JP2005093074A - 発光素子及びその製造方法、並びに、その発光素子を用いた表示装置及び照明装置 - Google Patents

発光素子及びその製造方法、並びに、その発光素子を用いた表示装置及び照明装置 Download PDF

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Abstract

【課題】消費電力を低減させた発光素子並びにそれを表示部に用いたEL型表示装置及びそれを光源として用いたEL型照明装置を提供する。
【解決手段】発光素子の対向電極又は共通電極として、従来の透光電極を形成する材料より導電率の高い高導電材料を注入した高導電部を有する透光電極、又は、従来の透光電極を形成する材料からなる透光導電部及び従来の透光電極を形成する材料より導電率の高い高導電材料からなる補助導電部を備えた透光電極を用いる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレクトロルミネッセンス型発光素子及びその応用に関する。更に詳しくは、エレクトロルミネッセンス型発光素子の寄生抵抗を低減することにより低消費電力駆動型のエレクトロルミネッセンス型発光素子に関する。また、低消費電力駆動型のエレクトロルミネッセンス型発光素子を用いた、エレクトロルミネッセンス型照明装置及びエレクトロルミネッセンス型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロルミネッセンス(以下、ELとも略記する)型発光素子、発光ダイオード等の電界発光素子は、自発光のため視認性が高く、薄型化が容易なため、光源や表示装置等の発光素子として注目を集めている。特に、有機化合物を発光体とする有機EL素子は、低電圧駆動が可能なこと、大面積化が容易なこと、適当な色素を選ぶことにより所望の発光色を容易に得られることにより、次世代ディスプレイとして活発に開発が行われている。
【0003】
有機発光体を用いた有機EL素子としては、例えば厚さ1μm以下のアントラセン蒸着膜に30Vの電圧を印加することにより青色発光する素子が得られている(Thin Solid Films, 94(1982) 171)。しかし、この素子は高電圧を印加しても、光源や表示素子として用いるための十分な輝度が得られない。そこで、Tangらは、透明電極(陽極)、正孔輸送層、電子輸送性の発光層、仕事関数の低い金属を用いた陰電極を積層することにより、発光効率の向上を図り、10V以下の印加電圧で、1000cd/m2の輝度を実現した(Appl.Phys.Lett., 51(1987) 913)。更に、正孔輸送層と電子輸送層で発光層を挟み込んだ3層構造の素子(Jpn.J.Appl Phys., 27(1988) L269)や、発光層にドーピングされた色素からの発光を得る素子(J.Appl.Phys., 65(1989)3610)が報告されている。
【0004】
従来の有機EL素子の典型的な構成の断面図を図13に示す。図13に示された有機EL素子は、ガラス、プラスチック等からなる透明基板211と、インジウムティンオキサイド(以下、ITOと称す)等からなる透明陽電極214と、N,N’ージフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニルー4,4’−ジアミン(以下、TPDと称す)等からなる正孔輸送層232と、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Alq3と称す)等からなる電子輸送性発光層212と、AlLi合金からなる陰電極213とを有する。この有機EL素子に、電圧を印加すると、透明陽電極214から正孔が正孔輸送層232に注入され、陰電極213から電子輸送性発光層212に注入される。透明陽電極214から注入された正孔は正孔輸送層232中を通過して、さらに電子輸送性発光層212に注入される。そして、電子輸送性発光層212中での正孔と電子との再結合により励起されたAlq3分子が基底状態に戻る際に、発光が得られる。
【0005】
通常、ITOからなる透明陽電極214は、スパッタ法あるいは電子ビーム蒸着法等により形成され、有機化合物からなる正孔輸送層232及び電子輸送性発光層212、並びに、AlLi等からなる陰電極213は、抵抗加熱蒸着法により形成される。
【0006】
また、従来より、有機EL素子以外の発光素子としては、無機EL素子がある。従来の典型的な無機EL素子の断面図を図14に示す。図14に示された無機EL素子は、ガラスからなる透明基板211と、ITOからなる透明電極224と、酸化タンタル(Ta25)等からなる第1絶縁層242、マンガン(Mn)のドープされた硫化亜鉛(ZnS)等からなる発光層222と、Ta25等からなる第2絶縁層252と、Al等からなる背面電極223とを有する。この無機EL素子の両電極間に交流電圧を印加すれば、第1絶縁層242又は第2絶縁層と、発光層222との界面から出た電子が加速されて発光中心であるMnに衝突し、電子の衝突により励起されたMnが基底状態に戻る際に発光する。
【0007】
上記のような発光素子を用いて、ディスプレイパネルを形成することができる。すなわち、微小な発光素子をマトリクス状に並べ、所望の素子(画素)を発光させることにより画像を形成する。発光素子を用いたディスプレイパネルは、駆動方式により2種類に分類される。一方は、直交するライン状の電極間に発光層を有し、発光させたい画素を含む上部電極と下部電極間に電圧を印加する方式の、いわゆる単純マトリクスパネルである。一般に、単純マトリクスパネルではラインごとに発光する画素を選択する線順次方式により駆動する。他方は、各画素にそれぞれスイッチングトランジスタを備え、選択された画素それぞれに一定期間所望の電圧を印加又は所望の電流を導通する方式の、いわゆるアクティブマトリクスパネルである。
【0008】
まず、単純マトリクスパネルは、ラインを選択している期間しか発光しないため、画素数すなわちライン数が多くなると、発光時間が短くなる。したがって、ピーク輝度を大きくする必要がある。特に、パネルの大型化にともないその必要性が増している。また、大型化にともない、ライン電極が長くなることにより、透明なライン電極における抵抗消費電力が増大し、かつ、透明なライン電極の抵抗によるピーク輝度の位置依存性が悪化する。
【0009】
次に、アクティブマトリクスパネルでは、容量コンデンサを設けることにより、選択期間以外でも発光を維持できる。したがって、アクティブマトリクスパネルであれば、単純マトリクスパネルに比べ、発光に要する消費電力を低減できる。典型的なアクティブマトリクス発光素子の断面図を図15に示す。図15に示されたアクティブマトリクス発光素子は、透明基板211と、TFT206と、透明陽電極214と、発光層202と、陰電極213を有しており、TFT206の形成された透明基板211側から光を取り出す下取り出し構造の発光素子である。特に、画素数あるいはライン数の多い大型パネルの場合、発光に要する消費電力が、単純マトリックスパネルに比べて1/2〜数分の1となる。
【0010】
