JP2005097711A - 磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末およびその製造方法 - Google Patents

磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末とその製造方法を提供する。
【解決手段】R(ただし、Rは、DyおよびTbを除くYを含む希土類元素の内の1種または2種以上を示す。):5〜20%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜5%、B:3〜20%を含有し、必要に応じてCo:0.1〜50%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多い層で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍である。
【選択図】 図2

Description

この発明は、磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末およびその製造方法に関するものである。
MをGa、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Ni、Al、Ti、V、Cu、Cr、Ge、CおよびSiの内の1種または2種以上とすると、原子%で(以下、%は原子%を示す)、Yを含む希土類元素の内の1種または2種以上:10〜20%、Co:0〜50%、B:3〜20%、M:0〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料水素化物粉末と、Dy、Tbの単体、合金、化合物、またはそれら(単体、合金、化合物)の水素化物からなる粉末を混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を拡散加熱し、この拡散加熱した混合粉末から脱水素することにより磁気異方性に優れた希土類磁石粉末を製造する方法は知られており、前記希土類磁石合金原料水素化物粉末は希土類磁石合金原料を水素雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの所定の温度に昇温、または昇温し保持して水素吸収処理したのち、水素圧力:10〜1000kPaの水素雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の所定の温度に昇温し保持することにより前記希土類磁石合金原料に水素を吸収させて相変態による分解を促す水素吸収・分解処理を施し、引き続いて、水素吸収・分解処理を施した希土類磁石合金原料を500〜1000℃の範囲内の所定の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより希土類磁石合金原料に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、引き続いてArガスを導入して室温まで冷却することにより製造することは知られている(特許文献1参照)。
また、これら希土類磁石粉末である磁気異方性HDDR磁石粉末は、希土類磁石合金原料を水素吸収処理したのち、水素圧力:10〜1000kPaの水素雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の所定の温度に昇温し保持することにより希土類磁石合金原料に水素を吸収させて相変態による分解を促す水素吸収・分解処理を施し、引き続いて、水素吸収・分解処理を施した希土類磁石合金原料を500〜1000℃の範囲内の所定の温度で真空中に保持することにより脱水素処理が施されるところから、実質的に正方晶構造をとるRFe14B型金属間化合物相を主相とした再結晶粒が相互に隣接した再結晶集合組織を有し、この再結晶集合組織は個々の再結晶粒の最短粒径aと最長粒径bの比(b/a)が2未満である形状の再結晶粒が全再結晶粒の50容量%以上存在し、かつ再結晶粒の平均再結晶粒径が0.05〜5μmの寸法を有する磁気異方性HDDR磁石粉末の基本組織を有することが知られている(特許文献2参照)。
特開2002−93610号公報 特許第2576672号公報
近年、電気・電子業界では一層磁気異方性に優れた希土類磁石粉末が求められており、特に自動車業界では電気自動車の開発が盛んで、電気自動車に搭載するモーターの開発が盛んに行われている。この電気自動車に搭載されているモーターは小型ガソリンエンジンの近傍に設置されたり、炎天下に放置されることがあるために特に加熱されやすい環境下に置かれることが多々ある。そのために一層耐熱性に優れかつ磁気特性に優れたモーター部品を製造することのできる保磁力および残留磁束密度が共に優れた磁気異方性を有しかつ熱的安定性に一層優れた希土類磁石粉末が求められている。
そこで、本発明者らは、一層優れた磁気異方性および熱的安定性を有する希土類磁石粉末を得るべく研究を行った。その結果、以下の(い)〜(は)に記載の研究結果が得られたのである。
(い)(a)原子%で(以下、%は原子%を示す)、R(ただし、Rは、DyおよびTbを除き、Yを含む希土類元素の内の1種または2種以上を示す。以下同じ):5〜20%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多い層(以下、Dy−Tbリッチ層という)で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍である希土類磁石粉末、
(b)R:5〜20%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多いDy−Tbリッチ層で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍である希土類磁石粉末、
(c)R:5〜20%、Co:0.1〜50%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多いDy−Tbリッチ層で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍である希土類磁石粉末、
(d)R:5〜20%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多いDy−Tbリッチ層で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍である希土類磁石粉末、
の前記(a)〜(d)記載の希土類磁石粉末はいずれも従来の特許文献1記載の希土類磁石粉末に比べて一層優れた磁気異方性および熱的安定性を有する。
(ろ)この希土類磁石粉末はいずれも実質的に正方晶構造をとるRFe14B型金属間化合物相を主相とした再結晶粒が相互に隣接した再結晶集合組織を有し、この再結晶集合組織は個々の再結晶粒の最短粒径aと最長粒径bの比(b/a)が2未満である形状の再結晶粒が全再結晶粒の50容量%以上存在し、かつ再結晶粒の平均再結晶粒径が0.05〜5μmの寸法を有する磁気異方性HDDR磁石粉末の基本組織を有している、という研究結果が得られたのである。
(は)これらの前記磁気異方性および熱的安定性を有する希土類磁石粉末は、通常の方法で希土類磁石を作製することができる。
前記一層優れた磁気異方性および熱的安定性を有する希土類磁石粉末を製造するには、
(イ)前記従来の磁気異方性に優れた希土類磁石粉末の製造方法において、希土類磁石合金原料を平均粒径:10〜1000μmになるまで通常の不活性ガス雰囲気中で粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、
この混合粉末に、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施し、引き続いて圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記混合粉末に水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、その後、従来と同様に引き続いて、必要に応じて、水素吸収・分解処理を施した混合粉末を不活性ガス圧:10〜1000kPa、温度:500〜1000℃の範囲内の所定の温度で不活性ガス雰囲気中に保持することにより中間熱処理を行い、さらに引き続いて、必要に応じて、中間熱処理を施した混合粉末を500〜1000℃の範囲内の所定の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより混合粉末に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、その後、500〜1000℃の範囲内の所定の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕することにより製造することができる、
(ロ)また、必要に応じて希土類磁石合金原料を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温、または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施したのち、平均粉末粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して水素吸収処理した希土類磁石合金原料粉末(以下、この粉末を水素吸収希土類磁石合金原料粉末という)を作製し、
この水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
この水素含有原料混合粉末を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記水素含有原料混合粉末にさらに水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、その後、引き続いて、必要に応じて、水素吸収・分解処理を施した水素含有原料混合粉末を不活性ガス圧:10〜1000kPa、温度:500〜1000℃の範囲内の所定の温度で不活性ガス雰囲気中に保持することにより中間熱処理を行い、さらに引き続いて、必要に応じて、中間熱処理を施した水素含有原料混合粉末を500〜1000℃の範囲内の所定の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより水素含有原料混合粉末に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、その後、500〜1000℃の範囲内の所定の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕することにより製造することもできる。
前記希土類磁石合金原料は、原子%で(以下、%は原子%を示す)、
R´(ただし、R´は、Yを含む希土類元素の内の1種または2種以上を示し、DyおよびTbの1種または2種を含まない場合も含む。以下同じ):10〜20%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、
R´:10〜20%、B:3〜20%、M(但し、MはGa、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Ni、Al、Ti、V、Cu、Cr、Ge、CおよびSiの内の1種または2種以上を示す。以下同じ):0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、
R´:10〜20%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、
または、R´:10〜20%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料であることが好ましい。
この発明は、これらの研究結果に基づいて成されたものであって、
(1)R(ただし、Rは、DyおよびTbを除き、Yを含む希土類元素を示す。以下同じ):5〜20%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多い層(以下、Dy−Tbリッチ層という)で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍である希土類磁石粉末、
(2)R:5〜20%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多いDy−Tbリッチ層で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍である希土類磁石粉末、
(3)R:5〜20%、Co:0.1〜50%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多いDy−Tbリッチ層で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍である希土類磁石粉末、
(4)R:5〜20%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多いDy−Tbリッチ層で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍である希土類磁石粉末、
(5)前記(1)、(2)、(3)または(4)記載の磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末を有機バインダーまたは金属バインダーにより結合してなる希土類磁石、
(6)前記(1)、(2)、(3)または(4)記載の磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末をホットプレスまたは熱間静水圧プレスしてなる希土類磁石、
(7)希土類磁石合金原料を不活性ガス雰囲気中で平均粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、
