JP2005073562A - ファージならびに植物非病原性細菌を利用した地上部植物細菌病害防除法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、ファージを利用して環境負荷低減を目指した植物細菌病害防除法を提供する。
【解決手段】 地上部植物病原細菌および非病原性細菌を共通の宿主とするファージを該非病原性細菌と共に施用してファージ数を高く維持し、地上部植物細菌病害を防除する。
【選択図】 なし
【解決手段】 地上部植物病原細菌および非病原性細菌を共通の宿主とするファージを該非病原性細菌と共に施用してファージ数を高く維持し、地上部植物細菌病害を防除する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、地上部植物細菌病害の防除法に関するものである。
従来、植物病害の防除は農薬に依存する部分が大きかった。このほか、あわせて栽培品種・作物、栽培方法、温度・湿度など物理的環境の変更・正確な管理、あるいは罹病植物残渣除去等の圃場衛生管理によっても行われてきた。しかしながら、農薬の使用は、残留化学物質の土壌中への蓄積あるいは予期せぬ他の生物相への影響など、自然環境に対する弊害ないしは悪影響をもたらすおそれもある。また、病害抵抗性品種が育成・導入されてきたが、近年は良食味品種の作付けが優先され、それだけでは必ずしも病気の発生を防ぐことはできないというのが、現状である。
一方で、植物細菌病に関しては、病原細菌を溶菌するバクテリオファージ(以下、ファージと略記する)を利用した防除への期待が、20世紀前半のファージ発見当初からあった。ファージは宿主特異性が高く、標的とする病原細菌だけを選択的に溶菌して防除することが可能であると期待され、また残留性、薬害などの問題を回避できるので環境に対する悪影響が少ない病害防除手段として期待されるが、実際に防除試験に用いてみても顕著な効果がみられず、実現には至っていないのが現状である。この原因は、ファージの宿主特異性が極めて高いこと、病原細菌中で増殖させたファージを純化して裸の状態で一時的に大量のファージを投与しても、紫外線等種々の環境要因の影響により、宿主細菌へ吸着する前に多くが不活化し、ファージと宿主細菌の数的平衡状態が保たれることで、期待する効果が得られないためではないかと推測される。
このような状況のもと、ファージを利用した植物細菌病害防除方法を提案したものとしては、ナス科植物土壌病害であるタバコ立枯病または青枯病の病原細菌シュードモナス・ソラナシアラムを溶菌する能力をもつファージを利用したものがある(特許文献1、2および非特許文献1参照)。
今日の農業においては、環境負荷低減は喫緊の課題であり、植物病害防除に関してもこれを満たす新規防除法の開発が急務となっている。
しかしながら、以上のような理由から、環境負荷の低い、ファージを利用した植物細菌病害防除方法は、社会的な要請が高いにもかかわらずほとんど利用されていないのが現状である。
本発明は、このような現状に鑑み、有用植物の生育に影響を与えることなく、イネ白葉枯病をはじめとする地上部植物細菌病害を防除する、環境負荷低減を目指した、植物非病原性細菌のファージ数維持機能を利用した防除法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、ファージを利用した植物細菌病害防除方法の開発を行い、鋭意検討を重ねた結果、病原細菌および非病原性細菌を共通の宿主とするファージ(以下、ときに多犯ファージと略記する)を利用して、該非病原性細菌とともに施用することによりファージ数を高く維持し、地上部植物細菌病害を防除することに成功し、本発明を完成させるに至った。
本発明により、環境負荷低減技術として有用な農薬に代わる植物細菌病害防除法が提供される。
本発明は、ザンソモナス(Xanthomonas)属に属する病原細菌および非病原性細菌を共通の宿主とするファージ(多犯ファージ)を提供する。また本発明は、病原細菌がイネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae pv. oryzae)であり、かつ、非病原性細菌がザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)であり、それらを共通の宿主とするファージを提供する。しかし、本発明は、かかる組合せに限定されるものではなく、地上部植物病原細菌および植物非病原性細菌を共通の宿主とするファージ(多犯ファージ)を提供し、ならびに該ファージを、宿主である植物非病原性細菌とともに施用してファージ数を高く維持し、地上部植物細菌病害を防除する方法を提供する。また、本発明は、上記ファージと宿主である植物非病原性細菌を含有する地上部植物細菌病害防除剤を提供する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中で「地上部植物細菌病害」および「地上部植物病原細菌」とは、土壌を介して伝染する病気である土壌病害に対して、それ以外の地上部が感染して犯される病気およびその原因となる病原細菌を意味する。地上部植物細菌病害の例としては、限定されるものではないが、イネ白葉枯病、イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯細菌病、イネ内穎褐変病、イネ葉鞘褐変病、イネかさ枯病、チャ赤焼病、カンキツかいよう病等が挙げられる。
