JP2004300601A - 耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、高性能な耐炎化繊維布帛を提供し、かつ、かかる耐炎化繊維布帛から燃料電池用電極として好適な炭素繊維布帛を生産性高く安定的に得られる製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の耐炎耐炎化繊維布帛は単位面積あたりの重量が50〜200g/m2、嵩密度が0.3〜0.8g/cm3、面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmであって、かつ、面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下である。
本発明の炭素繊維布帛は単位面積あたりの重量が30〜180g/m2、嵩密度が0.2〜0.75g/cm3、面圧0.15MPaにおける厚みが0.1〜0.5mmであって、かつ、面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下である。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の耐炎耐炎化繊維布帛は単位面積あたりの重量が50〜200g/m2、嵩密度が0.3〜0.8g/cm3、面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmであって、かつ、面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下である。
本発明の炭素繊維布帛は単位面積あたりの重量が30〜180g/m2、嵩密度が0.2〜0.75g/cm3、面圧0.15MPaにおける厚みが0.1〜0.5mmであって、かつ、面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下である。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高品質な耐炎化繊維布帛、および炭素繊維布帛、並びにそれらの製造方法に関するものであって、例えば燃料電池用電極基材としても好適な炭素繊維布帛およびそれを得るための耐炎化繊維布帛、並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維布帛はその力学的、化学的諸特性および軽量性などにより、各種の用途、例えば航空機やロケットなどの航空・宇宙用航空材料、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣竿などのスポーツ用品に広く使用され、さらに船舶、自動車などの運輸機械用途分野などにも使用されようとしている。また、近年は炭素繊維布帛の高い導電性や放熱性から、携帯電話やパソコンの筐体等の電子機器部品や、燃料電池の電極用途への応用が強く求められており、そのような用途では薄くて高嵩密度で、表面が平滑な炭素繊維布帛が求められている。しかしながら、炭素繊維は伸度が低く脆弱なために、炭素繊維布帛にしてから加工すると炭素繊維が傷み、機械的特性低下や収率が悪化してしまうことがある。そのため、耐炎化繊維布帛を中間材料として用い炭素繊維布帛を製造する方法が採られることが多く、中間材料である耐炎化繊維布帛の高嵩密度化が求められている。
【0003】
また、耐炎化繊維布帛は、上記のような炭素繊維布帛を得るための中間材料としてだけではなく、溶接作業等で飛散する高熱の鉄粉や溶接火花等から人体を保護するスパッタシート、さらには航空機等の防炎断熱材など難燃性、防炎性を必要とする用途で幅広く利用されている。これらの難燃性、防炎性を必要とする分野における需要は増しており、より高性能な耐炎化繊維布帛を高効率で生産することが求められている。
【0004】
耐炎化繊維布帛の製造方法としては耐炎化繊維を紡績工程にかけてスライバー状にするか、水中に分散、抄造してウエブを形成し、これに柱状流処理を行って耐炎化繊維同士を絡み合せる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしかかる方法では不織布を緻密にする手段が十分ではなく、得られた耐炎化繊維不織布の嵩密度が低いという問題がある。
【0005】
耐炎化繊維不織布を緻密で薄くする方法として、ポリアクリロニトリル系酸化繊維からなる酸化繊維シート、すなわちアクリル耐炎化繊維を150〜300℃で10〜100MPaの圧力で圧縮処理する方法が示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、ここに示される方法で得られた耐炎化繊維不織布は嵩密度が最大でも0.59g/cm3であり、かかる耐炎化繊維布帛を中間材料として得られる炭素繊維布帛の電気抵抗は十分低いとはいえず、通電性向上を考えるとさらに薄肉、高嵩密度のものが求められる。
【0006】
また、耐炎化繊維布帛の別の製造方法としては前駆体繊維を布帛化した後、空気中、耐炎化処理する方法やアクリル系繊維不織布を加熱ローラーに接触させて耐炎化処理する方法が用いられている(例えば、特許文献3参照)。しかし、前駆体繊維布帛を空気中、耐炎化処理する方法では、耐炎化処理時の熱および反応に起因する収縮のために、得られた耐炎化繊維布帛の表面形態が悪いことがある。また、上記特許文献3で示されているアクリル系繊維不織布を加熱ローラーに接触させて耐炎化処理する方法では、加熱ローラーに接触していない面や不織布内部の耐炎化が十分に進行していないために、難燃性が十分ではない。
【0007】
【特許文献1】特開平9−119052号公報
【0008】
【特許文献2】特開2002−194650号公報(請求項3)
【0009】
【特許文献3】特開平4−65561号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記課題に鑑み高性能な耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を提供し、更にこれらについて生産効率に優れた製造方法を提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的を達成するために、本発明は次の構成を有する。すなわち、単位面積あたりの重量が50〜200g/m2、、嵩密度が0.3〜0.8g/cm3、面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmであって、かつ面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下の耐炎化繊維布帛である。
【0012】
また、本発明は、前駆体繊維布帛を耐炎化処理液中、100〜10000Paの圧力を付与しつつ、180〜300℃で耐炎化処理する耐炎化繊維布帛の製造方法である。
【0013】
また、本発明の炭素繊維布帛は単位面積あたりの重量が30〜180g/m2、嵩密度が0.2〜0.75g/cm3で、面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmであって、かつ面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下である炭素繊維布帛である。
【0014】
また前記耐炎化繊維布帛を不活性雰囲気中300〜2000℃で炭化処理する炭素繊維布帛の製造方法である。
【0015】
さらには、前記炭素繊維布帛を用いてなる燃料電池用電極である。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について、さらに詳しく説明する。
【0017】
本発明の耐炎化繊維布帛は単位面積あたりの重量が50〜200g/m2である。好ましくは60〜190g/m2であり、より好ましくは70〜180g/m2である。単位面積あたりの重量が50g/m2未満の場合は、引張強さなど布帛としての強度を高くすることが難しい。単位面積当たりの重量が200g/m2を超える場合には、厚みを後述の範囲とすることが難しい。
【0018】
本発明の耐炎化繊維布帛は嵩密度が0.3〜0.8g/cm3である。好ましくは0.32〜0.78g/cm3であり、より好ましくは0.34〜0.76g/cm3である。嵩密度が0.3g/cm3未満の場合は、後述する炭素繊維布帛の嵩密度を0.2以上とすることが困難であり、本発明の目的の1つである電気抵抗の低い炭素繊維布帛を得るための中間体としては適さない。また、嵩密度を0.8g/cm3を超えるようにするのは難しく、加工コスト増につながる。尚、ここでいう嵩密度とは、後述する面圧0.15MPaにおける厚み(mm)、および前記単位面積あたりの重量(g/m2)から下記式により求められる。
【0019】
嵩密度(g/cm3)=単位面積当たりの重量/(厚み×1000)
本発明の耐炎化繊維布帛は面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmである。好ましくは0.05〜0.45mmであり、より好ましくは0.08〜0.4mmである。かかる厚みが0.01mm未満の場合は、引張強さなど布帛としての強度を高くすることが難しく、0.5mmを超える場合には、後述する炭素繊維布帛の厚みを0.5mmとすることが困難であり、電気抵抗の低い炭素繊維布帛を得るための中間体として適さない。尚、ここで面圧0.15MPaにおける厚みとは、布帛にマイクロメータ圧子により0.15MPaの面圧を付与した状態で、厚みを測定した値である。
【0020】
また、本発明の耐炎化繊維布帛は、面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差は0.1mm以下である。好ましくは0.095mm以下、より好ましくは0.09mm以下である。かかる厚み差は、高嵩密度の指標であり、0.1mmを超える場合には、布帛の高嵩密度化が十分ではないため、炭素繊維布帛となしたときに電気抵抗が所望の範囲とならない。厚み差は小さいほど好ましいが、0.01mm程度であれば本発明としては十分である。
【0021】
本発明の耐炎化繊維布帛の比重は後述する耐炎化処理時間や耐炎化温度に依存するが、1.30〜1.48g/cm3の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.35〜1.45g/cm3である。耐炎化繊維の比重が1.30g/cm3未満では、十分な難燃性、耐炎性を有していないために、続く炭化処理における収率が低下する場合がある。耐炎化繊維の比重が1.48g/cm3を超える場合には、単繊維伸度が10%を下回り、脆弱化してしまうことがある。
【0022】
本発明の耐炎化繊維布帛は引張り強さが1kgf/cm以上であることが好ましい。より好ましくは1.3kgf/cm以上であり、さらに好ましくは1.7kgf/cm以上である。引張り強さは少なくとも1方向が上記値を満たしていればよく、連続した耐炎化繊維布帛の場合には長手方向の引張り強さが上記値を満たしていればよい。引張り強さが1kgf/cm未満の場合には、炭化処理し炭素繊維布帛を得たときに所望の引張り強さが発現しないことがある。引張り強さは強いほど好ましいが、3kgf/cm程度であれば本発明としては十分である。かかる引張強さは長さ6cm、幅1cmの布帛を試験片とし、スパン間距離3cm、引張速度3mm/分の条件で、万能材料試験機を用いて測定される。