この混合粉末に、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施し、引き続いて圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記混合粉末に水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕する磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法、
(8)希土類磁石合金原料を不活性ガス雰囲気中で平均粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、
この混合粉末に、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施し、引き続いて圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記混合粉末に水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
引き続いて、水素吸収・分解処理を施した混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で圧力:10〜1000kPaの不活性ガス雰囲気中に保持することにより中間熱処理を行い、
その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕する磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法、
(9)希土類磁石合金原料を不活性ガス雰囲気中で平均粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、
この混合粉末に、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施し、引き続いて圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記混合粉末に水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
引き続いて、水素吸収・分解処理を施した混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより混合粉末に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、
その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕する磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法、
(10)希土類磁石合金原料を不活性ガス雰囲気中で平均粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、
この混合粉末に、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施し、引き続いて圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記混合粉末に水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
引き続いて、水素吸収・分解処理を施した混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で圧力:10〜1000kPaの不活性ガス雰囲気中に保持することにより中間熱処理を行い、
引き続いて、中間熱処理を施した混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより混合粉末に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、
その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕する磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法、
(11)前記(7)、(8)、(9)または(10)記載の希土類磁石合金原料は、真空またはArガス雰囲気中、温度:600〜1200℃に保持の条件で均質化処理した希土類磁石合金原料である磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法、
(12)希土類磁石合金原料を、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温、または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施したのち、平均粉末粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して水素吸収処理した希土類磁石合金原料粉末(以下、この粉末を水素吸収希土類磁石合金原料粉末という)を作製し、
この水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
この水素含有原料混合粉末を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記水素含有原料混合粉末にさらに水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕する磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法、
(13)水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
この水素含有原料混合粉末を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記水素含有原料混合粉末にさらに水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
引き続いて、水素吸収・分解処理を施した水素含有原料混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で圧力:10〜1000kPaの不活性ガス雰囲気中に保持することにより中間熱処理を行い、
その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕する磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法、
(14)水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
この水素含有原料混合粉末を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記水素含有原料混合粉末にさらに水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
引き続いて、水素吸収・分解処理を施した水素含有原料混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより水素含有原料混合粉末に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、
その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕する磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法、
(15)水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
この水素含有原料混合粉末を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記水素含有原料混合粉末にさらに水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
引き続いて、水素吸収・分解処理を施した水素含有原料混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で圧力:10〜1000kPaの不活性ガス雰囲気中に保持することにより中間熱処理を行い、
引き続いて、中間熱処理を施した水素含有原料混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより水素含有原料混合粉末に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、
その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕する磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法、
(16)前記(12)、(13)、(14)または(15)記載の水素吸収希土類磁石合金原料粉末を作製するための希土類磁石合金原料は、真空またはArガス雰囲気中、温度:600〜1200℃に保持の条件で均質化処理した希土類磁石合金原料であることを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
(17)前記(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)または(16)記載の方法で製造した磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末を有機バインダーまたは金属バインダーにより結合することを特徴とする希土類磁石の製造方法。
(18)前記(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)または(16)記載の方法で製造した磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末を成形して圧粉体を作製し、この圧粉体を温度:600〜900℃でホットプレスまたは熱間静水圧プレスする希土類磁石の製造方法、
(19)前記(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)または(16)記載の希土類磁石合金原料は、原子%で(以下、%は原子%を示す)、
R´(ただし、R´はYを含む希土類元素を示す。以下同じ):10〜20%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、
R´:10〜20%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、
R´:10〜20%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、または
R´:10〜20%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料である磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法、に特徴を有するものである。
希土類磁石合金原料粉末または水素吸収希土類磁石合金原料粉末を作製→希土類磁石合金原料粉末にDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製→水素吸収処理→水素吸収・分解処理→必要に応じて中間熱処理→必要に応じて減圧水素中熱処理→脱水素処理の順序で施すこの発明の希土類磁石粉末の製造方法により得られた希土類磁石粉末は、磁気異方性および熱的安定性に優れており、産業上優れた効果を奏するものである。
この発明の希土類磁石粉末の成分組成および組織、並びにこの発明の磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法における希土類磁石合金原料粉末または水素吸収希土類磁石合金原料粉末にDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を添加する添加量および製造条件を前述の如く限定した理由を説明する。
(A)希土類磁石粉末
(i)成分組成の限定理由
R:
Rは、Ndを主体とし、その他、Y、Pr、Sm、Ce、La、Er、Eu、Gd、Tm、Yb、Lu、Hoなどを微量含む希土類元素(ただし、DyおよびTbを除く)であるが、その含有量が5%未満では保磁力が低下し、一方、20%を越えて含有すると飽和磁化が低下していずれも希望の磁気特性が得られないので好ましくない。したがって、Rの含有量は5〜20%に定めた。
DyおよびTb:
DyおよびTbの1種または2種の含有量を0.01〜10%(一層好ましくは、0.3〜4%)に限定したのは、DyおよびTbの1種または2種を0.01%未満含有させても磁気異方性および熱的安定性に優れた所望の効果が得られず、一方、10%を越えて含有させると、異方性が低下して十分な磁気特性が得られないので好ましくない理由によるものである。
B:
Bの含有量は3%未満では保磁力が低下し、一方、20%を越えて含有すると飽和磁化が低下していずれも希望の磁気特性が得られないので好ましくない。したがって、Bの含有量は3〜20%に定めた。
Co:
Coは希土類磁石合金の等方性化を阻止するために必要に応じて添加するが、その含有量が0.1%未満では所望の効果が得られず、一方、50%を越えて含有すると、保磁力および飽和磁化が下がるので異方化しても高特性が得られない。したがって、この発明の希土類磁石粉末および希土類磁石粉末の製造方法で使用する希土類磁石合金原料に含まれるCoの含有量は0.1〜50%(一層好ましくは、5〜30%)に定めた。
