JP2005097744A - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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善継 鈴木
Yoichi Tobiyama
洋一 飛山
Chiaki Kato
千昭 加藤
Kazunori Osawa
一典 大澤
Akitoshi Shinohara
章翁 篠原
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Abstract

【課題】 加工性およびめっき密着性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】 Pを0.10%以下、あるいはさらにMoを1.00%以下含有する鋼のスラブを熱間圧延し、酸洗後、そのまま、もしくは冷間圧延を施した後、P系酸化物の還元条件下にて加熱還元した後、溶融亜鉛めっき、あるいはさらに合金化処理を施す。これにより、不めっき欠陥の発生を防止でき、加工性およびめっき密着性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板となる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、自動車車体用などに用いられる高強度鋼板を素材とした溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する。
近年、自動車の安全性、軽量化および低燃費化ひいては地球環境改善の観点から、自動車用に耐食性に優れた高強度鋼板および高強度溶融亜鉛めっき鋼板の適用が増加しつつある。
その中で、高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造するためには、めっき性がよく、かつ、溶融亜鉛めっき浴を通過し、またさらに合金化処理が施された後に所望の強度と加工性が得られる原板を予め製造することが必要である。
また、めっき鋼板をプレス加工する際のめっき剥離を防止し金型の手入れをしなくて済むように、めっき鋼板のめっき密着性が優れることが必要である。
一般に、鋼板の強度を増加させるためにはMnなどの易酸化性元素を添加することが一般に行われているが、めっき前の還元焼鈍時にこれらの元素が酸化物となり、鋼板表面に濃化し、溶融亜鉛との濡れ性を低下させ、結果として鋼板表面にめっきが殆ど付着しない、いわゆる不めっき欠陥が鋼板表面に発生する。
これは、再結晶焼鈍雰囲気はFeにとっては還元性雰囲気でありFe酸化物は生成しないが、Mnなどの易酸化性元素にとっては酸化性雰囲気となり、これらの元素が鋼板表面に濃化し酸化膜を形成し、溶融亜鉛と鋼板との接触面積を低下させるためである。
高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法として、特許文献1において、めっき時の焼鈍後の冷却速度を規定する方法が開示されているが、この方法はめっき性改善の方法には全く言及しておらず、特にMn含有量が1%を超える場合には不めっきを防止することは困難であり、まためっき密着性を改善する方法について全く言及していない。
このため、自動車用高強度材料として魅力のある加工性に優れた高強度鋼板も、これを溶融亜鉛めっきし、加工性に優れていながらかつめっき密着性にも優れる表面処理鋼板として使用するための実際的な手段を欠いているのが実状である。
また、特許文献2に、P添加鋼の合金化速度の向上方法として焼鈍後に酸洗処理した後に亜鉛めっきを施す方法が開示されているが、この方法は合金化速度の向上を目的とするものであり、不めっきを防止するための方法ではない。
また、上記した方法は、めっき直前の焼鈍時の雰囲気ガスの露点、水素濃度、温度について言及しておらず、鋼種と焼鈍雰囲気の組み合せ条件によって、不めっきが多発するものと考えられる。
また、特許文献3において、鋼中P含有量によって決定される温度で二次焼鈍する方法が開示されているが、これは、鋼板脆化防止のための温度域が鋼中P含有量によって左右されるという技術思想に基づくものであって、めっき性を良好にするための温度についての開示ではない。
後記の本発明に述べるとおり、一度焼鈍した鋼板を再度還元焼鈍する方法において、めっき性を確保するために重要な事項は、還元焼鈍時の雰囲気である。
なぜならば、一度焼鈍した鋼板を酸洗する際に鋼板表面に生成するP系酸洗残渣が充分に還元される雰囲気でないと、溶融亜鉛との濡れ性に劣る酸化皮膜が焼鈍直後の鋼板のめっき性を阻害するからである。
したがって、後記の本発明と特許文献3に示された技術とでは、鋼中P含有量に応じて二次焼鈍温度を規定する根拠は全く異なり、結果としてそれぞれの目的に応じた最適な二次焼鈍温度範囲は同じものにはならない。
特開昭55−50455 号公報 特公平7−9055号公報 特開平7−268584号公報
本発明は、前記した従来技術の問題点を解決し、不めっき欠陥の発生を防止することが可能な加工性およびめっき密着性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