しかし、図15に示された下取り出し構造のアクティブマトリクスパネルでは、TFT206によって占有された領域からは光が取り出せないため、単純マトリクスパネルと比べて開口率が小さくなり、単位面積あたりに発光素子から取り出される光の取り出し輝度は低下してしまう。したがって、単位面積あたり同一の取り出し輝度を得るためには、発光層202自体の発光輝度を高くする必要がある。このためには、透明陽電極214と陰電極213との電極間に印加される電圧を高くするか、または、それらの電極間に流れる電流を大きくしなければならず、全体的にみると消費電力が大きくなると同時に発光素子の寿命が短くなる。
【0011】
そこで、下取り出し構造のアクティブマトリクスパネルにおける開口率の減少を解消するため、発光層に対してTFTの形成された基板と反対側から光を取り出す上取り出し構造のアクティブマトリクスパネルが開発され、現在ではそれが主流と成りつつある。典型的な上取り出し構造の発光素子の断面図を図16に示す。図16に示された上取り出し構造の発光素子は、基板201と、基板201上に形成されたTFT206と、陰電極213と、発光層202と、透明陽電極214とを有する。このような上取り出し構造の発光素子ではTFTの有無に関係なく発光層202全面から光を取り出せる。したがって、上取り出し構造の発光素子を用いた場合、アクティブマトリクスパネルは、単純マトリクスパネルよりも低消費電力で輝度の同じ光を取り出すことができる。
【0012】
通常、上取り出し構造のアクティブマトリクスパネルは、各画素ごとに離隔した透明陽電極214を備えるのではなく、全画素に対して共通な1つの透明共通電極を備えた構造とされる。しかしながら、このような従来の構造であれば、全画素に流れる電流が透明共通電極を流れるので、透明共通電極における抵抗消費電力が無視できない程度に大きくなる。特に、パネルの大型化にともない、抵抗消費電力が増大し、かつ、発光輝度の位置依存性が悪化する。透明共通電極として通常用いられるITO電極のシート抵抗(10〜100Ω/□)は、同じ膜厚の金属電極のシート抵抗(約0.01〜0.1Ω/□)に比べて100倍程度高く、近年、透明共通電極による抵抗消費電力を低減することが切望されている。ここに、シート抵抗は、下記数式1により比抵抗に換算できる。
【数1】
比抵抗[Ω・cm]=シート抵抗[Ω/□]×膜厚[Å]×10-8
【0013】
参考までに、パネルサイズ(対角線の長さで示す)に対するパネルの消費電力(W)を測定したグラフ図を図12に示す。共通電極としてITO電極(10Ω/□)を用いた場合を黒丸で示し、共通電極として金属電極(0.01Ω/□)を用いた場合を白丸で示した。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、その目的は、透光領域を有する高導電性の電極を備えたEL素子を提供することにある。また、透光性に優れる透光電極部と、透光電極部より導電率の高い補助導電部とを有する電極を備えたEL素子を提供することにある。更にまた、上記本発明に係るEL素子を表示素子として備えたEL型表示装置と、上記本発明に係るEL素子を光源として備えたEL型照明装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、制御電極と、制御電極に対向する対向電極と、制御電極と対向電極との間に挟まれた発光層とを有し、かつ制御電極と対向電極の少なくとも一方が透光電極である発光素子であって、透光電極が、透光性及び導電性を有する透光導電膜に、透光導電膜を構成する導電材料より導電率の高い高導電材料を含有する高導電部を有することを特徴とする発光素子である。
【0016】
上記の構成によれば、全体として透光電極の抵抗が小さくなり、透光電極に流れる電流による抵抗消費電力を低減できる。この低消費電力化の方法は、発光層が有機化合物からなる有機発光層であるか無機物質からなる無機発光層であるかを問わず、また、従来の様々な構成のEL素子の低消費電力化に対して有効である。
【0017】
ここに、対向電極は、発光制御において電位を変化させる電極であってもよいし、一定電位に保持された電極であってもよい。つまり、制御電極と共に対向電極の電位も変化させて発光制御する発光素子や、対向電極の電位を常に一定電位に保ち、制御電極のみで発光制御する発光素子を提供できる。
【0018】
本明細書における「透光電極」は、可視光を透過する透光性領域を有する電極を意味し、少なくとも一部に透光性領域を有していればよい。ここに、透光性には透明性をも含む。また、本明細書における「高導電部」は、透光性を有する領域であっても、遮光性を有する領域であってもよい。光透過特性は、透光電導膜中に含まれる高導電材料の含有率等によって異なる。したがって、透光電極は、その全体が透光性を有する高導電部よりなる電極であってもよいし、その一部に透光性及び/又は遮光性の高導電部を有する電極であってもよい。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発光素子において、高導電部が、透光導電膜中に分散した高導電材料を含有することを特徴とする。
【0020】
上記の構成の如く、高導電材料を分散させた透光性又は遮光性を有する高導電部を有する透光電極を備えることにより、確実に消費電力を低減させた発光素子を提供できる。高導電部の透光導電膜の内部全体に高導電材料を均一分散させてもよいし、高導電部の透光導電膜の特定層内に、例えば表層部のみに高導電材料を層状に分散させてもよい。また、高導電部の内部に、高導電材料をコロニー状に分散させてもよい。
【0021】
また、上記の課題を解決する為に、請求項3に記載の発明は、互いに離隔しかつ電気的に絶縁された複数の制御電極と、複数の制御電極に対向した共通電極と、複数の制御電極と共通電極との間に挟まれる発光層とを絶縁基板上に有し、かつ複数の制御電極と共通電極の少なくとも一方が透光電極である発光素子であって、透光電極が、透光性及び導電性を有する透光導電膜に、透光導電膜を構成する導電材料より導電率の高い高導電材料を含有する高導電部を有することを特徴とする発光素子である。
【0022】
上記の構成によれば、全体として透光電極の抵抗が小さくなり、透光電極に流れる電流による抵抗消費電力を低減できる。絶縁基板上に、独立に制御可能な単位発光部を複数有する低消費電力型の発光素子を提供できる。特に、共通電極として高導電部を有する透光電極を備えた発光素子であれば、高導電部を設けない発光素子に対して、抵抗消費電力を著しく低減することができる。したがって、上取り出し構造の発光素子に対して極めて有効であり、従来の上取り出し構造の発光素子に比べて抵抗消費電力を著しく低減できる。
【0023】
ここに、本明細書において、「複数の制御電極に対向した共通電極」は、2つ以上の制御電極に対して共通な対向電極を意味する。したがって、基板上に形成された全ての単位発光部に対する共通電極でなくともよい。通常の発光素子は、アクティブマトリクス駆動用であればマトリクス状に配列した制御電極及び全ての制御電極に対向する1つの共通電極を備え、単純マトリクス駆動用であれば平行な複数の直線状の制御電極及び制御電極と直交する平行な複数の直線状の共通電極を備える。アクティブマトリクス駆動用発光素子であれば、制御電極の各々に対応した単位発光部が形成され、単純マトリクス駆動用発光素子であれば、複数の制御電極と複数の共通電極との交叉領域に単位発光部が形成される。
