JP2005082489A - 新規な摂食促進ペプチド、新規な成長ホルモン分泌促進ペプチド - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、グレリンの受容体に対してアゴニストないしはアンタゴニストとして作用する低分子のペプチド性リガンドを設計することである。
【解決手段】本発明により、グレリン受容体のアゴニストとして、GSWF-NH2、GSWFR、およびFWSG-NH2などのペプチドが与えられた。グレリン受容体に対して結合能を有するアゴニストとしてのこれらのペプチドは、摂食促進剤あるいは成長促進剤として有効であると考えられる。
【選択図】図4
【解決手段】本発明により、グレリン受容体のアゴニストとして、GSWF-NH2、GSWFR、およびFWSG-NH2などのペプチドが与えられた。グレリン受容体に対して結合能を有するアゴニストとしてのこれらのペプチドは、摂食促進剤あるいは成長促進剤として有効であると考えられる。
【選択図】図4
Description
本発明は、摂食促進ペプチド、成長ホルモン分泌促進ペプチドとして作用するグレリン受容体リガンドである、新規ペプチドに関する。
Growth hormone secretagogue(GHS:成長ホルモン分泌促進因子)は下垂体からの成長ホルモン分泌を刺激する、天然には存在しない合成化合物の総称であり、GHSレセプターはGHSの受容体として同定された蛋白質である。GHSは天然には存在しない人工的な化合物であることから、その内因性リガンドが探索されてきた。
その探索の結果、GHSレセプターの内因性リガンドとしてグレリン(ghrelin)が単離された。このグレリンは28アミノ酸からなるペプチドホルモンであり、1999年にラットの胃から単離された。脳下垂体に発現するGHSレセプターを介して、グレリンは抹消投与でも中枢投与でも強力な成長ホルモン分泌促進活性を示す。グレリンは胃に最も多く存在し、視床下部にも存在することが報告されている。またGHSレセプターは下垂体や視床下部に多く存在するが、胃にもその発現が認められる。
なおグレリンは3残基目のセリンがオクタン酸によって修飾された特徴的な構造を有し、その活性発現にはこの修飾基が必須である。グレリンの化学構造とその生理作用を図1に示す。グレリンの生理作用としては、成長ホルモン分泌促進活性及び、強い摂食促進作用が知られているが、この他に消化管運動の亢進、胃酸分泌促進、血圧降下作用など多彩な生理作用を有することが明らかになってきている。なおグレリンに関する最近の知見については、種々の総説において述べられている(非特許文献1−4)。
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ところで、成長ホルモンの低下は老化の原因のひとつであると言われている。そのためにグレリンのアゴニスト(作動薬)は、成長ホルモン分泌低下にともなう種々の機能障害の改善だけにとどまらず、拒食症や加齢による食欲不振の予防・改善に効果が有することが期待される。また、グレリンのアンタゴニスト(拮抗薬)は過食による肥満の抑制、ひいては肥満が原因で起こる生活習慣病の予防・改善への利用が行えると考えられる。よって本発明の目的はそのような有用な生理作用を示すペプチドを得るために、グレリンの受容体に対してアゴニストないしはアンタゴニストとして作用する低分子のペプチド性リガンドを設計することである。
本発明者らは、ペプチド性リガンドを得るために、グレリンのオクタノイルセリン残基をトリプトファン残基に置換したN末端テトラペプチドを基本とした3〜5残基のペプチドを設計した。具体的には、GSWF(Gly-Ser-Trp-Phe)の配列を基にしたこれら一連のペプチドの誘導体や、GSWFのN末端とC末端を入れ替えたレトロペプチドであるFWSG-NH2というペプチドの一連の誘導体を設計した。そしてGHSレセプターに対する親和性が高いものをレセプターアッセイにより評価したところ、GSWF-NH2、GSWFRや、レトロペプチドであるFWSG-NH2などが高いレセプター親和性を示すことが明らかとなった。
これらのペプチドがアゴニストであるか、アンタゴニストであるかを検討するために、in vivoの実験で生理作用の検討を行ったところ、上記のペプチドは摂食促進作用と成長ホルモン分泌促進作用を示した。よって上記のペプチドはアゴニストであると考えられる。よって本発明は、グレリン受容体のアゴニストとして、GSWF-NH2、GSWFR、およびFWSG-NH2などのペプチドを提供するものである。