第1の発明は、P:0.10wt%以下を含有する鋼のスラブを熱間圧延し、酸洗後、そのまま、もしくは冷間圧延を施した後、加熱温度:Tが、750 ℃以上、1000℃以下でかつ下記式(2)を満足し、雰囲気ガスの露点:tが下記式(3)を満足し、水素濃度が1〜100vol%である雰囲気中で加熱した後、溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする加工性およびめっき密着性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
0.85≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×1150}/{T(℃)}≦1.15……………(2)
0.35≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×(−30)}/{t(℃)}≦1.8 ………(3)
前記した第1の発明においては、前記したP:0.10wt%以下を含有する鋼のスラブが、P:0.10wt%以下、Mo:1.00wt%以下それぞれを含有する鋼のスラブであることが好ましい(第1の発明の第1の好適態様)。
前記した第1の発明の第1の好適態様においては、前記したP:0.10wt%以下、Mo:1.00wt%以下それぞれを含有する鋼のスラブが、P:0.10wt%以下、Mo:0.05〜1.00wt%それぞれを含有する鋼のスラブであることがより好ましい(第1の発明の第2の好適態様)。
第2の発明は、前記した第1の発明、もしくは、第1の発明の第1の好適態様、第2の好適態様のいずれかの好適態様の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法で得られた溶融亜鉛めっき鋼板に、さらに、加熱合金化処理を施すことを特徴とする加工性およびめっき密着性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
第3の発明は、前記した第1の発明、もしくは、第1の発明の第1の好適態様、第2の好適態様のいずれかの好適態様の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法で得られた溶融亜鉛めっき鋼板に、さらに、加熱合金化処理を施すと共に、該加熱合金化処理における合金化温度:t2 (℃)が、鋼中P含有量:P(wt%)および前記した溶融亜鉛めっき時の浴中Al含有量:Al(wt%)に対して下記式(4)を満足することを特徴とする加工性およびめっき密着性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
0.95≦[7×{100 ×〔P(wt%)+(2/3)〕+10×Al(wt%)}]/〔t2 (℃)〕≦1.05………(4)
上記した第3の発明によれば、めっき層中へのFe拡散量、Mo拡散量が増加し、母材としての熱間圧延鋼板として、Moを1.00wt%以下、さらに好ましくはMoを0.05〜1.00wt%含有する鋼板を用いることによって、合金化溶融亜鉛めっき層中のFe含有量が8〜11wt%、さらに好ましくは9〜10wt%、Mo含有量が 0.002〜0.11wt%のめっき密着性および耐食性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
第1の発明の第1の好適態様、第2の好適態様においては、前記した雰囲気ガスの水素濃度が1vol %以上、 100vol %未満の場合、残余のガスは不活性ガスであることが好ましく、該不活性ガスとしては窒素ガスが好ましい。
また、前記した第1の発明、第1の発明の第1の好適態様、第2の好適態様における高強度溶融亜鉛めっき鋼板の溶融亜鉛のめっき付着量は、鋼板片面当たりの付着量として、20〜120g/m2 であることが好ましい。また前記した第2の発明、第3の発明における高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の合金化溶融亜鉛めっきのめっき付着量は、鋼板片面あたりの付着量として、20〜120g/m2 であることが好ましい。
本発明によれば、不めっき欠陥の発生を防止し、加工性およびめっき密着性に優れ、さらには耐食性にすぐれた高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることが可能となった。この結果、本発明のめっき鋼板を適用することにより、自動車の軽量化、低燃費化が可能となり、ひいては地球環境の改善に大きく貢献することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明者らは、不めっき欠陥の防止、加工性およびめっき密着性の改善のために、必要な母材鋼板の組成、焼鈍条件および合金化条件を検討した結果、下記(1)、(2)の知見を得、本発明に至った。
(1)1段加熱処理法:
P:0.10wt%以下、より好ましくは、さらにMo:1.00wt%以下を含有する鋼板を、適切な加熱温度かつ適切な露点の雰囲気ガス中で加熱した後、溶融亜鉛めっきを施すことによって、1段階の加熱で良好なめっき性、めっき密着性が得られることが判明した(第1の発明)。
(2)合金化処理法:
上記(1)で得られた溶融亜鉛めっき鋼板を、好ましくは所定の合金化温度を満足する条件で合金化することによって、合金化後のめっき密着性および耐食性の両者に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られることが判明した(第2の発明、第3の発明)。
次に、本発明の基礎となった実験について説明する。
