JP2000290117A - 微生物除草剤及び除草方法 - Google Patents

微生物除草剤及び除草方法

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JP2000290117A JP11095435A JP9543599A JP2000290117A JP 2000290117 A JP2000290117 A JP 2000290117A JP 11095435 A JP11095435 A JP 11095435A JP 9543599 A JP9543599 A JP 9543599A JP 2000290117 A JP2000290117 A JP 2000290117A
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 シュードモナス属に属し、セイタカアワ
ダチソウに対して病原性を示す微生物を有効成分として
含有することを特徴とする除草剤である。また、氷核活
性を有する微生物を有効成分として含有することを特徴
とする除草剤である。 【効果】 環境への負荷が少なく、かつ、他の生物に対
し薬害を起こさずに、効率よく植物を防除することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術の分野】本発明は、セイタカアワダ
チソウに対して病原性を示す微生物を利用した微生物除
草剤、及び氷核活性を有する微生物を利用した微生物除
草剤に関する。また、本発明は、これらの微生物除草剤
と化学除草剤とを含有する除草剤にも関する。
【0002】
【従来の技術】我が国に於ける雑草の被害は甚大であ
り、仮に除草を行わないとすると、各種作物の収量は大
幅に減少し、農業生産性の減収に直結することになる。
無除草による減収率は、例えば、水稲では36%、大麦で
は68%、小麦では14%、陸稲では19%、落花生では37
%、小豆では12%と推定されている。また、ゴルフ場の
芝や、鉄道線路、公園、堤防、駐車場、のり面等の非農
耕地に対する雑草の被害も甚大である。そのため、特に
第二次世界大戦後、農耕地やゴルフ場等で多量の化学除
草剤が使用されてきた。従って、作物の生産性の増大や
景観保全のために化学除草剤が果たした役割は少なくな
い。
【0003】しかし、化学除草剤の普及により新たな問
題が浮上してきた。すなわち、化学除草剤を含む農薬の
環境への蓄積が、ヒトの健康やヒト以外の生物種の生存
に悪影響を及ぼすことが、近年、強く懸念されてきてい
る。それゆえ、なるべく環境に穏やかな作用をもつ農
薬、特に生物農薬の開発が強く望まれている。これは除
草剤の分野においても同様であり、微生物を利用した除
草方法の開発が世界的に進められている。
【0004】微生物を利用した除草方法は、微生物その
ものを利用する方法と、微生物の代謝産物を利用する方
法の二つに分けることができる。前者は微生物除草剤と
呼ばれ、植物に対して病原性を示す糸状菌、細菌又はウ
イルス等が使用される。一方、後者は微生物源除草剤と
呼ばれ、病原性微生物の代謝産物である毒素、植物ホル
モン、酵素等が使用される。
【0005】現在、微生物除草剤として実用化している
ものは5種類程度に過ぎず、実用化に近いものをすべて
含めても20種類程度に過ぎない。このように商品化した
微生物除草剤が極めて少ない理由としては、微生物除草
剤による除草効果が特に大規模な試験において必ずしも
十分に発揮されないこと、除草効果が安定して発揮され
ないこと等が挙げられる。
【0006】微生物除草剤として利用される微生物の大
部分は、植物に対して病原性を示す糸状菌であり、細菌
由来のものは1種類に過ぎない。その一つが、芝地の強
害雑草であるスズメノカタビラ用の微生物除草剤キャン
ペリコ(農薬登録、農林水産省第19657号)である(今
泉誠子、スズメノカタビラ用微生物除草剤の開発、第9
回関東雑草研究会シンポジーム(1997))。これは、ス
ズメノカタビラに病原性を示すキサントモナス属細菌を
製剤化したもので、スズメノカタビラを選択的に除草で
きるという点に特徴がある。しかし、キサントモナス属
細菌は植物の道管内で生育するため、その主要な感染経
路は傷感染である。そのため、この微生物除草剤は芝等
の刈込み後に散布しなければ有効な除草効果が得られな
いという利用技術上の制約があった。
【0007】微生物除草剤は、特定の雑草を標的にする
のが一般的であり、他の種類の雑草には利用できない。
従って、それぞれの雑草に対する微生物除草剤の開発が
必要となる。北米由来の帰化雑草であるセイタカアワダ
チソウは、我が国の荒れ地、道端等に繁茂する最も一般
的な雑草である。その防除には、刈込み等の物理的除草
方法や化学除草剤の施用が行われてきたが、依然として
繁茂し続けている。しかし、セイタカアワダチソウに対
する微生物除草剤の研究は、これまで全く行われておら
ず、セイタカアワダチソウを防除し得る微生物除草剤の
開発が望まれていた。
【0008】一方、上記のように化学除草剤も微生物除
草剤もそれぞれの問題点があるため、それを補う除草方
法の開発も望まれていた。例えば、微生物除草剤を主体
として、それに化学除草剤を添加することにより有効な
除草が可能となれば、化学除草剤の散布回数や使用量の
低減化を実現することができると考えられる。このよう
な状況の下、セイタカアワダチソウを防除し得る新規微
生物除草剤、及び雑草に対して優れた除草効果を発揮す
るとともに化学除草剤との併用も可能であるような新規
微生物除草剤の開発が望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、セイタカア
ワダチソウを防除し得る新規微生物除草剤、及び雑草に
対して優れた除草効果を発揮するとともに化学除草剤と
の併用も可能であるような新規微生物除草剤を提供する
ことを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シュードモナス属
に属する微生物を用いることによりセイタカアワダチソ
ウを防除し得ることを見出した。また、本発明者らは、
氷核活性を有する微生物を用いることにより自然降霜を
利用して雑草を防除し得ることを見出した。さらに、本
発明者らは、上記微生物と化学除草剤とを併用すること
により効率よく雑草を防除し得ること見出した。
【0011】これらの知見に基づいて、本発明は完成す
るに至った。すなわち、本発明は、シュードモナス属に
属し、セイタカアワダチソウに対して病原性を示す微生
物を有効成分として含有することを特徴とする除草剤で
ある。また、本発明は、氷核活性を有する微生物を有効
成分として含有することを特徴とする除草剤である。さ
らに、本発明は、上記除草剤と1又は2種以上の化学除
草剤とを含有することを特徴とする除草剤である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一(以下、「第一発明」という)は、シュー
ドモナス属に属し、セイタカアワダチソウに対して病原
性を示す微生物を有効成分として含有することを特徴と
する除草剤である。
【0013】第一発明の除草剤の有効成分である微生物
は、シュードモナス属に属し、セイタカアワダチソウに
対して病原性を示す微生物である限り、いかなる微生物
であってもよいが、好ましくはシュードモナス・シリン
ゲ(Pseudomonas syringae)に属する微生物であり、最
