JP2005079545A - R−t−b系永久磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電解メッキによる保護膜形成に対しても適用することが可能であり、かつ生産効率をほとんど低下させることなく、保護膜形成の本来の目的である耐食性を十分に確保することのできるR−T−B系永久磁石を提供する。
【解決手段】 R214B化合物(ただし、RはYを含む希土類元素の1種又は2種以上
、TはFe又はFe及びCoを必須とする1種又は2種以上の遷移金属元素)からなる主相結晶粒と、主相結晶粒よりRを多く含む粒界相とを少なくとも含む焼結体からなる磁石素体2と、磁石素体2表面に被覆された保護膜4とを備え、磁石素体2の中心部に比べて水素濃度が高くかつ磁石素体2の表面から磁石素体2の内部に向けて水素濃度が段階的に減少する水素リッチ層3が磁石素体2の表層部に存在するR−T−B系永久磁石1とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、R−T−B系永久磁石の耐食性の向上に関するものである。
214B型金属間化合物を主相とするR−T−B系永久磁石(RはYを含む希土類元
素の1種又は2種以上であり、TはFe又はFeとCo)は、磁気特性に優れていること、主成分であるNdが資源的に豊富で比較的安価であることから、各種電気機器に使用されている。
優れた磁気特性を有するR−T−B系永久磁石にもいくつかの解消すべき技術的な課題がある。その一つが耐食性である。つまり、R−T−B系永久磁石は、主構成元素であるR及びFeが酸化されやすい元素であるために耐食性が劣るのである。そのため、磁石表面に腐食防止のための保護膜を形成している。保護膜としては、樹脂コーティング、クロメート膜あるいはメッキなどが採用されているが、特にNiメッキに代表される金属皮膜をメッキする方法が耐食性および耐磨耗性等に優れており多用されている。
特許文献1〜3にR−T−B系永久磁石のメッキに関して興味深い開示がなされている。
特許文献1は、R−T−B系永久磁石は水素吸蔵性が高く、水素吸蔵によって脆化する性質があるので、NiまたはNi合金メッキ法を採用すると、R−T−B系永久磁石中にメッキ時に発生する水素が吸蔵されてメッキ界面で脆化割れを起こし、メッキ剥離を起こして耐食性を維持できなくなることに鑑みて、以下の提案を行っている。すなわち、NiまたはNi合金メッキを施したR−T−B系永久磁石を、600℃以上800℃未満の温度において真空加熱することにより、メッキ工程で磁石中又はメッキ層中に吸蔵された水素を追い出し、例えば永年の使用の途中でメッキ層中の水素が磁石中に拡散するのを防ぎ、磁石界面の水素脆化を防ぐことを提案している。
特許文献2は、例えば電解メッキによるNi被膜を形成した磁石を着磁して磁気特性を評価すると減磁曲線の角形性が著しく低下するが、その原因がコーティング後の磁石素体と被膜に含まれる水素量の増加にあることを指摘している。そこで、特許文献2は保護膜形成の手段として無電解メッキ、または気相メッキを採用し、かつ、磁石素体と被膜に含まれる水素量を100ppm以下に制御することを提案している。
また特許文献3は、R−T−B系永久磁石の熱減磁がメッキ膜中に含まれる含有水素量に依存して大きく変化することを発見したことに基づいて、R−T−B系永久磁石におけるメッキに含有される水素量を100ppm以下に低減することを提案している。
特開平5−226125号公報 特開2001−135511号公報 特開2001−210504号公報
特許文献1によれば水素量が減少するものの、600℃以上800℃未満の温度における真空加熱によって磁気特性が低下する傾向にあるとともにメッキ膜を劣化させるおそれがある。メッキ膜の劣化は、耐食性の低下を惹起するため、メッキ膜本来の目的に違背しかねない。特許文献2は、R−T−B系永久磁石において最も有効な保護膜である電解メッキを対象としていない。特許文献3によれば、低い電流密度及び低い電圧で電解メッキ
を施す必要があり、生産効率が相当程度低下するおそれがあるとともに、電解メッキによる保護膜の耐食性に対しての配慮がなされていない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、電解メッキによる保護膜形成に対しても適用することが可能であり、かつ生産効率をほとんど低下させることなく、保護膜形成の本来の目的である耐食性を十分に確保することのできるR−T−B系永久磁石を提供することを目的とする。
