JP2005103684A - コロイド分散型ラッピング剤及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】現行のラッピング剤と同等以上のラッピング性能、転写防止効果を有するとともに、排水としての生分解性に優れ、環境負荷を低減できるコロイド分散型ラッピング剤を提供する。
【解決手段】ポリカルボン酸塩とコロイダルシリカとを含み、pHが9以上であることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】ポリカルボン酸塩とコロイダルシリカとを含み、pHが9以上であることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ウェーハの表面を研磨するラッピング剤及びその製造方法に関するものである。
半導体、セラミックス、水晶、ガラス、等の脆性材料がスライスされたウェーハ状の加工物は次工程に於いてウェーハ表面を砥粒が分散されたスラリー液を用いて表面を研磨する工程がある。一般的にこの工程を「ラップ工程」と称し、本工程に砥粒とともに使用される薬剤を「ラッピング剤」と称している。
従来から使用されているラッピング剤は、例えば、エタノールアミン、有機アミンや有機もしくはホウ素及びその化合物、無機酸及びキレート剤から構成される防錆剤と、「ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル」からなる界面活性剤とを含んでいる(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、上記ラッピング剤を構成する薬剤の中には化学物質管理促進法(Pollutant Release and Transfer Register、PRTR法)に指定されている化学物質が含まれているものもあり、昨今の環境問題からも敬遠されるようになっている。
すなわち、「ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル」に関しては、PRTR法第一種指定化学物質に該当しており、かつ内分泌攪乱物質(環境ホルモン)に指定されている関連からもその使用に関しては削減傾向にあり、ラッピング剤においてもその代替えを早急に用意する必要がある。
また、防錆剤に含まれる有機アミンに関しては、エタノールアミン(PRTR法:第1種指定化学物質)と亜硝酸との反応によって発ガン性物質であるニトロソアミンを生成する問題も提示されている。この条件を満たさなければ生成は生じないと一般的には言われるが、有機アミンを出発原料としてノックス:Nox(窒素酸化物、一酸化窒素や二酸化窒素等の総称)を容易に生成する可能性が指摘されており、やはりその代替えを早急に用意する必要がある。
また、防錆剤に含まれる有機アミンに関しては、エタノールアミン(PRTR法:第1種指定化学物質)と亜硝酸との反応によって発ガン性物質であるニトロソアミンを生成する問題も提示されている。この条件を満たさなければ生成は生じないと一般的には言われるが、有機アミンを出発原料としてノックス:Nox(窒素酸化物、一酸化窒素や二酸化窒素等の総称)を容易に生成する可能性が指摘されており、やはりその代替えを早急に用意する必要がある。
また、ラップ工程で使用され目的を果たした薬剤は環境中に排出する前には有機物を分解もしくは吸着し環境にとって無害な形態で排出する事が望ましく、環境規制が強化される昨今ではより厳しい処理が望まれている。
上記排水処理を踏まえれば、ラッピング剤中の有機物含有量を低減化する事が望ましいとの結論に到り、この事から無機物質を主成分とし、有機アミン化合物を含有せず、内分泌攪乱物質(環境ホルモン)を含まず、生分解性に富んだ物質から構成される事が望まれていた。
また、従来のラッピング剤は、防錆剤、界面活性剤を混合する事で防錆剤/界面活性剤間で分離と言う現象が生じる為に、使用前に2液以上の薬剤(防錆剤、界面活性剤)を適量配合して使用する構成となっており、作業上煩雑となる事から作業性のよい1液タイプのラッピング剤が望まれていた。
本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤は以上の要望に応えると共に、特徴的なコロイダルシリカを生成すると共に安定に分散させ、ラッピング剤に必要な浸透性及びウェーハ(シリコンウェーハ)の汚れ(転写)を防止する為に必要な界面活性剤の量を低減化することが可能で、砥粒の分散性に優れた水溶性ラップ剤を提供するものである。
本発明者らは、本発明に係るラッピング剤を開発するに当り、つぎの特性を有することをねらいとして検討を行った。
1)ラッピング性能
2)定盤転写防止
3)環境負荷低減
4)排水としての生分解性
1)ラッピング性能
2)定盤転写防止
3)環境負荷低減
4)排水としての生分解性
なお、遊離砥粒によるラッピング加工は砥粒の作用による被加工物表面の微少破壊によって生じ一般的に加工圧の増加と共に直線的に加工量が増す。この際の圧力は砥粒のラッピング界面へのもぐりこみへ影響し加工性にも影響を及ぼす事から加工圧の設定は高度な経験及び累積から判断される。基本的にラッピングに於ける研削は遊離砥粒が動的に加工物へ衝突もしくは転がりにより局部的に大きな応力を発生させ加工物表面を破壊させる事により不要の部分を切屑として除去し、希望の形状面をもった加工物を得る事にある。そのため、ラッピング剤が備えるべき特性としては、砥粒への作用と、ラッピング界面への砥粒の供給、及び切屑の排出が循環的に行われる事にあると考えられる。
以上よりラッピング剤の開発においてラッピング性能に関しては、「砥粒に濡れ易く分散性が良く」、遊離砥粒である事から分散される砥粒濃度が一定となる様「砥粒の保持能力を有する事」が必要で、かつ効果的に加工面へ砥粒を供給する為に「浸透性が高い事」が望まれる。
したがって、本開発に当っては上記特性に加えて兼備すべき性質として湿潤性(砥粒の分散性に関与)、砥粒の再分散性を有することが前提であった。
以上よりラッピング剤の開発においてラッピング性能に関しては、「砥粒に濡れ易く分散性が良く」、遊離砥粒である事から分散される砥粒濃度が一定となる様「砥粒の保持能力を有する事」が必要で、かつ効果的に加工面へ砥粒を供給する為に「浸透性が高い事」が望まれる。
したがって、本開発に当っては上記特性に加えて兼備すべき性質として湿潤性(砥粒の分散性に関与)、砥粒の再分散性を有することが前提であった。
発明者らは、上記特性及び性質を付与するために無機系主体の構成とする方針で検討を行い、その中で特定のコロイダルシリカが転写防止効果、ラッピング性能向上効果、防錆効果を示すことを見出し、さらに界面活性剤との組み合わせにおいて適正化を図ることにより本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は、ポリカルボン酸塩とコロイダルシリカとを含み、pHが9以上であることを特徴とするコロイド分散型ラッピング剤である。
(1)コロイド分散型ラッピング剤
本発明のコロイド分散型ラッピング剤における前記ポリカルボン酸塩は、次式(1)で表されるものである。
本発明のコロイド分散型ラッピング剤における前記ポリカルボン酸塩は、次式(1)で表されるものである。
(式中、M1、M2およびM3は同一または異なり、それぞれNa、Kまたはアンモニウムを表し、Rは水素原子またはメチル基、nは1以上の整数、mは0以上の整数で、n+mは40以下である。)
コロイド分散型ラッピング剤中の上記ポリカルボン酸塩の濃度は0.06wt.%以上、5wt.%以下であることが好ましく、0.06wt.%以上、1.5wt.%以下であることがより好ましい。
コロイド分散型ラッピング剤中のSiO2の濃度は、0.1wt.%以上、12.5wt.%以下であることが好ましく、0.1wt.%以上、9.0wt.%以下であることがより好ましい。0.1wt.%未満では砥粒の分散性や転写防止性の点で不十分であり、12.5wt.%を超える濃度ではコロイド分散型とするのが困難である。
上記ポリカルボン酸塩の濃度とSiO2の濃度との割合は、後記するコロイド分散型ラッピング剤の製造方法における各成分の原料であるポリカルボン酸アンモニウムとM2O・nSiO2に換算した時に、ポリカルボン酸アンモニウム:M2O・nSiO2=1:3.0〜4.5となるような濃度割合で含有していることが好ましい。この範囲外であると、コロイダルシリカを製造するのが困難となる。
本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤においては、ポリオキシアルキレンデシルエーテルをさらに含むことを好適とし、中でも前記ポリオキシアルキレンデシルエーテルは、HLBが10.5〜12.5のものであることが好ましい。
また、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤においては、高級アルコール系エチレンオキサイド(EO)/プロピレンオキサイド(PO)ブロックポリマーをさらに含むことを好適とし、中でも前記高級アルコール系EO/POブロックポリマーは、次式(2)で表されるものであることが好ましい。
(式中、RはC10H21を表し、aおよびbはa+bが10〜15となるような整数である。)
本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤中には、上記成分の他、任意の成分を含有させることができる。
(2)コロイド分散型ラッピング剤の製造方法
