しかし、上述の空調装置では、赤外線温度センサを車室内のインストルメントパネルに配置しているので、赤外線温度センサにより、乗員の上半身の表面温度が検出可能なものの、インストルメントパネルにより乗員足下が隠れるので、乗員足下を表面温度検出することができない。したがって、乗員足下の温度を考慮した乗員の温感に合う空調制御を行うことができない。
本発明は、上記点に鑑み、乗員足下の温度を考慮した乗員の温感に合う空調制御を行うようにした車両用空調装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内の空調状態を調整する空調手段(5)と、車室内の座席に着座する乗員の表面温度を複数部位に分割してそれぞれ非接触で検出する各検出素子(R1〜R36)を有する非接触温度センサ(84)と、非接触温度センサによる複数部位の検出温度に基づき、車室内の空調状態を調整させるように空調手段を制御する制御手段(90)と、を備えており、非接触温度センサは、前記車室内上側に配置されていることを特徴とする。
これにより、非接触温度センサが車室内上側に配置されているので、乗員足下をも検出することが可能で、乗員足下の温度を考慮した乗員の温感に合う空調制御を行うことができる。
ところで、例えば、乗員の温感に合うように空調制御を行うために、乗員の部位毎の表面温度を検出しようとしても、複数の検出素子から構成される非接触温度センサを用いて、部位毎に温度検出に用いられる検出素子を決めておいても、座席の位置が何時も同じ位置に設定されているとも限らず、検出温度を乗員の部位毎に良好に求めることができない。
そこで、請求項2、3に記載の発明のように、乗員の画像を検出する画像検出手段(85)を備えれば、検出温度を乗員の部位毎に良好に求めることができる。
これに伴い、制御手段が、画像検出手段による検出画像および非接触温度センサによる複数部位の検出温度に応じて、車室内の空調状態を調整させるように空調手段を制御すれば、部位毎の検出温度に応じて、車室内の空調状態を調整させることができる。
具体的には、請求項2に記載の発明では、車室内の前側に配置されて、乗員の画像を検出する画像検出手段(85)を備えており、制御手段は、画像検出手段による検出画像および非接触温度センサによる複数部位の検出温度に応じて、車室内の空調状態を調整させるように空調手段を制御することを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明では、車室内の空調状態を調整する空調手段(5)と、車室内の座席に着座する乗員の表面温度を複数部位に分割してそれぞれ非接触で検出する各検出素子(R1〜R36)を有する非接触温度センサ(84)と、非接触温度センサによりも前側に配置されて、乗員の画像を検出する画像検出手段(85)と、画像検出手段による検出画像および非接触温度センサによる複数部位の検出温度に基づき、車室内の空調状態を調整させるように空調手段を制御する制御手段(90)と、を備えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、制御手段は、画像検出手段による検出画像および非接触温度センサによる複数部位の検出温度に応じて、乗員の部位毎の表面温度を抽出して、この抽出される部位毎の表面温度に基づき車室内の空調状態を調整させるように空調手段を制御することを特徴とする。
さらに、請求項5に記載の発明のように、空調手段は、複数の吹出口のうちいずれかの吹出口から空調風を吹き出すことにより、車室内の空調状態を調整するものであり、制御手段は、画像検出手段による検出画像および非接触温度センサによる複数部位の検出温度に応じて、複数の吹出口のうち空調風を吹き出す吹出口を選択して、この選択された吹出口から空調風を吹き出させるように空調手段を制御するように構成してもよい。
また、請求項6に記載の発明では、車室内の後部座席側の空調状態を調整する空調手段(5)と、後部座席に着座する乗員の表面温度を非接触で検出するための非接触温度センサ(84)と、非接触温度センサにより検出される温度に基づき、後部座席側の空調状態を調整させるように空調手段を制御する制御手段(90)と、を備え、非接触温度センサは、乗員の上側に配置されているものであることを特徴とする。
これにより、非接触温度センサに視野内にリア側ウインドシールドが入ることなく、乗員の表面温度を検出することができる。したがって、例えば、リア側ウインドシールドに空調風を吹き出するデフ機能のオン、オフに関わらず、乗員の表面温度を正確に検出することができる。これに伴い、乗員温度に応じて、後部座席側の空調状態を良好に調整することができる。
具体的には、請求項7に記載の発明のように、非接触温度センサは、車両左右方向のほぼ中央部に配置されていることを特徴とする。
さらに、請求項8に記載の発明のように、画像検出手段は、車両左右方向のほぼ中央部にて配置されていることを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明では、非接触温度センサは、後部座席に着座する乗員を含む領域の表面温度を複数箇所に分割してそれぞれ非接触で検出する複数の検出素子を有するものであり、後部座席は位置を調節可能に構成されたものであり、後部座席の位置を検出する位置検出手段(SW1、SW2)を備えており、制御手段は、検出される後部座席の位置に基づき、複数の検出素子のそれぞれの検出温度のうち乗員の表面温度を示す検出温度を選択して、この選択された検出温度に基づき、後部座席側の空調状態を調整させるように空調手段を制御することを特徴とする。
これにより、後部座席の位置が調整されても、乗員の表面温度を正確に検出することができるので、乗員の表面温度に基づき後部座席側の空調状態を良好に調整することができる。
また、発明者らは、赤外線温度センサとして、複数の検出素子を整列して構成されるマトリックス型の温度センサを用いて、乗員の上半身および下半身の温度分布を検出して、この検出される上半身および下半身の温度分布を基に吹出口モードを変更することについて検討した。