も好ましくはシュードモナス・シリンゲ SEI-1株であ
る。なお、シュードモナス・シリンゲ SEI-1株は、工業
技術院生命工学工業技術研究所への受託が拒否されたた
め、分譲は本願出願人が保証する。シュードモナス・シ
リンゲについては、基本的な菌学的性質の他、5つの主
要性質で同定するLOPAT法(Lelliottら, J.Appl.Bact.,
29巻, 470-489頁, 1966年)により同定することが可能
である。
【0014】シュードモナス・シリンゲ SEI-1株は、葉
身に細菌病と推定される黒褐色の病斑を有するセイタカ
アワダチソウから分離した菌株である。本菌株は次のよ
うな菌学的性質を有している。グラム陰性菌であり、
極べん毛をもつ桿菌で運動性がある。キングB培地
(栄研化学製)で黄緑色蛍光色素を産生する。植物病
原細菌の簡易同定LOPAT法では、レバン産生(−)、オ
キシダーゼ活性(−)、ジャガイモ塊茎腐敗(−)、ア
ルギニン加水分解(−)、タバコ過敏反応(+)を示
し、LOPAT;Ib群に属する。これらの菌学的性質から、本
菌株はシュードモナス・シリンゲに属する微生物と同定
された。本菌株は、セイタカアワダチソウに対して選択
的に病原性を示し、他の植物(例えば、クワ、コウゾ、
カジノキ、ウメ等の樹木、アスター、サルビア、マリー
ゴールド等の草花、クワワサ、クズ、ハコベ等の雑草)
に対しては病原性を示さない。セイタカアワダチソウに
選択的に病原性を示すシュードモナス・シリンゲはこれ
まで全く知られていなかったため、本菌株は新しい病原
型の菌株であることが判明した。菌学的性質のうち、特
徴的な性質は、本菌株がLOPAT法に対する極めて特異的
反応を示す点である。なお、シュードモナス・シリンゲ
には、約50の亜種に相当する病原型(pathovar)が存在
する。これらの病原型は、菌学的性質によっては区別で
きず、特定の植物に対する病原性の有無によってのみ区
別できる。例えば、クワに病原性を示すものはpv.mor、
タバコに病原性を示すものはpv.tabaciと区別される。
このうち、特定の病原型(例えば、pv.mori)が氷核活
性を有することが知られている。
【0015】シュードモナス・シリンゲ SEI-1株の培養
には、特別な方法を使用する必要はなく、シュードモナ
ス属の公知の菌株と同様の培養方法を使用することがで
きる。培地としては、資化可能な炭素源、窒素源、無機
物及び必要な生育促進物質を適当に含有する培地であれ
ば、合成培地及び天然培地のいずれを使用してもよい。
具体的には、例えば、キングB培地(ペプトン 20g、K2
HPO4 1.5g、MgSO4・7H2O 1.5g、グリセリン 10g、寒天15
g、蒸留水1L)、シュークロース添加LB培地(ペプト
ン 10g、酵母エキス 5g、食塩 10g、寒天 15g、シュー
クロース 50g、蒸留水1L)等を使用することができる。
培養に際しては、培養温度を15〜30℃、好ましくは25〜
28℃、pHを5〜9、好ましくは6〜8とすることができる。
【0016】第一発明の除草剤としては、シュードモナ
ス属に属し、セイタカアワダチソウに対して病原性を示
す微生物(生菌)をそのまま使用してもよいし、適当な
液体担体に溶解若しくは分散させるか、又は適当な粉末
担体と混合させるか若しくはこれに吸着させて使用して
もよい。この際、必要に応じて乳化剤、分散剤、懸濁
剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤、安定剤等を添加し、液
剤、乳剤、油剤、水和剤、粉剤等に製剤化して使用する
こともできる。製剤化に使用する液体担体としては、例
えば、水、スキムミルク水溶液、ソルビトール水溶液、
グルタミン酸ナトリウム水溶液等を例示することがで
き、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用する
ことができる。また、製剤化に使用する粉末担体として
は、例えば、ゼラチン、絹フィブロイン粉末、ゼオライ
ト、スキムミルク等を例示することができ、これらの1
種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
製剤化方法は、微生物のセイタカアワダチソウに対する
病原性を失わせない限り特に限定されない。例えば、シ
ュードモナス属に属し、セイタカアワダチソウに病原性
を示す微生物をキングB培地等の細菌増殖用培地で20〜
30℃で2日間培養した後、それを殺菌蒸留水で懸濁し第
一発明の除草剤として使用することができる。この際、
懸濁液に界面活性剤(例えばツイ−ン20)を5000倍程度
に希釈して混合すると、微生物と葉面との接着が良好と
なるため好ましい。
【0017】第一発明の除草剤の有効成分である微生物
の濃度は、使用目的に応じて適宜設定することができ
る。例えば、上記のように微生物の懸濁液を使用する場
合には、微生物濃度を108〜109cells/mlの範囲とするの
が好ましく、さらに高濃度であれば除草効果をより安定
して発揮させることができる。第一発明の除草剤を使用
する際、その散布量は対象植物の繁茂の度合いに応じて
適宜設定することができる。散布方法は特に限定され
ず、例えば、塗布、付着、噴霧等の方法を用いた無傷接
種又は有傷接種を例示することができる。散布の際に
は、噴霧器等によって対象植物の葉面に微生物が十分に
付着させるのが好ましい。有傷接種は、対象植物を機械
的に傷付けた後に行うと効果的である。実施例において
は、束針法で機械的に傷を付けたが、第一発明の除草剤
を大規模に使用する場合には、機械的除草によって対象
植物を傷付けた後に有傷接種すればよい。
【0018】第一発明の除草剤の対象植物は特に限定さ
れないが、セイタカアワダチソウに対して特に有効であ
る。また、防除対象とする植物の生育時期についても特
に限定されず、発芽後まもない植物から成長した植物ま
で広く防除対象とすることができる。但し、対象植物を
セイタカアワダチソウとする場合、その生育段階や接種
時期により除草効果に差がある。セイタカアワダチソウ
の生育段階は、なるべく若い生育段階であるのが好まし
い。すなわち、生育期(5〜6月)のセイタカアワダチ
ソウ(例えば、背丈が5〜15cmのもの)を対象とするの
が好ましく、年間を通して使用する場合には、機械的除
草又は化学的除草の後、新たに生育してきた若い生育段
階のセイタカアワダチソウ(例えば、背丈が5〜15cmの
もの)を対象とするのが好ましい。また、セイタカアワ
ダチソウへの接種時期は、微生物の増殖が旺盛な時期
(例えば、4〜9月)が好ましい。気温が低く、セイタ
カアワダチソウの生育が停止し、微生物の増殖も抑制さ
れる時期(例えば、10〜12月)では、微生物を接種して
もセイタカアワダチソウへの感染が起こらず、有効な除
草効果が得られない。これに対して、接種時期が6月頃
であれば、セイタカアワダチソウに容易に感染させ発病
させることができる。この場合には、接種後1週間程度
で初期病斑が現われ、壊疽斑点に進行し、それが拡大す
る。さらには、周囲のセイタカアワダチソウにまで感染
し、有効な除草効果が得られる。
【0019】第一発明の除草剤の有効成分としてシュー
ドモナス・シリンゲ SEI-1株を使用する場合には、セイ
タカアワダチソウを選択的に防除することができる。す
なわち、シュードモナス・シリンゲ SEI-1株は、セイタ
カアワダチソウに対して特異的に病原性を示し、他の植
物(例えば、クワ、コウゾ、カジノキ、ウメ等の樹木、
