JP2005092920A - 磁気ディスクカートリッジ - Google Patents

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Abstract

【課題】 磁気ディスクカートリッジにおいて、微小な塵埃を除去するとともに、磁気ディスクの回転トルクを抑えて走行耐久性の劣化の防止およびS/N比の劣化の防止を図る。
【解決手段】 磁気ディスク4が、158.7Mbit/cm2以上の面記録密度を有する、支持体と、該支持体上に設けられた実質的に非磁性である下層と、下層に積層された強磁性粉末からなる磁性層とを備えたものである。磁性層は、高さ10nm以上の突起を900μm2当たり10個〜1000個有する。また、ライナー6は、複数の繊維成分が側面同士で互いに接着されてなる割繊型複合繊維を割繊処理した割繊繊維により形成された不織布からなるものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ケース内に可撓性を有する磁気ディスクを収容した磁気ディスクカートリッジに関するものである。
従来、フレキシブルなポリエステルシート等からなる円盤状の支持体の両面に磁性体層が形成された可撓性を有する磁気記録メディアを、ケース内に回転自在に収容してなる磁気ディスクカートリッジが提供されている。この種の磁気ディスクカートリッジは、その取扱いの容易性、低コストといった利点から、主としてコンピュータ用の記録媒体として用いられている。
特に、近年、コンピュータの小型化、情報処理能力の増大に伴い、磁気ディスクカートリッジの大容量化、小型化を達成するために記憶容量の向上が強く求められている。そこで、磁気ヘッドとしてMRヘッドを用いることにより、トラック幅を狭くして高密度記録を実現することが提案されている。
ところで、上述した磁気ディスクカートリッジにおいて、磁気ディスクに塵埃等が付着するといわゆるドロップアウトの原因となる。ドロップアウトの問題は、磁気ディスクの記録密度がより高いほど発生しやすくなる。そこで、磁気ディスクカートリッジは、磁気ディスクに付着した塵埃を取り除いてその表面をクリーンな状態に維持することを目的として、ケース内の磁気ディスクに対向する内面にライナーが取り付けられた構造を有している。
このライナーは繊維径が10μm〜30μmの繊維からなる不織布からなっており、磁気ディスクに接触する表面が起毛状態になる材料を用いている(特許文献2参照。)。そして、ライナー表面が回転する磁気ディスクに接触し、付着している塵埃等を表面部分で払拭、捕捉するようになっている。
特開2003−6835号公報 特開2002−50151号公報
上述のような高容量の磁気ディスクである場合、特に面記録密度が約158.7Mbit/cm2(1Gbit/inch2)以上または線記録密度が100Ktpi以上またはトラック密度が10Ktpi以上である高容量の磁気ディスクである場合、非常に微細な塵埃や摩耗粉による影響が大きくなるため、微細な塵埃等を除去することができるライナーを備えた磁気ディスクカートリッジが求められている。
一方で、非常に微細な塵埃や摩耗粉を除去することができるといっても磁気ディスクとライナーとの摩擦力を大きくなってしまうと、摩擦力により回転トルクが上昇して走行耐久性が悪くなるとともに、S/N比が悪くなることがわかった。つまり、上述のような高容量の磁気ディスクカートリッジの場合、微細な塵埃を除去し、かつ回転トルクを低減させ走行耐久性の劣化およびS/N比の劣化を防止することが求められる。
そこで、本発明は、高記録密度の磁気ディスクに付着した微小な埃塵を除去するとともに、回転トルクの上昇を抑えて走行耐久性の劣化およびS/N比の劣化を防止することができる磁気ディスクカートリッジを提供することを目的とするものである。
本発明のディスクカートリッジは、磁気ディスクと、磁気ディスクを回転可能に収容したケースと、ケースの前記磁気ディスクに対面する内面に固定されたライナーとを備えた磁気ディスクカートリッジにおいて、磁気ディスクが、158.7Mbit/cm2以上の面記録密度を有する、支持体と、支持体上に設けられた実質的に非磁性である下層と、下層に積層された強磁性粉末からなる磁性層とを備えたものであって、磁性層が、高さ10nm以上の突起を900μm2当たり10個〜1000個有するものであり、ライナーが、複数の繊維成分が側面同士で互いに接着されてなる割繊型複合繊維を割繊処理した割繊繊維により形成された不織布からなるものであることを特徴とするものである。
ここで、900μm2当たり10個〜1000個という磁性層の突起数は、原子間力顕微鏡(AFM)により測定される高さ10nm以上の突起数である。
また、割繊型複合繊維は、割繊処理により割繊可能なものであればその構造は問わず、たとえば並列2層構造、多重並列構造、多芯構造、放射状構造等であってもよいし、繊維径が6μmから20μmの繊維成分の断面外周に繊維径が1μmから10μmの繊維成分を複数配置した構造を有するものであってもよい。
本発明の磁気ディスクカートリッジによれば、磁気ディスクが、158.7Mbit/cm2以上の面記録密度を有する、支持体と、支持体上に設けられた実質的に非磁性である下層と、下層に積層された強磁性粉末からなる磁性層とを備えたものであって、磁性層が、900μm2当たり10個〜1000個の高さ10nm以上の突起を有するものであり、ライナーが、複数の繊維成分が側面同士で互いに接着されてなる割繊型複合繊維を割繊処理した割繊繊維により形成された不織布からなることにより、ライナーにより微細な塵埃を除去することができるとともに、このようなライナーを用いた場合であっても回転トルクの上昇を抑えて、走行耐久性の劣化を防止するとともにS/N比の劣化を防止することができる。
以下、図面を参照して本発明のディスクカートリッジの実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のディスクカートリッジの分解斜視図である。図1のディスクカートリッジ1は、たとえばいわゆる3.5インチタイプのフロッピー(登録商標)ディスクカートリッジであり、上シェル2および下シェル3を接合して形成された扁平なケースCと、ケースC内に回転自在に収容された円盤状の磁気ディスク4と、ケースC内の磁気ディスク4に対面する内面に配置された除塵用のライナー6、6とを備えている。