M(Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Ni、Al、Ti、V、Cu、Cr、Ge、CおよびSiの内の1種または2種以上):
Mは、保磁力および残留磁束密度の一層の向上のために必要に応じて添加するが、その含有量が0.001%未満では所望の効果が得られず、一方、5%を越えて添加すると、保磁力および残留磁束密度が低下するので好ましくない。したがってMの含有量は0.001〜5%以下に定めた。
(ii)組織の限定理由
波長分散型X線分光法の線分析による最大検出強度:
表面付近のDyまたはTbの1種または2種の最大検出強度は、波長分散型X線分光法の線分析で粉末断面を横断するように走査して、粉末の中心付近における粒径の1/3の範囲での平均検出強度を求めてこれを中心付近の強度とし、これに対する割合として表面付近のピークのDyまたはTbの1種または2種の最大検出強度を求める。なお、時々DyまたはTbの1種または2種の検出強度が部分的に極端に大きい場所が現れるが、多くの場合これは希土類リッチの相が存在するためで、この相の特徴としてDyまたはTbの1種または2種に加えてNdまたはPrの1種または2種の検出強度も同時に大きくなる。このような相は本発明において不可避で生じる層であるため、最大検出強度の評価の対象からは除外するものとする。また、ここで、DyまたはTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が1.2倍未満のときは、粉末の表面と内部との異方性磁界の差が小さいため、表面の高い異方性磁界による大きな保磁力と内部の大きな異方性とを両立するという効果が得られない。また、検出強度が5倍を超えるときは表面付近の領域の磁束密度が大きく低下してしまう。従って、領域のDyまたはTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による検出強度を内部の検出強度の1.2〜5倍(望ましくは1.3〜4倍)とした。
Dy−Tbリッチ層の表面からの厚さ:
希土類磁石粉末の表面に存在するDyまたはTbの1種または2種の含有量が多い領域(Dy−Tbリッチ層)の表面からの深さは、波長分散型X線分光法の線分析で粉末断面の表面付近を横断するようにできるだけ細かい間隔で走査し、検出されたピークについて強度が中心付近の平均検出強度の1.2倍以上となる部分の幅を、DyまたはTbの1種または2種の含有量が多い領域の表面からの深さとして求める。なお、走査した場所が部分的に極端にDyまたはTbの1種または2種の検出強度が大きいDy−Tbリッチ相が存在する場所であった場合は、表面からの深さの評価の対象から除外するものとする。また、ここで、DyまたはTbの1種または2種は表面付近のR(Fe,Co)14B型結晶粒子のR原子を置換して(R,(Dy,Tb))(Fe,Co)14B型相を形成していると思われ、この発明の効果は表面の結晶粒子1層かまたはそれ以上を内部よりもDyまたはTbの1種または2種が多くなるように置換することで得られると思われるが、DyまたはTbの1種または2種の含有量が多い領域であるDy−Tbリッチ層の厚さが0.05μmよりも少ないと所望の効果が得られない。また、その厚さが50μmを超えるとDyまたはTbの1種または2種の含有量が多く保磁力が大きい領域の体積が内部の高異方性の領域に影響を与えて粉末全体の異方性を著しく下げてしまう。従って、Dy−Tbリッチ層の表面からの深さを0.05〜50μm(望ましくは1〜30μm)とした。
Dy−Tbリッチ層の表面被覆率:
DyまたはTbの1種または2種の含有量が多い領域(Dy−Tbリッチ層)の表面被覆率は、波長分散型X線分光法の線分析で1つの粉末断面について走査位置を変えて5回以上の線分析を行い、DyまたはTbの1種または2種の粉末の表面付近の検出強度の合計が中心付近の1.2倍以上となる粉末表面の数の、粉末表面を走査により横断した回数に対する割合として求める。なお、走査した場所が部分的に極端にDyまたはTbの1種または2種の検出強度が大きい希土類リッチ相が存在する場所であった場合は、計数の対象から除外するものとする。また、ここで、粉末の表面を、異方性磁界が大きく、かつ、Ndよりも酸化されにくい元素であるDyまたはTbの1種または2種の含有量が多い領域が覆うことにより、大きな保磁力と異方性とを兼ね備え、かつ、優れた耐酸化性が得られるが、表面を覆う領域が70%未満のときは十分大きな保磁力が得られず、また、耐酸化も不十分なため、十分な熱的安定性と耐熱性が得られない。従ってDyまたはTbの1種または2種の含有量が多い領域が覆う面積を粉末表面全体の70%以上(望ましくは80%以上)とした。
上記のこの発明の希土類磁石粉末は粉末内部の表面付近のDyまたはTbの1種または2種の多い領域(Dy−Tbリッチ層)の異方性磁界が中心付近よりも高くなるため粉末として保磁力が向上し、また、DyおよびTbは比較的酸化されにくく、粉末としての耐酸化性が良くなるので、粉末の熱的安定性と耐熱性が向上すると考えられる。さらに、DyまたはTbの1種または2種の多い領域(Dy−Tbリッチ層)は粉末の表面付近に限られるので粉末全体の異方性がほとんど低下しないため、この粉末では良好な耐熱性と高い異方性が両立していると考えられる。
(B)前記(7)、(8)、(9)、(10)および(11)記載の磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法における製造条件の限定理由:
希土類磁石合金原料を平均粒径:10〜1000μm(一層好ましくは、50〜400μm)の範囲に粉砕する理由は、平均粒径:10μm未満に微細に不活性ガス雰囲気中で粉砕しようとすると、微細であるために粉砕時の発熱によって合金が酸化されることは避けられず、この酸化により最終的に得られる希土類磁石粉末の保磁力は低下するので好ましくなく、一方、平均粒径:1000μmよりも大きいと、Dy、TbまたはDy−Tb二元系合金が希土類磁石合金原料粉末の中心部まで拡散することが出来ずに組成が不均一となり、最終的に解砕して得られる希土類磁石粉末の1つの粉末粒子内の磁化容易軸が揃いにくくなって、磁気異方性が低下するので好ましくないことによるものである。
この希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末に、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施し、引き続いて圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記混合粉末に水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕すると、磁気異方性および熱的安定性に一層優れた希土類磁石粉末が得られるのである。
この希土類磁石合金原料粉末に、Dyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を添加し混合して得られた混合粉末を水素吸収処理し、さらに水素吸収・分解処理し、ついで脱水素処理を行うと、磁気異方性および熱的安定性に一層優れた希土類磁石粉末が得られるが、その理由は、下記のごとき理由が考えられる。
最近の研究では、希土類磁石合金原料粉末を水素吸収し、さらに水素吸収・分解し、ついで脱水素する処理(この処理は一般にHDDR処理と言われている)による希土類磁石粉末の異方性化は水素吸収・分解処理の段階の反応が重要であることが明らかになってきている。一方、熱的安定性向上のために保磁力を向上させようとDyまたはTbの1種または2種を希土類磁石合金中に多量に添加すると、文献(特開平9−165601号公報)にあるように異方性が低下してしまい、十分なエネルギー積を得ることができない。この原因は、希土類磁石合金中にDyまたはTbの1種または2種が多量に含まれていると、前述の水素吸収・分解処理の反応が影響を受け、水素吸収・分解反応によって形成される状態が異方性化条件を満足しない状態になるためではないかと思われる。
しかし、本発明のように通常の不活性ガス雰囲気中で粉砕して得られた希土類磁石合金原料粉末に、Dyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を添加し混合して得られた混合粉末を水素吸収・分解処理を施すと、そのときの分解反応は、希土類磁石合金からは希土類元素の水素化物が形成されて残りがFeまたは(Fe,Co)と、FeBを基本とする相に分解される方向に進むため、同じ希土類元素であるDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末はこの分解反応に携わることがないため、希土類磁石合金原料粉末だけが分解されるため、希土類磁石合金中にDyまたはTbの1種または2種を多量に添加したときのように水素吸収・分解反応によって形成される状態が異方性化条件を満足しない状態にならない。
ついで、この状態から脱水素処理を行うと、希土類磁石合金原料粉末中に分解したR水素化物、Feまたは(Fe,Co)およびFeBを基本とする相が反応してRFe14Bを基本とする相が形成されるだけでなく、Dyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末も水素を放出することによってDyまたはTbの1種または2種の原子が希土類磁石合金原料粉末の表面全体に拡散し、引き続いて希土類磁石合金原料粉末の内部に向って拡散するため、最終的に形成されるRFe14Bを基本とする相は元の希土類磁石合金原料粉末に比べてDyまたはTbの1種または2種の含有量が多くなり、かつ粉末粒子内の表面付近のDyまたはTbの1種または2種の含有量が粉末粒子内の中心付近よりも多くなり、その結果、保磁力が向上し、かつ保磁力の温度係数が低減するため、熱的安定性が向上する。一方、水素吸収・分解反応の段階で異方性化条件を満足する状態になっているため、脱水素によって異方性化が実際に起こって、その結果、保磁力が大きく、かつ異方性に優れた希土類磁石粉末がえられる、などの理由が考えられる。
この発明では、この希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末をさらに加熱し、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で温度:500〜1000℃の範囲内の所定の温度に保持する水素吸収・分解処理を施すことにより原料に水素を吸収させて相変態を促し分解させるが、混合粉末を作製するために希土類磁石合金原料粉に添加するDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末の平均粒径を0.1〜50μmに限定した理由は、Dyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末の平均粒径が0.1μm未満では酸化が激しくなり、取り扱いが非常に困難になるので好ましくなく、一方、平均粒径が50μmを越えると希土類磁石粉末中にDy、TbまたはDy−Tb二元系合金の相またはこれら元素が過多の化合物相が偏析してしまい、均一に拡散することができないので、これら水素化物粉末の平均粒径は0.1〜50μm(一層好ましくは1〜10μm)に定めた。
また、その添加量を0.01〜5モル%に限定した理由は0.01モル%未満では保磁力改善の効果が十分でなく、一方、5モル%を越えて添加すると異方性が低下して十分な磁気特性が得られないので好ましくない。したがって、Dyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末の添加量は0.01〜5モル%(一層好ましくは、0.3〜3モル%)に定めた。
水素吸収処理における圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持する条件はすでに知られている条件であり、また、引き続いて施される水素吸収・分解処理工程における圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で温度:500〜1000℃の範囲内の所定の温度に保持する条件もすでに知られている条件であり、いずれも特に新規な条件ではないのでその限定理由の説明は省略する。
かかる水素吸収・分解処理したのち、必要に応じて中間熱処理を施す。この中間熱処理は、不活性ガスフローにより雰囲気を不活性ガス雰囲気に変えることにより適度なスピードで異方性化を促進させる工程である。この中間熱処理は圧力:10〜1000kPaの不活性ガス雰囲気中で温度:500〜1000℃の範囲内の所定の温度に保持する条件で行なわれる。かかる中間熱処理における不活性ガス雰囲気の圧力が10kPa未満では異方性化が速くなりすぎて保磁力低下の原因になるので好ましくなく、一方、1000kPaを越えると異方性化がほとんど進まなくなり、残留磁束密度低下の原因になるので好ましくないとされている。
必要に応じて中間熱処理を施したのち、さらに必要に応じて減圧水素中熱処理を施す。この減圧水素中熱処理は、水素吸収・分解処理した混合粉末を絶対圧:0.65〜10kPa未満(好ましくは、2〜8kPa)の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満(好ましくは、2〜8kPa)の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより混合粉末に水素を一部残したまま熱処理する工程である。この減圧水素中熱処理を施すことにより保磁力および残留磁束密度を一層向上させることができる。
必要に応じて中間熱処理および減圧水素中熱処理を施したのち脱水素処理を行う。脱水素処理は到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより混合粉末から強制的に水素を十分放出させ、それにより一層の相変態を促す処理である。到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持する理由は、0.13kPaを越える到達圧では十分に脱水素が行われないからである。
