JP5447305B2 - 鋼板 - Google Patents
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そして、高強度部材の製造においては、プレス成形の際に伸びフランジ割れが発生しやすいという事例が多く報告されている。したがって、高強度部材の素材である鋼板には、高い強度とともに良好な伸びフランジ性が求められるようになってきている。
体積%で、フェライトおよびベイナイトを合計で70%以上ならびに残留オーステナイトを2%以上20%以下含有し、残部がマルテンサイトからなるとともに、前記フェライトおよび前記ベイナイトのいずれかの体積分率が50%以上であり、かつ、前記ベイナイトの圧延方向および板厚方向に平行な断面におけるアスペクト比(長径/短径)が11以下である鋼組織を有し、
等二軸引張変形の0.2〜0.5の真歪領域におけるn値(nb)と単軸引張変形の0.05〜0.15の真歪領域におけるn値(nt)との比の値(nb/nt)が0.60以上であり、引張強さが590MPa以上である機械特性を有することを特徴とする鋼板。
[C:0.02%超0.30%以下]
Cは、鋼板の強度を高める作用を有する。C含有量が0.02%以下では目的とする引張強さを確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.02%超とする。好ましくは0.03%以上である。一方、C含有量が0.30%超では、靱性や溶接性の低下が著しくなる。したがって、C含有量は0.30%以下とする。好ましくは0.20%以下である。
Siは、フェライト生成を促して残留オーステナイトを安定化する作用を有する元素であり、高強度化および伸びフランジ性向上において重要な成分である。
Mnは、変態強化により鋼板の強度を高める作用を有する元素である。Mn含有量が0.5%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.5%以上とする。好ましくは1.0%以上である。一方、Mn含有量が3.0%超では、フェライトの生成が抑制されるとともにバンド状組織が発達して局部伸びが低下する。このため、穴拡げ性の劣化が著しくなる。したがって、Mn含有量は3.0%以下とする。
Pは、一般に不純物として含有される元素であるが、固溶強化により鋼板の強度を高める作用を有するので積極的に含有させてもよい。しかしながら、P含有量が0.03%超では、Pの偏析に起因する著しい伸びフランジ性の低下を招く。したがって、P含有量は0.03%以下とする。
Sは、不純物として含有される元素であり、鋼中にMnSなどの硫化物を形成して、局部延性を劣化させる作用を有する。したがって、S含有量は0.02%以下とする。好ましくは0.01%以下である。S含有量は低いほど好ましいのでS含有量の下限は規定しない。
Alは、鋼を脱酸して健全にする作用を有する元素である。sol.Al含有量が0.001%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は0.001%以上とする。一方、sol.Al含有量が2.0%超では、AlもSiと同様にファイアライト融点を上昇させるため、熱間圧延におけるスケールの除去が困難となり、島状スケール模様の生成により製品の表面性状が著しく損なわれる場合がある。したがって、sol.Al含有量は2.0%以下とする。
Nは、不純物として含有される元素であり、鋼中のAlと結合してAlNとして介在物を形成する。N含有量が0.015%を超えると、粗大なAlNが多く生成するため、打ち抜き加工を施した際のボイド発生起点となり曲げ加工性や伸びフランジ性が著しく低下する。したがって、N含有量は0.015%以下とする。好ましくは、0.008%以下である。N含有量は低いほど好ましいのでN含有量の下限は規定しないが、過剰な低減は精錬コストの著しい増加を招くので、N含有量は0.0004%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.002%以上である。
Biは、偏析を抑制する作用を有する元素であり、特にMnの偏析抑制に効果がある。すなわち、Biはスラブ凝固時において凝固核として作用し、デンドライト2次アーム間隔を狭くする。その結果、デンドライト2次アーム間隔内に偏析するMnの偏析が抑制され、打抜き加工時におけるMn偏析に起因する割れを抑制する。したがって、必要に応じてBiを含有させてもよい。しかしながら、Bi含有量を0.2%超としても上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、Bi含有量は0.2%以下とする。好ましくは0.1%以下である。上記作用による効果をより確実に得るにはBi含有量を0.0001%以上とすることが好ましく、0.0002%以上とすることがさらに好ましい。
Ti、Nb、V、Cr、MoおよびBは、いずれも鋼板の強度を高める作用を有する元素である。したがって、必要に応じてこれらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、延性の低下とともに原料コストの増加を招く。したがって、各元素の含有量は上記範囲とする。上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.01%以上、Nb:0.01%以上、V:0.01%以上、Cr:0.01%以上、Mo:0.01%以上およびB:0.0001%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
REM(希土類元素)、MgおよびCaは、いずれも酸化物や硫化物を微細に球状化し、伸びフランジ性および曲げ加工性を高める作用を有する。したがって、必要に応じてこれらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、鋼中に酸化物や硫化物を多く形成してしまい、伸びフランジ性や曲げ加工性が却って劣化する。したがって、各元素の含有量は上記範囲とする。上記作用による効果をより確実に得るには、REM、MgおよびCaのいずれかの含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