この検討によれば、乗員の姿勢は、一定ではなく、姿勢が変わると、複数の検出素子が、それぞれ、乗員のいずれの部位の温度を検出しているか分からない。そこで、乗員を撮像するCCDカメラを追加し、CCDカメラの検出画像を画像処理して乗員の輪郭を抽出し、この輪郭とマトリックス型の温度センサの検出温度を合成すれば、複数の検出素子が、それぞれ、乗員のいずれの部位の温度を検出しているかが識別可能になると考えた。
しかし、赤外線温度センサを、インストルメントパネルにて車両後方に向けて配置すると、当該赤外線温度センサでは、乗員の上半身の温度分布が検出できるものの、インストルメントパネルの下側に位置する乗員の下半身の温度分布が検出できない。
請求項10に記載の発明では、車室内の空調状態を調整する空調手段(5)と、
前記車室内の座席に着座する乗員の表面温度を複数部位に分割してそれぞれ非接触で検出する各検出素子(R1〜R36)を有する非接触温度センサ(84)と、前記乗員の車両前側から前記乗員の画像を検出する画像検出手段(85)と、
前記画像検出手段により検出される画像から前記乗員の輪郭を抽出して、この抽出された輪郭に前記非接触温度センサによる検出素子毎の検出温度を合成して前記乗員の上半身および下半身の温度分布を求め、この求められた上半身および下半身の温度分布に基づき、前記車室内の空調状態を調整させるように前記空調手段を制御する制御手段(90、S100〜S170、S220、S230、S310)と、を備えており、前記非接触温度センサは、前記乗員を見下ろすように配置されていることを特徴とする。
したがって、乗員の上半身の温度分布は勿論のこと、下半身の温度分布を検出することができ、この上半身および下半身の温度分布に合う適切な空調を行うことができる。
請求項11に記載の発明では、前記非接触温度センサは、前記各検出素子により、運転座席に着座する運転者の表面温度を複数部位に分割してそれぞれ非接触で検出するものであって、前記非接触温度センサは、ステアリングよりも上側で、かつ、前記運転座席の車両左右方向の中央部側に配置されていることを特徴とする。
したがって、非接触温度センサが、垂直方向に対して斜めから運転者の表面温度を検出することになり、表面温度を検出するにあたり、ステアリングにより邪魔されることを未然に防ぎ得る。
請求項12に記載の発明のように、画像検出手段は、車両左右方向の中央部に配置されていれば、助手席に着座する乗員や後部席に着座する乗員の画像をも1つの画像検出手段により検出可能になる。
具体的には、請求項13に記載の発明のように、前記画像検出手段が、前記上半身の画像だけを検出する場合には、前記制御手段は、前記乗員の輪郭に前記検出素子毎の検出温度を合成して前記乗員の上半身の温度を求めるとともに、前記画像検出手段及び前記非接触温度センサの配置関係および前記検出素子毎の検出温度だけに応じて、前記各検出素子のうち前記下半身の温度を検出する検出素子を推定し、この推定される検出素子の検出温度を前記下半身の温度とすることが必要になる。
例えば、請求項14に記載の発明のように、前記空調手段は、前記乗員の足に冷風を吹き出し可能になっており、前記制御手段は、前記求められる上半身の温度に比べて前記下半身の温度の方が高いと判定したとき、前記空調手段によって前記下半身に冷風を吹き出させるようにすれば、上半身の温度に比べて下半身の温度の方が高いときには、下半身に冷風を吹き出させるので、下半身を冷やして快適にすることができる。
請求項15に記載の発明では、前記制御手段は、車室外の空気温度を検出する外気温センサ(81)からの検出出力に応じて、前記車室外の空気温度が一定温度以上であると判定して、かつ、前記上半身温度に比べて前記推定される乗員下半身の温度の方が高いと判定したとき、前記空調手段によって前記下半身に冷風を吹き出させることを特徴とする。
したがって、車室外の空気温度が一定温度未満であるときには、下半身に冷風を吹き出させて下半身を冷やすことを未然に防止することができる。
請求項16に記載の発明では、前記空調手段は、前記乗員の車両ドア側に冷風を吹き出し可能になっており、前記制御手段(S230、S270、S280)は、前記抽出された乗員の輪郭に前記検出素子毎の検出温度を合成して前記乗員のうち、ドア側の表面温度および車両中央部側の表面温度を求めるとともに、この求められたドア側の表面温度の方が、前記車両中央部側の表面温度に比べて高いと判定したとき、前記空調手段により乗員の車両ドア側に冷風を吹き出させることを特徴とする。
したがって、乗員のドア側の表面温度の方が、車両中央部側の表面温度に比べて高いとき、空調手段により乗員の車両ドア側に冷風を吹き出させることにより、乗員の車両ドア側を冷やして快適にすることができる。
請求項17に記載の発明では、前記制御手段(S220、S250、S260)は、前記抽出された乗員の輪郭に前記検出素子毎の検出温度を合成して前記乗員の上腕部の表面温度、下腕部の表面温度を求めると共に、この求められた上腕部の表面温度と前記下腕部の表面温度とを比較して、前記乗員が半袖の服を着衣していると判定したとき、前記非接触温度センサによる検出素子毎の検出温度を前記半袖の服に合うように補正して、この補正された検出素子毎の検出温度を前記乗員の表面温度とすることを特徴とする。
したがって、検出素子毎の検出温度を半袖の服に合うように補正した温度に基づき、車室内の空調状態を調整させれば、半袖の服に合うように車室内の空調状態を調整させることができる。
例えば、請求項18に記載の発明においては、前記制御手段(S260)は、前記非接触温度センサによる検出素子毎の検出温度から所定温度低い温度を、検出素子毎の検出温度を前記半袖の服に合うように補正した温度として設定してもよい。
ところで、発明者らは、後部座席側空間の空調を後部座席用空調装置において、後部座席に着座する後部乗員の表面温度をマトリックス型の赤外線温度センサによって検出することを検討した。
