JP2005097766A - 炭素繊維シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 平面平滑性の良い、薄いシートを切断することなく安定した基材の炭素繊維シートを得ることができる炭素繊維シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 熱処理時に炭素化される樹脂を含有する熱処理用原料炭素繊維シート又は熱処理用原料酸化繊維シート2を、低温処理炉4において不活性ガス雰囲気中、500〜1000℃、接圧4.9〜98kPa、リラックス3〜10%で連続的に熱処理した後、高温処理炉20において不活性ガス雰囲気中、1200〜2500℃、接圧4.9kPa以下、リラックス0〜3%にて熱処理して炭素繊維シートを製造する。原料シートとしては、ポリアクリロニトリル系の繊維を用いたものが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、固体高分子電解質型燃料電池(高分子型燃料電池)のガス拡散電極用の炭素繊維シート及びその製造方法に関する。
高分子電解質型燃料電池のガス拡散層用基材として、柔軟性のある炭素繊維織物タイプ、炭素繊維不織布タイプ等の炭素繊維シートが開発されている。
これらの基材は、一般にはフッ素系樹脂等で撥水処理され、カーボン微粒子によりコーテイングされ、更に触媒処理がなされた後、薄層(約50μm以下)の高分子電解質膜と積層され、セパレーターと一体化されて高分子電解質型燃料電池の単セルが形成される。
上記基材として炭素繊維シートに対して要望される特性と課題と問題点については、先ず電池のよりコンパクト化を目的としてより薄層(約400μm以下)の基材が求められている。なお、シート強度が低い場合、炭素化時に過度な張力により切断や皺が生じ易くなるので、シート強度が高い基材が求められている。
また、上記基材としての炭素繊維シートについては、高分子電解質膜との積層時に、電解質膜の損傷防止を目的として、炭素繊維シートの平面平滑性の改善が求められている。即ち、炭素化前の原料シートの平面平滑処理(樹脂圧縮処理等)の改善が求められている。
従来より炭素繊維シートの製造方法としては、縦型炉や横型炉にて酸化繊維シート等の原料シートを連続的に炭素化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、従来の炭素繊維シートの製造方法では、炭素化時にシート表面の繊維がシート表面で起毛し易く、更に、シート表面に皺が発生し易いなどの解決が難しい問題がある。
特開平11−350258号公報 (特許請求の範囲)
本発明者は、上記問題について種々検討しているうちに、原料シートの焼成を、比較的低い温度における焼成(低温処理)と、次の高い温度における焼成(高温処理)の二段焼成で行うことが必要であることを知得した。この二段焼成のうちでも、低温処理においてシート(原料)の繊維の化学構造及びシートの外観構造が決定されること、並びに、低温処理における接圧及びリラックス等の熱処理条件が特に重要な因子であることを本発明者は知得した。
更に詳述すると、後の高温処理においては所定の高い温度を必要とする。しかし、前の低温処理においてシートの構造の固定化ができていないと、後の高温処理における温度を所定の範囲にしても、シートは構造の固定化ができないまま、表面皺、うねりを発生することとなる。これに対し、予め所定条件の低温処理を行うことにより、シートは構造上固定化され、賦形性が向上し、後の高温処理時に、熱変形のない炭素繊維シートを得ることができることを本発明者は知得し、本発明を完成するに到った。
従って、本発明の目的とするところは、上記問題を解決する炭素繊維シートの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