【0024】
また、共通電極は、発光制御において電位を変化させる電極であってもよいし、一定電位に保持された電極であってもよい。つまり、制御電極と共に共通電極の電位も変化させて発光制御する発光素子、及び、共通電極の電位を常に一定電位に保ち、制御電極のみで発光制御する発光素子を提供できる。
【0025】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発光素子において、共通電極が透光電極であり、かつ、複数の制御電極が金属電極であり、かつ、透光電極が、高導電部と高導電材料を含有しない透光導電部とを有することを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、透光導電部により所望の輝度を確保でき、また、高導電部により高導電性を確保できることにより、高輝度でありかつ低消費電力である上取り出し構造の発光素子を提供できる。高導電部が広くなれば、抵抗消費電力は減少するが、発光素子から取り出される光の輝度は低下する。したがって、所望の輝度にあわせて、高導電部の光透過率やその面積を決定することが望ましい。
【0027】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の発光素子において、高導電部が、透光導電膜中に分散した高導電材料を含有することを特徴とする。
【0028】
上記の構成の如く、高導電材料を分散させた透光性又は遮光性を有する高導電部を有する透光電極を備えることにより、確実に消費電力を低減させた発光素子を提供できる。高導電部の内部全体に高導電材料を均一分散させてもよいし、高導電部の特定層内に、例えば表層部のみに高導電材料を層状に分散させてもよい。また、高導電部の内部に、高導電材料をコロニー状に分散させてもよい。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発光素子において、共通電極が、制御電極を共通電極に投影した投影領域に、高導電部を有し、かつ、投影領域に形成された高導電部が、透光性を有する透光性高導電部であることを特徴とする。
【0030】
上記の構成によれば、高導電材料を透光導電膜に分散させるため、高導電材料の濃度の選択により高導電部から取り出される光の輝度を調整できる。高導電材料の分散した共通電極は、材料として高導電材料と透光導電膜を構成する導電材料とを用いて成膜することや、透光導電膜の形成後に高導電材料を注入することにより形成することができる。
【0031】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発光素子において、高導電部が、遮光性を有する遮光性高導電部であることを特徴とする。
【0032】
上記の構成の如く、高導電材料を高濃度で分散させることにより、遮光性の高導電部を形成することもできる。特に、カラー表示装置のように、隣接する単位発光部との境界に色混じりを低減するための遮光部で区画化することが好ましい場合には、この遮光部を高導電部で形成すれば、各単位発光部の輝度を低減させることなく、隣接単位発光素子部からの色混じりを低減することができる。
【0033】
請求項8に記載の発明は、共通電極が、制御電極を前記共通電極に投影した投影領域以外の領域内のみに、高導電部を有することを特徴とする。
【0034】
上記の構成によれば、単位発光部の発光輝度を阻害することなく、隣接する単位発光部からの漏洩発光を低減すること及び共通電極における抵抗消費電力を低減することができる。また、上記構成の発光素子をカラー表示装置に用いる場合、従来から用いられている色混じりを低減するためのブラックマトリックスを別途設ける必要がない。
【0035】
また、上記課題を解決する為に、請求項9に記載の発明は、絶縁基板上に形成された制御電極と、制御電極に対向しかつ一定電位に保たれた対向電極と、制御電極と対向電極との間に挟まれた発光層とを有する発光素子であって、対向電極が、透光性及び導電性を有する透光導電部と、透光導電部と電気的に接続された、透光導電部より導電率の高い補助導電部とを有し、かつ、制御電極を対向電極に投影した投影領域内に、透光導電部のみからなる領域を有することを特徴とする発光素子である。
【0036】
上記の構成によれば、光を取り出す領域を確保しつつ、発光の際に流れる電流による抵抗消費電力を低減することができる。したがって、上取り出し構造の低電力型発光素子を提供できる。この低消費電力化の方法は、発光層が有機化合物からなる有機発光層であるか無機物質からなる無機発光層であるかを問わず、また、従来の様々な構成のEL素子の低消費電力化に対して有効である。
【0037】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発光素子において、対向電極が、投影領域以外の領域のみに補助導電部を有することを特徴とする。
上記の構成によれば、光を取り出す領域を十分に確保でき、かつ抵抗消費電力を十分に低減することができる。
【0038】
また、上記課題を解決する為に、請求項11に記載の発明は、絶縁基板上に形成された互いに電気絶縁された複数の制御電極と、複数の制御電極に対向しかつ一定電位に保たれた共通電極と、前記複数の制御電極と共通電極との間に挟まれる発光層とを有する発光素子であって、共通電極が、透光性及び導電性を有する透光導電部と、透明導電部と電気的に接続された、透光導電部より導電率の高い補助導電部とを有し、かつ、複数の制御電極の各々を共通電極に投影した各投影領域内に、透光導電部のみからなる領域を有することを特徴とする発光素子である。
【0039】
上記の構成によれば、光を取り出す領域を確保しつつ、発光の際に流れる電流による抵抗消費電力を低減することができる。したがって、独立に制御可能な上取り出し構造の単位発光部を同一絶縁基板上に複数有する低電力型発光素子を提供できる。
【0040】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の発光素子において、共通電極は、投影領域以外の領域のみに補助導電部を有することを特徴とする。
上記の構成によれば、光を取り出す領域を十分に確保でき、かつ抵抗消費電力を低減する効果を確実に発揮できる。
【0041】
請求項13に記載の発明は、請求項10又は12に記載の発光素子において、補助導電部が、可視光に対して遮光性を有する遮光性補助導電部であることを特徴とする。
【0042】
上記の構成の如く、遮光性補助導電部を設けることにより、共通電極に遮光領域を形成することもできる。特に、カラー表示装置のように、隣接する単位発光部との境界を、色混じりを低減するための遮光部材で区画化することが好ましい場合には、この遮光部材として補助導電部を設ければ、各単位発光部の輝度を低減させることなく、隣接した単位発光素子部からの色混じりを低減することができる。
【0043】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の発光素子において、遮光性補助導電部が、金属材料よりなる金属層と、金属材料の酸化物からなる金属酸化物層とを有することを特徴とする。
【0044】