この検討によれば、赤外線温度センサをインストルメントパネルにて車両後方に向けて配置すると、赤外線温度センサの視野内に、リアウインドシールドが入ってしまう。このため、デフ機能が作動してリアウインドシールドの温度が上昇しているときには、赤外線温度センサとしては、後部乗員以外の表面温度を検出してしまい、赤外線温度センサの検出誤差が大きくなってしまう。
また、赤外線温度センサをインストルメントパネルにて車両後方に向けて配置すると、後部乗員の肩の表面温度を検出しようとしても、乗員の身長差によって、マトリックス型の赤外線温度センサのうち、肩の表面温度を検出する検出素子が代わってしまう。したがって、肩の表面温度を検出する検出素子がどの検出素子であるかが識別できない。
ここで、請求項19に記載の発明では、車室内の後部座席側の空調状態を調整する空調手段(5)と、前記後部座席に着座する後部乗員の表面温度を複数部位に分割してそれぞれ非接触で検出する各検出素子(R1〜R36)を有する非接触温度センサ(84)と、前記非接触温度センサにより検出される検出素子毎の検出温度に基づき、前記後部座席側の空調状態を調整させるように前記空調手段を制御する制御手段(90)と、を備え、前記非接触温度センサは、前記乗員の車両左右方向中央部側から前記後部乗員を見下して温度検出するように配置されていることを特徴とする。
このように、非接触温度センサは、乗員の車両左右方向中央部側から後部乗員を見下して温度検出するように配置されているので、非接触温度センサの視野内にリアウインドシールドが入らなくなる。したがって、リアウインドシールドの防曇機能が作動していても、この防曇機能が原因で非接触温度センサの検出誤差が生じなくなる。
また、非接触温度センサは、後部乗員を見下して温度検出するように配置されているので、後部座席の乗員の身長差に関わらず、各検出素子のうち、乗員の肩の表面温度を検出する検出素子が変わらず、固定されるので、後部座席の乗員の身長が代わっても、乗員の肩の表面温度が検出可能になる。
請求項20に記載の発明のように、非接触温度センサとしては車室内の天井部のうち乗員の車両左右方向中央部側に配置することが好ましい。一方、後部座席は前後方向の位置を調節可能に構成されている場合には、後部座席は前後方向の位置によっては、乗員の肩が非接触温度センサの視野内に入らなくなる。
そこで、請求項21に記載の発明では、前記後部座席は前後方向の位置を調節可能に構成されたものであり、前記後部座席の前後方向の位置を検出する位置検出手段(SW1、SW2)を備えており、前記制御手段は、前記位置検出手段により検出される後部座席の位置に基づき、前記複数の検出素子のそれぞれの検出温度のうち乗員の肩の表面温度を示す検出温度を選択して、この選択された検出温度に基づき、前記後部座席側の空調状態を調整させるように前記空調手段を制御することを特徴とする。
この場合、後部座席の位置に基づき、乗員の肩の表面温度を示す検出温度を選択するので、後部座席は前後方向の位置に関わらず、この選択された肩の検出温度に基づき、後部座席側の空調状態を調整することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る一実施形態に係る車両用空調装置の全体の概略構成を示したもので、本実施形態は、車室内のうち前席運転席側の空調ゾーンを独立して空調制御する車両用空調装置に、本発明を適用したものである。
当該空調装置は、インストルメントパネル内側に配置されて、前部運転席側の空調ゾーンを個別に空調する空調ユニット5を備えており、空調ユニット5は、車室内に送風するためのダクト50を備えている。
ダクト50には、車室内から内気を導入するための内気導入口50a、および、車室外から外気を導入するための外気導入口50bが設けられている。さらに、ダクト50には、外気導入口50bおよび内気導入口50aを選択的に開閉する内外気切替ドア51が設けられており、この内外気切替ドア51には、駆動手段としてのサーボモータ51aが連結されている。
また、ダクト50内のうち外気導入口50bおよび内気導入口50aの空気下流側には、車室内に向けて吹き出される空気流を発生させる遠心式送風機52が設けられており、遠心式送風機52は、羽根車およびこの羽根車を回転させるブロアモータ52aを有して構成されている。
さらに、ダクト50内にて遠心式送風機52の空気下流側には、空気を冷却する空気冷却手段としてのエバポレータ53が設けられており、さらに、このエバポレータ53の空気下流側には、空気加熱手段としてのヒータコア54が設けられている。
ここで、ヒータコア54の側方には、バイパス通路51aが形成されており、バイパス通路51aは、ヒータコア54に対してエバポレータ53により冷却された冷風をバイパスさせる。
また、ヒータコア54の空気上流側には、エアミックスドア55aが設けられており、エアミックスドア55aは、その開度により、ヒータコア54を通る空気量とバイパス通路51aを通る空気量との比を調整する。そして、ヒータコア54を通る空気とバイパス通路51aを通る空気とが混合されることにより、空気温度が調節されることになる。なお、以下、この混合された空気を混合空気という。
ここで、エアミックスドア55aには、駆動手段としてのサーボモータ550aがそれぞれ連結されており、エアミックスドア55aの開度は、サーボモータ550aによって、それぞれ、調整される。
また、エバポレータ53は、図示しないコンプレッサ、凝縮器、受液器、減圧器とともに、周知の冷凍サイクルを構成している熱交換器であり、このエバポレータ53は、ダクト50内を流れる空気を冷却する。
ここで、コンプレッサは、当該自動車のエンジンに電磁クラッチ(図示しない)を介して連結されるものであり、このコンプレッサは、電磁クラッチを断続制御することによって駆動停止制御される。
ヒータコア54は、当該自動車のエンジン冷却水(温水)を熱源とする熱交換機であり、このヒータコア54は、エバポレータ53によって冷却された冷風を加熱する。
また、ダクト50内のうちヒータコア54の空気下流側には、ダクト300a、300b、300cが設けられており、ダクト300a、300b、300cには、上述の混合空気が流入される。