本発明のコロイド分散型ラッピング剤は、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液を珪酸塩水溶液中に加え、適宜水を加えて攪拌・混合してコロイダルシリカ分散溶液を生成することにより製造することができる。
本発明のコロイド分散型ラッピング剤は、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液を珪酸塩水溶液中に加え、適宜水を加えて攪拌・混合してコロイダルシリカ分散溶液を生成することにより製造することができる。
本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤の製造方法においては、前記攪拌・混合中に、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを添加することが望ましい。
本発明の製造方法は、より具体的には、上記コロイダルシリカ分散溶液をラッピング剤原液とし、これに必要に応じて各種界面活性剤類を添加し、次いで水で希釈することにより製造することができる。ラッピング剤原液に対する水の希釈率は、ラップ加工の条件等により適宜選択するようにすればよいが、原液が3〜5wt.%となるように水で希釈することが好ましい。しかし、この濃度(3〜5wt.%)に限定されるものではない。
以下に、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤の製造方法を、ラッピング剤原液であるコロイダルシリカ分散溶液の調製(A)と、界面活性剤の添加(B)に分けて詳細に説明する。
(A)コロイダルシリカ分散溶液の調製
コロイダルシリカ分散溶液は、従来のコロイダルシリカの製造方法とは異なる手順により得られる珪酸塩とポリカルボン酸塩から生成される溶液である。
コロイダルシリカ分散溶液は、従来のコロイダルシリカの製造方法とは異なる手順により得られる珪酸塩とポリカルボン酸塩から生成される溶液である。
従来のコロイダルシリカの製法に関しては、各種製造方法が提示されている。その中で代表的なものには以下のようなものがある。
(a)珪酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂とを接触させ、活性珪酸水溶液を調製し、活性珪酸水溶液とキレート化剤とを接触させた後、コロイド粒子を成長させる(特開2001−294417号公報)。
(b)珪酸アルカリに鉱酸を作用させシリカゲルとして沈殿物を生成させ、分離回収したシリカをキレート剤、過酸化水素にて洗浄処理して得る(特開2000−247625号公報)。
(c)陽イオン交換樹脂に接触させて脱アルカリし、必要に応じて陰イオン交換樹脂に接触させて脱アニオンし、活性珪酸を作成したのち、pHが8以上となるようアルカリ剤を添加し、60〜240℃に加熱して、活性珪酸からシリカゾルを作る(特開2002−338951号公報)。
(a)珪酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂とを接触させ、活性珪酸水溶液を調製し、活性珪酸水溶液とキレート化剤とを接触させた後、コロイド粒子を成長させる(特開2001−294417号公報)。
(b)珪酸アルカリに鉱酸を作用させシリカゲルとして沈殿物を生成させ、分離回収したシリカをキレート剤、過酸化水素にて洗浄処理して得る(特開2000−247625号公報)。
(c)陽イオン交換樹脂に接触させて脱アルカリし、必要に応じて陰イオン交換樹脂に接触させて脱アニオンし、活性珪酸を作成したのち、pHが8以上となるようアルカリ剤を添加し、60〜240℃に加熱して、活性珪酸からシリカゾルを作る(特開2002−338951号公報)。
これに対して、本発明において用いられるコロイダルシリカ分散溶液は、イオン交換樹脂を用いた活性珪酸水溶液の調整や、鉱酸との接触によるシリカの生成方法を用いず、直接的に珪酸塩とポリカルボン酸塩、詳しくはポリカルボン酸アンモニウムの作用によるイオン交換反応による活性珪酸を生成し、熱処理により生成された活性珪酸からコロイダルシリカが生成される事を特徴とする。
コロイダルシリカ分散溶液の製造方法における各条件の詳細を以下に説明する。
コロイダルシリカ分散液は、珪酸塩とポリカルボン酸塩との作用により生成する。
珪酸塩とポリカルボン酸塩、詳しくはポリカルボン酸アンモニウムの作用によるイオン交換反応により生成する活性珪素は、作用する際の濃度に依存しポリカルボン酸アンモニウムの有効成分含有量(質量)を「1」に換算した濃度に対して、珪酸塩はM2O・nSiO2としての有効成分含有量(質量)を「3.0〜4.5」に換算した濃度で作用させる事が望ましい。珪酸塩の比が3.0以下であれば効果的なコロイダルシリカの生成がなく、逆に4.5以上になれば急速にゲルを生じてしまい目的に適さない為である。
ここで、ポリカルボン酸塩、珪酸塩は、通常それぞれ45〜50wt.%、20〜50wt.%に希釈された水溶液の状態である。そのため、例えばポリカルボン酸塩として45wt.%、珪酸塩として30wt.%の水溶液を原料として用いる場合にはポリカルボン酸塩水溶液10gに対して珪酸塩水溶液を45〜67.5g作用させることとなる。
コロイダルシリカ分散液は、珪酸塩とポリカルボン酸塩との作用により生成する。
珪酸塩とポリカルボン酸塩、詳しくはポリカルボン酸アンモニウムの作用によるイオン交換反応により生成する活性珪素は、作用する際の濃度に依存しポリカルボン酸アンモニウムの有効成分含有量(質量)を「1」に換算した濃度に対して、珪酸塩はM2O・nSiO2としての有効成分含有量(質量)を「3.0〜4.5」に換算した濃度で作用させる事が望ましい。珪酸塩の比が3.0以下であれば効果的なコロイダルシリカの生成がなく、逆に4.5以上になれば急速にゲルを生じてしまい目的に適さない為である。
ここで、ポリカルボン酸塩、珪酸塩は、通常それぞれ45〜50wt.%、20〜50wt.%に希釈された水溶液の状態である。そのため、例えばポリカルボン酸塩として45wt.%、珪酸塩として30wt.%の水溶液を原料として用いる場合にはポリカルボン酸塩水溶液10gに対して珪酸塩水溶液を45〜67.5g作用させることとなる。
また、ポリカルボン酸塩と珪酸塩との作用に於いて、作用時のM2O・nSiO2濃度が高濃度であると、生成された活性珪酸水溶液が凝集もしくはポリマーを形成し安定なコロイダルシリカを生成できない。継続的安定的にコロイダルシリカを生成させるためにはM2O・nSiO2濃度を20wt.%以下で行う必要がある。更に60℃以上(好ましくは60〜70℃)の加温下にてポリカルボン酸塩と珪酸塩とを作用させてコロイダルシリカを効果的に生成させることが行われるが、加温により水分が蒸発しM2O・nSiO2濃度変化が生じることから、加温時のM2O・nSiO2濃度は15wt.%以下とする事が望ましい。
なお、使用する珪酸塩が20〜50wt.%水溶液である場合には、純水にて希釈して上記M2O・nSiO2濃度とすればよい。
なお、使用する珪酸塩が20〜50wt.%水溶液である場合には、純水にて希釈して上記M2O・nSiO2濃度とすればよい。
以上のことから、ポリカルボン酸塩と珪酸塩とを作用させるに際しては、まず常温下にてポリカルボン酸塩と珪酸塩とを可能な限り高濃度環境で作用させ、ついで加温を行う際には純水で希釈しM2O・nSiO2濃度を低下させることにより安定なコロイダルシリカを生成させることができる。このとき、希釈のために純水に代えてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを0.5wt.%以下含む溶液を添加してもよい。この溶液を添加することでコロイダルシリカの長期安定性が保たれる。
常温下にてポリカルボン酸塩と珪酸塩とを作用させるのは、初段階にてイオン交換により可能な限り多くのアンモニアを放出させ、溶液中には活性珪酸を生成する必要がある為である。更に加温に於いて反応(アンモニアの遊離)を効果的に進行させ、活性珪素からシリカを生成する。尚、用いるポリカルボン酸塩はポリカルボン酸アンモニウムでなければならず、ポリカルボン酸ナトリウム(もしくはカリウム)では、本反応には寄与できない。
つぎに、コロイダルシリカ分散溶液の反応過程について説明する。
(i)珪酸塩
珪酸塩は、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムの何れでもよく、次式で表されるものである。
M2O・nSiO2
(Mはカリウムまたはナトリウム、nは1〜4)
また、高濃度のコロイダルシリカを生成するにはM2O・nSiO2濃度の高い珪酸塩を用いれば良い。ただし、Naイオンは半導体には敬遠される為、半導体用の用途ではカリウムが望ましい。
(i)珪酸塩
珪酸塩は、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムの何れでもよく、次式で表されるものである。
M2O・nSiO2
(Mはカリウムまたはナトリウム、nは1〜4)
また、高濃度のコロイダルシリカを生成するにはM2O・nSiO2濃度の高い珪酸塩を用いれば良い。ただし、Naイオンは半導体には敬遠される為、半導体用の用途ではカリウムが望ましい。
また、珪酸塩は一般的に、M+、SiO3 ― ―、HSiO3 −、OH−イオンを含み、状況によって水和または重合した珪酸及び少量の解離しないM2SiO3、MHSiO3が含まれている(Mは一般的にアルカリ金属のNaやKを示す。)。このとき、シロキサン基〔−O−Si−O―〕nにOHあるいはOMが結合し、M+は強固に水和されている為、その結合は弱められた状態にある。