この脱水素処理後に行なう冷却は不活性ガス(Arガス)を流すことにより室温まで冷却する。冷却した後は解砕して希土類磁石粉末とする。この解砕して得られた希土類磁石粉末は残留内部応力が極めて少ないので熱処理する必要はない。この発明の製造方法により得られた磁気異方性および熱的安定性に一層優れた希土類磁石粉末は、有機バインダーまたは金属バインダーにより結合することにより磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石を製造することができ、さらにこの希土類磁石粉末を成形して圧粉体を作製し、この圧粉体を温度:600〜900℃でホットプレスまたは熱間静水圧プレスすることにより磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石を製造することが出来る。
(C)前記(12)、(13)、(14)、(15)または(16)記載の磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法における製造条件の限定理由:
水素吸収希土類磁石合金原料粉末は、希土類磁石合金原料に圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの所定の温度に昇温、または昇温し500℃未満までの所定の温度(例えば、100℃)に保持することにより水素を吸収せしめる水素吸収処理を施すことにより作製する。この希土類磁石合金原料を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの所定の温度に昇温、または昇温する水素吸収処理は、従来から行われている処理であるが、この発明でこの水素吸収処理した希土類磁石合金原料に粉砕処理を施して水素吸収希土類磁石合金原料粉末を作製する理由は、
水素吸収処理した塊状の希土類磁石合金原料は粉砕しやすいこと、
水素吸収処理は温度:500℃未満までの比較的低い温度で処理されるために高温に保持されるその他の工程で粉砕するよりも粉砕しやすいこと、
塊状の希土類磁石合金原料を水素吸収処理後に予め希土類磁石粉末とほぼ同じ平均粒径に粉砕してあるので、最後の粉砕工程では解砕するだけで十分に微細な希土類磁石粉末が得られ、したがって、得られた希土類磁石粉末が酸化されることが極めて少なく、また内部応力が蓄積されることが極めて少ないところから磁気異方性が一層向上すること、
水素粉砕後、HDDR処理を施すと、磁石粉末の表面凹凸が減少して平滑な表面になり、比表面積が減少するために熱的安定性が向上する、などの理由によるものである。
水素吸収希土類磁石合金原料を製造するに際して、希土類磁石合金原料を水素吸収処理後に平均粉末粒径:10〜1000μm(一層好ましくは、50〜400μm)の範囲に粉砕する理由は、水素吸収処理した塊状の希土類磁石合金原料は比較的酸化され難いが、平均粒径:10μm未満に微細に粉砕しようとすると、微細であるために粉砕時に酸化されることは避けられず、この酸化により最終的に得られる希土類磁石粉末の保磁力は低下するので好ましくなく、一方、平均粒径:1000μmよりも大きいと、最終的に解砕して得られる希土類磁石粉末の1つの粉末粒子内の磁化容易軸が揃いにくくなって、磁気異方性が低下するので好ましくないことによるものである。水素吸収処希土類磁石合金原料粉末の平均粒径は最終的に得られる希土類磁石粉末とほぼ同じ平均粒径である。
この水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記水素含有原料混合粉末にさらに水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕すると、磁気異方性および熱的安定性に一層優れた希土類磁石粉末が得られるのである。
この水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、Dyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を添加し混合して得られた水素含有原料混合粉末をさらに水素吸収・分解処理し、ついで脱水素処理を行うと、磁気異方性および熱的安定性に一層優れた希土類磁石粉末が得られるが、その理由は、以下の通りである。
最近の研究では、HDDR処理による希土類磁石粉末の異方性化は水素吸収・分解処理の段階の反応が重要であることが明らかになってきている。その一方で、熱的安定性向上のために保磁力を向上させようとDyまたはTbの1種または2種を希土類磁石合金中の多量に添加すると、文献(特開平9−165601号公報)にあるように異方性が低下してしまい、十分なエネルギー積を得ることができない。この原因は、希土類磁石合金中にDyまたはTbの1種または2種が多量に含まれていると、前述の水素吸収・分解処理の反応が影響を受け、水素吸収・分解反応によって形成される状態が異方性化条件を満足しない状態になるためではないかと思われる。
しかし、本発明のように水素吸収処理した希土類磁石合金原料粉末に、Dyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を添加し混合して得られた水素含有原料混合粉末をさらに水素吸収・分解処理を施すと、そのときの分解反応は、希土類磁石合金からは希土類元素の水素化物が形成されて残りがFeまたは(Fe,Co)と、FeBを基本とする相に分解される方向に進むため、同じ希土類元素であるDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末はこの分解反応に携わることがなく、そのために希土類磁石合金原料粉末だけが分解され、希土類磁石合金中にDyまたはTbの1種または2種を多量に添加したときのように水素吸収・分解反応によって形成される状態が異方性化条件を満足しない状態にならない。
ついで、この状態から脱水素処理を行うと、希土類磁石合金原料粉末中に分解したR水素化物、Feまたは(Fe,Co)およびFeBを基本とする相が反応してRFe14Bを基本とする相が形成されるだけでなく、Dyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末も水素を放出することによってDyまたはTbの1種または2種の原子が希土類磁石合金原料粉末の表面全体に拡散し、引き続いて希土類磁石合金原料粉末の内部に向って拡散するため、最終的に形成されるRFe14Bを基本とする相は元の希土類磁石合金原料粉末に比べてDyまたはTbの1種または2種の含有量が多くなり、かつ粉末粒子内の表面付近のDyまたはTbの1種または2種の含有量が粉末粒子内の中心付近よりも多くなり、その結果、保磁力が向上し、かつ保磁力の温度係数が低減するため、熱的安定性が向上する。一方、水素吸収・分解反応の段階で異方性化条件を満足する状態になっているため、脱水素によって異方性化が実際に起こって、その結果、保磁力が大きく、かつ異方性に優れた希土類磁石粉末がえられる、と考えられる。
この発明では、この水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末に、さらに加熱し、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で温度:500〜1000℃の範囲内の所定の温度に保持する水素吸収・分解処理を施すものであり、この水素吸収・分解処理により原料に水素を吸収させて相変態を促し分解する。
水素含有原料混合粉末を作製するために水素吸収希土類磁石合金原料粉に添加するDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末の平均粒径を0.1〜50μmに限定した理由は、Dyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末の平均粒径が0.1μm未満では酸化が激しくなり、取り扱いが非常に困難になるので好ましくなく、一方、平均粒径が50μmを越えると希土類磁石粉末中にDy、TbまたはDy−Tb二元系合金の相またはこれら元素が過多の化合物相が偏析してしまい、均一に拡散することができないので、これら水素化物粉末の平均粒径は0.1〜50μm(一層好ましくは1〜10μm)に定めた。また、その添加量を0.01〜5モル%に限定した理由は0.01モル%未満では保磁力改善の効果が十分でなく、一方、5モル%を越えて添加すると異方性が低下して十分な磁気特性が得られないので好ましくない。したがって、Dyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末の添加量は0.01〜5モル%(一層好ましくは、0.3〜3モル%)に定めた。
水素吸収・分解処理工程における圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で温度:500〜1000℃の範囲内の所定の温度に保持する条件はすでに知られている条件であり、特に新規な条件ではないのでその限定理由の説明は省略する。
かかる水素吸収・分解処理したのち、必要に応じて中間熱処理を施す。この中間熱処理は、不活性ガスフローにより雰囲気を不活性ガス雰囲気に変えることにより適度なスピードで異方性化を促進させる工程である。この中間熱処理は圧力:10〜1000kPaの不活性ガス雰囲気中で温度:500〜1000℃の範囲内の所定の温度に保持する条件で行なわれる。かかる中間熱処理における不活性ガス雰囲気の圧力が10kPa未満では異方性化が速くなりすぎて保磁力低下の原因になるので好ましくなく、一方、1000kPaを越えると異方性化がほとんど進まなくなり、残留磁束密度低下の原因になるので好ましくないとされている。
必要に応じて中間熱処理を施したのち、さらに必要に応じて減圧水素中熱処理を施す。この減圧水素中熱処理は、水素吸収・分解処理した水素含有原料混合粉末を絶対圧:0.65〜10kPa未満(好ましくは、2〜8kPa)の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満(好ましくは、2〜8kPa)の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより水素含有原料混合粉末に水素を一部残したまま熱処理する工程である。この減圧水素中熱処理を施すことにより保磁力および残留磁束密度を一層向上させることができる。
必要に応じて中間熱処理および減圧水素中熱処理を施したのち脱水素処理を行う。脱水素処理は到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより水素含有原料混合粉末から強制的に水素を十分放出させ、それにより一層の相変態を促す処理である。到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持する理由は、0.13kPaを越える到達圧では十分に脱水素が行われないからである。
この脱水素処理後に行なう冷却は不活性ガス(Arガス)を流すことにより室温まで冷却する。冷却した後は解砕して希土類磁石粉末とする。この解砕して得られた希土類磁石粉末は残留内部応力が極めて少ないので熱処理する必要はない。この発明の製造方法により得られた磁気異方性および熱的安定性に一層優れた希土類磁石粉末は、有機バインダーまたは金属バインダーにより結合することにより磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石を製造することができ、さらにこの希土類磁石粉末を成形して圧粉体を作製し、この圧粉体を温度:600〜900℃でホットプレスまたは熱間静水圧プレスすることにより磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石を製造することが出来る。
前記(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)または(16)記載の磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法で使用される希土類磁石合金原料はDyまたはTbの1種または2種が含まれていても、含まれていなくても良い。したがって、この発明の磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法で使用される希土類磁石合金原料は、特許文献1および2に記載の通常の磁気異方性HDDR磁石粉末を製造する際に使用する希土類磁石合金原料と同じ成分組成を有し、一層具体的には、DyまたはTbの1種または2種が含まれていても含まれていなくても良いYを含む希土類元素をR´とすると、
R´:10〜20%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、
R´:10〜20%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、
R´:10〜20%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、または
R´:10〜20%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料である。
高周波真空溶解炉を用いて溶解し、得られた溶湯を鋳造してこれを1100℃のArガス雰囲気中で24時間保持することにより均質化処理を行い、表1に示される成分組成の希土類磁石合金原料の鋳塊a〜oを製造した。これら鋳塊a〜oをArガス雰囲気中で破砕して10mm以下のブロックを作製した。
Figure 2005097711
実施例1
