JP2005091200A - 放射線像変換パネルとその製造方法及びそれを用いた放射線検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、バインダー、超高温工程がなく、5〜40%の空隙率を有する放射線像変換パネルの製造方法、高感度でかつ高鮮鋭度の放射線像変換パネル及びそれを用いた放射線検出装置を提供することである。
【解決手段】 放射線を可視光に変換する蛍光体層を有する放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体層は、0.1〜1000Paの真空度で蛍光体粒子を基板に高速衝突させて堆積する成膜法を用いて形成することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、医療診断機器に用いられる新規の放射線像変換パネルとその製造方法及びそれを用いた放射線検出装置に関するものである。
従来、放射線写真法に代わる有効な診断手段として、特開昭55−12145号などに記載の輝尽性蛍光体を用いる放射線像記録再生方法、いわゆるCRシステムが知られている。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネルを利用するもので、被写体を透過した、あるいは被検体から発せられた放射線を輝尽性蛍光体に吸収させ、可視光線、紫外線などの電磁波(励起光ともいう)で時系列的に輝尽性蛍光体を励起して、蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光ともいう)として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号とし、得られた電気信号に基づいて被写体あるいは被検体の放射線画像を可視画像として再生するものである。読み取り後の変換パネルは、残存画像の消去が行われ、次の撮影に供される。
この方法によれば、放射線写真フィルムと増感紙とを組み合わせて用いる放射線写真法に比して、はるかに少ない被爆線量で情報量豊富な放射線画像が得られる利点がある。又、放射線写真法では撮影毎にフィルムを消費するのに対して、放射線変換パネルは繰り返し使用されるので、資源保護や経済効率の面から有利である。
放射線変換パネルは、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層、又は自己支持性の輝尽性蛍光体層のみからなり、輝尽性蛍光体層は、通常、輝尽性蛍光体とこれを分散支持する結合剤からなるものと、蒸着法や焼結法によって形成される輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものがある。又、該凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。更に、輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜からなる保護膜が設けられる。
更に、最近ではX線蛍光体層と2次元光検出器を用いたフラットパネル型のデジタル放射線検出装置(FPD)が普及しつつある。これは、画像特性が良好であること、画像の読み取り速度が高速であること等の利点があり、盛んに研究開発が行われている。
従来のCRシステムに用いられる輝尽性蛍光体プレートやFPDの蛍光体層は、粒径0.1〜20μm程度の微粉末からなる蛍光体粉、その蛍光体粉を結合させるための樹脂バインダー、これらの隙間に存在する空隙から構成されたシート状の形態からなっている。
しかしながら、従来の構成では、X線を照射された蛍光体から放出された光の一部が樹脂バインダーで吸収されることによって蛍光体層の発光量が低下するという問題があった。この課題に対し、樹脂バインダーが存在しない蛍光体膜を用いた放射線像変換パネルとして、気相成長法(気相堆積法)によって支持体上に、細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、このような気相成長法の適用が困難な蛍光体材料が多数あり、製造装置は高真空を必要とするため高価であるという課題があった。
一方、樹脂バインダーを用いずに高充填率の蛍光体膜を作製する方法として、ガスデポジション法による成膜法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、該公報に記載の製造条件では、得られる蛍光体膜の品質は十分なものでは無かった。
特開平2−58000号公報 特開2003−215256号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、バインダー、超高温工程がなく、5〜40%の空隙率を有する放射線像変換パネルの製造方法、高感度でかつ高鮮鋭度の放射線像変換パネル及びそれを用いた放射線検出装置を提供することである。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(請求項1)