なお、以下、溶融亜鉛めっき前の処理(:焼鈍炉加熱→酸洗→加熱還元)を、2段加熱・酸洗処理法とも記し、前記した第1の発明における溶融亜鉛めっき前の処理(:加熱還元)を、1段加熱処理法とも記す。
〔2段加熱・酸洗処理法:〕
0.09%C−0.01%Si− 2.0%Mn−0.005 〜 0.1%P− 0.003%S− 0.041%Al−0.0026%N−0.15%Mo−0.02%Crの化学組成〔:前記各%はwt%を示す〕で、厚さ30mmのシートバーを1200℃に加熱し、5パスで厚さ 2.5mmの熱間圧延鋼板を得た。
次に、得られた熱間圧延鋼板について、下記(1) →(10)の順序で処理を施した。
(1) ; 540℃で30分間熱処理し、巻き取り相当処理を行う。
(2) ;液温:80℃の5wt%HCl 溶液中で40秒間酸洗。
(3) ;焼鈍炉において、水素を含む還元性雰囲気下、 800℃(鋼板板温)に1分間保持。
(4) ;10℃/secの冷却速度で室温まで冷却。
(5) ;液温:60℃の5wt%HCl 溶液中で10秒間酸洗。
(6) ;水素を含む還元性雰囲気にて 650〜 950℃(鋼板板温)に20秒間保持。
(7) ;10℃/secの冷却速度で 480℃まで冷却。
(8) ;Alを0.15wt%含有する浴温: 480℃の溶融亜鉛めっき浴中へ1秒間浸漬して溶融亜鉛めっきを施す。
(9) ;溶融亜鉛めっき浴から引き揚げためっき鋼板のめっき付着量を、ガスワイピングにて50g/m2に調整。
(10);H2濃度:7vol %、露点(:dp):−25℃、鋼板板温: 800℃の条件下 で加熱還元した直後に上記した条件下で溶融亜鉛めっきして得られた溶融亜鉛めっき鋼板について、 450〜 600℃で加熱合金化処理を施す。
次に、得られためっき鋼板の性能を、下記の評価方法および評価基準で評価した。
〔めっき性:〕
溶融亜鉛めっき後のめっき鋼板(未合金化処理の溶融亜鉛めっき鋼板)の外観を、目視で評価した。
○:不めっき欠陥が全く無い(めっき性良好)
×:不めっき欠陥が発生
〔めっき密着性:〕
めっき鋼板を、90度曲げ戻しの後、圧縮側のめっき層をセロハンテープ剥離し、セロハンテープに付着しためっき皮膜の量で評価した。
(未合金化処理のめっき鋼板)
○:めっき層の剥離無し(めっき密着性良好)
×:めっき層の剥離有り(めっき密着性不良)
(合金化処理しためっき鋼板)
○:めっき剥離量が少ない(めっき密着性良好)
×:めっき剥離量が多い(めっき密着性不良)
〔合金化後の外観:〕
目視で評価した。
○:合金化ムラがなく均一な外観が得られた
×:合金化ムラが発生した
図1、図2に、溶融亜鉛めっき鋼板のめっき性の評価結果を示し、図3に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性の評価結果を示す。
図1、図2に示すように、良好なめっき性を確保するためには、溶融亜鉛めっきを施すに際しての加熱還元(:焼鈍炉後かつその後の酸洗後の加熱還元)において、雰囲気ガスの露点、水素濃度、さらには鋼板加熱温度から決定されるP系酸化物が熱力学的に還元される条件下で良好なめっき性が確保されることが判明した。
図1において、加熱還元時における本発明範囲の加熱還元温度(鋼板板温):t1 (℃)は、下記式(1)で示される。
0.9 ≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×1100}/{t1 (℃)}≦1.1 …………(1)
なお、上記式(1)中、P(wt%)は鋼中P含有量を示す。
さらに、溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理を行う場合、良好なめっき密着性を確保するためには、図3に示す範囲の合金化温度(鋼板板温)を満足する必要があることが分かった。
図3において、本発明範囲の合金化温度(鋼板板温):t2 (℃)は、下記式(4)で示される。
0.95≦[7×{100 ×〔P(wt%)+(2/3)〕+10×Al(wt%)}]/〔t2 (℃)〕≦1.05………(4)
なお、上記式(4)中、P(wt%)は鋼中P含有量、Al(wt%)は溶融亜鉛めっき時の浴中Al含有量を示す。
すなわち、本発明者らは、高張力鋼板など、Mnなどの易酸化性元素の含有量が多い鋼板のめっき性改善方法として、一度焼鈍炉で焼鈍し、鋼板表面にMnなどの易酸化性元素の表面濃化物を析出させた後、酸洗によって濃化物を除去した後、雰囲気ガスの露点、水素濃度、鋼板加熱温度から決定される、P系酸化物が熱力学的に還元される適切な雰囲気ガス条件で加熱還元した直後に溶融亜鉛めっきを施すことによって、不めっき欠陥を全く発生することなく高強度溶融亜鉛めっき鋼板が製造可能となることを見出した。
また、溶融亜鉛めっき後、合金化処理を行う場合、鋼中P含有量および溶融亜鉛めっき時の浴中Al含有量に応じて適切な温度で合金化処理すると、合金化後のめっき密着性の良好な高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が製造できることを見出した。
さらに、本発明者らは、前記した各種元素を含有する組成の鋼を母材とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板で、合金化後のめっき層中のFe含有量が10wt%、めっき層中のMo含有量が0.01wt%のめっき鋼板と、Moのみが無添加の前記組成の鋼を母材とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板で、合金化後のめっき層中のFe含有量が10wt%、めっき層中のMo含有量が0wt%のめっき鋼板を試作した。