表1の鋳塊a〜eのブロックをArガス雰囲気中で表2に示される平均粒径になるように粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、いずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表2に示される量だけ添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末に表2に示される条件で水素吸収処理を施し、引き続いて表2に示される条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表2に示される条件で中間熱処理を行い、さらに必要に応じて表2に示される条件で減圧水素中熱処理を行い、次いで表3に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより本発明法1〜5を実施した。
従来例1
表1の鋳塊a〜eのブロックを粉砕処理することなくまた水素化物粉末を添加して混合粉末を作ることなく表2に示される実施例1と同じ条件で水素吸収処理を施したのち、表2に示される実施例1と同じ条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表2に示される条件で減圧水素中熱処理を行った後、Arガス中で強制的に室温まで冷却し、表3に示される平均粒径になるように粉砕処理して希土類磁石原料水素化物粉末を作製したのち、この希土類磁石原料水素化物粉末にいずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表3に示される量だけ添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末に真空中で昇温して表3に示される条件に保持して拡散熱処理を施し、さらに表3に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して従来法1〜5を実施することにより希土類磁石粉末を製造した。
本発明法1〜5および従来法1〜5により得られた希土類磁石粉末をフェノール樹脂に埋め込み、鏡面に研磨して波長分散型X線分光計の一つである電子線マイクロアナライザ(日本電子製 JXA−8800RL、以下、EPMAという)により分析した中心付近と表面付近のDyおよび/またはTbの検出強度およびその強度比を測定することにより、Dy−Tbリッチ層の表面からの深さおよび表面被覆率の値を求め、その結果を表4に示した。
さらに、本発明法1〜5および従来法1〜5により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場中で圧縮成形して圧粉体を作製し、この圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3のボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石の磁気特性を表5に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表5に示した。ここで保磁力の温度係数αiHcとは、αiHc(%/℃)={(150℃の保磁力‐室温(20℃)の保磁力)/室温(20℃)の保磁力}/(150−20)×100で求められる値である。
さらに、本発明法1〜5および従来法1〜5により得られた希土類磁石粉末を磁場中で圧縮成形して異方性圧粉体を作製し、この異方性圧粉体をホットプレス装置にセットし、磁場の印加方向が圧縮方向になるようにArガス中、温度:750℃、圧力:58.8MPa 、1分間保持の条件でホットプレスを行い、急冷して密度:7.5〜7.7g/cm3 のホットプレス磁石を作製し、得られたホットプレス磁石の磁気特性を表5に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表5に示した。
また、本発明法1〜5および従来法1〜5により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場を圧縮方向に印加しながら外径:10mm、高さ:7mmの寸法を有する円柱状に圧縮成形し、ついでこの円柱状圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3の円柱状ボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石を70kOeのパルス磁界で着磁したのち、100℃に保持したオーブンに1000時間放置して3時間、100時間、1000時間経過後の熱減磁率を測定し、その結果を表5に示して熱的安定性を評価した。
ここで、熱減磁率とは、熱減磁率(%)={(所定時間暴露後の全磁束−暴露前の全磁束)/暴露前の全磁束}×100で求められる値である。
Figure 2005097711
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表1〜表5に示される結果から、Arガス雰囲気中で粉砕処理し、これに水素化物粉末を添加して混合粉末を作る本発明法1〜5により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性は、粉砕処理せずまた水素化物を添加しない従来法1〜5により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性に比べて、保磁力および残留磁束密度がともに向上していることが分かり、また保磁力の温度係数が小さく、さらに熱減磁率が小さいところから、熱的安定性にも優れていることが分かる。
この発明の検出強度およびその強度比を測定することにより、Dy−Tbリッチ層の表面からの深さおよび表面被覆率の値の求め方を本発明法1により得られた希土類磁石粉末を用いて詳細に説明する。
まず、本発明法1により得られた希土類磁石粉末をフェノール樹脂に埋め込み、鏡面に研磨してEPMAにより粉末内部断面におけるDyの元素分布を観察した。その際に撮影したDyの元素分布写真を図1に示す。輝点が多い所ほどDyの含有量が多いことを示しており、断面外周付近に輝点が多いことから粉末粒子内の表面付近の方が中心付近よりもDyの含有量が多いことが示されている。そこでEPMAで図1の点Aから点Bへの直線上におけるDyの線分析を行った。この時の測定条件は、加速電圧15kV、電子ビーム径最小、保持時間1.0sec/point、測定間隔1.0μmとして、Dyの特性X線・DyLα線(波長0.1909nm)を用いて測定を行った。その結果を図2に示す。グラフの横軸は試料の移動距離(mm)を示し、縦軸はDyLα線の検出強度をカウント数で示している。0.01mm付近から0.135mm付近までの粉末粒子に相当する部分で800counts以上のDyLα線が検出されているが、特に0.01mm付近のピーク(以後ピークAとする)が1440counts、0.135mm付近のピーク(以後ピークBとする)が1380countsと両端で強いピークが見られ、粉末粒子内の表面付近のDyの含有量が中心付近よりも多いことが分かる。そこで中心付近の強度を粉末粒径の1/3に相当する0.051mmから0.093mmの間の平均強度として求めると811countsとなった。従って、ピークAの中心付近に対する強度比は1.78、ピークBは1.70で1.2よりも十分大きな値であることがわかった。また、試料の向きを変えて同様の線分析を10回行ったところ、19ヶ所の表面付近の検出強度が中心付近の1.2倍以上となり、これより表面を覆うDyの含有量の多い領域の割合を95%とした。次にピークAを中心に保持時間1.0sec、測定間隔20nmとできるだけ細かい間隔で線分析を行った。その結果を図3に示す。中心付近の検出強度に対して十分有意性があると思われる1.2倍(973counts)以上の領域をピークAの領域としてその幅を求めると4.1μmとなった。
従来法1の磁石粉末についても同様にEPMAで分析を行った。1.0μm間隔の線分析の結果を図4に示す。中心付近のDyLα線の平均検出強度は1176countsとなり、表面付近の強度は0.02mm付近(以後ピークCとする)で1360countsであり、中心付近の1.2倍の1411countsに達しない。また、20nm間隔の線分析の結果を図5に示す。ピークCの強度は20nm間隔の測定により実際には1180countsと中心付近と変わらず、表面付近と中心付近のDyの含有量にはほとんど差がないことが分かった。
同様にして本発明法2〜5および従来法2〜5により作製した希土類磁石粉末についてEPMAにより分析した中心付近と表面付近のDy+Tbの検出強度、その強度比、Dy−Tbリッチ層の厚さ、Dy−Tbリッチ層の表面被覆率の値を求めたのであり、以下に述べる実施例2〜6の本発明法6〜30および従来法6〜30により作製した希土類磁石粉末についても同様にして求めた。
実施例2
表1の鋳塊f〜jのブロックを表6に示される平均粒径になるようにArガス雰囲気中で粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、いずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表6に示される量だけ添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末に表6に示される条件で水素吸収処理を施し、引き続いて表6に示される条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表7に示される条件で中間熱処理を行い、さらに必要に応じて表7に示される条件で減圧水素中熱処理を行い、次いで表8に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより本発明法6〜10を実施した。
従来例2
表1の鋳塊f〜jのブロックを粉砕処理することなくまた水素化物粉末を添加して混合粉末を作ることなく表6に示される実施例2と同じ条件で水素吸収処理を施したのち表6に示される実施例2と同じ条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表7に示される条件で減圧水素中熱処理を行った後、Arガス中で強制的に室温まで冷却し、表8に示される平均粒径になるように粉砕処理して希土類磁石原料水素化物粉末を作製したのち、この希土類磁石原料水素化物粉末にいずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表8に示される量だけ添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末に真空中で昇温して表8に示される条件に保持して拡散熱処理を施し、さらに表8に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより従来法6〜10を実施した。
本発明法6〜10および従来法6〜10により得られた希土類磁石粉末をフェノール樹脂に埋め込み、鏡面に研磨してEPMAにより分析した中心付近と表面付近のDyおよび/またはTbの検出強度およびその強度比を測定することにより、Dy−Tbリッチ層の表面からの深さおよび表面被覆率の値を求め、その結果を表9に示した。
さらに、本発明法6〜10および従来法6〜10により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場中で圧縮成形して圧粉体を作製し、この圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3のボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石の磁気特性を表10に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表10に示した。
また、本発明法6〜10および従来法6〜10により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場を圧縮方向に印加しながら外径:10mm、高さ:7mmの寸法を有する円柱状に圧縮成形し、ついでこの円柱状圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3の円柱状ボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石を70kOeのパルス磁界で着磁したのち、100℃に保持したオーブンに1000時間放置して3時間、100時間、1000時間経過後の熱減磁率を測定し、その結果を表10に示して熱的安定性を評価した。
さらに、本発明法6〜10および従来法6〜10により得られた希土類磁石粉末を磁場中で圧縮成形して異方性圧粉体を作製し、この異方性圧粉体をホットプレス装置にセットし、磁場の印加方向が圧縮方向になるようにArガス中、温度:750℃、圧力:58.8MPa 、1分間保持の条件でホットプレスを行い、急冷して密度:7.5〜7.7g/cm3 のホットプレス磁石を作製し、得られたホットプレス磁石の磁気特性を表10に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表10に示した。
Figure 2005097711
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表1および表6〜表10に示される結果から、Arガス雰囲気中で粉砕処理し、これに水素化物粉末を添加して混合粉末を作る本発明法6〜10により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性は、粉砕処理せずまた水素化物を添加しない従来法6〜10により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性に比べて、保磁力および残留磁束密度がともに向上していることが分かる。また保磁力の温度係数が小さく、さらに熱減磁率が小さいところから、熱的安定性にも優れていることが分かる。
実施例3