【0023】
本発明の耐炎化繊維布帛は厚み方向の繊維配向が30〜80%であることが好ましい。より好ましくは35〜75%であり、さらに好ましくは40〜70%である。厚み方向の繊維配向が30%未満の場合には、炭化処理し炭素繊維布帛を得たときに厚み方向の電気抵抗が高くなる傾向ある。厚み方向の繊維配向を80%を超えるようにするのは難しく、加工コスト増につながる。かかる厚み方向の繊維配向とは耐炎化繊維布帛を溶融した樹脂に浸漬、冷却固化した後に、厚み方向および厚み方向と直交する方向に切断、研磨し、偏光顕微鏡によって、1cm2当たりの厚み方向に配向する繊維本数と1cm2当たりの厚み方向と直交する方向に配向する繊維本数を数え、下式により求めることができる。
【0024】
厚み方向の繊維配向(%)={1cm2当たりの厚み方向に配向する繊維本数/(1cm2当たりの厚み方向に配向する繊維本数+1cm2当たりの厚み方向と直行する方向に配向する繊維本数)}×100
本発明の炭素繊維布帛は単位面積あたりの重量が30〜180g/m2である。好ましくは35〜170g/m2であり、より好ましくは40〜160g/m2である。単位面積あたりの重量が30g/m2未満の場合は、引張強さなど布帛としての強度を高くすることが難しい。単位面積あたりの重量が180g/m2を超える場合には、厚みを後述の範囲とすることが難しく、電気抵抗を低くすることがが難しい。
【0025】
本発明の炭素繊維布帛は嵩密度が0.2〜0.75g/cm3である。好ましくは0.24〜0.73g/cm3であり、より好ましくは0.26〜0.7g/cm3である。嵩密度が0.2g/cm3未満の場合は、電気抵抗を十分に下げることができない。また、嵩密度を0.75g/cm3を超えるようにするのは難しく、加工コスト増につながる。
【0026】
本発明の炭素繊維布帛は面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmである。好ましくは0.05〜0.45mmであり、より好ましくは0.08〜0.4mmである。厚みが0.01mm未満の場合は、引張強さなど、布帛自体の強度を高くすることが難しい。厚みが0.5mmを超える場合には、所望の電気特性を得ることができない。尚、ここでいう厚みは前記、耐炎化繊維布帛の厚み測定と同様の方法で測定するものである。
【0027】
また、本発明の炭素繊維布帛は、面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下である。好ましくは0.095mm以下、より好ましくは0.09mm以下である。かかる厚み差は嵩密度の指標であり、0.1mmを超える場合には、高嵩密度化が十分ではないために、電気抵抗が所望の値とならない、また燃料電池電圧測定の際にセパレーターのガス流路である溝を埋めてしまい、燃料電池電圧が低くなる傾向がある。厚み差は小さいほど好ましいが、0.01mm程度であれば本発明の目的としては十分である。
【0028】
本発明の炭素繊維布帛は表面粗さRa20μm以下であることが好ましい。より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下である。表面粗さRaが20μmを超える場合には、電極用途の加工において表面に触媒層やカーボン層の塗布を行うときに塗布層の均一性が不十分となる場合がある。かかる表面粗さRaは、その数値が小さい程好ましいが、10μm程度であれば本発明の目的としては十分である。ここで炭素繊維布帛の表面粗さRaとは算術平均粗さをいい、JISB0601の方法で測定することができる。
【0029】
本発明の炭素繊維布帛は厚み方向の繊維配向が30〜80%であることが好ましい。より好ましくは35〜75%であり、さらに好ましくは40〜70%である。かかる範囲とすることで、電極基材用途により好適な電気特性(高導電性)を発現させることができる。
【0030】
本発明の炭素繊維布帛は厚み方向の電気抵抗が10mΩ・cm2以下であることが好ましい。より好ましくは9mΩ・cm2以下、さらに好ましくは8mΩ・cm2以下である。厚み方向の電気抵抗が10mΩ・cm2を超える場合には、燃料電池電極としたときに、燃料電池電圧が低くなる傾向がある。
【0031】
本発明の炭素繊維布帛は引張強さが0.2kgf/cm以上であることが好ましい。より好ましくは0.4kgf/cm以上、さらに好ましくは0.5kgf/cm以上である。引張強さは少なくとも1方向が上記値を満たしていれば良く、連続した長尺の布帛の場合、長手方向の引張強さが上記値を満たしていればよい。引張強さが0.2kgf/cm未満の場合には、高次加工の方法によっては、布帛に傷みが生じる場合がある。
【0032】
本発明の炭素繊維布帛は厚み方向に14cm/secの空気を透過させたときの差圧が10〜100Paであることが好ましい。より好ましくは15〜90Pa、さらに好ましくは20〜80Paである。差圧が10Pa未満の場合には、炭素繊維布帛の高嵩密度が低めであるため、電気抵抗が高くなる傾向にあり、差圧が100Paを超える場合には、燃料電池電極としたときに空気や水素および水の透過性が低く電池電圧が低くなる傾向がある。布帛の厚さ方向に14cm/secの空気を透過させたときの、布帛を挟んで空気の上流側と下流側の圧力差を差圧として測定する。
【0033】
次に、上記耐炎化繊維布帛および炭素繊維布帛を得るのに好適な製造方法の一例について説明する。
【0034】
本発明の耐炎化繊維布帛の製造方法は、前駆体繊維布帛を耐炎化処理液中、100〜10000MPaの圧力を付与しつつ、180〜300℃で耐炎化処理するものである。すなわち、耐炎化処理温度で液状になっている耐炎化処理液中、一定圧力を付与しながら耐炎化処理することにより、前駆体繊維布帛の内部および前駆体繊維の単繊維内部にまで処理液が浸透しやすく、均一な耐炎化が可能であり、良好な特性を有する耐炎化繊維布帛が得られるものである。
【0035】
本発明で用いる耐炎化処理液としては、有機化合物、フッ素化合物、ケイ素化合物が挙げられる。
【0036】
本発明で用いる有機化合物の具体例としては、多置換アルキルベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレン、ビフェニル、アルキルビフェニル、水素化トリフェニル等の芳香族化合物、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオアミド等のアミド、フェニルメチルケトン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、ジフェニルケトン等のケトン、フェニルメチルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール等のモノアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルキレングリコール、グリセリン等のトリグリコール、ペンタエリトリット等のテトラグリコール以上のポリグリコール、ポリオール系化合物または、エチレングリコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピル、モノブチル等のモノアルキルエーテル又は、エチレングリコールのモノフェニル、モノトルイル等のモノアリールエーテル、ジフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルアリールエーテル等のエーテル系化合物またはジエチエルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、ジエチレントリアミン、ホルムアミド、テトラエチレンペンタミン、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、イソキノリン、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミン系化合物が挙げられる。
【0037】
また、コハク酸のジメチル、ジエチル、ジプロピル等の脂肪族カルボン酸エステル、安息香酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル等のエステル化合物、テレフタル酸のジメチル、ジエチル、ジプロピル等の芳香族カルボン酸ジエステルやエステルグリコールも使用できる。
【0038】
さらに、チオール系化合物、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸系化合物、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド等のスルホン化合物、スルフィン化合物、アミンオキシド系化合物、トリフェニルメチルカチオン系化合物、ジクロロ−ジシアノベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、キノンも使用できる。
【0039】
さらに、ニトロベンゼン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン、ニトロフェノール、ニトロキシレン、ニトロナフタレン、ニトロキシド化合物等のニトロ系化合物も使用できる。
【0040】
さらに、パラフィン系化合物、シクロパラフィンやそのアルキル置換体であるナフテン系化合物も使用できる。
【0041】
これらは、芳香族炭化水素を含む熱媒、アルキルアロマ系熱媒、パラフィン系熱媒、ナフテン系熱媒等、各種有機系熱媒として知られている化合物や混合物も含む。中でも、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどは熱媒としての使用が知られており、高温での安定性が良好なことから好ましく用いることができる。
【0042】
本発明に用いるフッ素化合物としては、パーフルオロポリエーテル系化合物、有機フッ素化合物や塩素置換フッ素化合物、およびポリビニリデンフルオライド化合物などを使用することもできる。パーフルオロポリエーテル化合物は特に限定されないが、熱媒や潤滑剤としての使用が知られているものなどを適宜用いることができる。有機フッ素化合物や塩素置換フッ素化合物は特に限定されないが、溶剤としての使用が知られているものなどを適宜用いることができる。ポリビニリデンフルオライド化合物は特に限定されないが、潤滑剤としての使用が知られているものなど適宜用いることができる。
【0043】
これらフッ素化合物は不燃性であり、沸点が高く、高温での安定性が良好なことから好ましく用いることができる。
【0044】
本発明に用いるケイ素化合物としては種々のものを用いることができるが、中でもフェニルシリコーン系化合物やポリシロキサン系化合物など、シリコーンとして知られる有機ポリシロキサン類は好適である。これらは、シリコーン系潤滑剤やシリコーン系熱媒として知られるものも含む。
