JP5447305B2 - 鋼板 - Google Patents

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本発明は、鋼板に関する。より詳しくは、本発明は、伸びフランジ性に優れた高強度鋼板に関する。
近年、CO排出量削減のための車体軽量化による燃費向上や衝突安全基準の厳格化の観点から、車体部材の高強度化が推進されており、車体部材の素材である鋼板には高い強度を有することが要求されるようになってきている。
さらに、車体デザインの多様化に伴って、車体部材の素材である鋼板には、高い強度のみならず、良好な成形性を有することも要求されるようになってきている。
そして、高強度部材の製造においては、プレス成形の際に伸びフランジ割れが発生しやすいという事例が多く報告されている。したがって、高強度部材の素材である鋼板には、高い強度とともに良好な伸びフランジ性が求められるようになってきている。
高強度鋼板の伸びフランジ性に関しては、従来から多くの検討がなされており、例えば、特許文献1や特許文献2には伸びフランジ性に優れるとされる鋼板が開示されている。
特開2000−54072公報 特開2003−119548公報
上記文献における検討は、いずれも日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001により規定された60°円錐ポンチを用いた穴拡げ試験により伸びフランジ性の評価を基準としてなされたものである。
しかしながら、実用部材を製造する際の伸びフランジ変形の態様は多様であり、部材形状により変形態様が大きく異なる。このため、上記評価のみでは、実用部材に供される鋼板の伸びフランジ性を的確に評価することは困難である。
実際、後述するように、本発明者らの検討によれば、上記評価において良好な伸びフランジ性を示す鋼板であっても、比較的大きな平面曲率を有する伸びフランジ金型を用いてプレスされると、容易に伸びフランジ割れが発生する場合があることが判明している。
そこで、本発明は、従来の穴拡げ試験においてだけではなく、実用部材を製造する際に加えられる多様な伸びフランジ変形においても良好な伸びフランジ性を示す鋼板、特に高強度鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、まず、実用部材に供される鋼板の伸びフランジ性を的確に評価する方法を確立するために、伸びフランジ性の評価方法について詳細な検討を行った。
その結果、従来の穴拡げ試験による評価において良好な伸びフランジ性を示す鋼板であっても、比較的大きな平面曲率を有する伸びフランジ金型を用いてプレスされると容易に伸びフランジ割れが発生する場合があることが判明した。
したがって、多様な伸びフランジ変形が加えられる実用部材に供される鋼板について伸びフランジ性を的確に評価するには、従来の穴拡げ試験による評価に加え、比較的大きな平面曲率を有する伸びフランジ金型を用いた伸びフランジ性の評価を併せて行うことが必要である。
そこで、さらに詳細な検討を行った結果、従来の穴拡げ試験による伸びフランジ性の評価および後述する実用伸びフランジ試験における伸びフランジ性の評価の双方が良好である場合に、実用部材を製造する際に加えられる多様な伸びフランジ変形においても良好な伸びフランジ性を示すことが判明した。
斯かる知見に基づいて、従来の穴拡げ試験による伸びフランジ性の評価および後述する実用伸びフランジ試験における伸びフランジ性の評価の双方を良好とするために鋼板に求められる特性について鋭意検討を行った。
その結果、所定の化学組成と鋼組織を有するとともに、液圧バルジ試験等により実現される等二軸引張変形の0.2〜0.5の真歪領域(以下、「高歪域」ともいう。)におけるn値(nb)と、通常の単軸引張試験により実現される単軸引張変形の0.05〜0.15の真歪領域(以下、「低歪域」ともいう。)におけるn値(nt)との比の値(nb/nt)が高いことが必要であることが判明した。
本発明は、上記新知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)C:0.02%超0.30%以下(本明細書では特に断りがない限り化学組成に関する「%」は「質量%」を意味するものとする)、Si:0.05%以上2.0%以下、Mn:0.5%以上3.0%以下、P:0.03%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.001%以上2.0%以下およびN:0.015%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
体積%で、フェライトおよびベイナイトを合計で70%以上ならびに残留オーステナイトを2%以上20%以下含有し、残部がマルテンサイトからなるとともに、前記フェライトおよび前記ベイナイトのいずれかの体積分率が50%以上であり、かつ、前記ベイナイトの圧延方向および板厚方向に平行な断面におけるアスペクト比(長径/短径)が11以下である鋼組織を有し、
