JP2005105902A - ステンレス鋼製ポンプ容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ステンレス鋼板表面に潤滑樹脂塗膜が形成された基材をプレス加工して製造したポンプ容器本体と鏡板とがカシメ接合により一体化されている。ポンプ容器の基材としては、Cr:15〜20質量%,Ni:5〜19質量%,Cu:1〜5質量%を含み、Sを0.005質量%以下としたステンレス鋼板素材を使用し、鋼板表面には有機ポリイソシアネ−ト化合物とポリオ−ル化合物とを反応させたウレタン樹脂からなる潤滑樹脂塗膜が形成されている。
【選択図】 なし
Description
また、冷延鋼板や表面処理鋼板を素材として深絞り加工すると、素材の強度不足や延性不足のためにポンプ容器のような大型で絞り成形高さの大きい深絞り品を1回のプレスで製造することは困難であるので、筒状の胴板部品と頭部の円筒品を溶接により一体化されている。
また、ポンプ容器の外面には後工程にて塗装が施されるが、生産性や環境保護の観点から家電メーカーにおいては後塗装工程の省略化も課題となっている。本発明は、溶接することなく素材より一体成形されたステンレス鋼製ポンプ容器であって、品質的には気密性の良好で、耐発銹性、耐候性、耐アルカリ、耐指紋性等に優れたポンプ容器を提供する。
また、ポンプ容器本体と鏡板とがカシメ接合により一体化されているステンレス鋼製ポンプ容器であり、具体的にはスピニングカシメ接合を行うのが好ましい。
なお、本発明のステンレス鋼製ポンプ容器には、Cr:15〜20質量%,Ni:5〜19質量%,Cu:1〜5質量%を含み、Sを0.005質量%以下の組成からなるステンレス鋼板を使用し、さらにステンレス鋼板表面に潤滑樹脂塗膜として、有機ポリイソシアネ−ト化合物とポリオ−ル化合物とを反応させたウレタン樹脂であって、樹脂の伸びが200〜1000%,強度が3000〜9000N/cm2,強度/伸びの比率が3.0〜36.0の樹脂組成物を形成させた基材を使用することが好ましい。
潤滑樹脂塗膜は、ステンレス鋼板の表面に直接形成するか、あるいは化成処理皮膜を介して形成してもよい。
C,Nが多量に含まれると固溶強化により0.2%耐力や硬さが上昇する。とくにオーステナイト系ステンレス鋼にあっては、加工誘起マルテンサイト相が過度に硬質化するため加工硬化が大きくなる。
その結果、プレス加工性が低下して深絞り加工時にフランジ部から流入する素材の流入抵抗が大きくなり、所定形状への加工ができずにフランジしわ押さえ部に大きなしわが発生する。また、Cを過剰に含む場合、オーステナイト系ステンレス鋼では深絞り加工の際に大きな歪を受けた部分に時期割れと称される遅れ破壊現象が生じやすくなる。
製鋼段階で脱酸剤として添加される合金成分であるが、3.0質量%を超える過剰量のSiが含まれると材質が硬質化するとともに、加工硬化が大きくなりプレス加工性が低下する。
Mn:5.0質量%以下
オーステナイト系ステンレス鋼では、Mn含有量の増加に応じて加工誘起マルテンサイト相が生成視し難くなり加工硬化率が低下するが、Mn含有量の増加にともないMn系介在物を起点とした加工割れが発生しやすくなる。
過剰なSが含まれると、腐食の起点となるMnS系の硫化物が鋼中に多量に分散するようになる。また、S含有量の増加に応じて絞り加工性が劣化し割れが発生しやすくなることからSは低くするのが好ましい。
Niとの複合添加で良好な耐食性が得られるが、含有量の増加とともに硬さが増加し絞り加工性が低下する。