グレリン受容体が担う生理機能から考えて、グレリン受容体に対して結合能を有する本発明のペプチド性リガンドは、摂食促進剤あるいは成長促進剤として有効であると考えられる。更に本発明の知見を基にして、更に他のペプチド性リガンドを探索することも可能であり、そのようにして得られたグレリンのリガンドもまた、上記において述べたアゴニストあるいはアンタゴニストとしての生理作用を期待することができる。
本発明は、GSWF-NH2(Gly-Ser-Trp-Phe-NH2)で示されることを特徴とする新規ペプチドである。ここでPhe-NH2とは、Pheのカルボキシル基がアミド化されてCONH2となったアミノ酸を示すものである。更に本発明は、GSWFR(Gly-Ser-Trp-Phe-Arg)で示されることを特徴とする新規ペプチドである。更に本発明は、GSWFK(Gly-Ser-Trp-Phe-Lys)で示されることを特徴とする新規ペプチドである。更に本発明は、FWSG-NH2(Phe-Trp-Ser-Gly-NH2)で示されることを特徴とする新規ペプチドである。ここでGly-NH2とは、Glyのカルボキシル基がアミド化されてCONH2となったアミノ酸である。更に本発明は、FWSGR(Phe-Trp-Ser-Gly-Arg)で示されることを特徴とする新規ペプチドである。なお、かかるアミノ酸は全てL-体である。
本発明のペプチドは、種々の方法で、好ましくはペプチド合成法で取得することができる。即ち、ペプチド合成に通常用いられる方法である液相法または固相法で、ペプチド結合の任意の位置で二分される2種のフラグメントの一方に相当する反応性カルボキシル基を有する原料と、他方のフラグメントに相当する反応性アミノ基を有する原料とを、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HBTU)等の活性エステルを用いた方法や、カルボジイミドを用いた方法等を用いて縮合させることができる。生成する縮合物が保護基を有する場合には、その保護基を除去することによっても製造し得る。
この反応工程において、反応に関与すべきでない官能基は保護基により保護される。アミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシカルボニル(Bz)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc),p-ビフェニルイソプロピロオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)等が挙げられる。カルボキシル基の保護剤としては例えばアルキルエステル、ベンジルエステル等を形成し得る基が挙げられるが、固相法の場合は、C末端のカルボキシル基はクロロトリチル樹脂、クロルメチル樹脂、オキシメチル樹脂、P-アルコキシベンジルアルコール樹脂等の担体に結合している。縮合反応は、カルボジイミド等の縮合剤の存在下にあるいはN-保護アミノ酸活性エステルまたはペプチド活性エステルを用いて実施する。
縮合反応終了後、保護基は除去されるが、固相法の場合はさらにペプチドのC末端と樹脂との結合を切断する。更に、本発明のペプチドは通常の方法に従い精製される。例えばイオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。合成したペプチドの合成はエドマン分解法でC-末端からアミノ酸配列を読み取るプロティンシークエンサー、GC-MS等で分析される。
下記の実施例においては、摂食促進作用を検討するために、GSWF-NH2、GSWFR、FWSG-NH2をラットの脳室内に投与を行っている。また、成長ホルモン分泌促進作用を検討するために、GSWFRのラットの静脈内に投与を行っている。しかし、経口投与、経皮投与、経直腸投与などの投与経路を採用することもできる可能性があり、本発明のペプチドの投与経路は実施例記載の投与経路に限定されるものではない。
本ペプチドの投与量は化合物の種類、投与方法、患者の症状、年齢等により異なるが、1日あたり通常は0.01mg/kg〜10g/kg、好ましくは10.1mg/kg〜1g/kg、更に好ましくは1mg/kg〜100mg/kgである。本発明のペプチドは通常、製剤用担体と混合して調製した製剤の形で投与される。製剤用担体としては、製剤分野において常用され、かつ本発明のペプチドと反応しない物質が用いられる。
具体的には、その様な物質の例として乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン性界面活性剤、プロピレングルコール、水等が挙げられる。
剤型としては注射剤が最も好ましいが、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤等などの剤型も必要に応じて採用することが可能である。これらの製剤は常法に従って調製される。尚、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な溶媒に溶解または懸濁する形であってもよい。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明のペプチドを水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