図4に、得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、SST 試験(:塩水噴霧試験)を行った結果を示す。
図4に示すように、Moを含有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板は腐食減量が低く、Moを含有しない合金化溶融亜鉛めっき鋼板に対して、耐食性が大幅に向上することが分かった。
〔1段加熱処理法:〕
本発明者らは、さらに、前記した2段階の加熱処理およびこれらの加熱処理の間に行う酸洗から構成される工程の簡略化を目的として、前記したと同様の方法で実験を重ねた。
その結果、P:0.10wt%以下を含有する鋼のスラブを熱間圧延し、酸洗後、そのまま、もしくは冷間圧延を施した後、焼鈍炉において、加熱温度:Tが750 ℃以上、1000℃以下でかつ下記式(2)を満足し、雰囲気ガスの露点:tが下記式(3)を満足し、水素濃度が1〜100vol%である雰囲気中で加熱した後、溶融亜鉛めっきを施すことによって、Mo添加の有無に係わらず、1段階の加熱で、しかも溶融亜鉛めっきラインにおける酸洗を行うことなく、めっき性、めっき密着性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造することが可能であることを見出した。
0.85≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×1150}/{T(℃)}≦1.15……………(2)
0.35≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×(−30)}/{t(℃)}≦1.8 ………(3)
図5、図6に、Mo無添加鋼を母材とする冷間圧延鋼板について、冷間圧延後、焼鈍、酸洗を行わず、溶融亜鉛めっきラインにおいてH2−N2雰囲気下で加熱し、得られた鋼板に溶融亜鉛めっきを施した場合の溶融亜鉛めっき鋼板のめっき性の評価結果を示す。
図5、図6に示されるように、溶融亜鉛めっきの前工程として、加熱温度:Tおよび雰囲気ガスの露点:tを精密に制御した水素含有ガス条件下で鋼板を加熱することによって、Mo添加の有無に係わらず、1段階の加熱で、しかも溶融亜鉛めっきラインにおける酸洗を行うことなく、めっき性、めっき密着性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られることが分かった。
図5において、溶融亜鉛めっきの前工程の加熱時における本発明範囲の加熱温度(鋼板板温):T(℃)は、下記範囲となる。
P(wt%)≦0.072wt %の場合:
0.85≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×1150}/{T(℃)}
かつ、750 ℃≦T(℃)
0.072wt %≦P(wt%)≦0.083wt %の場合:
750 ℃≦T(℃)≦1000℃
0.083wt %≦P(wt%)≦0.10wt%の場合:
{〔P(wt%)+(2/3)〕×1150}/{T(℃)}≦1.15
かつ、1000℃≧T(℃)
また、図6において、溶融亜鉛めっきの前工程の加熱時における本発明範囲の雰囲気ガスの露点:t(℃)は、下記範囲となる。
0.35≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×(−30)}/{t(℃)}≦1.8
以下、本発明においてI.母材鋼板の組成およびII. 製造条件を規定した理由について述べる。
〔I.母材鋼板の組成:〕
〔P:0.10wt%以下の規定:〕
Pは、高強度鋼板を得るために有効で、安価な元素であるが、含有量が0.10wt%を超える場合、スポット溶接性を著しく損なうため、母材鋼板のP含有量を0.10wt%以下と規定した。
本発明においては、母材鋼板のP含有量を0.005 〜0.05wt%とするのがより好ましい。
〔Mo:1.00wt%以下の規定:〕
Moは、めっき性を損ねず、かつ固溶強化を図る上で有効な元素である。
さらには、Mo添加鋼の方がMo無添加鋼に比べて、本発明で目的としているP系酸洗残渣(:P系酸化物)の被還元性が良好であり、結果としてめっき密着性が改善される効果が見出された。
この原因の詳細については不明であるが、MoがPを取り込んで縮合酸を形成し、P系酸化物の中にMoが何らかの形態で取り込まれ、これが溶解残渣が感じる酸素ポテンシャルを低下させるためにP系酸洗残渣の還元を助長し、結果としてめっき密着性が改善されるものと推定される。
また、Moを添加した母材鋼板を用いた場合、得られるめっき鋼板の耐食性が良好になる傾向が見られる。
これは、Moは、Feよりも酸化されにくい元素であり、めっき層中へのMoの僅かな拡散、添加が耐食性を向上するためと考えられる。
本発明においては、母材鋼板中のMo含有量は、0.05wt%以上であることが好ましい。
しかし、1.00wt%超の添加は著しく製造コストを高くしてしまうことから、1.00wt%以下と規定した。
本発明においては、母材鋼板のMo含有量を0.05〜0.5wt %とするのがより好ましい。
〔その他の元素;C、Si、Mn、S、Al、N、Cr、Ti、V、Nb:〕
