JP2005088835A - 船舶 - Google Patents

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弘彦 大薮
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Abstract

【課題】荷揚げ時等においてバラスト水を海に排出しても海洋生態系の破壊を防ぐことが可能な船舶を提供する。
【解決手段】バラストタンクを有する船本体と、船本体に配置され、バラストタンクへの海水の供給・排出をなすため海水供給・排出系統と、海水供給・排出系統に接続されたバラストポンプと、海水供給・排出系統に配置された濾過装置とを具備し、前記濾過装置は、両端が封じられた筒状の筐体と、この筐体内に回転可能に配置され、両端が封じられた目開きが20μm以下の濾過ドラムと、筐体に取付けられた海水導入部と、筐体に取付けられ、濾過ドラム内の濾過海水を外部に流出させるための濾過海水導出部と、筐体に取付けられ、筐体内を前記濾過ドラムにより区画された濾過室と連通するドレイン部と、濾過室内に配置され、濾過ドラムの濾過面に高圧水を噴射するための高圧噴射部材とを備える。
【選択図】 図2

Description

本発明は、船舶に関し、詳しくは例えばバラストタンク内に供給されるバラスト水(海水)を清浄化するための濾過装置を備えた船舶に係わる。
船舶、例えば貨物用船舶が積地に向けて空船航海する場合、またはある港で貨物の一部を揚荷した後に次の寄港地に向かう場合には、プロペラ効率、舵効確保、および荒天時における船首の水中からの浮揚を回避するために、船舶の喫水を十分に保持すること、つまり安全運転を満たすこと必要である。このようなことから、船舶のバランスを確保するために、船内にバラストタンクが設けられ、ここにバラスト水(通常海水)を積載している。
また、寄港時にも、港、荷役バースの水深と船舶の喫水を調整する、また荷役敷設の許容可動範囲(高さ等)内に船舶の水面上の高さを調整するためにバラスト水の量を増減することが必要である。
前述のようにバラスト水は喫水を増加させ、トリムを変化させ、復原性や応力負荷を許容範囲内に維持し、かつ荷役を効率的に行うために一般の船舶にとって必要不可欠なものである。
しかしながら、バラスト水には多種多様の水生生物がヒッチハイカーとして混入され、船舶のバラスト水の漲排水に伴い、これら異国種が越境移動・侵入・定着する。とりわけ、近年の船舶の大型化に伴い、1回の船舶の航海によるバラスト水の漲排水量が飛躍的に増大する傾向にある。その結果、生態系への影響等が懸念されている。
1992年に国連環境開発会議は、国連の国際海事機関(IMO)に対し、バラスト水の排出規制採択の審議を要請している。また、国連海洋法条約および生物の多様に関する条約でも、生息地または種を脅かす外来種の導入防止等についても規定されている。
海洋油汚染については、日時の経過とともに環境が回復するものの、海洋生態系が破壊された場合にはその回復が極めて困難であり、アメリカ、オーストラリアのように重要な地球規模の海洋汚染問題として捕らえる国も少なくない。
前述した問題に対し、従来ではバラスト水を積載した船舶を寄港地に到達する前に、外洋でバラストタンク内のバラスト水を海水と交換して寄港地の沿岸付近に生体系を脅かす異国種の水生生物を排出しないような措置を取っている。この交換作業は、船に設置したバラストポンプを作動してバラストタンク内のバラスト水を船のバランスを崩さない程度の量を排出し、再度、配管系での流れを切り替えて外洋の海水をバラストタンク内に供給する。このような操作を繰り返し行うことによって、バラストタンク内のバラスト水(海水)のほぼ全量を外洋の海水に交換する。
しかしながら、前述したバラスト水の交換は2日ないし3日を費やし、航海効率の妨げになるばかりか、その間にバラストポンプを常時作動させるために多大な燃料コストを要し、経済的に大きな負担になる。
このようなことから、非特許文献1にはバラスト水の処理技術としてろ過法、熱処理法、化学処理法、機械的殺滅法等が記載されている。
前記ろ過法は、フィルターの目合い以上の水生生物を除去する。フィルターの自動洗浄能力が処理能力、装置の大きさおよびコスト等の実用性を大きく左右する。処理能力に関しては、シンガポールの提案で10000トン/時間が可能であるとされている。しかしながら、原理から考えてフィルター目合いより小さな水生生物に対する効果が期待できない。また、フィルターの目詰まりに起因して処理能力が低下し、連続運転を妨げるという問題もある。
