JP2005079544A - R−t−b系永久磁石 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 R2T14B化合物(ただし、RはYを含む希土類元素の1種又は2種以上
、TはFe又はFe及びCoを必須とする1種又は2種以上の遷移金属元素)からなる主相結晶粒と、主相結晶粒よりRを多く含む粒界相とを少なくとも含む焼結体からなる磁石素体2と、磁石素体2表面に被覆された保護膜4とを備え、磁石素体2の中心部に比べて水素濃度が高くかつ磁石素体2の表面から磁石素体2の内部に向けて水素濃度が連続的に減少する水素リッチ層3が磁石素体2の表層部に存在するR−T−B系永久磁石1とする。
【選択図】図1
Description
素の1種又は2種以上であり、TはFe又はFeとCo)は、磁気特性に優れていること、主成分であるNdが資源的に豊富で比較的安価であることから、各種電気機器に使用されている。
優れた磁気特性を有するR−T−B系永久磁石にもいくつかの解消すべき技術的な課題がある。その一つが耐食性である。つまり、R−T−B系永久磁石は、主構成元素であるR及びFeが酸化されやすい元素であるために耐食性が劣るのである。そのため、磁石表面に腐食防止のための保護膜を形成している。保護膜としては、樹脂コーティング、クロメート膜あるいはメッキなどが採用されているが、特にNiメッキに代表される金属皮膜をメッキする方法が耐食性および耐磨耗性等に優れており多用されている。
特許文献1は、R−T−B系永久磁石は水素吸蔵性が高く、水素吸蔵によって脆化する性質があるので、NiまたはNi合金メッキ法を採用すると、R−T−B系永久磁石中にメッキ時に発生する水素が吸蔵されてメッキ界面で脆化割れを起こし、メッキ剥離を起こして耐食性を維持できなくなることに鑑みて、以下の提案を行っている。すなわち、NiまたはNi合金メッキを施したR−T−B系永久磁石を、600℃以上800℃未満の温度において真空加熱することにより、メッキ工程で磁石中又はメッキ層中に吸蔵された水素を追い出し、例えば永年の使用の途中でメッキ層中の水素が磁石中に拡散するのを防ぎ、磁石界面の水素脆化を防ぐことを提案している。
を施す必要があり、生産効率が相当程度低下するおそれがあるとともに、電解メッキによる保護膜の耐食性に対しての配慮がなされていない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、電解メッキによる保護膜形成に対しても適用することが可能であり、かつ生産効率をほとんど低下させることなく、保護膜形成の本来の目的である耐食性を十分に確保することのできるR−T−B系永久磁石を提供することを目的とする。
本発明は以上の知見に基づくものであり、R2T14B化合物(ただし、RはYを含む希
土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを必須とする1種又は2種以上の遷移金属元素)からなる主相結晶粒と、主相結晶粒よりRを多く含む粒界相とを少なくとも含む焼結体からなる磁石素体と、磁石素体表面に被覆された保護膜とを備え、磁石素体の中心部に比べて水素濃度が高くかつ磁石素体の表面から磁石素体の内部に向けて水素濃度が連続的に減少する水素リッチ層が磁石素体の表層部に存在することを特徴とするR−T−B系永久磁石である。
本発明のR−T−B系永久磁石において、水素リッチ層は水素濃度が1000ppm以上の領域を有することが望ましい。また、水素濃度が1000ppm以上の領域は300μm以下の厚さとすることが望ましい。さらに本発明において、保護膜は電解金属メッキとすることができる。
本発明のR−T−B系永久磁石1は、図1に示すように、磁石素体2と、磁石素体2の表面に被覆された保護膜4を備えている。磁石素体2の表層部には本発明の特徴である水素リッチ層3が存在している。ここで、水素がリッチとは、磁石素体2内部の水素濃度よりも当該表層部の水素濃度が高いことを意味する。また、この水素リッチ層3は、磁石素体2の表面から磁石素体2内部に向けて水素濃度が連続的に減少している。しかも、水素リッチ層3は、保護膜4側から所定の領域まで1000ppm以上の水素を含んでおり、さらに1000ppm以上の水素濃度を有するのは、保護膜4側から300μmの範囲であることが望ましい。このような水素リッチ層3が存在することにより耐食性が向上する。
本発明はその表面に電解メッキによる保護膜4を形成することができる。保護膜4の材
質としては、Ni、Ni−P、Cu、Zn、Cr、Sn、Alのいずれかを用いることができるし、他の材質を用いることもできる。また、これらの材質を複層として被覆することもできる。
電解メッキによる保護膜4は本発明の典型的な形態であるが、他の手法による保護膜4を設けることもできる。ただし、水素リッチ層3の存在が前提である。他の手法による保護膜4としては、無電解メッキ、クロメート処理をはじめとする化成処理及び樹脂塗装膜のいずれか又は組み合せが実用的である。
