JP2005076878A - 無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

無段変速機の変速制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】踏み込みダウンシフト時における初期加速度の大きさ、および、その発生タイミングを好適に制御可能な変速制御を実現する。
【解決手段】 踏み込みダウンシフト開始瞬時t1から第1設定時間Δt1が経過した瞬時t2より第2設定時間Δt2の間、目標変速比Itを瞬時t2の値に保持する。当該保持の時間Δt2を長くするほどその後のピーク加速度が大きくなり、これが運転者が希望するダウンシフト時初期加速度値となるようΔt2を決定する。ピーク加速度(ダウンシフト時初期加速度値)の発生タイミングはΔt1により調整する。よって、ダウンシフト時初期加速度の大きさ、および、その発生タイミングを好適に制御可能な変速制御となる。
【選択図】図9

Description

本発明は、無段変速機の変速制御、特に、運転者の加速要求に伴うダウンシフト制御技術に関するものである。
無段変速機の変速に際しては通常、アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)APOと、車速との2次元マップ上に目標入力回転数を記した予定の変速パターンを基に、アクセル開度APOおよび車速から現在の運転状況に最適な目標入力回転数を求め、変速機入力回転数がこの目標値になるよう、換言すれば、目標入力回転数を変速機出力回転数で除算して得られる変速後の変速比指令値に実変速比が一致するよう変速を行わせるのが普通である。
かかる変速を、アクセル開度APOが図10に瞬時t1において図示のごとく増大された場合について説明すると、目標変速比Itは同図に実線で示すごとく瞬時t1に、変速前変速比指令値It1から増大後のアクセル開度APOに対応したロー側の変速比指令値It2へと急変する。
しかし、図10に実線で示す目標変速比に追従するような変速制御では変速速度が速すぎて違和感を生ずる。
これがため通常は、目標変速比Itの決定に際し、変速時定数Tを用いた一次遅れをもってIt={1/(1+s・T)}(It2−It1)により目標変速比Itを図10に一点鎖線や二点鎖線で示すごとくに決定することが行われている。
なお、sは微分演算子(d/dt)である。
ここで変速時定数Tは、上式から明らかなように変速速度を決定するもので、変速時定数Tが小さいほど図10に一点鎖線で示すように変速速度は速くなり、変速時定数Tが大きいほど図10に二点鎖線で示すように変速速度は遅くなる。
ところで当該変速制御では、特に比較的小さなアクセル開度で車速をほぼ一定にした定常走行からのダウンシフト時に、変速比指令値となるまでに変速応答遅れが大きくなる傾向にあり、特に、アクセルペダルの踏み込み直後における加速不足が運転性の悪化を招くという問題があった。
この変速応答遅れは、ダウンシフト時におけるエンジンの回転上昇が負のイナーシャトルクを発生させ、かかる負のイナーシャトルクが車両の駆動力を損失させことに起因する。
このような問題を解消するために従来、特許文献1に記載のような無段変速機の変速制御技術が提案されている。
特開平07−239002号公報
この特許文献1に記載の変速制御技術は、現在の変速比、出力、駆動力と、定常時における変速比、出力、駆動力との関係、また、定常時における変速比の変化率に応じて変速速度を調整し、イナーシャトルクを制御することにより、上記の変速応答遅れに関する問題を解消しようとするものである。
しかし、上記従来のような無段変速機の変速制御装置にあっては、以下に説明するような問題を生ずる。
つまり、図11の瞬時t1にアクセルペダルの踏み込みによりアクセル開度APOを図示のごとく急増させた場合につき説明すると、当該アクセルペダルの踏み込みによる過渡ダウンシフト中は、目標変速比Itの経時変化により示すとおり一定の変速速度で変速を進行させるため、前記した理由による負のイナーシャトルクが連続的に発生し、
かかる負のイナーシャトルクがない場合は、車両前後加速度Gが図11に破線で示す如きものであるところ、ダウンシフト中連続的に発生する負のイナーシャトルクが車両前後加速度Gを同図に実線で示すごとくに低下させてしまう。
このため、αで示す初期において前後加速度Gが小さく、運転者がダウンシフトに伴う相応の初期加速感を感じにくく、加速不足のストレスを感じるという問題が懸念される。