前記熱処理法は、船舶に搭載されているエンジンの廃熱やボイラを用いてバラスト水を加熱する方法である。殺滅効果が得られる処理温度について様々であるが、多くの水生生物を殺滅するのにかなり高温にする必要がある。
前記化学処理法は、2種以上の化学薬品が提案されている。効果は高く殆どの水生生物をほぼ100%殺滅または不活性化することが可能であり、かつ薬品の購入コストも比較的安価である。しかしながら、薬品処理に伴う二次汚染の懸念がある。
前記機械的殺滅法は、バラスト水をミキシングして機械的な粉砕によりその水生生物を殺滅する方法で、効果は浮遊性甲殻類の90%を破壊・殺滅することが可能である。この方法の最大の特徴は、単純な構造であるために実船での運用や船舶の搭載が簡単である点である。
"平成13年度船舶運航に伴うバラスト水による海洋生態系への影響低減に関する調査報告書"平成14年3月 社団法人日本海難防止協会
本発明は、例えば海水をバラストタンク内に供給する際、その水生生物を濾過ドラムで濾過し、清浄なバラスト水としてバラストタンク内に供給することが可能で、同時に前記濾過ドラムの付着された水生生物を除去して大量の海水を連続的に濾過することが可能な濾過装置を備え、荷揚げ時等においてバラスト水を海に排出しても海洋生態系の破壊を防ぐことが可能な船舶を提供しようとするものである。
上記課題を解決するために、本発明はバラストタンクを有する船本体と、
前記船本体に配置され、前記バラストタンクへの海水の供給・排出をなすため海水供給・排出系統と、
前記海水供給・排出系統に接続されたバラストポンプと、
前記海水供給・排出系統に配置された濾過装置と
を具備し、
前記濾過装置は、両端が封じられた筒状の筐体と、この筐体内に回転可能に配置され、両端が封じられた目開きが20μm以下の濾過ドラムと、前記筐体に取付けられた海水導入部と、前記筐体に取付けられ、前記濾過ドラム内の濾過海水を外部に流出させるための濾過海水導出部と、前記筐体に取付けられ、前記筐体内を前記濾過ドラムにより区画された濾過室と連通するドレイン部と、前記濾過室内に配置され、前記濾過ドラムの濾過面に高圧水を噴射するための高圧噴射部材とを備えたことを特徴とする船舶を提供する。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1の(A)は、船舶、例えばチップ船の正面図、図1の(B)は同図(A)のチップ船の平面図、図2は濾過装置が組みこまれたチップ船の海水供給・排出系統を示す概略図、図3は図2の濾過装置を示す概略断面図、図4は図3の横断面図である。
船本体1は、船首2、胴部3および船尾4を有し、船首2に1つのバラストタンク5a,胴部3底に全長方向に対して対象的な6つのバラストタンク5b〜5g、胴部3中央付近に1つのバラストタンク5hおよび船尾4に1つのバラストタンク5iがそれぞれ設置されている。
図2に示すように濾過装置10が組み込まれた海水供給・排出系統50は、前記船本体1に設置されている。
前記濾過装置10は、図2〜図4に示すように上端に鍔部11を有する円筒状の筐体12を備えている。円板状天板13は、前記筐体12の鍔部11に螺子等により液密に固定されている。2枚の円板14,15は、前記円筒状の筐体12内の下部付近に互いに所望の空間(濾過海水流入室)16を形成するように互いに離間して固定されている。前記筐体12内は、その両端(上下端)に前記円板状天板13および上部円板14が配置され、密閉された濾過室17を形成している。前記上部円板14は、中心に前記濾過海水流入室16と連通する筒体18が上方に向けて突出している。この筒体18の外周側面には、後述する両端封じ濾過ドラムの底部が係合される環状段差部19が形成されている。
フランジ20を有する海水導入部21は、前記濾過室17が位置する前記筐体12に取付けられている。フランジ22を有する第1ドレイン部23は、図4に示すように前記濾過室17が位置する前記筐体12に前記海水導入部21から周方向に離れて取付けられている。フランジ24を有する濾過海水導出部25は、前記濾過海水流入室16が位置する前記筐体12に前記海水供給部21と反対側に位置するように取付けられている。
上下蓋26,27で封じられた濾過ドラム28は、前記円筒状の筐体12内にその筐体12に対して同心円状に回転可能に配置されている。前記筐体12内の前記濾過室17は、この濾過ドラム28によって区画され、この濾過ドラム28に対向する箇所に主に海水の濾過に関与する環状空間が形成される。前記濾過ドラム28は、その下蓋27の中心に図3に示すように筒状ガイド部材29が内部(上方)に向けて突出されている。前記濾過ドラム28を前記円筒状の筐体12内に設置する際、前記濾過ドラム28の筒状ガイド部材29が前記上部円板14の筒体18に嵌合され、かつ前記筒状ガイド部材29周辺の下蓋27付近が前記筒体18の環状段差部19に当接される。これによって、前記濾過ドラム28は前記上部円板14に回転可能に支持される。前記濾過ドラム28は、複数の網体(例えばステンレス製網体、銅製網体)を前記濾過室17側ほど目開きが細かくなるように積層、焼結した目開き(孔径)が20μm以下、好ましくは目開き(孔径)が5μm以下の材料から作られている。なお、前記濾過ドラム28はステンレスのような金属の網体から作る場合に限らず、ポリイミドのようなプラスチックの網体から作ってもよい。