【0045】
なお、本発明においては、上記したような耐炎化処理液を2種以上混合して用いても良い。
【0046】
また、耐炎化処理液は、その一部又は全部がいわゆる酸化性化合物であると、耐炎化処理の効率が高まり好ましい。ここで、酸化性化合物とは、水素受容性或いは酸素放出性のある有機化合物をいう。例えば、スルホン化合物、スルフィン化合物、キノン、ニトロ系化合物等が挙げられる。更に具体的には、「実験化学講座23、有機合成4、酸化反応」(出版社:丸善)の第6章第299頁に記載されている、ジメチルスルホキシド、テトラクロロー1,2−ベンゾキノン、ニトロベンゼン等を挙げることができる。
【0047】
これら化合物と、アクリル系繊維との親和性が強すぎることにより、繊維の溶解や糸切れが生じる場合には、アクリル系繊維の重合体骨格の一部にエチレンジメタクリレートのような3次元架橋成分を導入したり、酸化処理、紫外線処理、電子線処理等を利用して重合体成分の一部又は全部を架橋することもできる。
【0048】
本発明では、耐炎化処理後に繊維に付着している耐炎化処理液を除去し、回収してもよい。耐炎化処理液として有機化合物やケイ素化合物を用いた場合には、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,Nージメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、ヘキサン等の有機溶媒やそれら有機溶媒と水とを組み合わせることによって洗浄除去できる。或いは、任意の界面活性剤と水によっても洗浄除去できる。また、有機溶媒に溶解しないフッ素化合物はかかるフッ素化合物が溶解する低沸点フッ素化合物で洗浄除去し、低沸点フッ素化合物は乾燥除去すれば良い。かかる洗浄の際にローラー、ガイド、ニップローラー、超音波といった物理的手法や加熱する方法をあわせて使用することは、洗浄効率が向上するため好ましい。
【0049】
本発明の製造方法は、耐炎化処理において、100〜10000Paの圧力を付与することが重要である。好ましくは500〜7000Pa、より好ましくは1000〜5000Paである。かかる圧力は100Pa未満の場合には、圧縮効果が小さいため、厚みが0.01〜0.5mmにならない。また付与する圧力が10000Paを超える場合には、繊維を傷めてしまい、機械的特性が低下することがある。
【0050】
圧力を付与する方法は、特に限定されるものではなく、連続処理でもバッチ処理でも行うことができる。例えば、連続処理の場合は耐炎化処理液中に前駆体繊維布帛を供給し、所望の場所でロールプレスやベルトプレスを用いることにより前記圧力を付与することができる。また、バッチ処理の場合には、例えば前駆体繊維布帛を耐炎化処理液中に浸した後に、好ましくは布帛中の単繊維間に液が浸透した状態、より好ましくは単繊維の内部まで液が浸透した状態で、ホットプレートプレスを用いて前記圧力を付与しつつ、耐炎化処理することができる。尚、本発明の耐炎化繊維の製造方法においては、このように圧力を付与する工程以外に、圧力を付与せず、耐炎化処理液中で耐炎化処理する工程を含んでいてもよいし、圧力を付与しながら耐炎化処理する工程と付与せずに耐炎化処理工程を交互に実施してもよい。圧力を付与せずに耐炎化処理する工程を含める場合には、前記圧力を付与しつつ耐炎化処理する工程が、全耐炎化処理時間の3分の1以上の時間を要するのが好ましい。尚、耐炎化処理に要する時間は、耐炎化処理の反応速度に応じて決定することができ、耐炎化処理する全時間としては、生産効率を考慮すると好ましくは0.01〜480分、より好ましくは5〜240分、更に好ましくは10〜100分の範囲で適宜設定することができる。
【0051】
さらに、本発明の耐炎化繊維の製造方法において、耐炎化処理温度は180〜300℃であることが好ましい。より好ましくは190〜290℃、さらに好ましくは200〜280℃である。ここでいう耐炎化処理温度とは、耐炎化処理液中で圧力を付与する場合には耐炎化処理液の温度をいい、耐炎化処理液に浸漬された布帛を耐炎化処理液中から取り出して圧力を付与する場合には、圧力付与面の温度をいう。耐炎化処理液の温度と圧力付与面の温度が上記範囲であることがより好ましい。耐炎化処理温度が180℃未満の場合には、耐炎化が進行しにくく、耐炎化に長時間要するために生産効率が低下することがある。耐炎化処理温度が300℃を超える場合には、前駆体繊維の耐熱性を超えるために耐炎化繊維が得られないことがある。
【0052】
得られる耐炎化繊維布帛の耐熱性を向上させるため、又は、続く炭化処理後の炭素繊維布帛の物性を高めるために、前記耐炎化処理後の耐炎化繊維布帛を、酸化性雰囲気中、20〜400℃、好ましくは100〜350℃、より好ましくは180〜300℃で酸化処理することもできる。ここにいう酸化処理とは、例えば、加熱空気処理のことをいい、かかる範囲から外れると、生産効率が低下したり、収率や得られる耐炎化繊維布帛の品位が低下することがある。また、酸化処理の所要時間は、好ましく240分以下であり、より好ましくは120分以下、更に好ましくは60分以下である。かかる範囲から外れると、生産効率が低下したり、収率や得られる耐炎化繊維布帛の品位が低下することがある。
【0053】
本発明においては、耐炎化処理後または酸化処理後に、更に布帛に圧力を付与する工程、いわゆるプレス工程を設けてもよい。好ましくは70〜400℃で、0.5〜50MPaの圧力を付与することにより、更に厚みを薄くし、嵩密度を高めることができる。かかる圧力は、より好ましくは0.7〜40MPaであり、さらに好ましくは1〜30MPaである。かかる圧力が0.5MPa未満の場合には、厚みを薄くする効果が小さい場合があり、50MPaを超える場合には、繊維を傷めて、かえって布帛の機械的特性が低下することがある。
【0054】
かかる処理時の温度は70〜400℃が好ましい。より好ましくは100〜350℃、さらに好ましくは180〜300℃である。温度が70℃未満の場合には、繊維に対する熱付与の効果が小さいため圧力付与の効果が十分に発現しない場合があり、温度が400℃を超える場合には、耐炎化繊維布帛の耐熱性を超えるために、収率や耐炎化繊維布帛の品位が低下することがある。尚、ここでいう処理時の温度は圧力付与のプレス面の表面温度をいう。尚、かかるプレス工程は前記耐炎化処理工程に引き続いて、耐炎化処理液中で行ってもよく、或いは前記酸化処理後に酸化性雰囲気中でおこなってもよいが、酸化性雰囲気中で行うことが、耐炎化繊維布帛を圧縮し、嵩密度を高める効果が大きいという点からより好ましい。かかる圧力付与の方法は、特に限定されるものではないが、ロールプレスやベルトプレスを用いることが連続処理の場合に好ましく、ホットプレートプレスを用いることがバッチ処理の場合には好ましい。
【0055】
このように、耐炎化処理後もしくは酸化処理後に、更に圧力を付与する工程を設ける場合、その時間は適宜決められるが、5秒〜60分の範囲が好ましく、より好ましくは10秒〜30分である。かかる範囲から外れると、所望する厚み、嵩密度の耐炎化繊維を得るには時間がかかり、生産効率が低下したり、かえって布帛表面を痛める場合がある。
【0056】
本発明において、耐炎化繊維布帛は前駆体繊維を布帛化した前駆体繊維布帛を耐炎化処理することで得られる。
【0057】
前駆体繊維は、ポリアクリロニトリル、レーヨン、リグニン、ポリビニルアルコール、ポリアセチレン、ピッチなどを原料とする各種前駆体繊維が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。高強度という点では、ポリアクリロニトリルを主原料とするアクリル系共重合体からなるものが好ましい。
【0058】
かかるアクリル系共重合体は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上のアクリロニトリルと、いわゆる耐炎化促進成分が共重合された共重合体からなるものが好ましい。かかる共重合体を重合する方法としては、特に限定されないが溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が適用できる。
【0059】
耐炎化促進成分としては、ビニル基を含有する化合物が好ましい。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等、より好ましくは、これらの一部又は全量を、アンモニアで中和したアクリル酸、メタクリル酸、又はイタコン酸のアンモニウム塩からなる共重合体が挙げられる。その他、アリルスルホン酸金属塩、メタリルスルホン酸金属塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルやアクリルアミドなども共重合できる。
【0060】
紡糸方法としては、特に限定されないが湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、溶融紡糸法およびその他公知の方法を用いることができる。好ましくは湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法により上述したようなアクリル系共重合体と溶媒からなる紡糸原液を口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる方法を用いることができる。
【0061】
凝固浴中に導入して糸条を凝固せしめた後、水洗、延伸、乾燥および油剤付与等を経て、アクリル系繊維を得ることができる。
【0062】
糸条の高密度化による製造コスト低減のため、前駆体繊維としては、フィラメント数が、好ましくは1,000〜3,000,000本/束、より好ましくは12,000〜3,000,000本/束、更に好ましくは24,000〜2,500,000本/束、特に好ましくは36,000〜2,000,000本/束、最も好ましくは48,000〜2,000,000本/束である束状のアクリル系繊維が良い。かかるアクリル系繊維束のフィラメント数は高生産性という観点から1,000以上であることが好ましいが、3,000,000を超えると続く布帛化は困難となり、かえって加工コスト増につながることがある。
【0063】
アクリル系繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.56〜4dtex、より好ましくは0.6〜3dtex、更に好ましくは0.8〜2.5dtexであるのが良い。アクリル系繊維の単繊維繊度は高生産性の観点から0.56dtex以上であることが好ましいが、4dtexを超えると単繊維内部まで耐炎化処理できないことがある。
【0064】
かかる前駆体繊維を布帛化することにより前駆体繊維布帛を得る。ここで、布帛とは主に不織布、織物、編物のことであるが、三次元織物、多軸たて編物、レース、組紐、網なども含まれる。中でも不織布は工程が少なく、加工コストが安いために好ましい。ここでいう不織布にはマットやフェルトも含まれる。
【0065】
本発明において、前駆体繊維布帛の単位面積あたりの重量は40〜250g/m2であることが好ましく、より好ましくは50〜200g/m2である。単位面積あたりの重量がかかる範囲から外れる場合には、耐炎化処理して得られる耐炎化繊維布帛の単位面積あたりの重量が所望する範囲から外れる傾向がある。