そして、ダクト300aの空気上流部には、二つの流入口を選択的に開閉する吹出口切換ドア56aが設けられており、この吹出口切換ドア56aは、駆動手段としてのサーボモータ560aによって、開閉駆動される。
ここで、一方の流入口は、ダクト300aの空気入口をなすものであり、ダクト300aは、運転席に着座する運転者の下半身に向けて混合空気をフット吹出口100aから吹き出す。
二つの流入口のうち他方の流入口は、ダクト300b、300cの空気入口をなすものであり、ダクト302aは、運転席に着座する運転者の上半身に向けて混合空気をフェイス吹出口100cから吹き出す。一方、ダクト300cには、他方の流入口から流入される混合空気以外に、後述する冷風バイパス通路304aを通して流入される冷却空気が流れ込む。
そして、ダクト300cに流れ込む冷却空気および混合空気が混合されてこの混合された空気がダクト300d、300eのいずれかに流れ込む。このことにより、ダクト300d、300eのそれぞれに流れ込む空気の温度が調節されることになる。
ダクト300d、300eの空気上流側には、双方の流入口を選択的に開閉する吹出口切換ドア59aが設けられており、この吹出口切換ドア59aは、駆動手段としてのサーボモータ590aによって、開閉駆動される。
ここで、ダクト300dは、サイドグリル吹出口100bから運転者の上半身の胴部に向けて空気を吹き出す。サイドグリル吹出口100bは、インストルメントパネルにおいて車両左右方向の一端側(運転席側)にて車両後方に向けて開口されている。
ダクト300eは、ドア吹出口100aから運転者の下腕部付近に冷風を吹き出すものであり、ドア吹出口100aは、運転席側のドアにおいて運転者に向けて開口形成されている。
また、冷風バイパス通路304aは、ヒータコア54及びバイパス通路51aに対して、エバポレータ53により冷却された冷風をバイパスさせるものであり、冷風バイパス通路304aの流入口には、冷風の流入量を調整するために開閉する冷風バイパスドア58aが設けられている。そして、冷風バイパスドア58aには、駆動手段としてのサーボモータ580aが連結されており、冷風バイパスドア58aの開度は、サーボモータ580aによって調整される。
また、車両用空調装置には、空調ユニット5制御するための電子制御装置(以下、エアコンECU90という)が設けられている。
エアコンECU90には、車室外の外気温度Tamを検出する外気温度センサ81、エンジンの冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ82、車室内に照射される日射量Tsを検出する日射センサ83、前席運転席側の空調ゾーンの空気温度TrFrを検出する温度センサ86、および、運転席に着座する運転者の表面温度を検出する赤外線温度センサ84が接続されている。
赤外線温度センサ84は、図2に示すように、車室内上側(具体的には、車室内天井部)で、かつ、車両左右方向のほぼ中央部(車両幅方向のほぼ中央部)にて運転席側に向けて運転者を見下ろすように配置されている。
また、赤外線温度センサ84は、図3に示すようにマトリックス状に配置されて、かつ運転者の表面温度を複数部位に分割してそれぞれ非接触で検出する検出素子R1〜R36と、図示しない赤外線吸収膜とを有するサーモパイル式の温度センサである。なお、以下、赤外線温度センサ84をマトリックス状IRセンサ84ともいう。
ここで、赤外線吸収膜は、運転者の表面の各部位から入射される赤外線を熱に変換するものであり、検出素子R1〜R36は、個々に熱電対部をなすもので、赤外線吸収膜により変換される熱を部位毎に電力に変換する。このことにより、マトリックス状IRセンサ84は、運転者の表面温度から入力される赤外線量の変化に対応した起電力変化を運転者表面の部位毎の温度変化として検出することになる。
また、エアコンECU90には、エバポレータ53から吹き出される冷風空気の温度(以下、蒸発器吹出温度TeFrという)を検出する温度センサ80、および、前部運転席側の空調ゾーンの希望温度TsetFrDrが乗員により設定される温度設定スイッチ9が接続されている。
さらに、エアコンECU90には、赤外線温度センサ84の前側に配置されるCCDカメラ85が接続されており、CCDカメラ85は、車室内天井部のうち車両前側にて、かつ、車両左右方向の中央部付近(具体的には、ルームミラー付近)にて、運転席側に向けて配置されるものであって、運転者を示す画像を運転者の前側から検出する。この運転者を示す画像は、例えば、図4中の符号A4に示すように、画像処理によって運転者の輪郭を抽出するのに用いられる。
一方、エアコンECU90は、アナログ/デジタル変換器、マイクロコンピュータ等を有して構成される周知のものであり、センサ81、82、83、84、86およびスイッチ9からそれぞれ出力される出力信号は、アナログ/デジタル変換器によりアナログ/デジタル変換されてマイクロコンピュータにそれぞれ入力されるように構成されている。
マイクロコンピュータは、ROM、RAMなどのメモリ、およびCPU(中央演算装置)等から構成される周知のもので、イグニッションスイッチがオンされたときに、図示しないバッテリから電力供給される。
次に、本実施形態の車両用空調装置の作動について図5〜図11を用いて説明する。図5は、エアコンECU90の自動空調制御処理を示す制御フローチャートであり、図7、図8は、図5中の目標吹出温度算出の詳細を示す制御フローチャートである。
エアコンECU90は、図5〜図7に示すフローチャートにしたがって、メモリに記憶されるコンピュータプログラムを実行する。このコンピュータプログラムは、イグニッションスイッチがオンされたときにその実行が開始されるものである。
先ず、RAMに記憶されるデータなどをリセット(初期化)すると(S100)、センサ80、81、82、83、84、86の検出信号をアナログ/デジタル変換したデジタル信号(TeFr、Tam、Tw、Tsなど)を読み込む。これに加えて、マトリックス状IRセンサ84により部位毎の温度を検出させて、かつ、CCDカメラ85により運転者を示す画像を撮像させるとともに、温度設定スイッチ9により設定される希望温度を読み込む。