また、上記従来のような無段変速機の変速制御装置にあっては、現在の変速比、出力、駆動力と、定常時における変速比、出力、駆動力との関係に基づいて変速速度を決定するため、この変速速度によって決まる加速感発生タイミングは、運転者がアクセルペダルの踏み込み操作などから予感した加速感の好適発生タイミングに一致することを補償されず、かかる加速タイミングの不一致が違和感を生ずるという問題もあった。
本発明は、ダウンシフト時における前者の初期加速不足に関する問題と、後者の加速度発生タイミングの不一致に関する問題とを、ともに解消可能な無段変速機の変速制御装置を提案することを目的とする。
この目的のため本発明による無段変速機の制御装置は、請求項1に記載のごとく、
運転状態に応じた変速速度で変速を進行させるようにした無段変速機の変速制御装置を前提とし、
ダウンシフト中、変速開始から第1設定時間の間、および該第1設定時間の経過時から第2設定時間の間それぞれ変速速度を、上記運転状態に応じた変速速度とは別個に定めるよう構成したものである。
かかる本発明の構成によれば、上記第2設定時間の選択により加速度を、運転者が希望するの大きさにすることができ、当該加速度の発生タイミングを、上記第1設定時間の選択により、運転者が希望する加速立ち上がり開始タイミングに一致させることができ、
ダウンシフト時における初期加速不足に関する前記問題と、加速度発生タイミングの不良に関する前記問題とをともに解消することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になる変速制御装置を具えたVベルト式無段変速機を、その制御系と共に示す変速制御システム図である。
1はエンジン、2はVベルト式無段変速機を示し、これらで車両のパワートレーンを構成する。
エンジン1はガソリンエンジンとするも、運転者が操作するアクセルペダル3に機械的に連結せず、これから切り離されて、モータ4により開度を電子制御されるようにしたスロットルバルブ5を具え、
モータ4を目標スロットル開度(TVOt)指令に対応した回転位置にすることでスロットルバルブ5を目標スロットル開度TVOtにして、エンジン1の出力をアクセルペダル操作以外の因子によっても制御し得るようなものとする。
無段変速機2は周知のVベルト式無段変速機とし、トルクコンバータ6を介してエンジン1の出力軸に駆動結合されたプライマリプーリ7と、これに整列配置したセカンダリプーリ8と、これら両プーリ間に掛け渡したVベルト9とを具える。
そして、セカンダリプーリ8にファイナルドライブギヤ組10を介してディファレンシャルギヤ装置11を駆動結合し、これらにより図示せざる車輪を回転駆動するものとする。
無段変速機2の変速のために、プライマリプーリ7およびセカンダリプーリ8のそれぞれのV溝を形成するフランジのうち、一方の可動フランジを他方の固定フランジに対して相対的に接近してV溝幅を狭めたり、離反してV溝幅を広め得るようにし、
両可動フランジを、目標変速比(It)指令に応動する油圧アクチュエータ12からのプライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psecに応じた位置に変位させることで、無段変速機2を実変速比が目標変速比Itに一致するよう無段変速させ得るものとする。
目標スロットル開度TVOtおよび目標変速比Itはそれぞれ、コントローラ13によりこれらを演算により求めることとする。
これがためコントローラ13には、アクセルペダル3の踏み込み位置(アクセル開度)APOを検出するアクセルペダル操作量センサ14からの信号と、
スロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ16からの信号と、
プライマリプーリ7の回転数である変速機入力回転数Niを検出する変速機入力回転数センサ17からの信号と、
セカンダリプーリ8の回転数である変速機出力回転数Noを検出する変速機出力回転数センサ18からの信号と、
車速VSPを検出する車速センサ19からの信号とをそれぞれ入力する。
コントローラ13はこれら入力情報を基に、図2に示すフローチャートに沿って無段変速機2の変速制御を以下のごとくに行って、本発明が狙いとする無段変速機2の変速制御を実行する。
