JP2005105359A - 強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材およびその製造方法 - Google Patents

強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】必ずしもPbを用いなくとも、熱間加工ままで従来のPb添加快削鋼と同等以上の被削性と、優れた強度とを兼ね備え、しかも焼入れ−焼戻し処理が不要の、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.5 〜1.2 %、Si:0.5 〜2.0 %、Mn:0.02〜0.5 %、B:0.0003〜0.015 %、Al:0.005 〜0.1 %およびN:0.0015〜0.015 %を含有し、かつ不純物としてのOおよびCrの混入をそれぞれ、O:0.0020%以下、Cr:0.05%以下に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成にすると共に、熱間加工後のミクロ組織を、パーライトまたはパーライトと体積率で20%以下のフェライト、さらに体積率で0.03%以上の黒鉛からなり、該パーライトのラメラー間隔が 0.3μm 以下で、かつ黒鉛粒子の平均粒子径が5μm 以下の組織とする。
【選択図】なし

Description

この発明は、主に機械構造用鋼としての用途に供して好適な、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材およびその製造方法に関するものである。
産業機械や自動車等の機械部品には、鋼素材を、熱間鍛造をはじめとする熱間加工の後に、切削等により所定の形状に加工し、ついで焼入れ−焼戻しを施すことによって、機械部品としての要求特性を確保する、いわゆる調質機械構造用鋼と、焼入れ−焼戻しを施すことなくそのまま、機械部品としての要求特性を確保する、いわゆる非調質機械構造用鋼の二種類が知られている。
上記した二種類の鋼材のうち、調質機械構造用鋼は、非調質機械構造用鋼に比べると、焼入れ−焼戻し工程を必要とし、工程的にもコストの面でも劣っていることから、最近では非調質機械構造用鋼に対する需要が高まっている。
かような機械構造用鋼では、機械部品としての最終強度を有する部材に対する切削加工が必要となるため、熱間加工後に強度と被削性の両者に優れることが求められる。
鋼材の被削性を改善する手段としては、鋼中にPb,S,BiおよびP等の快削性元素を単独または複合添加する方法が一般的である。特にPbは、被削性を改善する作用が極めて強いために多用されている。しかしながら、一方でPbは、人体に有害な元素であり、鋼材の製造工程や機械部品の加工工程で大がかり排気設備を必要とするだけでなく、鋼材のリサイクルの面でも多大の問題がある。
また、Pb,S,Te,Bi,P等の元素は、熱間鍛造時の延性の低下に伴う割れの発生や、最終部品としての強度、中でも特に疲労強度の低下を引き起こす作用があるため、これらの特性の観点からは、逆に低減することが望ましい。
これらの相矛盾する合金設計を可能にするために、本発明では鋼中の黒鉛析出に着目した。
鋼中への黒鉛析出に関しては、従来、例えば特許文献1に開示の技術に代表されるように、鋼中Cを黒鉛化する方法が提案されている。しかしながら、これまでの技術では、黒鉛析出のために、熱間加工後、再加熱による黒鉛化処理が不可欠であり、製造プロセスの煩雑化を招くところに問題を残していた。
この点、特許文献2では、熱間加工後の冷却過程で黒鉛化を図ることにより、熱間加工後における再加熱処理を不要にした機械構造用鋼の製造方法が提案されている。
しかしながら、この技術は、いわゆる「調質型」の機械構造用鋼であり、「非調質型」に比べると工程およびコストの面で劣っているのは前述したとおりである。
特開昭51−57621号公報 特開2002−180185号公報
本発明の目的は、上述したような従来技術が抱えている問題を有利に解決することにある。
すなわち、本発明は、熱間鍛造をはじめとする熱間加工により成形される機械部品において、必ずしもPbを用いなくとも、熱間加工ままで従来のPb添加快削鋼と同等以上の被削性と、優れた強度とを兼ね備え、しかも焼入れ−焼戻し処理が不要の、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