上シェル2および下シェル3は扁平な略矩形状に形成されており、たとえばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体のような合成樹脂から形成されている。上シェル2および下シェル3の外周には側壁を構成する外周リブ2a、3aが形成されている。上シェル2および下シェル3の隅角部にはそれぞれ略斜めに内側リブ2b、3bが設けられている。また上シェル2および下シェル3には、磁気ディスク4にアクセスするための磁気ヘッド挿入用窓部10、11が略長方形状に設けられている。
下シェル3の中央部分には、センターコア5が臨む大きさの円形状のスピンドル孔3cが形成されている。上シェル2の内面の中心部には、センターコア5の外周の環状部分より内側に位置する環状突起12が突設されている。この環状突起12はセンターコア5の上記環状部分の内側に嵌入して、磁気ディスク4の半径方向への移動を規制するようになっている。
磁気ディスク4は、たとえば円盤状の磁気ディスクであって、中央部においてセンターコア5に保持されている。そして、ディスクカートリッジ1が図示しないドライブ装置に装填されると、センターコア5がドライブ装置の回転スピンドルと係合し、磁気ディスク4が回転可能に保持されることになる。
ここで、磁気ディスク4は、線記録密度が100Kbpi以上またはトラック密度が100Ktpi以上、面記録密度が約158.7Mbit/cm2(1Gbit/inch2)以上、好ましくは5Gbit/inch2以上の高容量の磁気情報記録媒体であって、ディスクドライブのMRヘッドにより情報の再生が行われるものである。この磁気ディスク4は、支持体と、支持体上に設けられた実質的に非磁性の下層と、下層に積層された六方晶系フェライト粉末を結合剤中に分散してなる磁性層とを有し、この磁性層に人造ダイヤモンドが分散されている構造を有している。以下に、磁気ディスク4の各構成について説明していく。
[支持体]
まず、磁気ディスク4に用いられる支持体について説明する。支持体は、非磁性可撓性支持体であることが好ましく、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカ−ボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアラミド、芳香族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用でき、さらにポリエチレンナフタレ−ト、ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好ましい。また必要に応じ、磁性面とベ−ス面の表面粗さを変えるため特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などをおこなっても良い。また支持体としてアルミまたはガラス基板を適用することも可能である。
具体的には、WYKO社製TOPO−3Dで測定した中心面平均表面粗さSRaは8.0nm以下、好ましくは4.0nm以下、さらに好ましくは2.0nm以下のものを支持体として使用することが好ましい。これらの支持体は単に中心面平均表面粗さが小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa,Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末があげられる。支持体の最大高さSRmaxは1μm以下、十点平均粗さSRzは0.5μm以下、中心面山高さSRpは0.5μm以下、中心面谷深さSRvは0.5μm以下、中心面面積率SSrは10%以上、90%以下、平均波長Sλaは5μm以上、300μm以下が好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールできるものであり、0.01μmから1μmの大きさのもの各々を0.1mm2あたり0個から2000個の範囲でコントロールすることができる。
さらに、支持体のF−5値は好ましくは5〜50Kg/mm2(49〜490MPa)、また、支持体の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。破断強度は5〜100Kg/mm2(49〜980MPa)、弾性率は100〜2000Kg/mm2(0.98〜19.6GPa)が好ましい。温度膨張係数は10-4〜10-8/℃であり、好ましくは10-5〜10-6/℃である。湿度膨張係数は10-4/RH%以下であり、好ましくは10-5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
[下層]
次に、上述した支持体上に設けられる下層について説明する。下層に用いられる無機粉末は非磁性粉末であり、例えば金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独または組合せで使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタン、α酸化鉄である。これら非磁性粉末の粒子サイズは0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは非磁性粉末の粒子サイズは0.01μm〜0.2μmである。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径0.08μm以下が好ましく、針状金属酸化物である場合は、長軸長は0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。タップ密度は0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性粉末の含水率は0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、更に好ましくは0.3〜1.5質量%である。非磁性粉末のpHは2〜11であるが、pHは5.5〜10の間が特に好ましい。非磁性粉末のSBETは1〜100m2/g、好ましくは5〜80m2/g、更に好ましくは10〜70m2/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.004μm〜1μmが好ましく、0.04μm〜0.1μmが更に好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。モース硬度は4以上、10以下のものが好ましい。
