JP2005091813A - トナー及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 酸価が10mg・KOH/g以下、かつ水酸基価が10mg・KOH/g以上である樹脂粒子と、表面に化学的に結合した極性基を有する自己分散型カーボンブラックから成る着色剤粒子とを水系媒体中で凝集及び融着する。
【選択図】なし
Description
例えば、着色剤粒子にカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックは水系媒体中での分散安定性が低いため、凝集工程の初期に凝集し、結果としてトナー中でのカーボンブラックの分散不良が起こり、帯電不良や濃度不足などの課題を引き起こすという問題がある。これに対しては、樹脂粒子の分散安定性を高めて、着色剤粒子やその凝集物の樹脂粒子表面への付着を促進する方法がある。例えば、樹脂粒子にスチレン−アクリル系共重合体を用いる場合、アクリル酸やメタクリル酸などの酸性単量体の量を増加させることで樹脂粒子の親水性を高くし、樹脂粒子の分散安定性を高めることができる。
また、トナー中でのカーボンブラックの分散性が優れることからトナーの濃度を非常に高くすることができる。例えば、カーボンブラックの添加量が5〜10重量部の範囲で製造された3〜7μmの平均粒径を有するトナーにおいて、付着量4.5g/m2のときの定着画像の濃度(TD)が1.3以上であり、かつ優れた帯電特性を有する。
本発明のトナーには、酸価が10mg・KOH/g以下、かつ水酸基価が10mg・KOH/g以上である樹脂粒子を用いることができる。すなわち、樹脂粒子中の酸性基の量を上記の酸価で規定される量以下とし、かつ水酸基の量を上記の水酸基価で規定される量以上とする必要がある。
樹脂粒子を得るための重合性単量体には、水酸基含有単量体と、酸性基としてカルボン酸基を含有する単量体、そして水酸基とカルボン酸基のいずれも含有しない単量体を用いることができる。また、必要により架橋性単量体を用いることもできる。なお、後述するように、樹脂粒子には、コア層とそのコア層を覆う1層以上の被覆層から成る多層構造の樹脂粒子を用いることができる。その多層構造の樹脂粒子の場合、以下で説明する単量体組成は、少なくとも被覆層の最外層の樹脂に適用される。
カルボン酸基含有単量体としては特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。具体的には、モノビニル芳香族系単量体、アクリル酸エステル系単量体、アクリルアミド系単量体等を用いることができる。
水酸基含有単量体としては特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。具体的には、モノビニル芳香族系単量体、アクリル酸エステル系単量体、アクリルアミド系単量体等を用いることができる。
水酸基は、凝集剤として添加される金属イオンと結合することがないので、水酸基含有単量体を樹脂粒子に導入することにより、吸湿性を悪化させることなく樹脂粒子の分散安定性を確保することができる。
カルボン酸基と水酸基のいずれも有しない単官能単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加することもできる。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものを挙げることができる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は、水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(例えば、4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物(過酸化水素など)等を挙げることができる。更に、上記ラジカル重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合せてレドックス系開始剤とする事が可能である。
分子量を調整することを目的として、公知の連鎖移動剤を単量体混合液に添加されることができる。
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t-ブチル、チオグリコール酸-2-エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル等のチオグリコール酸エステル、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸エチル、3-メルカプトプロピオン酸プロピル、3-メルカプトプロピオン酸ブチル、3-メルカプトプロピオン酸t-ブチル、3-メルカプトプロピオン酸-2-エチルヘキシル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸デシル、2-メチル-3-メルカプトプロピオン酸オクチル等のメルカプトプロピオン酸エステル、エチレングリコールピス(チオグリコレート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)等のポリチオール、α-メチルスチレンダイマー、α-テルピネン、ターピノーレンなどの連鎖移動能を有する炭化水素化合物、四臭化炭素、四塩化炭素などのハロゲン化炭素を挙げることができる。
これらのうち、分子量制御性、再資源化への配慮、環境安定性、製造時や定着時の分解安定性、経済性、臭気等の観点から、アルキルメルカプタンを用いることが望ましい。