〔1〕 熱処理時に炭素化される樹脂を含有する熱処理用原料炭素繊維シート又は熱処理用原料酸化繊維シートを、不活性ガス雰囲気中、500〜1000℃、接圧4.9〜98kPa、リラックス3〜10%で連続的に熱処理した後、不活性ガス雰囲気中、1200〜2500℃、接圧4.9kPa以下、リラックス0〜3%にて熱処理することを特徴とする炭素繊維シートの製造方法。
〔2〕 熱処理用原料シートの、厚さが0.1〜0.8mm、目付が30〜400g/m2、引っ張り強度が3.5N/cm以上である〔1〕に記載の炭素繊維シートの製造方法。
本発明の炭素繊維シートの製造方法によれば、熱処理用原料酸化繊維シートを、予め比較的低い温度において、所定のガス雰囲気、接圧、リラックスの条件下で熱処理することにより、平滑処理と炭素化を同時に行い、賦形性を高めた後、所定の高い温度、ガス雰囲気、接圧、リラックスの条件下で熱処理しているので、薄く、平面平滑性の良い、炭素繊維シートを切断することなく安定に製造することができる。
以下、本発明の炭素繊維シートの製造方法について、詳細に説明する。
〔原料シート〕
本発明の炭素繊維シートの製造用原料シートは、熱処理時に炭素化される樹脂を含有する熱処理用原料炭素繊維シート又は熱処理用原料酸化繊維シートである。
熱処理用原料炭素繊維シートは、炭素繊維のシートに樹脂を含浸させたものである。前記含浸させた樹脂は、後述する熱処理において炭素化され、炭素繊維シートの一部となる。樹脂の含浸量は樹脂の種類によって異なるが、通常3.0〜30質量%である。樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂等が好ましい。
前記原料シートの原料繊維の種類としては、ポリアルリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系、フェノール樹脂系のものが用いられる。
熱処理用原料酸化繊維シートは、前記原料シートの原料繊維を酸化処理して得られる酸化繊維をシート化したものである。
シートを構成する酸化繊維の乾強度は、1.5gf/dtex(14.7mN/dtex)以上が好ましい。酸化繊維乾強度が14.7mN/dtex未満の場合は、この酸化繊維から得られる酸化繊維フィラメント織物の強度低下、後工程炭素化処理中の寸法安定性低下などが起こるので好ましくない。
シートを構成する酸化繊維の乾伸度は、特に限定されないが、10%以上が好ましい。
上記原料シートのシート化方法及びシート形態としては、抄紙によるペーパー状シート、ウォータージェット法、ニードルパンチ法による不織布、製織によるフィラメント織物、並びに、紡績・製織による紡績糸織物等が挙げられる。
上記原料シートは、その厚さが0.1〜0.8mm、目付が30〜400g/m2、引っ張り強度が3.5N/cm以上であることが好ましい。
原料シートの厚さが0.1mm未満の場合は、得られる炭素繊維シートについてシート強度が低下し、切断を生じ易い。原料シートの厚さが0.8mmを超える場合は、得られる炭素繊維シートに皺、うねりを生じ易い。
〔低温熱処理〕
上記原料シートは、窒素等の不活性ガス雰囲気中、温度500〜1000℃、接圧4.9〜98kPa(0.05〜1kgf/cm2)、リラックス3〜10%で熱処理される。ここで、リラックスとは、処理前のシート長さに対する処理後のシートが収縮した長さの割合(収縮率)である。なお、リラックスが負の値の場合は、処理前のシート長さに対し、処理後のシート長さが伸びたことを示す。
低温熱処理における温度が500℃未満の場合は、シートの構造の固定化効果、賦形性の向上効果等の熱セット効果が発揮されず、後工程の高温熱処理時、得られる炭素繊維シートに皺、うねりを発生し易い。低温熱処理における温度が1000℃を超える場合は、低温熱処理時にシートに皺、うねりを発生し易い。
低温熱処理における接圧が4.9kPa(0.05kgf/cm2)未満の場合は、シートの構造の固定化効果、賦形性の向上効果等の熱セット効果が発揮されず、後工程の高温熱処理時、得られる炭素繊維シートに皺、うねりを発生し易い。低温熱処理における接圧が98kPa(1kgf/cm2)を超える場合は、低温熱処理時にシート損傷によるシート強度低下、シート切断を生じ易い。低温熱処理における接圧は、後述するニップローラーの条件操作によりコントロールすることができる。