一般的に金属材料よりなる補助導電部は遮光性を有するが、その表面に金属酸化物層を備えることにより、膜厚が薄くとも更に良好な遮光性を発現する。したがって、上記の構成によれば、遮光性に優れた補助導電部を形成することができる。
【0045】
請求項15に記載の発明は、請求項13又は14に記載の発光素子において、発光素子が、遮光性補助導電部上に反射防止膜を更に有することを特徴とする。上記の構成によれば、外光の反射によるコントラスト比の低下を抑制することができる。
【0046】
請求項16に記載の発明は、請求項9〜15のいずれか一項に記載の発光素子において、透光導電部が、酸化錫又はインジウムティンオキサイドからなる透明導電膜であることを特徴とする。
上記の構成の如く、透光導電部が酸化錫膜又はインジウムティンオキサイド(ITO)膜であれば、透光導電部は透明性を有することとなる。したがって、導電性及び透明性に優れた共通電極を形成することができる。
【0047】
請求項17に記載の発明は、請求項1〜15のいずれか一項に記載の発光素子において、発光層が有機化合物からなることを特徴とする。
上記の構成によれば、有機発光層を備えた有機発光素子を提供できる。
【0048】
請求項18に記載の発明は、請求項17に記載の発光素子において、発光素子が、制御電極層と有機発光層とに挟まれた電子注入層と、有機発光層と共通電極とに挟まれた正孔輸送層とを更に有することを特徴とする。
上記の構成によれば、発光輝度が高く、かつ駆動性が高い有機発光素子を提供できる。
【0049】
また、上記課題を解決する為に、請求項19に記載の発明は、絶縁基板上にスイッチング素子の形成されたアレイ基板と、アレイ基板上に形成され、スイッチング素子を介して制御される発光素子部と、外部装置との間の信号入出力を制御する信号入出力部と、信号入出力部からの入力信号を所定の電気信号に変換し、電気信号に応じてスイッチング素子をアクティブ駆動させる周辺駆動回路部と、を備えるエレクトロルミネッセンス型表示装置であって、発光素子部が、請求項1〜18のいずれか一項に記載の発光素子を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス型表示装置である。
上記の構成によれば、本発明に係る発光素子を用いて表示を行うエレクトロルミネッセンス型表示装置を提供できる。
【0050】
請求項20に記載の発明は、光源を有する照明装置であって、光源が、請求項1〜18のいずれか一項に記載の発光素子を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス型照明装置である。
上記の構成によれば、本発明に係る発光素子を光源として用いたエレクトロルミネッセンス型照明装置を提供できる。
【0051】
【発明の実施の形態】
本発明の内容を説明すると共に、好ましい実施の形態を記述する。
【0052】
(実施の形態1)
本実施の形態1においては、高導電部を有する透光電極を備えた発光素子について図2〜図4を参照しながら説明する。本発明に係る発光素子の全体構成について説明した後、特徴部分である透光電極について詳細に説明する。
【0053】
制御電極、発光層及び対向電極が、基板上にこの順で積層された発光素子であっても、基板上に逆順で積層された発光素子であってもよい。本発光素子は、制御電極と対向電極との電極間に電圧を印加することにより発光層で光を発生させる素子である。したがって、制御電極の電位のみを変化させることや、制御電極及び対向電極の電位をそれぞれ変化させることによって、発光を制御することができる。また、発光層からの光を発光素子外部に取り出すためには、制御電極と対向電極との少なくとも一方が光を透過する透光電極でなければならない。更に、発光層に対して基板側から光を取り出す(下取り出し構造の発光素子)場合は、光を透過する基板を用いなければならない。制御電極及び対向電極が透光電極であり、かつ、基板が光透過性を有する場合、発光層の両側から光を取り出すこともできる。
【0054】
片側から光を取り出す場合には、制御電極として導電率の高い金属電極を用いることが好ましい。更に、光反射性に優れる金属電極を用いれば、金属電極方向に伝播する光を対向電極側に反射させることができ、取り出し光の輝度を向上することができる。
【0055】
上取り出し構造を有する発光素子の基板としては、発光素子を坦持できるものであればよく、例えば、ガラス基板、シリコン基板、又は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート若しくはポリエチレンテレフタラート等の樹脂基板を用いることができる。更に、基板として樹脂フィルムを用いてもよい。また、下取り出し構造又は両側取り出し構造を有する発光素子の基板としては、ガラス基板又はポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート若しくはポリエチレンテレフタラート等の透明樹脂基板を用いることができる。
【0056】
発光層を形成する発光材料は、無機発光材料であっても、有機発光材料であってもよい。以下では、無機発光材料からなる無機発光層を有する無機EL素子と、有機発光材料からなる有機発光層を有する有機EL素子とに分けて順次説明する。なお、以下においては、片側から光を取り出す構造の発光素子について説明する。
【0057】
まず、無機EL素子の場合について説明する。制御電極と対向電極との間に、無機発光層の表面にTa25等からなる第1電気絶縁層と、無機発光層を第1電気絶縁層とで挟むようにTa25等からなる第2電気絶縁層とを設けることが好ましい。無機発光層は、公知技術を踏襲してMnをドープしたZnS等で形成することができる。無機発光層の形成には主にスパッタ法を適用するが、エレクトロンビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、イオンプレーティング法等を適用して無機発光層を形成してもよい。
【0058】
無機EL素子の制御電極は、導電率が高くかつ光反射率が高い電極、例えばアルミニウム電極、を用いることが好ましい。制御電極の形成には、スパッタ法、エレクトロンビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法等の方法を用いればよい。
【0059】
次に、有機EL素子の場合、制御電極と対向電極との間に、Alq3等からなる有機発光層のみを有する発光素子であってもよいが、Alq3等からなる有機発光層とTPD等からなる正孔輸送層とを設けることが好ましい。また、制御電極と対向電極との間に、TPD等からなる正孔輸送層と、ペリレン等からなる有機発光層と、オキサジアゾール等からなる電子輸送層とを備えた有機EL素子が好ましい。更に、製造過程で正孔輸送層や有機発光層や電子輸送層が受けるダメージを低減するために、バッファ層を更に制御電極と対向電極との間に設けてもよい。有機発光層は、主に抵抗加熱蒸着法を適用して形成されるが、エレクトロンビーム蒸着法、スパッタ法等を適用して形成してもよい。
【0060】
有機EL素子の場合、制御電極と対向電極の一方を陽極、他方を陰極として用いる。制御電極を陰極として用いる場合には、電子の注入効率の高い材料、すなわち仕事関数の低い材料で電極を形成する。例えば、Al−Li合金やMg−Ag合金からなる電極、又は、Li/AlやLiF/Alの積層電極を陰電極として用いることが好ましい。一般的には、仕事関数が低くかつ反応性の高い金属と反応性の低い安定な金属との合金からなる電極、又は、仕事関数の低い金属若しくはその化合物と仕事関数の高い金属とを積層させた積層電極が用いられる。