放射線を可視光に変換する蛍光体層を有する放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体層は、0.1〜1000Paの真空度で蛍光体粒子を基板に高速衝突させて堆積する成膜法を用いて形成することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
(請求項2)
放射線を可視光に変換する蛍光体層を有する放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体層は、蛍光体粒子を加速噴射するためのキャリアガスとして窒素ガスを用いて基板に高速衝突し堆積する成膜法を用いて形成することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
(請求項3)
放射線を可視光に変換する蛍光体層を有する放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体層は、蛍光体粒子を−100℃以上、200℃以下に保持した基板に高速衝突させて堆積する成膜法を用いて形成することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
(請求項4)
前記蛍光体層を構成する蛍光体粒子の平均粒径が、0.1〜2.0μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
(請求項5)
前記蛍光体粒子を加速噴射するときのキャリアガスの流速が、100〜400m/secであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
(請求項6)
請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法で製造され、空隙率が5〜40%であることを特徴とする放射線像変換パネル。
(請求項7)
前記蛍光体粒子が、輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項6に記載の放射線像変換パネル。
(請求項8)
請求項6に記載の放射線像変換パネルと複数の光電変換素子とから構成され、該放射線像変換パネルで変換された光を検出する光検出器を有することを特徴とする放射線検出装置。
本発明によれば、バインダー、超高温工程を用いずに、5〜40%の空隙率を形成する放射線像変換パネルの製造方法、高感度でかつ高鮮鋭度の放射線像変換パネル及びそれを用いた放射線検出装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の放射線像変換パネルの製造方法では、蛍光体層を0.1〜1000Paの真空度で蛍光体粒子を基板に高速衝突させて堆積する成膜法を用いて形成すること、蛍光体粒子を加速噴射するためのキャリアガスとして窒素ガスを用いて基板に高速衝突し堆積する成膜法を用いて形成すること、あるいは蛍光体粒子を−100℃以上、200℃以下に保持した基板に高速衝突させて堆積する成膜法を用いて形成することにより、高感度でかつ高鮮鋭度の放射線像変換パネルが得られる。
以下、本発明の放射線像変換パネルの製造方法の詳細について説明する。
〔製造装置〕
本発明の放射線像変換パネルの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)で用いることのできる製造装置の実施形態を例示する。
エアロゾル・デポジション法による成膜装置としては、「応用物理」誌68巻1号44ページ、特開2003−215256号公報等に開示されている。
本発明で用いることのできる製造装置は、蛍光体膜形成用基板を保持するホルダー、ホルダーをXYZθで3次元に作動させるステージ、基板に蛍光体原料を噴出させる細い開口を備えたノズル、ノズルをエアロゾル化室とつなぐ配管を備えたチャンバー、更に、搬送ガスを貯留する高圧ガスボンベ、蛍光体粒子原料とキャリアガスが攪拌・混合されるエアロゾル化室、およびこれらをつなぐ配管によって構成される。ステージの裏面には、ペルチェ素子による温度制御機構が設置され、基板を最適な温度に保つことができる。
更に、エアロゾル化室内の蛍光体粒子原料は、以下のような手順によって蛍光体と膜形成基板に形成される。
エアロゾル化室内に充填された、好ましくは0.1〜2μmの平均粒径を有する蛍光体原料は、キャリアガスを貯留する高圧ガスボンベから配管を通ってエアロゾル化室に導入されキャリアガスと共に、振動、撹拌されてエアロゾル化される。エアロゾル化した蛍光体原料は配管を通り、チャンバー内の細い開口を備えたノズルから蛍光体膜形成用基板にキャリアガスとともに吹き付けられ塗膜を形成する。チャンバーは、真空ポンプ等で排気され、チャンバー内の真空度は必要に応じて調整されている。本発明では、真空度は0.1〜1000Paとすることが1つの特徴である。
更に、基板のホルダーはXYZθステージにより3次元に動くことができるため、基板の所定の部分に必要な厚みの蛍光体層が形成できる。基板に形成された蛍光体層上には、必要に応じて蛍光体保護層を設ける。
エアロゾル化された原料粒子は、好ましくは流速100〜400m/secのキャリアガスによって衝突することによって、基板上に堆積することができる。キャリアガスにより衝突した粒子は、互いに衝突の衝撃によって接合し膜を形成する。