表1の鋳塊k〜oのブロックを表11に示される平均粒径になるようにArガス雰囲気中で粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、いずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表11に示される量だけ添加し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末に表11に示される条件で水素吸収処理を施し、引き続いて表11に示される条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表11に示される条件で中間熱処理を行い、さらに必要に応じて表11に示される条件で減圧水素中熱処理を行い、次いで表12に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより本発明法11〜15を実施した。
従来例3
表1の鋳塊k〜oのブロックを粉砕処理することなくまた水素化物粉末を添加して混合粉末を作ることなく表11に示される実施例3と同じ条件で水素吸収処理を施した後、表11に示される実施例3と同じ条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表11に示される条件で減圧水素中熱処理を行った後、Arガス中で強制的に室温まで冷却し、表12に示される平均粒径になるように粉砕処理して希土類磁石原料水素化物粉末を作製したのち、この希土類磁石原料水素化物粉末にいずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表12に示される量だけ添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末に真空中で昇温して表12に示される条件に保持して拡散熱処理を施し、さらに表12に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより従来法11〜15を実施した。
本発明法11〜15および従来法11〜15により得られた希土類磁石粉末をフェノール樹脂に埋め込み、鏡面に研磨してEPMAにより分析した中心付近と表面付近のDyおよび/またはTbの検出強度およびその強度比を測定することにより、Dy−Tbリッチ層の表面からの深さおよび表面被覆率の値を求め、その結果を表13に示した。
本発明法11〜15および従来法11〜15により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場中で圧縮成形して圧粉体を作製し、この圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3のボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石の磁気特性を表14に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表14に示した。
また、本発明法11〜15および従来法11〜15により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場を圧縮方向に印加しながら外径:10mm、高さ:7mmの寸法を有する円柱状に圧縮成形し、ついでこの円柱状圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3の円柱状ボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石を70kOeのパルス磁界で着磁したのち、100℃に保持したオーブンに1000時間放置して3時間、100時間、1000時間経過後の熱減磁率を測定し、その結果を表14に示して熱的安定性を評価した。
さらに、本発明法11〜15および従来法11〜15により得られた希土類磁石粉末を磁場中で異方性圧粉体を作製し、この異方性圧粉体をホットプレス装置にセットし、磁場の印加方向が圧縮方向になるようにArガス中、温度:750℃、圧力:58.8MPa 、1分間保持の条件でホットプレスを行い、急冷して密度:7.5〜7.7g/cm3 のホットプレス磁石を作製し、得られたホットプレス磁石の磁気特性を表14に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表14に示した。
Figure 2005097711
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表1および表11〜表14に示される結果から、Arガス雰囲気中で粉砕処理し、これに水素化物粉末を添加して混合粉末を作る本発明法11〜15により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性は、粉砕処理せずまた水素化物を添加しない従来法11〜15により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性に比べて、保磁力および残留磁束密度がともに向上していることが分かる。また保磁力の温度係数が小さく、さらに熱減磁率が小さいところから、熱的安定性にも優れていることが分かる。
実施例4
表1の鋳塊a〜eのブロックに表15に示される条件の水素吸収処理を施した後、この水素吸収処理したブロックを表15に示される平均粒径になるように粉砕処理して水素吸収希土類磁石合金原料粉末を作製し、この水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、いずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表15に示される量だけ添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
引き続いて表15に示される条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表15に示される条件で中間熱処理を行い、さらに必要に応じて表15に示される条件で減圧水素中熱処理を行い、さらに表16に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより本発明法16〜20を実施した。
従来例4
表1の鋳塊a〜eのブロックを表15に示される条件の水素吸収処理を施した後、粉砕処理することなくまた水素化物粉末を添加して水素含有原料混合粉末を作ることなく表15に示される実施例4と同じ条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表15に示される条件で減圧水素中熱処理を行った後、Arガス中で強制的に室温まで冷却し、表16に示される平均粒径になるように粉砕処理して希土類磁石原料水素化物粉末を作製し、この希土類磁石原料水素化物粉末にいずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表16に示される量だけ添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末に真空中で昇温して表16に示される条件に保持して拡散熱処理を施し、さらに表16に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより従来法16〜20を実施した。
本発明法16〜20および従来法16〜20により得られた希土類磁石粉末をフェノール樹脂に埋め込み、鏡面に研磨してEPMAにより分析した中心付近と表面付近のDyおよび/またはTbの検出強度およびその強度比を測定することにより、Dy−Tbリッチ層の表面からの深さおよび表面被覆率の値を求め、その結果を表17に示した。
例として、本発明法16により得られた希土類磁石粉末をフェノール樹脂に埋め込み、鏡面に研磨してEPMAにより粉末内部断面におけるDyの元素分布を観察した際に撮影したDyの元素分布写真を図6に示す。断面外周付近に輝点が多いことから粉末粒子内の表面付近の方が中心付近よりもDyの含有量が多いことが示されている。実際にEPMAで図6の点Eから点Fへの直線上におけるDyの線分析を行った結果を図7に示す。図7によると、両端に強いピークが見られ、粉末粒子内の表面付近のDyの含有量が中心付近よりも多いことが分かる。両端のピークの平均検出強度は1412counts、中心付近の粉末粒径の1/3の範囲での平均検出強度は915countsで、中心付近に対する強度比は1.54となった。試料の向きを変えて同様の線分析を10回行った結果から表面被覆率は95%となった。また、両端のピークを細かい間隔で走査した結果、中心付近の検出強度の1.2倍以上となる領域の幅は4.5μmとなった。
表17の値はこのように本発明法16により得られた希土類磁石粉末、および同様にして本発明法17〜20および従来法16〜20により得られた希土類磁石粉末についての測定結果により得られた値である。
さらに、本発明法16〜20および従来法16〜20により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場中で圧縮成形して圧粉体を作製し、この圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3のボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石の磁気特性を表18に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表18に示した。ここで保磁力の温度係数αiHcとは、αiHc(%/℃)={(150℃の保磁力‐室温(20℃)の保磁力)/室温(20℃)の保磁力}/(150−20)×100で求められる値である。
さらに、本発明法16〜20および従来法16〜20により得られた希土類磁石粉末を磁場中で圧縮成形して異方性圧粉体を作製し、この異方性圧粉体をホットプレス装置にセットし、磁場の印加方向が圧縮方向になるようにArガス中、温度:750℃、圧力:58.8MPa 、1分間保持の条件でホットプレスを行い、急冷して密度:7.5〜7.7g/cm3 のホットプレス磁石を作製し、得られたホットプレス磁石の磁気特性を表18に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表18に示した。
また、本発明法16〜20および従来法16〜20により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場を圧縮方向に印加しながら外径:10mm、高さ:7mmの寸法を有する円柱状に圧縮成形し、ついでこの円柱状圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3の円柱状ボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石の磁気特性を70kOeのパルス磁界で着磁したのち、100℃に保持したオーブンに1000時間放置して3時間、100時間、1000時間経過後の熱減磁率を測定し、その結果を表18に示して熱的安定性を評価した。
ここで、熱減磁率とは、熱減磁率(%)={(所定時間暴露後の全磁束−暴露前の全磁束)/暴露前の全磁束}×100で求められる値である。
Figure 2005097711
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表1および表15〜表18に示される結果から、水素吸収希土類磁石原料粉末に水素化物粉末を添加して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末に水素吸収・分解処理を施す本発明法16〜20により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性は、水素吸収処理を施したのち水素吸収・分解処理を施して得られた希土類磁石原料水素化物粉末に水素化物粉末を添加して得られた水素含有原料混合粉末を拡散熱処理する従来法16〜20により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性に比べて、保磁力および残留磁束密度がともに向上していることが分かり、また保磁力の温度係数が小さく、さらに熱減磁率が小さいところから、熱的安定性にも優れていることが分かる。
実施例5
表1の鋳塊f〜jのブロックに表19に示される条件の水素吸収処理を施し、この水素吸収処理したブロックを表19に示される平均粒径になるように粉砕処理して水素吸収処理した希土類磁石合金原料粉末を作製し、この水素吸収処理した希土類磁石合金原料粉末に、いずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表19に示される量だけ添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
引き続いて表19に示される条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表19に示される条件で中間熱処理を行い、さらに必要に応じて表20に示される条件で減圧水素中熱処理を行い、さらに表20に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより本発明法21〜25を実施した。
従来例5
表1の鋳塊f〜jのブロックを表19に示される実施例5同じ条件の水素吸収処理を施した後、表19に示される実施例5と同じ条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表20に示される条件で減圧水素中熱処理を行ったのち、Arガス中で強制的に室温まで冷却し、表20に示される平均粒径になるように粉砕処理して希土類磁石原料水素化物粉末を作製したのち、この希土類磁石原料水素化物粉末にいずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表20に示される量だけ添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末に真空中で昇温して表20に示される条件に保持して拡散熱処理を施し、さらに表20に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより従来法21〜25を実施した。