濾過ドラム用モータ30は、前記円板状天板13上に設置され、その駆動軸31はその円板状天板13を貫通して前記濾過ドラム28の上蓋26に連結、固定されている。なお、前記駆動軸31が貫通される前記円板状天板13部分には図示しない軸受が設けられている。このような構成において、前記モータ30の駆動軸31を例えば時計回り方向に回転することによって、前記濾過ドラム28はその下部において前記上部円板14の筒体18に支持されながら同方向に回転される。
ノズル32を有する高圧噴射部材33は、前記筐体12と前記濾過ドラム28の間に位置する前記濾過室17内に配置されている。後述する高圧ポンプは、濾過海水導入配管およびフレキシブルチューブ34を通して前記高圧噴射部材33に連結されている。前記高圧噴射部材33のノズル32は、前記濾過ドラム28の回転方向に対向するように傾斜され、前記高圧ポンプから供給された高圧水(例えば高圧濾過海水)を前記濾過ドラム28の表面に向けて噴射する。垂直方向に配置されたボールネジ35は、前記円板状天板13を貫通して前記高圧噴射部材33に係合され、さらにその下端が前記上部円板14上の凹状支持部材36に回転自在に支持されている。ボールネジ用モータ37は、前記円板状天板13上に設置され、前記ボールネジ35の上端に連結されている。このような構成において、前記モータ37により前記ボールネジ35を正回転、逆回転することによって、このボールネジ35に係合された前記高圧噴射部材33が前記濾過ドラム28に沿って上下動作する。
逆洗用箱38は、前記筐体12と前記濾過ドラム28の間の前記濾過室17内に前記海水導入部21と反対側に位置するように配置されている。この逆洗用箱38は、前記濾過ドラム28と同じ高さを有し、その濾過ドラム28側の前面が開口され、かつ背面が前記筐体12を兼ねると共に、上下板および対向する側壁を持つ構造をなす。なお、前記逆洗用箱38は図4に示すようにその開口端39が前記濾過ドラム28表面に僅かな隙間(例えば1mmの隙間)をあけて近接している。フランジ40を有する第2ドレイン部41は、前記逆洗用箱38が位置する前記筐体12に取付けられている。
この実施形態では、前記逆洗用箱38および前記高圧噴射部材33は図4に示すように前記筐体12と前記濾過ドラム28との間の濾過室17内に前記濾過ドラム28の回転方向にこの順序で配置され、かつ前記海水導入部21を前記高圧噴射部材33の位置から前記濾過ドラム28の回転方向後方の前記筐体12に配置されている。
前記海水供給・排出系統50は、往路用配管51を備えている。この往路用配管51は、始端(図2中の左端)Sに海水の取水・排出配管52が連結され、かつ終端(図2中の右端)Eで前記9つのバラストタンク5a〜5iに対する濾過海水の供給・排出を行うための9つのバラストタンク用配管53a〜53iに分岐されている。前記往路用配管51は、途中に分岐された2つの配管511,512が介装されている。
前記往路用配管51の始端Sからその分岐部までの間に位置する部分には、比較的大きな水生生物などを濾過するためのストレーナ61およびバルブ701が下流側に向けて順次介装されている。例えば2基のバラストポンプ621,622は、前記分岐した配管511,512にそれぞれ介装されている。これらバラストポンプ621,622は、海水の供給形態に応じて1基または2基で動作される。前記各バラストポンプ621,622の前後の前記配管511,512部分には、バルブ702〜705がそれぞれ介装されている。前記配管511,512下流の集合部から前記終点Eまでの間に位置する前記往路用配管51部分には、3つのバルブ706,707,708がそれぞれ介装されている。