珪酸塩は水溶液中では次式のように平衡状態を保つ。
M2O・nSiO2 + H2O ←→ nSiO2 + 2MOH
この状態の溶液にポリカルボン酸塩を作用させた際の反応を次に説明する。
M2O・nSiO2 + H2O ←→ nSiO2 + 2MOH
この状態の溶液にポリカルボン酸塩を作用させた際の反応を次に説明する。
(ii)珪酸塩とポリカルボン酸との反応
本発明におけるポリカルボン酸塩の構造は式(3)に示すように、平均分子量は10000で、単量体中にはアンモニウム基が3つ含まれた構造である。すなわち、本発明において作用させるポリカルボン酸塩はポリカルボン酸アンモニウムでなければならない。本物質を用いれば、微量で珪酸塩に作用しイオン交換が行われ、コロイダルシリカを生成することができる。例えば、低分子のカルボン酸塩でクエン酸アンモニウムを用いた場合は、多量のクエン酸アンモニウムを添加する必要が生じ、実質的にコロイダルシリカ生成反応を誘発することができないが、本発明では高分子のポリカルボン酸アンモニウムを用いる事で達成できる。
また、本発明で使用するポリカルボン酸塩そのものはコロイドの生成だけではなく、生成する二酸化珪素(SiO2)の凝集を防いでコロイドを安定化させる分散、キレート効果があり、さらにラッピング剤における防錆効果も有することから、コロイダルシリカ分散溶液に含まれるポリカルボン酸塩はラッピング剤の一成分として有効に作用する。そのため、界面活性剤の添加量を低減することができる。
本発明におけるポリカルボン酸塩の構造は式(3)に示すように、平均分子量は10000で、単量体中にはアンモニウム基が3つ含まれた構造である。すなわち、本発明において作用させるポリカルボン酸塩はポリカルボン酸アンモニウムでなければならない。本物質を用いれば、微量で珪酸塩に作用しイオン交換が行われ、コロイダルシリカを生成することができる。例えば、低分子のカルボン酸塩でクエン酸アンモニウムを用いた場合は、多量のクエン酸アンモニウムを添加する必要が生じ、実質的にコロイダルシリカ生成反応を誘発することができないが、本発明では高分子のポリカルボン酸アンモニウムを用いる事で達成できる。
また、本発明で使用するポリカルボン酸塩そのものはコロイドの生成だけではなく、生成する二酸化珪素(SiO2)の凝集を防いでコロイドを安定化させる分散、キレート効果があり、さらにラッピング剤における防錆効果も有することから、コロイダルシリカ分散溶液に含まれるポリカルボン酸塩はラッピング剤の一成分として有効に作用する。そのため、界面活性剤の添加量を低減することができる。
(R:水素原子又はメチル基、nは1以上の整数、mは0以上の整数で、n+mの合計は40以下、M4,M5,M6はすべてアンモニウム)
珪酸塩とポリカルボン酸アンモニウムとの反応においては、珪酸塩の溶液に解離しているMOHとの反応によりイオン交換が生じ、アンモニア(NH3)を遊離し空気中に放出する(式(4))。
そして、最終的に式(1)に示すようなポリカルボン酸塩となる。
そして、最終的に式(1)に示すようなポリカルボン酸塩となる。
(式中、M1、M2およびM3は同一または異なり、それぞれNa、Kまたはアンモニウムを表し、Rは水素原子またはメチル基、nは1以上の整数、mは0以上の整数で、n+mは40以下である。)
(iii)コロイダルシリカの生成
珪酸塩(M2O・nSiO2)は構造中のMイオンを失うことにより、ポリマーを生成せずに活性珪素となり二酸化珪素(SiO2)が単離した状態となり、溶液中に二酸化珪素(SiO2)が分散したコロイド溶液が生成される。
ここで珪酸塩が酸によってSi−OMがSi−OHに置換され、加水分解される場合、あるいはアルコールの添加などによりSiO2の酸素原子がアルキルキ基(Rで表す)に置き換えられ、ケイ酸鎖の架橋が起こる場合には、以下に示す構造式の直鎖ポリマーが生成され、ゲル化を生じてしまう為、溶液状を保つことが出来ない。しかし、本反応(式(4))に於いてはこの場合には該当せず、直鎖ポリマーを生成せずに二酸化珪素(SiO2)を生成していると考えられる。
珪酸塩(M2O・nSiO2)は構造中のMイオンを失うことにより、ポリマーを生成せずに活性珪素となり二酸化珪素(SiO2)が単離した状態となり、溶液中に二酸化珪素(SiO2)が分散したコロイド溶液が生成される。
ここで珪酸塩が酸によってSi−OMがSi−OHに置換され、加水分解される場合、あるいはアルコールの添加などによりSiO2の酸素原子がアルキルキ基(Rで表す)に置き換えられ、ケイ酸鎖の架橋が起こる場合には、以下に示す構造式の直鎖ポリマーが生成され、ゲル化を生じてしまう為、溶液状を保つことが出来ない。しかし、本反応(式(4))に於いてはこの場合には該当せず、直鎖ポリマーを生成せずに二酸化珪素(SiO2)を生成していると考えられる。
(B)界面活性剤の添加
本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤の製造にあたっては、例えばコロイダルシリカ分散溶液91〜95wt.%に対して各種特性や目的に合致した界面活性剤を配合して一液型のラッピング剤とする。
一例として、ポリオキシアルキレンデシルエーテルを2〜3wt.%添加し、高級アルコール系EO/POブロックポリマー重合体を3〜6wt.%添加すればよい。ポリオキシアルキレンデシルエーテルが2wt.%未満では砥粒の分散性や砥粒のラップ界面への侵入性が不充分となり、高級アルコール系EO/POブロックポリマー重合体が3wt.%未満では転写防止効果と防錆補助効果とが不充分となる。また、ポリオキシアルキレンデシルエーテルについて3wt.%、高級アルコール系EO/POブロックポリマー重合体について6wt.%を上限とするのは発泡性等の環境対策のためである。
本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤の製造にあたっては、例えばコロイダルシリカ分散溶液91〜95wt.%に対して各種特性や目的に合致した界面活性剤を配合して一液型のラッピング剤とする。
一例として、ポリオキシアルキレンデシルエーテルを2〜3wt.%添加し、高級アルコール系EO/POブロックポリマー重合体を3〜6wt.%添加すればよい。ポリオキシアルキレンデシルエーテルが2wt.%未満では砥粒の分散性や砥粒のラップ界面への侵入性が不充分となり、高級アルコール系EO/POブロックポリマー重合体が3wt.%未満では転写防止効果と防錆補助効果とが不充分となる。また、ポリオキシアルキレンデシルエーテルについて3wt.%、高級アルコール系EO/POブロックポリマー重合体について6wt.%を上限とするのは発泡性等の環境対策のためである。
(a)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
HLB10.5〜12.5のものとしてはつぎの構造式のものが挙げられる。本物質は浸透性、表面張力低下能、生分解性に富み、砥粒分散性や砥粒のラップ界面への侵入性を補助する。
また、平均分子量は1000のものが適切である。なお、アルキル基としては炭素原子数が8〜11のアルキル基が挙げられる。
HLB10.5〜12.5のものとしてはつぎの構造式のものが挙げられる。本物質は浸透性、表面張力低下能、生分解性に富み、砥粒分散性や砥粒のラップ界面への侵入性を補助する。
また、平均分子量は1000のものが適切である。なお、アルキル基としては炭素原子数が8〜11のアルキル基が挙げられる。
(式中、RはC10H21を表し、mは1〜3、nは10以上の整数である。)
(b)高級アルコール系EO/POブロックポリマー
式(2)に示す構造式のものが好ましい。
本物質は構造としてエチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とからなり、水中で会合することにより疎水部を内核、親水部を外殻とする会合体(直径20〜50nmのコロイドの1種、高分子ミセル)を形成し、ウェーハの転写(シミ)を防止する効果と防錆を補助する効果とがある。また、コロイダルシリカ分散溶液との相溶性がよく、長期安定性に優れる性質を有する。
なお、平均分子量は1500のものが適切であり、アルキル基としては炭素原子数が8〜11のものが挙げられる。
式(2)に示す構造式のものが好ましい。
本物質は構造としてエチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とからなり、水中で会合することにより疎水部を内核、親水部を外殻とする会合体(直径20〜50nmのコロイドの1種、高分子ミセル)を形成し、ウェーハの転写(シミ)を防止する効果と防錆を補助する効果とがある。また、コロイダルシリカ分散溶液との相溶性がよく、長期安定性に優れる性質を有する。
なお、平均分子量は1500のものが適切であり、アルキル基としては炭素原子数が8〜11のものが挙げられる。
また、EO、POはそれぞれつぎに示す構造の基である。
界面活性剤の添加量は必要とされる特性に応じて種々の組み合わせが考えられる。また、生分解性を考慮すると、アルキル基としての炭素数は低いほうが有利であり、分子量は低いほど良い。よって現状に於いてはデシル基を持つものが適切であり、分子量としては2000以下である事が生分解性としては好ましい化学的構成となる。