本発明法21〜25および従来法21〜25により得られた希土類磁石粉末をフェノール樹脂に埋め込み、鏡面に研磨してEPMAにより分析した中心付近と表面付近のDyおよび/またはTbの検出強度およびその強度比を測定することにより、Dy−Tbリッチ層の表面からの深さおよび表面被覆率の値を求め、その結果を表21に示した。
さらに、本発明法21〜25および従来法21〜25により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場中で圧縮成形して圧粉体を作製し、この圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3のボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石の磁気特性を表22に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表22に示した。
また、本発明法21〜25および従来法21〜25により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場を圧縮方向に印加しながら外径:10mm、高さ:7mmの寸法を有する円柱状に圧縮成形し、ついでこの円柱状圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3の円柱状ボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石の磁気特性をを70kOeのパルス磁界で着磁したのち、100℃に保持したオーブンに1000時間放置して3時間、100時間、1000時間経過後の熱減磁率を測定し、その結果を表22に示して熱的安定性を評価した。
さらに、本発明法21〜25および従来法21〜25により得られた希土類磁石粉末を磁場中で圧縮成形して異方性圧粉体を作製し、この異方性圧粉体をホットプレス装置にセットし、磁場の印加方向が圧縮方向になるようにArガス中、温度:750℃、圧力:58.8MPa 、1分間保持の条件でホットプレスを行い、急冷して密度:7.5〜7.7g/cm3 のホットプレス磁石を作製し、得られたホットプレス磁石の磁気特性を表22に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表22に示した。
Figure 2005097711
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表1および表19〜22に示される結果から、水素吸収希土類磁石原料粉末に水素化物粉末を添加して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末に水素吸収・分解処理を施す本発明法21〜25により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性は、水素吸収処理を施したのち水素吸収・分解処理を施して得られた希土類磁石原料水素化物粉末に水素化物粉末を添加して得られた水素含有原料混合粉末を拡散熱処理する従来法21〜25により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性に比べて、保磁力および残留磁束密度がともに向上していることが分かり、また保磁力の温度係数が小さく、さらに熱減磁率が小さいところから、熱的安定性にも優れていることが分かる。
実施例6
表1の鋳塊k〜oのブロックに表23に示される条件の水素吸収処理を施し、この水素吸収処理したブロックを表23に示される平均粒径になるように粉砕処理して水素吸収処理した希土類磁石合金原料粉末を作製し、この水素吸収処理した希土類磁石合金原料粉末に、いずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表23に示される量だけ添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
引き続いて水素含有原料混合粉末に表23に示される条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表23に示される条件で中間熱処理を行い、さらに必要に応じて表23に示される条件で減圧水素中熱処理を行い、さらに表24に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより本発明法26〜30を実施した。
従来例6
表1の鋳塊k〜oのブロックを表23に示される実施例6同じ条件の水素吸収処理を施した後、粉砕処理することなくまた水素化物粉末を添加して水素含有原料混合粉末を作ることなく実施例6と同じ条件で水素吸収・分解処理を施し、引き続いて必要に応じて表23に示される条件で減圧水素中熱処理を行った後、Arガス中で強制的に室温まで冷却し、表24に示される平均粒径になるように粉砕処理して希土類磁石原料水素化物粉末を作製したのち、この希土類磁石原料水素化物粉末にいずれも平均粒径:5μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を表24に示される量だけ添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末に真空中で昇温して表24に示される条件に保持して拡散熱処理を施し、さらに表24に示される条件で脱水素処理を行った後、Arガスで強制的に室温まで冷却し、300μm以下に解砕して希土類磁石粉末を製造することにより従来法26〜30を実施した。
本発明法26〜30および従来法26〜30により得られた希土類磁石粉末をフェノール樹脂に埋め込み、鏡面に研磨してEPMAにより分析した中心付近と表面付近のDyおよび/またはTbの検出強度およびその強度比を測定することにより、Dy−Tbリッチ層の表面からの深さおよび表面被覆率の値を求め、その結果を表25に示した。
本発明法26〜30および従来法26〜30により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場中で圧縮成形して圧粉体を作製し、この圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3のボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石の磁気特性を表26に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表26に示した。
また、本発明法26〜30および従来法26〜30により得られた希土類磁石粉末にそれぞれ3質量%のエポキシ樹脂を加えて混練し、1.6MA/mの磁場を圧縮方向に印加しながら外径:10mm、高さ:7mmの寸法を有する円柱状に圧縮成形し、ついでこの円柱状圧粉体をオーブンで150℃、2時間熱硬化して、密度:6.0〜6.1g/cm3の円柱状ボンド磁石を作製し、得られたボンド磁石の磁気特性をを70kOeのパルス磁界で着磁したのち、100℃に保持したオーブンに1000時間放置して3時間、100時間、1000時間経過後の熱減磁率を測定し、その結果を表26に示して熱的安定性を評価した。
さらに、本発明法26〜30および従来法26〜30により得られた希土類磁石粉末を磁場中で異方性圧粉体を作製し、この異方性圧粉体をホットプレス装置にセットし、磁場の印加方向が圧縮方向になるようにArガス中、温度:750℃、圧力:58.8MPa 、1分間保持の条件でホットプレスを行い、急冷して密度:7.5〜7.7g/cm3 のホットプレス磁石を作製し、得られたホットプレス磁石の磁気特性を表26に示した。また、150℃で磁気特性を測定した結果から保磁力の温度係数αiHcを求め、その値を表26に示した。
Figure 2005097711
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Figure 2005097711
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表1および表23〜26に示される結果から、水素吸収希土類磁石原料粉末に水素化物粉末を添加して水素含有原料混合粉末を作製し、この水素含有原料混合粉末に水素吸収・分解処理を施す本発明法26〜30により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性は、水素吸収処理を施したのち水素吸収・分解処理を施して得られた希土類磁石原料水素化物粉末に水素化物粉末を添加して得られた水素含有原料混合粉末を拡散熱処理する従来法26〜30により得られた希土類磁石粉末で作製したボンド磁石およびホットプレス磁石の磁気特性に比べて、保磁力および残留磁束密度がともに向上していることが分かり、また保磁力の温度係数が小さく、さらに熱減磁率が小さいところから、熱的安定性にも優れていることが分かる。
本発明法1で作製した異方性磁石粉末に含まれるDyの元素分布を示す電子線マイクロアナライザ(EMPA)による元素分布写真である。 本発明法1で作製した異方性磁石粉末に含まれるDyの図1におけるA−B直線上のDy分布を示す電子線マイクロアナライザ(EMPA)による線分析グラフである。 本発明法1で作製した異方性磁石粉末に含まれるDyの直線上の元素分布を示し、図2のピークA付近を細かい間隔で走査した線分析グラフである。 従来法1で作製した異方性磁石粉末に含まれるDyの元素分布を示す電子線マイクロアナライザ(EMPA)による線分析グラフである。 従来法1で作製した異方性磁石粉末に含まれるDyの元素分布を示す図4のピークC付近を細かい間隔で走査した線分析グラフである。 本発明法16で作製した異方性磁石粉末に含まれるDyの元素分布を示す電子線マイクロアナライザ(EMPA)による元素分布写真である。 本発明法16で作製した異方性磁石粉末に含まれるDyの図6におけるE−F直線上のDy分布を示す電子線マイクロアナライザ(EMPA)による線分析グラフである。

Claims (20)

  1. 原子%で(以下、%は原子%を示す)、R(ただし、Rは、DyおよびTbを除くYを含む希土類元素の内の1種または2種以上を示す。以下同じ):5〜20%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
    この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多い層(以下、Dy−Tbリッチ層という)で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍であることを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末。
  2. R:5〜20%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、B:3〜20%、M(ただし、MはGa、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Ni、Al、Ti、V、Cu、Cr、Ge、CおよびSiの内の1種または2種以上を示す。):0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
    この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多いDy−Tbリッチ層で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍であることを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末。
  3. R:5〜20%、Co:0.1〜50%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
    この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多いDy−Tbリッチ層で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍であることを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末。
  4. R:5〜20%、DyおよびTbの1種または2種を0.01〜10%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有し、平均粉末粒径:10〜1000μmを有する希土類磁石粉末であって、
    この希土類磁石粉末は、厚さ:0.05〜50μmを有するDyおよびTbの1種または2種の含有量が多いDy−Tbリッチ層で表面全体の70%以上覆われており、前記Dy−Tbリッチ層におけるDyおよびTbの1種または2種の濃度はDyおよびTbの1種または2種の波長分散型X線分光法による最大検出強度が粉末粒子の粒径の1/3の範囲内における中心部の平均検出強度の1.2〜5倍であることを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末。
  5. 実質的に正方晶構造をとるRFe14B型金属間化合物相を主相とした再結晶粒が相互に隣接した再結晶集合組織を有し、この再結晶集合組織は個々の再結晶粒の最短粒径aと最長粒径bの比(b/a)が2未満である形状の再結晶粒が全再結晶粒の50容量%以上存在し、かつ再結晶粒の平均再結晶粒径が0.05〜5μmの寸法を有する磁気異方性HDDR磁石粉末の基本組織を有することを特徴とする請求項1、2、3または4記載の磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末。