【0061】
一方、制御電極を陽極として用いる場合には、正孔の注入効率の高い材料、すなわち仕事関数の高い材料で電極を形成することが好ましい。例えば、AuやAlやAgよりなる電極、又は、ITOよりなる電極を陽電極として用いることが好ましい。ここに、ITO等の透明電極を制御電極として用いる場合には、制御電極方向に発光した光を対向電極から取り出すために、透明電極の下に光反射層を設けることが好ましい。
【0062】
以下に、対向電極として用いる、透光電極(光取り出し側電極)について説明する。透光電極は、高電導材料の添加された高導電部を透光導電膜中に有する電極であってもよいし、透光導電部と高導電材料からなる補助導電部を有する電極であってもよい。
【0063】
まず、高導電部又は補助導電部(以下、電子誘導部と総称する)のパターン例について、図2(a)から(d)を参照して説明する。ここに、図2(a)から(d)の各図中に示される点線で囲まれた領域は制御電極を投影した投影領域113である。図2(a)に示された透光電極104は、全領域を電子誘導部114とする電極である。図2(b)に示された透光電極は、周縁部を電子誘導部114とする電極である。図2(c)に示された透光電極は、電子誘導部114が梯子状に形成された電極である。図2(d)に示された透光電極は、電子誘導部114が櫛状に形成された電極である。
【0064】
なお、図2(a)から(d)に示された電子誘導部114は、四隅の部位において定電位源と電気的に短絡されていることが好ましい。また、図2(a)及び(b)であれば各辺の中央部位の電子誘導部114で、図2(c)であれば長辺の各中央部位の電子誘導部114で、図2(d)であれば短辺の各中央部位の電子誘導部114で定電位源と短絡してもよい。透光電極の面積が大きい場合には、更に、定電位源と短絡する箇所又は面積を増加させれば全面に渡り均一均一に発光させることができる。また、電子誘導部114の導電率に応じて、定電位源と短絡する箇所や面積を決定することが好ましい。
【0065】
次に、図3及び図4(図2(c)におけるA−A’断面図)を用いて、発光素子の積層構造例を説明する。図3は高電導材料の添加された高導電部134を透光導電膜124中に有する電極を透光電極104として備えた発光素子の断面図であり、図4は透光導電部144と補助導電部154とを有する電極を透光電極として備えた発光素子の断面図を示す。
【0066】
図3(a)は、透光導電膜124を貫通するように、高導電材料が添加された高導電部134を有する透光電極104を備えた発光素子の断面図を示し、図3(b)は、表層部のみに高導電材料が添加された高導電部134を有する透光電極104を備えた発光素子の断面図を示す。図3(b)においては、表層部に高導電材料が添加された場合を示したが、中層部や下層部のみに高導電材料を添加した高導電部を有する透光電極であってもよい。なお、定電位源との短絡を容易に行うためには、図3(a)及び図3(b)に示された積層構造とすることが好ましい。
【0067】
図4(a)は、補助導電部154が透光導電部144の上に形成された透光電極104を備えた発光素子の断面図であり、図4(b)は、補助導電部154が透光導電部144の内部に形成された透光電極104を備えた発光素子の断面図であり、図4(c)は、透光導電部144の下に補助導電部154を備えた発光素子の断面図である。なお、図4(b)は一旦形成された透光導電部144の一部をエッチングしたのち、エッチングされた部分を埋めるように補助導電部154を形成した場合である。このようにして形成すれば透光電極の断面積を変化させずに導電率を向上できる。
【0068】
(実施の形態2)
本実施の形態は、基板上に形成された、複数の単位発光素子部を有する発光素子についてパターン説明する。各単位発光素子部の積層構造は上記実施の形態1の発光素子の積層構造と同一であるので説明を省略し、本発明の特徴部分である共通電極(対向電極)について説明する。共通電極は、高電導材料の添加された高導電部を透光導電膜中に有する共通電極であってもよいし、透光導電部と高導電材料からなる補助導電部を有する共通電極であってもよい。
【0069】
まず、共通電極に形成された電子誘導部のパターン例について、図5(a)及び(b)並びに図6(a)から(c)を参照して説明する。ここに、図5(a)及び(b)並びに図6(a)から(c)の各図中に示される点線で囲まれた領域は制御電極を投影した投影領域113である。電子誘導部114は、図5(a)及び(b)に示される如く、投影領域113に形成されていてもよいし、図6(a)から(c)に示す如く、制御電極の投影領域以外の領域のみに形成されていてもよい。
【0070】
高導電部を有する共通電極の場合、高導電部を構成するために注入される添加材料は、抵抗の低い金属材料を用いることが好ましい。更に好ましくは、添加材料として比抵抗が1×10-4Ω・cm以下の金属材料、例えばAl、Cr、Au若しくはCu又はそれらの合金、を用いることである。高導電部は、イオンドーピング法を適用して透光導電膜に上記添加材料を注入することにより形成できる。
【0071】
補助導電部を有する共通電極の場合、補助導電部を構成する材料として抵抗の低い金属材料を用いることが好ましい。更に好ましくは、補助導電部を構成する材料として比抵抗が1×10-4Ω・cm以下の金属材料、例えばAl、Cr、Au若しくはCu又はそれらの合金、を用いることである。補助導電部は、スパッタ法、エレクトロンビーム蒸着法、イオンプレーティング法等を適用して成膜した後、フォトリソグラフィー法を適用してパターニングすることにより形成できる。また、予め所定のマスクを形成した後、金属膜を成膜し、引き続きマスクを除去することにより、パターニングされた補助導電部を形成することもできる。
【0072】
(実施の形態3)EL型表示装置
本実施の形態は、上記実施の形態2の発光素子を表示部に用いたEL型表示装置について説明する。図7に、EL型表示装置の構成例を模式的に示す。なお、TFT、ダイオード等のスイッチング素子が形成されたアレイ基板121、周辺駆動回路部109及び信号入出力部119については、公知技術を用いて形成されるので説明を省略し、本発明に係るEL型表示装置の特徴部分である発光素子部118について説明する。
【0073】
EL型表示装置に用いる発光素子としては、図6(a)から(c)に例示されたような、制御電極の投影領域113以外の領域のみに電子誘導部114が形成されている共通電極を備えた発光素子を用いることが好ましい。このような共通電極を用いたEL型表示装置であれば、取り出し光の輝度を低減させることなく、消費電力を低減できる。特に、その効果は、図6(b)に示された共通電極を備えるEL型表示装置において最も高くなる。
【0074】