【0066】
前駆体繊維を不織布化する方法としては、特に限定されるものではないが、ニードルパンチ方式、ウォータージェット方式が不織布の厚み方向の繊維配向を高めるため好ましい。前駆体繊維不織布の厚み方向の繊維配向をさらに高めるためにニードルパンチ方式では針密度、パンチング回数を、ウォータージェット方式では水圧、水流密度を適宜制御することが好ましい。
【0067】
次に本発明の炭素繊維布帛の製造方法としては、前記耐炎化繊維布帛を、不活性雰囲気中、好ましくは300〜2,000℃、より好ましくは800〜2,000℃、更に好ましくは1,000〜1,800℃で炭化処理することにより炭素繊維布帛を得ることができる。
【0068】
本発明において得られる炭素繊維布帛は圧縮による厚み変化が小さく、かつ、表面粗さが小さく、かつ、厚み方向の電気抵抗が小さいために、燃料電池用電極として好適に用いることができる。
【0069】
燃料電池用電極の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法も適宜用いることができる。例えば、カーボンブラックを炭素繊維布帛の表面または内部、または表面および内部に添加し、燃料電池に用いたときの水詰まりを防止する目的で撥水性の物質を添加する方法がある。撥水性の物質は特に限定されないが、たとえば含フッ素化合物や含珪素化合物などが好ましく使用される。
【0070】
かかる燃料電池用電極と触媒層とを層状に配置したり、燃料電池用電極と触媒層と高分子電解質膜配置してユニットを構成して、該ユニットの1つ以上を有する燃料電池として好ましく使用される。
【0071】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。尚、実施例では、各物性値は以下の方法により測定した。尚、耐炎化処理液として有機化合物を用いた場合にはメチルアルコールにより洗浄除去し、80℃で乾燥したものを測定に用い、耐炎化処理液としてフッ素化合物を用いた場合には、低沸点フッ素化合物としてハイドロフルオロエーテルを用いて洗浄除去し、その後80℃で乾燥したものを測定に用いた。
【0072】
各実施例の耐炎化処理条件およびプレス工程条件と、得られた耐炎化繊維布帛および炭素繊維布帛の特性をそれぞれ表1、2、3、4にまとめて示す。
<厚み>
平滑な台上に布帛を置き、直径5mmのマイクロメーター圧子を上から下ろした。圧子に荷重を加えて所望の面圧にして厚みを測定し、3カ所測定した平均値を用いた。
<嵩密度>
布帛を縦10cm、横10cmにカットした試験片を用い、単位面積あたりの重量B(g/m2)と、布帛を面圧0.15MPaで加圧した時の厚みC(mm)から下式により求めた。
【0073】
嵩密度 A(g/cm3)=B/(C×1000)
<厚み方向の繊維配向>
厚み方向の繊維配向D(%)は前駆体繊維布帛、耐炎化繊維布帛および炭素繊維布帛を溶融した樹脂に浸漬、冷却固化した後に、厚み方向および厚み方向と直交する方向にに切断し、それぞれの切断面を研磨し、偏光顕微鏡によって、1cm2当たりの厚み方向に配向する繊維本数Fと1cm2当たりの厚み方向と直交する方向に配向する繊維本数Gを数え、下式により求めた。
【0074】
D(%)={F/(F+G)}×100
<表面粗さ>
表面粗さRaはJISB0601に示す方法に基づいて測定した。装置として株式会社ミツトヨ社製、サーフテストSJ−201Pを用い、n数=3の平均値を用いた。
<厚み方向の電気抵抗>
2枚の2.5cm×2cm(厚み1cm)の金メッキした電極で炭素繊維布帛の両面を全面接触するようにはさみ、1MPaでプレスし、電流1Aを流した。そのときの電圧E(V)を測定し、厚み方向の電気抵抗R(mΩ・cm2)を下式により求め、n数=3の平均値を用いた。
【0075】
R(mΩ・cm2)=1000×E(V)×炭素繊維布帛面積(cm2)
<布帛の引張強さ>
長さ6cm、幅1cmにカットした布帛を試験片として用い、万能材料試験機により、スパン間距離3cm、引張速度3mm/分で測定し、n数=3の平均値を用いた。尚、実施例において万能材料試験機としてはテンシロン(登録商標)試験機を用いた。
<燃料電池電圧>
炭素繊維布帛をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)水性ディスパージョンに浸漬後引き上げて乾燥して、PTFEを20重量%付着させた。その炭素繊維布帛上にカーボンブラックとPTFEの混合物(混合比8:2(重量比))を塗布し380℃で熱処理してカーボン層付き布帛を作製した。カーボンブラックとPTFE混合物の付着量は約2mg/cm2であった。一方、高分子電解質膜であるNafion(登録商標)112(E.I.du Pont de Nemours and Company製)の両面に触媒である白金担持カーボンを塗布したPTFEフィルム重ね、触媒のみをNafion112膜に転写させた。触媒である白金の担持量は約0.5mg/cm2であった。かかる膜−触媒シートをカーボン層を内側に向けた2枚のカーボン層付き布帛で挟んで130℃、3MPaで加熱加圧して一体化し、膜−電極接合体(MEA)を得た。このMEAを溝付きセパレータに挟んで常法により電池特性を測定した。電池温度は70℃、水素ガス加湿温度は80℃、空気ガス加湿温度は60℃で、ガス圧力は大気圧である。0.7A/cm2における水素利用率は70%、空気利用率は40%である。電圧は高い方が優れている。
[実施例1]
アクリロニトリル99.5モル%とイタコン酸0.5モル%からなる共重合体をジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により重合し、さらにアンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込み、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基をアクリル系共重合体に導入し、共重合成分の含有率が22重量%の紡糸原液を得た。
【0076】
この紡糸原液を、40℃で、直径0.15mm、孔数70,000の紡糸口金を用い、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させた後、3℃にコントロールした35%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とした。
【0077】
この凝固糸条を、常法により水洗した後、温水中で3.5倍に延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与して延伸糸を得た。
【0078】
この延伸糸を、180℃の加熱ローラーを用いて、乾燥緻密化処理を行い、 29.4MPaの加圧スチーム中で、延伸することにより、製糸全延伸倍率が13倍、単繊維繊度0.9dtex、フィラメント数70,000のアクリル系繊維束を得た。
【0079】
アクリル系繊維束に捲縮付与し、51mm切断した後、カード処理し、厚み方向の繊維配向が50%になるようにニードルパンチ方式不織布化を行い、単位面積あたりの重量100g/m2のアクリル系繊維不織布を得た。このアクリル系繊維不織布を耐炎化処理液であるニトロベンゼンの浴槽に室温、1分間浸漬後、浴槽から取り出し、ホットプレートプレスにより、3000Paの圧力を付与した状態で、210℃、90分耐炎化処理した。耐炎化処理後、空気雰囲気中250℃、10分酸化処理した。
【0080】
得られた耐炎化繊維布帛を更にプレス圧5MPa、200℃、1分プレス処理した後、窒素雰囲気中、1500℃、3分間処理して炭素繊維布帛を得た。かかる炭素繊維布帛を用いて燃料電池電圧を測定したところ、良好な特性を示した。
[実施例2〜6]
耐炎化処理液、耐炎化温度および時間をそれぞれ変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[実施例7,8]
耐炎化処理時に付与する圧力を変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[実施例9]
耐炎化処理後の酸化処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[実施例10]
酸化処理後のプレス工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[実施例11]
耐炎化処理後の酸化処理およびその後のプレス工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[実施例12、13]
前駆体繊維布帛の単位面積あたりの重量を変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[比較例1]
耐炎化処理液を用いずに空気雰囲気でホットプレートによる耐炎化処理を行った以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛を得た。得られた耐炎化繊維布帛の面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差は大きく、また耐熱性が十分ではないために、続く炭化処理後、炭素繊維布帛を得ることができなかった。
[比較例2]
耐炎化処理液を沸点120℃の2−ニトロプロパノールに変えた外は実施例1と同様にして耐炎化処理を行ったが、耐炎化処理剤が気体状になってしまったために得られた耐炎化繊維布帛の面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差は大きく、耐熱性が十分ではないために、続く炭化処理後、炭素繊維布帛を得ることができなかった。
[比較例3]
耐炎化処理時に付与する圧力を20000Paに変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛を得たが繊維傷みが多発し、部分的に粉化しており、機械的特性が著しく低下していたため、厚み変化の測定ができず、また続く炭化処理を行うことができなかった。
[比較例4]