図2のステップS1では、アクセル開度APOの今回読み込み値から前回読み込み値を差し引いた差ΔAPOの絶対値|ΔAPO|が設定値ΔAPOs以上か否かにより、本発明が狙いとするダウンシフト制御を行う必要のある急なアクセルペダル踏み込み操作があったか否かを判定する。
本発明が狙いとするダウンシフト制御を行う必要のある急なアクセルペダル踏み込み操作がない場合、ステップS2において、通常の変速モードでの変速を以下の通りに行う。
つまり、前記した予定の変速パターンを基にアクセル開度APOおよび車速VSPから現在の運転状況に最適な目標入力回転数を求め、この目標入力回転数を変速機出力回転数で除算して得られる変速後の変速比指令値と、変速前変速比指令値との間における偏差、および、運転状態に応じて定めた前記の変速時定数を用い、一次遅れをもった目標変速比Itを求めて図1のアクチュエータ12に指令する。
図2のステップS1で、本発明が狙いとするダウンシフト制御を行う必要のある急なアクセルペダル踏み込み操作があったと判定する場合は、ステップS3において、当該急踏み瞬時t1(図9参照)から第1設定時間Δt1中であるのを検知するためのタイマTM1を起動させる。
このタイマTM1は、第1設定時間Δt1をセットされており、その起動により経過時間を刻んでこの経過時間に応じセット値を図9のごとくに漸減され、起動時から第1設定時間Δt1が経過した時に0にされるものとする。
ここで第1設定時間Δt1は、ダウンシフトによる加速の発生タイミングを決定するためのもので、図3(a)に示すようにアクセルペダル踏み込み時の変速比指令値がハイ側であるほど長くなる基準時間Δt1’と、図3(b)に示すようにアクセルペダル踏み込み後の変速比指令値It2と、アクセルペダル踏み込み前の変速比指令値It1との間における変速比指令値偏差が大きいほど大きな第1設定時間補正係数k1(≧1)との乗算により求める。
なお第1設定時間Δt1は、かかる乗算により求める代わりに、上記の変速比指令値偏差が大きいほど大きくなる第1設定時間補正量(第1設定時間補正係数k1相当分)を上記の基準時間Δt1’に加算して求めてもよい。
以上のようにして求めた第1設定時間Δt1は、いずれにしてもアクセルペダル踏み込み時の変速比指令値がハイ側であるほど長くなり、又、アクセルペダル踏み込み後の変速比指令値It2と、アクセルペダル踏み込み前の変速比指令値It1との間における変速比指令値偏差が大きいほど長くなるが、
その理由は、アクセルペダル踏み込み時の変速比指令値がハイ側であるほど、又、アクセルペダル踏み込み後の変速比指令値It2と、アクセルペダル踏み込み前の変速比指令値It1との間における変速比指令値偏差が大きいほど、アクセルペダルの踏み込みに伴うダウンシフト量が大きくなることを意味し、この大きなダウンシフト量が変速遅れを大きくするという事実に符合させて、アクセルペダル踏み込み時の変速比指令値がハイ側であるほど、又、アクセルペダル踏み込み後の変速比指令値It2と、アクセルペダル踏み込み前の変速比指令値It1との間における変速比指令値偏差が大きいほど、ダウンシフトによる加速の発生タイミングを違和感防止上遅くする必要があるためである。
図2のステップS6において、上記のタイマTM1が未だ0になっていないと判定する間、つまり、図9の瞬時t1から上記の第1設定時間Δt1が経過していない瞬時t2までの間は、ステップS4およびステップS5において、初期変速モードでダウンシフトを進行させ、この間における変速時定数Tを図4(a)に示すマップを基に求めたT1と定める。
図4(a)に示す初期変速モード用の変速時定数T1のマップは、目標変速比Itと実変速比Ir(=Ni/No)との間における変速比偏差をパラメータとして定めるが、ここでは変速時定数T1を一定値とする。
しかして、変速時定数T1はステップS2につき前述した通常変速モードでの変速時定数よりも大きくし、初期変速モードでの変速速度を通常変速モードでの変速速度よりも遅くするのがよい。
ステップS6でタイマTM1が0になったと判定した後は、つまり、図9の瞬時t1から上記の第1設定時間Δt1が経過した瞬時t2以後は、ステップS7において、瞬時t2から第2設定時間Δt2中であるのを検知するためのタイマTM2を起動させる。
このタイマTM2は、第2設定時間Δt2をセットされており、その起動により経過時間を刻んでこの経過時間に応じセット値を漸減され、起動時から第2設定時間Δt2が経過した時に0にされるものとする。