本発明においては、母材鋼板が、その他の元素として、C、Si、Mn、S、Al、N、Cr、Ti、V、Nbなどを含有しても良い。
(C:)
Cは、強化元素として含有させる元素であり、含有量が 0.010wt%以上であれば強化効果が現れ、含有量が0.2wt %を超えると伸びの低下が著しくなり、加えて炭素当量が高くなって溶接性を害する。
したがって、Cの含有量は、0.010 〜 0.2wt%、より好ましくは0.03〜0.15wt%であるが、本発明においては特にはC含有量に制限されるものではない。
(Si:)
Siは、α相中の固溶C量を減少させることにより、伸びなどの加工性を向上させる元素であるが、1.0wt %超のSiの含有は、めっき性を損ねる。
本発明における母材鋼板のSi含有量は、好ましくは1.0wt %以下、より好ましくは0.5wt %以下であるが、本発明においては特にSi含有量に制限されるものではない。
(Mn:)
本発明における母材鋼板のMn含有量は、高強度を得るために1.0wt %以上であることが好ましく、伸びの低下あるいは炭素当量の増大を避けるため3.0wt %以下であることが好ましい。
(S:)
Sは、熱間圧延時の熱間割れの原因になる他、スポット溶接部のナゲット内破断を誘発する元素であるため、Sの含有量を極力低減することが望ましい。
したがって、本発明ではSの含有量は0.05wt%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.010wt %以下であるが、本発明においては特にS含有量に制限されるものではない。
(Al:)
Alは、製鋼段階での脱酸剤として、また時効劣化の原因になるNをAlN として固定するのに有効な元素である。
しかしながら、Al含有量が0.10wt%を超える場合、製造コストの上昇を招く。
このため、Al含有量は、好ましくは0.10wt%以下、より好ましくは0.05wt%以下であるが、本発明においては特にAl含有量に制限されるものではない。
(N:)
Nは、時効劣化の原因となり、降伏点(降伏比)の上昇、降伏伸びの発生を招くことからN含有量は0.010wt %以下に抑える必要があり、より好ましくは0.005wt %以下であるが、本発明においては特にN含有量に制限されるものではない。
(Cr:)
Crは、組織強化を図る上で有効な元素であるが、1.0wt %超の添加はめっき性を損ねてしまうことから、本発明における母材鋼板のCr含有量は、好ましくは1.0wt %以下、より好ましくは0.5wt %以下であるが、本発明においては特にCr含有量に制限されるものではない。
(Ti、Nb、V:)
Ti、Nb、Vは炭化物を形成し、鋼を高強度化するのに有効な元素であり、必要に応じて、母材鋼板が、Ti、NbおよびVから選ばれる1種または2種以上を合計量で0.0010wt%以上含有してもよい。
しかし、1.0wt %超の添加はコスト高となる他、降伏点(降伏比)を上昇させて加工性を低下させてしまう。
このため、母材鋼板の上記合計量は、好ましくは0.0010〜1.0wt %、より好ましくは0.010 〜0.20wt%であるが、本発明においては特にTi、Nb、Vの含有量に制限されるものではない。
〔II. 製造条件:〕
以下、II.-1;1段加熱処理法(第1の発明)、II.-2;溶融亜鉛めっき、加熱合金化処理法(第2の発明、第3の発明)における製造条件について順に述べる。
〔II.-1;1段加熱処理法(:加熱還元→溶融亜鉛めっき)の場合の製造条件:〕
本発明においては、P:0.10wt%以下を含有する鋼のスラブを熱間圧延し、酸洗後、そのまま、もしくは冷間圧延を施した後、加熱温度:Tが、750 ℃以上、1000℃以下でかつ下記式(2) を満足し、雰囲気ガスの露点:tが下記式(3) を満足し、水素濃度が1〜100vol%である雰囲気中で加熱した後、溶融亜鉛めっきを施す。
0.85≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×1150}/{T(℃)}≦1.15………………(2)
0.35≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×(−30)}/{t(℃)}≦1.8 …………(3)
焼鈍温度が750 ℃未満の場合、母材中のバンド状の第2相中(鋼中セメンタイト析出相中)に濃化しているMnを分散することができず、不めっき欠陥が発生するため、加熱温度は750 ℃以上とする。
また、加熱温度が1000℃を超える場合、α−γ2相域を外れるため所望の組織と材質が得られない。
鋼中P量の増加に伴い加熱温度を前記した式(2) のように増加させる必要があるのは以下の理由による。
すなわち、熱間圧延鋼板の黒皮酸洗時に、鋼板表面に、地鉄の溶出に伴ってFe−P系酸洗残渣であるP系酸化物が生成し、残渣を完全に還元し、めっき性を改善するためには温度を上げなければならない。
なお、鋼板表面に生成するP系酸化物とは、リン酸根(PO4 3-) 、リン酸水素根(HPO4 2- ,H2PO4 - ) 、水酸基(OH- ) および鉄イオン(Fe3+ , Fe2+) を主構成要素とするリン酸鉄化合物一般、およびP2O5、P4O10 などの酸化燐である。
なお、上記したリン酸鉄化合物としては、下記のリン酸鉄化合物が例示される。
