス幅で励磁駆動した場合には、イニシャライズに要する時間が長くなってしまい、撮影の開始がそれだけ遅くなってしまうという問題点がある。従って、本実施例の場合には、パルス幅を長くした2相の励磁駆動で行なうのではなく、1−2相の励磁駆動で行なうようにしている。
そこで、先ず、図7(符号は、図7(a)のみに付けた)を用い、ステップモータを、1−2相の励磁駆動で回転させる場合の基本作動を説明する。図7(a)は、回転子5が、上記の図5(a)の場合と同様の回転位置にある場合を示している。但し、イニシャライズを行なう場合のパルス制御は、必ず、ヨーク6側のコイルにも、ヨーク7側のコイルにも、同時にHレベルのパルス信号を与える場合から開始される。そして、そのときの最初のパルス幅は、それ以後に与えられるパルス幅よりも長くなっている。即ち、最初のパルス制御信号を、それ以後のパルス信号より長い時間与えているが、その理由は、カメラを長期間放置しておいたために湿気,塵埃等の影響を受けて、機械構成部品が始動しにくい状態になっていたとしても、確実に始動させることができるようにするためである。
本実施例の場合には、図7(a)における回転子5の停止位置が、たまたま、そのようなパルス信号を与えたときの回転停止位置と同じである。そのため、そのような信号を与えられても回転子5は回転することがない。そして、2番目のパルス制御からは、図7(b)〜図7(i)の繰り返しで、回転子5が、時計方向へ回転させられることになる。そこで先ず、図7(a)の状態において、ヨーク6側のコイルに対してだけ、Hレベルのパルス信号が与えられる。そのため、磁極部6aにはS極が現れ、磁極部6bにはN極が現れるため、回転子5は時計方向へ22.5°回転して、図7(b)の状態になる。次に、ヨーク6側のコイルにHレベルのパルス信号を与えたままで、ヨーク7側のコイルにLレベルのパルス信号が与えられる。そのため、磁極部7aにはS極が、磁極部7bにはN極が現れるため、回転子5はさらに時計方向へ22.5°回転して、図7(c)の状態になる。
次に、ヨーク7側のコイルにLレベルのパルス信号を与えたままで、ヨーク6側のコイルに与えていたHレベルのパルス信号を断つ。そのため、回転子5はさらに時計方向へ22.5°回転して、図7(d)の状態になる。その後、ヨーク7側のコイルにLレベルのパルス信号を与えたままで、ヨーク6側のコイルにLレベルのパルス信号が与えられるため、磁極部6aにはN極が、磁極部6bにはS極が現れ、回転子5はさらに時計方向へ22.5°回転して、図7(e)の状態になる。次に、ヨーク6側のコイルにLレベルのパルス信号を与えたままで、ヨーク7側のコイルに対するパルス信号を断つため、回転子5はさらに時計方向へ22.5°回転して、図7(f)の状態になる。
その後、ヨーク6側のコイルにLレベルのパルス信号を与えたままで、ヨーク7側のコイルにHレベルのパルス信号が与えられるため、磁極部7aにはN極が、磁極部7bにはS極が現れ、回転子5はさらに時計方向へ22.5°回転して、図7(g)の状態になる。次に、ヨーク7側のコイルにHレベルのパルス信号を与えたままで、ヨーク6側のコイルに対するパルス信号を断つため、回転子5はさらに時計方向へ22.5°回転して、図7(h)の状態になる。その後、ヨーク7側のコイルにHレベルのパルス信号を与えたままで、ヨーク6側のコイルにHレベルのパルス信号が与えられると、磁極部6aにはS極が、磁極部6bにはN極が現れ、回転子5はさらに時計方向へ22.5°回転して、図7(i)の状態になる。
次に、その後、ヨーク6側のコイルにHレベルのパルス信号を与えたままで、ヨーク7側のコイルに対するパルス信号を断つと、回転子5はさらに時計方向へ22.5°回転して、図7(b)の状態に戻る。そして、その後は、図7(b)〜図7(i)のシーケンスが繰り返され、最終パルス信号(図7(i))の付与が終了したとき、回転子5は、回転子5の永久磁石と磁極部6a,6b,7a,7bとの間に働く吸引力がバランスした状態となるために若干反時計方向へ回転し、駆動リング3を、図1に示された初期位置にイニシャライズすることになる。
これまでの説明からも分かるように、図7(a),図7(c),図7(e),図7(g),図7(i)の状態は、上記の図5(a),図5(b),図5(c),図5(d),図5(e)の状態と全く同じである。即ち、本実施例の場合における各ステップは、図5に示されたステップの1/2となっている。そして、このような制御を行うための本実施例のパルス幅は、図5に示されたステップ制御を行なうときのパルス幅の1/2になっている。従って、本実施例の場合には、1−2相の励磁駆動でイニシャライズを行なっているが、それに要する時間は、撮影後、最小絞り開口制御位置から駆動リング3を初期位置に復帰させる時間と同じということであって、従来のように、2相の励磁駆動でイニシャライズする場合よりも短時間であるということになる。また、本実施例の場合には、一方のヨークのコイルを非通電(OFFレベル)にするステップ制御が一つおきに行なわれるため、撮影時と同じ2相励磁駆動でイニシャライズする場合よりも全体としての駆動力が小さくなり、その分だけ駆動リング3のバウンドを抑えることができる。