アスター、サルビア、マリーゴールド等の草花、クワワ
サ、クズ、ハコベ等)に対しては病原性を示さない。従
って、シュードモナス・シリンゲ SEI-1株の使用に当た
っては、周囲の植物等への影響を考慮することはない。
この宿主選択性の高さは優れた除草剤の条件であり、使
用場所が限定されることはなく、例えば、非農耕地(鉄
道線路、公園、堤防、駐車場、のり面)や畑地での使用
が可能である。しかしながら、本菌株は以下で詳述する
ように氷核活性をも有するため、気温が低下し自然降霜
が起こる時期に畑地で使用する場合には注意を要する。
【0020】本発明の第二(以下、「第二発明」とい
う)は、氷核活性を有する微生物を有効成分として含有
することを特徴とする除草剤である。第二発明の有効成
分である微生物は、氷核活性を有する微生物である限
り、いかなる微生物であってもよい。ここで、「氷核活
性を有する微生物」とは、氷晶核となり水を凍結又は氷
結させる能力を有する微生物を意味する。このような微
生物としては、例えば、-6℃〜0℃の温度範囲で氷核活
性を有することが可能な微生物を例示することができ
る。ここで、「可能な」とは、-6℃〜0℃の温度範囲に
限定されず、-6℃より低い温度においても氷核活性を有
し得ることを意味する。従って、氷核活性を有する微生
物が水を凍結又は氷結させる温度は特に限定されるもの
ではない。
【0021】氷核活性を有する微生物としては、例え
ば、シュードモナス属、エルウィニア属又はザントモナ
ス属に属する微生物を例示することができる。シュード
モナス属に属する氷核活性細菌としては、例えば、シュ
ードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluoresc
ens)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syrin
gae)、シュードモナス・ビリジフラバ(Pseudomonas v
iridiflava)等を例示することができ、エルウィニア属
に属する氷核活性細菌としては、例えば、エルウィニア
・アナナス(Erwinia ananas)、エルウィニア・ヘルビ
コーラ(Erwiniaherbicola)、エルウィニア・ステワル
ティ(Erwinia stewartii)等を例示することができ、
ザントモナス属に属する氷核活性細菌としては、例え
ば、ザントモナス・カンペストリス(Xanthomonas camp
estris)等を例示することができる(Lindow,S. Annual
Review of Plant Pathology, 21巻 363-384, 1982, 佐
藤守,遺伝42巻, 30-34. 1988)。より具体的には、シュ
ードモナス属に属する氷核活性細菌として、シュードモ
ナス・シリンゲ SEI-1株、シュードモナス・シリンゲNi
23株、シュードモナス・シリンゲ Mei40株を例示するこ
とができ、エルウィニア属に属する氷核活性細菌とし
て、エルウィニア・アナナス TM2株、エルウィニア・ア
ナナス Mei7株を例示することができる。なお、これら
の菌株は、工業技術院生命工学工業技術研究所への受託
が拒否されたため、分譲は本願出願人が保証する。
【0022】シュードモナス・シリンゲ SEI-1株の菌学
的性質は、上記の通りである。本菌株の過冷却点(SCP
(Super cooling point)、氷核形成温度)は−1.8℃で
あり、氷核形成最小濃度は104cell/mlである。一般に、
過冷却点が高いほど、また氷核形成最小濃度が低いほ
ど、氷核活性が高いと判定でき、本菌株は従来の氷核活
性細菌の中にあって氷核活性が最も優れていることが判
明した。このような優れた氷核活性は、特定の培養条件
(培地、培養温度等)下で培養することにより特異的に
増強できる。すなわち、最適な培養条件で培養した氷核
活性細菌の氷核活性は、通常の培地で培養したときの10
倍以上も増強できる。氷核活性細菌の活性を増強するの
に好都合な培地としては、キングB培地(ペプトン 20
g、K2HPO4 1.5g、MgSO4・7H2O 1.5g、グリセリン 10g、
寒天15g、蒸留水1L)、シュークロース添加LB培地
(ペプトン 10g、酵母エキス 5g、食塩 10g、寒天 15
g、シュークロース 50g、蒸留水1L)等を例示すること
ができる。氷核活性を増強するには培養温度も重要であ
り、培養温度は好ましくは18〜22℃である。培養温度が
この温度範囲より低いと目的とする細菌量を得るのに長
時間を要するという問題点があり、また高すぎると細菌
表層の氷核活性蛋白が変性し氷核能力が低下するという
問題点がある。なお、このような氷核活性を増強するた
めの条件は、氷核活性を有する微生物のいずれにも適用
可能である。
【0023】シュードモナス・シリンゲ Ni23株は、ク
ワ葉面から分離された氷核活性細菌である。本菌株の菌
学的性質は次の通りである。グラム陰性細菌で、極鞭
毛を有する桿菌で運動性がある。キングB培地で黄緑
色蛍光色素を産生する。レバン産生(−)、オキシダ
ーゼ活性(−)、ジャガイモ塊茎腐敗(−)、アルギニ
ン加水分解(−)、タバコ過敏感反応(+)の特性を有
する。これらの菌学的性質から、本菌株はシュードモナ
ス・シリンゲに属する微生物と同定された。本菌株の過
冷却点は−3.0℃であり、氷核形成最小濃度は104〜106c
ells/mlである。
【0024】シュードモナス・シリンゲ Mei40株は、ク
ワノメイガ体内から分離された氷核活性細菌である。本
菌株の菌学的性質は次の通りである。グラム陰性細菌
で、極鞭毛を有する桿菌で運動性がある。キングB培
地で黄緑色蛍光色素を産生する。レバン産生(−)、
オキシダーゼ活性(−)、ジャガイモ塊茎腐敗(−)、
アルギニン加水分解(−)、タバコ過敏感反応(+)の
特性を有する。これらの菌学的性質から、本菌株はシュ
ードモナス・シリンゲに属する微生物と同定された。本
菌株の過冷却点は−3.0℃であり、氷核形成最小濃度は1
04〜106cells/mlである。
【0025】エルウィニア・アナナス TM2株は、クワ葉
面から分離された氷核活性細菌である。本菌株の菌学的
性質は次の通りである。グラム陰性細菌で、周毛を有
する桿菌で運動性がある。多くの増殖用培地で黄色の
集落を形成する。内生胞子、気中菌糸を形成しない。
硝酸塩を還元しない。イノシトール、ラフィノー
ス、セルビオース、メリビオース、グリセロールを利用
する。これらの菌学的性質から、本菌株はエルウィニア
・アナナスに属する微生物と同定された。本菌株の過冷
却点は−2.7℃であり、氷核形成最小濃度は104〜106cel
ls/mlである。
【0026】エルウィニア・アナナス Mei7株は、クワ
ノメイガ体内から分離された氷核活性細菌である。本菌
株の菌学的性質は次の通りである。グラム陰性細菌
で、周毛を有する桿菌で運動性がある。多くの増殖用
培地で黄色の集落を形成する。キングB培地で黄緑色
蛍光色素を産生しない。好気的、嫌気的生育をする。
内生胞子、気中菌糸を形成しない。硝酸塩を還元し
ない。イノシトール、ラフィノース、セルビオース、
メリビオース、グリセロールを利用する。これらの菌学
的性質から、本菌株はエルウィニア・アナナスに属する
微生物と同定された。本菌株の過冷却点は−2.7℃であ
り、氷核形成最小濃度は106cells/mlである。
【0027】なお、エルウィニア・アナナスについて