次に、このように読み込んだデジタル信号、希望温度、CCDカメラ85により撮影される画像、および、マトリックス状IRセンサ84による部位毎の検出温度などを用いて、図6、図7に示す目標吹出温度算出(S200〜S310)を実行する
具体的には、マトリックス状IRセンサ84による部位毎の検出温度の全てが例えば、一定範囲内に入っているとき、ノイズなどの外乱の影響を受けておらず、マトリックス状IRセンサ84による部位毎の検出温度が正常に入手されたとして、S200でYESと判定する(S200)。
次に、CCDカメラ85により撮影される画像が正常に入手されたか否かを判定する(S210)。例えば、当該画像を構成する画素毎の明るさが、一定範囲内に入っているとき、ノイズなどの外乱の影響を受けておらず、画像が正常に入手されたとして、S210でYESと判定する。
続いて、CCDカメラ85により撮影される画像を信号処理して、乗員(運転者)の輪郭(例えば、図4中の符号A4参照)を抽出し、この抽出される輪郭と、マトリックス状IRセンサ84による部位毎の検出温度(検出値)とを合成する(S230)。
このことにより、運転者について上半身、下半身の温度分布、すなわち胴部、下腕部、上腕部等の部位毎に温度を求めることができる。ここで、CCDカメラ85は、上述のように、車室内天井部のうち車両前側にて、かつ、車両左右方向の中央部付近にて、運転席側に向けて配置されて運転者の画像を運転者(乗員)の正面側から撮影する。
ここで、CCDカメラ85及び足(下半身)の間には、ステアリングが存在して、当該CCDカメラ85では、運転者の足部(下半身:図4中の符号A1参照)は、ステアリングが邪魔になり、撮影できない。そこで、本実施形態では、CCDカメラ85の検出画像を用いず、マトリックス状IRセンサ84による部位毎の検出温度とCCDカメラ85およびマトリックス状IRセンサ84の配置関係だけで、マトリックス状IRセンサ84の検出素子R1〜R36のうち、下半身の温度を検出する検出素子R9〜R12を決定し、この検出素子R9〜R12の各検出温度を下半身の部位毎の温度とする。
次に、外気温度Tamが例えば15℃以上であるか否かを判定する(S240)。そして、外気温度Tamが例えば15℃以上であるときYESと判定して、S270の判定処理に移行して、乗員のドア温度側温度と、車両左右方向中央側温度とを比較する。
具体的には、検出素子R13〜R16、R3、R5、R7の個々の検出温度を平均して、この平均温度を乗員のドア温度側温度とし、R27、R28、R33〜R35、R2、R4、R6の個々の検出温度を平均して、この平均温度を乗員の車両左右方向中央側温度とする。
そして、ドア温度側温度の方が車両左右方向中央側温度に比べて高いときS270でYESと判定して、S280に移行する。ここで、サーボモータ590aにより吹出口切換ドア59aを駆動して、ダクト300dの流入口を開け、かつ、ダクト300eの流入口を閉じる。
このことにより、ダクト300dを通過する冷風がドア吹出口100aから乗員のドア側(例えば、図4中符号A2に示すように、運転者の下腕部辺り)に向けて吹き出されることになる。その後、S290の処理に移行する。
なお、S270でYESと判定されない限り、吹出口切換ドア59aにより、ダクト300dの流入口を閉じて、かつ、ダクト300eの流入口を開けられているので、サイドグリル吹出口100aから運転者の胴部付近に冷風を吹き出されている。
一方、S240において、外気温度Tamが例えば15℃未満であるときNOと判定して、S250の判定処理に移行して、乗員の上腕部温度と下腕部温度とを比較する。
ここで、検出素子R27の検出温度を上腕部温度とし、検出素子R36の検出温度を下腕部温度とし、上腕部温度に比べて下腕部温度の方が高いとき、運転者が半袖の服を着衣していると判定して、後述するS300の処理で用いられる乗員温度としては、検出素子毎の検出温度に「−3℃」を加えて半袖の服に合うように補正した温度を用いるとし(S260)、その後、S290の処理に移行する。
一方、S270において、ドア温度側温度に比べて車両中央側温度の方が低いときNOと判定して、S290に移行する。
このS290の判定処理では、外気温度Tamが例えば25℃以上であるか否かを判定して、外気温度Tamが例えば25℃未満であるときNOと判定すると、S300の処理に移行して、乗員検出温度TirFrDrを後述するように算出する。
一方、S290において、外気温度Tamが例えば25℃以上であるとしてYESと判定すると、S310の処理に移行して、乗員上半身温度(FrDr上半身温度)と、乗員下半身温度(FrDr下半身温度)と、を比較する。
具体的には、検出素子R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8の個々の検出温度の平均値を乗員上半身温度とし、検出素子R9、R10、R11、R12の個々の検出温度の平均値を乗員下半身温度として、「乗員下半身温度+5℃」に比べて「乗員上半身温度」が高いか否かを判定して、「乗員下半身温度+5℃」に比べて「乗員上半身温度」が高いと判定したとき、S320の処理に移行する。ここで、先立つ吹出口モードの判定処理にてフェイスモードが判定されていた場合には、バイレベルモード(B/L)に切り替える。このことにより、運転者の上半身だけでなく、下半身にも冷風が吹き出されることになる。なお、「+5℃」は、乗員下半身温度の補正数であり、「+5」以外の任意の値を設定することができる。
続いて、S300の処理では、検出素子R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12の個々の検出温度の平均値を算出し、この平均値を乗員温度TirFrDrとする。