本発明者は、電解メッキにより保護膜を形成したR−T−B系永久磁石に含まれる水素について詳細な検討を行った。その結果、特許文献2が指摘している100ppmを超えてR−T−B系永久磁石の表面に水素が存在していても、特定の存在形態で水素が存在している場合にメッキ膜による耐食性が向上できることを知見した。
本発明は以上の知見に基づくものであり、R214B化合物(ただし、RはYを含む希
土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを必須とする1種又は2種以上の遷移金属元素)からなる主相結晶粒と、主相結晶粒よりRを多く含む粒界相とを少なくとも含む焼結体からなる磁石素体と、磁石素体の表面に被覆された保護膜とを備え、磁石素体の中心部に比べて水素濃度が高くかつ磁石素体の表面から磁石素体の内部に向けて水素濃度が段階的に減少する水素リッチ層が磁石素体の表層部に存在することを特徴とするR−T−B系永久磁石である。
本発明のR−T−B系永久磁石において、水素リッチ層は、水素濃度が1000ppm以上の領域を有することが望ましい。また、水素濃度が1000ppm以上の領域は300μm以下の厚さとすることが望ましい。さらに本発明において、保護膜は電解金属メッキとすることができる。
以上の本発明によれば、電解メッキによる保護膜形成に対しても適用することが可能であり、かつ生産効率をほとんど低下させることなく、保護膜形成の本来の目的である耐食性を十分に確保することのできるR−T−B系永久磁石を提供することができる。
<水素含有層>
本発明のR−T−B系永久磁石1は、図1に示すように、磁石素体2と、磁石素体2の表面に被覆された保護膜4を備えている。磁石素体2の表層部には本発明の特徴である水素リッチ層3が存在している。ここで、水素リッチとは、磁石素体2中心部の水素濃度よりも当該表層部の水素濃度が高いことを意味する。また、この水素リッチ層3は、磁石素体2の表面から磁石素体2内部に向けて水素濃度が段階的に減少している。しかも、水素リッチ層3は、保護膜4側から所定の領域まで1000ppm以上の水素を含んでおり、さらに1000ppm以上の水素濃度を有するのは、保護膜4側から300μmの範囲であることが望ましい。このような水素リッチ層3が存在することにより耐食性が向上する。なお、図1の例は、水素リッチ層3が2段階で減少する例を示しているが、本発明は1段階の場合、又は3段階以上の場合であってもよい。また、本発明において、水素濃度が段階的になっているか否かは磁石素体2の厚さ方向の水素濃度の変化量(絶対値)が300ppm/100μm以下で、かつその領域が20μm以上の長さを有しているか否かを基準に判断する。
水素リッチ層3を水素濃度が段階的に減少する形態とするためには、電解メッキにより保護膜4を形成する場合にはその電流密度その他の条件を調整すればよい。具体的には、後述する実施例を参照することにより明らかとなろう。本発明による水素リッチ層3は、以上のように電解メッキにより形成することができるが、保護膜4形成の前処理として行うことのある酸エッチングによっても形成することができる。したがって、本発明は酸に
よるエッチングを行った後に電解メッキ以外の保護膜4を形成する形態を包含している。
<保護膜>
本発明はその表面に電解メッキによる保護膜4を形成することができる。保護膜4の材質としては、Ni、Ni−P、Cu、Zn、Cr、Sn、Alのいずれかを用いることができるし、他の材質を用いることもできる。また、これらの材質を複層として被覆することもできる。
電解メッキによる保護膜4は本発明の典型的な形態であるが、他の手法による保護膜4を設けることもできる。ただし、水素リッチ層3の存在が前提である。他の手法による保護膜4としては、無電解メッキ、クロメート処理をはじめとする化成処理及び樹脂塗装膜のいずれか又は組み合せが実用的である。
保護膜4の厚さは、磁石素体2のサイズ、要求される耐食性のレベル等によって変動させる必要があるが、1〜100μmの範囲で適宜設定すればよい。望ましい保護膜4の厚さは1〜50μmである。