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルション重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
本発明では、水系媒体中で調製した樹脂粒子の分散液から、樹脂粒子を凝集、凝集、融着する工程において、金属塩を凝集剤として好ましく用いることができ、2価または3価の金属塩を凝集剤として用いることが更に好ましい。
1価の金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、2価の金属塩としては、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、3価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等を挙げることができる。
本発明のトナーに用いる着色剤粒子のカーボンブラックには、自己分散性を有する自己分散型カーボンブラックを用いることができる。
本発明における着色剤粒子の「自己分散性」とは、20℃の水に対して10〜20wt%の着色剤粒子を単独で分散させてなる分散液を撹拌なしで放置しても、着色剤粒子が分散安定性の欠如から凝集したり、その結果沈降を生じたりすることなく、水媒体中に浮遊分散し得る性質をいう。
なお、粒径測定にはマイクロトラックUPA(日機装社製)を使用した。
L1 +およびL2 +はH+、Na+又はK+を表す;
R1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す;アルキル基は炭素数1〜4、好ましくは1〜3のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。;アラルキル基は炭素数7〜10、好ましくは7〜9のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基等を挙げることができる。;アリール基は炭素数6〜18、好ましくは6〜12のアリール基であり、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
R4およびR5は水素原子、アルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す;アルキル基、アラルキル基およびアリール基はR1、R2およびR3においてと同様である;
−N+R1R2R3X-の好ましい具体例として、例えば−N+H3Cl-、−N+(CH3)3Cl-等を挙げることができる。
−COO-M1 +の好ましい具体例として、例えば−COOH、−COO-Na+等を挙げることができる。
−SO3 -M2 +の好ましい具体例として、例えば−SO3H、−SO3 -Na+等を挙げることができる。
−(CH2CH2O)mR4の好ましい具体例として、例えば、−(CH2CH2O)−H、−(CH2CH2O)2−H等を挙げることができる。
−Y1O-L2 +の好ましい具体例として、例えば、−C6H4OH、−C6H4O-Na+等を挙げることができる。
−Y2COO-M3 +の好ましい具体例として、例えば、−C6H4COOH、−C6H4COO-Na+等を挙げることができる。
−Y3SO3 -M4 +の好ましい具体例として、例えば、−C6H4SO3H、−C6H4SO3 -Na+等を挙げることができる。
−Y4(CH2CH2O)nR5の好ましい具体例として、例えば、−C6H4(CH2CH2O)−H、−C6H4(CH2CH2O)2−H等を挙げることができる。
キノン骨格含有基はp−ベンゾキノン、o−ベンゾキノン、1,4‐ナフトキノン等のキノン骨格を含有する基であり、好ましい具体例として、例えば、
両性界面活性剤には、公知のアミノ酸型両性界面活性剤やベタイン型両性界面活性剤が使用可能であるが、系中のpHに左右されず水溶性を有し、扱いが比較的容易であるベタイン型界面活性を用いることが好ましい。これに分類される両性界面活性剤としては、一例として、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどを挙げることができる。これらは以下の市販品として供給されている。
花王社製アンヒトール20BS、24B、86B、20AB、55AB、20HDなどを用いることが可能である。
本発明のトナーを構成するトナー粒子中には、離型剤が含有されていてもよい。ワックスをトナーに含有させる方法としては、ワックスの乳化分散液を凝集工程で樹脂粒子と一緒に集める方法やワックス乳化液に樹脂をシード重合させたものを用いる方法、あるいは単量体中にワックスを溶解させて水系中に乳化分散させてミニエマルジョン重合させたものを用いるなどの方法を例示することができる。更にワックスは樹脂Aを凝集させる工程で同時に凝集(即ちコア部含有)させてもよく、樹脂Bを母粒子に付着させる工程(シェル化工程)で同時にシェル化させてもよい。ワックス分散体を製造する方法は、例えば1995年3月高分子学会発行の反応工学研究界レポート−1『乳化・分散技術と高分子微粒子の粒子径制御 第三章』に記載のように、乳化・分散機器等を用いた従来公知のいずれかの方法を用いることができる。
また、このワックス分散体あるいは樹脂で被覆されたワックス分散体は1μm以下の分散粒径を有することが好ましく、より好ましくは100〜500nmの範囲である。
一般式(1):R1−(OCO−R2)n