更に、共通電極の電子誘導部114が遮光性を有する場合も、取り出し光の輝度低下の抑制及び消費電力低減に対して同等の効果を奏する。また、共通電極の電子誘導部114が遮光性を有する場合には、隣接する単位発光部108からの光の漏洩を低減できるので、電子誘導部114が遮光性を有しない場合に比べて、コントラスト比を向上させる効果をも奏する。電子誘導部114が可視光に対して低反射性、好ましくは反射率50%以下、を更に有する場合には、外光の反射によるコントラスト比の低下を抑制することができる。特に、フルカラー表示用のEL型表示装置であれば、隣接する単位発光部108間での色混じりを低減することができ、鮮明なフルカラー表示を行える。したがって、色混じりを低減させるためのブラックマトリックスを別途形成する必要がなくなる。
【0075】
(実施の形態4)EL型照明装置
本実施の形態は、上記実施の形態1又は上記実施の形態2の発光素子を光源に用いたEL型照明装置について説明する。図8に、EL型照明装置の構成例を模式的に示す。EL型光源128以外(発光制御部129)については公知技術を利用して形成されるので、本発明に係るEL型照明装置の特徴部分であるEL型光源128について説明する。ただし、必要に応じて発光制御部129に言及する。
【0076】
EL型光源129として、図5(a)及び(b)並びに図6(a)から(c)に示されたいずれの構造の発光素子を用いても、確実に消費電力を低減することができる。特に、大型のEL型照明装置に対して、その効果が極めて高い。なお、EL型光源129として上記発光素子を用いる場合には、取り出し光の輝度のみが重要であることが多いので、図5(a)及び(b)並びに図6(a)から(c)に示されたいずれの構造の発光素子であっても、EL型表示装置の表示部に用いる場合ほど性能上の大差はない。
【0077】
発光制御部はEL型照明装置の必須要素ではないが、発光制御部を設けることにより高性能なEL型照明装置を提供できる。発光制御部は、例えば、有機発光素子の発光をオン・オフを切り替える機能、有機発光素子の発光輝度を調整する機能、有機発光素子の発光部位を選択する機能を発現する。
【0078】
EL型光源が単色光源であれば、1種の発光層を絶縁基板の全面に形成することが簡便であるが、複数種類の発光材料を用い、各発光材料からなる層を積層した積層発光層を形成してもよい。この場合、複数の発光材料からなる各層からの発光色が混色してなる単色光を取り出すことができる。
【0079】
発光色の変化可能な光源を作製する場合には、発光色の異なる複数の発光部を有する発光層、例えば平面的に配置された赤色発光部、緑色発光部及び青色発光部を有する発光層を形成し、かつ、各発光部の発光輝度を制御する発光制御部を設ければよい。また、発光色の異なる複数の単色発光素子、例えば赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子、を積層し、かつ各単色発光光源の発光を制御する発光制御部を設けることによっても、発光色の変化可能な光源を作製できる。ただし、複数の単色発光素子を積層する場合には、光取り出し側と反対側の最下層に位置する単色発光素子以外は、光透過性の絶縁基板に形成されている必要がある。
【0080】
【実施例】
以下、実施例に基づいて、本発明の内容を具体的に説明する。
【0081】
(実施例1)
本実施例は上記実施の形態2に対する具体例であり、透光電極として、透明導電部と補助導電部を有する共通電極を備えた対角10インチの有機発光素子について、図1及び図9を参照しながら説明する。なお、図1には24個(6×4個)の単位発光部108を有する発光素子が示されているが、以下においては、640×480個の単位発光部を有する発光素子を形成していることに注意を要する。また、図9中のTFT106は必須要素ではないが、TFTを設けることで制御が容易になる。
【0082】
まず、図9を参照しながら製造方法を説明する。なお、共通電極の形成以外は従来の方法を適用した。TFTの形成されたガラス基板211上に、スパッタ法を適用してアルミニウム(Al)膜を成膜した後、フォトグラフィ法及びエッチング法を適用してアルミニウム膜をパターニングすることにより、マトリクス状に配列した複数の制御電極(下部電極)103を形成した(640×480個)。次に、制御電極103上に、膜厚1.5nmのリチウム(Li)膜よりなる電子注入層262、膜厚50nmのAlq3膜よりなる有機発光層112、膜厚50nmのTPDよりなる正孔輸送層232及び膜厚5nmの銅フタロシアニンよりなるバッファ層272を、この順序で積層させた。各層の形成には抵抗加熱蒸着法を適用した。次に、室温環境下においてスパッタ法を適用して、ガラス基板112上に、膜厚100nmのITO膜を成膜することにより、透明導電部144(約300cm2)を形成する。最後に、透明導電部144上に、スパッタ法を適用して膜厚100nmのアルミニウム膜を成膜した後、フォトグラフィ法及びエッチング法を適用してアルミニウム膜をパターニングすることにより、制御電極103を透明導電部144上に投影した投影領域以外の領域に、単位発光部108ごとに区画化するメッシュ状の補助導電部154を形成する。以上の工程を経て、有機発光素子を作製した。
【0083】
上記のようにして形成された、透明導電部144及び補助導電部154を有する共通電極104のシート抵抗は約0.1Ω/□であった。また、本実施例に係る発光素子を輝度500cd/m2で全面発光させた際の消費電力は約3Wであった。下記比較例1と比較すれば容易にわかるように、発光素子の消費電力は、補助導電部を設けない場合の約1/10に低減された。
【0084】
(比較例1)
本比較例は、補助導電部を備えていない共通電極を用いること以外は上記実施例1と同様の構成とした発光素子について説明する。
本比較例に係る発光素子に含まれる共通電極のシート抵抗は約100Ω/□であった。また、この発光素子を全面発光させた際の消費電力は約30Wであった。
【0085】
(実施例2)
本実施例は、補助導電部を透明導電部の下に設けること以外は上記実施例1と同様の構成とした発光素子について、図10を参照しながら説明する。
【0086】
バッファ層172の形成までは上記実施例1と同じ工程を経た後、TFT106の形成されたガラス基板上に、スパッタ法を適用して膜厚100nmのアルミニウム膜を成膜し、引き続きフォトグラフィ法及びエッチング法を適用してアルミニウム膜をパターニングすることにより、制御電極をバッファ層172に投影した投影領域以外の領域上に、単位発光部108ごとに区画化することとなるメッシュ状の補助導電部154を形成する。最後に、室温環境下においてスパッタ法を適用して膜厚100nmのITO膜をガラス基板上に成膜することにより、透明導電部144(約300cm2)を形成する。以上の工程を経て、図10に示された発光素子を作製できる。
【0087】
上記のようにして形成された、透明導電部144及び補助導電部154を有する共通電極104のシート抵抗は約0.1Ω/□であった。また、本実施例に係る発光素子を輝度500cd/m2で全面発光させた際の消費電力は約3Wであった。下記比較例1と比較すれば、補助導電部を設けることにより、発光素子の消費電力を補助導電部を設けない場合の約1/10に低減できたことが容易にわかる。
【0088】
(実施例3)
本実施例は、上記実施例1におけるアルミ膜よりなる補助導電部に代えて、クロム(Cr)層とクロム層表面の酸化クロム層とを有する補助導電部を備えた発光素子について説明する。
【0089】