本発明の製造方法において、蛍光体粒子を加速・噴出するためのキャリアガスとしては、窒素ガスが好ましい。He等の希ガス類は、粒子衝突時に放電が起きやすく、膜内へ欠陥が導入される場合があり好ましく無い。欠陥が導入された場合、膜の透明性が劣化し、放射線から変換された光が取り出せず検出効率が悪化する。
本発明の製造方法においては、蛍光体粒子を衝突させる基板の温度は、−100℃以上、200℃以下に保持することが1つの特徴である。基板温度を300℃以上に加熱した時には膜が白濁化し、放射線から変換された光が取り出せず検出効率が悪化する。
放射線を効率よく吸収するための蛍光体層の厚みとしては、蛍光体の種類により異なるが、概略50〜500μmの範囲の厚みが好ましい。
また、支持基板に蛍光体層を形成後に、熱処理を行うことで膜の緻密度を調整することもできる。
(フラットパネル型放射線ディテクタ)
本発明の製造方法によって構成された放射線検出器の一実施形態として、フラットパネル型の放射線ディテクタ(FPD)について例示する。
ガラス基板等からなる絶縁性基板上に非晶質シリコンより成る半導体薄膜を用いたフォトダイオードとTFT(薄膜トランジスタ)よりなる光電変換素子が複数2次元に形成され、その表面に半導体保護層が形成され、全体として光検出器が構成される。ついで、上記光検出器に、蛍光体層を形成してFPDが構成される。
蛍光体層をFPDに設ける方法としては、支持基板に形成された蛍光体層、すなわち放射線像変換パネルを光検出器に貼り合わせればよく、必要に応じて接着剤を使用することができる。支持基板が不透明な場合は、蛍光体層と光検出器と接するように形成し、支持基板が光学的に透明な場合は、支持基板を光検出器と接するように形成することができる。
また、光検出器が支持基板を兼ねても良く、光検出器の半導体保護層に、直接、蛍光体層を形成しても良い。また必要に応じて、光検出器と接しない面の蛍光体層には光反射層が配置されてもよい。
本実施形態において、光検出器の詳細な構成、材料、製法は、従来公知の技術を用いることができるので、詳しい説明は省略する。特開2003−57353号公報に記載される構成、材料は、安価で軽量のFPDが得られるため好ましい。
上述の蛍光体粉体としては、CaWO4、Gd22S:Tb、BaSO4:Pb等の従来知られている蛍光体材料を使用できる。(Gd,M,Eu)23の一般式で示される蛍光体粒子は、特に発光効率が高いので好ましい。ここで、希土類元素MとしてイットリウムY、ニオブNd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、イッテルビウムYbの少なくとも一つ以上の元素を含むものとする。これらの元素は放射線吸収率が高いので、粒状性が更に良好な放射線画像を得ることができる。また、ガドリニウムGdを40〜95質量%、希土類元素Mを5〜40質量%、ユウロピウムEuを2〜20質量%含有させることで、放射線吸収率および発光効率を高くできる。特に、ガドリニウムGdは70〜90質量%が好ましく、ユウロピウムEuは5〜10質量%が好ましい。
上述の蛍光体の支持基板としては、特に材料に限定されることはないが、一般的な基板、例えば、樹脂基板、セラミックス、石英ガラス等のほか、チタン、ステンレス等の金属基板を使用できる。
接着層、蛍光体保護層、半導体保護層は、これらの層の機能が発揮できる厚さであればできるだけ薄い方が、輝度、鮮鋭度を高めることができるために好ましく、概略20μm以下が好ましい。
光反射層としては、一般的な光反射性材料を形成することにより蛍光体層の輝度を向上できる。これらの材料としては、スパッター、蒸着等の従来知られている成膜方法により作製される金属膜、例えば、チタン、ニッケル、白金、パラジウム等の単一金属又はそれらの合金が挙げられる。また、例えば、カーボン粉体をプレス成形し板状としたもの等により光吸収層を形成することで蛍光体層の鮮鋭度を向上できる。反射層、吸収層の形成はX線撮影の目的により適宜選択すればよい。
更に、必要に応じて蛍光体の保護層として光透過性の高い樹脂フィルム、例えば、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム等もしくはガラス等の無機基板等を蛍光体層に接着剤で貼り合わせることも可能である。以上のように蛍光体粒子が焼結により一体化された蛍光体層を含むシンチレータを光検出器に接着層を介して接合することにより、放射線検出装置を作製できる。
(輝尽性蛍光体プレート)
本発明の製造方法によって構成された放射線検出器の別の実施形態として、輝尽性蛍光体プレートについて例示する。
この態様は、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層からなるり、更に輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜からなる保護膜が設けられる。