オーステナイト系ステンレス鋼に必須の合金成分であり、オーステナイト相を維持する上で少なくとも5%必要である。加工誘起マルテンサイト相の生成に起因する加工硬化はNi含有量の増加にともなって生じにくくなり加工硬化率が低減する。また、Crとの複合添加で良好な耐食性が得られる。しかし、Niは高価な元素であるので、経済性とプレス加工性の改善効果とを考慮して9%以下にするのが好ましい。
ステンレス鋼の軟質化および加工硬化の抑制に寄与し、絞り加工性の向上に有用な元素であり1%以上含有させる。2%を超えるとNi含有量の自由度が拡大し、Niをその下限値である5%近くまで低減することができる。
必要に応じて添加される合金成分であり、耐食性を改善する作用を呈する。しかし、過剰量のMo添加は硬さを上昇させる原因となる。
Al:0.5質量%以下
必要に応じて添加される合金成分であり、製鋼段階で脱酸作用を呈する。また、Ti,Zr,Bの添加直前に脱酸剤として添加すると鋼中の酸素濃度が低下するため、Ti,Zr,Bの歩留まりが向上し且つ安定化する。しかし、過剰量のAlが含まれると材質が著しく硬質化し、成形性にとって有害な硬質介在物が生じやすくなる。
必要に応じて添加される合金成分であり、固溶強化元素を固定し、材質の硬さを低減し、ひいては加工性を向上させる作用を呈する。これら元素の添加効果は、1.0質量%で飽和し、それ以上添加しても増量に見合った効果が期待できない。
B:0.1質量%以下
必要に応じて添加される合金成分であり、熱間加工性を向上させ、熱延時の割れ防止に有効である。しかし、過剰量のB含有は却って熱間加工性が低下する。
必要に応じて添加される合金成分であり、Bと同様に熱間加工性の改善に有効である。しかし、過剰に添加すると添加効果が飽和することに加え、硬質化を招き成形加工性が低下する。
Ca:0.03質量%以下
必要に応じて添加される合金成分であり、製鋼段階で脱酸作用を呈し、熱間加工性の改善にも有効である。しかし、0.03質量%を超える過剰量のCaを添加しても、添加効果が飽和し、清浄度が低下する。
なお、潤滑樹脂塗膜は基材を構成するステンレス鋼板素材の表面に直接形成してもよいが、ステンレス鋼板素材の表面に化成処理を施した後、潤滑樹脂塗膜を形成するほうが塗膜との密着性や耐食性の観点から好ましい。塗膜としては、ポンプ容器成形後、脱脂処理の有無や塗膜を残すか残さないかの違いにもよるが、次の2種の塗膜のうちいずれかを使用することが好ましい。
[アルカリ不溶塗膜]
(1)有機ポリイソシアネ−ト化合物とポリオ−ル化合物とを反応させたウレタン樹脂であって、樹脂の伸びが200〜1000%,強度が3000〜9000N/cm2,強度/伸びの比率が3.0〜36.0である樹脂組成物の樹脂塗膜をステンレス鋼板素材表面に直接または化成処理皮膜を介して形成する。
(2)上記樹脂塗膜に潤滑剤を分散させるのが好ましい。
(3)上記ウレタン樹脂のウレタン結合含有量がイソシアネート基(NCO)換算で10〜20質量%、酸価が30以下である樹脂塗膜が好ましい。
(4)上記ポリオール化合物と反応させた有機ポリイソシアネート化合物の50質量%以上が脂環族ジイソシアネートである樹脂塗膜が好ましい。
(1)ガラス転移温度0〜20℃のエポキシ変形アクリル樹脂からなる下層皮膜および1〜35%質量%の割合で固形潤滑剤粒子分散しているアクリル樹脂からなる上層皮膜からなる潤滑樹脂塗膜をステンレス鋼板素材表面に成形する。
(2)100℃での弾性率が1000〜60000N/cm2のカルボキシル基含有ウレタン樹脂からなり、1〜35質量%の割合で固形潤滑剤粒子が分散している潤滑樹脂皮膜をステンレス鋼板素材表面に成形する。