また、本明細書中で「地上部植物病原細菌および植物非病原性細菌を共通の宿主とするファージ」とは、地上部植物病原細菌と植物非病原性細菌の両者を溶菌する能力を有するファージを意味する。
本発明に用いる病原細菌および非病原性細菌は植物に親和性があれば特に限定されないが、好ましい例として、病原細菌としてイネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae pv. oryzae)、非病原性細菌としてザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)が挙げられる。本発明で用いられたイネ白葉枯病菌は、1971年、京都府でイネから分離された病原性類別群1群標準株であり、独立行政法人農業生物資源研究所に寄託されている。また、本発明で用いられた非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリスは、1998年、静岡県掛川市でヌカキビ(Panicum bisulcatum)の茎から分離された株であり、独立行政法人農業生物資源研究所に寄託されている。
イネ白葉枯病菌を培養する方法は、例えば、植物病原細菌を培養するのに広く用いられているPSA平板培地(硝酸カルシウム4水塩0.5g、リン酸2ナトリウム12水塩2g、ポリペプトン5g、蔗糖15g、寒天15g、ジャガイモ200gまたは300gの煎汁1000ml、pH7)に接種し、約28℃で2日間培養すればよい。液体培養するならば、 PSA培地から寒天を除いた培地に接種し、約28℃で2日間振とう培養すればよい。
また、非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)を培養する方法は、イネ白葉枯病菌を培養する方法と同様である。すなわち、例えば、植物病原細菌を培養するのに広く用いられているPSA平板培地(硝酸カルシウム4水塩0.5g、リン酸2ナトリウム12水塩2g、ポリペプトン5g、蔗糖15g、寒天15g、ジャガイモ200gまたは300gの煎汁1000ml、pH7)に接種し、約28℃で2日間培養すればよく、液体培養するならば、 PSA培地から寒天を除いた培地に接種し、約28℃で2日間振とう培養すればよい。
本発明に用いるファージは、病原細菌および植物に親和性のある非病原性細菌を共通の宿主とするファージ(多犯ファージ)であれば特に限定されないが、例えば好ましいものとしては、本発明者らが雑草圏土壌から分離した、イネ白葉枯病菌ならびに病原細菌とは異なる非病原性細菌をも溶菌させるような宿主特異性を有するファージが挙げられる。本発明者らは、ヒロハノウシノケグサ(Festuca elatior)根圏土壌から、イネ白葉枯病菌 (Xanthomonas oryzae pv. oryzae)ならびに雑草由来の非病原性ザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)にも溶菌斑を形成するファージを見出した(畔上耕児1999:イネ白葉枯病菌ファージとXanthomonas属菌の非灌漑水系雑草からの検出。日植病報65:364。畔上耕児・小原達二2002:イネ科植物から分離されたXanthomonas属菌のイネ白葉枯病発病に対する影響と同定。日植病報68:63。これら文献を参照により本明細書に組み入れるものとする)。
ファージの大量培養は、非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)を培養する方法と同様である。すなわち、PSA培地に、非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)と微量のファージを接種し、約28℃で2日間培養すればよい。
このようにして得られたファージを非病原性細菌と共に施用する。施用方法は特に限定されないが、本発明者らが行った方法は次のようなものである。施用例: PSA平板培地(直径約9cm)上で、多犯ファージによる103〜4個の溶菌斑が形成された非病原性細菌に水30mlを加え、ファージ・非病原性細菌混合液を作製した。混合液10mlをイネ10株に散布した。イネは温室内で鉢栽培したもので、草丈は約70cm、散布直前に葉身中程をハサミで剪断して疑似傷口を作製しておいた。散布後のイネに、イネ白葉枯病菌液(濃度約107個/ml)10mlを噴霧接種した。使用したイネ品種は、白葉枯病に抵抗性を持たない金南風であった。接種後のイネは22〜27℃の温室に置いた。調査は病斑が進展した2〜3週間後に行い、すべての剪断葉について剪断部から伸びた病斑長と発病葉率を算出した。