海水導入配管54は、前記往路用配管51(前記2つのバルブ706,707間に位置する部分)から分岐され、先端が前記濾過装置10の海水導入部21にフランジ20を介して連結されている。濾過海水導出配管55は、一端が前記濾過装置10の濾過海水導出部25にフランジ24を介して連結され、他端が前記往路用配管51(前記2つのバルブ707,708間に位置する部分)に連結されている。第1ドレイン配管561は、前記第1ドレイン部23にフランジ22を介して連結されている。第2ドレイン配管562は、前記第2ドレイン部42にフランジ40を介して連結されている。これらの海水導入配管54、濾過海水導出配管55および第1、第2のドレイン配管561,562には、バルブ709〜7012がそれぞれ介装されている。なお、前記濾過室17と連通する前記第1ドレイン配管561のバルブ7011は、後述する高圧ポンプの作動に同期して開放される。また、前記逆洗用箱38と連通する前記第2ドレイン配管562のバルブ7012は前記濾過装置10の濾過ドラム用モータ30の作動に同期して開放される。
濾過海水導入配管57は、一端が前記往路用配管51(前記濾過海水導出配管55の連結部とバルブ708の間に位置する部分)に連結され、他端が前記濾過装置10のフレキシブルチューブ34に連結されている。高圧ポンプ63は、前記濾過海水導入配管57に介装されている。バルブ7013は、前記濾過海水導入配管57(前記往路用配管51の連結部と前記高圧ポンプ63の間に位置する部分)に介装されている。
前記海水取水配管52には、バルブ7014が介装されている。前記9つの配管53a〜53iには、バルブ70a〜70iがそれぞれ介装されている。
前記バラストタンク5a〜5i内のバラスト水(濾過海水)を排出するための復路用配管58は、一端が前記バルブ708と前記終端Eの間に位置する往路用配管51部分に連結され、他端が前記バルブ701と分岐部の間に位置する往路用配管51部分に連結されている。この復路用配管58には、バルブ7015が介装されている。排出配管59は、一端が前記集合部と前記バルブ706の間に位置する往路用配管51部分に連結され、他端が前記取水・排出配管52に連結されている。この排出配管59には、バルブ7016が介装されている。
次に、前述した本発明の船舶(チップ船)の荷降ろし・荷揚げ時のバラスト水の供給・排出の操作を説明する。
1)チップ船の荷降ろし時におけるバラスト水供給操作
まず、海水供給・排出系統50を構成する海水の取水・排出配管52のバルブ7014、往路用配管51のバルブ701,706,708、分岐した2つの配管511、512のバルブ702〜705、海水導入配管54のバルブ709,濾過海水導出配管55のバルブ7010、濾過海水導入配管57のバルブ7013および所定のバラストタンク用配管(例えば53h)のバルブ70hを開き、前記往路用配管51のバルブ707、復路用配管58のバルブ7015および排出配管59のバルブ7016を閉じる。このようなバルブの開閉により前記海水供給・排出系統50において、海水が濾過装置10を経由してバラストタンク(例えば5h)に供給される流れになる。なお、濾過海水導入配管57のバルブ7013では適量の濾過海水が高圧ポンプ63に導入されるように開度を調節する。
分岐した2つの配管511、512に介装された2基のバラストポンプ621,622を作動すると、海水は取水・排出配管52、往路用配管51、分岐した2つの配管511、512、往路用配管51および海水導入配管54を通して図3および図4に示す濾過装置10の筐体12および上下蓋付き濾過ドラム28で区画された濾過室17に供給される。海水が前記往路用配管51のストレーナ61を通過する間に比較的大きな水生生物、その他のごみが除去される。前記濾過室17に供給された海水は、前記濾過ドラム28を通過してその内部に流入する間に、水生生物が濾過される。この濾過ドラム28は、表面(前記濾過室17側の面)の目開き(孔径)が20μm以下であるため、20μm以上の大きさ、つまり微細な水生生物をも前記濾過ドラム28で濾過される。
この時、濾過ドラム用モータ30を時計回り方向にゆっくり回転させることにより、この駆動軸31に軸支された前記濾過ドラム28が同方向に回転される。濾過ドラム28の回転において、その濾過ドラム28が前記筐体12と前記濾過ドラム28の間の濾過室17に配置された逆洗用箱38を通過すると、前記濾過ドラム28の内部(中空部)は濾過海水の流入により高圧になり、一方前記逆洗用箱38内は第2ドレイン部41に連通されて大気圧になっているため、それらの圧力差により前記濾過ドラム28の内部の濾過海水が濾過ドラム28を通して前記逆洗用箱38に流出する。このため、前記濾過ドラム28表面に付着された水生生物が剥離、除去される。この逆洗により前記濾過ドラム28表面に付着された水生生物が概ね除去され,その濾過ドラム28の濾過機能が再生される。逆洗後の濾過海水は、前記濾過ドラム用モータ30に同期して開放されるバルブ7012が介装された第2ドレイン配管562を通して海に排出される。