よって本発明で使用する界面活性剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、高級アルコール系EO/POブロックポリマーそれぞれが上記構造を有し、アルキル基の炭素数としてはC8〜C11の範囲内であり、その分子量は900〜2000であることを特徴とする。なお、界面活性剤は発泡性に影響を及ぼし、ラップ加工時の作業時に支障をきたす事から概ね全体量で5wt.%以上、10wt.%以下の含有量であることが望ましい。各成分の配合量は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが2〜3wt.%、高級アルコール系EO/POブロックポリマーが3〜6wt.%が適当である。また、必要に応じ保湿剤として多糖類、3価のグリコールを添加することができ、その添加量としては相溶性の観点から10wt.%以下が適切である。
この界面活性剤を添加した液をコロイド分散型ラッピング剤の原液とする。なお、この原液には珪酸塩が8〜15wt.%、ポリカルボン酸塩が2〜5wt.%含まれるようになる。
よって本発明で使用する界面活性剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、高級アルコール系EO/POブロックポリマーそれぞれが上記構造を有し、アルキル基の炭素数としてはC8〜C11の範囲内であり、その分子量は900〜2000であることを特徴とする。なお、界面活性剤は発泡性に影響を及ぼし、ラップ加工時の作業時に支障をきたす事から概ね全体量で5wt.%以上、10wt.%以下の含有量であることが望ましい。各成分の配合量は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが2〜3wt.%、高級アルコール系EO/POブロックポリマーが3〜6wt.%が適当である。また、必要に応じ保湿剤として多糖類、3価のグリコールを添加することができ、その添加量としては相溶性の観点から10wt.%以下が適切である。
この界面活性剤を添加した液をコロイド分散型ラッピング剤の原液とする。なお、この原液には珪酸塩が8〜15wt.%、ポリカルボン酸塩が2〜5wt.%含まれるようになる。
なお、コロイダルシリカ分散溶液は単独では有効なラッピング剤としては作用し難い。この場合には、1)液性の浸透力不足によるラップ界面への砥粒もぐり込みの不足による研削性の低下、2)ラップ後のウェーハが金属間接触等による電気的影響でウェーハ表面に汚れ(転写)が生じる等が想定される。
従来のラッピング剤に於いて、防錆剤と界面活性剤とが処方されるのは以上の影響を回避する為であり、本現象は簡易的な実験に於いても確認されている。この実験ではポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルは強力な浸透作用を有し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルはウェーハの汚れ(転写)を防止する効果を有することが明らかとなり、更にこれらの界面活性剤は砥粒の濡れ性を改善する効果がある為、砥粒の分散性を改善する効果を有していた。特にウェーハの汚れ(転写)はウェーハと金属が密に接した際に生じる現象である事が確かめられ、金属間接触を阻害する因子として界面活性剤の吸着分子が有効に作用する事が認められた。
これに対して、本発明ではポリオキシアルキレンアルキルエーテルの代替として高級アルコール由来のEO/POブロックポリマーを利用する。また、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの代替として浸透性を付与するにはポリオキシアルキレンデシルエーテルを利用し、HLBの範囲としては10.5〜12.5の範囲内のものを使用する。転写防止に関しては、高級アルコール系EO/POブロックポリマーとともに、コロイダルシリカ分散溶液中のコロイダル粒子が金属間に滞在する為にウェーハの汚れ(転写)を防止する効果を有する。
これによりウェーハの汚れ(転写)に必要な界面活性剤量を減少させる付加的効果を有し、前述のポリカルボン酸塩の界面活性剤量の低減効果とあいまって、有機物含有量を従来品よりも低減することができることから、CODの低下が可能となり、環境対策、排水処理性に優れたラッピング剤とすることができる。さらに、ラップ加工で使用した後のラッピングスラリー溶液において砥粒と分離する後処理も容易となる。
排水処理においては、CODやBODが管理基準の目安として一般的に用いられている。
CODはChemical Oxygen Demandの略で、化学的酸素要求量である。水中の被酸化物質、主として有機物を酸化剤によって酸化するときに消費される酸素の量を言い、おもに海域と湖沼の汚濁の指標としてもちいられ、排水基準や環境基準に利用されている。
CODはChemical Oxygen Demandの略で、化学的酸素要求量である。水中の被酸化物質、主として有機物を酸化剤によって酸化するときに消費される酸素の量を言い、おもに海域と湖沼の汚濁の指標としてもちいられ、排水基準や環境基準に利用されている。
BODはBiochemical Oxygen Demandの略で、生物化学的酸素要求量である。このBODが高い事は好気性微生物が利用できる有機物が多く含まれている事を間接的に示しており、好気性微生物が有機物を分解する過程に於いて、酸素と水が必要(例外もある)であり、その結果炭酸ガスと水が排出されるが、この時に水中に含まれる有機物の量が多いほど必要な酸素の量も多くなり、そこでその酸素量を用いて水中の有機物量を計るモノサシとしようという事で考えられたのがBODであるので、BODは有機物含有量に依存する。
なお、検水中に毒性物質がふくまれている場合には正確なBODの測定ができず、BODよりも短時間で測定できる利点もあるため、排水管理にはCODが一般的に用いられている。
なお、検水中に毒性物質がふくまれている場合には正確なBODの測定ができず、BODよりも短時間で測定できる利点もあるため、排水管理にはCODが一般的に用いられている。
本発明において使用される界面活性剤は生分解性に富み、表1に示すように従来品よりもCODの値としても低いことから排水処理における生分解性がよいといえる。
本発明によれば、現行のラッピング剤と同等以上のラッピング性能、転写防止効果を有するとともに、排水としての生分解性に優れ、環境負荷を低減できるコロイド分散型ラッピング剤を提供することができる。
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。配合量はwt.%である。
(1)試料の調製
まず、ラッピング剤の一成分となるコロイダルシリカ分散溶液の製造方法について図1を参照しながら以下に説明する。
ここでは操作を簡略化するために以下の調整液を作製し、次の手順に従ってコロイド溶液を作成する。
A調整液:珪酸カリウム溶液(30wt.%水溶液)
B調整液:ポリカルボン酸アンモニウム(7.5wt.%水溶液)
まず、ラッピング剤の一成分となるコロイダルシリカ分散溶液の製造方法について図1を参照しながら以下に説明する。
ここでは操作を簡略化するために以下の調整液を作製し、次の手順に従ってコロイド溶液を作成する。
A調整液:珪酸カリウム溶液(30wt.%水溶液)
B調整液:ポリカルボン酸アンモニウム(7.5wt.%水溶液)
(s1)A調整液25wt.%に対して、B調整液22wt.%を常温常圧下で攪拌を伴いながら作用させる(珪酸カリウムとしての実質濃度15.9wt.%)
この段階でアンモニアの遊離による空気中への放出が、臭気や水にて湿らせたリトマス紙の変化(赤→青)から確認される。攪拌はリトマス紙の変化が減退するまで常温常圧下にて行う。この過程で活性珪素が生成される。
この段階でアンモニアの遊離による空気中への放出が、臭気や水にて湿らせたリトマス紙の変化(赤→青)から確認される。攪拌はリトマス紙の変化が減退するまで常温常圧下にて行う。この過程で活性珪素が生成される。
(s2)上記溶液状態で加温すると不安定になるため、純水を11wt.%添加して、珪酸カリウムを低下させる(珪酸カリウムとしての実質濃度は12.9wt.%に低下する。)。
純水添加溶液を60℃以上(好ましくは60〜70℃)の加温を行うことにより、一旦減退していたアンモニアの遊離が促進され、再び湿らせたリトマス紙の変化(赤→青)が鋭敏になる。
このとき、アンモニアの遊離が進行するに従い、溶液は無色透明から微白濁→白濁と色調が変化する。この変化は活性珪素からシリカ(二酸化珪素、SiO2)が生成された状態である。
純水添加溶液を60℃以上(好ましくは60〜70℃)の加温を行うことにより、一旦減退していたアンモニアの遊離が促進され、再び湿らせたリトマス紙の変化(赤→青)が鋭敏になる。
このとき、アンモニアの遊離が進行するに従い、溶液は無色透明から微白濁→白濁と色調が変化する。この変化は活性珪素からシリカ(二酸化珪素、SiO2)が生成された状態である。
(s3)ステップs2の状態で反応を継続させると生成されたシリカが凝集し粗大化する事でコロイダルシリカの状態を保持できない為、継続的安定的な反応を進行させる為に純水を20wt.%添加し珪酸カリウム濃度を低下させる(珪酸カリウムとしての実質濃度は9.6wt.%に低下する。)。
あるいは、純水に代えて、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを0.5wt.%以下含む溶液を添加してもよい。図1ではその場合を示している。この溶液を添加することでコロイダルシリカの長期安定性が保たれる。