そこで、次に、図8(符号は、図8(a)にのみ付けた)を用い、このような1−2相の励磁駆動でイニシャライズした場合には、駆動リング3が上記のようにバウンドしたとても逆転モードには入らず、最終的には、駆動リング3が初期位置で好適に停止することを説明する。上記の説明においては、図5と図6を対比させながら、パルス幅を撮影時と同じにして、2相の励磁駆動でイニシャライズした場合に生じる問題点を説明した。即ち、回転子5が、図5(b)〜図5(e)のシーケンスを何度か繰り返し、図5(e)の状態になった後、ヨーク7側のコイルにLレベルのパルス信号が与えられ、磁極部7aがS極になり、磁極部7bがN極になって、回転子5がなおも時計方向へ回転する段階で、駆動リング3の張出部3aが主地板1の突部1dに当接した場合を想定して説明した。
そのため、本実施例の場合にも、同じ段階で、駆動リング3の張出部3aが主地板1の突部1dに当接した場合を想定して説明する。本実施例において、ヨーク6側のコイルにHレベルのパルス信号が与えられ、ヨーク7側のコイルにLレベルのパルス信号が与えられて回転子5が時計方向へ回転された状態は、図7(c)に示された状態である。そのため、本実施例の場合には、図7(b)の状態から図7(c)の状態になる過程で、駆動リング3の張出部3aが主地板1の突部1dに当接した場合を想定する。そして、その当接によって駆動リング3がバウンドし、回転子5が、図7(i)の状態まで逆転させられた状態が、図8(a)に示された状態である。尚、本実施例の場合には、2相励磁駆動の場合の1ステップを2ステップで回転するため、この場合の逆転角度は、上記の図6(a)の場合より、当然小さく想定してある。
このように、回転子5が、駆動リング3のバウンドによって反時計方向へ逆転させられ、図8(a)の状態になると、次は、図7のシーケンスにしたがって、図7(d)に示されたように、ヨーク6側のコイルに与えられていたHレベルのパルス信号が断たれることになる。その状態が、図8(b)に示されているが、このようなパルス信号が与えられると、回転子5は時計方向へ回転させられ、22.5〜45°回転した後、駆動リング3の張出部3aが主地板1の突部1dに接触した状態になる。従って、ステップモータは、逆転モードに入ってしまうことがなく、駆動リング3が一時的にバウンドした後は、張出部3aを突部1dに接触させ続け、最終パルス信号の付与が終了したとき、回転子5の永久磁石と磁極部6a,6b,7a,7bとの間に働く吸引力がバランスするように、若干反時計方向へ回転し、駆動リング3を、図1に示された初期位置にイニシャライズすることになる。
ところで、これまでの説明は、カメラの電源がオフの状態において、駆動リング3が初期位置以外の位置で停止させられているとき、回転子5が、図7(a)と図7(i)に示されたように、たまたま、二つのコイルに同時にHレベルのパルス信号を与えたときと同じ回転位置で停止していた場合の説明である。ところが、カメラの電源がオフのときに、回転子5が、そのような図7(a),図7(i)の回転位置で停止しているとは限らない。即ち、二つのコイルにパルス信号が与えられていないときは、図7(b),図7(d),図7(f),図7(h)の回転位置は不安定位置となるため、回転子5は、それらの位置にとどまっていることはないが、図7(c),図7(e),図7(g)の三つの回転位置では、停止している場合がある。そこで、それらの場合であっても、駆動リング3を初期位置に好適にイニシャライズされる場合を、図7と図9を用いて説明する。尚、図9の場合には、図9(a),図9(c),図9(g)に符号を付けてある。
先ず、回転子5が、図7(c)の回転位置で停止していた場合を説明する。図9(a)は、その場合の回転子5の停止状態を示したものである。尚、イニシャライズを行なうときは、このような状態から行なう場合であっても、必ず、上記したように、最初は、ヨーク6,7の両方のコイルに、同時にHレベルのパルス信号を与え、その後は、上記の図7(b)〜図7(i)のパルス制御のシーケンスを何回か繰り返し、何回目かの図7(i)の状態で終了する。また、図9を用いた説明の場合には、最初から3番目までのパルス制御幅が、それ以後のパルス制御幅より長くなっている。そのうち、最初のパルス制御幅を長くする理由は、既に説明したとおりであるが、3番目のパルス制御幅まで長くしている理由は、以下の説明から理解することができる。