は、腸内細菌同定キットAPI20E(BioMerieux社製)およ
び主要糖類分解能検定(Dye,D.W. (1983): Erwinia: Th
e“Amylovora" and“Herbicola" groups. Plant Bacter
ial Diseases (Fahy, P.C. andPersley, G. J. Ed. ) A
cademic Press, 67-86頁)等により同定が可能である。
【0028】氷核活性を有する微生物の培養には、特別
な方法を用いる必要はなく、氷核活性を有する公知の微
生物と同様の培養方法を用いることができる。培地とし
ては、資化可能な炭素源、窒素源、無機物及び必要な生
育促進物質を適当に含有する培地であれば、合成培地及
び天然培地のいずれを用いてもよい。具体的には、例え
ば、キングB培地、シュークロース添加LB培地等を用
いることができる。培養に際しては、培養温度を15〜25
℃、好ましくは18〜22℃、pHを5〜9、好ましくは6〜7と
することができる。
【0029】第二発明の有効成分としては、氷核活性を
有するとともに植物に対して病原性を示す微生物を使用
するのが好ましい。このような微生物を使用すれば、氷
核活性によって微生物を植物開口部から感染させること
ができ、これによって微生物を傷感染させなくても、該
微生物の病原性を発揮させることができる。氷核活性を
有するとともに植物に対して病原性を示す微生物として
は、例えば、シュードモナス・シリンゲに属する微生物
を例示することができ、より具体的には、シュードモナ
ス・シリンゲ SEI-1株を例示することができる。
【0030】第二発明の有効成分である氷核活性を有す
る微生物は生菌であってもよいが、氷核活性を有する菌
体処理物であってもよい。菌体処理物には、氷核活性を
有する処理物である限り、菌体にいかなる処理を施した
ものも含まれる。このような菌体処理物としては、例え
ば、菌体表層の氷核タンパク質を破壊しない滅菌処理
(例えば、紫外線照射処理、γ線照射処理等)により得
られる死菌を例示することができる。氷核活性を有する
限り、生菌であっても菌体処理物であっても除草剤の有
効成分として使用できることは、氷核活性を有する微生
物に由来する氷核活性タンパク質を化学除草剤に混入す
ることによって有望な生物除草剤が得られることを意味
する。
【0031】第二発明の除草剤は、氷核活性を有する微
生物又はその菌体処理物をそのまま使用してもよいし、
適当な液体担体に溶解若しくは分散させるか、又は適当
な粉末担体と混合させるか若しくはこれに吸着させるこ
とにより製剤化して使用してもよい。この際、製剤化に
使用する液体担体としては、例えば、水、スキムミルク
水溶液、グルタミン酸ナトリウム水溶液、ソルビトール
水溶液等を例示することができ、これらの1種又は2種
以上を組み合わせて使用することができる。また、製剤
化に使用する粉末担体としては、例えば、ゼラチン、絹
フィブロイン、ゼオライト、スキムミルク等を例示する
ことができ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて
使用することができる。さらに、必要に応じて乳化剤、
分散剤、懸濁剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤、安定剤等を
添加し、液剤、乳剤、油剤、水和剤、粉剤等に製剤化し
て使用することもできる。例えば、氷核活性を有する微
生物をキングB培地等の細菌増殖用培地で22℃で2日間
培養した後、殺菌蒸留水に懸濁し第二発明の除草剤とし
て使用することができる。この際、懸濁液に界面活性剤
(例えば、ツイ−ン20(シグマ社製))を5000倍程度に
希釈して混合すると、葉面と微生物との接着が良好とな
るため好ましい。
【0032】微生物除草剤を実用的に利用する際の決め
ては製剤化が可能であるか否かである。すなわち、目的
とする微生物の特性(第二発明においては氷核活性)を
安定かつ高レベルに維持することが非常に重要であり、
微生物の特性を安定かつ高レベルに維持するための保護
剤の開発が必要不可欠となる。このような保護剤として
利用する媒体は、微生物の吸着能及び保持能が高く、さ
らに微生物の特性を維持でき、しかも比較的安価で容易
に製剤化できる必要がある。第二発明の除草剤を製剤化
する際に使用し得る微生物の保護剤としては、ゼラチ
ン、絹タンパク質、絹フィブロイン等を例示することが
できる。これらの保護剤を使用して製剤化すれば、氷核
活性を有する微生物の特性(氷核活性)を安定かつ高レ
ベルに維持させた状態で製剤化することができる。例え
ば、氷核活性を有する微生物の懸濁液に上記保護剤を添
加した後、微生物を保護剤に吸着させ、乾燥させること
により微生物の氷核活性を安定かつ高レベルに維持させ
た状態で粉剤に製剤化することができる。この際、懸濁
液の微生物濃度は、2〜10%程度とするのが好ましい。
また、乾燥処理の前に微生物を保護剤に十分吸着させて
おくことが重要であり、そのために懸濁液に保護剤を加
えた後、該懸濁液を20〜25℃で1時間程度静置しておく
のが好ましい。
【0033】第二発明の除草剤の有効成分である微生物
の濃度は、剤型や使用目的等に応じて適宜設定すること
ができる。例えば、上記のように氷核活性を有する微生
物を懸濁して使用する場合には、懸濁液中の微生物濃度
を103〜109/ml、好ましくは106〜109/mlの範囲とするこ
とができる。この際、氷核活性を有する微生物としてシ
ュードモナス・シリンゲ SEI-1株を使用する場合、懸濁
液中のシュードモナス・シリンゲ SEI-1株の濃度が103/
ml以上であれば除草効果が発揮され得る。自然の環境下
では、太陽の紫外線照射環境下で減菌されるが、細菌濃
度が103/mlにまで減少しても、依然氷核活性を有してい
るので、散布後、シュードモナス・シリンゲ SEI-1株の
氷核活性が長期間にわたって維持される。例えば、108/
mLのシュードモナス・シリンゲ SEI-1株を植物体に十分
噴霧した場合には、散布後2週間以上にわたり除草効果
が維持され得る。
【0034】第二発明の除草剤を使用する際、その散布
量は雑草の繁茂の度合いに応じて適宜設定することがで
きる。散布方法は特に限定されず、例えば、塗布、付
着、噴霧等の方法を用いた無傷接種又は有傷接種を例示
することができる。散布の際は、噴霧器等によって対象
植物の葉面に氷核活性を有する微生物が十分に付着する
ように行うのが好ましい。有傷接種は、例えば、機械的
除草によって植物体を傷付けた後、第二発明を散布する
ことによって行うことができる。機械的除草の後に第二
発明の除草剤を散布することにより対象植物の二次発生
を抑えることが可能となる。
【0035】第二発明の除草剤の対象植物は特に限定さ
れない。第二発明の除草剤の対象植物としては、例え
ば、秋〜冬季の雑草、より具体的には、イネ科の雑草
(例えば、イヌムギ、ネズミムギ、ホソムギ、スズメノ
カタビラ、スズメノテッポウ、カモジグサ)、マメ科の
雑草(例えば、スズメノエンドウ、カラスノエンド
ウ)、ナデシコ科の雑草(例えば、ミミナグサ、ノミノ
フスマ)、シソ科の雑草(ホトケノザ)、ゴマノハグサ
科の雑草(例えば、オオイヌノフグリ)、アブラナ科の
雑草(例えば、ナズナ)、アカネ科の雑草(例えば、ヤ
エムグラ)、ヒメオドリコソウ等を例示することができ
る。
【0036】氷核活性を有する微生物は、その表層に氷