同時に、海水供給・排出系統50の濾過海水導入配管57に介装した高圧ポンプ63を作動して高圧水を前記フレキシブルチューブ34を通して前記濾過室17に配置された高圧噴射部材33に供給し、このノズル32から高圧濾過海水を前記濾過ドラム28の表面に斜め方向から噴射する。この高圧濾過海水の噴射により、前記濾過ドラム28の多数の孔に侵入した微細な水生生物が除去され、その濾過ドラム28の濾過機能が再生される。つまり、前記濾過ドラム28を前記逆洗用箱38での洗浄に比べてより精密な洗浄がなされる。この噴射時にボールネジ用のモータ37を作動し、この下端に連結されたボールネジ35を正方向および逆方向に回転させ、このボールネジ35に係合された前記高圧噴射部材33を上下動させることにより、前記濾過ドラム28表面への高圧濾過海水の噴射領域が移動される。例えば、前記濾過ドラム28が4回転する間に前記高圧噴射部材33(前記高圧濾過海水の噴射領域)が前記濾過ドラム28の全域を移動する。このように前記濾過ドラム28の回転、高圧噴射部材33の上下動作により1つの高圧噴射部材33により前記濾過ドラム28の全域を精密洗浄することが可能になる。この高圧濾過海水の噴射時において、第1ドレイン配管561のバルブ7011が前記高圧ポンプ63の作動と同期して開放され、導入海水に比べて微細な水生生物が多く分散された海水は、前記濾過室17と逆洗用箱38の下流側に位置する筐体12の下部付近で連通する第1ドレイン部23から前記第1ドレイン配管561を通して海に排出される。
前記濾過ドラム28内に供給された濾過海水(バラスト水)は、前記濾過ドラム28の下蓋27の筒状ガイド部材29が嵌合された上部円板14の筒体18を通して上下円板14,15間の濾過海水流入室16に流出し、この濾過海水流入室16から濾過海水導出部25、濾過海水導出配管55、往路用配管51およびバラストタンク用配管53hを通して船本体1中央のバラストタンク5hに供給される。なお、前記濾過海水の一部は前記高圧ポンプ63が介装された濾過海水導入配管57に送られる。
所定のバラストタンク(例えば5h)内への濾過海水(バラスト水)の供給によりそのバラストタンク5hが満杯になると、該当するバラストタンク用配管53hのバルブ70hを閉じ、別のバラストタンク用配管のバルブを開いてその配管から別のバラストタンク内に濾過海水を供給して全てのバラストタンク5a〜5i内を濾過海水(バラスト水)で満たして船本体1の荷降ろしに伴う浮揚を防ぐ。
なお、複数のバラストタンクへの濾過海水(バラスト水)の供給順序、および濾過海水の供給速度は、荷降ろしによる船本体1の浮揚状態を考慮してなされる。
2)チップ船の荷揚げ時におけるバラスト水排出操作
前述した操作で濾過海水(バラスト水)をバラストタンク5a〜5i内に供給したチップ船は、積地に向けて空船航海され、その積地(港)でチップを荷揚げする。このとき、チップの荷揚げ重量に応じてバラスト水を海に排出する。
すなわち、海水供給・排出系統50を構成する所定のバラストタンク用配管(例えば53h)のバルブ70h、復路用配管58のバルブ7015、排出配管59のバルブ7016および往路用配管51の2つの分岐配管511、512のバルブ702〜705を開き、取水配管52のバルブ7014、往路用配管51のバルブ701,706,708を閉じる。このようなバルブの開閉により前記海水供給・排出系統50において、船本体1に設置されたバラストタンク(例えば5h)内の濾過海水(バラスト水)が濾過装置10を経由せずに海水に排出される流れになる。この状態で、バラストタンク5h内のバラスト水はバラストタンク用配管53h、往路用配管51、復路用配管58、往路用配管51、分岐した2つの配管511、512、に流れ、ここに介装された前記バラストポンプ621,622を作動することにより前記バラスト水が前記往路用配管51、排出配管59および取水・排出配管52を通して海に排出される。
所定のバラストタンク(例えば5h)内へのバラスト水(濾過海水)の排出が終了すると、該当するバラストタンク用配管53hのバルブ70hを閉じ、別のバラストタンク用配管のバルブを開いてその配管から別のバラストタンク内のバラスト水(濾過海水)を排出し、全てのバラストタンク5a〜5i内のバラスト水を排出して船本体1への荷揚げに伴って喫水線が過度に下がるのを防ぐ。
なお、複数のバラストタンクからのバラスト水の排出順序、およびバラスト水の排出給速度は、荷揚げによる船本体1の喫水線位置の安定化を考慮してなされる。