上記以外の残部は、Feおよび不純物である。
本発明に係る鋼板は、体積%で、フェライトおよびベイナイトを合計で70%以上ならびに残留オーステナイトを2%以上20%以下含有し、残部がマルテンサイトからなるとともに、上記フェライトおよび上記ベイナイトのいずれかの体積分率が50%以上、かつ、上記ベイナイトの圧延方向に平行な板厚断面におけるアスペクト比(長径/短径)が11以下である鋼組織を有する。
また、残留オーステナイトは、成形等による変形を受けた際に、マルテンサイトに変態し、変態誘起塑性を呈するので良好な成形性と高い強度が得られる。残留オーステナイトの体積率が2%未満では、変態誘起塑性による効果を十分に得ることができず、低歪域で塑性不安定に達して、局所くびれが発生しやすくなり、平凡な伸びフランジ性となってしまう。
本発明に係る鋼板は、等二軸引張変形の0.2〜0.5の真歪領域におけるn値(nb)と、単軸引張変形の0.05〜0.15の真歪領域におけるn値(nt)との比の値(nb/nt)が0.60以上であり、引張強さが590MPa以上である機械特性を有するものとする。
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を備えさせて表面処理鋼板としてもよい。めっき層は、電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
表1に示す化学組成を有するスラブを加熱炉にて1200℃で30分間加熱した後、熱間圧延試験装置を用いて表2に示す仕上温度および巻取温度にて熱間圧延を実施した。仕上温度から巻取温度までは40℃/秒で冷却を行った。その後、酸洗を施し、50%の圧下率で冷間圧延を施した。
鋼板の鋼組織の種類は、ナイタール試薬により鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を腐食して、SEMを用いて各組織を特定した。残留オーステナイトの体積分率に関しては、鋼板表層より板厚の1/4内層を化学研磨後、X線回折(X線回折装置:株式会社島津製作所製XRD−6100、管球:Co)より得られた、オーステナイトとフェライトの特定格子面ピーク値から回折強度を計算して値を求めた。フェライト、ベイナイト、マルテンサイトの体積率は、画像解析により算出した。また、ベイナイトのアスペクト比は、SEM観察(×5000、5視野)により得た金属組織内に存在するベイナイト粒の長軸と短軸を測定して算出した後、それらの平均値をとった。
得られた鋼板に対して、次に示す引張試験、液圧バルジ試験、伸びフランジ試験を実施した。
各鋼板の圧延直角方向からJIS 5号引張試験を採取した。試験方法はJIS Z2241に準じた。降伏点YP、引張強さTS、全伸びElを測定した。なお、加工硬化指数n値は、真歪ε:0.05〜0.15の範囲で算出し、低歪域のn値(nt)を求めた。
液圧バルジ試験は、150×150mmの鋼板に液圧を負荷し、等二軸変形張出し成形を行った。液圧バルジ試験により、試験片の曲率R、液圧、張出し頂部の板厚から算出される応力と板厚歪より応力−歪曲線を求めた。その応力−歪曲線より真歪ε:0.2〜0.5の範囲で高歪域のn値(nb)を算出した。
100×100mmの鋼板に初期穴径10mmを打抜き加工を施した後、日本鉄鋼連盟規格(JFS T 1001)に準じた穴拡げ試験を実施し、穴拡げ率を測定した。さらに、図1に示すような平面曲率Rを有する実用伸びフランジ試験装置を作成し、プレス成形を実施し、伸びフランジ性を評価した。試験用ブランクは、伸びフランジ部が金型の平面曲率R部にかかるよう、金型と同じ曲率Rの伸びフランジ変形を受ける部分を有する形状とした。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.02%超0.30%以下、Si:0.05%以上2.0%以下、Mn:0.5%以上3.0%以下、P:0.03%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.001%以上2.0%以下およびN:0.015%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
体積%で、フェライトおよびベイナイトを合計で70%以上ならびに残留オーステナイトを2%以上20%以下含有し、残部がマルテンサイトからなるとともに、前記フェライトおよび前記ベイナイトのいずれかの体積分率が50%以上であり、かつ、前記ベイナイトの圧延方向および板厚方向に平行な断面におけるアスペクト比(長径/短径)が11以下である鋼組織を有し、
等二軸引張変形の0.2〜0.5の真歪領域におけるn値(nb)と単軸引張変形の0.05〜0.15の真歪領域におけるn値(nt)との比の値(nb/nt)が0.60以上であり、引張強さが590MPa以上である機械特性を有することを特徴とする鋼板。 - 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Bi:0.2%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.2%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下およびB:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、REM:0.1%以下、Mg:0.01%以下およびCa:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の鋼板。
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