ここで第2設定時間Δt2は、第1設定時間経過瞬時t2(図9参照)における変速比を保持しておく時間の長さを定めてダウンシフトによる加速の大きさを決定するためのもので、図5(a)に示すようにアクセルペダル踏み込み時の変速比指令値がハイ側であるほど長くなる基準時間Δt2’と、図5(b)に示すようにアクセルペダル踏み込み後の変速比指令値It2と、アクセルペダル踏み込み前の変速比指令値It1との間における変速比指令値偏差が大きいほど大きな第2設定時間補正係数k2(≧1)との乗算により求める。
なお第2設定時間Δt2は、かかる乗算により求める代わりに、上記の変速比指令値偏差が大きいほど大きくなる第2設定時間補正量(第2設定時間補正係数k2相当分)を上記の基準時間Δt2’に加算して求めてもよい。
以上のようにして求めた第2設定時間Δt2は、いずれにしてもアクセルペダル踏み込み時の変速比指令値がハイ側であるほど長くなり、又、アクセルペダル踏み込み後の変速比指令値It2と、アクセルペダル踏み込み前の変速比指令値It1との間における変速比指令値偏差が大きいほど長くなるが、
その理由は、アクセルペダル踏み込み時の変速比指令値がハイ側であるほど、又、アクセルペダル踏み込み後の変速比指令値It2と、アクセルペダル踏み込み前の変速比指令値It1との間における変速比指令値偏差が大きいほど、アクセルペダルの踏み込みに伴うダウンシフト量が大きくなることを意味し、この大きなダウンシフト量が車両加速度を大きくするという事実に符合させてダウンシフトによる加速の大きさを違和感防止上大きくする必要があるためである。
ここで、第1設定時間経過瞬時t2(図9参照)における変速比を保持しておく第2設定時間Δt2の長さと、ダウンシフトによる前後加速度Gの大きさとの関係を、図6に基づき以下に説明する。
図6のアクセルペダル踏み込み瞬時t1から第1設定時間Δt1が経過した瞬時t2以後も目標変速比Itを保持しないで、目標変速比Itを太い実線により示すごとく、図11につき前述した従来と同じように変化させ続けた場合(変速速度一定)、車両前後加速度Gは図11におけると同様な、図6に太い実線で示すごときものとなる。
なお図6に破線で示す車両前後加速度Gは、図11に破線で示す、負のイナーシャトルクがないと仮定した場合の車両前後加速度と同じものである。
一方で、図6の第1設定時間(Δt1)経過瞬時t2以後、当該瞬時における目標変速比Itを保持する場合、車両前後加速度Gは以下のようなものとなる。
瞬時t2における目標変速比Itを保持する時間である第2設定時間Δt2が短いΔt2であって、当該Δt2時間が経過した瞬時t3より目標変速比Itを一点鎖線で示すように太い実線で示すと同じ勾配で変化させる場合、目標変速比Itの保持による正のイナーシャトルクの放出で車両前後加速度Gは図6に一点鎖線で示すごとき経時変化を生じ、従来制御では太い実線で示すように得られなかったピーク加速度Gp1を発生させることができる。
第2設定時間Δt2が長いΔt2であって、当該Δt2時間が経過した瞬時t4より目標変速比Itを二点鎖線で示すように太い実線で示すと同じ勾配で変化させる場合、目標変速比Itの長時間保持による正のイナーシャトルクの更に大きな放出で車両前後加速度Gは図6に二点鎖線で示すごとき経時変化を生じ、上記のピーク加速度Gp1よりも大きなピーク加速度Gp2を発生させることができる。
なお参考までに示すと、図6の第1設定時間(Δt1)経過瞬時t2以後、当該瞬時における目標変速比Itを細い実線で示すように保持し続ける場合、車両前後加速度Gは細い実線で示すごとく、一旦大きなピーク加速度Gp2を発生させるが、その後0になるような経時変化をたどる。
以上のことから明らかなように、第1設定時間(Δt1)経過瞬時t2以後において当該瞬時の目標変速比Itを保持する時間(第2設定時間Δt2)が長いほど、車両前後加速度Gは大きなピーク加速度Gp2を持ったものとなり、ダウンシフト時に運転者に明確な加速感を感じさせることができる。
勿論ピーク加速度は、第2設定時間Δt2が或る程度以上長くなると、それ以上は大きくならないこと、図6から明かである。
なお第2設定時間Δt2が長いほどピーク加速度が大きくなるものの、第2設定時間Δt2が長くなるとピーク加速度の発生タイミングが遅くなって、図6に示すように運転者に大きな変速停滞感(違和感)を与える。
ここで、第2設定時間Δt2の上限値Δt2maxおよび下限値Δt2minの決定要領を図7に基づき以下に説明する。