さて、発明者らは、再加熱処理を実施することなく、機械構造用鋼中に黒鉛を析出させて被削性を向上させるべく、鋭意研究・検討を行った結果、ミクロ組織中に体積率で0.03%以上の黒鉛が存在すれば、Pbを添加した構造用鋼と同等以上の被削性を得られることを見出した。しかも、成分組成を適正化した上で、熱間加工後の冷却速度を適切に制御することにより、鋼材の被削性向上に必要な黒鉛が、熱間加工後の再加熱を要することなく得られることを見出した。
また、熱間加工のままで十分な強度を得るためには、フェライト分率を20%以下とするパーライトを基本組織とし、このパーライトのラメラー間隔および黒鉛粒子のサイズをそれぞれ適正範囲に適切に制御することが有効であることを見出した。
ここに、パーライト中のラメラー間隔の微細化には、MnやCr等の添加が有効であるが、これらの元素は一方で鋼中の黒鉛析出を阻害する元素でもある。
そこで、本発明者らは、これらの矛盾点の解決を目的にさらなる実験・検討を重ねた結果、黒鉛化阻害の影響力が強いCrの添加を避け、Mn量を適切に調整すると共に、Si等の黒鉛化促進元素あるいは黒鉛化阻害作用が比較的軽微なMo等を活用し、さらには熱間加工後の冷却を2段階冷却とし、各冷却工程における冷却速度を厳密に管理することにより、目的とする組織制御が有利に達成されることを新たに見出した。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.5 〜1.2 %、 Si:0.5 〜2.0 %、
Mn:0.02〜0.5 %、 B:0.0003〜0.015 %、
Al:0.005 〜0.1 %およびN:0.0015〜0.015 %
を含有し、かつ不純物としてのOおよびCrの混入をそれぞれ、
O:0.0020%以下、 Cr:0.05%以下
に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、熱間加工後のミクロ組織が、パーライトまたはパーライトと体積率で20%以下のフェライト、さらに体積率で0.03%以上の黒鉛からなり、該パーライトのラメラー間隔が 0.3μm 以下で、かつ黒鉛粒子の平均粒子径が5μm 以下であることを特徴とする、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材。
2.上記1において、鋼材が、さらに質量%で、
Ni:0.05〜3.0 %、 Cu:0.1 〜3.0 %、
Co:0.1 〜3.0 %、 Mo:0.05〜1.0 %、
V:0.05〜0.5 %、 Nb:0.005 〜0.05%、
Ti:0.005 〜0.05%、 Zr:0.005 〜0.2 %および
REM:0.0005〜0.2 %
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材。
3.上記1または2において、鋼材が、さらに質量%で、
Pb:0.05〜0.30%、 P:0.10%以下、
S:0.001 〜0.50%、 Ca:0.0005〜0.010 %および
Te:0.005 〜0.05%
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材。
4.上記1〜3のいずれかに記載の成分組成になる鋼素材を、加熱後、 750〜1150℃の温度域で熱間加工し、ついで 800℃〜Ar1の温度域を0.5 ℃/s超、Ar1〜500 ℃の温度域を0.05℃/s以上、1.0 ℃/s以下の速度で冷却することを特徴とする、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材の製造方法。
かくして、本発明に従い、鋼のミクロ組織を適正に制御することにより、熱間加工後に再加熱による軟化焼鈍等を必要とすることなしに、優れた被削性と強度を併せて得ることができ、これにより、必ずしもPb等の人体に悪影響を及ぼす成分を用いなくとも、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.5 〜1.2 %
Cは、黒鉛相の形成および熱間加工後の強度を得るための必須成分である。C量が0.5%未満では、機械部品としての強度を確保すること、および被削性の向上に必要な黒鉛相の析出量を確保することが共に困難となるので、0.5 %以上の添加を必要とする。一方、1.2 %を超えると、熱間加工時の変形抵抗が上昇するだけでなく、変形能が低下し、熱間加工時の割れやきずの発生が増大し、さらには熱間加工後の硬さを必要以上に上昇させ、鋼材の被削性を著しく劣化させるため、1.2 %までの添加とする。なお、後述するように、鋼組織についてフェライト分率:20%以下を達成して必要な強度を得るため、加えて熱間加工後の冷却時により効率的に黒鉛の析出を図るためには、Cは 0.8%以上含有させることが有利である。