  6. 請求項1、2、3、4または5記載の磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末を有機バインダーまたは金属バインダーにより結合してなることを特徴とする希土類磁石。
  7. 請求項1、2、3、4または5記載の磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末をホットプレスまたは熱間静水圧プレスしてなることを特徴とする希土類磁石。
  8. 希土類磁石合金原料を不活性ガス雰囲気中で平均粉末粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、平均粉末粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、
    この混合粉末に、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施し、引き続いて圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記混合粉末に水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
    その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕することを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
  9. 希土類磁石合金原料を不活性ガス雰囲気中で平均粉末粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、平均粉末粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、
    この混合粉末に、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施し、引き続いて圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記混合粉末に水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
    引き続いて、水素吸収・分解処理を施した混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で圧力:10〜1000kPaの不活性ガス雰囲気中に保持することにより中間熱処理を行い、
    その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕することを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
  10. 希土類磁石合金原料を不活性ガス雰囲気中で平均粉末粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、平均粉末粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、
    この混合粉末に、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施し、引き続いて圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記混合粉末に水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
    引き続いて、水素吸収・分解処理を施した混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより混合粉末に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、
    その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕することを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
  11. 希土類磁石合金原料を不活性ガス雰囲気中で平均粉末粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して希土類磁石合金原料粉末を作製し、この希土類磁石合金原料粉末に、平均粉末粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して混合粉末を作製し、
    この混合粉末に、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施し、引き続いて圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記混合粉末に水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
    引き続いて、水素吸収・分解処理を施した混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で圧力:10〜1000kPaの不活性ガス雰囲気中に保持することにより中間熱処理を行い、
    引き続いて、中間熱処理を施した混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより混合粉末に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、
    その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕することを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
  12. 前記請求項8、9、10または11記載の希土類磁石合金原料は、真空またはArガス雰囲気中、温度:600〜1200℃に保持の条件で均質化処理した希土類磁石合金原料であることを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
  13. 希土類磁石合金原料を、圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で室温から温度:500℃未満までの温度に昇温、または昇温し保持することにより水素を吸収させる水素吸収処理を施したのち、平均粉末粒径:10〜1000μmになるまで粉砕処理して水素吸収処理した希土類磁石合金原料粉末(以下、この粉末を水素吸収希土類磁石合金原料粉末という)を作製し、
    この水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粉末粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
    この水素含有原料混合粉末を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記水素含有原料混合粉末にさらに水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
    その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕することを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
  14. 水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粉末粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
    この水素含有原料混合粉末を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記水素含有原料混合粉末にさらに水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
    引き続いて、水素吸収・分解処理を施した水素含有原料混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で圧力:10〜1000kPaの不活性ガス雰囲気中に保持することにより中間熱処理を行い、
    その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕することを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
  15. 水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粉末粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
    この水素含有原料混合粉末を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記水素含有原料混合粉末にさらに水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
    引き続いて、水素吸収・分解処理を施した水素含有原料混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより水素含有原料混合粉末に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、
    その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕することを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
  16. 水素吸収希土類磁石合金原料粉末に、平均粉末粒径:0.1〜50μmのDyの水素化物粉末、Tbの水素化物粉末またはDy−Tb二元系合金の水素化物粉末を0.01〜5モル%添加し混合して水素含有原料混合粉末を作製し、
    この水素含有原料混合粉末を圧力:10〜1000kPaの水素ガス雰囲気中で500〜1000℃の範囲内の温度に昇温し保持することにより前記水素含有原料混合粉末にさらに水素を吸収させて分解する水素吸収・分解処理を施し、
    引き続いて、水素吸収・分解処理を施した水素含有原料混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で圧力:10〜1000kPaの不活性ガス雰囲気中に保持することにより中間熱処理を行い、
    引き続いて、中間熱処理を施した水素含有原料混合粉末を500〜1000℃の範囲内の温度で、絶対圧:0.65〜10kPa未満の水素雰囲気中または水素分圧:0.65〜10kPa未満の水素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気中に保持することにより水素含有原料混合粉末に水素を一部残したまま減圧水素中熱処理を行い、
    その後、500〜1000℃の範囲内の温度で到達圧:0.13kPa以下の真空雰囲気に保持することにより強制的に水素を放出させて相変態を促す脱水素処理を施し、ついで冷却し、解砕することを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
  17. 前記請求項13、14、15または16記載の水素吸収希土類磁石合金原料粉末を作製するための希土類磁石合金原料は、真空またはArガス雰囲気中、温度:600〜1200℃に保持の条件で均質化処理した希土類磁石合金原料であることを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
  18. 請求項8、9、10、11、12、13、14、15、16または17記載の方法で製造した磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末を有機バインダーまたは金属バインダーにより結合することを特徴とする希土類磁石の製造方法。
  19. 請求項8、9、10、11、12、13、14、15、16または17記載の方法で製造した磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末を成形して圧粉体を作製し、この圧粉体を温度:600〜900℃でホットプレスまたは熱間静水圧プレスすることを特徴とする希土類磁石の製造方法。
  20. 請求項8、9、10、11、12、13、14、15、16または17記載の希土類磁石合金原料は、原子%で(以下、%は原子%を示す)、
    R´(ただし、R´は、Yを含む希土類元素の内の1種または2種以上を示し、DyおよびTbの1種または2種を含まない場合も含む。以下同じ):10〜20%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、
    R´:10〜20%、B:3〜20%、M(但し、MはGa、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Ni、Al、Ti、V、Cu、Cr、Ge、CおよびSiの内の1種または2種以上を示す。):0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、
    R´:10〜20%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料、または
    R´:10〜20%、Co:0.1〜50%、B:3〜20%、M:0.001〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分組成を有する希土類磁石合金原料であることを特徴とする磁気異方性および熱的安定性に優れた希土類磁石粉末の製造方法。
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