<化学組成>
以下、本発明が対象とするR−T−B系永久磁石の望ましい化学組成について説明する。
本発明のR−T−B系永久磁石は、希土類元素(R)を27.0〜35.0wt%含有する。
ここで、希土類元素は、Yを含む希土類元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Yb及びLu)の1種又は2種以上である。希土類元素の量が27.0wt%未満であると、軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。また、27.0wt%未満では、焼結性が劣ってくる。一方、希土類元素が35.0wt%を超えるとRリッチ相の量が多くなることにより耐食性が劣化するとともに、主相であるR214B結晶粒の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。したが
って、希土類元素の量は27.0〜35.0wt%とする。望ましい希土類元素の量は28.0〜33.0wt%、さらに望ましい希土類元素の量は29.0〜31.0wt%である。
Rの中ではNdやPrが最も磁気特性のバランスが良いことと、資源的に豊富で比較的安価であることから、希土類元素としての主成分をNdやPrとすることが好ましい。またDyやTbは異方性磁界が大きく、保磁力を向上させる上で有効である。よって、希土類元素としてNdやPr及びDyやTbを選択し、NdやPr及びDyやTbの合計を27.0〜35.0wt%とすることが望ましい。DyやTbは、残留磁束密度及び保磁力のいずれを重視するかによって上記範囲内においてその量を定めることが望ましい。つまり、高い残留磁束密度を得たい場合にはDyとTbの合計量を0.1〜4.0wt%とし、高い保磁力を得たい場合にはDyとTbの合計量を4.0〜12.0wt%とすることが望ましい。
本発明のR−T−B系永久磁石は、ホウ素(B)を0.5〜2.0wt%含有する。Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。ただし、Bが2.0wt%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、上限を2.0wt%とする。望ましいBの量は0.5〜1.5wt%、さらに望ましいBの量は0.9〜1.1wt%である。
本発明のR−T−B系永久磁石は、Nb:0.1〜2.0wt%、Zr:0.05〜0.25wt%、Al:0.02〜2.0wt%、Co:0.3〜5.0wt%及びCu:0.01〜1.0wt%の1種又は2種以上の含有を許容する。これらは、Feの一部を置換する元素として位置付けられている。
Nbは低酸素の焼結体を得る際に結晶粒の成長を抑制し、保磁力向上の効果を有する。Nbは過剰に添加しても焼結性には影響を与えないが、残留磁束密度の低下が顕著となる。したがって、Nbの含有量は0.1〜2.0wt%とする。望ましいNbの含有量は0.3〜1.5wt%、さらに望ましいNbの含有量は0.3〜1.0wt%である。
ZrはR−T−B系永久磁石の着磁特性向上を図るために有効である。また、R−T−B系永久磁石の磁気特性を向上するために酸素含有量を低減する際に、焼結過程での結晶粒の異常成長を抑制する効果を発揮し、焼結体の組織を均一かつ微細にする。したがって、Zrは酸素量が低い場合にその効果が顕著になる。しかし、Zrを過剰に添加すると焼結性を低下させる。Zrの望ましい量は0.05〜0.20wt%である。
Alは保磁力の向上に効果がある。また、高い保磁力を得ることのできる時効処理の温度範囲を拡大する効果を有している。また、本発明のR−T−B系永久磁石を後述する混合法によって製造する場合に、高R合金に添加すると粉砕性を向上することができる。しかし、Alの過剰な添加は残留磁束密度の低下を招くため、0.02〜2.0wt%とする。望ましいAlの含有量は0.05〜1.0wt%、さらに望ましいAlの含有量は0.05〜0.5wt%である。
Coはキュリー温度の向上及び耐食性の向上に効果がある。また、Cuと複合添加することにより、高い保磁力が得られる時効処理温度範囲が拡大するという効果をも有する。しかし、過剰の添加は保磁力の低下を招くとともに、コストを上昇させるため、0.3〜5.0wt%とする。望ましいCoの含有量は0.3〜3.0wt%、さらに望ましいCoの含有量は0.3〜1.0wt%である。