等二軸引張変形の0.2〜0.5の真歪領域におけるn値(nb)と単軸引張変形の0.05〜0.15の真歪領域におけるn値(nt)との比の値(nb/nt)が0.60以上であり、引張強さが590MPa以上である機械特性を有することを特徴とする鋼板。
(2)化学組成が、Feの一部に代えて、Bi:0.2%以下を含有することを特徴とする上記(1)に記載の鋼板。
(3)化学組成が、Feの一部に代えて、Ti:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の鋼板。
(4)化学組成が、Feの一部に代えて、REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)から(3)までのいずれかに記載の鋼板。
本発明によれば、高い強度を有するとともに優れた伸びフランジ性を有する鋼板、特に高強度鋼板を得ることができる。そのため、自動車や各種の産業機械に用いられる構造部材の素材、特に自動車のメンバーや足廻り部品等の構造部材等に有効な素材である。本発明の鋼板は、主に自動車の補強部材等として優れた伸びフランジ性や強度が要求される用途にプレス加工をして使用されるものに好適である。
図1は、平面曲率Rを有する実用伸びフランジ試験装置を示す説明図である。
(1)化学組成
[C:0.02%超0.30%以下]
Cは、鋼板の強度を高める作用を有する。C含有量が0.02%以下では目的とする引張強さを確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.02%超とする。好ましくは0.03%以上である。一方、C含有量が0.30%超では、靱性や溶接性の低下が著しくなる。したがって、C含有量は0.30%以下とする。好ましくは0.20%以下である。
[Si:0.05%以上2.0%以下]
Siは、フェライト生成を促して残留オーステナイトを安定化する作用を有する元素であり、高強度化および伸びフランジ性向上において重要な成分である。
Si含有量が0.05%未満では、連続焼鈍の際のフェライト生成量が不足し、残留オーステナイトを確保することが困難となり、高歪域まで高い延性(n値)を維持できず、伸びフランジ性が低下する。したがって、Si含有量は0.05%以上とする。好ましくは0.1%以上である。
一方、Si含有量が2.0%超では、ファイアライトの融点の上昇が著しくなり、熱間圧延におけるスケールの除去が困難となり、島状スケール模様の生成により製品の表面性状が著しく損なわれる。また、溶融亜鉛めっきを施す場合には、不めっきや合金化処理時の処理不足の原因となるのに加え、化成処理性も劣化する。したがって、Si含有量は2.0%以下とする。
[Mn:0.5%以上3.0%以下]
Mnは、変態強化により鋼板の強度を高める作用を有する元素である。Mn含有量が0.5%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.5%以上とする。好ましくは1.0%以上である。一方、Mn含有量が3.0%超では、フェライトの生成が抑制されるとともにバンド状組織が発達して局部伸びが低下する。このため、穴拡げ性の劣化が著しくなる。したがって、Mn含有量は3.0%以下とする。
[P:0.03%以下]
Pは、一般に不純物として含有される元素であるが、固溶強化により鋼板の強度を高める作用を有するので積極的に含有させてもよい。しかしながら、P含有量が0.03%超では、Pの偏析に起因する著しい伸びフランジ性の低下を招く。したがって、P含有量は0.03%以下とする。
[S:0.02%以下]
Sは、不純物として含有される元素であり、鋼中にMnSなどの硫化物を形成して、局部延性を劣化させる作用を有する。したがって、S含有量は0.02%以下とする。好ましくは0.01%以下である。S含有量は低いほど好ましいのでS含有量の下限は規定しない。
[sol.Al:0.001%以上2.0%以下]
Alは、鋼を脱酸して健全にする作用を有する元素である。sol.Al含有量が0.001%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は0.001%以上とする。一方、sol.Al含有量が2.0%超では、AlもSiと同様にファイアライト融点を上昇させるため、熱間圧延におけるスケールの除去が困難となり、島状スケール模様の生成により製品の表面性状が著しく損なわれる場合がある。したがって、sol.Al含有量は2.0%以下とする。
[N:0.015%以下]
Nは、不純物として含有される元素であり、鋼中のAlと結合してAlNとして介在物を形成する。N含有量が0.015%を超えると、粗大なAlNが多く生成するため、打ち抜き加工を施した際のボイド発生起点となり曲げ加工性や伸びフランジ性が著しく低下する。したがって、N含有量は0.015%以下とする。好ましくは、0.008%以下である。N含有量は低いほど好ましいのでN含有量の下限は規定しないが、過剰な低減は精錬コストの著しい増加を招くので、N含有量は0.0004%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.002%以上である。