(式中、R1 およびR2 は、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数が1〜40の炭化水素基を示し、nは1〜4の整数である。)
特定のエステル化合物の具体例としては、特開2002−116574号公報に例示された式1)〜22)に示す化合物を用いることができる。
帯電制御剤としては、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができる。カラートナー適応性(帯電制御剤自体が無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正荷電性としては四級アンモニウム塩化合物が、負荷電性としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等との金属塩、金属錯体や、ベンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等が好ましい。例えばこれらの帯電制御剤を乳化剤等を用いて乳化分散液とし、上記の着色剤やワックスと同様の手法でトナー中に含有させることができる。乳化剤(界面活性剤)としては、例えば上記のようなものが用いられる。これらの中でアニオン系及び/又はノニオン系界面活性剤が好ましい。これらを用いた場合、帯電制御剤が付着しやすく、得られるトナーの帯電性及び帯電安定性が良好となる。
さらに、本発明のトナーは、流動性調整剤として各種有機/無機微粒子を添加することが好ましい。無機の微粒子としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタム等の各種炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等のホウ化物、酸化物、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸、滑石、ベントナイト等の各種非磁性無機微粒子を単独あるいは組み合わせで用いることができる。特にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛等の無機微粒子においては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニス等の従来から使用されている疎水化処理剤、さらにはフッ素系シランカップリング剤、またはフッ素系シリコーンオイル、さらにアミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤、変性シリコーンオイル等の処理剤で公知の方法で表面処理されていることが好ましい
(トナー粒径)
本発明のトナーの粒径は、好ましくは体積平均粒径で3〜9μm、更に好ましくは3〜7μmである。この粒径は、後に詳述するトナーの製造方法において、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
(1)アパーチャー:50μm
(2)サンプル調製法:電解液〔ISOTON−II−pc(ベックマンコールター社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
本発明のトナー粒子の形状としては、平均円形度(下記式で示される円形度の平均値)が0.930〜0.990であることが好ましく、更に好ましくは0.950〜0.980とされる。
円形度=(円相当径から求めた円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
CV値=(円形度の標準偏差/平均円形度)×100
本発明のトナーは軟化点が70〜150℃、より好ましくは80〜130℃、更に好ましくは85〜120の範囲であることが好ましい。この範囲より低い軟化点の場合は保存性や連続通紙中の定着直後のタッキング性が著しく悪化するため好ましくない。また、この範囲よりも高い軟化点の場合は定着温度が高くなりすぎるため好ましくない。
フローテスター(CFT−500:島津製作所社製)を用い、測定する試料1.0gを秤量し、h1.0mm×φ1.0mmのダイを使用し、昇温速度3.0℃/min、予熱時間180秒、荷重30kg、測定温度範囲60〜140℃の条件で測定を行い、上記の試料が1/2流出したときの温度を試料の軟化点(Tm)とした。
以下に本発明のトナー製造方法について説明する。
本発明の製造プロセスは、予め水系分散媒に分散された樹脂粒子と他のトナー構成材料を凝集することでトナーを製造する。さらに具体的には、樹脂粒子を凝集/融着させて着色トナー粒子を形成する工程より製造する。
(1)樹脂粒子の分散体(ポリマーラテックス)を製造・調製する工程
(2)樹脂粒子と他のトナー構成材料粒子とを水系媒体中で
凝集/融着させてトナー粒子を得る凝集または凝集・融着工程
(3)トナー粒子の分散系(水系媒体)から当該トナー粒子を濾別し、
当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過・洗浄工程
(4)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
(5)乾燥して得られた粒子に外添剤を添加・処理する工程
から構成される。以下、各工程について説明する。