CuはAlと同様に保磁力の向上に効果がある。Alよりも少量で保磁力向上の効果があり、かつ効果が飽和する量がAlよりも低い点がAlとの相違点である。Cuの過剰な添加は残留磁束密度の低下を招くため、0.01〜1.0wt%とする。望ましいCuの含有量は0.01〜0.5wt%、さらに望ましいCuの含有量は0.02〜0.2wt%である。
上記元素以外の元素を含有することを本発明は許容する。例えば、Ga、Bi、Snを適宜含有することが本発明にとって望ましい。Ga、Bi、Snは保磁力の向上と保磁力の温度特性向上に効果がある。ただし、これらの元素の過剰な添加は残留磁束密度の低下を招くため、0.02〜0.2wt%とすることが望ましい。また、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Ni、Si、Hfの1種又は2種以上を含有させることもできる。
<製造方法>
本発明のR−T−B系永久磁石は、よく知られているように、R2Fe14B結晶粒から
なる主相と、この主相よりもRを多く含む粒界相とを少なくとも含む焼結体から構成される。この焼結体を得るための好適な製造方法について説明する。
原料合金は、真空又は不活性ガス、好ましくはAr雰囲気中でストリップキャスティング、その他公知の溶解法により作製することができる。R2Fe14B結晶粒を主体とする
合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含む合金(高R合金)とを用いる所謂混合法で本発明にかかるR−T−B系永久磁石を製造する場合も同様である。混合法の場合には、低R合金には、希土類元素、Fe、Co及びBの他に、Cu及びAlを含有させることができる。また、高R合金には、希土類元素、Fe、Co及びBの他に、Cu及びAlを含有させることができる。
原料合金は粉砕工程に供される。混合法による場合には、低R合金及び高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行なうことが望ましい。粗粉
砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行なうことが効果的である。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
粗粉砕工程後、微粉砕工程に移る。微粉砕には主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径2〜10μm、好ましくは3〜8μmとする。ジェットミルは、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。
混合法による場合、2種の合金を混合するタイミングは限定されるものではないが、微粉砕工程において低R合金及び高R合金を別々に粉砕した場合には、微粉砕された低R合金粉末及び高R合金粉末とを好ましくは不活性ガス雰囲気中で混合する。低R合金粉末及び高R合金粉末の混合比率は、重量比で80:20〜97:3程度とすればよい。低R合金及び高R合金を一緒に粉砕する場合の混合比率も同様である。微粉砕時に、ステアリン酸亜鉛等の粉砕助剤を0.01〜0.3wt%程度添加することにより、次の磁場中成形時に配向性の高い微粉を得ることができる。
以上のようにして得られた微粉末は磁場中成形に供される。この磁場中成形は、960〜1360kA/m(12〜17kOe)前後の磁場中で、68.6〜147MPa(0.7〜1.5t/cm2)前後の圧力で行なえばよい。
磁場中成形後、その成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1100℃で1〜10時間程度焼結すればよい。焼結工程の前に成形体に含まれている粉砕助剤、ガスなどを除去する処理を行なってもよい。焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力を制御する重要な工程である。時効処理を2段に分けて行なう場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行なうと、保磁力が増大するため、混合法においては特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力が大きく増加するため、時効処理を1段で行なう場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