透明導電部の形成までは上記実施例1と同一工程を経た後、透明導電部上に、スパッタ法を適用して膜厚100nmのクロム膜を成膜し、引き続きフォトグラフィ法及びエッチング法を適用してアルミニウム膜をパターニングすることにより、制御電極を透明導電部に投影した投影領域以外の領域に、単位発光部108ごとに区画化するメッシュ状の補助導電部154を形成する。最後に、補助導電部154の表面を酸素プラズマにより5分間酸化処理し、補助導電部の表層に酸化クロム層を形成する。
【0090】
上記のようにして形成された発光素子は、隣接する単位発光部からの光の漏洩を低減することができる。特に、隣接する単位発光部から取り出される光の色が異なる場合には、色のにじみが抑制できる。
【0091】
(実施例4)
本実施例は、カラーフィルターを更に有すること以外は上記実施例3と同様な発光素子を発光素子部として備えるエレクトロルミネッセンス型表示装置に関する。
【0092】
図7に示す如く、マトリックス状にTFTの形成されたTFTアレイ基板と、発光素子部118と、信号入出力部119と、周辺駆動回路部109とを備えたアクティブ駆動型の表示装置を作製した(図7参照)。本発明に係る発光素子部を上記実施例3と同様にして製造すること以外は、公知技術を利用した。図11に、本発明に係るフルカラー表示可能なエレクトロルミネッセンス型表示装置の発光素子部の構成例を示す。TFT106の形成されたTFTアレイ基板111上に、TFTアレイ基板111側から順に、膜厚100nmのアルミニウム膜よりなる複数の画素電極(制御電極103)と、膜厚1.5nmのリチウム(Li)膜よりなる電子注入層162と、膜厚50nmのAlq3膜よりなる有機発光層112と、膜厚50nmのTPDよりなる正孔輸送層132と、膜厚5nmの銅フタロシアニンよりなるバッファ層172と、3色(シアン、マゼンタ及びイエロー)のカラーフィルター139と、ITO膜よりなる透明導電部144並びに酸化クロム層164及びクロム層174よりなる補助導電部154を有する共通電極104とを備える(図11(a)参照)。ここに、上記実施例3の発光素子における各単位発光部は画素に対応する。上記の構成によれば、低消費電力型のエレクトロルミネッセンス型表示装置を提供できる。
【0093】
一般的には、各カラーフィルター間に、色混じりを低減するためのブラックマトリックスを形成するが、本実施例における共通電極の補助導電部は遮光性を有するため、ブラックマトリックスの役割を兼任させることができる。
【0094】
上記本実施例においては上記実施例3に記載の発光素子を用いたが、図11(b)の如く、上記実施例2に記載の発光素子と同様の共通電極104を用いることもできる。
【0095】
上記本実施例において、透明導電部及び補助導電部を有する共通電極を用いた場合について説明したが、実施の形態1に示した、補助導電部と同じパターンの遮光性高導電部を有する透光電極を共通電極として用いることもできる。このような透光電極を用いた場合もブラックマトリックスを別途設ける必要がない。
【0096】
【発明の効果】
以上で説明したように、本発明では、高導電材料の注入された高導電部を透光導電膜に形成してなる電極を発光素子の対向電極又は制御電極に用いることにより、消費電力を低減させた発光素子を提供できる。また、透光導電部及び補助導電部よりなる対向電極を発光素子の対向電極として用いることにより、消費電力を低減させた、上取り出し構造を有する発光素子を提供できる。
【0097】
また、高導電部を有する対向電極を備えた発光素子を、EL型表示装置の表示部及びEL型照明装置の光源として用いることにより、消費電力を低減させたEL型表示装置及びEL型照明装置を提供できる。
【0098】
また、補助導電部を有する対向電極を備えた上取り出し構造の発光素子を、EL型表示装置の表示部及びEL型照明装置の光源として用いることにより、消費電力を低減させたEL型表示装置及びEL型照明装置を提供できる。
【0099】
更に、本発明に係る、発光素子、EL型表示装置及びEL型照明装置において、制御電極を対向電極に投影した投影領域以外の領域に高導電部又は補助導電部を形成した対向電極を用いた場合、取り出し光の輝度を低減させることなく消費電力を低減することができる。また、各単位発光部を区画化するようにメッシュ状に形成された、遮光性を有する高導電部又は補助導電部を備えた対向電極であれば、コンストラスト比を向上する効果や色混じりを低減する効果を奏する。また、外光の反射率が低い高導電部又は補助導電部を備えた対向電極であれば、外光の反射にともなうコンストラスト比の低減を抑制する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1における発光素子の模式的な平面図である。
【図2】図2は、電子誘導部の形成された透光電極の模式的な平面図であり、
図2(a)は、全領域を電子誘導部とする透光電極を示し、
図2(b)は、周縁部を電子誘導部とする透光電極を示し、
図2(c)は、電子誘導部が梯子状に形成された透光電極を示し、
図2(d)は、電子誘導部が櫛状に形成された透光電極を示す。
【図3】図3は、図2(c)におけるA−A’断面を模式的に示す断面図であり、
図3(a)は、透光導電膜を貫通する高導電部が形成された透光電極を備えた発光素子を示し、
図3(b)は、表層部のみに高導電部が形成された透光電極を備えた発光素子を示す。
【図4】図4は、図2(c)におけるA−A’断面を模式的に示す断面図であり、
図4(a)は、補助導電部が透光導電部上に形成された透光電極を備えた発光素子を示し、
図4(b)は、補助導電部が透光導電部の内部に形成された透光電極を備えた発光素子を示し、
図4(c)は、補助導電部が透光導電部下に形成された透光電極を備えた発光素子を示す。
【図5】図5は、電子誘導部のパターンを説明するための発光素子の模式的な平面図であり、
図5(a)は、全領域を電子誘導部とする透光電極を備えた発光素子を示し、図5(b)は、電子誘導部が梯子状に形成された透光電極を備えた発光素子を示す。
【図6】図6は、制御電極の投影領域以外の領域に形成された電子誘導部のパターンを説明するための発光素子の模式的な平面図であり、
図6(a)は、電子誘導部が梯子状に形成された透光電極を備えた発光素子を示し、
図6(b)は、電子誘導部がメッシュ状に形成された透光電極を備えた発光素子を示し、
図6(c)は、屈折した部位を有する電子誘導部が形成された透光電極を備えた発光素子を示す。
【図7】図7は、EL型表示装置の構成例を模式的に示す平面図である。
【図8】図8は、EL型照明装置の構成例を模式的に示す平面図である。
【図9】図9は、実施例1における発光素子の模式的な断面図である。
【図10】図10は、実施例2における発光素子の模式的な断面図である。
【図11】図11は、実施例4におけるEL型表示装置の発光素子部を模式的に示す断面図であり、
図11(a)は、高導電部が透明導電膜上に形成された透光電極を備えたEL型表示装置を示し、
図11(b)は、高導電部が透明導電膜下に形成された透光電極を備えたEL型表示装置を示す。
【図12】図12は、パネルサイズに対するパネルの消費電力(W)の変化を示すグラフ図である。
【図13】図13は、従来の有機発光素子を説明するための模式的な断面図である。