Si:0.5 〜2.0 %
Siは、セメンタイト中に固溶せず、セメンタイトを不安定化することにより黒鉛析出を促進するだけでなく、熱間加工後の強度を上昇させる元素でもあるため、積極的に添加する。このSi量が、0.5 %未満では、熱間加工後の冷却過程で黒鉛を析出させることが極めて困難となり、一方 2.0%を超えると、熱間加工時の変形能を低下させるだけでなく、加工後の硬さが上昇しすぎて被削性を劣化させるため、Siは 0.5〜2.0 %の範囲に限定した。
Mn:0.02〜0.5 %
Mnは、鋼の脱酸に有効なだけでなく、熱間加工後のパーライトのラメラー間隔を微細にする働きがあり、また強度上昇にも有用な元素であるので、積極的に添加するが、一方で過剰に添加すると、セメンタイト中に固溶し、黒鉛の析出を阻害する。ここに、Mnの含有量が0.02%未満では、脱酸および強度上昇に効果がないので、少なくとも0.02%の添加を必要とするが、0.5 %を超えて添加すると黒鉛の析出を阻害し、熱間加工後の冷却中に十分な量の黒鉛を析出させることが不可能となるので、Mn量は0.02〜0.5 %の範囲に限定した。
B:0.0003〜0.015 %
Bは、鋼中のNと結合してBNを形成し、これが黒鉛の結晶化の核となって黒鉛の析出を促進すると共に、黒鉛粒を微細化する働きもある。また、鋼の焼入性を高め、焼入後の強度を確保する上でも有用な元素である。しかしながら、含有量が0.0003%に満たないと黒鉛の析出効果および焼入性の向上効果が小さく、一方 0.015%を超えて添加するとBがセメンタイト中に固溶してセメンタイトを安定化することにより、逆に黒鉛の析出を阻害することになるので、Bは0.0003〜0.015 %の範囲に限定した。
Al:0.005 〜0.1 %
Alは、鋼中のNと反応してAlNを形成し、これが黒鉛の核形成サイトとして作用することにより、黒鉛の析出を促進するので積極的に添加するが、0.005 %未満の添加では、その作用が小さいので、少なくとも 0.005%の添加を必要とする。一方、0.1 %を超えて添加すると鋳造工程において、Al系酸化物が多数形成され、この酸化物は単独でも疲労破壊の起点となるばかりでなく、この酸化物を核として著しく粗大な黒鉛粒が形成される。また、Al系酸化物は硬質なため、切削時に工具を摩耗させることにより被削性を低下させる弊害が生じる。以上の理由により、Alは 0.005〜0.1 %の範囲に限定した。
N:0.0015〜0.015 %
Nは、Bと化合してBNを形成し、このBNが黒鉛の結晶化の核となることにより、黒鉛の析出を促進すると共に黒鉛粒の細粒化に寄与するので、本発明においては必須の元素である。しかしながら、含有量が0.0015%に満たないと十分な量のBNが形成されず、一方 0.015%を超えると連続鋳造時に鋳片の割れを促進するので、Nは0.0015〜0.015 %の範囲に限定した。
O:0.0020%以下
Oは、酸化物系非金属介在物を形成し、熱間加工性および被削性を共に低下させるので、極力低減すべきであるが、0.0020%までであれば許容される。
Cr:0.05%以下
Crは、セメンタイト中に固溶し、微量の混入でも黒鉛の析出を著しく阻害する。従って、熱間加工後の冷却過程において十分な量の黒鉛析出を必要とする本発明においては、極力低減すべき元素であるが、0.05%以下であれば許容される。
以上、必須成分および抑制成分について説明したが、本発明ではその他にも、さらなる黒鉛析出の促進および熱間加工後の強度上昇を目的として以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.05〜3.0 %、Cu:0.1 〜3.0 %、Co:0.1 〜3.0 %
Ni,CuおよびCoはいずれも、黒鉛の析出を促進する元素である。また、焼入性を向上させる作用も併せ持つので、黒鉛析出を阻害せずに、焼入性を向上させる上で極めて有用な元素である。しかしながら、含有量が下限に満たないとその添加効果に乏しく、一方上限を超えて添加してもその効果は飽和するので、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。