図7は、アクセルペダル踏み込み瞬時t1から前記第1設定時間Δt1が経過した瞬時t2以後において当該瞬時の目標変速比Itを保持する第2設定時間Δt2の長さと、当該保持により前記のごとくに発生するピーク加速度Gp(図6にGp1,Gp2で例示した)との関係を示す。
ここで、運転者がダウンシフトによる加速度として体感し得る加速度下限値Gpminが存在し、これは図7に例示するごときものである。
一方で、運転者がダウンシフトによる加速度として感じ得る加速度発生タイミングの上限タイミングtmaxが存在し、これは図7に例示するごときものである。
第2設定時間Δt2が前記のごとく、ダウンシフトによる加速度として体感可能なピーク加速度Gpの大きさを決定するためのものであることから、この第2設定時間Δt2は、ピーク加速度Gpが加速度下限値Gpmin以上であること、且つ、ピーク加速度Gpの発生タイミングが上限タイミングtmax以下であることの2要件を満足する必要がある。
従って第2設定時間Δt2は、ピーク加速度Gpがこれら2要件を満足する図7のハッチング領域内のものである期間t3〜t4の範囲内に定める必要があり、第2設定時間Δt2の上限値Δt2maxを図7の瞬時t2〜t4間の時間と定め、第2設定時間Δt2の下限値Δt2minを図7の瞬時t2〜t3間の時間と定める。
以上のことから、図2のステップS7で起動させるタイマTM2にセットする第2設定時間Δt2は、図7に例示するごとく上限値Δt2maxおよび下限値Δt2min間の値とするが、もちろん第2設定時間Δt2の前記設定主旨に照らして、図5につき前述した要領で決定し、運転者がアクセルペダルの踏み込みにより希望するダウンシフトの加速度に応じたものとする。
なお前記した第1設定時間Δt1の設定に際しても、これにより変化するピーク減速度の発生タイミングが図7の瞬時t3〜t4間において、運転者が予測、若しくは希望するタイミングとなるように第1設定時間Δt1を決定することは言うまでもない。
図2のステップS7で起動されたタイマTM2は、時間の経過と共にタイマ値を図9のごとく漸減され、ステップS10において、上記のタイマTM2が未だ0になっていないと判定する間、つまり、図9の瞬時t2から上記の第2設定時間Δt2が経過していない瞬時t3までの間は、ステップS8およびステップS9において、保持変速モードでダウンシフトを進行させ、この間における変速時定数Tを図9に実線γ1で示すように、図4(b)に実線γ1で示すマップを基に求めたT2と定める。
図4(b)に示す保持変速モード用の変速時定数T2のマップは、目標変速比Itと実変速比Ir(=Ni/No)との間における変速比偏差をパラメータとして定めるが、ここでは変速時定数T2を、目標変速比Itが図9に実線γ2で示すごとく瞬時t2の値に保持されるような大きな一定値とする。
ステップS10でタイマTM2が0になったと判定する時以後は、つまり、図9の瞬時t2から第2設定時間Δt2が経過した瞬時t3以後は、ステップS11において、通常変速モードでダウンシフトを進行させるべく変速時定数Tを通常通り運転状態に応じて決定し、目標変速比Itを図9の瞬時t3以後、実線で示すごとく当該決定した変速時定数Tに対応する速度で時系列変化させる。
図9のアクセルペダル踏み込み瞬時t1以後、前記のようにして決定した目標変速比Itは、図1のコントローラ13から油圧アクチュエータ12に供給され、逐一この目標変速比Itが実現されるよう無段変速機2を変速制御する。
ところで本実施の形態においては、第2設定時間Δt2の選択によりピーク加速度Gpを前記したごとく、運転者が希望するの大きさにすることができ、また、当該ピーク加速度Gpの発生タイミングを、第1設定時間Δt1の選択により、運転者が希望する加速立ち上がり開始タイミングに一致させることができ、
アクセルペダルの踏み込みに伴うダウンシフト時における初期加速を、図9に示す車両前後加速度Gのβ領域における時系列変化から明らかなように、運転者がアクセルペダル踏み込み操作時に予期した、若しくは、希望した所定通りの加速度で、且つ、所定通りのタイミングで発生させることができ、当該初期加速の不足に関する従来装置の問題と、加速度発生タイミングの不良に関する従来装置の問題とをともに解消することができる。
本実施の形態では更に、上記した通りダウンシフト時初期加速度の大きさを決定するための第2設定時間(変速比保持時間)Δt2の決定に際し、当該初期加速度だけでなく、図6につき前述した変速比保持に伴う変速停滞感(違和感)とのトレードオフにより決定することで、