【図14】図14は、従来の無機発光素子を説明するための模式的な断面図である。
【図15】図15は、下取り出し構造を有する従来の発光素子を説明するための模式的な断面図である。
【図16】図16は、上取り出し構造を有する従来の発光素子を説明するための模式的な断面図である。
【符号の説明】
101 基板
111 透明基板
121 TFTアレイ基板
131 ガラス基板
102 発光層
112 有機発光層
122 無機発光層
132 正孔輸送層
162 電子注入層
172 バッファ層
103 制御電極
113 制御電極の投影領域
104 対向電極(共通電極)
114 電子誘導部
124 透光導電膜
134 高導電部
144 透光導電部
154 補助導電部
164 酸化クロム層
174 クロム層
106 TFT
108 単位発光部
118 発光素子部
128 光源
109 周辺駆動回路
119 信号入出力部
129 発光制御部
139 カラーフィルタ
201 基板
211 透明基板
202 発光層
212 電子輸送性発光層
222 無機発光層
232 正孔輸送層
242 第1絶縁層
252 第2絶縁層
213 陰電極
223 背面電極
214 透明陽電極
224 透明電極
206 TFT

Claims (20)

  1. 制御電極と、前記制御電極に対向する対向電極と、前記制御電極と前記対向電極との間に挟まれた発光層とを有し、かつ前記制御電極と前記対向電極の少なくとも一方が透光電極である発光素子であって、
    前記透光電極は、透光性及び導電性を有する透光導電膜に、前記透光導電膜を構成する導電材料より導電率の高い高導電材料を含有する高導電部を有することを特徴とする発光素子。
  2. 請求項1に記載の発光素子において、
    前記高導電部が、前記透光導電膜中に分散した前記高導電材料を含有することを特徴とする発光素子。
  3. 互いに離隔しかつ電気的に絶縁された複数の制御電極と、前記複数の制御電極に対向した共通電極と、前記複数の制御電極と前記共通電極との間に挟まれる発光層とを絶縁基板上に有し、かつ前記複数の制御電極と前記共通電極の少なくとも一方が透光電極である発光素子であって、
    前記透光電極は、透光性及び導電性を有する透光導電膜に、前記透光導電膜を構成する導電材料より導電率の高い高導電材料を含有する高導電部を有することを特徴とする発光素子。
  4. 請求項3に記載の発光素子において、
    前記共通電極が前記透光電極であり、かつ、
    前記複数の制御電極が金属電極であり、かつ、
    該透光電極が前記高導電部と前記高導電材料を含有しない透光導電部とを有することを特徴とする発光素子。
  5. 請求項3又は4に記載の発光素子において、
    前記高導電部が、前記透光導電膜中に分散した前記高導電材料を含有することを特徴とする発光素子。
  6. 請求項5に記載の発光素子において、
    前記共通電極が、前記制御電極を前記共通電極に投影した投影領域に、前記高導電部を有し、かつ、
    前記投影領域に形成された前記高導電部が、透光性を有する透光性高導電部であることを特徴とする発光素子。
  7. 請求項5に記載の発光素子において、
    前記高導電部が、遮光性を有する遮光性高導電部であることを特徴とする発光素子。
  8. 請求項7に記載の発光素子において、
    前記共通電極が、前記制御電極を前記共通電極に投影した投影領域以外の領域内のみに、前記高導電部を有することを特徴とする発光素子。
  9. 絶縁基板上に形成された制御電極と、前記制御電極に対向しかつ一定電位に保たれた対向電極と、前記制御電極と前記対向電極との間に挟まれた発光層とを有する発光素子であって、
    前記対向電極は、透光性及び導電性を有する透光導電部と、前記透光導電部と電気的に接続された、前記透光導電部より導電率の高い補助導電部とを有し、かつ、前記制御電極を前記対向電極に投影した投影領域内に、前記透光導電部のみからなる領域を有することを特徴とする発光素子。
  10. 請求項9に記載の発光素子において、
    前記対向電極が、前記投影領域以外の領域のみに前記補助導電部を有することを特徴とする発光素子。
  11. 絶縁基板上に形成された互いに電気絶縁された複数の制御電極と、前記複数の制御電極に対向しかつ一定電位に保たれた共通電極と、前記複数の制御電極と前記共通電極との間に挟まれる発光層とを有する発光素子であって、
    前記共通電極は、透光性及び導電性を有する透光導電部と、前記透明導電部と電気的に接続された、前記透光導電部より導電率の高い補助導電部とを有し、かつ、前記複数の制御電極の各々を前記共通電極に投影した各投影領域内に、前記透光導電部のみからなる領域を有することを特徴とする発光素子。
  12. 請求項11に記載の発光素子において、
    前記共通電極は、前記投影領域以外の領域のみに前記補助導電部を有することを特徴とする発光素子。
  13. 請求項10又は12に記載の発光素子において、
    前記補助導電部が、可視光に対して遮光性を有する遮光性補助導電部であることを特徴とする発光素子。
  14. 請求項13に記載の発光素子において、
    前記遮光性補助導電部が、金属材料よりなる金属層と、前記金属材料の酸化物からなる金属酸化物層とを有することを特徴とする発光素子。
  15. 請求項13又は14に記載の発光素子において、
    前記発光素子が、前記遮光性補助導電部上に反射防止膜を更に有することを特徴とする発光素子。
  16. 請求項9〜15のいずれか一項に記載の発光素子において、
    前記透光導電部が、酸化錫又はインジウムティンオキサイドからなる透明導電膜であることを特徴とする発光素子。
  17. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の発光素子において、
    前記発光層が有機化合物からなることを特徴とする発光素子。
  18. 請求項17に記載の発光素子において、
    前記発光素子が、前記制御電極層と前記有機発光層とに挟まれた電子注入層と、前記有機発光層と前記共通電極とに挟まれた正孔輸送層とを更に有することを特徴とする発光素子。
  19. 絶縁基板上にスイッチング素子の形成されたアレイ基板と、
    前記アレイ基板上に形成され、前記スイッチング素子を介して制御される発光素子部と、
    外部装置との間の信号入出力を制御する信号入出力部と、
    前記信号入出力部からの入力信号を所定の電気信号に変換し、前記電気信号に応じて前記スイッチング素子をアクティブ駆動させる周辺駆動回路部と、
    を備えるエレクトロルミネッセンス型表示装置であって、
    前記発光素子部は、請求項1〜18のいずれか一項に記載の発光素子を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス型表示装置。
  20. 光源を有する照明装置であって、
    前記光源は、請求項1〜18のいずれか一項に記載の発光素子を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス型照明装置。
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