リン酸鉄化合物:FeIII (PO4) ・nH2O 、FeIII 2(HPO4)3・nH2O 、FeIII (H2PO4)3・nH2O 、FeII 3(PO4)2 ・nH2O 、FeII(HPO4)・nH2O 、FeII(H2PO4)2・nH2O 、FeIII (HPO4)(OH)・nH2O 、FeIII 4 {(PO4)(OH) }3 ・nH2O (n:0以上の整数)
なお、酸化燐とリン酸鉄化合物は同程度の還元条件下で還元される。
また、P系酸化物の生成量は鋼中P量にほぼ比例する。
このため、鋼中P量の増加に伴い加熱温度を前記した式(2) のように増加させなければならない。
一方、加熱温度を上げるとMnなどの固溶強化のための易酸化性合金元素の表面濃化量が増加しめっき性が劣化するため、加熱時の雰囲気ガスの露点を下げることによって上記した表面濃化を熱力学的に抑制しなければならない。
したがって、鋼中P量の増加に伴い加熱時の雰囲気ガスの露点を前記した式(3) のように低下させる必要がある。
さらに、加熱時の雰囲気ガス中の水素濃度が1vol %未満の場合、熱力学的にP系酸化物が還元しにくく、長時間の加熱が必要であるため好ましくない。
このため、加熱時の雰囲気ガス中の水素濃度を1〜100vol%と規定した。
また、以上述べたように、予め焼鈍炉で加熱することなく、溶融亜鉛めっきラインにおいて加熱雰囲気を精密にコントロールした条件下で加熱した後、溶融亜鉛めっきを施すことによって、Mo添加の有無に係わらず良好なめっき性、めっき密着性の確保が可能となった。
以上のように、加熱時の雰囲気をFe−P系酸洗残渣の還元と鋼中成分の表面濃化の抑制を両立するように加熱温度(鋼板板温)、雰囲気ガスの露点、水素濃度を同時に制御することによって、初めて、良好なめっき性、めっき密着性を確保することができる。
このため、本発明によれば溶融亜鉛めっきライン通板前の焼鈍工程が無くても良好なめっき性、めっき密着性が確保できる。
〔II.-2;溶融亜鉛めっき、加熱合金化処理法の製造条件:〕
本発明においては、以上の様にして母材鋼板を加熱還元した後、溶融亜鉛めっき浴中で溶融亜鉛めっきを施す。
溶融亜鉛めっき浴は、Alを0.08〜0.2wt %含有するめっき浴が適切であり、浴温は460 〜500 ℃が適切である。
また、浴中に侵入する時の鋼板の板温は460 〜500 ℃が適切である。
また、溶融亜鉛めっき鋼板のめっき付着量は、鋼板片面当たりの付着量として、20〜120g/m2 であることが好ましい。
溶融亜鉛めっきのめっき付着量が20g/m2未満の場合は、耐食性が低下し、逆にめっき付着量が120g/m2 を超える場合、耐食性向上効果が実用上飽和し、経済的でない。
なお、上記した鋼板片面当たりの付着量とは、めっき付着量をめっき付着面積で除した単位面積当たりの付着量を示す。
すなわち、通常の両面めっきの場合は、めっき付着量を両面のめっき付着面積で除した単位面積当たりの付着量を示し、片面めっきの場合は、めっき付着量を片面のめっき付着面積で除した単位面積当たりの付着量を示す。
本発明者らは、以上のようにして製造した溶融亜鉛めっき鋼板を合金化するに際して、合金化後のめっき密着性を良好にするための条件を鋭意調査した結果、合金化温度:t2 (℃)が、鋼中P含有量:P(wt%)および溶融亜鉛めっき時の浴中Al含有量:Al(wt%)に応じて下記式(4) を満足する場合には、合金化が充分に進行し、かつ過合金によるめっき密着性の劣化も抑制できることが明らかとなった。
0.95≦[7×{100 ×〔P(wt%)+(2/3)〕+10×Al(wt%)}]/〔t2 (℃)〕≦1.05………(4)
すなわち、鋼中Pは、地鉄の結晶粒界に偏析し合金化反応を遅延させ、鋼中P含有量が多いと、合金化温度を上げなければ合金化反応が進行しない。
また、鋼中P含有量が少ないと、合金化温度を上げすぎると過合金によりめっき密着性が劣化する。
さらに、溶融亜鉛めっき浴中のAl量が多い場合、めっき直後に鋼板表面にFe-Al 合金層が多量に生成するため、合金化に必要な温度が高くなる。
また、浴中のAl量が少ない場合、合金化温度を抑制しないと過合金によるめっき密着性の劣化を招く恐れがある。
以上述べたように、良好なめっき密着性を確保するためには、合金化温度:t2 (℃)を、鋼中P含有量:P(wt%)および溶融亜鉛めっき時の浴中Al含有量:Al(wt%)に応じて決定し合金化する必要がある。
本発明においては、合金化温度:t2 (℃)が、鋼中P含有量:P(wt%)および溶融亜鉛めっき時の浴中Al含有量:Al(wt%)に対して下記式(4) を満足する加熱合金化処理を施すことが好ましい。
0.95≦[7×{100 ×〔P(wt%)+(2/3)〕+10×Al(wt%)}]/〔t2 (℃)〕≦1.05………(4)
合金化温度:t2 (℃)が下記式(4−1)を満たす場合は、過合金によりめっき密着性が劣化するため不適当である。
[7×{100 ×〔P(wt%)+(2/3)〕+10×Al(wt%)}]/〔t2 (℃)〕<0.95………………(4−1)
また、合金化温度:t2 (℃)が下記式(4−2)を満たす場合は、合金化が不充分で、焼けムラなどが発生するか、もしくは長時間の合金化時間を要し、生産性の面から不適当である。
1.05<[7×{100 ×〔P(wt%)+(2/3)〕+10×Al(wt%)}]/〔t2 (℃)〕………………(4−2)
以上述べたように、本発明における加熱合金化処理は、母材鋼板中のP含有量と溶融亜鉛めっき時の浴中Al量に応じて溶融亜鉛めっき後の合金化温度を制御して、最適なめっき密着性を確保することを特徴とするものである。