これらの製剤は、本発明のペプチドを0.01%〜100重量%、好ましくは1〜90重量%の割合で含有することができる。これらの製剤はまた、治療上価値のある他の成分を含有していてもよい。
注射剤を製造するには、有効成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ぶどう糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用事溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射剤用乳剤とすることもできる。
経口投与用の固形製剤を製造するには、有効成分と賦形剤成分例えば乳糖、澱粉、結晶セルロース、乳酸カルシウム、無水ケイ酸などと混合して散剤とするか、さらに必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式又は乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するには、これらの散剤及び顆粒剤をそのまま或いはステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒又は錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸メチルポリマーなどの腸溶剤基剤で被覆して腸溶剤製剤、あるいはエチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには、散剤又は顆粒剤を硬カプセルに充填するか、有効成分をそのまま或いはグリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油などに溶解した後ゼラチン膜で被覆し軟カプセルとすることができる。
経口投与用の液状製剤を製造するには、有効成分と白糖、ソルビトール、グリセリンなどの甘味剤とを水に溶解して透明なシロップ剤、更に精油、エタノールなどを加えてエリキシル剤とするか、アラビアゴム、トラガント、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを加えて乳剤又は懸濁剤としてもよい。これらの液状製剤には所望により矯味剤、着色剤、保存剤などを加えてもよい。
直腸投与剤を製造するには、有効成分をカカオ脂、脂肪酸のトリ、ジ及びモノグリセリド、ポリエチレングリコールなどの座剤用基材と共に加湿して溶解し型に流し込んで冷却するか、有効成分をポリエチレングリコール、大豆油などに溶解した後、ゼラチン膜で被覆すればよい。
皮膚用外用剤を製造するには、有効成分を白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどに加えて必要ならば加湿して練合し軟膏剤とするか、ロジン、アクリル酸アルキルエステル重合体などの粘着剤と練合した後ポリアルキルなどの不織布に展延してテープ剤とする。
以下の実施例において本発明を更に詳細に説明するが、下記の記載は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
サンプルのペプチド、125I-グレリン 100pM、ブタの脳下垂体から採取した膜画分を20℃で60分インキュベートし、GF/Cガラスフィルターでろ過した後、ガンマーカウンターで放射活性を測定した。
サンプルのペプチド、125I-グレリン 100pM、ブタの脳下垂体から採取した膜画分を20℃で60分インキュベートし、GF/Cガラスフィルターでろ過した後、ガンマーカウンターで放射活性を測定した。
グレリンは3残基目のオクタノイル・セリンが活性に必須であり、オクタノイル基が外れると、活性は失われることが知られている。なおグレリンの構造活性相関に関する研究により、全長グレリンのオクタノイル・セリン残基をトリプトファンに置換しても、グレリンレセプターに対して親和性を有することが報告されている。そこで、グレリンのオクタノイルセリン残基をトリプトファン残基に置換し、グレリンN末端テトラペプチドを基本とした3〜5残基のペプチドを設計した。GSWF(Gly-Ser-Trp-Phe)の配列を基にしたこれら一連のペプチドの誘導体を、GSWFシリーズと称する。GSWFシリーズの設計思想を図2に示す。なお、将来的には遺伝子操作によってタンパク質中で産生することを考慮して、L体のアミノ酸を用いて合成した。