耐炎化処理時に付与する圧力を50Paに変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。得られた耐炎化繊維布帛の面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差は大きく、炭素繊維布帛の厚み方向の電気抵抗を大きかった。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、薄くて高嵩密度な耐炎化繊維布帛を製造することができる。得られた耐炎化繊維布帛を炭化処理することにより、薄くて高嵩密度で高性能な炭素繊維布帛を製造することができ、かかる炭素繊維布帛は、例えば燃料電池用電極として好適に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高品質な耐炎化繊維布帛、および炭素繊維布帛、並びにそれらの製造方法に関するものであって、例えば燃料電池用電極基材としても好適な炭素繊維布帛およびそれを得るための耐炎化繊維布帛、並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維布帛はその力学的、化学的諸特性および軽量性などにより、各種の用途、例えば航空機やロケットなどの航空・宇宙用航空材料、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣竿などのスポーツ用品に広く使用され、さらに船舶、自動車などの運輸機械用途分野などにも使用されようとしている。また、近年は炭素繊維布帛の高い導電性や放熱性から、携帯電話やパソコンの筐体等の電子機器部品や、燃料電池の電極用途への応用が強く求められており、そのような用途では薄くて高嵩密度で、表面が平滑な炭素繊維布帛が求められている。しかしながら、炭素繊維は伸度が低く脆弱なために、炭素繊維布帛にしてから加工すると炭素繊維が傷み、機械的特性低下や収率が悪化してしまうことがある。そのため、耐炎化繊維布帛を中間材料として用い炭素繊維布帛を製造する方法が採られることが多く、中間材料である耐炎化繊維布帛の高嵩密度化が求められている。
【0003】
また、耐炎化繊維布帛は、上記のような炭素繊維布帛を得るための中間材料としてだけではなく、溶接作業等で飛散する高熱の鉄粉や溶接火花等から人体を保護するスパッタシート、さらには航空機等の防炎断熱材など難燃性、防炎性を必要とする用途で幅広く利用されている。これらの難燃性、防炎性を必要とする分野における需要は増しており、より高性能な耐炎化繊維布帛を高効率で生産することが求められている。
【0004】
耐炎化繊維布帛の製造方法としては耐炎化繊維を紡績工程にかけてスライバー状にするか、水中に分散、抄造してウエブを形成し、これに柱状流処理を行って耐炎化繊維同士を絡み合せる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしかかる方法では不織布を緻密にする手段が十分ではなく、得られた耐炎化繊維不織布の嵩密度が低いという問題がある。
【0005】
耐炎化繊維不織布を緻密で薄くする方法として、ポリアクリロニトリル系酸化繊維からなる酸化繊維シート、すなわちアクリル耐炎化繊維を150〜300℃で10〜100MPaの圧力で圧縮処理する方法が示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、ここに示される方法で得られた耐炎化繊維不織布は嵩密度が最大でも0.59g/cm3であり、かかる耐炎化繊維布帛を中間材料として得られる炭素繊維布帛の電気抵抗は十分低いとはいえず、通電性向上を考えるとさらに薄肉、高嵩密度のものが求められる。
【0006】
また、耐炎化繊維布帛の別の製造方法としては前駆体繊維を布帛化した後、空気中、耐炎化処理する方法やアクリル系繊維不織布を加熱ローラーに接触させて耐炎化処理する方法が用いられている(例えば、特許文献3参照)。しかし、前駆体繊維布帛を空気中、耐炎化処理する方法では、耐炎化処理時の熱および反応に起因する収縮のために、得られた耐炎化繊維布帛の表面形態が悪いことがある。また、上記特許文献3で示されているアクリル系繊維不織布を加熱ローラーに接触させて耐炎化処理する方法では、加熱ローラーに接触していない面や不織布内部の耐炎化が十分に進行していないために、難燃性が十分ではない。
【0007】
【特許文献1】特開平9−119052号公報
【0008】
【特許文献2】特開2002−194650号公報(請求項3)
【0009】
【特許文献3】特開平4−65561号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記課題に鑑み高性能な耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を提供し、更にこれらについて生産効率に優れた製造方法を提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的を達成するために、本発明は次の構成を有する。すなわち、単位面積あたりの重量が50〜200g/m2、、嵩密度が0.3〜0.8g/cm3、面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmであって、かつ面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下の耐炎化繊維布帛である。
【0012】
また、本発明は、前駆体繊維布帛を耐炎化処理液中、100〜10000Paの圧力を付与しつつ、180〜300℃で耐炎化処理する耐炎化繊維布帛の製造方法である。
【0013】
また、本発明の炭素繊維布帛は単位面積あたりの重量が30〜180g/m2、嵩密度が0.2〜0.75g/cm3で、面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmであって、かつ面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下である炭素繊維布帛である。
【0014】
また前記耐炎化繊維布帛を不活性雰囲気中300〜2000℃で炭化処理する炭素繊維布帛の製造方法である。
【0015】
さらには、前記炭素繊維布帛を用いてなる燃料電池用電極である。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について、さらに詳しく説明する。
【0017】
本発明の耐炎化繊維布帛は単位面積あたりの重量が50〜200g/m2である。好ましくは60〜190g/m2であり、より好ましくは70〜180g/m2である。単位面積あたりの重量が50g/m2未満の場合は、引張強さなど布帛としての強度を高くすることが難しい。単位面積当たりの重量が200g/m2を超える場合には、厚みを後述の範囲とすることが難しい。
【0018】
本発明の耐炎化繊維布帛は嵩密度が0.3〜0.8g/cm3である。好ましくは0.32〜0.78g/cm3であり、より好ましくは0.34〜0.76g/cm3である。嵩密度が0.3g/cm3未満の場合は、後述する炭素繊維布帛の嵩密度を0.2以上とすることが困難であり、本発明の目的の1つである電気抵抗の低い炭素繊維布帛を得るための中間体としては適さない。また、嵩密度を0.8g/cm3を超えるようにするのは難しく、加工コスト増につながる。尚、ここでいう嵩密度とは、後述する面圧0.15MPaにおける厚み(mm)、および前記単位面積あたりの重量(g/m2)から下記式により求められる。
【0019】
嵩密度(g/cm3)=単位面積当たりの重量/(厚み×1000)
本発明の耐炎化繊維布帛は面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmである。好ましくは0.05〜0.45mmであり、より好ましくは0.08〜0.4mmである。かかる厚みが0.01mm未満の場合は、引張強さなど布帛としての強度を高くすることが難しく、0.5mmを超える場合には、後述する炭素繊維布帛の厚みを0.5mmとすることが困難であり、電気抵抗の低い炭素繊維布帛を得るための中間体として適さない。尚、ここで面圧0.15MPaにおける厚みとは、布帛にマイクロメータ圧子により0.15MPaの面圧を付与した状態で、厚みを測定した値である。
【0020】
また、本発明の耐炎化繊維布帛は、面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差は0.1mm以下である。好ましくは0.095mm以下、より好ましくは0.09mm以下である。かかる厚み差は、高嵩密度の指標であり、0.1mmを超える場合には、布帛の高嵩密度化が十分ではないため、炭素繊維布帛となしたときに電気抵抗が所望の範囲とならない。厚み差は小さいほど好ましいが、0.01mm程度であれば本発明としては十分である。
【0021】
本発明の耐炎化繊維布帛の比重は後述する耐炎化処理時間や耐炎化温度に依存するが、1.30〜1.48g/cm3の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.35〜1.45g/cm3である。耐炎化繊維の比重が1.30g/cm3未満では、十分な難燃性、耐炎性を有していないために、続く炭化処理における収率が低下する場合がある。耐炎化繊維の比重が1.48g/cm3を超える場合には、単繊維伸度が10%を下回り、脆弱化してしまうことがある。
【0022】
本発明の耐炎化繊維布帛は引張り強さが1kgf/cm以上であることが好ましい。より好ましくは1.3kgf/cm以上であり、さらに好ましくは1.7kgf/cm以上である。引張り強さは少なくとも1方向が上記値を満たしていればよく、連続した耐炎化繊維布帛の場合には長手方向の引張り強さが上記値を満たしていればよい。引張り強さが1kgf/cm未満の場合には、炭化処理し炭素繊維布帛を得たときに所望の引張り強さが発現しないことがある。引張り強さは強いほど好ましいが、3kgf/cm程度であれば本発明としては十分である。かかる引張強さは長さ6cm、幅1cmの布帛を試験片とし、スパン間距離3cm、引張速度3mm/分の条件で、万能材料試験機を用いて測定される。
【0023】
本発明の耐炎化繊維布帛は厚み方向の繊維配向が30〜80%であることが好ましい。より好ましくは35〜75%であり、さらに好ましくは40〜70%である。厚み方向の繊維配向が30%未満の場合には、炭化処理し炭素繊維布帛を得たときに厚み方向の電気抵抗が高くなる傾向ある。厚み方向の繊維配向を80%を超えるようにするのは難しく、加工コスト増につながる。かかる厚み方向の繊維配向とは耐炎化繊維布帛を溶融した樹脂に浸漬、冷却固化した後に、厚み方向および厚み方向と直交する方向に切断、研磨し、偏光顕微鏡によって、1cm2当たりの厚み方向に配向する繊維本数と1cm2当たりの厚み方向と直交する方向に配向する繊維本数を数え、下式により求めることができる。
【0024】
厚み方向の繊維配向(%)={1cm2当たりの厚み方向に配向する繊維本数/(1cm2当たりの厚み方向に配向する繊維本数+1cm2当たりの厚み方向と直行する方向に配向する繊維本数)}×100
本発明の炭素繊維布帛は単位面積あたりの重量が30〜180g/m2である。好ましくは35〜170g/m2であり、より好ましくは40〜160g/m2である。単位面積あたりの重量が30g/m2未満の場合は、引張強さなど布帛としての強度を高くすることが難しい。単位面積あたりの重量が180g/m2を超える場合には、厚みを後述の範囲とすることが難しく、電気抵抗を低くすることがが難しい。
【0025】
本発明の炭素繊維布帛は嵩密度が0.2〜0.75g/cm3である。好ましくは0.24〜0.73g/cm3であり、より好ましくは0.26〜0.7g/cm3である。嵩密度が0.2g/cm3未満の場合は、電気抵抗を十分に下げることができない。また、嵩密度を0.75g/cm3を超えるようにするのは難しく、加工コスト増につながる。
【0026】