実操業においては、上記した最適合金化温度の範囲の上限、下限に対して±5%の範囲であればめっき密着性を確保することが可能である。
以上述べた合金化処理時のめっき層中へのFe拡散量は、得られるめっき層中のFe含有量として8〜11wt%の範囲に収まることが必要である。
8wt%未満の場合、焼けムラなどが発生するだけでなく、不充分な合金化に起因する摺動性の劣化が生じ、また11wt%を超える場合、過合金によりめっき密着性が劣化する。
本発明においては、合金化処理後のめっき層中のFe含有量が9〜10wt%であることが、より好ましい。
一方、母材鋼板へのMoの添加は、めっき密着性などを改善するだけでなく、母材鋼板へMoを添加した溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理時のめっき層中へのMo拡散量が、得られるめっき層中のMo含有量として0.002 〜0.11wtを満足する場合、耐食性が良好となることが見出された。
これは、MoはFeよりも酸化されにくい元素であり、めっき層中へのMoの僅かな拡散、添加が耐食性を向上させるためである。
本発明においては、合金化処理時のめっき層中へのMo拡散量は、得られるめっき層中のMo含有量として0.002 〜0.11wt%であることが好ましい。
0.002 wt%未満の場合、耐食性向上効果が不充分であり、逆に0.11wt%を超えてめっき層中のMo含有量を確保するためには母材鋼板中のMo含有量を1.0wt %超えとする必要があり、経済性の面から好ましくない。
また、めっき直前の加熱還元時にP系酸化皮膜が未還元であると、Moのめっき層中への拡散が抑制される傾向が見られた。
加熱還元時にP系酸化皮膜が完全に還元されると、めっき密着性などが向上する効果があるが、Mo添加鋼においては、この効果以外に、P系酸化皮膜の還元によってMoのめっき層中への拡散促進効果が得られ、その結果、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の耐食性向上効果も得られることが明らかとなった。
本発明においては、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき付着量は、前記で定義される鋼板片面当たりの付着量として、20〜120g/m2 であることが好ましい。
合金化溶融亜鉛めっきのめっき付着量が20g/m2未満の場合は、耐食性が低下し、逆にめっき付着量が120g/m2 を超える場合、耐食性向上効果が実用上飽和し、経済的でない。
なお、金属の拡散層である上記した合金化溶融亜鉛めっきのめっき付着量は、めっき層をNaOH、KOH などのアルカリ含有溶液もしくはHCl 、H2SO4 などの酸含有溶液に溶解し、得られためっき溶解液を分析することによって測定することができる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
表1に示す化学組成の厚さ300mm の連続鋳造スラブを1200℃に加熱し、3パスの粗圧延後、7スタンドの仕上げ圧延機で圧延し、厚さ2.3mm の熱間圧延鋼板を得た。
その後、表2に示す温度(:CT) で巻き取った。
得られた熱間圧延鋼板を酸洗後、鋼種A、P〜Vについては熱間圧延鋼板のままで連続焼鈍ラインに通板し、鋼種B〜Kについては、板厚1.0mm となるように冷間圧延した。
その後、得られた各鋼種の圧延鋼板を連続溶融亜鉛めっきラインに通板し、表2に示す各種条件下で、加熱還元、溶融亜鉛めっき、加熱合金化処理を行った。
なお、表2に示す製造条件以外の条件を下記(1)〜(2)に示す。
(1)連続溶融亜鉛めっきラインにおける加熱還元:
表2に示す連続溶融亜鉛めっきラインにおける加熱還元は、表2に示すH2濃度のH2−N2ガス雰囲気下で行った。
(2)溶融亜鉛めっきのめっき付着量、合金化溶融亜鉛めっきのめっき付着量:
合金化溶融亜鉛めっきのめっき付着量は、いずれも、鋼板両面共30〜60g/m2の範囲内であった。
次に、得られた溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき性、めっき密着性、合金化後の外観、合金化度、耐食性、加工性、スポット溶接性などについて下記評価方法、評価基準に基づいて評価した。
得られた評価結果を表3に示す。
なお、表2におけるP系酸化物の還元の有無は、鋼板表面をESCA(:光電子分光装置)で分析し、酸素と結合すると考えられるP化合物のピークが明瞭に認められるか否かによって判断した。
なお、上記した酸素と結合すると考えられるP化合物とは、リン酸根(PO4 3-) 、リン酸水素根(HPO4 2-,H2PO4 - ) 、水酸基(OH- ) および鉄イオン(Fe3+,Fe2+ ) を主構成要素とする下記リン酸鉄化合物である。
リン酸鉄化合物:FeIII (PO4) ・nH2O 、FeIII 2(HPO4)3・nH2O 、FeIII (H2PO4)3・nH2O 、FeII 3(PO4)2 ・nH2O 、FeII(HPO4)・nH2O 、FeII(H2PO4)2・nH2O 、FeIII (HPO4)(OH)・nH2O 、FeIII 4 {(PO4)(OH) }3 ・nH2O (n:0以上の整数)