非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m2、好ましくは2〜15μmol/m2、さらに好ましくは3〜8μmol/m2である。pHは3〜6の間にあることが好ましい。これらの非磁性無機粉末の表面には表面処理によりAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnO、Y23が存在するが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、更に好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナを存在させた後にその表層をシリカを存在させる方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
下層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100,ZA−G1、戸田工業社製αヘマタイトDPN−250,DPN−250BX,DPN−245,DPN−270BX,DPN−500BX、DBN−SA1,DBN−SA3、石原産業製酸化チタンTTO−51B,TTO−55A,TTO−55B,TTO−55C,TTO−55S,TTO−55D,SN−100、αヘマタイトE270,E271,E300,E303、チタン工業製酸化チタンSTT−4D,STT−30D,STT−30,STT−65C、αヘマタイトα−40、テイカ製MT−100S,MT−100T,MT−150W,MT−500B,MT−600B,MT−100F,MT−500HD、堺化学製FINEX−25,BF−1,BF−10,BF−20,ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y,DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM,TiO2P25、宇部興産製100A,500A、及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
下層にカーボンブラックを混合させて公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。また、下層にカーボンブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可能である。カーボンブラックの種類はゴム用ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。下層のカーボンブラックは所望する効果によって、以下のような特性を最適化すべきであり、併用することでより効果が得られることがある。
下層のカーボンブラックのSBETは100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜400ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は5〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
カーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製BLACKPEARLS 2000,1300,1000,900,800,880,700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B,#3150B,#3250B,#3750B,#3950B,#950,#650B,#970B,#850B,MA−600,MA−230,#4000,#4010、コンロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 8800,8000,7000,5750,5250,3500,2100,2000,1800,1500,1255,1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機化合物に対して50質量%を越えない範囲、下層(非磁性層)総質量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。なお、カーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
また下層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
下層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は以下に記載する磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
[磁性層]
次に、下層に積層された磁性層について説明する。磁性層は、六方晶系フェライト粉末を結合剤中に分散した磁性塗料を下層に塗布した後乾燥することにより形成されている。この六方晶系フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、及びこれらの置換体、例えば、Co置換体等が挙げられる。具体的にはマグネートプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネートプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネートプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V,Cr、Cu,Y,Mo,Rh,Pd,Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P,Co,Mn,Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti,Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn,Ni−Ti−Zn,Nb−Zn−Co、SbーZn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