さらに本発明の1実施形態において、イネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae pv. oryzae)および非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)を溶菌する多犯ファージを単独でイネの葉に散布した。ところがこの多犯ファージは、ただちに不活化し、翌日に検出される数は少なくなる。これに対して、非病原性細菌を混合して散布すると、葉片から多数のファージが検出される。非病原性細菌が多犯ファージの生存に及ぼす影響を検討するために多犯ファージをイネに散布した場合に、その生存数は非病原性細菌を混合施用しておくことによって著しく高まり、特に、剪断した傷口においてファージが多く生存することが見出された(図1参照)。
ここで、本発明のイネ白葉枯病菌および非病原性細菌をともに溶菌するファージ(多犯ファージ)は、非病原性細菌と混合施用した場合に初めて顕著なイネ白葉枯病抑制効果を示す(図2参照)。このことは、多犯ファージのイネ白葉枯病発病抑制効果発現における非病原性細菌共存の必要性をあらわすものである。
本発明の方法によって、イネ白葉枯病が防除される機構は次のように考えられる。
非病原性細菌は、多犯ファージの増殖用培地として機能し、また、紫外線等からのシェルターとしても機能する。さらに、非病原性細菌は、導管病菌であるイネ白葉枯病菌の存在部位にまでファージを送り届けるベクターとしても機能する。以上の理由から、本発明の方法によって、イネ白葉枯病に対して発病抑制効果が現れ、また、多犯ファージ・非病原性細菌混合液の散布が、傷口におけるイネ白葉枯病菌の増殖を抑え、傷口を保護する働きもしていると考えられる。
非病原性細菌は、多犯ファージの増殖用培地として機能し、また、紫外線等からのシェルターとしても機能する。さらに、非病原性細菌は、導管病菌であるイネ白葉枯病菌の存在部位にまでファージを送り届けるベクターとしても機能する。以上の理由から、本発明の方法によって、イネ白葉枯病に対して発病抑制効果が現れ、また、多犯ファージ・非病原性細菌混合液の散布が、傷口におけるイネ白葉枯病菌の増殖を抑え、傷口を保護する働きもしていると考えられる。
また、本発明の地上部植物細菌病害防除剤は、多犯ファージ・非病原性細菌混合液をそのまま直接使用してもよいが、展着剤(例えば界面活性剤)を加用すれば混合液の植物体への付着をよくすることができる。また、固体担体または液体担体と混合して、水和剤、粉剤、乳剤、油剤、カプセル剤等の製剤形態に調製して使用することも可能である。
本発明の防除剤中の非病原性細菌としては、通常は菌体(凍結乾燥菌体または冷蔵菌体から調製)を用いる。本発明の防除剤中のファージおよび非病原性細菌の濃度はそれぞれ、105〜108個/ml、好ましくは106〜107個/ml(ファージ)、106〜109個/ml、好ましくは107〜108個/ml(非病原性細菌)とするのが適当である。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されるものではない。
[実施例1] ファージの単離
ヒロハノウシノケグサ(Festuca elatior)根圏土壌10gを滅菌水90gに懸濁し、あるいは適量の植物片に滅菌水約100mlを加え、それらの液体を孔径0.45μm以下のメンブレンフィルターでろ過し、細菌を除外する。ろ液1mlと病原細菌液(107〜8個/ml)100μlをシャーレ(直径約9cm)内で混合し、これに、溶かして約50℃に保ったPSA培地10mlを加えて固め28℃で培養する。1〜2日後、病原細菌を宿主とするファージが溶菌斑として検出される。次にこのファージ溶菌斑を火炎滅菌した針で突いた後、シャーレ内で同様に固めた植物非病原性細菌面を突いて接種して、28℃で培養する。1〜2日後、病原細菌および植物非病原性細菌を共通の宿主とするファージが溶菌斑として検出される。ここで形成された溶菌斑から、ファージを単離した。
ヒロハノウシノケグサ(Festuca elatior)根圏土壌10gを滅菌水90gに懸濁し、あるいは適量の植物片に滅菌水約100mlを加え、それらの液体を孔径0.45μm以下のメンブレンフィルターでろ過し、細菌を除外する。ろ液1mlと病原細菌液(107〜8個/ml)100μlをシャーレ(直径約9cm)内で混合し、これに、溶かして約50℃に保ったPSA培地10mlを加えて固め28℃で培養する。1〜2日後、病原細菌を宿主とするファージが溶菌斑として検出される。次にこのファージ溶菌斑を火炎滅菌した針で突いた後、シャーレ内で同様に固めた植物非病原性細菌面を突いて接種して、28℃で培養する。1〜2日後、病原細菌および植物非病原性細菌を共通の宿主とするファージが溶菌斑として検出される。ここで形成された溶菌斑から、ファージを単離した。
[実施例2] ファージ・非病原性細菌懸濁液およびファージ液の製造