保護膜4の厚さは、磁石素体2のサイズ、要求される耐食性のレベル等によって変動させる必要があるが、1〜100μmの範囲で適宜設定すればよい。望ましい保護膜4の厚さは1〜50μmである。
以下、本発明が対象とするR−T−B系永久磁石の望ましい化学組成について説明する。
本発明のR−T−B系永久磁石は、希土類元素(R)を27.0〜35.0wt%含有する。
ここで、希土類元素は、Yを含む希土類元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Yb及びLu)の1種又は2種以上である。希土類元素の量が27.0wt%未満であると、軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。また、27.0wt%未満では、焼結性が劣ってくる。一方、希土類元素が35.0wt%を超えるとRリッチ相の量が多くなることにより耐食性が劣化するとともに、主相であるR2T14B結晶粒の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。したが
って、希土類元素の量は27.0〜35.0wt%とする。望ましい希土類元素の量は28.0〜33.0wt%、さらに望ましい希土類元素の量は29.0〜31.0wt%である。
Nbは低酸素の焼結体を得る際に結晶粒の成長を抑制し、保磁力向上の効果を有する。Nbは過剰に添加しても焼結性には影響を与えないが、残留磁束密度の低下が顕著となる。したがって、Nbの含有量は0.1〜2.5wt%とする。望ましいNbの含有量は0.3〜2.0wt%、さらに望ましいNbの含有量は0.3〜1.5wt%である。
ZrはR−T−B系永久磁石の着磁特性向上を図るために有効である。また、R−T−B系永久磁石の磁気特性を向上するために酸素含有量を低減する際に、焼結過程での結晶粒の異常成長を抑制する効果を発揮し、焼結体の組織を均一かつ微細にする。したがって、Zrは酸素量が低い場合にその効果が顕著になる。しかし、Zrを過剰に添加すると焼結性を低下させる。Zrの望ましい量は0.05〜0.20wt%である。
Coはキュリー温度の向上及び耐食性の向上に効果がある。また、Cuと複合添加することにより、高い保磁力が得られる時効処理温度範囲が拡大するという効果をも有する。しかし、過剰の添加は保磁力の低下を招くとともに、コストを上昇させるため、0.3〜5.0wt%とする。望ましいCoの含有量は0.3〜3.0wt%、さらに望ましいCoの含有量は0.3〜1.0wt%である。
CuはAlと同様に保磁力の向上に効果がある。Alよりも少量で保磁力向上の効果があり、かつ効果が飽和する量がAlよりも低い点がAlとの相違点である。Cuの過剰な添加は残留磁束密度の低下を招くため、0.01〜1.0wt%とする。望ましいCuの含有量は0.01〜0.5wt%、さらに望ましいCuの含有量は0.02〜0.2wt%である。
上記元素以外の元素を含有することを本発明は許容する。例えば、Ga、Bi、Snを適宜含有することが本発明にとって望ましい。Ga、Bi、Snは保磁力の向上と保磁力の温度特性向上に効果がある。ただし、これらの元素の過剰な添加は残留磁束密度の低下を招くため、0.02〜0.2wt%とすることが望ましい。また、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Ni、Si、Hfの1種又は2種以上を含有させることもできる。
本発明のR−T−B系永久磁石は、よく知られているように、R2Fe14B結晶粒から
なる主相と、この主相よりもRを多く含む粒界相とを少なくとも含む焼結体から構成される。この焼結体を得るための好適な製造方法について説明する。
合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含む合金(高R合金)とを用いる所謂混合法で本発明にかかるR−T−B系永久磁石を製造する場合も同様である。混合法の場合には、低R合金には、希土類元素、Fe、Co及びBの他に、Cu及びAlを含有させることができる。また、高R合金には、希土類元素、Fe、Co及びBの他に、Cu及びAlを含有させることができる。
以上のようにして得られた微粉末は磁場中成形に供される。この磁場中成形は、960〜1360kA/m(12〜17kOe)前後の磁場中で、68.6〜147MPa(0.7〜1.5t/cm2)前後の圧力で行なえばよい。
ジェットミルを用いてこの粗粉末を微粉砕した。微粉砕は、ジェットミル内をN2ガス
で置換した後に高圧N2ガス気流を用いて行った。得られた微粉末の平均粒径は4.0μ
mであった。なお、微粉砕を行なう前に粉砕助剤としてステアリン酸亜鉛を0.01〜0.10wt%添加した。