本発明の炭素繊維布帛は面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmである。好ましくは0.05〜0.45mmであり、より好ましくは0.08〜0.4mmである。厚みが0.01mm未満の場合は、引張強さなど、布帛自体の強度を高くすることが難しい。厚みが0.5mmを超える場合には、所望の電気特性を得ることができない。尚、ここでいう厚みは前記、耐炎化繊維布帛の厚み測定と同様の方法で測定するものである。
【0027】
また、本発明の炭素繊維布帛は、面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下である。好ましくは0.095mm以下、より好ましくは0.09mm以下である。かかる厚み差は嵩密度の指標であり、0.1mmを超える場合には、高嵩密度化が十分ではないために、電気抵抗が所望の値とならない、また燃料電池電圧測定の際にセパレーターのガス流路である溝を埋めてしまい、燃料電池電圧が低くなる傾向がある。厚み差は小さいほど好ましいが、0.01mm程度であれば本発明の目的としては十分である。
【0028】
本発明の炭素繊維布帛は表面粗さRa20μm以下であることが好ましい。より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下である。表面粗さRaが20μmを超える場合には、電極用途の加工において表面に触媒層やカーボン層の塗布を行うときに塗布層の均一性が不十分となる場合がある。かかる表面粗さRaは、その数値が小さい程好ましいが、10μm程度であれば本発明の目的としては十分である。ここで炭素繊維布帛の表面粗さRaとは算術平均粗さをいい、JISB0601の方法で測定することができる。
【0029】
本発明の炭素繊維布帛は厚み方向の繊維配向が30〜80%であることが好ましい。より好ましくは35〜75%であり、さらに好ましくは40〜70%である。かかる範囲とすることで、電極基材用途により好適な電気特性(高導電性)を発現させることができる。
【0030】
本発明の炭素繊維布帛は厚み方向の電気抵抗が10mΩ・cm2以下であることが好ましい。より好ましくは9mΩ・cm2以下、さらに好ましくは8mΩ・cm2以下である。厚み方向の電気抵抗が10mΩ・cm2を超える場合には、燃料電池電極としたときに、燃料電池電圧が低くなる傾向がある。
【0031】
本発明の炭素繊維布帛は引張強さが0.2kgf/cm以上であることが好ましい。より好ましくは0.4kgf/cm以上、さらに好ましくは0.5kgf/cm以上である。引張強さは少なくとも1方向が上記値を満たしていれば良く、連続した長尺の布帛の場合、長手方向の引張強さが上記値を満たしていればよい。引張強さが0.2kgf/cm未満の場合には、高次加工の方法によっては、布帛に傷みが生じる場合がある。
【0032】
本発明の炭素繊維布帛は厚み方向に14cm/secの空気を透過させたときの差圧が10〜100Paであることが好ましい。より好ましくは15〜90Pa、さらに好ましくは20〜80Paである。差圧が10Pa未満の場合には、炭素繊維布帛の高嵩密度が低めであるため、電気抵抗が高くなる傾向にあり、差圧が100Paを超える場合には、燃料電池電極としたときに空気や水素および水の透過性が低く電池電圧が低くなる傾向がある。布帛の厚さ方向に14cm/secの空気を透過させたときの、布帛を挟んで空気の上流側と下流側の圧力差を差圧として測定する。
【0033】
次に、上記耐炎化繊維布帛および炭素繊維布帛を得るのに好適な製造方法の一例について説明する。
【0034】
本発明の耐炎化繊維布帛の製造方法は、前駆体繊維布帛を耐炎化処理液中、100〜10000MPaの圧力を付与しつつ、180〜300℃で耐炎化処理するものである。すなわち、耐炎化処理温度で液状になっている耐炎化処理液中、一定圧力を付与しながら耐炎化処理することにより、前駆体繊維布帛の内部および前駆体繊維の単繊維内部にまで処理液が浸透しやすく、均一な耐炎化が可能であり、良好な特性を有する耐炎化繊維布帛が得られるものである。
【0035】
本発明で用いる耐炎化処理液としては、有機化合物、フッ素化合物、ケイ素化合物が挙げられる。
【0036】
本発明で用いる有機化合物の具体例としては、多置換アルキルベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレン、ビフェニル、アルキルビフェニル、水素化トリフェニル等の芳香族化合物、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオアミド等のアミド、フェニルメチルケトン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、ジフェニルケトン等のケトン、フェニルメチルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール等のモノアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルキレングリコール、グリセリン等のトリグリコール、ペンタエリトリット等のテトラグリコール以上のポリグリコール、ポリオール系化合物または、エチレングリコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピル、モノブチル等のモノアルキルエーテル又は、エチレングリコールのモノフェニル、モノトルイル等のモノアリールエーテル、ジフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、アルキルアリールエーテル等のエーテル系化合物またはジエチエルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、ジエチレントリアミン、ホルムアミド、テトラエチレンペンタミン、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、イソキノリン、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミン系化合物が挙げられる。
【0037】
また、コハク酸のジメチル、ジエチル、ジプロピル等の脂肪族カルボン酸エステル、安息香酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル等のエステル化合物、テレフタル酸のジメチル、ジエチル、ジプロピル等の芳香族カルボン酸ジエステルやエステルグリコールも使用できる。
【0038】
さらに、チオール系化合物、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸系化合物、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド等のスルホン化合物、スルフィン化合物、アミンオキシド系化合物、トリフェニルメチルカチオン系化合物、ジクロロ−ジシアノベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、キノンも使用できる。
【0039】
さらに、ニトロベンゼン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン、ニトロフェノール、ニトロキシレン、ニトロナフタレン、ニトロキシド化合物等のニトロ系化合物も使用できる。
【0040】
さらに、パラフィン系化合物、シクロパラフィンやそのアルキル置換体であるナフテン系化合物も使用できる。
【0041】
これらは、芳香族炭化水素を含む熱媒、アルキルアロマ系熱媒、パラフィン系熱媒、ナフテン系熱媒等、各種有機系熱媒として知られている化合物や混合物も含む。中でも、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどは熱媒としての使用が知られており、高温での安定性が良好なことから好ましく用いることができる。
【0042】
本発明に用いるフッ素化合物としては、パーフルオロポリエーテル系化合物、有機フッ素化合物や塩素置換フッ素化合物、およびポリビニリデンフルオライド化合物などを使用することもできる。パーフルオロポリエーテル化合物は特に限定されないが、熱媒や潤滑剤としての使用が知られているものなどを適宜用いることができる。有機フッ素化合物や塩素置換フッ素化合物は特に限定されないが、溶剤としての使用が知られているものなどを適宜用いることができる。ポリビニリデンフルオライド化合物は特に限定されないが、潤滑剤としての使用が知られているものなど適宜用いることができる。
【0043】
これらフッ素化合物は不燃性であり、沸点が高く、高温での安定性が良好なことから好ましく用いることができる。
【0044】
本発明に用いるケイ素化合物としては種々のものを用いることができるが、中でもフェニルシリコーン系化合物やポリシロキサン系化合物など、シリコーンとして知られる有機ポリシロキサン類は好適である。これらは、シリコーン系潤滑剤やシリコーン系熱媒として知られるものも含む。
【0045】
なお、本発明においては、上記したような耐炎化処理液を2種以上混合して用いても良い。
【0046】
また、耐炎化処理液は、その一部又は全部がいわゆる酸化性化合物であると、耐炎化処理の効率が高まり好ましい。ここで、酸化性化合物とは、水素受容性或いは酸素放出性のある有機化合物をいう。例えば、スルホン化合物、スルフィン化合物、キノン、ニトロ系化合物等が挙げられる。更に具体的には、「実験化学講座23、有機合成4、酸化反応」(出版社:丸善)の第6章第299頁に記載されている、ジメチルスルホキシド、テトラクロロー1,2−ベンゾキノン、ニトロベンゼン等を挙げることができる。
【0047】
これら化合物と、アクリル系繊維との親和性が強すぎることにより、繊維の溶解や糸切れが生じる場合には、アクリル系繊維の重合体骨格の一部にエチレンジメタクリレートのような3次元架橋成分を導入したり、酸化処理、紫外線処理、電子線処理等を利用して重合体成分の一部又は全部を架橋することもできる。
【0048】
本発明では、耐炎化処理後に繊維に付着している耐炎化処理液を除去し、回収してもよい。耐炎化処理液として有機化合物やケイ素化合物を用いた場合には、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,Nージメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、ヘキサン等の有機溶媒やそれら有機溶媒と水とを組み合わせることによって洗浄除去できる。或いは、任意の界面活性剤と水によっても洗浄除去できる。また、有機溶媒に溶解しないフッ素化合物はかかるフッ素化合物が溶解する低沸点フッ素化合物で洗浄除去し、低沸点フッ素化合物は乾燥除去すれば良い。かかる洗浄の際にローラー、ガイド、ニップローラー、超音波といった物理的手法や加熱する方法をあわせて使用することは、洗浄効率が向上するため好ましい。
【0049】
本発明の製造方法は、耐炎化処理において、100〜10000Paの圧力を付与することが重要である。好ましくは500〜7000Pa、より好ましくは1000〜5000Paである。かかる圧力は100Pa未満の場合には、圧縮効果が小さいため、厚みが0.01〜0.5mmにならない。また付与する圧力が10000Paを超える場合には、繊維を傷めてしまい、機械的特性が低下することがある。