当該変速停滞感が問題となるような大きなものとなるのを防止しつつ、狙いとするダウンシフト時初期加速度を実現することができる。
本実施例ではまた、第2設定時間Δt2を、図5(b)につき前述したごとくアクセルペダル踏み込み(ダウンシフト)前後における変速比指令値偏差が大きいほど、従って運転者の加速意図が強いほど長くしたから、
運転者の加速意図が強いほどダウンシフト時初期加速度が大きくなって、要求通りの加速感を達成することができる。
なお本実施例のように、ペダル踏み込み(ダウンシフト)前後における変速比指令値偏差によって運転者の加速意図の強弱を判断する場合、当該判断をセンサの追加なしに安価に行うことができて、コスト上大いに有利である。
また本実施例では、第2設定時間Δt2を、上記したペダル踏み込み(ダウンシフト)前後における変速比指令値偏差(運転者の加速意図)だけでなく、図5(a)につき前述したように、アクセルペダル踏み込み前(ダウンシフト前)の変速比指令値に応じても制御し、このダウンシフト前変速比指令値がハイ側であるほど第2設定時間Δt2を長くしたから、
ハイ側変速比からのアクセルペダルの踏み込み時ほど、これに伴うダウンシフト量が大きくて車両加速度が大きくなるという事実に符合し、ダウンシフトによる加速の大きさを違和感のないものにすることができる。
更に本実施例では、第1設定時間Δt1の設定に際し図7につき前述したごとく、第2設定時間Δt2中における上昇中の加速度が体感可能な加速度以上である期間、且つ、この加速度をダウンシフトに伴う初期加速として体感可能な期間を共に含むような時間とたから、第2設定時間Δt2の前記設定主旨が阻害されないようにすることができる。
また第1設定時間Δt1の設定に際しこれを、図3(b)につき前述したごとくアクセルペダル踏み込み(ダウンシフト)前後における変速比指令値偏差が大きいほど、従って運転者の加速意図が強いほど長くしたから、
加速意図が強いほど、アクセルペダルの踏み込みに伴うダウンシフト量が大きて変速遅れが大きくなるのに合致するよう、前記ピーク加速度(ダウンシフト時初期加速度)の発生タイミングを遅くすることができ、このタイミングを実情にマッチした適切なものにすることができる。
なお本実施例のように、ペダル踏み込み(ダウンシフト)前後における変速比指令値偏差によって運転者の加速意図の強弱を判断する場合、当該判断をセンサの追加なしに安価に行うことができて、コスト上大いに有利である。
また本実施例では、第1設定時間Δt1を、上記したペダル踏み込み(ダウンシフト)前後における変速比指令値偏差(運転者の加速意図)だけでなく、図3(a)につき前述したように、アクセルペダル踏み込み前(ダウンシフト前)の変速比指令値に応じても制御し、このダウンシフト前変速比指令値がハイ側であるほど第1設定時間Δt1を長くしたから、
アクセルペダル踏み込み時の変速比指令値がハイ側であるほど、アクセルペダルの踏み込みに伴うダウンシフト量が大きくて変速遅れが大きくなるのに合致するよう前記ピーク加速度(ダウンシフト時初期加速度)の発生タイミングを遅くすることができ、このタイミングを実情にマッチした適切なものにすることができる。
ところで上記した実施例のように、図9の瞬時t2から第2設定時間Δt2の間この瞬時t2における目標変速比を実線で示すごとく保持する場合、以下のような問題を生ずる。
図8の実線で示す変速時定数Tおよび目標変速比Itの時系列変化γ1およびγ2は、図9に実線で示す変速時定数Tおよび目標変速比Itの時系列変化γ1およびγ2に相当するもので、図8には更に、変速比保持制御γ2により発生する、図6につき前述した車両前後加速度Gの時系列変化γ3を併記した。
変速比保持制御γ2によれば、車両前後加速度Gがその時系列変化γ3から明らかなように、変速比保持解除後における変速再開時t3の直後に大きなイナーシャトルクに起因した大きな引き込み減速度ΔG1を持ったものとなり、変速ショックが問題になることがある。
そこで図8の実施例においては、第2設定時間Δt2の間(保持変速モード中)、変速時定数Tを一定値とせず、δ1(図4および図9も参照)で示すように時間の経過につれ低下させ、これにより、時間の経過につれ目標変速比Itをδ2(図9も参照)で示すように経時変化させて変速速度が速くなるようになす。