重合工程は、従来公知の乳化重合法によって行われることにより、均一でかつ小径である粒子径の樹脂粒子を得ることができる。重合法の一例としては、ラジカル重合開始剤を水性媒体(界面活性剤の水溶液)中に溶解させて加熱し、所定の温度(重合温度)になった時点でラジカル重合性単量体(単量体混合物)を添加し、通常、窒素雰囲気下において、この系を攪拌しながら加熱する。ここに、単量体混合物中には、酸性基を有するラジカル重合性単量体および塩基性基を有するラジカル重合性単量体の少なくとも1種が0.1〜20質量%の割合で含有されていることが好ましい。重合温度および重合時間は、重合反応が起こる範囲で適宜設定することができる。樹脂粒子(A)の分子量は、重合開始剤の量や反応温度、さらには連鎖移動剤の添加により調整することができる。樹脂の分子量を調節するために連鎖移動剤を使用する場合には、当該連鎖移動剤をラジカル重合性単量体と混合して添加することが好ましい。このようにして得られる樹脂粒子の粒子径は、重量平均粒径で50〜500nmの範囲にあることが好ましい。
いずれにしても、樹脂微粒子の重量平均分子量は5,000〜100,000、特に8,000〜50,000であることが望ましい。
多段重合法を用いる場合、本発明のトナーの製造方法は、以下に示す工程より構成されることが好ましい。
多段重合工程とは、オフセット発生防止したトナーを得るべく樹脂粒子の分子量分布を拡大させるために行う重合方法である。すなわち、1つの樹脂粒子において異なる分子量分布を有する相を形成するために重合反応を多段階に分けて行うものであって、得られた樹脂粒子がその粒子の中心より表層に向かって分子量勾配を形成させる様に意図して行うものである。例えば、はじめに高分子量の樹脂粒子分散液を得た後、新たに単量体と連鎖移動剤を加えることによって低分子量の表層を形成する方法が採られている。本発明においては、製造の安定性および得られるトナーの破砕強度の観点から三段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。この様な多段階重合反応によって得られたトナーでは破砕強度の観点から表層程低分子量のものが好ましい。
この工程では、樹脂粒子と他のトナー構成材料粒子とを凝集によって凝集させる(または凝集と融着を同時に進行させる)工程である。凝集については例えばコロイドに関する文献・書籍や高分子刊行会発行、室井宗一著『高分子ラテックスの化学』第6章以降に詳細に記載されており、金属カチオンなどの電解質(凝集剤・凝集剤)によって溶媒中の分散粒子の電気2重層を圧縮させ、粒子を凝集させる工程である。
凝集反応による粒径成長は、実質的にトナー粒子の大きさの粒子が得られるまで行われるが、分散液のpHと温度を調節することにより、比較的容易に制御することが可能である。pHの値は反応系のゼータ電位や等電点、また使用する凝集剤の種類・量、乳化剤の種類・量、目標とするトナーの粒径によって変わるため一義的には定義できないが、例えばアルミニウム系凝集剤を用いる場合、凝集作用を効果的に発現させるpHは2〜6であり、マグネシウム系凝集剤の場合はpH7〜12である。
また粒子の凝集速度や粒径制御については所望の粒径に到達するまで系内の粒子の凝集状態を顕微鏡や粒径測定器などでモニターしながら、反応温度や攪拌回転数を操作することで行う。そして所望の粒径に到達したときに、系の粒径成長を停止あるいは成長速度を遅くするために凝集力を低下させる操作を行ってもよい。
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。
ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法などの特に限定されるものではない。
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に単独あるいは複数種の外添剤を添加する工程である。外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。また、この外添処理の工程において複数種の外添剤を添加する場合は、1度に全ての添加剤を混合処理しても構わないし、分割して混合処理してもよい。
更に得られた粒子を目開きが30〜200μm程度のフルイによって粗大粒子を除去することが望ましい。
《着色剤分散液の調製》
(着色剤分散液K1)
自己分散型カーボンブラックCab-O-Jet300(固形分濃度15wt%)1kgに、両性界面活性剤アンヒトール24B(花王社製;有効成分26%)115gを加え、ウルトラターラックスで1時間予備混合を行い、着色剤分散液K1(固形分濃度13.5%)を得た。
以下の方法でスルホン酸塩結合型自己分散カーボンブラック分散液を得た。
カーボンブラック「リーガル330」100gとスルファニル酸20gを混合し、この混合物を70℃のウォーターバス中のビーカーに入れた。371.6gの蒸留水中に溶解した8.4gの亜硝酸ナトリウムからからなる溶液を急速に混合しながらビーカーに加え、顔料入りのスラリーを形成させた。この溶液に塩化水素酸を加え、スラリーのpHを2に調整し、マグネットスターラーにより1時間、70℃保持の状態で急速に混合し、その後70℃の乾燥器内で乾燥させた。得られた材料は乾燥したベンゼンスルホン酸ナトリウム基を有する改質された着色顔料であった。得られた試料をソックスレー抽出器中においてメタノールを用いて10時間抽出し、あらゆる反応性生物を除去し、そして再乾燥した。この表面改質顔料150gにイオン交換水850gとアンヒトール24B115gを加え、攪拌させることにより着色剤分散液2を得た。
界面活性剤をアンヒトール86Bに変えた以外は、着色剤分散液K1の場合と同様の方法を用いて着色剤分散液K3を得た。
アンヒトール24B 115g、イオン交換水850gを攪拌溶解し、この溶液中に攪拌しながらカーボンブラック「リーガル330」150gを徐々に加え、次いで乳化機「クレアミックス」(エムテクニック社製)により高速せん断攪拌処理することにより着色剤分散液K4を得た。