六方晶系フェライト粉末の平均板径が12nm以上、50nm以下、平均板厚が5nm以上、15nm以下、抗磁力が1800Oe(144kA/m)以上、5000Oe(400kA/m)以下であることが好ましく、2000Oe(160kA/m)以上、3500Oe(280kA/m)以下が特に好ましい。
平均板径が10nm未満または平均板厚が5nm以下になると、磁気異方性を維持することが困難になり、抗磁力が低下したり、熱安定性が低下し好ましくない。
抗磁力は1800Oe(144kA/m)未満になると、記録減磁を受けやすく出力が低下する。5000Oe(400kA/m)を越えるとヘッドによる記録が困難になり出力が低下する。板状比(板径/板厚)は2〜5が好ましい。板状比が小さいと磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、十分な配向性が得られない。大きいと粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積(SBET)は20〜200m2/gを示す。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。
これらは粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは40〜80A・m2/kgである。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネートプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶系フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10%である。表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。磁性体のpHも分散に重要である。通常、4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。六方晶系フェライトの製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後、洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが製法を選ばない。
六方晶系フェライト粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。
[カーボンブラック、研磨剤]
次に、磁気ディスク4の磁性層中に分散されているカーボンブラックおよび研磨剤について説明する。磁気ディスク4の磁性層に使用されるカーボンブラックはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。SBETは5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5μm〜300μm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ml、が好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800,700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製、#80、#60,#55、#50、#35、三菱化成工業社製、#2400B、#2300、#900,#1000#30,#40、#10B、コロンビアンカーボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50,40,15、RAVEN−MT−P、日本EC社製、ケッチェンブラックEC、などがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。
これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は磁性体に対する量の0.1〜30%でもちいることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは上層磁性層、下層非磁性層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、PHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
また、研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモ−ス硬度6以上の公知の材料が単独または組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。
これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmが好ましく、特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。タップ密度は0.3〜2g/ml、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、SBETは1〜30m2/g、が好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。具体的には住友化学社製AKP−12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT20、HIT−30、HIT−55、HIT60、HIT70、HIT80、HIT100、レイノルズ社製ERC−DBM、HP−DBM、HPS−DBM、不二見研磨剤社製WA10000、上村工業社製UB20、日本化学工業社製G−5、クロメックスU2、クロメックスU1、戸田工業社製TF100、TF140、イビデン社製ベータランダムウルトラファイン、昭和鉱業社製B−3、東名ダイヤ社製MD150、ランズ社製LS−600Fなどが挙げられる。これらの研磨剤は必要に応じ非磁性層に添加することもできる。非磁性層に添加することで表面形状を制御したり、研磨剤の突出状態を制御したりすることができる。これら磁性層、非磁性層の添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適値に設定すべきものである。