以上、本発明の実施形態によれば船本体1の海水供給・排出系統50に濾過装置10を組み込み、荷降ろし時において海水をバラスト水としてバラストタンク5a〜5iに供給する際、その海水を前記濾過装置10を経由させ、目開きが20μm以下の回転する濾過ドラム28を通過させることによって、海水中の微細な水生生物等が濾過、除去された清浄な濾過海水をバラスト水としてバラストタンク5a〜5iに供給することができる。その結果、この船舶(例えばチップ船)を積地に向けて空船航海し、その積地(港)でチップを荷揚げするときに、チップの荷揚げ重量に応じてバラスト水を海に排出しても、バラスト水の供給海域に生息する水生生物の積地への越境移動、つまり海洋生態系の破壊を防止することができる。
特に、前記濾過装置10内の濾過ドラム28を目開きが5μmの材料から作ることによって、後述する実験例に示すように海水中のより微細な水生生物等を一層効率よく濾過、除去して清浄な濾過海水をバラスト水として船本体1のバラストタンク5a〜5iに供給することができる。その結果、積地の海洋生態系の破壊をより効果的に防止することができる。
また、本発明の実施形態の船舶(例えばチップ船)は船本体1の海水供給・排出系統50に特定の濾過装置10を組み込むだけで海洋生態系の破壊を防ぐ濾過海水をバラスト水としてバラストタンク5a〜5iに供給できるため、従来の薬液処理や熱処理に比べて設備費、ランニングコストを低減できる。
さらに、筐体12内に回転可能な濾過ドラム28を配置し、これらで区画された濾過室17にノズル32を有する高圧噴射部材33を配置した構造の濾過装置10を用い、高圧噴射部材33のノズル32から高圧水(高圧濾過海水)を回転する前記濾過ドラム28に噴射することによって、前記濾過ドラム28での海水の濾過操作と同時に、その濾過ドラム28の清掃(洗浄)を行うことができる。その結果、海水の濾過に伴う濾過ドラム28の目詰まり、濾過性能の低下を招くことなく、連続して海水を濾過できるため、大量の濾過海水をバラスト水として効率よく船本体1のバラストタンク5a〜5iに供給できる。
さらに、濾過装置10において逆洗用箱38を高圧噴射部材33とともに前記筐体12と前記濾過ドラム28の間の濾過室17に配置すれば、前記逆洗用箱38で前記濾過ドラム28表面に付着された水生生物が剥離、除去でき、さらに前記高圧噴射部材33で濾過ドラム28の多数の孔に侵入した微細な水生生物を除去できるため、濾過ドラム28の濾過機能を常に初期状態に再生することができる。その結果、濾過ドラム28による海水の濾過性能を向上できる。
特に、図3および図4に示すように前記逆洗用箱38および前記高圧噴射部材33を前記筐体12と前記濾過ドラム28との間の濾過室17内に前記濾過ドラム28の回転方向にこの順序で配置し、かつ前記海水導入部21を前記高圧噴射部材33の位置から前記濾過ドラム28の回転方向後方の前記筐体12に配置することによって、前記海水供給部21からの海水を濾過機能が回復された直後の濾過ドラム28に供給することができるため、濾過ドラム28による海水の濾過性能をより一層向上できる。
次に、前述した濾過装置による海水の濾過性能を実証するための実験例を図5を参照して説明する。
図5は、濾過性能評価システムを示す概略図である。下端に水中ポンプ81が連結された取水配管82は、上端が原水タンク83内に浸漬されている。海水供給配管84は、一端が前記原水タンク83に浸漬され、他端が前述した図3および図4に示す濾過装置10の海水導入部に連結されている。ポンプ85およびバルブ861は、前記海水導入配管84に前記原水タンク83側からこの順序で介装されている。導入海水サンプリング配管87は、前記ポンプ85とバルブ861の間に位置する前記海水導入配管84から分岐され、下端が海水サンプリングタンク88内に挿入されている。バルブ862は、前記サンプリング配管87に介装されている。第1、第2のドレイン配管891、892は、一端が前記濾過装置10の第1、第2のドレイン部にそれぞれ連結され、他端がドレインタンク90内にそれぞれ浸漬されている。バルブ863、864は、前記第1、第2のドレイン配管891、892にそれぞれ介装されている。濾過海水導出配管91は、一端が前記濾過装置10の濾過海水導出部に連結され、他端が濾過海水タンク92に挿入されている。バルブ865は、前記濾過海水導出配管91に介装されている。導出濾過海水サンプリング配管93は、前記濾過装置10とバルブ865の間に位置する前記濾過海水導出配管91から分岐され、下端が濾過海水サンプリングタンク94内に挿入されている。バルブ866は、前記サンプリング配管93に介装されている。濾過海水導入配管95は、一端が前記濾過海水サンプリングタンク94内に浸漬され、他端が前記濾過装置10のフレキシブルチューブに連結されている。高圧ポンプ96は、濾過海水導入配管95に連結されている。
(実験例1)