核蛋白を有しているため、氷晶核となり、周囲の水滴を
凍結又は氷結させる。この性質を利用すれば、気温の低
下や自然降霜によって対象植物に凍霜害を誘起すること
ができ、これによって対象植物を凍死させて防除するこ
とができる。この際、例えば−5℃程度の自然降霜が30
分〜2時間であれば、氷核活性を有する微生物による凍
霜害を十分に誘起することができ、対象植物を効率よく
防除することができる。また、−2〜3℃程度の自然降霜
であっても、これが30分以上、好ましくはさらに長時間
続けば、氷核活性を有する微生物による凍霜害を十分に
誘起することができ、対象植物の防除が可能となる。
【0037】第二発明の除草剤による使用に当たって
は、その使用場所を十分に考慮するのが望ましい。すな
わち、氷核活性を有する微生物による除草効果は、非特
異的に発揮され得るので、対象植物以外の有用植物(例
えば、野菜等の農作物)に対しても氷核活性を有する微
生物による凍霜害が誘起される可能性がある。そこで、
第二発明の除草剤を使用するに当たっては、その使用場
所を限定することを考慮するのが好ましい。例えば、有
用植物が存在しない場所、非農耕地(鉄道線路、公園、
堤防、駐車場、のり面)、氷核活性を有する微生物によ
り誘起される凍霜害の影響を受けない有用植物が存在す
る場所等で使用するのが好ましい。また、以下の実施例
で示すように高麗芝等の芝草は氷核活性を有する微生物
によって誘起される凍霜害の影響を受けず、強い耐凍性
を示すので、芝草の栽培畑やゴルフ場で使用するのも好
ましい。
【0038】本発明の第三は、第一発明の除草剤又は第
二発明の除草剤と1又は2種以上の化学除草剤とを含有
することを特徴とする除草剤である。化学除草剤として
は、公知のいかなる化学除草剤を使用してもよく、例え
ば、水田用、畑地用、非農耕地用等の市販の化学除草剤
を使用することができる。より具体的には、鉄道線路、
公園、堤防、駐車場、のり面等の非農耕地用の化学除草
剤として使用されるグリホサ−ト系除草剤(例えば、
「ラウンドアップ」(日本モンサント株式会社製))、
グリホシネ−ト系除草剤(ヘキスト社製)、ビピリジリ
ウム系除草剤(例えば、パラコート、ジクワット(ゼネ
カ社製))を例示でき、水田用の除草剤としては、スル
ホニルウレア系除草剤を例示することができる。
【0039】第一発明の除草剤又は第二発明の除草剤と
化学除草剤とを混合して使用すれば、化学除草剤の散布
回数又は散布量を軽減化することができる。化学除草剤
は、一般に即効的かつ強力な除草効果を有するという優
れた特徴を有する反面、環境汚染という問題点を持って
いるため、化学除草剤の散布回数又は散布量を軽減化で
きることは非常に有用である。
【0040】第一発明の除草剤と化学除草剤とを併用し
て雑草(例えば、セイタカアワダチソウ)の除草を行う
場合、その使用時期は、第一発明の有効成分である微生
物の増殖が活発な時期(例えば4月〜9月)が好ましく、
この時期において使用すれば、化学除草剤の散布回数又
は散布量を大幅に減少させることができる。また、氷核
活性を有する微生物による除草効果は気温の低下や降霜
によって誘起されるので、氷核活性を有する微生物と化
学除草剤とを併用することにより、特に気温が低い時期
(例えば、10月〜3月)における化学除草剤の散布回数
又は散布量を大幅に減少させることができる。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例により更に
詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるも
のではない。 〔実施例1〕クワ及びクワノメイガからの氷核活性細菌
の分離 クワ植物の葉又は昆虫クワノメイガを乳鉢に入れ、適当
量の殺菌水を加え十分に摩砕し、それを希釈平板法によ
り、LB培地(ペプトン 10g、酵母エキス 5g、食塩 10
g、寒天 15g、蒸留水1L)を用いて28℃で培養した。3日
間培養して得られた単一のコロニーを、更に純粋培養し
て分離菌株とした。
【0042】これらの分離菌株の氷核活性の有無を次の
方法で検定した。すなわち、分離菌株をLB平板培地法
を用いて22℃で1〜2日間培養した後、菌体を殺菌水に
108/mL程度に懸濁して供試液とした。その供試液のうち
の約1mLを栄研製の試験管(減菌Fスピッツ、10mL
容)に取り、−5℃の不凍液中に30分程度浸漬して、細
菌懸濁液の凍結の有無により氷核活性の有無を目視で判
定した。氷核活性を示した菌株は、スキムミルク培地
(スキムミルク10g、グルタミン酸ソーダ1.5g、100mL)
に混ぜ、−30℃で保存した。再度使用する時は、それを
溶解してLB培地で培養した。
【0043】上記の方法により氷核活性細菌が、クワ葉
面から2菌株(Ni23株、TM2株)、クワノメイガ体内か
ら2菌株(Mei40株、Mei7株)分離された。そこで、こ
れらの菌株の菌学的性質を調べ、各菌株の同定を試み
た。その結果、Ni23株は次のような菌学的性質を有して
いた。 グラム陰性細菌 極鞭毛を有する桿菌で運動性がある キングB培地で黄緑色蛍光色素を産生する レバン産生(−)、オキシダーゼ活性(−)、ジャガ
イモ塊茎腐敗(−)、アルギニン加水分解(−)、タバ
コ過敏感反応(+)の特性を有する 上記菌学的性質より、Ni23株をシュードモナス・シリン
ゲ(Pseudomonas syringae)に属する微生物と同定し、
シュードモナス・シリンゲ Ni23株と命名した。
【0044】また、TM2株は次のような菌学的性質を有
していた。 グラム陰性細菌 周毛を有する桿菌で運動性がある 多くの増殖用培地で黄色の集落を形成する 内生胞子、気中菌糸を形成しない 硝酸塩を還元しない イノシトール、ラフィノース、セルビオース、メリビ
オース、グリセロールを利用する 上記菌学的性質より、TM2株をエルウィニア・アナナス
(Erwinia ananas)に属する微生物と同定し、エルウィ
ニア・アナナス TM2株と命名した。
【0045】また、Mei40株は次のような菌学的性質を
有していた。 グラム陰性細菌 極鞭毛を有する桿菌で運動性がある キングB培地で黄緑色蛍光色素を産生する レバン産生(−)、オキシダーゼ活性(−)、ジャガ
イモ塊茎腐敗(−)、アルギニン加水分解(−)、タバ
コ過敏感反応(+)の特性を有する 上記菌学的性質より、Mei40株をシュードモナス・シリ
ンゲ(Pseudomonas syringae)に属する微生物と同定
し、シュードモナス・シリンゲ Mei40株と命名した。
【0046】また、Mei7株は次のような菌学的性質を有
していた。 グラム陰性細菌 周毛を有する桿菌で運動性がある 多くの増殖用培地で黄色の集落を形成する キングB培地で黄緑色蛍光色素を産生しない 好気的、嫌気的生育をする 内生胞子、気中菌糸を形成しない 硝酸塩を還元しない イノシトール、ラフィノース、セルビオース、メリビ
オース、グリセロールを利用する
【0047】上記菌学的性質より、Mei7株をエルウィニ
ア・アナナス(Erwinia ananas)に属する微生物と同定
し、エルウィニア・アナナス Mei7株と命名した。な
お、シュードモナス・シリンゲ Ni23株、エルウィニア
・アナナス TM2株、シュードモナス・シリンゲ Mei40株
及びエルウィニア・アナナス Mei7株は、工業技術院生
命工学工業技術研究所への受託が拒否されたため、各菌
株の分譲は本願出願人が保証する。
【0048】〔実施例2〕セイダカアワダチソウからの