実施例1で単離したイネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae pv. oryzae)および非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)を溶菌するファージを滅菌水で10倍段階希釈し、各段階の希釈液100μlとイネ白葉枯病菌(約108個/ml)液100μlとをシャーレ(直径約9cm)内で混合し、これに、溶かして約50℃に保ったPSA培地10mlを加えて固め28℃で培養した。2日後、PSA平板培地上で溶菌斑が103〜4個形成された非病原性細菌の菌叢に滅菌水30mlを加え、ファージ・非病原性細菌懸濁液を作製した。次いで、実施例1のようにして得たファージ・非病原性細菌懸濁液を、12,000rpmで7分間遠心し、その上清を先ず孔径0.45次いで0.22μmのメンブラン・フィルターでろ過し、ファージ液を作製した。
実施例1で単離したイネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae pv. oryzae)および非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)を溶菌するファージを滅菌水で10倍段階希釈し、各段階の希釈液100μlとイネ白葉枯病菌(約108個/ml)液100μlとをシャーレ(直径約9cm)内で混合し、これに、溶かして約50℃に保ったPSA培地10mlを加えて固め28℃で培養した。2日後、PSA平板培地上で溶菌斑が103〜4個形成された非病原性細菌の菌叢に滅菌水30mlを加え、ファージ・非病原性細菌懸濁液を作製した。次いで、実施例1のようにして得たファージ・非病原性細菌懸濁液を、12,000rpmで7分間遠心し、その上清を先ず孔径0.45次いで0.22μmのメンブラン・フィルターでろ過し、ファージ液を作製した。
[実施例3] 非病原細菌ザンソモナス・キャンペストリスの培養
非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)の培養は、PSA平板培地(硝酸カルシウム4水塩0.5g、リン酸2ナトリウム12水塩2g、ポリペプトン5g、蔗糖15g、寒天15g、ジャガイモ200gまたは300gの煎汁1000ml、pH7)またはPSA斜面培地に接種し、約28℃で2日間培養した。
非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)の培養は、PSA平板培地(硝酸カルシウム4水塩0.5g、リン酸2ナトリウム12水塩2g、ポリペプトン5g、蔗糖15g、寒天15g、ジャガイモ200gまたは300gの煎汁1000ml、pH7)またはPSA斜面培地に接種し、約28℃で2日間培養した。
[実施例4] イネ白葉枯病菌に対する防除効果 その1
温室栽培鉢植えイネ(栽培種:金南風、草丈約70cm)の葉身の中程をハサミで剪断し、先ず株当たり2mlの(1)滅菌水、(2)非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス(以下、ときにXcと略記する)液(約107〜8個/ml)、(3)ファージ液、または(4)ファージ・Xc懸濁液を前噴霧し、次に株当たり1mlの白葉枯病菌液(約107個/ml)を噴霧接種した。なお、(4)のファージ濃度、Xc濃度は、それぞれ単独で噴霧した(2)、(3)の区と等しくなるよう調製した。接種後のイネは約22〜27℃の温室に置いた。白葉枯病菌接種22日後、剪断部から伸びた病斑長はそれぞれ平均3.5、3.3、4.2、1.0cm、発病葉率はそれぞれ81、69、75、31%であり、ファージ単独施用では白葉枯病に対して発病抑制効果はなく、非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス単独施用では発病抑制効果は低いが、ファージ・Xc懸濁液施用では顕著な発病抑制効果を示した(図2参照)。
温室栽培鉢植えイネ(栽培種:金南風、草丈約70cm)の葉身の中程をハサミで剪断し、先ず株当たり2mlの(1)滅菌水、(2)非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス(以下、ときにXcと略記する)液(約107〜8個/ml)、(3)ファージ液、または(4)ファージ・Xc懸濁液を前噴霧し、次に株当たり1mlの白葉枯病菌液(約107個/ml)を噴霧接種した。なお、(4)のファージ濃度、Xc濃度は、それぞれ単独で噴霧した(2)、(3)の区と等しくなるよう調製した。接種後のイネは約22〜27℃の温室に置いた。白葉枯病菌接種22日後、剪断部から伸びた病斑長はそれぞれ平均3.5、3.3、4.2、1.0cm、発病葉率はそれぞれ81、69、75、31%であり、ファージ単独施用では白葉枯病に対して発病抑制効果はなく、非病原性細菌ザンソモナス・キャンペストリス単独施用では発病抑制効果は低いが、ファージ・Xc懸濁液施用では顕著な発病抑制効果を示した(図2参照)。