輝尽性蛍光体としては、通常400〜900nmの範囲にある励起光によって波長300〜500nmの範囲にある輝尽発光を示すものが一般的に利用され、特開昭55−12145号、同55−160078号、同56−74175号、同56−116777号、同57−23673号、同57−23675号、同58−206678号、同59−27289号、同59−27980号、同59−56479号、同59−56480号等に記載の希土類元素賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭59−75200号、同60−84381号、同60−106752号、同60−166379号、同60−221483号、同60−228592号、同60−228593号、同61−23679号、同61−120882号、同61−120883号、同61−120885号、同61−235486号、同61−235487号等に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭55−12144号に記載の希土類元素賦活オキシハライド蛍光体;特開昭58−69281号に記載のセリウム賦活3価金属オキシハライド蛍光体;特開昭60−70484号に記載のビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;特開昭60−141783号、同60−157100号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−157099号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体;特開昭60−217354号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−21173号、同61−21182号に記載のセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−40390号に記載のセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム賦活ハロゲン化セリウム・ルビジウム蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体、等が挙げられ、中でも、沃素を含有する2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、沃素を含有する希土類元素賦活オキシハロゲン化物蛍光体及び沃素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は高輝度の輝尽発光を示す。
特に好ましい輝尽性蛍光体の組成としては、
一般式Ba1-x(M2xFBry1-y:aM1,bLn,cO
〔式中、M1:Li、Na、K、Rb、Csからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属、M2:Be、Mg、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属、Ln:Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素、x、y、a、b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3、0<y≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2,0<c≦0.1の範囲の数値を表す。〕
または、
一般式M1X・aM2X′2・bM3X″3:eA
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″は各々F、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲンで原子であり、Aは、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e≦0.2の範囲の数値を表す。〕
である。
輝尽性蛍光体プレートに用いられる支持体としては、各種高分子材料、ガラス、金属等が用いられる。特に情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシートあるいはウェブに加工できるものが好適であり、この点からいえばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム、鉄、銅、クロム等の金属シートあるいは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。また、これら支持体の膜厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としても良い。更に、これら支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けても良い。
輝尽性蛍光体プレートに設ける保護層としては、ポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム等が使用できるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等の延伸加工されたフィルムが、透明性、強さの面で保護層として好ましく、更には、これらのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した蒸着フィルムが防湿性の面からより好ましい。