あるいは、純水に代えて、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを0.5wt.%以下含む溶液を添加してもよい。図1ではその場合を示している。この溶液を添加することでコロイダルシリカの長期安定性が保たれる。
(s4)ステップs3の状態までの溶液を継続的に昇温加温を行い、加温に於いて上昇した液温は純水残分の22wt.%分を用いて随時補充し、液温が60〜70℃(好ましくは70±2℃)の範囲内になるように調整する。これを継続し、湿らせたリトマス紙の変化(赤→青)が生じなくなるまで加温攪拌を行う。なお、液温調整用の純水を全量使用後は昇温器の出力を調整して液温調整を行うとよい。
(s5)反応が完了に達したなら、加温を停止し、常温下にて放冷する。液温が30℃以下に達したならば蒸発によって失われた水分量を計量し不足分を補充する。
以上の操作にてコロイダルシリカ分散溶液を得る。
以上の操作にてコロイダルシリカ分散溶液を得る。
次に、上述の方法により珪酸塩とポリカルボン酸塩から生成したコロイダルシリカ分散溶液を95wt.%、ポリオキシアルキレンデシル(C10系)エーテル(HLB11.6)を2wt.%、高級アルコール系EO/POブロックポリマー重合体を3wt.%となるように混合し、この混合液を原液とした(表2)。
この原液に純水を添加し、コロイド分散型ラッピング剤(原液)3.0wt.%、純水97.0wt.%の希釈溶液(以下、コロイド分散型ラッピング剤)とし、とくに断らない限り以下の実施例のサンプルとして試験に供した。
この原液に純水を添加し、コロイド分散型ラッピング剤(原液)3.0wt.%、純水97.0wt.%の希釈溶液(以下、コロイド分散型ラッピング剤)とし、とくに断らない限り以下の実施例のサンプルとして試験に供した。
また、現行のラッピング剤組成物を比較例サンプルとした。
従来のラッピング剤は水溶液に砥粒を分散したスラリー溶液と添加剤から構成される。すなわち「水溶液45リットル中に砥粒FO#1200が22.2wt.%含有されているスラリー液」99wt.%に対し、添加剤として「防錆剤(エタノールアミン、ホウ素及びその化合物)」と「非イオン界面活性剤又はプルロニック型ポリエーテル界面活性剤」が等量の250mlと、本添加剤総量に対して1/8〜1/9重量分のフェニルエーテル系界面活性剤50mlの混合物Aが1wt.%含有されるスラリー液であり、その組成は水溶液及び砥粒の分散溶液と添加剤の混合物Aの構成から構築される。
ラップ加工の際には上記スラリー溶液の状態で使用されるが、以下の試験ではとくに断らない限り、上記ラッピングスラリー液組成から砥粒を除いた組成に換算した溶液(上記添加剤混合物A1.27wt.%、純水98.73wt.%、以下現行ラッピング剤組成物)を比較例のサンプルとして試験に供した。
従来のラッピング剤は水溶液に砥粒を分散したスラリー溶液と添加剤から構成される。すなわち「水溶液45リットル中に砥粒FO#1200が22.2wt.%含有されているスラリー液」99wt.%に対し、添加剤として「防錆剤(エタノールアミン、ホウ素及びその化合物)」と「非イオン界面活性剤又はプルロニック型ポリエーテル界面活性剤」が等量の250mlと、本添加剤総量に対して1/8〜1/9重量分のフェニルエーテル系界面活性剤50mlの混合物Aが1wt.%含有されるスラリー液であり、その組成は水溶液及び砥粒の分散溶液と添加剤の混合物Aの構成から構築される。
ラップ加工の際には上記スラリー溶液の状態で使用されるが、以下の試験ではとくに断らない限り、上記ラッピングスラリー液組成から砥粒を除いた組成に換算した溶液(上記添加剤混合物A1.27wt.%、純水98.73wt.%、以下現行ラッピング剤組成物)を比較例のサンプルとして試験に供した。
(2)物性比較(実施例1)
実施例1(コロイド分散型ラッピング剤)と比較例1(現行ラッピング剤組成物)との物性比較を表3に示す。また、実施例1については、コロイド分散型ラッピング剤(原液)とその原液を純水で5.0wt.%に希釈した水溶液とについても物性を調査した。
実施例1(コロイド分散型ラッピング剤)と比較例1(現行ラッピング剤組成物)との物性比較を表3に示す。また、実施例1については、コロイド分散型ラッピング剤(原液)とその原液を純水で5.0wt.%に希釈した水溶液とについても物性を調査した。
なお、泡立て試験はつぎの手順で行った。
(i)ビーカーに試料を200ml以上取り、25℃±0.5℃の温度範囲内で、清浄な1000mlメスシリンダーを傾けて、試料をその内壁に沿って気泡が入らないように静かに注ぎ込み200ml計り取る。この時にシリンダーを回転させ側壁全面を濡らすようにする。
(i)ビーカーに試料を200ml以上取り、25℃±0.5℃の温度範囲内で、清浄な1000mlメスシリンダーを傾けて、試料をその内壁に沿って気泡が入らないように静かに注ぎ込み200ml計り取る。この時にシリンダーを回転させ側壁全面を濡らすようにする。
(ii)次にデュフェーザーストーン、ガラス管、送気ポンプをビニールチューブで接合したものを挿入し、デュフェーザーストーンの中心を100mlの目盛りに合わせる。
(iii)測定を開始する。エアー送気量5リットル/minで送気を開始し、気泡が1000mlに達した時点で送気を停止し、300mlの目盛りまで消泡する時間を計測する。試験は5回行った。
表3の結果より、コロイド分散型ラッピング剤は発泡性は有するが、現行のラッピング剤組成物と比較すると優れた消泡性を有することが確認され、ポリオキシアルキレンデシルエーテル(C10アルコール系界面活性剤)の表面張力低下能が十分発揮されていることが認められた。また、現行ラッピング剤の発泡はポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルに起因しており、本発明ではポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルからポリオキシアルキレンデシルエーテルに切り換えることによって、現行ラッピング剤の発泡性を改善しつつ表面張力低下能を保持する特性を付与することが達成されている。
また、ポリオキシアルキレンデシルエーテルに関して特筆すべき点は動的表面張力(バブルプレッシャー法:液中に気泡を発生させ、液体からその気泡にかかる圧力から表面張力を測定する。)低下能に優れている点である。この特性は「常に表面が新しく形成される状態にあり、かつ瞬間(表面が出来てすぐ)における界面活性剤の吸着効果を判定する」ことを目的とする特性であり、ラップ加工など研削と言う環境で常に新しい面が形成される環境に於いてその表面を速やかに濡らす性質に寄与していると考えられる。
また、ポリオキシアルキレンデシルエーテルに関して特筆すべき点は動的表面張力(バブルプレッシャー法:液中に気泡を発生させ、液体からその気泡にかかる圧力から表面張力を測定する。)低下能に優れている点である。この特性は「常に表面が新しく形成される状態にあり、かつ瞬間(表面が出来てすぐ)における界面活性剤の吸着効果を判定する」ことを目的とする特性であり、ラップ加工など研削と言う環境で常に新しい面が形成される環境に於いてその表面を速やかに濡らす性質に寄与していると考えられる。
(3)COD(実施例2)
実施例2(コロイド分散型ラッピング剤)、比較例2(現行ラッピング剤組成物)のCOD値を測定した結果を表4に示す。なお、COD値測定に当っては、東亜電波工業(株)製簡易式CODメーターCOD−50Sを使用し、過マンガン酸カリウム法による測定を3回行い、その平均を求めた。
実施例2(コロイド分散型ラッピング剤)、比較例2(現行ラッピング剤組成物)のCOD値を測定した結果を表4に示す。なお、COD値測定に当っては、東亜電波工業(株)製簡易式CODメーターCOD−50Sを使用し、過マンガン酸カリウム法による測定を3回行い、その平均を求めた。
表4の結果から、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤は排水処理性に関して十分に改善されていることが確認された。特に、現行ラッピング剤ではポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのCOD値が極めて高い(1wt.%換算値12380mg/l、原液換算値1238000mg/l、表1)のに対して、本発明では無機系が主体であるコロイダルシリカ分散溶液のCOD値が極めて低い(1wt.%換算値49.6mg/l、原液換算値4956.0mg/l)ことがラッピング剤のCOD値の差異として現れている。
(4)砥粒分散性(実施例3)
分散とは粉体が有する粒子径に於いて溶液中に浮遊している状態を示し、この状態を一次粒子での状態と称されるが、分散状態が悪ければ粒子同士が寄り集まって(凝集して)、二次粒子、三次粒子を形成し粒子が粗大化する。本実施例では、その分散状態(凝集状態の強弱)に着目し、粒子径の異なる粉体を複数混合した粉体を用いて溶液中に通常どおり分散を行い、沈降し堆積を生じた層の状態から分散状態(凝集状態の強弱)の確認を行った。これにより分散性が悪ければ粒子同士が寄り集まり(凝集)沈降堆積層は一層となり、分散性が良ければ一次粒子径を保ちながら(本来の分散性が発揮されている)沈降し沈降堆積層は混合した種類分だけの層を形成(2種類混合すれば2層になる)することとなる。