図9(a)において、そのような最初のパルス信号が与えられると、回転子5は、本来、時計方向へ回転しなければいけないところ、先ず、反時計方向へ回転させられてしまう。そして、1ステップ分(22.5°)の回転位置を越えて、2ステップ分(45°)回転させられ、図9(b)の状態で停止する。要するに、この図9(b)の状態で停止したということは、上記した図7(a)の状態になったということである。そして、2番目のパルス制御からは、図7(b)〜図7(i)のシーケンスの繰り返しになるので、2番目のパルス制御の段階では、図7(b)に示されているように、ヨーク6側のコイルにはHレベルのパルス信号を与えたまま、ヨーク7側のコイルに対するパルス信号を断つことになり、回転子5は、時計方向へ22.5°回転させられる。そして、3番目のパルス制御以降も、同一ステップで時計方向へ順に回転させられていく。従って、この場合においては、上記のようにカメラを長期間放置しておいた場合のことを考慮するためのみならず、最初のパルス制御によって、反時計方向へ2ステップ分回転させなければならないことからも、最初のパルス幅を長くするのが好ましい。しかし、2番目のパルス幅と、3番目のパルス幅を長くした方がよい理由は存在しない。
次に、回転子5が、図7(e)の回転位置で停止していた場合を説明する。図9(c)は、その場合の回転子5の停止状態を示したものであるが、この場合にも、最初に、ヨーク6,7の両方のコイルに同時にHレベルのパルス信号が与えられる。ところが、この場合には、図9(d)に示すように、磁極部6a,6b,7a,7bの磁極と回転子5の四つの磁極との間に働く磁力がバランスし、回転子5は、いずれの方向へも回転しない。従って、この場合だけを考えれば、最初のパルス幅を長くする理由は、特には存在しない。その後、2番目のパルスからは、図7(b)〜図7(i)のシーケンスが繰り返されるが、2番目のパルス制御においては、図7(b)に示されているように、ヨーク6側のコイルにHレベルのパルス信号を与えたまま、ヨーク7側のコイルに対するパルス信号を断つので、回転子5は、図9(d)の状態から時計方向へ22.5°回転させられる。従って、カメラが長く放置されていた後のことを考えると、2番目に与えるパルス幅(時間)を長くしておいた方が、回転子5は確実に始動することになる。
このように、2番目のパルス制御によって、回転子5が時計方向へ回転され停止された状態が、図9(e)に示された状態である。即ち、回転子5は、図7(e)に示された回転位置から図7(f)に示された位置まで時計方向へ回転したが、このときのヨーク6,7の励磁状態は、図7(b)の状態ということになる。この図9(e)の状態で、3番目のパルスが与えられる。そして、その3番目のパルス制御によって、ヨーク6,7は、図7(c)の状態に励磁されるため、回転子5は、今度は反時計方向へ回転させられ、図7(e)の回転位置,図7(d)の回転位置を通過して、図7(c)の位置で停止させられる。図9(f)は、そのようにして回転子5が停止した状態を示したものである。その後、回転子5は、第4パルス以降の制御によって、図9(f)の位置、即ち図7(c)の位置から1ステップずつ時計方向へ回転し、駆動リング3をイニシャライズすることになる。従って、この場合には、2番目のパルス幅と同様に3番目のパルス幅も、4番目以降のパルス幅より長くするのが好ましい。
最後に、回転子5が、図7(g)の回転位置で停止していた場合を説明する。図9(g)は、その場合における回転子5の停止状態を示したものである。この図9(g)の場合には、最初のパルス信号が与えられると、回転子5は、時計方向へ回転させられる。そして、回転子5は、図9(g)の位置、即ち図7(g)の位置から回転を開始し、図7(h)の回転位置を通過し、図7(i)の回転位置で停止することになる。そして、その図7(i)の状態は、図7(a)の状態と同じであるから、2番目のパルス制御からは、図7(b)〜図7(i)のシーケンスの繰り返しとなる。
そのため、2番目のパルス制御の段階では、図7(b)に示されているように、ヨーク6側のコイルにはHレベルのパルス信号が与えられたまま、ヨーク7側のコイルに対するパルス信号を断つので、回転子5は、時計方向へ22.5°回転させられることになる。そして、3番目のパルス制御以降も、同じステップで時計方向へ順に回転させられていく。従って、この場合においては、上記のようにカメラを長期間放置しておいた場合のことを考慮したり、最初のパルス制御によって、時計方向へ2ステップ分回転させなければならないことを考慮すると、最初のパルス幅は、それ以降のパルス幅より長くするのが好ましい。しかし、2番目のパルス幅と3番目のパルス幅を、4番目以降のパルス幅より長くした方がよい理由は存在しない
以上のように、カメラの放置状態において、回転子5が、図7(c),図7(e),図7(g)の三つの回転位置で停止している場合を考えると、最初のパルスから3番目のパルスまでのパルス幅を、4番目以降のパルス幅より長くすることが好ましい。しかしながら、3番目までの三つのパルス幅を、同じにする必要は全くない。また、回転子5が、どの回転位置で停止していても、イニシャライズを行なうときにスムーズに始動するのであれば、2番目のパルス幅は長くする必要がない。