GHSレセプターアッセイの系において、GSWFシリーズの親和性を評価した結果を表1に示す。表1より、グレリンのIC50は11nMであった。C末端がフリーのGSWFのIC50は180uMであり、グレリンの約1500分の1であった。C末端にアミド基を導入することでペプチドの活性が増強する例があるために、C末端にアミド基を導入したGSWF-NH2のGHSレセプターに対する親和性を調べたところ、GSWFよりも高い親和性を示した。
またペプチドをタンパク質中で産生させることを考え、アミド基の代わりに塩基性アミノ酸であるリジン、またはアルギニンを導入したペプチドを設計した。リジンに置換したGSWFKはGSWF-NH2よりも親和性が低下したが、アルギニンに置換したGSWFRは約3倍高い親和性を示した。また、GSWF-NH2のC末端とN末端を削った2種類のトリペプチドアミドを作成し、GHSレセプターアッセイを行ったところ、これらの親和性は低かった。よってGHSレセプターに対して親和性を持つには、N末端側の4残基が最小単位であると考えられる。
受容体に対して親和性を示すペプチドのN末端側とC末端側を入れ替え、逆の配列を持つレトロペプチドにすることで、受容体に対する親和性が高まる例が知られている。そこで、GSWFのN末端とC末端を入れ替えたレトロペプチドであるFWSG-NH2というペプチドを作成した。このペプチドの一連の誘導体をFWSGシリーズと称する。FWSGシリーズについてGHSレセプターアッセイを行った結果を表2に示す。親和性の上昇はみられなかったが、GSWF-NH2の場合と同じようにアミド基をアルギニンに置換することで親和性が、やや上昇する傾向が見られた。
モチリン(motilin)はグレリンと同じファミリーに属するアミノ酸22残基の消化管ペプチドであり、グレリンと類似した配列を有する。モチリンはモチリン受容体を介して、グレリンよりも強い消化管運動亢進活性および弱い摂食促進作用を示す。上記で設計した種々のペプチドの選択性を検討するために、モチリンレセプターアッセイを行った。
サンプルのペプチド、125I-Motilin 0.26nM、ヒトモチリン受容体を発現させたHEK-293細胞膜画分を25℃で60分インキュベートし、GF/Cガラスフィルターでろ過した後、ガンマーカウンターで測定した。
モチリンレセプターに対する結合能を評価した結果を表3に示す。モチリンレセプターアッセイにおいて、内因性リガンドであるモチリンのIC50は1.6nMであった。グレリン由来の配列を有するペプチドのモチリンレセプターに対する親和性はいずれも低かった。しかしGHSレセプターに対する結合能を評価した場合と同様に、GSWF-NH2よりもC末端をアルギニンに置換したGSWFRの方がより高い親和性を示した。同じ傾向はレトロペプチドであるFWSGシリーズでも認められた。
表3において、各ペプチドの受容体選択性(Selectivity)の指標を表の右端に示した(Motilin/GHS)。この値が大きい程、GHS-Rに対する選択性が高い。モチリンにN末端を参考にした配列を持つ低分子ペプチドFVWI-NH2はモチリンレセプターに対して親和性を示すことが報告されている。グレリンの配列に由来するGSWFRやGSWF-NH2は、モチリンの配列に由来するFVWI-NH2よりもGHSレセプターに対する選択性が高かった。以上より、アルギニンを導入したGSWFRはGHSレセプターに対する親和性が高く、更に低分子ペプチドの中で最も高い選択性を示した。
更に上記のペプチドがGHSレセプターのアゴニストもしくはアンタゴニストとして作用する可能性を考え、これらのペプチドの摂食促進作用と成長ホルモン分泌促進作用について検討した。
実験動物として7週齢の雄ddYマウスを用い、ネンブタール麻酔下で第三脳室内にガイドカニューレを挿入、固定し、1週間の回復期間の後に摂食実験を行った。非麻酔下のマウスにペプチドを人工能脊髄液ACSFに溶解した後に4μlを脳室内投与し、投与前、投与後20分、60分、120分の4つの時点における固形飼料重量を測定して摂食量を算出した。
GSWFR、GSWF-NH2、GSWFRを投与したマウスについて節食量を検討した結果を図4に示す。図4において横軸は投与量であり、縦軸は投与後20-60分の摂食量を示したものでコントロール群の摂食量を100%としたときの割合である。図4において、白丸はFWSG-NH2を、黒四角はGSWFRを、白三角はGSWF-NH2を、それぞれ示す。レセプターアッセイにおいて最も高い親和性を示したGSWFRにおいて、GSWF-NH2よりも強い摂食促進作用が認められた。よってこれらのペプチドはGHSレセプターアゴニストとであると考えられる。レトロ体であるFWSG-NH2もまた摂食促進作用を示した。これらのペプチドはGHSレセプターの親和性の強さに依存した摂食促進作用を示している。