ステンレス製網体を濾過室側ほど目開きが細かくなるように積層、焼結した最小目開き(孔径)が5μmの材料から作った高さ60mm、直径88mmの濾過ドラムを濾過装置10内に組込んだ。
まず、水中ポンプ81を作動して海水を取水配管82を通して原水タンク83に汲み上げた。海水供給配管84および濾過海水導出配管91のバルブ861,865を開き、導入海水サンプリング配管87および導出濾過海水サンプリング配管93のバルブ862,866を閉じた。つづいて、濾過装置10の濾過ドラム用モータにより濾過ドラムを10rpmの速度で時計回り方向に回転した。この濾過ドラムの回転と同期して電気濾過室に連通する第1ドレイン配管891のバルブ863を開いた。ポンプ85を作動して原水タンク83内の海水を海水供給配管84を通して前記濾過ドラムで区画された筐体内の濾過室に10L/分の速度で供給し、濾過ドラムで濾過した濾過水を濾過海水導出配管91を通して濾過海水タンク92に貯留した。この濾過に際し、第2ドレイン配管892に介装したバルブ864を閉じ、逆洗用箱による濾過ドラムの逆洗操作を停止させた。また、海水の供給開始後、12分間隔で高圧ポンプ96を30秒間作動し、濾過海水タンク92内の濾過海水を濾過海水導入配管95およびフレキシブル配管を通して前記濾過室の高圧噴射部材のノズルから前記濾過ドラムの表面に向けて噴射して高圧洗浄を実施した。
このような濾過装置による海水の濾過工程において、導入海水サンプリング配管87のバルブ862を濾過開始から5分間後(1回目)、30分間後(2回目)および60分間後(3回目)に開き、海水(原水)を前記サンプリング配管87を通して海水サンプリングタンク88にそれぞれ導入し、このタンク88から各回毎に海水2Lを採取し、その海水の1mL当たりの総細胞数を測定した。また、各海水サンプリング毎に、導出濾過海水サンプリング配管93のバルブ866を開いて濾過海水を導出濾過海水サンプリング配管93を通して濾過海水サンプリングタンク94に導入し、このタンク94から各回毎に濾過海水2Lを採取し、その濾過海水の1mL当たりの総細胞数を測定した。
(実験例2)
ステンレス製網体を濾過室側ほど目開きが細かくなるように積層、焼結した最小目開き(孔径)が20μmの材料から作った高さ60mm、直径88mmの濾過ドラムを濾過装置10を用いた以外、実験例1と同様な方法で海水の濾過操作を行なった。
このような濾過装置による海水の濾過工程において、導入海水サンプリング配管87のバルブ862を濾過開始から5分間後(1回目)、15分間後(2回目)および45分間後(3回目)に開き、海水(原水)を前記サンプリング配管87を通して海水サンプリングタンク88にそれぞれ導入し、このタンク88から各回毎に海水2Lを採取し、その海水の1mL当たりの総細胞数を測定した。また、各海水サンプリング毎に、導出濾過海水サンプリング配管93のバルブ866を開いて濾過海水を導出濾過海水サンプリング配管93を通して濾過海水サンプリングタンク94に導入し、このタンク94から各回毎に濾過海水2Lを採取し、その濾過海水の1mL当たりの総細胞数を測定した。
前述した実験例1、2による結果および除去率を下記表1に示す。なお、下記表1の総細胞数にはIMO−MEPCによるガイドラインの対象とされない長径サイズで10μm以下の細胞(Thalassiosiraceae、Cyclotella spp.および不明鞭毛藻類)を除外した。
Figure 2005088835
前記表1から明らかなように20μmの目開きを持つ濾過ドラムを有する濾過装置を用いる実験例2では、原水の総細胞数3735/mL(平均)を濾過後において総細胞数を約700/mL(平均)まで低減できることがわかる。また、5μmの目開きを持つ濾過ドラムを有する濾過装置を用いる実験例1では原水の総細胞数2772/mL(平均)を濾過後において20μmの目開きを持つ濾過ドラムを用いる実験例2に比べて1桁少ない総細胞数を約70/mL(平均)まで激減できることがわかる。
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で以下に説明するように種々に変形して実施することができる。
(1)高圧噴射部材は、ボールネジに係合させ、そのボールネジを回転させることにより上下動させたが、これに限定されない。例えば、電気式または油圧式のシリンダで高圧噴射部材を上下動させてもよい。
(2)1つの高圧噴射部材を濾過室に配置してそれを上下動させたが、これに限定されない。例えば、複数の高圧噴射部材を濾過室内に濾過ドラムの長手方向に沿って固定して配置してもよい。
(3)筐体内に濾過ドラムを縦置きにして濾過装置を構成したが、これに限定されない。例えば、筐体およびこの内に配置した濾過ドラムを横置きにして濾過装置を構成してもよい。