で4時間焼結した後に、急冷した。次いで得られた焼結体に850℃×1時間と540℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。焼結体の組成を分析したところ、表1に示す結果が得られた。
さらに、各焼結体を20mm×20mm×7mm(磁化容易軸方向)の寸法に加工後、試料No.1〜18については厚さ10μmのNiメッキを、また試料No.19については厚さ5μmのCuメッキ及び厚さ5μmのNiメッキを順次、さらに試料No.20については厚さ5μmのCuメッキ、厚さ5μmのNiメッキ及び厚さ1μmのSnメッキを順次施した。なお、各種メッキ膜は下記のワット浴を用い下記の条件による電解メッキ法によって形成した。
メッキ液組成:硫酸ニッケル・6水和物 280g/l
塩化ニッケル・6水和物 40g/l
ホウ酸 40g/l
ナフタレンジスルホン酸ナトリウム 2g/l
2−ブチン1.4.ジオール 0.1g/l
pH:4
試料No.2 電流密度0.4A/dm2(浴温35℃)で150分成膜を施した。
試料No.3 電流密度0.6A/dm2(浴温50℃)で100分成膜を施した。
試料No.4 電流密度1.0A/dm2(浴温50℃)で60分成膜を施した。
試料No.5 電流密度1.5A/dm2(浴温50℃)で40分成膜を施した。
試料No.6 電流密度3.0A/dm2(浴温50℃)で20分成膜を施した。
試料No.7 電流密度5.0A/dm2(浴温60℃)で15分成膜を施した。
試料No.8 電流密度8.0A/dm2(浴温60℃)で8分成膜を施した。
他の試料:それぞれ電流密度0.5〜3.0A/dm2で200〜20分成膜した。
さらに、試料No.1〜20について水素濃度プロファイルを観察した。観察は、メッキ膜の厚さ方向に対して所定の角度だけ傾斜させて試料を斜めに研磨した面に対しSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いた面分析によって行った。その結果、表
2にも示すように、試料No.2〜20は磁石素体表面から磁石素体内部に向けて水素濃度が連続的に減少するプロファイルを示し、かつこの間の水素濃度は磁石素体の中心部の水素濃度(表面から500μmの位置における水素濃度と同等)より高いのに対して、試料No.1は水素濃度が磁石素体全体でほぼ一定であることが確認された。
さらに、試料No.1〜20に対して耐食性試験を行った。なお、耐食性試験は、2気圧、120℃、湿度100%の環境下に試料(各100ケ)を放置し、1500時間後に試料を取り出して、目視により異常(メッキの膨れ、剥離の有無)の有無を確認するものである。その結果(異常が確認された個数)を表2に示す。
また、水素濃度が1000ppm以上を示す水素リッチ層の厚さが20μm、40μmと厚くなるにつれて耐食性が向上することがわかる。ただし、水素濃度が1000ppm以上を示す水素リッチ層が100μmを超え厚くなるにつれて耐食性が劣化し、厚さが300μmを超えると水素濃度が1000ppm以上を示す水素リッチ層が存在しない場合と耐食性が同程度になる。
以上の結果より、メッキ膜形成の条件を制御することによって水素濃度プロファイルを磁石素体表面から磁石素体内部に向けて水素濃度が連続的に減少する形態とし、さらに水素濃度が1000ppm以上を示す水素リッチ層の厚さを所定範囲とすることにより、熱衝撃を受けた後のメッキ膜の密着性の低下を抑制して耐食性を向上できることがわかった。
以上の結果は、表2より、組成A以外の組成を有するR−T−B系永久磁石、さらにはNiメッキ以外のメッキを施した場合にも有効であることが表2から理解されよう。
Claims (4)
- R2T14B化合物(ただし、RはYを含む希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又
はFe及びCoを必須とする1種又は2種以上の遷移金属元素)からなる主相結晶粒と、前記主相結晶粒よりRを多く含む粒界相とを少なくとも含む焼結体からなる磁石素体と、
前記磁石素体表面に被覆された保護膜とを備え、
前記磁石素体の中心部に比べて水素濃度が高くかつ前記磁石素体の表面から前記磁石素体の内部に向けて水素濃度が連続的に減少する水素リッチ層が前記磁石素体の表層部に存在することを特徴とするR−T−B系永久磁石。 - 前記水素リッチ層は水素濃度が1000ppm以上の領域を有することを特徴とする請求項1に記載のR−T−B系永久磁石。
- 水素濃度が1000ppm以上の領域が300μm以下の厚さを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のR−T−B系永久磁石。
- 前記保護膜が電解金属メッキであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
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