【0050】
圧力を付与する方法は、特に限定されるものではなく、連続処理でもバッチ処理でも行うことができる。例えば、連続処理の場合は耐炎化処理液中に前駆体繊維布帛を供給し、所望の場所でロールプレスやベルトプレスを用いることにより前記圧力を付与することができる。また、バッチ処理の場合には、例えば前駆体繊維布帛を耐炎化処理液中に浸した後に、好ましくは布帛中の単繊維間に液が浸透した状態、より好ましくは単繊維の内部まで液が浸透した状態で、ホットプレートプレスを用いて前記圧力を付与しつつ、耐炎化処理することができる。尚、本発明の耐炎化繊維の製造方法においては、このように圧力を付与する工程以外に、圧力を付与せず、耐炎化処理液中で耐炎化処理する工程を含んでいてもよいし、圧力を付与しながら耐炎化処理する工程と付与せずに耐炎化処理工程を交互に実施してもよい。圧力を付与せずに耐炎化処理する工程を含める場合には、前記圧力を付与しつつ耐炎化処理する工程が、全耐炎化処理時間の3分の1以上の時間を要するのが好ましい。尚、耐炎化処理に要する時間は、耐炎化処理の反応速度に応じて決定することができ、耐炎化処理する全時間としては、生産効率を考慮すると好ましくは0.01〜480分、より好ましくは5〜240分、更に好ましくは10〜100分の範囲で適宜設定することができる。
【0051】
さらに、本発明の耐炎化繊維の製造方法において、耐炎化処理温度は180〜300℃であることが好ましい。より好ましくは190〜290℃、さらに好ましくは200〜280℃である。ここでいう耐炎化処理温度とは、耐炎化処理液中で圧力を付与する場合には耐炎化処理液の温度をいい、耐炎化処理液に浸漬された布帛を耐炎化処理液中から取り出して圧力を付与する場合には、圧力付与面の温度をいう。耐炎化処理液の温度と圧力付与面の温度が上記範囲であることがより好ましい。耐炎化処理温度が180℃未満の場合には、耐炎化が進行しにくく、耐炎化に長時間要するために生産効率が低下することがある。耐炎化処理温度が300℃を超える場合には、前駆体繊維の耐熱性を超えるために耐炎化繊維が得られないことがある。
【0052】
得られる耐炎化繊維布帛の耐熱性を向上させるため、又は、続く炭化処理後の炭素繊維布帛の物性を高めるために、前記耐炎化処理後の耐炎化繊維布帛を、酸化性雰囲気中、20〜400℃、好ましくは100〜350℃、より好ましくは180〜300℃で酸化処理することもできる。ここにいう酸化処理とは、例えば、加熱空気処理のことをいい、かかる範囲から外れると、生産効率が低下したり、収率や得られる耐炎化繊維布帛の品位が低下することがある。また、酸化処理の所要時間は、好ましく240分以下であり、より好ましくは120分以下、更に好ましくは60分以下である。かかる範囲から外れると、生産効率が低下したり、収率や得られる耐炎化繊維布帛の品位が低下することがある。
【0053】
本発明においては、耐炎化処理後または酸化処理後に、更に布帛に圧力を付与する工程、いわゆるプレス工程を設けてもよい。好ましくは70〜400℃で、0.5〜50MPaの圧力を付与することにより、更に厚みを薄くし、嵩密度を高めることができる。かかる圧力は、より好ましくは0.7〜40MPaであり、さらに好ましくは1〜30MPaである。かかる圧力が0.5MPa未満の場合には、厚みを薄くする効果が小さい場合があり、50MPaを超える場合には、繊維を傷めて、かえって布帛の機械的特性が低下することがある。
【0054】
かかる処理時の温度は70〜400℃が好ましい。より好ましくは100〜350℃、さらに好ましくは180〜300℃である。温度が70℃未満の場合には、繊維に対する熱付与の効果が小さいため圧力付与の効果が十分に発現しない場合があり、温度が400℃を超える場合には、耐炎化繊維布帛の耐熱性を超えるために、収率や耐炎化繊維布帛の品位が低下することがある。尚、ここでいう処理時の温度は圧力付与のプレス面の表面温度をいう。尚、かかるプレス工程は前記耐炎化処理工程に引き続いて、耐炎化処理液中で行ってもよく、或いは前記酸化処理後に酸化性雰囲気中でおこなってもよいが、酸化性雰囲気中で行うことが、耐炎化繊維布帛を圧縮し、嵩密度を高める効果が大きいという点からより好ましい。かかる圧力付与の方法は、特に限定されるものではないが、ロールプレスやベルトプレスを用いることが連続処理の場合に好ましく、ホットプレートプレスを用いることがバッチ処理の場合には好ましい。
【0055】
このように、耐炎化処理後もしくは酸化処理後に、更に圧力を付与する工程を設ける場合、その時間は適宜決められるが、5秒〜60分の範囲が好ましく、より好ましくは10秒〜30分である。かかる範囲から外れると、所望する厚み、嵩密度の耐炎化繊維を得るには時間がかかり、生産効率が低下したり、かえって布帛表面を痛める場合がある。
【0056】
本発明において、耐炎化繊維布帛は前駆体繊維を布帛化した前駆体繊維布帛を耐炎化処理することで得られる。
【0057】
前駆体繊維は、ポリアクリロニトリル、レーヨン、リグニン、ポリビニルアルコール、ポリアセチレン、ピッチなどを原料とする各種前駆体繊維が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。高強度という点では、ポリアクリロニトリルを主原料とするアクリル系共重合体からなるものが好ましい。
【0058】
かかるアクリル系共重合体は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上のアクリロニトリルと、いわゆる耐炎化促進成分が共重合された共重合体からなるものが好ましい。かかる共重合体を重合する方法としては、特に限定されないが溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が適用できる。
【0059】
耐炎化促進成分としては、ビニル基を含有する化合物が好ましい。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等、より好ましくは、これらの一部又は全量を、アンモニアで中和したアクリル酸、メタクリル酸、又はイタコン酸のアンモニウム塩からなる共重合体が挙げられる。その他、アリルスルホン酸金属塩、メタリルスルホン酸金属塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルやアクリルアミドなども共重合できる。
【0060】
紡糸方法としては、特に限定されないが湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、溶融紡糸法およびその他公知の方法を用いることができる。好ましくは湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法により上述したようなアクリル系共重合体と溶媒からなる紡糸原液を口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる方法を用いることができる。
【0061】
凝固浴中に導入して糸条を凝固せしめた後、水洗、延伸、乾燥および油剤付与等を経て、アクリル系繊維を得ることができる。
【0062】
糸条の高密度化による製造コスト低減のため、前駆体繊維としては、フィラメント数が、好ましくは1,000〜3,000,000本/束、より好ましくは12,000〜3,000,000本/束、更に好ましくは24,000〜2,500,000本/束、特に好ましくは36,000〜2,000,000本/束、最も好ましくは48,000〜2,000,000本/束である束状のアクリル系繊維が良い。かかるアクリル系繊維束のフィラメント数は高生産性という観点から1,000以上であることが好ましいが、3,000,000を超えると続く布帛化は困難となり、かえって加工コスト増につながることがある。
【0063】
アクリル系繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.56〜4dtex、より好ましくは0.6〜3dtex、更に好ましくは0.8〜2.5dtexであるのが良い。アクリル系繊維の単繊維繊度は高生産性の観点から0.56dtex以上であることが好ましいが、4dtexを超えると単繊維内部まで耐炎化処理できないことがある。
【0064】
かかる前駆体繊維を布帛化することにより前駆体繊維布帛を得る。ここで、布帛とは主に不織布、織物、編物のことであるが、三次元織物、多軸たて編物、レース、組紐、網なども含まれる。中でも不織布は工程が少なく、加工コストが安いために好ましい。ここでいう不織布にはマットやフェルトも含まれる。
【0065】
本発明において、前駆体繊維布帛の単位面積あたりの重量は40〜250g/m2であることが好ましく、より好ましくは50〜200g/m2である。単位面積あたりの重量がかかる範囲から外れる場合には、耐炎化処理して得られる耐炎化繊維布帛の単位面積あたりの重量が所望する範囲から外れる傾向がある。
【0066】
前駆体繊維を不織布化する方法としては、特に限定されるものではないが、ニードルパンチ方式、ウォータージェット方式が不織布の厚み方向の繊維配向を高めるため好ましい。前駆体繊維不織布の厚み方向の繊維配向をさらに高めるためにニードルパンチ方式では針密度、パンチング回数を、ウォータージェット方式では水圧、水流密度を適宜制御することが好ましい。
【0067】
次に本発明の炭素繊維布帛の製造方法としては、前記耐炎化繊維布帛を、不活性雰囲気中、好ましくは300〜2,000℃、より好ましくは800〜2,000℃、更に好ましくは1,000〜1,800℃で炭化処理することにより炭素繊維布帛を得ることができる。
【0068】
本発明において得られる炭素繊維布帛は圧縮による厚み変化が小さく、かつ、表面粗さが小さく、かつ、厚み方向の電気抵抗が小さいために、燃料電池用電極として好適に用いることができる。
【0069】
燃料電池用電極の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法も適宜用いることができる。例えば、カーボンブラックを炭素繊維布帛の表面または内部、または表面および内部に添加し、燃料電池に用いたときの水詰まりを防止する目的で撥水性の物質を添加する方法がある。撥水性の物質は特に限定されないが、たとえば含フッ素化合物や含珪素化合物などが好ましく使用される。
【0070】
かかる燃料電池用電極と触媒層とを層状に配置したり、燃料電池用電極と触媒層と高分子電解質膜配置してユニットを構成して、該ユニットの1つ以上を有する燃料電池として好ましく使用される。
【0071】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。尚、実施例では、各物性値は以下の方法により測定した。尚、耐炎化処理液として有機化合物を用いた場合にはメチルアルコールにより洗浄除去し、80℃で乾燥したものを測定に用い、耐炎化処理液としてフッ素化合物を用いた場合には、低沸点フッ素化合物としてハイドロフルオロエーテルを用いて洗浄除去し、その後80℃で乾燥したものを測定に用いた。