[添加剤]
上述した下層および磁性層には添加剤が含まれており、この添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果等をもつものが使用される。たとえば二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール、(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエ−テルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。
これらの具体例としては脂肪酸では、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、などが挙げられる。エステル類ではブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、2−ヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイル、アルコール類ではオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、などがあげられる。また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
上述した潤滑剤、界面活性剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、量、および相乗的効果を生み出す潤滑剤の併用比率は目的に応じ最適に定められるべきものである。下層(非磁性層)、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点、融点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させるなど考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。一般には潤滑剤の総量として磁性体または非磁性粉体に対し、0.1%〜50%、好ましくは2%〜25%の範囲で選択される。
また添加剤のすべてまたはその一部は、磁性および非磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない。例えば、混練工程前に磁性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダ−した後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。なお、有機溶剤は公知のものが使用でき、例えば特開平6−68453号公報に記載の溶剤を用いることができる。
[結合剤]
結合剤としては従来公知の熱可塑系樹脂、熱硬化系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1000程度のものである。
このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクルリ酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエ−テル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマ−の混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、電子線硬化型樹脂を各層に使用すると、塗膜強度が向上し耐久性が改善されるだけでなく、表面が平滑化し電磁変換特性もさらに向上する。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネートを組み合わせたものが挙げられる。
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエ−テルポリウレタン、ポリエ−テルポリエステルポリウレタン、ポリカ−ボネートポリウレタン、ポリエステルポリカ−ボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COOM,−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、−NR2、−N+3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
これらの結合剤の具体的な例としてはユニオンカ−バイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD,VROH,VYES,VYNC,VM/ML,XYHL,XYSG,PKHH,PKHJ,PKHC,PKFE,日信化学工業社製、MPR−TA、MPR−TA5,MPR−TAL,MPR−TSN,MPR−TMF,MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80,DX81,DX82,DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バ−ノックD−400、D−210−80、クリスボン6109,7209,東洋紡社製バイロンUR8200,UR8300、UR−8700、RV530,RV280、大日精化社製ダイフェラミン4020,5020,5100,5300,9020,9022、7020,三菱化成社製MX5004,三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310,F210などがあげられる。