焼結体を得た後に、保護膜を形成する。保護膜の形成は、保護膜の種類に応じて公知の手法に従って行なえばよい。例えば、電解メッキの場合には、焼結体加工、バレル研磨、脱脂、水洗、エッチング(例えば硝酸)、水洗、電解メッキによる成膜、水洗、乾燥という常法を採用することができる。ここで、エッチング、電解メッキの条件を操作することにより、水素リッチ層の性状を制御することができる。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
所定の組成を有する薄帯状合金をストリップキャスト法で作製した。この薄帯状合金に室温にて水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で400〜700℃前後まで昇温して脱水素を行なうことにより粗粉末を得た。
ジェットミルを用いてこの粗粉末を微粉砕した。微粉砕は、ジェットミル内をN2ガス
で置換した後に高圧N2ガス気流を用いて行った。得られた微粉末の平均粒径は4.0μ
mであった。なお、微粉砕を行なう前に粉砕助剤としてステアリン酸亜鉛を0.01〜0.10wt%添加した。
得られた微粉末を1200kA/m(15kOe)の磁場中で98MPa(1.0ton/cm2)の圧力で成形して成形体を得た。この成形体を真空中において、1030℃
で4時間焼結した後に、急冷した。次いで得られた焼結体に850℃×1時間と540℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。焼結体の組成を分析したところ、表1に示す結果が得られた。
Figure 2005079545
また、焼結体の磁気特性を測定したところ、表3に示すような結果が得られた。
さらに、各焼結体を20mm×20mm×7mm(磁化容易軸方向)の寸法に加工後、電解メッキを施した。本発明のように磁石素体から段階的に水素濃度を減少させるには、例えば、磁石素体表面側から順次段階的に成膜速度を落としてメッキすればよい。つまり、高成膜速度とすると水素リッチ層の水素濃度を大とすることができる。成膜速度はメッキ浴の電流密度で変化させることができる。また、水素濃度は添加剤(光沢剤)でも変化させることができる。具体的には以下の条件1〜7の通りに電解めっきを施した。
条件1
以下の組成を有するワット浴によるバレルメッキを行った。このメッキ浴にて、電流密度7A/dm2で25分、続いて4A/dm2で70分成膜を行った。いずれも浴温は60℃である。
条件2
以下の組成を有するスルファミン酸浴によるバレルメッキを行った。このメッキ浴にて、電流密度8A/dm2で30分、続いて5A/dm2で50分、さらに3A/dm2で5
0分成膜を行った。いずれも浴温は60℃である。
条件3
以下の組成を有するワット浴によるバレルメッキを行った。このメッキ浴にて、電流密度7A/dm2で30分、続いて5A/dm2で90分、さらに3A/dm2で60分、さ
らに7A/dm2で30分成膜を行った。いずれも浴温は60℃である。
条件4
以下の組成を有するワット浴によるバレルメッキを行った。このメッキ浴にて、電流密度5A/dm2で30分成膜を行った。いずれも浴温は60℃である。
条件5
以下の組成を有するワット浴によるバレルメッキを行った。このメッキ浴にて、電流密度5A/dm2で150分成膜を行った。浴温は60℃である。
条件6
以下の組成を有するワット浴によるバレルメッキを行った。このメッキ浴にて、電流密度5A/dm2で210分成膜を行った。浴温は60℃である。
条件7
以下の組成を有するワット浴によるバレルメッキを行った。このメッキ浴にて、電流密度0.2A/dm2で750分成膜を行った。浴温は35℃である。
ワット浴
メッキ液組成:硫酸ニッケル・6水和物 280g/l
塩化ニッケル・6水和物 40g/l
ホウ酸 40g/l
ナフタレンジスルホン酸ナトリウム 2g/l
2−ブチン1.4.ジオール 0.1g/l
pH:4
スルファミン酸浴
メッキ浴組成:スルファミン酸ニッケル・4水和物 300g/l