当該保護層で用いるフィルムは、必要とされる防湿性に合わせて、樹脂フィルムや樹脂フィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができ、蛍光体の吸湿劣化防止を考慮して、透湿度は少なくとも50g/m2・day以下であることが好ましい。樹脂フィルムの積層方法としては、特に制限はなく、公知のいずれの方法を用いても良い。
又、積層された樹脂フィルム間に励起光吸収層を設けることによって、励起光吸収層が物理的な衝撃や化学的な変質から保護され安定したプレート性能が長期間維持でき好ましい。又、励起光吸収層は複数箇所設けてもよいし、積層する為の接着剤層に色剤を含有して、励起光吸収層としても良い。
保護層は、蛍光体層に接着層を介して密着していても良いが、蛍光体面を被覆するように設けられた構造(以下、封止又は封止構造ともいう)であることがより好ましい。蛍光体面を封止するに当たっては、公知のいずれの方法でもよいが、防湿性保護フィルムの蛍光体面に接する側の最外層樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることは、防湿性保護フィルムが融着可能となり放射線画像変換パネルの封止作業が効率化される点で、好ましい形態の1つである。尚、上記熱融着性を有する樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことであり、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
更には、輝尽性蛍光体プレートの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記パネルの周縁より外側にある領域で、上下の防湿性保護フィルムをインパルスシーラー等で加熱、融着して封止構造とすることで、前記プレートの外周部からの水分進入も阻止でき好ましい。又、支持体面側の防湿性保護フィルムを1層以上のアルミフィルムをラミネートしてなる積層フィルムとすることで、より確実に水分の進入を低減でき、又この封止方法は作業的にも容易であり好ましい。上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、プレートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
防湿性保護フィルムの蛍光体面が接する側の熱融着性を有する最外層の樹脂層と蛍光体面は、接着していても接着していなくてもかまわない。ここでいう接着していない状態とは、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムとが点接触していても、光学的、力学的には殆ど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。
以上、本発明で作製できる放射線像変換パネルの利用例として、FPDと輝尽性蛍光体プレートについて示したが、本発明はこれらに限定されるものでは無い。他の利用例としては、従来の蛍光増感紙と放射線写真フィルムを組み合わせた所謂スクリーンフィルムシステムに用いる蛍光増感紙等が挙げられる。
本発明に係る蛍光体層は、蛍光体粒子と基板間、及び蛍光体粒子間の結合が粒子の衝突により行われているために、蛍光体層の形成に、従来のような樹脂バインダーが必要なく、従来は樹脂バインダーにより蛍光体から発光された光の一部を吸収されていたが、その吸収を0にすることができるため、蛍光体層の輝度を増加することができる。
上記蛍光体層には、体積にして好ましくは5〜40%の空隙が多数存在するために蛍光体から発光した光は蛍光体層と障害物(この場合は、主に空隙)界面において反射するため、広がりの少ない光として光検出器に達することができ、非常に高い鮮鋭度を有する。
本発明においては、従来のような超高温処理を伴わないため、多様な基板を選択することが可能で、蛍光体粒子組成の変化が少なく高発光量の蛍光体層を得ることができる。また工程が少なく、膜厚の安定した膜が得られる。
また、成膜時に、所望のパターンを構成したマスクを支持基板上に設けてから、粒子を基板に衝突させることにより、あらゆる任意のパターンの塗膜を形成することが可能になる。
上記蛍光体の焼結した粒子の粒径を、0.1〜2.0μmとすることにより、さらに光散乱が多くなり鮮鋭度が向上し好ましい。また、大粒径粒子を含まないことにより、成膜時にサンドブラストの様な効果で膜が破壊されることを防止することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
以下、フラットパネル型のデジタル放射線検出装置(FPD)を用いた実施例を説明する。
《放射線検出装置の作製》
(放射線検出装置1の作製:本発明)
厚さ1.0mmの無アルカリガラス基板上の非晶質シリコンから成る半導体薄膜上に、フォトダイオードとTFTからなる光電変換素子を形成し、その上にSiNxよりなる保護膜を形成して光検出器を作製した。