但し、上述のS250において、上腕部温度に比べて下腕部温度の方が高いと判定したときには、運転者が半袖の服を着衣していると判定して、検出素子R1、R2…R11、R12の個々の検出温度の平均値に「−3℃」を加えて半袖の服に合うように補正した温度を乗員温度TirFrDrとする。
以上のように算出される乗員温度FrDrを用いて、前席運転席側の空調ゾーンに吹き出す空気の目標吹出温度TAOを、メモリに予め記憶される数式1に基づいて演算する(S110)。
TAO=KsetFrDr×TsetFrDr
−Kir×TirFrDr−KrFr×TrFr
−KsFr×TsFrDr−Kam×Tam+CFrDr…(数式1)
ここで、TsetFrDrは希望温度を示し、TrFrは前席運転席側の空調ゾーンの空気温度を示し、Tsは日射量を示し、Tamは外気温を示す。
なお、KsetFrDr、Kir、KrFr、KsFr、Kamは、係数であり、CFrDrは定数である。
次に、メモリに予め記憶される数式2に基づいて、上述のごとく算出される目標吹出温度TAOを用いて、エアミックスドア55aの開度SWを算出する。
SW={(TAO−Te)/(Tw−Te)}×100(%)
…(数式2)
ここで、この決定される開度SWに基づき、サーボモータ550aを制御して、エアミックスドア55aを駆動する(S110)。これに伴って、エアミックスドア55aのそれぞれの開度が、開度SWに近づくようなる。
次に、図6に示す特性図を用いて冷風バイパスドア58aの目標開度RH1を求める(S120)。
具体的には、検出素子R13〜R16、R3、R5、R7のそれぞれの検出温度の平均値を乗員の右側上半身温度として算出し、この算出される右側上半身温度と希望温度TsetFrDrとの温度差ΔTkを求めるとともに、この求められる温度差ΔTkと図6の特性とを基に、冷風バイパスドア58aの目標開度RH1を求める。
なお、図6の特性では、温度差ΔTkが大きくなるにつれて、目標開度RH1が大きくなる。また、本実施形態では、冷風バイパス通路304aの流入口を全開する場合を目標開度RH1=100%とし、冷風バイパス通路304aの流入口を全閉する場合を目標開度RH1=0%とする。
次に、メモリに予め記憶される図9の特性、および目標吹出温度TAOを用いて、フットモード(FOOT)、バイレベルモード(B/L)、フェイスモード(FACE)のうち1つを、吹出口モードとして決める(S130)。
そして、吹出口モードが決定されると、サーボモータ560aを制御して、この決定される吹出口モードとなるように吹出口切換ドア56aを開閉させる。
例えば、フットモードが決定されると、吹出口切換ドア56aによってダクト300aの流入口だけを全開して、フット吹出口100dから空気を吹き出させる。
一方、フェイスモードが決定されると、吹出口切換ドア56aによって、ダクト300aの流入口を全閉して、かつ、ダクト300b、ダクト300cの流入口を全開して、フェイス吹出口100cだけでなく、吹出口100a、100bの一方からも空気を吹き出させる。
また、バイレベルモードが決定されると、吹出口切換ドア56aによって、ダクト300a、300b、ダクト300cの全ての流入口を開けて、フェイス吹出口100cおよびフット吹出口100dから空気を吹き出させる。
次に、メモリに予め記憶される図10の特性、および目標吹出温度TAOを用いて、空調ユニット5の内外気切換ドア51の目標開度SW1を求める。
すなわち、メモリに予め記憶される図10の特性に基づき、平均値TAOに対応する内外気切換ドア51の目標開度SW1を求めることになる。
なお、本実施形態では、内気導入口50aを全閉し、外気導入口50bを全開する場合を目標開度SW1=100%とし、内気導入口50aを全開し、外気導入口50bを全閉する場合を目標開度SW1=0%とする。
このように目標開度SW1を決定すると、この目標開度SW1に基づき、サーボモータ51aを制御して、内外気切換ドア51の開度を目標開度SW1に近づけるようにする(S140)。
次に、メモリに予め記憶される図11の特性、および目標吹出温度TAOに基づき、メモリに予め記憶される下記の数式3を用いて必要なブロア電圧VM(すなわち、必要な風量)を算出する。このようにブロア電圧VMを算出すると、このブロア電圧VMFをブロアモータ52aに印加する(S150)。これに伴い、遠心式送風機52が、空気流を発生させることになる。
次に、蒸発器吹出温度TeFrを一定温度に近づけるように自動車のエンジン及びコンプレッサの間にて連結される電磁クラッチを断続的に制御する(S160)。これに伴い、冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量が制御されて、エバポレータ53、63の冷却性能が調整されることになる。
その後、一定期間経過すると(S170:YES)、S110に移行して、目標吹出温度算出処理(S105)、エアミックスドア制御処理(S110)、冷風バイパスドア制御処理(S120)、吹出口モード切替制御処理(S130)、内外気切換ドア制御処理(S140)、ブロア制御処理(S150)、コンプレッサ制御処理(S160)が繰り返されることになる。
以上により、空調ユニット5において、内気導入口50aおよび外気導入口50bの少なくとも一方からダクト50内に空気が導入される。この導入される空気は、エバポレータ53を通過する際に冷媒と熱交換されて冷却される。
ここで、エアミックスドア55aによって、ヒータコア54を通過する空気量とバイパス通路51aを通過する空気量との割合が調節される。その後、ヒータコア54を通過する空気とバイパス通路51aを通過する空気とが混合されて、空気温度が調節されることになる。この温度調節される空気が、上述のように決定される吹出口モードに対応して吹出口100c、100dのいずれかから吹き出される。