低温熱処理におけるリラックスが3%未満の場合は、シート切断を生じ易い。低温熱処理におけるリラックスが10%を超える場合は、シートに皺、うねりを発生し易い。低温熱処理におけるリラックスは、後述する入り側と出側のローラー速度を調節することによりコントロールすることができる。
〔高温熱処理〕
低温熱処理後の原料シートは、窒素等の不活性ガス雰囲気中、温度1200〜2500℃、接圧4.9kPa(0.05kgf/cm2)以下、好ましくは0kPa(0kgf/cm2)、リラックス0〜3%で熱処理される。
高温熱処理における温度が1200℃未満の場合は、得られる炭素繊維シートの電気抵抗値が増加するので好ましくない。高温熱処理における温度が2500℃を超える場合は、得られる炭素繊維シートについて、強度が低下し、脆くなり、切断し易くなり、安定生産が困難になる。
本発明の製造方法によって得られる炭素繊維シートは、厚さ方向の電気抵抗値が10mΩ以下が好ましい。この炭素繊維シートを高分子電解質型燃料電池用電極材として用いる場合、電気抵抗値が低い程、電池性能が良い。この電気抵抗値が10mΩを超えると起電力が下がり、電池性能が悪くなるので好ましくない。
高温熱処理における接圧が4.9kPa(0.05kgf/cm2)を超える場合は、炭素繊維シートの製造時にシート切断を生じ易い。
高温熱処理におけるリラックスが0%未満の場合(処理前のシート長さに対し、処理後のシート長さが伸びる場合)は、シート切断を生じ易い。高温熱処理におけるリラックスが3%を超える場合は、シートに皺、うねりを発生し易い。高温熱処理におけるリラックスは、後述する入り側と出側のローラー速度を調節することによりコントロールすることができる。
〔炭素繊維シートの製造装置〕
本発明の炭素繊維シートの製造方法について、その製造条件が上記範囲内にあれば、その製造装置としては、特に限定されるものではないが、例えば図1の概略側面図に示す製造装置により本発明の炭素繊維シートを製造することができる。
図1において、2は熱処理用原料シートであり、このシート2は、低温処理炉4の入口部6を通って低温処理炉4内へ搬入される。低温処理炉4内においてシート2は、ニップローラー8とシート接触ローラー10との間を通過した後、シート接触ローラー12、14を経て低温熱処理を施された後、低温処理炉4の出口部16から低温処理炉4外へ搬出される。
低温熱処理を施されたシート2は、駆動ローラー18a、18bの間を通過した後、高温処理炉20の入口部22を通って高温処理炉20内へ搬入される。高温処理炉20内においてシート2は、高温処理炉20の出口部24の下流側の駆動ローラー26a、18bによって引っ張られながら高温熱処理を施された後、高温処理炉20の出口部24から高温処理炉20外へ搬出される。
低温処理炉4の入口部6と出口部16は、低温処理炉4の頂部に設けられた窒素導入部28から導入された窒素によってシールされている。高温処理炉20の入口部22と出口部24は、高温処理炉20の頂部に設けられた窒素導入部30から導入された窒素によってシールされている。また、低温処理炉4の出口部16も、高温処理炉20の出口部24も、水冷式になっている。
シート2についてのリラックスは、前述したように入り側と出側のローラー速度を調節することによりコントロールすることができる。即ち、低温処理炉4におけるシート2についてのリラックスは、ニップローラー8とシート接触ローラー10におけるローラー速度と、駆動ローラー18a、18bにおけるローラー速度とを調節することによりコントロールすることができる。高温処理炉20におけるシート2についてのリラックスは、駆動ローラー18a、18bにおけるローラー速度と、駆動ローラー26a、26bにおけるローラー速度とを調節することによりコントロールすることができる。