氷核活性細菌の分離 セイダカワダチソウから氷核活性細菌を次の方法で分離
した。1998年5月、茨城県つくば市の農道に繁茂するセ
イダカアワダチソウの葉身に細菌病と判定できる黒褐色
の病斑を見付けた。セイタカアワダチソウの細菌病に関
しては全く知られておらず、新菌種の可能性があるた
め、細菌を分離することにした。その結果、分離細菌
は、健全なセイダカアワダチソウに有傷、無傷接種法の
いずれでも、明瞭な病原性を示し新病原細菌であること
が確定した。
【0049】分離細菌は、グラム陰性であり、極べん毛
を持つ桿菌で運動性を示した。また、キングB培地(栄
研化学製)で黄緑色蛍光色素が産生したので、シュード
モナス属に属することが確認できた。更に、植物病原細
菌の簡易同定LOPAT法では、レバン産生(−)、オキシ
ダーゼ活性(−)、ジャガイモ塊茎腐敗(−)、アルギ
ニン加水分解(−)、タバコ過敏感反応(+)を示し、
LOPAT;Ib群に属するものと断定できたため、本菌株をシ
ュードモナス・シリンゲに属する微生物と同定した。本
菌株は、以下で述べるようにセイタカアワダチソウに病
原性を有するが、同植物に病原性を示すシュードモナス
・シリンゲに属する微生物は全く知られていないため、
新病原型すなわち新菌株であると同定し、シュードモナ
ス・シリンゲ SEI-1株と命名した。なお、この菌株は、
工業技術院生命工学工業技術研究所への受託が拒否され
たため、分譲は本願出願人が保証する。
【0050】〔実施例3〕新規氷核活性細菌の氷核活性 実施例1及び2で分離したシュードモナス・シリンゲ S
EI-1株、Ni23株及びMei40株、並びにエルウィニア・ア
ナナス TM2株及びMei7株と、公知の非氷核活性細菌との
氷核活性を比較した。氷核活性の比較は、108/mL程度の
細菌懸濁液における過冷却温度(氷核活性開始温度)及
び−5℃〜−6℃における氷核形成最小濃度の2つの要
因について評価することにより行った。この評価によっ
て、過冷却温度が高いほど、また、氷核形成最小濃度が
低いほど、氷核能力が高いと判定できる。過冷却温度
は、試作装置としてデザインした過冷却温度測定器によ
り測定した。その際、サンプル量は20μLとし、冷却速
度は1℃/分とした。
【0051】また、氷核形成最小濃度の測定は、測定し
ようとする細菌懸濁液を通常10倍段階希釈することによ
り、段階的な細菌濃度検定液を1mLの量で試験管内に
作製し、これを上述の温度により30分程度空冷又は不凍
液中に保ち、どの濃度の懸濁液まで氷結したかを調査す
ることにより行った。ここで、空冷による方法とは、一
定の温度(−6℃〜0℃)の恒温度室内に氷核活性細菌
の入った試験管を置いて30分後に試料の氷核形成状態を
調べる方法を意味する。また、不凍液中での方法とは、
エチレングリコールを冷媒として一定温度に保冷した冷
媒中に氷核活性細菌の入った試験管を入れて経時変化を
調べる方法を意味する。同時に、各希釈液中の細菌数
(生菌数)を調べ、細菌濃度を1mLあたりの生菌数で表
示した。各種氷核活性細菌の氷核形成温度(過冷却点)
及び氷核形成最小濃度(CFU/mL)を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】表1から明らかなように、シュードモナス
・シリンゲ SEI-1株、Ni23株及びMei40株、並びにエル
ウィニア・アナナス TM2株及びMei7株の5菌株は、いず
れも高い氷核活性を示した。とりわけ、シュードモナス
・シリンゲ SEI-1株は、氷核形成温度−1.8℃、氷核形
成最小濃度104/mLと最も優れた氷核能力を示し、かつ
安定していた。一方、シュードモナス・シリンゲ Ni23
株及びMei40株、並びにエルウィニア・アナナス TM2株
及びMei7株は、氷核形成最小濃度が104〜106/mLであ
り、シュードモナス・シリンゲ SEI-1株より氷核活性が
幾分低かった。
【0054】〔実施例4〕セイタカアワダチソウに対す
るSEI-1株の病原性 生育ステージの異なるセイタカアワダチソウ(若苗、成
熟苗)にSEI-1株の懸濁液(濃度109/ml)を接種し、SEI-
1株の病原機能を活かしたセイタカアワダチソウの除草
効果を評価した。その際、散布時期の適否を検討するた
め接種時期を6月12日、6月5日、11月1日の3区とし、そ
れぞれ野外の自然環境下で行った。また、接種には無傷
接種と有傷接種の2区を対象にした。無傷接種の中には
噴霧と塗抹を含めることがある。噴霧接種とは、109/mL
の細菌液(ツイ−ン20、5000倍希釈液)を噴霧器によ
り、葉の裏表に十分にかかるように噴霧する方法を意味
する。有傷接種は10本程度の縫針を一つに束ねたもの
の先端を、109/mLの細菌液を付着させ、葉の表面に一葉
身につき約10箇所軽度の傷が付く程度に刺し、温室
(20〜25℃)におき、2週間程度観察する方法を意味す
る。さらに、接種時期が6月の若苗及び成熟苗として
は、背丈がそれぞれ10cm、60cm程度のセイタカアワダチ
ソウを、接種時期が11月の若苗としては、背丈は10cm程
度のセイタカアワダチソウを用いた。得られた結果を表
2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】表2から明らかなように、背丈10cm程度の
セイダカアワタチソウの若苗にSEI-1株の懸濁液を噴霧
接種すると、接種後1週間程度で初期病斑が現れ、それ
が壊疽斑点となり拡大し、セイタカアワダチソウを容易
に発病させることができた。そして、さらに周囲の若苗
に感染し病気が広がった。有傷接種の場合も同様であっ
たが、病斑の進展が早かった。また、噴霧接種及び有傷
接種に関して、植物体の病原性発現に及ぼす影響を比較
すると、有傷接種の方がより広範な適用範囲を示した。
例えば、表2に示すように、成熟苗でも中程度の病斑の
進行を示した。
【0057】但し、気温の低下する11月では、噴霧接種
及び有傷接種の両方とも、ほとんど感染せず病徴もみら
れなかった。そのため、SEI-1株でセイタカアワダチソ
ウを除草するには、4〜9月の気温の高い時期に、なる
べく若い植物を対象に散布することが特に好ましいこと
が判明した。また、SEI-1株は傷口から容易に植物体に
侵入するため、例えば、機械除草の後に散布することに
より、二次発生を抑えることが可能であるが判明した。
【0058】〔実施例5〕SEI-1株の各種雑草及び有用
植物に対する病原性 各種雑草及び有用植物にSEI-1株の懸濁液(濃度109/m
l)を噴霧接種又は有傷接種し、各種雑草及び有用植物
に対するSEI-1株の病原性を検討した。接種時期及び実
験時期は6月上旬とした。接種後は、20-25℃の温室に
置き、2週間程度観察した。得られた結果を表3に示
す。
【0059】
【表3】
【0060】表3から明らかなように、噴霧接種の場
合、SEI-1株はセイタカアワダチソウにのみに病原性を
有し、それ以外の各種雑草及び有用植物には全く病原性
を示さないという、極めて高い寄主選択性を示した。有
傷接種の場合には、一部の植物体に壊疽斑を形成した
が、噴霧接種では全く病徴を示さなかった。このよう
に、SEI-1株は対象雑草であるセイタカアワダチソウ以
外の植物に害を与えないという点において微生物除草剤
として優れた利点を有することが判明した。
【0061】〔実施例6〕SEI-1株の氷核活性機能によ
るイヌムギの霜害誘導(低温処理時間との関係) 氷核活性細菌SEI-1株を用いてイヌムギに霜害を起こさ