この場合、第2設定時間Δt2の間(保持変速モード中)も緩やかにダウンシフトが進行してエンジン回転を含む入力側回転数を緩やかに上昇させ続けることができ、保持変速モード終了時t3の直後におけるイナーシャトルクの減少により引き込み減速度ΔG2を車両前後加速度Gの時系列変化δ3から明らかなように小さくすることができ、上記の問題を解消して運転性を向上させ得る。
なお上記した何れの実施例においても、図10につき前述したような過渡変速制御、つまり、ダウンシフト後変速比指令値It2とダウンシフト前変速比指令値It1との間における変速比指令値偏差、および変速時定数Tに基づいて変速制御を行うようにした無段変速機の過渡変速制御を前提とし、
第1設定時間Δt1および第2設定時間Δt2中における変速速度の制御に際し、変速時定数Tを操作することにより目的を達成するよう構成したため、上記した変速速度の制御が容易になって制御上大いに有利である。
また上記した何れの実施例においても、変速時定数Tで定める変速速度を図4につき前述した通り、目標変速比Itと実変速比Irとの間における変速比偏差に応じて決定するよう構成したから、
初期変速モードおよび保持変速モードのいずれにても、変速速度の加速、減速の細かな設定が可能となって、実用上大いに有利である。
本発明の一実施例になる変速制御装置を具えたVベルト式無段変速機を、その制御系と共に示す変速制御システム図である。 同変速制御装置が行う過渡変速制御を示すフローチャートである。 図2の過渡変速制御で用いる第1設定時間の設定用マップを示し、 (a)は、第1設定時間の基準時間に関するマップ図、 (b)は、第1設定時間の補正係数に関するマップ図である。 図2の過渡変速制御で用いる変速時定数の設定用マップを示し、 (a)は、初期変速モード用の変速時定数に関するマップ図、 (b)は、保持変速モード用の変速時定数に関するマップ図である。 図2の過渡変速制御で用いる第2設定時間の設定用マップを示し、 (a)は、第2設定時間の基準時間に関するマップ図、 (b)は、第2設定時間の補正係数に関するマップ図である。 図2の過渡変速制御で用いる保持変速モードでの変速比保持時間と、車両前後加速度との関係を示すタイムチャートである。 図2の過渡変速制御で用いる第1設定時間および第2設定時間の設定要領を説明するのに用いた説明図である。 本発明変速制御装置の他の例における、変速時定数および目標変速比の与え方を、その結果発生する車両前後加速度の時系列変化と共に示すタイムチャートである。 図1〜図7の実施例になる変速制御装置、および、図8の実施例になる変速制御装置の動作タイムチャートである。 通常の無段変速機の過渡変速制御を示す動作タイムチャートである。 従来の無段変速機用過渡変速制御装置のタイムチャートである。
符号の説明
1 エンジン
2 無段変速機
3 アクセルペダル
4 モータ
5 スロットルバルブ
6 トルクコンバータ
7 プライマリプーリ
8 セカンダリプーリ
9 Vベルト
10 ドライブギヤ組
11 ディファレンシャルギヤ装置
12 変速油圧アクチュエータ
13 コントローラ
14 アクセルペダル操作量センサ
16 スロットル開度センサ
17 入力回転数センサ
18 出力回転数センサ
19 車速センサ

Claims (13)

  1. 運転状態に応じた変速速度で変速を進行させるようにした無段変速機の変速制御装置において、
    ロー側変速比へのダウンシフト中、変速開始から第1設定時間の間、および該第1設定時間の経過時から第2設定時間の間それぞれ変速速度を、前記運転状態に応じた変速速度とは別個に定めるよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  2. 請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記第1設定時間は、運転者が希望する加速立ち上がり開始タイミングに応じて定め、前記第2設定時間は、運転者が希望する加速度の大きさに応じて定めるよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記第2設定時間は、前記第1設定時間が経過した時における変速比を保持することにより正側イナーシャトルクを放出する時間とし、この正側イナーシャトルク放出時間により決まるイナーシャトルク放出量で得られる加速度と、変速比保持による変速停滞感とのトレードオフにより決定するよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記第2設定時間は、運転者の加速意図が強いほど長くするよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  5. 