[Bi:0.2%以下]
Biは、偏析を抑制する作用を有する元素であり、特にMnの偏析抑制に効果がある。すなわち、Biはスラブ凝固時において凝固核として作用し、デンドライト2次アーム間隔を狭くする。その結果、デンドライト2次アーム間隔内に偏析するMnの偏析が抑制され、打抜き加工時におけるMn偏析に起因する割れを抑制する。したがって、必要に応じてBiを含有させてもよい。しかしながら、Bi含有量を0.2%超としても上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Bi含有量は0.2%以下とする。好ましくは0.1%以下である。上記作用による効果をより確実に得るにはBi含有量を0.0001%以上とすることが好ましく、0.0002%以上とすることがさらに好ましい。
[Ti:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上]
Ti、Nb、V、Cr、MoおよびBは、いずれも鋼板の強度を高める作用を有する元素である。したがって、必要に応じてこれらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、延性の低下とともに原料コストの増加を招く。したがって、各元素の含有量は上記範囲とする。上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.01%以上、Nb:0.01%以上、V:0.01%以上、Cr:0.01%以上、Mo:0.01%以上およびB:0.0001%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
[REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上]
REM(希土類元素)、MgおよびCaは、いずれも酸化物や硫化物を微細に球状化し、伸びフランジ性および曲げ加工性を高める作用を有する。したがって、必要に応じてこれらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、鋼中に酸化物や硫化物を多く形成してしまい、伸びフランジ性や曲げ加工性が却って劣化する。したがって、各元素の含有量は上記範囲とする。上記作用による効果をより確実に得るには、REM、MgおよびCaのいずれかの含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
ここで、REMとは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。なお、本発明におけるREMの含有量は、これらの元素の合計含有量を指す。
上記以外の残部は、Feおよび不純物である。
(2)鋼組織
本発明に係る鋼板は、体積%で、フェライトおよびベイナイトを合計で70%以上ならびに残留オーステナイトを2%以上20%以下含有し、残部がマルテンサイトからなるとともに、上記フェライトおよび上記ベイナイトのいずれかの体積分率が50%以上、かつ、上記ベイナイトの圧延方向に平行な板厚断面におけるアスペクト比(長径/短径)が11以下である鋼組織を有する。
フェライトおよびベイナイトの体積分率の合計が70%未満では、残部組織である残留オーステナイトやマルテンサイトの体積分率が過大となり、プレス成形の際に局部くびれが早期に発生するため、良好な伸びフランジ性を得ることが困難となる。したがって、フェライトおよびベイナイトの体積分率の合計は70%以上とする。
また、フェライトおよびベイナイトの体積分率の合計が70%以上であったとしても、フェライトおよびベイナイトの体積分率がいずれも50%未満では、打抜き加工を行った際に硬質相と軟質相の境界に多量の粗大なボイドが生じ易くなるため、亀裂の進展が早期に起こり、伸びフランジ性を著しく低下させる。したがって、フェライトおよびベイナイトのいずれかの体積分率を50%以上とする。フェライトおよびベイナイトのいずれかの体積分率を70%以上とすることがさらに好ましい。
また、フェライトの体積率は75%以上であることが好ましく、ベイナイトの体積率は5%以上であることが好ましい。
また、残留オーステナイトは、成形等による変形を受けた際に、マルテンサイトに変態し、変態誘起塑性を呈するので良好な成形性と高い強度が得られる。残留オーステナイトの体積率が2%未満では、変態誘起塑性による効果を十分に得ることができず、低歪域で塑性不安定に達して、局所くびれが発生しやすくなり、平凡な伸びフランジ性となってしまう。
一方、残留オーステナイトの体積分率が20%超では、成形加工後の状態において多量のマルテンサイトが存在する可能性があり、その後の打抜き加工性や部材の耐衝撃性が著しく低下する場合がある。したがって、残留オーステナイトの体積分率は20%以下とする。