せる実験を行った。実施時期は、98年10月とし、野外に
繁茂しているイヌムギの若苗をポットに移植した。それ
に108/mL濃度の細菌液を噴霧し、-5℃で一定時間接触さ
せた後、温室に戻し、1-2週間程度観察した。対照とし
て氷核活性を有しないP.syringae SM-2株を用いた。イ
ヌムギを-5℃で低温処理する時間を変化させ、各処理時
間における霜害被害率を評価した。なお、これ以降の表
中で用いる「Cont(DW)」とは、蒸留水散布を行った対照
区を意味する。また、「m」は分を表し、「h」は時間を
表す。
【0062】実験例6以降における対象植物の霜害被害
率は下記の評価基準により霜害を起こした有用植物葉の
比率から評価した。 −:0−10% +:11−50% ++:51−80% +++:81−100% 得られた結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】表4から明らかなように、対照区では-5℃
の2時間以内の接触では全く被害が起らないか軽度の被
害であった。一方、氷核活性細菌SEI-1株(108/ml)を
散布した区では10分以上の接触で大きな被害(霜害)を
起こし、大部分が枯死した。これによって、-5℃で30分
程度(又は、対照区で被害が軽い-5℃で2時間程度)の
自然降霜があれば、冬雑草の氷核活性細菌による防除が
可能であることが判明した。
【0065】〔実施例7〕SEI-1株の氷核活性機能によ
るイヌムギの霜害誘導(SEI株の生菌及び死菌による氷
核活性機能の相違) SEI-1株の生菌及び死菌による氷核活性機能の相違、並
びに細菌濃度とイヌムギに表れる霜害の被害率との関係
を調べた。死菌は細菌液濃度を紫外線ランプで30cm直下
で15分程度照射し、得られたものである。これを実施例
6の生菌の場合と同様に希釈し、供試した。対照として
蒸留水のみの噴霧を行った。これらに-5℃で30分間の低
温処理を施し、霜害被害率を評価した。得られた結果を
表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】表5から明らかなように、イヌムギに氷核
活性細菌を接種するための最適細菌濃度は109〜108/ml
であり、-5℃で30分間〜2時間の降霜時に特に有効であ
ることが判明した。また、イヌムギを除草する際、生菌
濃度は107/ml 以上が好ましいが、低濃度(例えば102/m
l)でも軽微な除草効果が認められた。一方、紫外線照
射したSEI-1株の死菌でも十分な氷核活性機能が認めら
れた。この結果は、葉面上の細菌数が紫外線等の外部要
因で減少しても除草効果が顕著に減少するものでないこ
とを示しており、このことから、氷核活性細菌の散布後
に、比較的長期間、氷核活性機能が維持されることが判
明した(下記の実施例8で実験的にこの類推を確認して
いる)。また、紫外線死菌でも氷核活性機能を有するこ
とから、微生物除草剤の製剤化に当たり、必ずしも生菌
を使用する必要がなく、製剤化方法の適用範囲を広げる
ことができることが判明した。
【0068】〔実施例8〕SEI-1株の氷核活性機能によ
るイヌムギの霜害誘導効果の持続性 SEI-1株によりイヌムギの霜害の被害防止の効果がどの
程度持続するかを調べた。108/mlの菌株を植物に十分噴
霧器で散布し、温室内に所定期間保った後、低温処理を
行った。対照として蒸留水を散布し、同様な処理を行っ
た。なお、イヌムギの霜害実験は-5℃で30分間処理する
ことで効果の持続性を調べ、霜害被害率を評価した。得
られた結果を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】表6から明らかなように、SEI-1株の散布
後2週間以上効力が維持された。このように生菌そのも
のを用いても2週間以上の持続性が確認された。さらに
氷核蛋白の保護操作を加えることにより長期間の維持が
期待できる。このように製剤化に有用な展望が得られ
た。
【0071】〔実施例9〕SEI-1株の氷核活性機能によ
るイヌムギの霜害誘導(除草剤併用による効果) 除草剤(ラウンドアップ(日本モンサント社製))単
独、SEI-1株単独又はそれらの混合溶液を噴霧器でイヌ
ムギ若苗に十分散布し、-5℃で10分間又は30分間処理し
た後、温室(20-25℃)に戻し、霜害の被害の程度を観察
した。この際、SEI-1株として108/ml濃度の生菌を用い
た。また、除草剤と細菌懸濁液の混合比率は1:1と
し、対照として蒸留水を散布した。霜害の被害は、処理
直後〜2日間と比較的早く見られるが、除草剤による被
害の出現には、通常1-2週間かかるので3週間程度観察
した。これにより、化学除草剤併用によるイヌムギの霜
害被害率を評価した。得られた結果を表7に示す。
【0072】
【表7】
【0073】被害率は、次の4段階で評価した。 +++ 極めて著しい ++ 著しい + 普通 - 認め
られない 表中の(*)のついた被害率は、霜害と除草剤による被害
の両方を含んでいることを意味する。また、表中、「R
A」は除草剤ラウンドアップを意味し、「X」は希釈倍数
を意味し、「X 100 RA」は希釈倍率100倍のラウンドア
ップ除草剤を意味し、「X 100 RA + SEI-1」は希釈倍率
100倍の除草剤とSEI-1株生菌とを混合比率1:1で混合し
たものを意味する。
【0074】表7から明らかなように、霜害は低温処理
後早期に発現し、化学除草剤による被害は比較的長期間
経過後に発現した。従って、早い時期にほとんどが霜害
で枯死し(約80%程度)、残った健全葉がさらに化学除
草剤により枯死し、ほぼ100%の被害率となった。化学
除草剤のみの場合(X 100,X 500)も同様に100%が枯
死した。
【0075】また、表7から明らかなように、化学除草
剤の100倍及び 500倍希釈液を単独で散布した場合に
は、いずれの希釈倍率でも顕著な除草効果を示したが、
希釈倍率が1000倍の場合には除草効果は見られなかっ
た。一方、化学除草剤に氷核活性細菌を混合した場合に
は、化学除草剤を単独で施用した場合と同様の被害程度
を示したが、氷核活性細菌を混合したことによる除草効
果の増進は確認できなかった。また、化学除草剤の混合
によって氷核活性細菌による霜害誘導効果は減少しなか
った。
【0076】〔実施例10〕各種氷核活性細菌によるイ
ヌムギの霜害誘導 SEI-1株以外の氷核活性細菌(Pseudomonas syringae Me
i40株及びNi23株、Erwinia ananas Mei40株及びTM2株)
においても同様の効果が認められるかどうかを確かめる
ために、各種氷核活性細菌の生菌(濃度108/mL)を噴霧
器でイヌムギに散布し、-5℃で10分間又は30分間接触さ
せた後、温室に移し、霜害被害率を観察した。得られた
結果を表8に示す。
【0077】
【表8】
【0078】表8から明らかなように、いずれの氷核活
性細菌もSEI-1株と同程度に効果が認められた。この結
果から、いずれの菌株もSEI-1株と同様に除草用として
利用可能なことが分かった。 〔実施例11〕SEI-1株の氷核活性機能による各種冬雑
草の霜害誘導 イヌムギ以外の冬雑草に対するSEI-1株の霜害誘導効果
を知るため、細菌液(108/ml)を各種植物に噴霧し、-5℃
に所定時間接触させ、その後、戸外(自然温度)に置
き、霜害被害率を評価した。なお、対照として蒸留水を
噴霧したものを用いた。得られた結果を表9に示す。