非磁性層、磁性層に用いられる結合剤は非磁性粉体または磁性体に対し、5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネートは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタンのみまたはポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜150℃、好ましくは0℃〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は通常、0.05〜10Kg/mm2(0.49〜98MPa)、降伏点は0.05〜10Kg/mm2(0.49〜98MPa)が好ましい。
上述のように磁気ディスク4は少なくとも二層からなる。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性層、磁性層とで変えることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層でバインダー量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層のバインダー量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層のバインダー量を多くして柔軟性を持たせることができる。
ここで、ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネートHL,コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製、タケネートD−102,タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製、デスモジュールL,デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL,等がありこれらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで各層とも用いることができる。
[製造方法]
次に、上述した材料を用いた磁気ディスク4の製造方法について説明する。磁気ディスクの磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する磁性体、非磁性粉体、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。
例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニ−ダ、加圧ニ−ダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニ−ダを用いる場合は磁性体または非磁性粉体と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)および磁性体100部に対し15〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層液および非磁性層液を分散させるにはガラスビーズを用いることができるが、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
重層構成の非磁性塗料および磁性塗料を塗布する場合、以下のような方式を用いることが好ましい。第一に磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず下層を塗布し、下層がウェット状態のうちに特公平1−46186号公報や特開昭60−238179号公報,特開平2−265672号公報に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法。第二に特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報,特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する方法。第三に特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により上下層をほぼ同時に塗布する方法である。
なお、磁性粒子の凝集による磁気ディスク媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号公報や特開平1−236968号公報に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471号公報に開示されている数値範囲を満足する必要がある。本発明の構成を実現するには下層を塗布し乾燥させたのち、その上に磁性層を設ける逐次重層塗布を用いてもよい。
磁気ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。六方晶フェライトの場合は一般的に面内および垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。またスピンコ−トを用い、円周配向しても良い。
また、乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できるようにすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい、また磁石ゾ−ンに入る前に適度の予備乾燥を行なうこともできる。
カレンダ処理ロールとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールまたは金属ロールで処理するが、特に両面磁性層とする場合は金属ロール同志で処理することが好ましい。処理温度は、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm以上(196kN/m)、さらに好ましくは300kg/cm(294kN/m)以上である。また、アルミナ、酸化クロム、ダイヤモンド等からなる研磨テープで表面処理を行うと、突起や異物が除去できて好ましい。
[層構成]