また、ベイナイトの圧延方向に平行な板厚断面におけるアスペクト比(長径/短径)が11超では、等二軸引張変形を受けた際に、ベイナイトと軟質相との界面で応力集中が生じて粗大なボイドが生じ易くなる。また、鋼組織のうち軟質な相や組織から選択的に変形が進行するため、局所くびれが発生しやすく、高歪域まで高いn値を維持することができず、高い伸びフランジ性が得られない。よって、本発明では、ベイナイトのアスペクト比を11以下とする。
(3)機械特性
本発明に係る鋼板は、等二軸引張変形の0.2〜0.5の真歪領域におけるn値(nb)と、単軸引張変形の0.05〜0.15の真歪領域におけるn値(nt)との比の値(nb/nt)が0.60以上であり、引張強さが590MPa以上である機械特性を有するものとする。
上記比の値(nb/nt)が0.60未満では、低歪域の変形下で局所くびれが早期に起こるため、十分な伸びフランジ性を確保することができない。したがって、上記比の値(nb/nt)は0.60以上とする。
また、引張強さが590MPa未満では、元来伸びフランジ性が良好であり、伸びフランジ性が問題となることは少ない。したがって、本発明においては引張強さが590MPa以上であるものに限定した。
(その他)
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を備えさせて表面処理鋼板としてもよい。めっき層は、電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
本発明の具体的な実施例を以下に説明する。
表1に示す化学組成を有するスラブを加熱炉にて1200℃で30分間加熱した後、熱間圧延試験装置を用いて表2に示す仕上温度および巻取温度にて熱間圧延を実施した。仕上温度から巻取温度までは40℃/秒で冷却を行った。その後、酸洗を施し、50%の圧下率で冷間圧延を施した。
Figure 0005447305
このようにして得られた冷延鋼板について、連続焼鈍シミュレータおよび縦型溶融めっきシミュレータを用いて、表2に示す条件で焼鈍を施した。すなわち、均熱温度で80秒間保持した後、50℃/秒で中間保持温度まで冷却し、当該中間温度で50秒間保持した後、常温まで空冷した。ここで、溶融亜鉛めっきを施したものについては、上記中間温度での保持の後であって上記常温までの空冷の前に、460℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、ワイピングノズルにて片面当りの付着量が40mg/mになるように付着量を調整して溶融亜鉛めっきを施した。合金化処理を行ったものについては、上記溶融亜鉛めっきの後であって上記空冷の前に、500℃の温度に20秒間保持する熱処理を施した。
1)鋼組織の評価
鋼板の鋼組織の種類は、ナイタール試薬により鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を腐食して、SEMを用いて各組織を特定した。残留オーステナイトの体積分率に関しては、鋼板表層より板厚の1/4内層を化学研磨後、X線回折(X線回折装置:株式会社島津製作所製XRD−6100、管球:Co)より得られた、オーステナイトとフェライトの特定格子面ピーク値から回折強度を計算して値を求めた。フェライト、ベイナイト、マルテンサイトの体積率は、画像解析により算出した。また、ベイナイトのアスペクト比は、SEM観察(×5000、5視野)により得た金属組織内に存在するベイナイト粒の長軸と短軸を測定して算出した後、それらの平均値をとった。
2)特性評価
得られた鋼板に対して、次に示す引張試験、液圧バルジ試験、伸びフランジ試験を実施した。
2)−1 引張試験
各鋼板の圧延直角方向からJIS 5号引張試験を採取した。試験方法はJIS Z2241に準じた。降伏点YP、引張強さTS、全伸びElを測定した。なお、加工硬化指数n値は、真歪ε:0.05〜0.15の範囲で算出し、低歪域のn値(nt)を求めた。
2)−2 液圧バルジ試験
液圧バルジ試験は、150×150mmの鋼板に液圧を負荷し、等二軸変形張出し成形を行った。液圧バルジ試験により、試験片の曲率R、液圧、張出し頂部の板厚から算出される応力と板厚歪より応力−歪曲線を求めた。その応力−歪曲線より真歪ε:0.2〜0.5の範囲で高歪域のn値(nb)を算出した。
2)−3 穴拡げ試験および伸びフランジ試験
100×100mmの鋼板に初期穴径10mmを打抜き加工を施した後、日本鉄鋼連盟規格(JFS T 1001)に準じた穴拡げ試験を実施し、穴拡げ率を測定した。さらに、図1に示すような平面曲率Rを有する実用伸びフランジ試験装置を作成し、プレス成形を実施し、伸びフランジ性を評価した。試験用ブランクは、伸びフランジ部が金型の平面曲率R部にかかるよう、金型と同じ曲率Rの伸びフランジ変形を受ける部分を有する形状とした。
なお、試験用ブランクは、伸びフランジ変形時の引張方向が鋼板の圧延直角方向となるように採取した。平面曲率部は打抜きクリアランス10%にて、打抜き加工を施した。伸びフランジ性評価は、試験用ブランクの平面曲率部中央間の長さを変更し、フランジUP量(H)を変更し、フランジUP量(H)を上げていき、割れの発生する限界成形高さを測定し、この割れ限界成形高さ(Hmax)を平面曲率Rで除した値により伸びフランジ性を評価した。