粒度分布0.1〜1μm、平均粒径0.5μmの(Y,Gd,Eu)23の蛍光体粒子をエアロゾル化室に充填し、キャリアガスとして流速200m/sのN2ガスを用い、チャンバーの真空度は100Pa、基板温度を20℃として、厚さ1mmのステンレス製支持基板に板吹きつけて200μmの成膜を行った。作製した蛍光体層の充填率は85%となり、従来の蛍光体粒子の集合体からなる蛍光体層の充填率約60%に比べて高い充填率で、かつ従来の焼結体の蛍光体層の充填率95%よりも低い充填率の蛍光体層であることを確認できた。更に、蛍光体層及び基板と光検出器を、アクリル系接着剤(協立化学社製;商品名ワールドロックNO.XSG−5)により接合することで放射線検出装置1を作製した。
(放射線検出装置2の作製:比較例)
上記放射線検出装置1の作製と同様にして光検出器を作製した。
次いで、粒度分布0.5〜5μm、平均粒径2μmの(Y,Gd,Eu)23の蛍光体粒子をエアロゾル化室に充填し、キャリアガスとして流速50m/sのHeガスを用い、チャンバーの真空度は0.02Paとして、厚さ1mmのステンレス製支持基板に吹きつけて200μmの成膜を試みた。得られた膜は表面のザラつきが目視で確認でき、充填率約35%と膜密度の低い膜であった。更に、蛍光体層及び基板と光検出器をアクリル系接着剤(協立化学社製;商品名ワールドロックNO.XSG−5)により接合することで放射線検出装置2を作製した。
(放射線検出装置3の作製:比較例)
上記放射線検出装置1の作製と同様にして光検出器を作製した。また、蛍光体塗布液Aとして、平均粒径3μmの(Y,Gd,Eu)23を100質量部、エチルセルロースを10質量部、テルピネオールを50質量部、キシレンを30質量部、蛍光体塗布液Bとして、平均粒径7μmの(Y,Gd,Eu)23を100質量部、エチルセルロースを10質量部、テルピネオールを50質量部、キシレンを30質量部、それぞれをサンドミルで混合、分散し、蛍光体塗布液A、Bを調製した。更に、厚さ0.3mmの酸化チタン含有ポリエチレンテレフタレート製支持基板に、ナイフコーター法を用い、蛍光体塗布液Aを用いて、厚さ30μmの蛍光体層を形成した。60℃で6時間乾燥した後、更に、蛍光体塗布液Bを用いて、厚さ170μmの蛍光体層を形成し、計200μmの蛍光体層を形成した。更に、蛍光体層の上に6μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートし、更に、光検出器とを放射線検出装置1と同様に接合することで、放射線検出装置3を作製した。
《放射線検出装置の評価》
各放射線検出装置について、感度及び鮮鋭度を測定し、得られた結果を表1に示す。
感度測定は、厚さ100mmの水ファントムを通して、管電圧100kVのX線で撮影した時の値であり、比較例である放射線検出装置3の感度を1とした相対感度で表示した。また、鮮鋭度は空間周波数2本/mmにおけるMTF値を求め、比較例である放射線検出装置3のMTF値を1とした相対値で表示した。
Figure 2005091200
表1から明らかなように、本発明の製造方法で作製した放射線像変換パネルを用いた放射線検出装置1は、比較例に対し、感度、鮮鋭度共に優れていることが分かる。
実施例2
次に、輝尽性蛍光体プレートの実施例について説明する。
《蛍光体層の形成》
(蛍光体層1の形成:本発明)
粒度分布0.1〜1μm、平均粒径0.5μmのBaFI:Eu輝尽性蛍光体粒子をエアロゾル化室に充填し、キャリアガスとして流速200m/sのN2ガスを用い、チャンバーの真空度は100Pa、基板温度を20℃として、厚さ1mmのステンレス製支持基板に板吹きつけて200μmの成膜を行った。作製した蛍光体層1の充填率は85%となり、従来の蛍光体粒子の集合体からなる蛍光体層の充填率約60%に比べて高い充填率で、かつ従来の焼結体の蛍光体層の充填率95%よりも低い充填率の蛍光体層であることを確認できた。
(蛍光体層2の形成:比較例)
粒度分布0.5〜5μm、平均粒径2μmのBaFI:Eu輝尽性蛍光体粒子をエアロゾル化室に充填し、キャリアガスとして流速50m/sのHeガスを用い、チャンバーの真空度は0.02Paとして、厚さ1mmのステンレス製支持基板に吹きつけて200μmの成膜を試みた。得られた蛍光体層2は表面のザラつきが目視で確認でき、充填率約35%と膜密度の低い膜であった。
(蛍光体層3の形成:比較例)
粒度分布1〜10μm、平均粒径5μmのBaFI:Eu輝尽性蛍光体粒子の100質量部と、ポリエステル樹脂(東洋紡バイロン530)の4質量部とを、メチルエチルケトンとトルエン、シクロヘキサノンの混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散し、固形分77%の塗布液を調製した。
この塗布液をドクターブレードを用いて、下引き層を設けた支持体上に塗布した後、100℃で15分間乾燥させて、200μmの蛍光体層3を形成させた。
《輝尽性蛍光体プレートの作製》
上記作製した蛍光体層1〜3を有する各試料を、それぞれ以下のような保護フィルムにより封止して、輝尽性蛍光体プレート1〜3を作製した。
(防湿性保護フィルムの作製と封止)