界面活性剤をSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)30gに変更した以外は、着色剤分散液K1の場合と同様の方法を用いて着色剤分散液K5を得た。
界面活性剤をポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホン酸ナトリウム30gに変更した以外は、着色剤分散液K1の場合と同様の方法を用いて着色剤分散液K6を得た。
(ラテックス1HMLの調整)
(分散媒1)
ドデシル硫酸ナトリウム 4.05g
イオン交換水 2500.00g
(1)核粒子の調整(第一段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、上記分散媒1を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温させた。
(単量体溶液1)
スチレン 568.00g
n−ブチルアクリレート 164.00g
メタクリル酸 68.00g
n−オクチルメルカプタン 16.51g
この活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム)9.62gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、上記の単量体溶液を90分かけて滴下し、この系を80℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、ラテックスを調製した。これを「ラテックス(1H)」とする。ラテックス(1H)の重量平均粒径は68nmであった。
(単量体溶液2)
スチレン 123.81g
n−ブチルアクリレート 39.51g
メタクリル酸 12.29g
n−オクチルメルカプタン 0.72g
WEP−5 93.80g
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、上記の単量体溶液2を仕込み、80℃に加熱し溶解させて単量体溶液を調整した。
(分散媒2)
C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na 0.60g
イオン交換水 2700.00g
一方、上記分散媒2を98℃に加熱し、この分散媒に、核粒子の分散媒である前記ラテックス(1H)を固形分換算で32g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、単量体溶液2を8時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調整した。
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(過硫酸カリウム)6.12gをイオン交換水250mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、ラテックス(ラテックス(1H)粒子の表面が被膜された構造の複合樹脂粒子の分散液)を得た。これを「ラテックス(1HM)」をする。
上記の様にして得られたラテックス(1HM)に、重合開始剤(KPS)8.8gをイオン交換水350mlに溶解させた開始剤溶液を添加した。次いで82℃の温度条件下で、以下の表1の単量体溶液3−1にn−オクチルメルカプタンを1.0モル%加え均一に攪拌したものを、一時間かけてラテックス(1HM)に滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却しラテックス(ラテックス(1H)からなる中心部と、第二段重合樹脂からなる中間層と、第三段重合樹脂からなる外層とを有し、前記第二段重合樹脂層にWEP−5が含有されている複合樹脂の分散液)を得た。このラテックスを「ラテックス(1HML)」とする。ここで、単量体溶液3−1中の水酸基含有単量体には、メタクリル酸ヒドロキシエチルを用いた。
ラテックス(1HML)を250.0g(固形分換算)と、イオン交換水900gと、着色剤分散液K1 150gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調製した後、この溶液に5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.0に調製した。
疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)を1.0質量%となる割合で添加するとともに、疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)を1.2質量%となる割合でそれぞれ添加し、ヘンシェルミキサーにより混合することにより、トナー1を製造した。なお、この着色粒子について、疎水性シリカおよび疎水性酸化チタンの添加によっては、その形状および粒径は変化しなかった。
第三段重合において、単量体溶液3−1に代えて単量体溶液3−2を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
第三段重合において、単量体溶液3−1に代えて単量体溶液3−3を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
第三段重合において、単量体溶液3−1に代えて単量体溶液3−4を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