結果を表2に示す。なお、本発明において優れた伸びフランジ特性を有する高強度鋼板とは、590MPa以上の引張強さ(TS)を有し、引張強さ(TS)と穴拡げ率(λ)の積で表されるTS×λ値が30000(MPa・%)以上を有し、さらに、上記伸びフランジ試験によって得られる限界成形高さ(Hmax)を平面曲率R(60mm)で除した値が0.5以上を有する鋼板を指す。
Figure 0005447305
本発明例である供試材No.1〜12は、体積%で、フェライトおよびベイナイトを合計で70%以上ならびに残留オーステナイトを2%以上20%以下含有し、残部がマルテンサイトからなるとともに、フェライトおよびベイナイトのいずれかの体積分率が50%以上であり、かつ、ベイナイトの圧延方向および板厚方向に平行な断面におけるアスペクト比(長径/短径)が11以下である鋼組織を有し、等二軸引張変形の0.2〜0.5の真歪領域におけるn値(nb)と、単軸引張変形の0.05〜0.15の真歪領域におけるn値(nt)との比の値(nb/nt)が0.60以上であり、引張強さが590MPa以上である機械特性を有するものであり、TS×λ値が30000(MPa・%)以上、かつ、上記実用伸びフランジ試験によって得られる限界成形高さ(Hmax)を平面曲率R(60mm)で除した値が0.5以上であり、優れた伸びフランジ性を有していた。
これに対して、供試材No.13は、フェライトおよびベイナイトのいずれかを単独で50体積%以上を確保していなかったため、TS×λ値が30000(MPa・%)を下回り、伸びフランジ性に劣っていた。
供試材No.14は、残留オーステナイトの体積分率が過剰であったため、打抜き時に多量のボイドが端面に形成されるのに加え、成形途中に多量の残留オーステナイトがマルテンサイトに変態することによって局部延性が低下したために、穴拡げ率が著しく低下し、TS×λ値が30000(MPa・%)を下回り、伸びフランジ性に劣っていた。
供試材No.15は、残留オーステナイトの体積分率が過少であったため、変態誘起塑性の効果が充分ではなく、低ひずみ域で塑性不安定に達し、局所くびれが発生しやすくなったため、nb/ntが0.60を下回り、伸びフランジ性に劣っていた。
供試材No.16、No.17,No.18は、ベイナイトのアスペクト比が11超であったため、液圧バルジ試験(等ニ軸変形)下で、ベイナイトと軟質相の界面で応力集中が生じるとともに、局所くびれが発生しやすくなり、nb/ntが本発明の規定範囲0.60以上を下回った結果、伸びフランジ性に劣っていた。
供試材No.19は、フェライトおよびベイナイトの体積分率が合計で70%未満であったため、多量のマルテンサイトが形成され、プレス成形下で局部くびれが低ひずみ域で発生しており、高ひずみ域で高いn値が得られず、nb/ntが規定の0.60以上を下回っていたために、伸びフランジ性に劣っていた。
さらに、供試材No.20は、本発明で規定した鋼成分範囲に入っていなかったために、590MPaの引張強さおよびnb/ntで0.60以上を満たすことができず、強度および伸びフランジ性がともに劣る結果となった。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.02%超0.30%以下、Si:0.05%以上2.0%以下、Mn:0.5%以上3.0%以下、P:0.03%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.001%以上2.0%以下およびN:0.015%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    体積%で、フェライトおよびベイナイトを合計で70%以上ならびに残留オーステナイトを2%以上20%以下含有し、残部がマルテンサイトからなるとともに、前記フェライトおよび前記ベイナイトのいずれかの体積分率が50%以上であり、かつ、前記ベイナイトの圧延方向および板厚方向に平行な断面におけるアスペクト比(長径/短径)が11以下である鋼組織を有し、
    等二軸引張変形の0.2〜0.5の真歪領域におけるn値(nb)と単軸引張変形の0.05〜0.15の真歪領域におけるn値(nt)との比の値(nb/nt)が0.60以上であり、引張強さが590MPa以上である機械特性を有することを特徴とする鋼板。
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Bi:0.2%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼板。
  4. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の鋼板。
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