[実施例5] イネ白葉枯病菌に対する防除効果 その2
温室栽培鉢植えイネ(栽培種:金南風、草丈約70cm)の葉身の中程をハサミで剪断し、先ず株当たり5mlの(1)滅菌水、(2)Xc液(約107〜8個/ml)、または(3)ファージ・Xc懸濁液を前噴霧し、次に株当たり5mlの白葉枯病菌液(約107個/ml)を噴霧接種した。さらにその後3日間にわたり毎日、同量の滅菌水、Xc液、ファージ・Xc懸濁液を追加噴霧した。白葉枯病菌接種18日後、剪断部から伸びた病斑長はそれぞれ平均5.1、3.7、0.4cm、発病葉率はそれぞれ100、80、30%であり、ファージ・Xc懸濁液は顕著な発病抑制効果を示した。
温室栽培鉢植えイネ(栽培種:金南風、草丈約70cm)の葉身の中程をハサミで剪断し、先ず株当たり5mlの(1)滅菌水、(2)Xc液(約107〜8個/ml)、または(3)ファージ・Xc懸濁液を前噴霧し、次に株当たり5mlの白葉枯病菌液(約107個/ml)を噴霧接種した。さらにその後3日間にわたり毎日、同量の滅菌水、Xc液、ファージ・Xc懸濁液を追加噴霧した。白葉枯病菌接種18日後、剪断部から伸びた病斑長はそれぞれ平均5.1、3.7、0.4cm、発病葉率はそれぞれ100、80、30%であり、ファージ・Xc懸濁液は顕著な発病抑制効果を示した。
[実施例6] イネ白葉枯病菌に対する防除効果 その3
温室栽培鉢植えイネ(栽培種:金南風、草丈約70cm)の葉身の中程をハサミで剪断し、先ず株当たり2mlの(1)滅菌水、または(2) 実施例1のようにして作製したファージ・Xc懸濁液を前噴霧し、次に株当たり2.5mlの白葉枯病菌液(約107個/ml)を噴霧接種した。白葉枯病菌接種20日後、剪断部から伸びた病斑長はそれぞれ平均5.3、3.2cm、発病葉率はそれぞれ86、6%であり、ファージ・Xc懸濁液は顕著な発病抑制効果を示した。
温室栽培鉢植えイネ(栽培種:金南風、草丈約70cm)の葉身の中程をハサミで剪断し、先ず株当たり2mlの(1)滅菌水、または(2) 実施例1のようにして作製したファージ・Xc懸濁液を前噴霧し、次に株当たり2.5mlの白葉枯病菌液(約107個/ml)を噴霧接種した。白葉枯病菌接種20日後、剪断部から伸びた病斑長はそれぞれ平均5.3、3.2cm、発病葉率はそれぞれ86、6%であり、ファージ・Xc懸濁液は顕著な発病抑制効果を示した。
Phage No.:ファージを散布したイネ小葉片から回収されたファージ数(pfu)。
P:ファージ単独で散布。
PC:ファージと非病原性細菌を混合して散布。
Cut:葉身の中程を剪断してファージ単独液または混合液を散布して剪断部から回収。
Intact:剪断してない葉身に散布して、葉身の中程から回収。
1day, 2day, 4day:ファージ接種後の日数。
W:滅菌水散布。
C:非病原性細菌単独散布。
P:ファージ単独散布。
PC:ファージと非病原性細菌の混合液を散布。
P:ファージ単独で散布。
PC:ファージと非病原性細菌を混合して散布。
Cut:葉身の中程を剪断してファージ単独液または混合液を散布して剪断部から回収。
Intact:剪断してない葉身に散布して、葉身の中程から回収。
1day, 2day, 4day:ファージ接種後の日数。
W:滅菌水散布。
C:非病原性細菌単独散布。
P:ファージ単独散布。
PC:ファージと非病原性細菌の混合液を散布。
Claims (5)
- 地上部植物病原細菌および植物非病原性細菌を共通の宿主とするファージ。
- 地上部植物病原細菌および植物非病原性細菌がザンソモナス(Xanthomonas)属に属する微生物である、請求項1に記載のファージ。
- 地上部植物病原細菌がイネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae pv. oryzae)であり、かつ、植物非病原性細菌がザンソモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)である、請求項2に記載のファージ。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のファージを、宿主である該植物非病原性細菌とともに施用して、地上部植物細菌病害を防除する方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のファージ、および宿主である該植物非病原性細菌を含有することを特徴とする、地上部植物細菌病害防除剤。
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JP2015534983A (ja) * | 2012-10-19 | 2015-12-07 | ザ テキサス エーアンドエム ユニヴァーシティ システム | 植物病害を治療及び防除する方法及び組成物 |
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