本発明の磁気ディスクの厚み構成は支持体が2μm〜150μm、好ましくは20μm〜80μmである。支持体と非磁性層また磁性層の間に密着性向上のための下塗り層を設けてもかまわない。本下塗層厚みは0.01μm〜0.5μm、好ましくは0.02μm〜0.5μmである。磁気ディスクは通常支持体両面に非磁性層と磁性層を設けてなるものであっても、片面のみに設けてもかまわない。この場合、帯電防止やカール補正などの効果を出すために非磁性層、磁性層側と反対側にバックコート層を設けてもかまわない。この厚みは0.1μm〜4μm、好ましくは0.3μm〜2.0μmである。これらの下塗層、バックコート層は公知のものが使用できる。
磁性層の厚みは200nm以下であるが、30nm〜150nmが好ましい。厚み変動率は±20%以内が好ましく、さらに好ましくは±5%以内である。磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
下層である非磁性層の厚みは0.2μm以上5.0μm以下、好ましくは0.3μm以上3.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以上2.5μm以下である。なお、下層は実質的に非磁性層であればその効果を発揮するものであり、たとえば不純物としてあるいは意図的に少量の磁性体を含んでも、本発明の効果を示すものであり、本発明と実質的に同一の構成と見なすことができることは言うまでもない。実質的に非磁性層とは下層の残留磁束密度が50mT以下または抗磁力が500Oe(40kA/m)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力をもたないことを示す。
[ライナー]
次に、図1を参照してライナー6、6について説明する。ライナー6、6は上シェル2および下シェル3の磁気ディスク4に対向する内面にたとえば熱溶着もしくは接着等により取り付けられている。ライナー6、6は互いに同一形状(対称形状)で、窓部10、11に重なる部分については切除されており、中心部についても環状突起12またはスピンドル孔3cの外径より大きい円孔が形成されている。
このライナー6、6は、図2に示すように割繊型複合繊維を割繊処理した繊維により形成された不織布からなっている。割繊型複合繊維は複数の繊維成分が互いに接着してなるものであって、たとえば6μmから20μmの繊維径(繊度=1.5デニール)からなるコア繊維成分CFの断面外周に1μmから10μmの繊維径(繊度=0.25デニール)からなる極細割繊繊維成分EFを複数配置した構造を有するものである(たとえばユニチカ株式会社製、商品名:スーパーアルシーマ2)。ここで、図2の割繊型複合繊維Fは、コア繊維成分CFがポリエチレン樹脂のようなポリオレフィン系樹脂からなり、極細割繊繊維成分EFがポリエステル系樹脂からなるものが好ましい。
さらに、割繊型複合繊維はいわゆる水流割繊方法により割繊処理されようになっている(たとえば特公昭57−59384号公報、特公昭60−66554号公報、特開昭61−12960号公報参照)。具体的には、スパンボンド法により作製されたウェブを積層した積層ウェブに高圧水流を当てることにより、割繊型複合繊維が割繊処理されるようになっている。なお、割繊型複合繊維Fの割繊処理の方法として高圧水流を当てる方法について例示しているが、割繊型複合繊維Fの繊維成分間の接着構造に合わせて熱を加える方法、溶剤に浸す方法等により、割繊型複合繊維を構成する繊維成分毎に分割すればよい。
上述した各不織布は、長繊維不織布を得る製法であるスパンボンド法(社団法人繊維学会編、「第2版繊維便覧」、丸善株式会社、平成6年3月25日発行、p349参照)により製造されている。このようなスパンボンド法により製造された不織布は、繊維長の長い繊維から形成されることになるため、ライナー6、6に埃塵の原因となる微小な繊維が含まれにくくなる。これにより、ライナー6、6の自己発塵量を少なくすることができ、品質マージンの向上を図ることができる。さらに、スパンボンド法においては繊維長がたとえば5000mになるような長い繊維長の不織布(ウェブ)を作製することが可能であるため、ライナー6、6のコストを抑えることができる。
以下、実施例を用いてさらに本発明の詳細について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、後述する「部」は「質量部」を示す。
サンプル1:下記磁性塗料Aと非磁性塗料それぞれについて、各成分をニ−ダで混練したのち、磁性塗料Aについてはサンドミルをもちいて回転数2000rpmで12時間分散し、非磁性塗料についてはサンドミルを用いて回転数2000rpmで3時間分散した。得られた磁性液Aと非磁性塗料の分散液にポリイソシアネ−トを磁性塗料Aの塗布液には3部、非磁性塗料の塗布液には6部を加え、さらにそれぞれにシクロヘキサノン30部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層形成用および非磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調整した。
得られた非磁性層塗布液を、厚さ53μmで中心面平均表面粗さが3nmのポリエチレンナフタレート支持体上に乾燥後の厚さが1.5μmになるように塗布し乾燥後に、磁性層の厚さが0.1μmになるように塗布を行い、乾燥後、7段のカレンダで温度90℃、線圧300kg/cmにて処理を行い、3.5吋に打ち抜き、さらに55℃の恒温糟内で24時間熱処理した。このようにして、得られた磁気ディスク4を図1に示すようなライナー6、6が固定されたケースCに収容し、磁気ディスクカートリッジ1を作製した。
サンプル2〜4:磁性塗料Aのサンドミルによる分散時間を12時間から表1に記載された時間に変更したこと以外はサンプル1と同様の方法によりサンプル2〜4を作成した。
サンプル5〜7:磁性塗料Aのダイヤモンド粒子の平均粒径を表1に記載された値に変更したこと以外は、サンプル1と同様の方法によりサンプル5〜7を作成した。
サンプル8〜10:磁性塗料Aのカーボンブラック#50の添加量を表1に記載された値に変更したこと以外は、サンプル1と同様の方法によりサンプル8〜10を作成した。
<磁性塗料A>
六方晶バリウムフェライト 100部
表面処理:Al23 5重量%、SiO2 2重量%
Hc:2500Oe
板径:30nm
板状比:3
σs:56emu/g
塩化ビニル共重合体
MR110(日本ゼオン社製) 6部
ポリウレタン樹脂