また、ESCAは定法にて測定し、一般的なスペクトル集に実測例として記載されている、上記したリン酸鉄化合物に対応する、Oと結合すると考えられる位置のPのスペクトル強度に着目し、ピーク高さはピーク以外のノイズ部分の平均振幅Nに比べてピーク位置のベースからの高さHが、H≧3Nの関係を満たす場合にピークが明瞭に認められるとした。
〔めっき性:〕
溶融亜鉛めっき後のめっき鋼板(未合金化処理の溶融亜鉛めっき鋼板)の外観を、目視で評価。
○:不めっき欠陥無し(めっき性良好)
×:不めっき欠陥発生
〔めっき密着性:〕
めっき鋼板を、90度曲げ戻しの後、圧縮側のめっき層をセロハンテープ剥離し、セロハンテープに付着しためっき皮膜の量で評価した。
(未合金化処理のめっき鋼板)
○:めっき層の剥離無し(めっき密着性良好)
×:めっき層の剥離有り(めっき密着性不良)
(合金化処理しためっき鋼板)
○:めっき剥離量が少ない(めっき密着性良好)
×:めっき剥離量が多い(めっき密着性不良)
〔合金化後の外観:〕
目視で評価した。
○:合金化ムラがなく均一な外観が得られた
×:合金化ムラが発生した
〔合金化度、Mo拡散量:〕
アルカリ性溶液もしくは酸性溶液による一般的なめっき層溶解方法によって、めっき層を溶解し、得られた溶液の分析によって合金化溶融亜鉛めっき層中のFe含有量、Mo含有量を分析、測定した。
〔加工性:〕
TS≧590MPaでかつEl≧30%を満足するものを良好とし、それ以外のものを不良とした。
〔耐食性:〕
耐食性試験は、塩水噴霧試験(SST )による腐食減量により評価した。
耐食性改善効果の有無は、Mo無添加鋼を母材とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板との比較を行い評価した。
〔スポット溶接性:〕
加圧力:2.01kN、電流:3.5kA 、通電時間:Ts=25cyc.、Tup =3cyc.、Tw=8cyc.、Th=5cyc.、To=50cyc.、チップ:DR6φ球形状でダイレクトスポット溶接を行ない、溶接できたものを優とし、溶接できなかったものを不良とした。
製造条件を表2に示し、得られた評価結果を表3に示す。
表2、表3に示されるように、連続溶融亜鉛めっきラインにおける加熱還元時の加熱温度、雰囲気ガスの露点および水素濃度を本発明の範囲内とすることによって、溶融亜鉛めっき鋼板における不めっき欠陥の発生を防止すると共に、めっき密着性、合金化後の外観および加工性のいずれにも優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することが可能となった(実施例18〜26)。
これに対して、上記した条件が本発明の範囲を満足しない場合、不めっき欠陥が発生した(比較例10)。
鋼中P含有量と不メッキ欠陥の発生しない最適加熱還元温度領域との関係を示すグラフである。 不メッキ欠陥の発生しない加熱還元時の雰囲気ガスの水素濃度、露点の最適領域を示すグラフである。 鋼中P含有量とめっき密着性の良好な最適合金化温度領域との関係を示すグラフである。 めっき層中Mo含有量と腐食減量との関係を示すグラフである。 鋼中P含有量と不メッキ欠陥の発生しない最適加熱還元温度領域との関係を示すグラフである。 鋼中P含有量と不メッキ欠陥の発生しない加熱還元時の雰囲気ガスの露点の最適領域を示すグラフである。

Claims (4)

  1. P:0.10wt%以下を含有する鋼のスラブを熱間圧延し、酸洗後、そのまま、もしくは冷間圧延を施した後、加熱温度:Tが、750 ℃以上、1000℃以下でかつ下記式(2)を満足し、雰囲気ガスの露点:tが下記式(3)を満足し、水素濃度が1〜100vol%である雰囲気中で加熱した後、溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする加工性およびめっき密着性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

    0.85≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×1150}/{T(℃)}≦1.15……………(2)
    0.35≦{〔P(wt%)+(2/3)〕×(−30)}/{t(℃)}≦1.8 ……(3)
  2. 前記したP:0.10wt%以下を含有する鋼のスラブが、P:0.10wt%以下、Mo:1.00wt%以下それぞれを含有する鋼のスラブであることを特徴とする請求項1記載の加工性およびめっき密着性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法で得られた溶融亜鉛めっき鋼板に、さらに、加熱合金化処理を施すことを特徴とする加工性およびめっき密着性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法で得られた溶融亜鉛めっき鋼板に、さらに、加熱合金化処理を施すと共に、該加熱合金化処理における合金化温度:t2 (℃)が、鋼中P含有量:P(wt%)および前記した溶融亜鉛めっき時の浴中Al含有量:Al(wt%)に対して下記式(4)を満足することを特徴とする加工性およびめっき密着性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

    0.95≦[7×{100 ×〔P(wt%)+(2/3)〕+10×Al(wt%)}]/〔t2 (℃)〕≦1.05………(4)
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