(4)実施形態では、配管、バラストポンプ、バルブを有する海水供給・排出系統において海水の往路側に濾過装置が組み込まれるように配置し、バラストポンプを作動して海水を前記濾過装置で濾過し、得られた濾過海水をバラスト水として船舶のバラストタンク内に供給したが、これに限定されない。例えば、配管、バラストポンプ、バルブを有する海水供給・排出系統において海水の復路側に濾過装置が組み込まれるように配置し、バラストポンプを作動して海水を前記濾過装置を通さずに船舶のバラストタンクに直接供給する。一方、バラストタンク内の海水(バラスト水)を排出する際にバラストポンプを作動してバラストタンク内の海水を前記濾過装置を経由して濾過させ、濾過海水を海に排出してもよい。なお、この濾過過程で濾過装置の濾過ドラム表面に付着した水生生物を逆洗用箱で剥離し、第2ドレイン配管を通して排出した水生生物濃度の高い海水、および濾過ドラム表面に付着した水生生物に高圧海水を噴射して除去し、濾過室および第1ドレイン配管を通して排出した水生生物濃度の高い海水は、例えば専用のタンクに貯蔵する。このタンク内の水生生物濃度の高い海水は、例えば外洋で排出するか、もしくは海水を取水した寄港地で排出することにより、バラスト水の供給海域に生息する水生生物の越境移動、つまり海洋生態系の破壊を防止することができる。
(5)実施形態では、配管、バラストポンプ、バルブを有する海水供給・排出系統に1つの濾過装置を組み込んだが、2つ以上の複数の濾過装置を組み込んでもよい。この場合、濾過装置の数に対応してバラストポンプを海水供給・排出系統に設けることが好ましい。
(6)本発明の船舶は、実施形態で例示したチップ船に限定されず、鉄鋼石などの他の貨物を運ぶ貨物用船舶、客船用船舶にも同様に適用できる。
以上、本発明によれば荷揚げ時等においてバラスト水を海に排出しても海洋生態系の破壊を防ぐことが可能で環境に優しい貨物用船舶等の船舶を提供することができる。
本発明のチップ船を示す図。 図1のチップ船における濾過装置が組みこまれた海水供給・排出系統を示す概略図。 図2の濾過装置を示す概略断面図。 図3の横断面図。 本発明の実験例における濾過性能評価システムを示す概略図。
符号の説明
1…船本体、5a〜5i…バラストタンク、10…濾過装置、12…筐体、16…濾過海水流入室、17…濾過室、28…濾過ドラム、30…濾過ドラム用モータ、33…高圧噴射部材、35…ボールネジ、37…ボールネジ用モータ、38…逆洗用箱、50…海水供給・排出系統、51…往路用配管、53a〜53i…バラストタンク用配管、621,622…バラストポンプ、561…第1ドレイン配管、562…第2ドレイン配管、58…復路用配管、63…高圧ポンプ。

Claims (5)

  1. バラストタンクを有する船本体と、
    前記船本体に配置され、前記バラストタンクへの海水の供給・排出をなすため海水供給・排出系統と、
    前記海水供給・排出系統に接続されたバラストポンプと、
    前記海水供給・排出系統に配置された濾過装置と
    を具備し、
    前記濾過装置は、両端が封じられた筒状の筐体と、この筐体内に回転可能に配置され、両端が封じられた目開きが20μm以下の濾過ドラムと、前記筐体に取付けられた海水導入部と、前記筐体に取付けられ、前記濾過ドラム内の濾過海水を外部に流出させるための濾過海水導出部と、前記筐体に取付けられ、前記筐体内を前記濾過ドラムにより区画された濾過室と連通するドレイン部と、前記濾過室内に配置され、前記濾過ドラムの濾過面に高圧水を噴射するための高圧噴射部材とを備えたことを特徴とする船舶。
  2. 前記濾過ドラムは、複数の網体を前記濾過室側ほど目開きが細かくなるように積層、接合した目開きが20μm以下の材料から作られることを特徴とする請求項1記載の船舶。
  3. 前記高圧噴射部材は、前記濾過ドラムの長手方向に沿って移動自在であることを特徴とする請求項1記載の船舶。
  4. 前記濾過室内に前記濾過ドラムの長手方向に沿い、かつその濾過ドラム側が開口された逆洗用箱をさらに形成し、この前記逆洗用箱に第2のドレイン部を連結したことを特徴とする請求項1記載の船舶。
  5. 前記逆洗用箱および前記高圧噴射部材は、前記筐体と前記濾過ドラムとの間の濾過室内に前記濾過ドラムの回転方向にこの順序で配置され、かつ前記海水導入部は前記高圧噴射部材の位置から前記濾過ドラムの回転方向後方の前記筐体に配置されることを特徴とする請求項1または4記載の船舶。
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