GHSレセプターアンタゴニストである[D-Lys3]-GHRP-6を用いて、GSWFRの摂食促進作用がGHSレセプターを介しているか検討した。その結果、GSWFR投与による摂食量の増加は、アンタゴニスト1nmolと併用投与することにより有意に阻害され、GSWFRの摂食促進作用がGHSレセプターを介していることを示された。
更に成長ホルモン分泌能について検討した。実験動物としてWistar系雄ラット(280-400g)を用い、麻酔下で採血用のカテーテルを大腿動脈に、ペプチド投与用のカテーテルを大腿静脈に挿入した。血中の成長ホルモン濃度は、サーカディアンリズムとは別に自発的なスパイク状のピークを示すことが知られているが、ネンブタール麻酔はこれを抑制するために、ネンブタール麻酔下で実験を行った。GSWFRを生理的食塩水に溶解し、静脈内投与し、経時的に採血した後に血漿分離し、ELISA法で成長ホルモン濃度を測定した。
GSWFRを7mg/kg(白三角)又は50mg/kg(黒四角)静脈内投与を行った際の血中成長ホルモン濃度の変化を図5に示す。7mg/kg静脈内投与では成長ホルモン濃度に変化が認められなかった。一方、50mg/kg静脈内投与では投与5分後より成長ホルモン濃度が上昇し、15分後に投与前のおよそ4倍のピークを示した。したがって、GSWFRは成長ホルモン分泌を刺激することが明らかになった。以上の結果より、GHSレセプターに親和性を示すGSWFRは、GSWFRはGHSレセプターアゴニストとして摂食促進作用を示すのみならず、成長ホルモンの分泌促進作用を有することが明らかとなった。
本発明により、グレリン受容体のアゴニストとして、GSWF-NH2、GSWFR、およびFWSG-NH2などのペプチドが与えられた。これらのペプチドはグレリン受容体に対して結合能を有するアゴニストであるために、摂食促進剤あるいは成長促進剤として有効であると考えられる。よって、本発明のペプチドは、成長ホルモン分泌低下にともなう種々の機能障害の改善だけにとどまらず、拒食症や加齢による食欲不振の予防・改善に効果が有することが期待される。また、本発明の知見を基にして、更に他のペプチド性リガンドを探索することも可能である。そして、そのようにして得られたペプチド性リガンドもまた、グレリン受容体のアゴニストあるいはアンタゴニストとしての生理作用を期待することができる。
Claims (12)
- GSWF-NH2(Gly-Ser-Trp-Phe-NH2:但しPhe-NH2はPheのカルボキシル基がアミド化されてCONH2となったアミノ酸である)で示されることを特徴とする、新規ペプチド。
- GSWFR(Gly-Ser-Trp-Phe-Arg)で示されることを特徴とする、新規ペプチド。
- GSWFK(Gly-Ser-Trp-Phe-Lys)で示されることを特徴とする、新規ペプチド。
- FWSG-NH2(Phe-Trp-Ser-Gly-NH2:但しGly-NH2はGlyのカルボキシル基がアミド化されてCONH2となったアミノ酸である)で示されることを特徴とする、新規ペプチド。
- FWSGR(Phe-Trp-Ser-Gly-Arg)で示されることを特徴とする、新規ペプチド。
- グレリン受容体のアゴニストとして作用することを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一つの請求項記載のペプチド。
- 摂食促進作用を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一つの請求項記載のペプチド。
- 成長ホルモン分泌促進作用を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一つの請求項記載のペプチド。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか一つの請求項記載のペプチドを有効成分として含有することを特徴とする、摂食促進剤。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか一つの請求項記載のペプチドを有効成分として含有することを特徴とする、成長ホルモン分泌促進剤。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか一つの請求項記載のペプチドを用いて摂食を促進させる方法。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか一つの請求項記載のペプチドを用いて成長ホルモンの分泌を促進させる方法。
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