低温処理炉4におけるシート2についての接圧は、前述したようにニップローラーの条件操作によりコントロールすることができる。即ち、ニップローラー8とシート接触ローラー10との間における圧調節により上記接圧はコントロールすることができる。
なお、ニップローラー8、シート接触ローラー10、12、14は、何れも低温処理炉4内に備えられているが、何れのローラーも、その材質はカーボン材が好ましい。
本発明を以下の実施例及び比較例により詳述する。
以下の実施例及び比較例の条件により炭素繊維シートを作製した。原料シート及び焼成後の炭素繊維シートの諸物性値を、以下の方法により測定した。
比重:アルキメデス法(溶媒アセトン)により測定した。
シートの強度:JIS L 1015により測定した。
シート厚さ: 直径30mmの円板状圧板で200gf(2.8kPa)を負荷したときの厚さを測定した。
シートの目付:試験片を50mm角に切り出し、120℃、2時間乾燥後のシートの寸法及び乾燥質量より、単位面積当たりの質量を算出した。
シート強度:試験幅25mm、つかみ間隔100mm、引っ張り速度100mm/minで測定した。
厚さ方向の電気抵抗値:2枚の50mm角(厚さ10mm)の金メッキした電極に炭素繊維織物の全面を接触するように両面の圧力0.5MPaで挟み、両電極間の電気抵抗値(mΩ)を測定した。
実施例1〜4及び比較例1〜6
表1〜4に示すように、PAN系炭素繊維(比重1.75、カット長10mm)とバインダーとしてフェノール樹脂25質量%よりなるペーパー状シートを、熱硬化させ、厚さ0.2mm、目付80g/m2、強度35N/cmの硬化シート(実施例1)、又は、PAN系酸化繊維(比重1.40、カット長6mm)とバインダーとしてアラミドファイブリッド10質量%よりなるペーパー状シートを、熱圧処理し、厚さ0.2mm、目付80g/m2、強度15N/cmのシート(実施例2〜4及び比較例1〜6)を得た。
これらシートを図1に示す熱処理装置の低温処理炉にて、表1〜4に示す条件下に、温度450〜1050℃、窒素雰囲気中、接圧0.01〜1.3kgf/cm2(0.98〜127kPa)、2〜13%のリラックスにて0.5分間連続低温熱処理を行い、低温熱処理シートを得た。但し、比較例2では上記低温熱処理においてシートの切断が発生し、次処理の高温焼成ができなかった。
更に、実施例1〜4、比較例1及び比較例3〜6で得られた低温熱処理シートについて、図1に示す熱処理装置の高温処理炉にて、温度1700℃、接圧をかけずに、0%のリラックスにて0.3分間高温熱処理を行った。この熱処理における工程状況、並びに、得られた炭素繊維シートの目付、厚さ、強度及び電気抵抗値等の物性を表1〜4に示す。
表1〜4における比較例1〜6については、×で示す箇所が本発明の構成から逸脱している。
Figure 2005097766
Figure 2005097766
Figure 2005097766
Figure 2005097766
本発明の炭素繊維シートを製造する装置の一例を示す概略側面図である。
符号の説明
2 シート
4 低温処理炉
6 低温処理炉入口部
8 ニップローラー
10、12、14 シート接触ローラー
16 低温処理炉出口部
18a、18b 駆動ローラー
20 高温処理炉
22 高温処理炉入口部
24 高温処理炉出口部
26a、26b 駆動ローラー
28、30 窒素導入部

Claims (2)

  1. 熱処理時に炭素化される樹脂を含有する熱処理用原料炭素繊維シート又は熱処理用原料酸化繊維シートを、不活性ガス雰囲気中、500〜1000℃、接圧4.9〜98kPa、リラックス3〜10%で連続的に熱処理した後、不活性ガス雰囲気中、1200〜2500℃、接圧4.9kPa以下、リラックス0〜3%にて熱処理することを特徴とする炭素繊維シートの製造方法。
  2. 熱処理用原料シートの、厚さが0.1〜0.8mm、目付が30〜400g/m2、引っ張り強度が3.5N/cm以上である請求項1に記載の炭素繊維シートの製造方法。
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