下記に示す方法で、防湿性保護フィルムを作製した。下記構成で表されるアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレート樹脂層を含む積層保護フィルムAを、蛍光体シートの蛍光体層側にかぶせ、減圧下で周縁部をインパルスシーラーを用いて融着、封止した。又、蛍光体シートの支持体面側の保護フィルムとしては、キャステングポリプロピレン(CPP)30μm、アルミフィルム9μm、ポリエチレンテレフタレート(PET)188μmの構成よりなるドライラミネートフィルムを用いた。又、接着剤層の厚みは1.5μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した。
積層保護フィルムA:VMPET12///VMPET12///PET///CPP20
積層保護フィルムAにおいて、VMPETは、アルミナ蒸着したポリエチレンテレフタレート(市販品:東洋メタライジング社製)を表し、PETはポリエチレンテレフタレート、CPPはキャステングポリプロピレンを表す。又、上記「///」は、ドライラミネーション接着層における2液反応型のウレタン系接着剤層の厚みが3.0μmであることを表し、各樹脂フィルムの後に表示した数字は、各フィルムの膜厚(μm)を表す。
《輝尽性蛍光体プレートの評価》
以上に様にして作製した各輝尽性蛍光体プレートについて、下記のようにして感度及び鮮鋭度を測定し、得られた結果を表2に示す。
感度の測定は、輝尽性蛍光体プレートに管電圧80kVpのX線を照射した後、該プレートをHe−Neレーザー光(633nm)で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光し、その強度を測定することで行った。なお感度は、輝尽性蛍光体プレート3の感度を1とした場合の相対感度で表示した。
また鮮鋭性の評価は、輝尽性蛍光体プレートに鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を照射した後、該パネルをHe−Neレーザー光で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を上記と同じ受光器で受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換して磁気テープに記録し、磁気テープをコンピューターで分析して磁気テープに記録されているX線像の変調伝達関数(MTF)を調べた。鮮鋭度は、空間周波数2サイクル/mmにおけるMTF値を求め、輝尽性蛍光体プレート3のMTF値を1とした相対値で表示した。
Figure 2005091200
表2より明らかな様に、本発明の製造方法で作製した蛍光体層を有する輝尽性蛍光体プレートは、比較例に対し、感度、鮮鋭度共に優れていることが分かる。

Claims (8)

  1. 放射線を可視光に変換する蛍光体層を有する放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体層は、0.1〜1000Paの真空度で蛍光体粒子を基板に高速衝突させて堆積する成膜法を用いて形成することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
  2. 放射線を可視光に変換する蛍光体層を有する放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体層は、蛍光体粒子を加速噴射するためのキャリアガスとして窒素ガスを用いて基板に高速衝突し堆積する成膜法を用いて形成することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
  3. 放射線を可視光に変換する蛍光体層を有する放射線像変換パネルの製造方法において、該蛍光体層は、蛍光体粒子を−100℃以上、200℃以下に保持した基板に高速衝突させて堆積する成膜法を用いて形成することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
  4. 前記蛍光体層を構成する蛍光体粒子の平均粒径が、0.1〜2.0μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
  5. 前記蛍光体粒子を加速噴射するときのキャリアガスの流速が、100〜400m/secであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法で製造され、空隙率が5〜40%であることを特徴とする放射線像変換パネル。
  7. 前記蛍光体粒子が、輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項6に記載の放射線像変換パネル。
  8. 請求項6に記載の放射線像変換パネルと複数の光電変換素子とから構成され、該放射線像変換パネルで変換された光を検出する光検出器を有することを特徴とする放射線検出装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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