請求項4に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記第2設定時間は、ダウンシフト後変速比指令値とダウンシフト前変速比指令値との偏差が大きいほど運転者の加速意図が強いとして長くするよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  6. 請求項5に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記第2設定時間は、ダウンシフト後変速比指令値とダウンシフト前変速比指令値との偏差と、ダウンシフト前変速比指令値とに応じ、該ダウンシフト始前変速比指令値がハイ側であるほど長くするよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記第1設定時間は、前記第2設定時間中における上昇中の加速度が体感可能な加速度以上である期間、且つ、この加速度をダウンシフトに伴う初期加速として体感可能な期間を共に含むような時間であることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記第1設定時間は、運転者の加速意図が強いほど長くするよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  9. 請求項8に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記第1設定時間は、ダウンシフト後変速比指令値とダウンシフト前変速比指令値との偏差が大きいほど運転者の加速意図が強いとして長くするよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  10. 請求項9に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記第1設定時間は、ダウンシフト後変速比指令値とダウンシフト前変速比指令値との偏差と、ダウンシフト前変速比指令値とに応じ、該ダウンシフト前変速比指令値がハイ側であるほど長くするよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  11. 請求項1または2に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記第2設定時間の間、時間の経過につれて変速速度を速くするよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  12. 前記変速速度を、ダウンシフト後変速比指令値とダウンシフト前変速比指令値との偏差と変速時定数とにより決定するようにした請求項1乃至11のいずれか1に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記変速速度の制御に際し前記変速時定数を操作するよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  13. 請求項1乃至12のいずれか1に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記変速速度を、目標変速比と実変速比との間における変速比偏差に応じて決定するよう構成したことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008095906A (ja) * 2006-10-13 2008-04-24 Toyota Motor Corp 車両用無段変速機の変速制御装置
JP2009138797A (ja) * 2007-12-04 2009-06-25 Nissan Motor Co Ltd 無段変速機の変速制御装置
JP2017048916A (ja) * 2015-09-02 2017-03-09 トヨタ自動車株式会社 車両用自動変速機の変速制御装置および変速制御方法

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