ここで、この温度調節された空気の一部と冷風バイパス通路304aを通る空気とが混合されて、吹出口100a、100bのいずれかから車室内に吹き出されることになる。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態の車両用空調装置は、車室内の空調状態を調整する空調ユニット5と、車室内の運転座席に着座する運転者の表面温度を複数部位に分割してそれぞれ非接触で検出する各検出素子R1〜R36を有する赤外線温度センサ84と、運転者の車両前側から運転者の画像を検出するCCDカメラ85と、CCDカメラ85により検出される画像から運転者の輪郭を抽出して、この抽出された輪郭に赤外線温度センサ84による検出素子毎の検出温度を合成して運転者の上半身および下半身の温度分布を求め、この求められた上半身および下半身の温度分布に基づき、車室内の空調状態を調整させるように空調ユニット5を制御するエアコンECU90と、を備えており、赤外線温度センサ84は、乗員を見下ろすように配置されている。
このように、赤外線温度センサ84が、運転者の上半身の温度分布は勿論のこと、下半身の温度分布を推定でき、この上半身および下半身の温度分布に合う適切な空調を行うことができる。
また、本実施形態では、赤外線温度センサ84が、車室内天井部において車両左右方向のほぼ中央部にて運転席側に向けて運転者を見下ろすように配置されている。
すなわち、赤外線温度センサ84が、ステアリングの上側から垂直方向に対して斜めに運転者の表面温度を検出することになり、表面温度を検出するにあたり、ステアリングにより邪魔されることを未然に防ぎ得る。
また、CCDカメラ85を、車両左右方向の中央部に配置しているので、助手席に着座する乗員や後部席に着座する乗員の画像をも1つのCCDカメラ85により検出可能になる。
また、運転者の上半身の温度に比べて下半身の温度の方が高いと判定したとき、バイレベルモードを実施して空調ユニット5から上半身だけでなく下半身に冷風を吹き出させるので、下半身を冷やして運転者を快適にすることができる。
ここで、車室外の空気温度が一定温度(25℃)以上であると判定したとき、上半身の温度に比べて下半身の温度の方が高いか否かを判定していので、車室外の空気温度が一定温度未満であるときに、誤って下半身を冷やすことを未然に防止することができる。
さらに、乗員のうちドア側表面温度の方が、運転者の車両左右方向中央部側の表面温度に比べて高いとき、空調ユニット5から運転者の車両ドア側に冷風を吹き出させるので、運転者の車両ドア側を冷やして運転者を快適にすることができる。
また、運転者の上腕部の表面温度に比べて下腕部の表面温度の方が高いとき、運転者が半袖の服を着衣していると判定して、赤外線温度センサ84による検出素子毎の検出温度を半袖の服に合うように補正して、この補正された検出素子毎の検出温度を乗員の表面温度とする。
このように、検出素子毎の検出温度を半袖の服に合うように補正した温度を、乗員の表面温度とするので、この表面温度に基づき、空調ユニット5により車室内の空調状態を調整させれば、半袖の服に合うように車室内の空調状態を調整させることができる。
なお、赤外線温度センサ84として、助手席側の乗員温度を検出するための別のセンサを採用する場合に、赤外線温度センサ84を、上述のごとく、車室内上側にて車両左右方向の中央部に配置すると、運転席側の赤外線温度センサ84と助手席側の赤外線温度センサ84とを1つにパッケージにすることが可能になるので、運転席側の赤外線温度センサ84と助手席側の赤外線温度センサ84とを別々に採用する場合に比べて、コストダウンが可能になる。
さらに、赤外線温度センサ84を、車室内上側にて車両左右方向の中央部に配置すると、赤外線温度センサ84としては、ドア側から離れた場所に位置することになる。したがって、車両への侵入者が赤外線温度センサ84を覆うなどの不正な細工をして温度検出不能にすることを抑制することができる。
(第2実施形態)
本2実施形態では、CCDカメラ85による撮影画像を、携帯電話からの要求に応じて、携帯電話に送信するようにする。
この場合、図12に示すように、エアコンECU90には、車載アンテナ92を通して通信事業者の基地局100との間で無線通信する電話ECU91が接続されており、基地局100は、インターネット101などの通信ネットワークを介して、基地局102に通信する。そして、この基地局102は携帯電話103と無線通信するものである。
以下、本実施形態の作動について図13を用いて説明する。エアコンECU90は、図13に示す制御フローチャートにしたがって、コンピュータプログラムを実行する。
すなわち、エアコンECU90は、電話ECU91を介する携帯電話103と通信によって画像転送要求信号を受信したと判定したき(S400:YES)、CCDカメラ85による撮影画像が正常に入手されたか否かを判定する。例えば、例えば、当該画像を構成する画素毎の明るさが、一定範囲内に入っているとき、ノイズなどの外乱の影響を受けておらず、画像が正常に入手されたとして、S410でYESと判定する。これに伴い、CCDカメラ85による撮影画像を送信させる。
その後、撮影画像は、基地局100、インターネット101、基地局102等を介して携帯電話103に送られる。そして、携帯電話103においてその表示パネル等で、撮影画像を表示させれば、車両のユーザが、車両から離れていても、車室内に泥棒などの侵入者の存在を確認することができる。
なお、上述の第2実施形態では、CCDカメラ85による撮影画像を携帯電話103に送信した例について説明したが、これに代えて、マトリックス状IRセンサ84による部位毎の検出温度を送信するようにしてもよい。これは、部位毎の検出温度を温度分布画像(熱分布画像)として携帯電話103の表示パネル等で表示させれば、温度分布画像により、人、すなわち侵入者の有無が判定することができるからである。
また、これに代えて、CCDカメラ85による撮影画像と、マトリックス状IRセンサ84による部位毎の検出温度との双方を、携帯電話103に送信するようにしてもよい。
ここで、CCDカメラ85およびマトリックス状IRセンサ84が別の箇所に配置されているので、侵入者がCCDカメラ85およびマトリックス状IRセンサ84に対して同時に細工をすることが不可能である。このため、侵入者がCCDカメラ85およびマトリックス状IRセンサ84の一方の塞ぐように細工しようとしても、他方により侵入者が検出されるので、車両のセキュリティを向上させ得る。