着色剤分散液K1に代えて着色剤分散液K2を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
着色剤分散液K1に代えて着色剤分散液K3を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
第三段重合において、単量体溶液3−1に代えて単量体溶液3−5を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
第三段重合において、単量体溶液3−1に代えて単量体溶液3−6を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
第三段重合において、単量体溶液3−1に代えて単量体溶液3−7を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
着色剤分散液K1に代えて着色剤分散液K4を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
着色剤分散液K1に代えて着色剤分散液K5を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
着色剤分散液K1に代えて着色剤分散液K6を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりトナーを製造した。
<酸価>
(酸価の測定方法)
10mgの試料をトルエン50mlに溶解し、0.1μmのメンブランフィルターで着色剤を除去する。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用いて、予め標定されたN/10水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、N/10水酸化カリウム/アルコール溶液の消費量から算出した値である。
水酸基価は、秤量された試料を無水酢酸で処理し、得られたアセチル化合物を加水分解し、遊離する酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムmgで表した。
試料を予め真空乾燥器にて24時間乾燥後、高温高湿(HH)環境(30℃/80%)に24時間調湿した後、カールフィッシャー水分計にて水分量を測定した。
評価マシンは、magicolor 2300 DL(ミノルタキューエムエス社製)の定着器を介さず印字画像を出力できるように改造した改造機を用い、以下の評価を行った。
パソコンに接続された上記マシンを用い、帯状の未定着の黒画像を段階的に濃度を振ってCF80ペーパ(ミノルタ社製)に出力する。得られた黒画像の一部を吸引除去し、除去した面積と、除去したトナー量から各画像の付着量を算出する。この画像を、magicolor 2300 DLの定着器部分のみで構成された定着テスター(設定温度180℃)に通紙し、得られた定着画像の画像濃度を濃度計(マクベス社製)にて測定する。各付着量の画像濃度から4.5g/m2の画像濃度を算出した。
帯電性は以下のように評価した。
◎:画像濃度が1.4以上である。
○:画像濃度が1.3以上である。
×:画像濃度が1.3未満である。
表2の結果から明らかなように、酸価が10mg・KOH/g以下、かつ水酸基価が10mg・KOH/g以上である樹脂粒子と、自己分散型カーボンブラックを用いた本発明のトナーは、高温高湿環境での吸湿性が1.0%で、かつ高い画像濃度を有していた。さらに、実機試験においても優れた帯電性を有しており実用上問題はなかった。一方、水酸基含有単量体を含まない場合、吸湿性が悪化した(比較例1)。また、カルボン酸基含有単量体を含まない場合、吸湿性を低くすることはできるが、画像濃度が低下した(比較例2)。また、自己分散型カーボンブラックを用いない場合(比較例4)や、両性界面活性剤を用いない場合(比較例5,6)、画質濃度が劣っていた。
Claims (9)
- 酸価が10mg・KOH/g以下、かつ水酸基価が10mg・KOH/g以上である樹脂粒子と、表面に化学的に結合した極性基を有する自己分散型カーボンブラックから成る着色剤粒子とを水系媒体中で凝集及び融着して成るトナー。
- 上記樹脂粒子が、水酸基含有単量体を構成成分として含む請求項1記載のトナー。
- 上記樹脂粒子が、酸性単量体を構成成分として含む請求項2記載のトナー。
- 上記トナー粒子の体積平均粒径が3〜9μmであって、上記トナーの紙上への付着量が4.5g/m2の時、画像濃度が1.3以上である請求項1から3のいずれか一つに記載のトナー。
- 上記樹脂粒子が、コア層と、該コア層を覆う1層以上の被覆層とから成り、少なくとも該被覆層の最外層を構成する樹脂が上記の酸価及び水酸基価を有する請求項1から4のいずれか一つに記載のトナー。
- 酸価が10mg・KOH/g以下、かつ水酸基価が10mg・KOH/g以上である樹脂粒子と、表面に化学的に結合した極性基を有する自己分散型カーボンブラックを両性界面活性剤で分散して成る着色剤粒子とを水系媒体中で凝集及び融着するトナーの製造方法。
- 上記樹脂粒子が、水酸基含有単量体を構成成分として含む請求項6記載の製造方法。
- 上記樹脂粒子が、酸性単量体を構成成分として含む請求項7記載のトナー。
- 上記両性界面活性剤にベタイン型両性界面活性剤を用いる請求項6から8のいずれか一つに記載の製造方法。
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