【0079】
【表9】
【0080】表9から明らかなように、SEI-1株の噴霧
接種により大部分の冬雑草に置いて効果が見られた。す
なわち、無処理では、3時間の低温接触(−5℃)でも
ほとんど影響を受けないが、SEI-1株の接種により30分
程度の接触時間でも甚大な被害(霜害)が誘導された。
一部の雑草では、もともと低温に敏感なものも見受けら
れた。 〔実施例12〕SEI-1株の氷核活性機能による有用植物
の霜害誘導 SEI-1株を散布した場合の有用植物への被害程度を知る
ため芝及び代表的な冬作物であるコマツナに対する霜害
被害率を評価した。得られた結果を表10に示す。
【0081】
【表10】
【0082】表10から明らかなように、芝(高麗芝)
は極めて低温に耐性であり、SEI-1株の影響もほとんど
現れなかった。一方、コマツナも冬雑草等に比べて、強
い耐性を持ち、軽微な被害であった。このように有用作
物の種類によっては影響の小さいものが見出された。 〔実施例13〕氷核活性細菌(SEI-1株)の製剤化を目
的とした各種吸着保護剤の評価検定 氷核活性細菌(SEI-1株)の懸濁液(3.3×108/ml)に下記
の各種吸着保護剤を6〜10%加えてよく撹拌した。約1時
間静置することにより氷核活性細菌を吸着保護剤に吸着
させた後、遠心処理(5000rpm、15min)して上清を除い
た。次いで、22℃の恒温器に1週間保ち、試料水溶液を
徐々に自然乾燥で蒸発させ、1日程度自然乾燥させるこ
とによって乾燥固化状態とした。
【0083】なお、吸着保護剤として用いたゼラチンは
DIFCO社製、シリカゲルはMERCK製商品名Kieselgel 60(7
0-230 mesh ASTM)、スキンミルクはDIFCO社製のもので
ある。フィブロイン粉末は次のように調製した。家蚕絹
糸を95℃の0.2%炭酸ナトリウム水溶液で精練して絹フ
ィブロイン繊維を得た後、これを臭化リチウム水溶液に
入れ55℃で30分かけて溶解した。これをセルロース透析
膜に入れ、純水と置換して絹フィブロイン水溶液を調製
した後、-30℃で一旦凍結させたものを減圧乾燥するこ
とで粉末状の絹フィブロインを調製した。セリシン粉末
は、家蚕繭糸を蒸留水に入れて煮沸し、繭糸表面を覆っ
ているセリシンを除去した後、水溶液を凍結乾燥して調
製した。
【0084】氷核活性細菌を吸着した保護剤の氷核活性
能は次のようにして検定した。乾燥状態の試料に乾燥前
と等量の殺菌蒸留水を加えてよく撹拌した。これを原液
として、10倍階段希釈液を作製した。これらを−5℃で3
0分間接触させ、どの希釈濃度まで氷結するか否かを判
別することによって氷核活性能の強弱を判定した。得ら
れた結果を表11に示す。
【0085】
【表11】
【0086】表11から明らかなように、対照区として
用いた蒸留水区では氷核活性維持最大希釈倍率が10で
あるのに対し、絹フィブロイン粉末及びゼラチンの氷核
活性維持能力は、対照区の1000倍の能力(希釈倍率1000
0)を示した。一方、セリシン、シリカゲルや従来から
細菌の凍結又は凍結乾燥用の媒体としてよく用いられる
スキムミルクでは、ほとんど吸着効果、保持効果又は高
品質の特性維持効果は認められなかった。なお、これと
は別に行った凍結処理実験においては、スキムミルクは
高い保護能力を示した。これらの事実から、絹フィブロ
イン粉末及びゼラチンは氷核活性細菌の乾燥粉末作成の
吸着保護剤として優れた能力を有していることが明らか
になった。
【0087】
【発明の効果】本発明により、セイタカアワダチソウを
防除し得る微生物除草剤が提供される。また、特に、シ
ュードモナス・シリンゲ SEI-1株を用いる場合には、セ
イタカアワダチソウを選択的に防除し得る。また、本発
明により、氷核活性を有する微生物を利用した微生物除
草剤が提供される。特に、氷核活性を有するとともに植
物に病原性を示す微生物を利用すれば、より効率のよい
除草効果が得られる。氷核活性を有する微生物を利用し
た除草剤は、自然界における作用をそのまま使用するた
め、環境への負荷が少なく、他の生物に対し薬害を起こ
さない。このように氷核活性を有する微生物を利用した
除草剤は、環境負荷が少なく、安全性が高いという特徴
があり、かつ経済的であるという経済的なメリットがあ
る。氷核活性を有する微生物の製剤化には、氷核活性を
安定かつ高レベルに維持するための保護剤として、ゼラ
チンや絹フィブロインを利用できる。こうした保護剤を
使用することにより、目的とする微生物の特性(本発明
の場合は氷核活性)を安定かつ高レベルに維持した状態
で製剤化することが可能となる。さらに、本発明によ
り、これらの微生物除草剤と化学除草剤とを含有する除
草剤が提供される。これによって、化学除草剤の使用回
数及び使用量を軽減化することができ、環境保全に貢献
できる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年2月4日(2000.2.4)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A01N 25/22 A01N 25/22 25/24 25/24 C12N 1/20 C12N 1/20 E //(C12N 1/20 C12R 1:38) Fターム(参考) 4B065 AA41X AC20 BC46 CA47 4H011 AB01 AB02 BA06 BB09 BB14 BB17 BB21 BC19 DA15 DD03 DE15 DG08 DH11

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シュードモナス属に属し、セイタカアワ
    ダチソウに対して病原性を示す微生物を有効成分として
    含有することを特徴とする除草剤。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の除草剤と1又は2種以上
    の化学除草剤とを含有することを特徴とする除草剤。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の除草剤を用いた
    セイタカアワダチソウの防除方法。
  4. 【請求項4】 前記除草剤を塗布、付着及び噴霧からな
    る群より選ばれる1以上の方法によってセイタカアワダ
    チソウに無傷接種又は有傷接種することを特徴とする、
    請求項3記載の防除方法。
  5. 【請求項5】 氷核活性を有する微生物を有効成分とし
    て含有することを特徴とする除草剤。
  6. 【請求項6】 前記微生物として生菌又菌体処理物を用
    いることを特徴とする、請求項5記載の除草剤。
  7. 【請求項7】 ゼラチン及び/又は絹フィブロインを含
    有することを特徴とする請求項5又は6に記載の除草
    剤。
  8. 【請求項8】 請求項5〜7のいずれか1項に記載の除
    草剤と1又は2種以上の化学除草剤とを含有することを
    特徴とする除草剤。
  9. 【請求項9】 請求項5〜8のいずれか1項に記載の除
    草剤を用いた雑草の防除方法。
  10. 【請求項10】 前記除草剤を塗布、付着及び噴霧から
    なる群より選ばれる1以上の方法によって雑草に無傷接
    種又は有傷接種することを特徴とする、請求項9記載の
    防除方法。
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