分散とは粉体が有する粒子径に於いて溶液中に浮遊している状態を示し、この状態を一次粒子での状態と称されるが、分散状態が悪ければ粒子同士が寄り集まって(凝集して)、二次粒子、三次粒子を形成し粒子が粗大化する。本実施例では、その分散状態(凝集状態の強弱)に着目し、粒子径の異なる粉体を複数混合した粉体を用いて溶液中に通常どおり分散を行い、沈降し堆積を生じた層の状態から分散状態(凝集状態の強弱)の確認を行った。これにより分散性が悪ければ粒子同士が寄り集まり(凝集)沈降堆積層は一層となり、分散性が良ければ一次粒子径を保ちながら(本来の分散性が発揮されている)沈降し沈降堆積層は混合した種類分だけの層を形成(2種類混合すれば2層になる)することとなる。
(試験方法)
100mlメスシリンダーに、砥粒GC#2000(平均粒子径7.9μm)質量「1」に対して、砥粒WA#4000(平均粒径5.7μm)を質量「2」混合したもの(混合砥粒)を20g入れ、分散性を評価するサンプル(実施例3(コロイド分散型ラッピング剤)、比較例3(現行ラッピング剤組成物))を95g入れた後、100mlのスラリー液となるように調合し、砥粒の分散を行った。ついで、そのスラリー液を静置し、24時間後の沈降堆積した砥粒層の状態を目視で確認した。
なお、評価用のラッピング剤は希釈調製する際に水道水を用いた。
100mlメスシリンダーに、砥粒GC#2000(平均粒子径7.9μm)質量「1」に対して、砥粒WA#4000(平均粒径5.7μm)を質量「2」混合したもの(混合砥粒)を20g入れ、分散性を評価するサンプル(実施例3(コロイド分散型ラッピング剤)、比較例3(現行ラッピング剤組成物))を95g入れた後、100mlのスラリー液となるように調合し、砥粒の分散を行った。ついで、そのスラリー液を静置し、24時間後の沈降堆積した砥粒層の状態を目視で確認した。
なお、評価用のラッピング剤は希釈調製する際に水道水を用いた。
上記試験を行った結果、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤、現行のラッピング剤組成物ともに砥粒層が2層に分級されていることが観察され、十分な砥粒分散性を有していることが認められた。
(5)ウェーハへの転写防止効果(実施例4)
ラッピング後のウェーハを一時保存の為にラップ溶液中に保存したり、ラッピング後、暫くウェーハと定盤を接したままにさせたりしていると転写と言う現象が生じ、ウェーハ表面上にシミが現れる。あるいは切屑がウェーハ上に堆積した場合でも斑点状にシミが生じる事がある。また、この現象はラッピング剤のようにアルカリ溶液中にて顕著に生じる傾向がある。
ラッピング後のウェーハを一時保存の為にラップ溶液中に保存したり、ラッピング後、暫くウェーハと定盤を接したままにさせたりしていると転写と言う現象が生じ、ウェーハ表面上にシミが現れる。あるいは切屑がウェーハ上に堆積した場合でも斑点状にシミが生じる事がある。また、この現象はラッピング剤のようにアルカリ溶液中にて顕著に生じる傾向がある。
(試験及び評価方法)
試験片として単結晶Si板(ウェーハから縦3.5cm×横3.5cmのサイズで切り取ったもの)を用意し、本試験片を砥粒CG#600にて粗湿式研磨の上、砥粒FO#1200を用いて湿式研磨を行い、純水洗浄した。ついで、前記処理後の単結晶Si板2枚を貼り合わせ接触面に対して垂直に所定の荷重をかけた状態でラッピング剤サンプル(実施例4(コロイド分散型ラッピング剤)、比較例4(現行ラッピング剤組成物))中に24時間浸漬した。その後、貼り合わせた側の単結晶Si板の転写状況を評価した。評価に当っては貼り合わせ接触面において、面積率として50%以上の変化が認められたものを評価「×」、面積率50%未満のものを評価「△」、変化が認められなかったものを評価「○」とした。
なお、荷重条件として、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤の場合は80〜500gf、現行ラッピング剤組成物の場合は30〜500gfの範囲で任意に設定した。
試験片として単結晶Si板(ウェーハから縦3.5cm×横3.5cmのサイズで切り取ったもの)を用意し、本試験片を砥粒CG#600にて粗湿式研磨の上、砥粒FO#1200を用いて湿式研磨を行い、純水洗浄した。ついで、前記処理後の単結晶Si板2枚を貼り合わせ接触面に対して垂直に所定の荷重をかけた状態でラッピング剤サンプル(実施例4(コロイド分散型ラッピング剤)、比較例4(現行ラッピング剤組成物))中に24時間浸漬した。その後、貼り合わせた側の単結晶Si板の転写状況を評価した。評価に当っては貼り合わせ接触面において、面積率として50%以上の変化が認められたものを評価「×」、面積率50%未満のものを評価「△」、変化が認められなかったものを評価「○」とした。
なお、荷重条件として、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤の場合は80〜500gf、現行ラッピング剤組成物の場合は30〜500gfの範囲で任意に設定した。
評価結果を表5に示す。
現行ラッピング剤組成物の場合、荷重100gfで転写が発生する傾向が見られ、荷重80gf以下で接触面に転写は認められなかった。これに対して、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤の場合、荷重200gfで転写が発生する傾向が見られ、荷重150gf以下で接触面に転写は認められなかった。
現行ラッピング剤組成物の場合、荷重100gfで転写が発生する傾向が見られ、荷重80gf以下で接触面に転写は認められなかった。これに対して、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤の場合、荷重200gfで転写が発生する傾向が見られ、荷重150gf以下で接触面に転写は認められなかった。
荷重150gfにおける実施例4、比較例4のサンプルの転写状態を図2に示す。
本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤は、現行ラッピング剤よりも転写現象に対して耐荷重性を有することが認められた。
本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤は、現行ラッピング剤よりも転写現象に対して耐荷重性を有することが認められた。
(6)ウェーハへの転写現象について
現行ラッピング剤で使用されている防錆剤0.5wt.%水溶液を使用して、上記転写に関する試験及び評価方法に従って、ウェーハ(Si板)への転写現象に関する試験を行ったところ、以下の結果が得られた。なお、荷重条件は500gfとした。
1)Si板を何も接触させず液中に24時間浸漬を行ったが外観に変化は見られなかった。
2)Si板を2枚重ねて24時間浸漬を行うと、接した面にのみに外観変化(転写)が見られた。
3)Si板1枚をプラスチックのポリプロピレン板にはさむようにして24時間浸漬を行ったが、外観に変化は見られなかった。また、48時間浸漬でも同様であった。
4)Si板1枚ともう片方を鉄板または銅板とし、24時間浸漬を行った場合、金属板との接触面に外観変化(転写)が見られた。Si板同士の場合よりもこの場合の方が、外観変化が顕著であった。
5)Si板2枚を何も接触させず液中に24時間浸漬を行った後、両板を液中で重ね浸漬を行った結果、外観変化(転写)が見られた。
6)Si板2枚を何も接触させず液中に48時間浸漬を行った後、両板を液中で重ね浸漬を行った結果、外観変化は見られなかった。
7)Si板について所定の研磨を行った後、24時間空気中に放置した後、そのSi板2枚を液中で重ね浸漬を行った結果、外観変化は見られなかった。
現行ラッピング剤で使用されている防錆剤0.5wt.%水溶液を使用して、上記転写に関する試験及び評価方法に従って、ウェーハ(Si板)への転写現象に関する試験を行ったところ、以下の結果が得られた。なお、荷重条件は500gfとした。
1)Si板を何も接触させず液中に24時間浸漬を行ったが外観に変化は見られなかった。
2)Si板を2枚重ねて24時間浸漬を行うと、接した面にのみに外観変化(転写)が見られた。
3)Si板1枚をプラスチックのポリプロピレン板にはさむようにして24時間浸漬を行ったが、外観に変化は見られなかった。また、48時間浸漬でも同様であった。
4)Si板1枚ともう片方を鉄板または銅板とし、24時間浸漬を行った場合、金属板との接触面に外観変化(転写)が見られた。Si板同士の場合よりもこの場合の方が、外観変化が顕著であった。
5)Si板2枚を何も接触させず液中に24時間浸漬を行った後、両板を液中で重ね浸漬を行った結果、外観変化(転写)が見られた。
6)Si板2枚を何も接触させず液中に48時間浸漬を行った後、両板を液中で重ね浸漬を行った結果、外観変化は見られなかった。
7)Si板について所定の研磨を行った後、24時間空気中に放置した後、そのSi板2枚を液中で重ね浸漬を行った結果、外観変化は見られなかった。
以上の結果より、転写現象はSi板同士の接触及び、Si板と銅版や鉄板との接触で生じ、プラスチック板とは何ら作用しないことから、通気差電池の形成による腐食現象と推定される。すなわち、Si板はアルカリ溶液中でSi:Si間やSi:金属間で水素を生成し、金属間内での間隙内では水素濃度が高まり、周囲(外側の)との溶液中の水素あるいは酸素濃度に差が生じるため、金属間内での間隙内面ではアノード(陰極)となり、溶液に接している面はカソード(陽極)なって、電流が溶液中に流れ出しアノード(陰極)では腐食が進行していると考えられる。この様な現象に類似したものには金属の合わせ目、ボルトの下、ガスケット面および他の物質の付着面などでみられる隙間腐食がある。