Mo:0.05〜1.0 %
Moは、熱間加工後の強度を高める効果と同時に、Mn,Cr等の合金元素に比較してセメンタイトへの分配が小さいという特徴があるので、黒鉛析出を著しく阻害することなく鋼材の熱間加工後の強度を高めることができる。このため、疲労強度を初めとする強度を一層向上させる必要がある場合に用いる。しかしながら、含有量が0.05%に満たないとその効果が小さく、一方 1.0%を超えて添加すると、Moでも黒鉛の析出を阻害し、熱間加工後冷却時の黒鉛析出が困難となり、被削性を低下させるので、Moは0.05〜1.0 %の範囲で含有させるものとした。
V:0.05〜0.5 %、Nb:0.005 〜0.05%
VおよびNbはいずれも、炭化物形成元素であるが、セメンタイト中にはほとんど固溶しないので、黒鉛の析出をさほど阻害しない。また、炭窒化物を形成しこの析出強化作用により熱間加工後の強度を上昇させる効果があるので、疲労強度を向上させる必要のある場合に有用である。Vの場合、0.05%未満の添加ではこれらの効果が小さく、一方 0.5%を超えて添加しても効果が飽和するので、0.05〜0.5 %の範囲の添加とする。他方、Nbの場合、0.005 %未満の添加では、やはり上記の効果が小さく、一方 0.05 %を超えて添加しても効果が飽和するので、 0.005〜0.05%の範囲の添加とする。
Ti:0.005 〜0.05%、Zr:0.005 〜0.2 %
TiおよびZrはともに、炭窒化物を形成し、これらが黒鉛の結晶化の核として作用することにより黒鉛粒を微細化するので、黒鉛粒をさらに微細にする必要のある場合に用いる。このような効果を発揮させるためには、Ti,Zrともに 0.005%以上の添加が必要である。一方、Ti、Zrをそれぞれ0.05%および 0.2%を超えて添加すると、BNを形成するためのNが不足し、その結果黒鉛粒が粗大化すると共に、熱間加工後の黒鉛析出が極めて困難となるので、それぞれ 0.005〜0.05%および 0.005〜0.2 %の範囲の添加とする。
REM :0.0005〜0.2 %
La, Ceなどのいわゆる希土類元素(REM)は、Sと結合して硫化物を形成し、これが黒鉛析出の核となり、黒鉛析出を促進すると共に黒鉛粒を微細化するので、黒鉛粒の微細化および黒鉛析出の促進が必要な場合に用いる。しかしながら、含有量が0.0005%未満ではその効果に乏しく、一方 0.2%を超えて添加しても効果が飽和するので、REM は0.0005〜0.2 %の範囲の添加とする。
さらに、本発明では、一層の被削性向上を目的として、以下に述べる元素を必要に応じて添加することができる。
Pb:0.05〜0.30%
本発明において、Pbの添加は必須ではないが、切削性を著しく向上させる元素であるので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、含有量が0.05%未満ではその効果が小さく、一方0.30%超になるとその効果は飽和し、耐疲労性が低下するので、添加する場合には0.05〜0.30%の範囲とする。
P:0.10%以下
切削性の向上を目的としてPを添加することも可能である。ただし、Pは、靭性あるいは耐疲労性に悪影響を及ぼすので、0.10%以下で添加する必要がある。好ましくは0.07%以下である。
S:0.001 〜0.50%
Sは、切削性を向上させる元素であり、その効果を発揮させるには少なくとも 0.001%の添加が必要である。しかしながら、過剰に添加すると清浄性が劣化するだけでなく、靭性の低下を招くので、上限は0.50%に止める。
Ca:0.0005〜0.010 %
Caは、Pbとほぼ同様な効果を持つ元素で、その効果を発揮するためには0.0005%以上の添加を必要とするが、0.010 %を超えるとその効果は飽和するので、Caは0.0005〜0.010%の範囲とする。
Te:0.005 〜0.05%
Teも、PbやCaと同じく、切削性を向上させる有用元素である。しかしながら、含有量が0.005 %未満ではその効果が小さく、一方0.05%を超えるとその効果は飽和し、むしろ耐疲労性の低下を招くので、Teは 0.005〜0.05%の範囲とした。
以上、好適成分組成範囲について説明したが、本発明では、成分組成を上記の範囲に限定するだけでは不十分で、鋼組織の調整も重要である。
すなわち、本発明においては、熱間加工後のミクロ組織が、パーライトまたはパーライトと体積率で20%以下のフェライト、さらに体積率で0.03%以上の黒鉛からなる組織とする必要がある。