(第3実施形態)
本第3実施形態では、本発明に係る車両用空調装置を後席用空調装置に適用する例について図14を用いて説明する。
図14は、本第実施形態の後席用空調装置の全体構成を示す図であり、図14中、図1と同一符号は同一物を示す。当該後席用空調装置は、図1に示す車両用空調装置に対して、冷風バイパス通路304a、ダクト300d、300eを削除して、後部座席の前後方向の位置を検出するスイッチSW1、SW2を追加したものである。
ここで、後部座席は、車両前後方向にスライドしてその位置が調整可能になっており、後部座席の位置が前側に設定されているときには、スイッチSW1がオンする一方、後部座席の位置が後側に設定されているときには、スイッチSW2がオンする。
また、本実施形態では、マトリックス状IRセンサ84は、図15に示すように、前部座席の後側にて後部座席の上側の天井部に位置して、かつ、車両左右方向の中央部に配置されて、後部座席に着座する乗員を見下して温度検出する。そして、マトリックス状IRセンサ84は、図16に示すように、検出素子1〜14を正方形状に並べて構成されている。
次に、本実施形態の作動について図17〜図19を参照して説明する。エアコンECU90は、図17に示す制御フローチャートにしたがって、コンピュータプログラムを実行する。図19は図17中の目標吹出温度算出処理(S510)の詳細を示すフローチャートである。
先ず、初期設定を処理した後(S500)、目標吹出温度を算出する(S510)。
具体的には、スイッチSW1、SW2から出力される信号に基づき、後部座席の位置(シート位置)が後側であると判定したとき、検出素子1〜14の個々の検出温度のうち、乗員の肩部温度(図18の上図中V3参照)として検出素子R6の検出温度を選択し、体部温度(図18の上図中V2参照)として検出素子R5の検出温度を選択し、太腿温度(図18の上図中V1参照)として検出素子R8の検出温度を選択する。
そして、検出素子R5、R6、R8の平均値を乗員温度TirFrDrとして、上述の第1実施形態と同様に目標吹出温度TAOを算出する(S511、S512、S514)。
一方、スイッチSW1、SW2から出力される信号に基づき、後部座席の位置(シート位置)が前側であると判定したとき、検出素子1〜14の個々の検出温度のうち、乗員の肩部温度(図18の下図中V3参照)として検出素子R5の検出温度を選択し、さらに、体部温度(図18の下図中V2参照)として検出素子R4の検出温度を選択し、太腿温度(図18の下図中V1参照)として検出素子R7の検出温度を選択する。
そして、検出素子R5、R6、R7の平均値を乗員温度TirFrDrとして、上述の第1実施形態と同様に目標吹出温度TAOを算出する(S511、S513、S514)。
そして、このように算出される目標吹出温度TAOに基づき、エアミックスドア制御処理(S520)、ブロア制御処理(S530)、吹出口モード切替制御処理(S540)、内外気切換ドア制御処理(S550)、コンプレッサ制御処理(S560)、一定期間経過判定処理(S570)を実行する。
なお、S510,S520、S530、S540、S550、S560、S570が、それぞれ、図1中のS105、S110、S150、S130、S140、S160、S170に相当する。
次に、本実施形態の作用効果について述べると、IRセンサ84は、後部座席の上側天井部において車両左右方向の中央部から後部座席に着座する乗員を見下して温度検出するように配置されているので、マトリックス状IRセンサ84の視野内にリア側ウインドシールドが入ることなく、乗員の表面温度を検出することができる。したがって、IRセンサ84としては、例えば、リア側ウインドシールドに空調風を吹き出するデフ機能(防曇機能)の影響を受けなくなる。したがって、乗員の表面温度を正確に検出することができる。これに伴い、乗員温度に応じて、後部座席側の空調状態を良好に調整することができる。
さらに、赤外線温度センサ84は、乗員を見下して温度検出するように配置されているので、乗員の身長差に関わらず、検出素子R1〜R15のうち、乗員の肩の表面温度を検出する検出素子R5が変わらず、固定されるので、予め肩の表面温度を検出する検出素子R5を決めおけば、後部座席の乗員の身長が代わっても、乗員の肩の表面温度が検出可能になる。
また、本実施形態では、後部座席の前後方向の位置に応じて、肩部温度、体部温度、太腿温度などを選択しているので、後部座席の前後方向の位置が移動しても、肩部温度、体部温度、太腿温度などを推定することができる。
また、マトリックス状IRセンサ84を、前部座席の前側に配置すると、前部座席の位置や前部座席の乗員の姿勢により、マトリックス状IRセンサ84の検出範囲内に前部座席の位置や前部座席の乗員が入り、マトリックス状IRセンサ84としての検出誤差の発生を招く可能性がある。
これに対して、本実施形態では、マトリックス状IRセンサ84を、前部座席の後側に配置するので、マトリックス状IRセンサ84の検出範囲内に前部座席の位置や前部座席の乗員が入ることを防止することができるので、マトリックス状IRセンサ84としての検出誤差の発生を抑制することができる。
特に、前部座席に対して座席の表面温度を調整するシート空調装置(シート空調手段)が適用されている場合には、マトリックス状IRセンサ84の検出範囲内に座席表面が含まれると、乗員の表面温度と座席の表面温度とが大きく異なるので、マトリックス状IRセンサ84としての検出誤差の発生を招くことになるものの、本実施形態では、このような問題の発生を避けることが可能である。
上述の第1実施形態では、CCDカメラ85を図2に示すように、車室内天井部のうち車両前側にて、かつ、車両左右方向の中央部付近にて配置する例について示したが、これに代えて、図20に示すように、CCDカメラ85をインストルメントパネルの車両左右方向中央部にて、運転者に向けて配置するようにしてもよい。