また、転写現象はSi板表面(酸化被膜)の影響により発生が制御される事が明らかとなった。特に、酸化被膜の形成は空気中より比較して溶液中(アルカリ溶液中)での形成速度が遅いと考えられる。このことにより研磨後のウェーハは純粋なSi面を露出し金属間接触によって腐食を生成していると考えられる。
また、転写現象はSi板表面(酸化被膜)の影響により発生が制御される事が明らかとなった。特に、酸化被膜の形成は空気中より比較して溶液中(アルカリ溶液中)での形成速度が遅いと考えられる。このことにより研磨後のウェーハは純粋なSi面を露出し金属間接触によって腐食を生成していると考えられる。
上記実験の結果から、ウェーハはアルカリ溶液中ではその表面に酸化被膜を形成する速度が小さいため、金属間接触による電池が形成されて腐食現象が生じ、転写現象として問題となっている。
従来のラッピング剤では界面活性剤分子がSi表面に配向する事により金属間接触が防止され、転写防止効果が付与されるものと考えられ、ある程度の高分子のポリマーとSi表面を速やかに濡らす性質(界面活性能)に優れた別の界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を併用する事に於いてその効果が強化されていると考えられる。
これに対して、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤では、コロイダル粒子が金属間(Si:金属間)に滞在するために転写を防止する効果があり、高級アルコール系EO/POブロックポリマーと併用されることにより優れた転写防止効果が発揮されている。
従来のラッピング剤では界面活性剤分子がSi表面に配向する事により金属間接触が防止され、転写防止効果が付与されるものと考えられ、ある程度の高分子のポリマーとSi表面を速やかに濡らす性質(界面活性能)に優れた別の界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を併用する事に於いてその効果が強化されていると考えられる。
これに対して、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤では、コロイダル粒子が金属間(Si:金属間)に滞在するために転写を防止する効果があり、高級アルコール系EO/POブロックポリマーと併用されることにより優れた転写防止効果が発揮されている。
(7)磨耗率(実施例5,6)
ラッピング剤は被加工物を所定の面に仕上げる事が目的であるため、研削性が特性として重要な因子になる。そこで、簡易的な試験器具によりSi板の磨耗量を計測しラッピング剤と磨耗効率との関連を調査した。
研磨試験の器具を図3に示す。研磨試験は図3のように、市販のマグネットスターラー10、を用いて、マグネット11の回転領域をラップ定盤相当12として、ラッピングスラリー溶液1中でマグネット11側を回転させ、下部に固定したウェーハWを研磨する構成となっている。
ラッピング剤は被加工物を所定の面に仕上げる事が目的であるため、研削性が特性として重要な因子になる。そこで、簡易的な試験器具によりSi板の磨耗量を計測しラッピング剤と磨耗効率との関連を調査した。
研磨試験の器具を図3に示す。研磨試験は図3のように、市販のマグネットスターラー10、を用いて、マグネット11の回転領域をラップ定盤相当12として、ラッピングスラリー溶液1中でマグネット11側を回転させ、下部に固定したウェーハWを研磨する構成となっている。
試験に供するラッピングスラリー溶液はつぎの組成のものを用意した。なお、研磨剤としてFO#1200(酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムとの混合物)を用いた。
すなわち、実施例5として、コロイド分散型ラッピング剤(原液)0.47wt.%、研磨剤17.99wt.%、純水80.69wt.%を混合したラッピングスラリー溶液とした。
また、実施例6として、コロイド分散型ラッピング剤(原液)1.34wt.%、研磨剤17.64wt.%、純水79.36wt.%を混合したラッピングスラリー溶液とした。
すなわち、実施例5として、コロイド分散型ラッピング剤(原液)0.47wt.%、研磨剤17.99wt.%、純水80.69wt.%を混合したラッピングスラリー溶液とした。
また、実施例6として、コロイド分散型ラッピング剤(原液)1.34wt.%、研磨剤17.64wt.%、純水79.36wt.%を混合したラッピングスラリー溶液とした。
また、比較例5として、現行ラッピング剤で使用される上記混合物A 1.0wt.%、水溶液45リットル中に研磨剤が22.2wt.%含有されているスラリー液 99.0wt.%を混合したラッピングスラリー溶液とした。
また、比較例6として、現行ラッピング剤で使用される上記混合物A 3.0wt.%、水溶液45リットル中に研磨剤が22.2wt.%含有されているスラリー液 97.0wt.%を混合したラッピングスラリー溶液とした。
また、比較例6として、現行ラッピング剤で使用される上記混合物A 3.0wt.%、水溶液45リットル中に研磨剤が22.2wt.%含有されているスラリー液 97.0wt.%を混合したラッピングスラリー溶液とした。
評価に当っては、ウェーハWは予め表面を砥粒GC#600にて研磨を行ったものを用い、ビーカー13に上記ラッピングスラリー溶液1を入れ、その中に、上記駆動部(マグネット11)とラップ対象物(ウェーハW)を浸漬し、マグネットスターラー10上に静置した後、マグネット11を1時間回転させ、ウェーハWの研磨前後の重量変化を計量し磨耗率を算出した。
試験はそれぞれ5回行い、その平均を磨耗率とした。
試験はそれぞれ5回行い、その平均を磨耗率とした。
評価結果を図4に示す。
実施例、比較例ともに濃度依存性が認められるが、いずれの濃度においてもコロイド分散型ラッピング剤を用いたラッピングスラリー溶液は現行ラッピング剤組成物を用いたラッピングスラリー溶液よりも高い磨耗率を示した。したがって、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤は現行ラッピング剤組成物と同等以上の研削性が得られるものと推定される。
実施例、比較例ともに濃度依存性が認められるが、いずれの濃度においてもコロイド分散型ラッピング剤を用いたラッピングスラリー溶液は現行ラッピング剤組成物を用いたラッピングスラリー溶液よりも高い磨耗率を示した。したがって、本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤は現行ラッピング剤組成物と同等以上の研削性が得られるものと推定される。
(8)実加工テスト(実施例7)
本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤を用いて実際にウェーハのラップ加工を行った。
図5〜図7にラップ加工に用いたラッピング装置の構成を示す。
図5はラッピング装置の概略分解説明図、図6はラッピング装置の断面的概略説明図、図7はラッピング装置の上ラップ定盤を取り外した状態を示す概略上面説明図である。
本発明に係るコロイド分散型ラッピング剤を用いて実際にウェーハのラップ加工を行った。
図5〜図7にラップ加工に用いたラッピング装置の構成を示す。
図5はラッピング装置の概略分解説明図、図6はラッピング装置の断面的概略説明図、図7はラッピング装置の上ラップ定盤を取り外した状態を示す概略上面説明図である。
図5〜図7において、ラッピング装置22は上下方向に相対向して設けられた下ラップ定盤24及び上ラップ定盤26を有している。該下ラップ定盤24及び上ラップ定盤26は不図示の駆動手段によって互いに逆方向に回転せしめられる。
該下ラップ定盤24はその中心部上面にサンギア28を有し、その周縁部には環状のインターナルギア30が隣接して設けられている。
該下ラップ定盤24はその中心部上面にサンギア28を有し、その周縁部には環状のインターナルギア30が隣接して設けられている。
32は円板状の被加工物保持金具(一般にキャリアといわれる)であり、その外周面には上記サンギア28及びインターナルギア30と噛合するギア部が形成され、全体として歯車構造をなしている。該被加工物保持金具32には複数個の受け穴(キャリアホール)34が穿設され、ラップすべきウェーハ等の被加工物Wは該受け穴34内に配置される。該受け穴(キャリアホール)34は通常は複数個穿設されるが、1個穿設することもできる。
上下のラップ定盤26,24の間に被加工物保持金具32をおき下ラップ定盤24の中央に位置するサンギア28と下ラップ定盤24の外側にあるインターナルギア30の間に被加工物保持金具32の外側の歯車をかみ合わせ、上ラップ定盤26をおろし、対向しながら回転する上下のラップ定盤26,24の間で被加工物保持金具32は遊星歯車運動を行う。被加工物Wは被加工物保持金具32に開口された受け穴34の中に収まり、被加工物保持金具32の自転と公転の運動が与えられる。
ラップ加工を行うには、被加工物保持金具32の自公転運動とともに、酸化アルミニウム(Al2O3)、炭化珪素(SiC)等の研磨砥粒とラッピング剤との混濁液Aをラッピングスラリー溶液としてノズル36から上ラップ定盤26に設けられた貫通孔38を介して上下ラップ定盤26,24の間隙に流して被加工物Wと上下ラップ定盤26,24の間に砥粒を送り込み、被加工物Wは研磨されるとともに上下ラップ定盤26,24の形状が被加工物Wに反映され平坦度が確保される。
(加工条件)