前記冷延鋼板を直径760mmの円盤状に打ち抜いた鋼板を、直径340mmの円筒ポンチを用いて、しわ押え力120トン、成形速度20mm/secの条件で油圧式プレス機で高さ310mmのポンプ容器に深絞り成形した。フランジからの材料流入状況を観察し割れやしわ発生の有無および成形品壁部の形状よりプレス成形性を評価した。
O.D.R=加工後のフランジ径/(加工前の)ブランク径
その結果、ステンレス鋼板素材にプレス油を塗布したものがO.D.R=0.91であったに対し、本発明の潤滑樹脂塗膜を塗布した材料ではO.D.R=0.83であることから、ポンプ容器への成形性に優れていることがわかる。
成形したポンプ容器のポンチ底から、150mm角の試験片を採取し、JIS Z2371に規定される 塩水噴霧試験に供した。5%NaCl溶液を35℃で10,000h噴霧した後、光学顕微鏡により試験片表面を観察し、各サンプル毎に孔食深さを30点測定して最も深い孔食深さを最大孔食深さとしてその大小で耐食性の評価を行った。
ポンプ容器の基材に使用したステンレス鋼板素材の化学成分を表3に、機械的性質(板厚:0.8mm)を表4に示す。これらのステンレス鋼板素材を直径40mmの円筒ポンチを用いて、絞り比1.9、しわ押え力25kg/cm2、粘度60mm2/sのプレス油(潤滑)を使用して油圧式プレス機により深絞り成形を行い、成形品のフランジ部から底部までの断面硬度を測定してプレス成形性の評価を行った。
また、成形時に必要な成形力を比較すると、比較例が7.8トンであるのに対して、本発明例が6.2トンであったことからもプレス成形性に適した素材であることがわかる。
ポンプ容器本体と底部品である鏡板をスピニングカシメ加工により一体接合した。鏡板は樹脂製であり、金属製に比べてポンプの軽量化や複雑形状への成形が可能であり、ポンプ容器本体との接触による摩擦を生じることもなかった。
従来のポンプ容器製造では、スピニング加工時の押付け力が340kg必要であったのに対し、本発明のポンプ容器製造におけるスピニング加工時の押付け力は270kgであり、カシメ接合性に優れていることがわかる。
次に、製造したポンプ容器を水中に沈めて、中央穴から空気を注入し、カシメ接合部での空気漏れを確認する耐圧試験にて漏水検査を行った。
本発明および従来法により製造した各々10個の耐圧試験を行った結果、本発明のポンプ容器では空気漏れが認められなかったのに対し、従来法により製造したポンプ容器ではスピニングカシメ接合時の押付け力が強固にしたにもかかわらず所定接合部形状が得られなかった箇所から空気漏れが認められた。
Claims (4)
- ステンレス鋼板表面に化成処理皮膜を介して潤滑樹脂塗膜が形成された基材をプレス加工してなるステンレス鋼製ポンプ容器。
- ポンプ容器本体と鏡板とがカシメ接合されている請求項1記載のステンレス鋼製ポンプ容器。
- 請求項1記載のステンレス鋼板が、Cr:15〜20質量%,Ni:5〜19質量%,Cu:1〜5質量%を含み、Sが0.005質量%以下の組成からなるステンレス鋼製ポンプ容器。
- 請求項1記載の潤滑樹脂塗膜が、有機ポリイソシアネ−ト化合物とポリオ−ル化合物とを反応させたウレタン樹脂であって、樹脂の伸びが200〜1000%,強度が3000〜9000N/cm2,強度/伸びの比率が3.0〜36.0の樹脂組成物からなるステンレス鋼製ポンプ容器。
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2003
- 2003-09-29 JP JP2003338643A patent/JP2005105902A/ja active Pending
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