【0072】
各実施例の耐炎化処理条件およびプレス工程条件と、得られた耐炎化繊維布帛および炭素繊維布帛の特性をそれぞれ表1、2、3、4にまとめて示す。
<厚み>
平滑な台上に布帛を置き、直径5mmのマイクロメーター圧子を上から下ろした。圧子に荷重を加えて所望の面圧にして厚みを測定し、3カ所測定した平均値を用いた。
<嵩密度>
布帛を縦10cm、横10cmにカットした試験片を用い、単位面積あたりの重量B(g/m2)と、布帛を面圧0.15MPaで加圧した時の厚みC(mm)から下式により求めた。
【0073】
嵩密度 A(g/cm3)=B/(C×1000)
<厚み方向の繊維配向>
厚み方向の繊維配向D(%)は前駆体繊維布帛、耐炎化繊維布帛および炭素繊維布帛を溶融した樹脂に浸漬、冷却固化した後に、厚み方向および厚み方向と直交する方向にに切断し、それぞれの切断面を研磨し、偏光顕微鏡によって、1cm2当たりの厚み方向に配向する繊維本数Fと1cm2当たりの厚み方向と直交する方向に配向する繊維本数Gを数え、下式により求めた。
【0074】
D(%)={F/(F+G)}×100
<表面粗さ>
表面粗さRaはJISB0601に示す方法に基づいて測定した。装置として株式会社ミツトヨ社製、サーフテストSJ−201Pを用い、n数=3の平均値を用いた。
<厚み方向の電気抵抗>
2枚の2.5cm×2cm(厚み1cm)の金メッキした電極で炭素繊維布帛の両面を全面接触するようにはさみ、1MPaでプレスし、電流1Aを流した。そのときの電圧E(V)を測定し、厚み方向の電気抵抗R(mΩ・cm2)を下式により求め、n数=3の平均値を用いた。
【0075】
R(mΩ・cm2)=1000×E(V)×炭素繊維布帛面積(cm2)
<布帛の引張強さ>
長さ6cm、幅1cmにカットした布帛を試験片として用い、万能材料試験機により、スパン間距離3cm、引張速度3mm/分で測定し、n数=3の平均値を用いた。尚、実施例において万能材料試験機としてはテンシロン(登録商標)試験機を用いた。
<燃料電池電圧>
炭素繊維布帛をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)水性ディスパージョンに浸漬後引き上げて乾燥して、PTFEを20重量%付着させた。その炭素繊維布帛上にカーボンブラックとPTFEの混合物(混合比8:2(重量比))を塗布し380℃で熱処理してカーボン層付き布帛を作製した。カーボンブラックとPTFE混合物の付着量は約2mg/cm2であった。一方、高分子電解質膜であるNafion(登録商標)112(E.I.du Pont de Nemours and Company製)の両面に触媒である白金担持カーボンを塗布したPTFEフィルム重ね、触媒のみをNafion112膜に転写させた。触媒である白金の担持量は約0.5mg/cm2であった。かかる膜−触媒シートをカーボン層を内側に向けた2枚のカーボン層付き布帛で挟んで130℃、3MPaで加熱加圧して一体化し、膜−電極接合体(MEA)を得た。このMEAを溝付きセパレータに挟んで常法により電池特性を測定した。電池温度は70℃、水素ガス加湿温度は80℃、空気ガス加湿温度は60℃で、ガス圧力は大気圧である。0.7A/cm2における水素利用率は70%、空気利用率は40%である。電圧は高い方が優れている。
[実施例1]
アクリロニトリル99.5モル%とイタコン酸0.5モル%からなる共重合体をジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により重合し、さらにアンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込み、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基をアクリル系共重合体に導入し、共重合成分の含有率が22重量%の紡糸原液を得た。
【0076】
この紡糸原液を、40℃で、直径0.15mm、孔数70,000の紡糸口金を用い、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させた後、3℃にコントロールした35%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とした。
【0077】
この凝固糸条を、常法により水洗した後、温水中で3.5倍に延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与して延伸糸を得た。
【0078】
この延伸糸を、180℃の加熱ローラーを用いて、乾燥緻密化処理を行い、 29.4MPaの加圧スチーム中で、延伸することにより、製糸全延伸倍率が13倍、単繊維繊度0.9dtex、フィラメント数70,000のアクリル系繊維束を得た。
【0079】
アクリル系繊維束に捲縮付与し、51mm切断した後、カード処理し、厚み方向の繊維配向が50%になるようにニードルパンチ方式不織布化を行い、単位面積あたりの重量100g/m2のアクリル系繊維不織布を得た。このアクリル系繊維不織布を耐炎化処理液であるニトロベンゼンの浴槽に室温、1分間浸漬後、浴槽から取り出し、ホットプレートプレスにより、3000Paの圧力を付与した状態で、210℃、90分耐炎化処理した。耐炎化処理後、空気雰囲気中250℃、10分酸化処理した。
【0080】
得られた耐炎化繊維布帛を更にプレス圧5MPa、200℃、1分プレス処理した後、窒素雰囲気中、1500℃、3分間処理して炭素繊維布帛を得た。かかる炭素繊維布帛を用いて燃料電池電圧を測定したところ、良好な特性を示した。
[実施例2〜6]
耐炎化処理液、耐炎化温度および時間をそれぞれ変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[実施例7,8]
耐炎化処理時に付与する圧力を変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[実施例9]
耐炎化処理後の酸化処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[実施例10]
酸化処理後のプレス工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[実施例11]
耐炎化処理後の酸化処理およびその後のプレス工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[実施例12、13]
前駆体繊維布帛の単位面積あたりの重量を変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。
[比較例1]
耐炎化処理液を用いずに空気雰囲気でホットプレートによる耐炎化処理を行った以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛を得た。得られた耐炎化繊維布帛の面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差は大きく、また耐熱性が十分ではないために、続く炭化処理後、炭素繊維布帛を得ることができなかった。
[比較例2]
耐炎化処理液を沸点120℃の2−ニトロプロパノールに変えた外は実施例1と同様にして耐炎化処理を行ったが、耐炎化処理剤が気体状になってしまったために得られた耐炎化繊維布帛の面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差は大きく、耐熱性が十分ではないために、続く炭化処理後、炭素繊維布帛を得ることができなかった。
[比較例3]
耐炎化処理時に付与する圧力を20000Paに変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛を得たが繊維傷みが多発し、部分的に粉化しており、機械的特性が著しく低下していたため、厚み変化の測定ができず、また続く炭化処理を行うことができなかった。
[比較例4]
耐炎化処理時に付与する圧力を50Paに変えた以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維布帛、炭素繊維布帛を得た。得られた耐炎化繊維布帛の面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差は大きく、炭素繊維布帛の厚み方向の電気抵抗を大きかった。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、薄くて高嵩密度な耐炎化繊維布帛を製造することができる。得られた耐炎化繊維布帛を炭化処理することにより、薄くて高嵩密度で高性能な炭素繊維布帛を製造することができ、かかる炭素繊維布帛は、例えば燃料電池用電極として好適に用いることができる。
Claims (14)
- 単位面積あたりの重量が50〜200g/m2、嵩密度が0.3〜0.8g/cm3、面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mm、であって、かつ、面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下である耐炎化繊維布帛。
- 単位面積あたりの重量が30〜180g/m2、嵩密度が0.2〜0.75g/cm3、面圧0.15MPaにおける厚みが0.01〜0.5mmであって、かつ、面圧0.15MPaにおける厚みと1.0MPaにおける厚みの差が0.1mm以下である炭素繊維布帛。
- 表面粗さRaが20μm以下である請求項2記載の炭素繊維布帛。
- 厚み方向の電気抵抗が10mΩ・cm2以下である請求項2または3のいずれかに記載の炭素繊維布帛。
- 引張強さが0.2kgf/cm以上である請求項2〜4のいずれかに記載の炭素繊維布帛。
- 布帛の厚み方向に14cm/secの空気を透過させたときの差圧が10〜100Paである請求項2〜5のいずれかに記載の炭素繊維布帛。
- 前駆体繊維布帛を、耐炎化処理液中、100〜10000Paの圧力を付与しつつ、180〜300℃で耐炎化処理する耐炎化繊維布帛の製造方法。
- 前記耐炎化処理後に、酸化性雰囲気中、20〜400℃で酸化処理する工程を含む請求項7記載の耐炎化繊維布帛の製造方法。
- 前記耐炎化処理後または前記酸化処理後に、70〜400℃で、0.5〜50MPaの圧力を付与する請求項7または8に記載の耐炎化繊維布帛の製造方法。
- 前記耐炎化処理液が有機化合物である請求項7〜9のいずれかに記載の耐炎化繊維布帛の製造方法。
- 前記耐炎化処理液がフッ素化合物である請求項7〜9のいずれかに記載の耐炎化繊維布帛の製造方法。
- 前記耐炎化処理液がケイ素化合物である請求項7〜9のいずれかに記載の耐炎化繊維布帛の製造方法。
- 請求項7〜12のいずれかに記載の製造方法で得られた耐炎化繊維布帛を、不活性雰囲気中、300〜2000℃で炭化処理する炭素繊維布帛の製造方法。
- 請求項2〜6の炭素繊維布帛を用いてなる燃料電池用電極。
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