実施例7として、ラッピングスラリー溶液として実施例6と同一組成の溶液を用い、それ以外の条件は以下の通りとした。
・被加工物(試料ウェーハ):CZ、p型、結晶方位<100>、200mmφ、スライスウェーハ
・スラリー供給量:800cc/min
・ラップ荷重:100gf/cm2
・ラップ定盤回転数:50rpm
・ラップ時間:15分
また、比較例7として、現行ラッピングスラリー溶液である比較例5と同一組成の溶液を用いて同じ条件でラップ加工を行った。
実施例7として、ラッピングスラリー溶液として実施例6と同一組成の溶液を用い、それ以外の条件は以下の通りとした。
・被加工物(試料ウェーハ):CZ、p型、結晶方位<100>、200mmφ、スライスウェーハ
・スラリー供給量:800cc/min
・ラップ荷重:100gf/cm2
・ラップ定盤回転数:50rpm
・ラップ時間:15分
また、比較例7として、現行ラッピングスラリー溶液である比較例5と同一組成の溶液を用いて同じ条件でラップ加工を行った。
(評価方法)
ラップ加工はそれぞれ試料ウェーハ(面取りまで実施したスライスウェーハ)20枚ずつをラップ加工し、加工速度を測定するとともに、次の品質項目について評価した。
・厚さ公差
・TV(ウェーハの中心1点と周辺4点(エッジから2〜3mm)のMAX−MIN値)
・GBIR(ウェーハの平坦度適用領域での厚さの最大値と最小値の差)
・SBIRmax(ウェーハ裏面を矯正した状態にてサイト毎に測定したときの最大厚みと最小厚みの差)
・カケ、ワレ(ウェーハエッジ部に破損部分が有る場合をカケと定義し、破損部分が面内に及んだ状態をワレと定義する)
・キズ(ウェーハ表面にキズが目視で確認される状態(発生有り、無しで判定する))
また、試料ウェーハ20枚について、ラップ加工した後にラップ荷重をかけたまま、試料ウェーハを取り外すことなく24時間放置し、ウェーハ表面の転写状態を観察した。
ラップ加工はそれぞれ試料ウェーハ(面取りまで実施したスライスウェーハ)20枚ずつをラップ加工し、加工速度を測定するとともに、次の品質項目について評価した。
・厚さ公差
・TV(ウェーハの中心1点と周辺4点(エッジから2〜3mm)のMAX−MIN値)
・GBIR(ウェーハの平坦度適用領域での厚さの最大値と最小値の差)
・SBIRmax(ウェーハ裏面を矯正した状態にてサイト毎に測定したときの最大厚みと最小厚みの差)
・カケ、ワレ(ウェーハエッジ部に破損部分が有る場合をカケと定義し、破損部分が面内に及んだ状態をワレと定義する)
・キズ(ウェーハ表面にキズが目視で確認される状態(発生有り、無しで判定する))
また、試料ウェーハ20枚について、ラップ加工した後にラップ荷重をかけたまま、試料ウェーハを取り外すことなく24時間放置し、ウェーハ表面の転写状態を観察した。
(評価結果)
(i)加工速度
実施例7の加工速度は9.0±2μm/min、比較例7の加工速度は7.0±2μm/minであった。この結果はテーブルテスト((7)磨耗率)における傾向と同様の傾向を示しており、本発明のコロイド分散型ラッピング剤により現行ラッピング剤使用の場合よりも1.3倍の加工速度の向上が達成されていた。
(i)加工速度
実施例7の加工速度は9.0±2μm/min、比較例7の加工速度は7.0±2μm/minであった。この結果はテーブルテスト((7)磨耗率)における傾向と同様の傾向を示しており、本発明のコロイド分散型ラッピング剤により現行ラッピング剤使用の場合よりも1.3倍の加工速度の向上が達成されていた。
(ii)品質項目
品質評価結果は次の通りであった。
1)厚さ公差 :(実施例7)±2μm、 (比較例7)±3μm
2)TV :(実施例7)0.4μm以内、 (比較例7)0.5以内
3)GBIR :(実施例7)0.6μm以内、 (比較例7)0.8μm以内
4)SBIRmax:(実施例7)0.25μm以内、(比較例7)0.3μm以内
5)カケ、ワレ :(実施例7)発生なし、 (比較例7)0.8%
6)キズ :(実施例7)0.5%、 (比較例7)1.5%
平坦度の向上及びラップキズ、ワレ、カケに関するいずれの項目においても品質の改善が見られた。
品質評価結果は次の通りであった。
1)厚さ公差 :(実施例7)±2μm、 (比較例7)±3μm
2)TV :(実施例7)0.4μm以内、 (比較例7)0.5以内
3)GBIR :(実施例7)0.6μm以内、 (比較例7)0.8μm以内
4)SBIRmax:(実施例7)0.25μm以内、(比較例7)0.3μm以内
5)カケ、ワレ :(実施例7)発生なし、 (比較例7)0.8%
6)キズ :(実施例7)0.5%、 (比較例7)1.5%
平坦度の向上及びラップキズ、ワレ、カケに関するいずれの項目においても品質の改善が見られた。
(iii)転写現象
実施例7においてはラッピングしたウェーハへの転写現象の発生は認められなかった。これに対して、比較例7では転写現象がほぼ100%発生していた。
実施例7においてはラッピングしたウェーハへの転写現象の発生は認められなかった。これに対して、比較例7では転写現象がほぼ100%発生していた。
ラッピングスラリー溶液中の砥粒は絶えず磨耗し粒径と切れ味が変化しており、またラッピングスラリー溶液中の界面活性剤の影響により、切れ味が制約される傾向がある。
したがって、上記評価結果において、現行ラッピング剤を用いた界面活性剤主体のラッピングスラリーでは、界面活性剤の添加量が多いため、Si表面と鋳鉄定盤表面の動摩擦が小となり、Si表面と鋳鉄定盤表面間で滑りが発生し、砥粒本来の切削性を抑制する結果となっている。これに対して、本発明であるコロイド分散型ラッピング剤を用いたラッピングスラリー溶液は、ラッピングスラリー溶液の浸透性を補助するのみの少量の界面活性剤の添加である為、前記のような滑りは発生しない。また、コロイド分散型ラッピング剤中のコロイダルシリカにより、Si表面と鋳鉄定盤表面間の動摩擦が大きくなり、砥粒の研削性を向上させる効果が確認された。
さらに、現行ラッピングスラリー溶液を使用したラップ加工においては、前記滑りにより、研削性のバラツキも発生し、ウェーハ表面に部分的な厚さのバラツキとキズを発生させる結果となっており、本発明であるコロイド分散型ラッピング剤を使用したラップ加工においてはそれも改善できることが確認された。
したがって、上記評価結果において、現行ラッピング剤を用いた界面活性剤主体のラッピングスラリーでは、界面活性剤の添加量が多いため、Si表面と鋳鉄定盤表面の動摩擦が小となり、Si表面と鋳鉄定盤表面間で滑りが発生し、砥粒本来の切削性を抑制する結果となっている。これに対して、本発明であるコロイド分散型ラッピング剤を用いたラッピングスラリー溶液は、ラッピングスラリー溶液の浸透性を補助するのみの少量の界面活性剤の添加である為、前記のような滑りは発生しない。また、コロイド分散型ラッピング剤中のコロイダルシリカにより、Si表面と鋳鉄定盤表面間の動摩擦が大きくなり、砥粒の研削性を向上させる効果が確認された。
さらに、現行ラッピングスラリー溶液を使用したラップ加工においては、前記滑りにより、研削性のバラツキも発生し、ウェーハ表面に部分的な厚さのバラツキとキズを発生させる結果となっており、本発明であるコロイド分散型ラッピング剤を使用したラップ加工においてはそれも改善できることが確認された。
1…ラッピングスラリー溶液、10…マグネットスターラー、11…マグネット、12…ラップ定盤相当領域、13…ビーカー、22…ラッピング装置、24…下定盤、26…上定盤、28…サンギア、30…インターナルギア、32…被加工物保持金具、34…受け穴、36…ノズル、38…貫通穴、W…ウェーハ(被加工物)
Claims (8)
- ポリカルボン酸塩とコロイダルシリカとを含み、pHが9以上であることを特徴とするコロイド分散型ラッピング剤。
- ポリオキシアルキレンデシルエーテルをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のコロイド分散型ラッピング剤。
- 前記ポリオキシアルキレンデシルエーテルは、HLBが10.5〜12.5のものであることを特徴とする請求項1に記載のコロイド分散型ラッピング剤。
- 高級アルコール系エチレンオキサイド(EO)/プロピレンオキサイド(PO)ブロックポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のコロイド分散型ラッピング剤。
- ポリカルボン酸アンモニウム水溶液を珪酸塩水溶液中に加え、適宜水を加えて攪拌・混合してコロイダルシリカ分散溶液を製造することを特徴とするコロイド分散型ラッピング剤の製造方法。
- 前記攪拌・混合中に、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを添加することを特徴とする請求項7に記載のコロイド分散型ラッピング剤の製造方法。
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JP2003338165A JP2005103684A (ja) | 2003-09-29 | 2003-09-29 | コロイド分散型ラッピング剤及びその製造方法 |
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- 2003-09-29 JP JP2003338165A patent/JP2005103684A/ja active Pending
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