UR8300(東洋紡社製) 3部
ダイヤモンド(平均粒径100nm) 2部
カ−ボンブラック
#50(旭カーボン社製) 1部
イソセチルステアレート 5部
ステアリン酸 1部
オレイン酸 1部
メチルエチルケトン 80部
シクロヘキサノン 120部
<非磁性塗料>
α−Fe ヘマタイト 100部
長軸長 0.07μm、短軸長 0.014μm
BET法による比表面積 55m2/g
pH 9、表面処理剤Al 8重量%
カ−ボンブラック(平均粒径20nm)
コンダクテックスSC−U(コロンビアンカーボン社製) 25部
塩化ビニル共重合体
MR104(日本ゼオン社製) 15部
ポリウレタン樹脂
UR8300(東洋紡社製) 7部
フェニルホスホン酸 4部
イソヘセチルステアレート 6部
オレイン酸 1.3部
ステアリン酸 1.3部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(8/2混合溶剤) 250部
<評価方法>
(1)走行トルクの測定
得られた磁気ディスクカートリッジ1を協同電子システム(株)製スピンスタンドLS−90にて、ヘッドなしの状態において3600rpmで回転させ、回転中のモータ付加電流から走行トルクを算出した。
(2)耐久性の測定
得られた磁気ディスクカートリッジ1を米GUZIK社製のRWA1001型ディスク評価装置および協同電子システム(株)製スピンスタンドLS−90にて、書き込みトラック幅1.5μm、読み出しトラック幅0.9μmの複合型MRヘッドを用い、回転数3600rpmにて、半径44mmの位置から半径88mmの位置を連続的にシークさせた。シーク開始後10時間毎に、シーク部分のドロップアウトを測定し、出力が30%以上低下する長さ100μm以上の欠陥が確認されたところをその磁気ディスクの寿命とした。
(3)S/N比の測定
S/N比の測定は、米GUZIK社製のRWA1001型ディスク評価装置および協同電子システム(株)製スピンスタンドLS−90にて、書き込みトラック幅1.5μm、読み出しトラック幅0.9μmの複合型MRヘッドを用い、回転数3600rpmで線記録密度140KFCIの信号を書き込み、その再生出力(TAA)とDCイレーズ後のノイズレベルを測定し、S/N比とした。
(5)AFM突起数
原子間力顕微鏡(AFM)を用い、30μm四方の面積での高さ10nm以上の突起数をカウントした。
得られた結果を表1に示した。
Figure 2005092920
この表1において、回転トルクが20gf−cm以下、耐久性が1000時間以上、S/N比が20dB以上である磁気ディスクカートリッジ1を耐久性が良くS/N比の高いものとする。このとき、サンプル3、サンプル6、サンプル10のようにAFM突起数が1200個の場合には耐久性が1000時間以下であり、走行耐久性が悪くなることがわかった。これは、AFM突起数が多いことによる磁気ディスク4の表面にアクセスするMRヘッドによる記録再生に障害がでてしまうことに起因するものと考えられる。
一方、サンプル8のようにAFM突起数が2個の場合、S/N比は20dB以上となるが走行トルクが40gf−cmというように高くなり、走行耐久性が悪くなることがわかった。これは、AFM突起数が少ないことによる磁気ディスク4の表面とライナーとの摩擦力が大きくなってしまったことに起因するものと考えられる。
さらに、サンプル1、サンプル2、サンプル4、サンプル5、サンプル7、サンプル9、サンプル11、サンプル12に示すように、AFM突起数が10個〜1000個以内にある磁気ディスクカートリッジ1は、走行耐久性も良く、S/N比も高いことがわかった。すなわち、上述した微小な埃塵を除去できるライナーを用いたとき、走行耐久性の劣化を防止するとともにS/N比の劣化を防止するためには、AFM突起数が10個〜1000個にすればよいことがわかった。
なお、本発明の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。たとえば、図1においていわゆる3.5インチタイプのフロッピー(登録商標)ディスクカートリッジに本発明を適用したものであるが、本発明はその種のディスクカートリッジ1に限らず、たとえば「clik!(登録商標)」や「Pocket Zip(登録商標)」と呼ばれる、たとえば幅50mm、奥行き6、6mm、厚さ1.95mmの扁平な金属薄板からなる上下シェルを備えたハウジング内に、センターコアに固定された直径1.8インチ(46.5mm)の磁気ディスク等の可撓性を有する磁気ディスクを回転自在に収容した超小型の磁気ディスクカートリッジに適用してもよい。
また、図2において、割繊型複合繊維の一例としてコア繊維成分の断面外周に極細割繊繊維成分が複数配置された構造のものについて例示しているが、2つの繊維成分がそれぞれ略半円状に接合された2層型並列構造の割繊型複合繊維、2つの繊維成分が交互に積層された多層型多重並列構造の割繊型複合繊維、2つの断面中央部にある繊維成分F2の断面周辺に放射状に配置した多層型放射状構造の割繊型複合繊維であってもよい。
本発明のディスクカートリッジの好ましい実施の形態を示す分解斜視図 本発明のディスクカートリッジにおけるライナーに使用される割繊型複合繊維および海島型複合繊維の構造の一例を示す模式図
符号の説明
1 ディスクカートリッジ
4 磁気ディスク
5 センターコア
6 ライナー
C ケース

Claims (1)

  1. 磁気ディスクと、該磁気ディスクを回転可能に収容したケースと、該ケースの前記磁気ディスクに対面する内面に固定されたライナーとを備えた磁気ディスクカートリッジにおいて、
    前記磁気ディスクが、158.7Mbit/cm2以上の面記録密度を有する、支持体と、該支持体上に設けられた実質的に非磁性である下層と、該下層に積層された強磁性粉末からなる磁性層とを備えたものであって、
    該磁性層が、高さ10nm以上の突起を900μm2当たり10個〜1000個有するものであり、
    前記ライナーが、複数の繊維成分が側面同士で互いに接着されてなる割繊型複合繊維を割繊処理した割繊繊維により形成された不織布からなるものであることを特徴とする磁気ディスクカートリッジ。
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