塩化ニッケル・6水和物 30g/l
ホウ酸 30g/l
ラウリル硫酸ナトリウム 0.8g/l
pH:4.5
また、水素リッチ層における水素量の絶対値の分析はメッキ膜を剥離させた後、表面から順次一定厚を削り落とし、それをガス分析した。その結果を表2に示す。なお、保護膜の剥離、表面からの削り落としは、不活性ガス雰囲気中で行った。水素リッチ層の水素含有量の上限は4000ppm程度であった。
さらに、試料No.1〜7について水素濃度のプロファイルを観察した。観察は、メッキ膜の厚さ方向に対して所定の角度だけ傾斜させて試料を研磨した面に対しSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いた面分析によって行った。その結果、表2に示
すように、試料No.1〜6は磁石素体表面から磁石素体内部に向けて水素濃度が段階的に減少するプロファイルを示したのに対して、試料No.7は磁石素体中芯部からその表層部まで水素濃度が8.0ppm程度でほぼ一定であった。なお、表2において第1層が磁石素体の最表面側に位置し、第2層以降が磁石素体の内部側に位置し、第1層はいずれも1000ppm以上の水素濃度を有していた。
Figure 2005079545
次いで、試料No.1〜7に対して熱衝撃試験を行った。なお、熱衝撃試験は、大気中において、−40℃で30分間保持した後に110℃まで加熱して30分保持するというサイクルを100回繰返すものである。熱衝撃試験前後の試料(各10ケ)について、メッキ膜の剥離強度を測定した。その結果を表3にあわせて示す。なお、メッキ膜の剥離強度は、(株)山本鍍金試験器製のメッキ密着強度試験器を用いて測定した。
さらに、試料No.1〜7に対して耐食性試験を行った。なお、耐食性試験は、2気圧、120℃、湿度100%の環境下に試料(各100ケ)を放置し、2000時間後に試料を取り出して、目視により異常(メッキの膨れ、剥離の有無)の有無を確認するものである。その結果(異常が確認された個数)を表3に示す。
Figure 2005079545
表3より、磁石素体の表層部に水素リッチ層が存在し、かつ磁石素体表面から磁石素体内部に向けて水素濃度が段階的に減少するプロファイルを示すと、熱衝撃試験後におけるメッキ膜の密着性が高いことがわかる。
また、水素リッチ層の厚さが厚くなると耐食性が劣化する傾向にあるため、水素リッチ層の厚さは300μm以下にすることが耐食性にとって望ましい。
以上の結果より、メッキ膜形成の条件を制御することによって水素濃度プロファイルを磁石素体表面から磁石素体内部に向けて水素濃度が段階的に減少する形態とし、さらに水素濃度が1000ppm以上を示す水素リッチ層の厚さを所定範囲とすることにより、熱衝撃を受けた後のメッキ膜の密着性の低下を抑制して耐食性を向上できることがわかった。
本発明によるR−T−B系永久磁石の構成を模式的に示した断面図である。
符号の説明
1…R−T−B系永久磁石、2…磁石素体、3…水素リッチ層、4…保護膜

Claims (4)

  1. 214B化合物(ただし、RはYを含む希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又
    はFe及びCoを必須とする1種又は2種以上の遷移金属元素)からなる主相結晶粒と、前記主相結晶粒よりRを多く含む粒界相とを少なくとも含む焼結体からなる磁石素体と、
    前記磁石素体表面に被覆された保護膜とを備え、
    前記磁石素体の中心部に比べて水素濃度が高くかつ前記磁石素体の表面から前記磁石素体の内部に向けて水素濃度が段階的に減少する水素リッチ層が前記磁石素体の表層部に存在することを特徴とするR−T−B系永久磁石。
  2. 前記水素リッチ層は水素濃度が1000ppm以上の領域を有することを特徴とする請求項1に記載のR−T−B系永久磁石。
  3. 水素濃度が1000ppm以上の領域が300μm以下の厚さを有することを特徴とする請求項2に記載のR−T−B系永久磁石。
  4. 前記保護膜が電解金属メッキであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
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