ここに、鋼組織を、パーライト主体の組織としたのは、熱間加工後の冷却のみで鋼の硬さを上昇させ、高い疲労強度を達成するためである。
なお、本発明では、鋼組織中にある程度のフェライトの存在は許容できるが、フェライト量が体積率で20%を超えると、目的とする高い強度を安定して得ることが難しくなるので、フェライト量は体積率で20%以下に制限するものとした。
また、より安定的に高強度化を達成するためには、フェライト量は体積率で7%以下とするのが好適である。
また、本発明では、鋼組織中に体積率で0.03%以上の黒鉛を存在させる必要がある。というのは、黒鉛量が体積率で0.03%に満たないと、必要とする被削性が得られないという不利が生じるからである。
さらに、本発明では、パーライトのラメラー間隔を 0.3μm 以下、また黒鉛粒子の平均粒子径を5μm 以下とすることが重要である。
というのは、パーライトのラメラー間隔が 0.3μm 超では、鋼組織を上述したようにフェライトの体積率が20%以下のパーライトを主体とする組織にしたとしても、疲労強度が低下するという不利が生じるからである。
また、黒鉛粒子の平均粒子径が5μm 超では、黒鉛粒子が疲労破壊の起点となり、静的な強度を十分に有している鋼材でも、必要な疲労強度が得られなくなるからである。
次に、本発明の製造工程について説明する。
本発明では、所定の成分組成に調整した鋼素材を、加熱後、 750〜1150℃の温度域で熱間加工し、ついで 800℃〜Ar1の温度域を 0.5℃/s超の速度で、引き続きAr1〜500 ℃の温度域を0.05℃/s以上、1.0 ℃/s以下の速度で冷却することにより、パーライトのラメラー間隔を 0.3μm 以下とし、同時にミクロ組織中に体積率で0.03%以上の黒鉛を析出させ、さらに黒鉛粒子の平均粒子径を5μm 以下に制御して、優れた被削性と強度とをバランス良く実現させることができる。
ここに、熱間加工温度が、 750℃に満たないと、著しい荷重の増大を引き起こして加工が実質的に困難となり、一方1150℃を超えると、加工後のオーステナイト粒径が粗大化し、その影響で黒鉛の析出サイトが減少して黒鉛の析出が困難となる。また、オーステナイト粒の粗大化はパーライトのノジュールサイズの粗大化を引き起こし、強度とくに疲労強度を低下させる不利もある。
また、本発明では、熱間加工後の冷却を、上述したとおり2段階冷却とすることが重要であり、かくしてパーライトのラメラー間隔および黒鉛の析出量・平均粒子径を、所望の範囲に制御することができる。
ここに、第1段目の冷却である 800℃〜Ar1の温度域での冷却速度が 0.5℃/s以下になると、パーライトのラメラー間隔が大きくなって、強度の低下を引き起こす。また、第2段目の冷却であるAr1〜500 ℃の温度域での冷却速度が0.05℃/sを下回ると、黒鉛の粒子径が粗大化して疲労強度の低下を招き、一方 1.0℃/sを上回ると、鋼材の成分組成を本発明の適正範囲に調整しても冷却中における黒鉛の析出が困難となる。
以下、本発明を実施例に従って説明する。
(1) 鋼素材の成分組成
表1に、実施例で使用した鋼素材の成分組成を示す。このうち、鋼A〜Pは、成分組成が本発明の範囲内にある適合鋼である。一方、鋼QはMnが、鋼RはCrが、鋼SはBが、鋼TはSiが、それぞ本発明の適正範囲を逸脱した比較鋼であり、鋼Uは JIS規格のS53Cに相当する鋼にPbを添加したもの、鋼Vは JIS規格のSCM435に相当する鋼である。
(2) 製造条件
これらの鋼素材を、 950〜1200℃に加熱後、表2に示す温度で熱間加工を行ったのち、同じく表2に示す種々の冷却速度で2段階冷却を行った。
(3) かくして得られた鋼材について、以下の調査を実施した。
・ミクロ組織
鋼材より採取した顕微鏡用試片について、研磨後腐食せず、画像解析装置により断面:5箇所、各箇所について 400倍の倍率の光学顕微鏡像:10視野にわたって、フェライトおよび黒鉛の面積率をそれぞれ測定し、その平均値をもってフェライト分率および黒鉛体積率とした。加えて、上記5箇所について1000倍の倍率の光学顕微鏡像:10視野にわたって観察された全ての黒鉛粒子の粒子径を測定し、その平均値をもって平均黒鉛粒子径とした。
また、同様の試片を研磨後、硝酸アルコール溶液にて腐食し、走査型電子顕微鏡を用いて5000倍の倍率で10視野にわたり、各視野における層状セメンタイトの間隔の最小値を測定し、10視野の平均値をパーライトラメラー間隔とした。
・被削性
被削性試験は、高速度工具鋼SKH4を用い、52mmφの試片を切削速度:80 m/min、無潤滑の条件によって外周旋削を行い、工具が切削不能となるまでの時間を工具寿命として評価した。
・疲労強度
熱間加工後の素材から、平行部:8mmφ×16mmL の試片を作成し、回転曲げ疲労試験を実施した。種々の負荷応力にて試験を実施し、応力負荷回数が107 を超えても破断の生じない最大の応力を疲労強度とした。
得られた結果を、表2に併記する。
Figure 2005105359
Figure 2005105359
表3から明らかなように、発明例はいずれも、Pb添加S53Cに相当する鋼U(No.32)と比較して、同等以上の優れた被削性を得ることができた。特に発明例中でも、黒鉛面積率の高い鋼ほど優れた被削性を示す傾向が認められた。また、熱間加工後の疲労強度も、発明例はNo.32 よりも優れた値を示した。
これに対し、成分組成が本発明の適正範囲を逸脱した(No.28〜31)あるいは成分組成は本発明内であっても、熱間加工温度が発明範囲を超えた場合(No.7) または第2段目の冷却速度が発明範囲を超えた場合(No.1, 8)には、いずれも熱間加工後の冷却中の黒鉛の析出が認められず、そのため、得られる被削性も発明例と比較すると著しく劣るものであった。
また、成分組成は本発明の適正範囲内であっても、第1段目の冷却速度が本発明の規定に満たない場合(No.3)には、パーライトのラメラー間隔が粗大となり、さらに第1段目だけでなく、第2段目の冷却速度も本発明の規定に満たない場合(No.11)には、パーライトのラメラー間隔が粗大となるだけでなく、黒鉛の粒子径も粗大となり、いずれも十分な疲労強度が得られなかった。
本発明によれば、焼入れ−焼戻しなどの調質処理を施す必要なしに、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材を得ることができ、従って、産業機械や自動車等の機械部品に適用して偉功を奏する。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.5 〜1.2 %、 Si:0.5 〜2.0 %、
    Mn:0.02〜0.5 %、 B:0.0003〜0.015 %、
    Al:0.005 〜0.1 %およびN:0.0015〜0.015 %
    を含有し、かつ不純物としてのOおよびCrの混入をそれぞれ、
    O:0.0020%以下、 Cr:0.05%以下
    に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、熱間加工後のミクロ組織が、パーライトまたはパーライトと体積率で20%以下のフェライト、さらに体積率で0.03%以上の黒鉛からなり、該パーライトのラメラー間隔が 0.3μm 以下で、かつ黒鉛粒子の平均粒子径が5μm 以下であることを特徴とする、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材。
  2. 請求項1において、鋼材が、さらに質量%で、
    Ni:0.05〜3.0 %、 Cu:0.1 〜3.0 %、
    Co:0.1 〜3.0 %、 Mo:0.05〜1.0 %、
    V:0.05〜0.5 %、 Nb:0.005 〜0.05%、
    Ti:0.005 〜0.05%、 Zr:0.005 〜0.2 %および
    REM:0.0005〜0.2 %
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材。
  3. 請求項1または2において、鋼材が、さらに質量%で、
    Pb:0.05〜0.30%、 P:0.10%以下、
    S:0.001 〜0.50%、 Ca:0.0005〜0.010 %および
    Te:0.005 〜0.05%
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の成分組成になる鋼素材を、加熱後、 750〜1150℃の温度域で熱間加工し、ついで 800℃〜Ar1の温度域を0.5 ℃/s超、Ar1〜500 ℃の温度域を0.05℃/s以上、1.0 ℃/s以下の速度で冷却することを特徴とする、強度と被削性のバランスに優れた非調質鋼材の製造方法。
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