JP2018024589A - 青枯病防除剤及び青枯病防除方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の第1の観点に係る青枯病防除剤は、
Ralstonia solanacearumに感染し、かつ、RNAポリメラーゼをコードする遺伝子がゲノムの初期発現制御遺伝子群をコードする機能モジュール内にコードされているバクテリオファージを含む。
前記ゲノムのDNA代謝遺伝子群をコードする機能モジュール内にコードされている、
こととしてもよい。
独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに2016年6月17日に受託番号:NITE P−02288で受託されたRSB2である、
こととしてもよい。
上記本発明の第1の観点に係る青枯病防除剤を、植物又は植物成長媒体に投与する投与ステップを含む。
本実施の形態に係るバクテリオファージは、podovirusに分類される。該バクテリオファージのファージ粒子は、正二十面体の頭部と、尾部とを含む。頭部の径は30〜60nm、好ましくは40〜50nmである。尾部の長さは5〜20nm、好ましくは10〜15nmである。尾部の幅は5〜15nm、好ましくは8〜12nmである。本実施の形態に係るバクテリオファージのゲノムは線状で2本鎖DNAである。該ゲノムのサイズは、40000〜40600bp、好ましくは40300〜40500bp、より好ましくは40400〜40450bpである。
広島県東広島市で採取した土壌からバクテリオファージRSB2を、次のように単離した。1gの土壌を2mlの滅菌水に懸濁して調製した試料を、室温で1時間、激しく振った。次に、膜孔の径が0.45μmの膜フィルター(Steradisc、クラボウ社製)に試料を通し、100μlをプラークアッセイに用いた。プラークアッセイでは、青枯病菌株MAFF106603を宿主として、1.5%寒天を含むCPGプレート上に重層した0.45%の軟寒天培地にプラークを形成させた。
超遠心分離(40000×g、2時間)で濃縮したRSB2(1011pfu/ml)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、MgSO4)に懸濁後、リンタングステン酸でネガティブ染色し、電子顕微鏡(JEM−1400、日本電子社製)で観察した。
図2に示すように、RSB2のファージ粒子は、径が約40〜50nmの正二十面体の頭部と、長さ10〜15nm及び幅10nmの尾部とを有するpodovirus型であった。なお、図2中のバーは40nmの長さを示す。
フェノール抽出によってRSB2のファージ粒子からゲノムDNAを単離した。ゲノムのサイズを決めるため、精製したファージ粒子を0.7%低融点アガロース(InCert(商標)アガロース、FMC社製)に包埋した。次に、1mg/mLのプロテアーゼK(メルク社製)及び1%(W/V)のSarkosylで処理し、核酸に対してCHEF MAPPER(商標)電気泳動装置(Bio−Rad社製)でパルスフィールドゲル電気泳動法を実施した。
サイズマーカーのバンドを参照し、RSB2のゲノムは2本鎖DNAで、ゲノムのサイズは40411bpであった。
RSB2のゲノムDNAのショットガン配列決定を、GS Junior Sequence System(ロシュ社製)で行った。決定した塩基配列のアセンブリをGS De Novo Assembler及びGS Reference Mapper v2.6で行った。次に、150bpより大きいオープンリーディングフレーム(ORF)をGlimmer v3.02及びGeneMarkで同定した。さらに、配列データベースに対してBLASTP/RPS−BLASTでホモロジー検索を行った。ホモロジー検索では、著しい類似性のカットオフとして、E−valueが1e−4未満とした。なお、配列データベースは、UniProt配列データベース及びNCBI/CDDデータベースである。
図1に示すように、RSB2のゲノムには、同一方向に計50個の遺伝子がコードされていた。該ゲノムの末端には214bpの末端重複配列が存在した。RSB2、T7及びRSB1のゲノムには、クラスI、クラスII及びクラスIIIの3つの明確な機能モジュールがそれぞれ存在していた。RSB1のゲノムでは、T7型RNAポリメラーゼ遺伝子(RNAP)がクラスII内にコードされているのに対し、RSB2のゲノムでは、RNAPがクラスI内にコードされていた。なお、RSB2のゲノムDNAの塩基配列は、DDBJデータベースにアクセション番号AB597179として登録されている。なお、RSB2のゲノムのGC含量は61.7%であった。
種々の青枯病菌株を用いた上記のプラークアッセイによって、RSB2の宿主域を検討した。
表1は、RSB2に感受性がある青枯病菌株を示す。RSB2は種々の植物を宿主植物とする13種類の菌株に感染した。RSB2は青枯病菌のみに感染し、腸内細菌、Pseudomonas、Rhizobium及びグラム陽性菌等には感染しなかった。
以下のようにワンステップ増殖法で感染サイクルを評価した。培養によりOD600が0.5に達したMAFF730138株を遠心(6000×g)で回収し、最終培養液量が10mlとなるようにCPG培地に懸濁した(3×107cfu/ml)。この試料にRSB2をMOI=0.1となるように加えて、室温で5分間吸着させた。遠心後、CPGに試料を再懸濁し、最終液量が10mlになるように希釈系列を調製し、28℃でインキュベーションした。感染後30分経過した時点で1mMのEDTAを試料に添加した。ここで、等量のクロロホルムを添加後撹拌した試料も同様に調製した。クロロホルム処理により青枯病菌は溶菌するがファージ粒子は安定である。クロロホルム処理併用によって細胞内のファージ粒子形成の正確なタイミングが把握できる。試料を10分ごとに3時間後まで採取し、タイターをプラークアッセイで決定した。
細胞あたりのRSB2の個数の経時変化を図3に示す。RSB1は、MAFF730138株を宿主とした場合、潜伏期が30分で、感染サイクルは60分であった。バーストサイズは約30pfu/cellであった。同様にRSB1の感染サイクルを評価したところ、潜伏期が30分で、感染サイクルは90分であった。図1に示すように、RSB2では、RNAPがクラスI内にコードされているため、RNAポリメラーゼが迅速に発現することで感染サイクルの時間がRSB1よりも短いと考えられる。
1苗あたり4mlの青枯菌株MAFF211270の培養液(1.0×108cfu/ml)を、ポットに灌注法によって接種することで断根感染させたトマト苗(品種:世界一、1ヶ月苗)を対照区とした(46苗)。一方、断根後1苗あたり8mlのRSB2含有液(5.0×108pfu/ml)を、灌注法によってポットに投与し、3日後、断根後に1苗あたり3.5mlのRSB2含有液(1.3×109pfu/ml)を、ポットに投与したトマト苗を処理区(48苗)とした。5時間後、処理区には1苗あたり4mlの上記MAFF211270の培養液(1.0×108cfu/ml)を灌注法によって接種した。対照区及び処理区を接種後約60日まで観察した。
図4(A)及び(B)は、それぞれ対照区及び処理区の病徴が現れたトマト苗の個数を示す。対照区では、約1週間後に顕著な青枯病の病徴が出現し、約2週間で約70%のトマト苗が枯死した。これに対し、処理区では、2週間後に約18%のトマト苗に病徴が観察されたが、病徴が現れるトマト苗の個数にその後大きな変化はなく、25〜60日後でも病徴が現れるトマト苗は約20%に限定された。なお、病徴指数「0」は病徴なし、「1」は本葉1葉が萎凋、「2」は本葉2葉が萎凋、「3」は本葉の大部分が萎凋、「4」は枯死、を示す。
共通の宿主であるMAFF730138で増殖させたRSB1及びRSB2を、1:1(pfu/pfu)となるように混合し、4種の宿主に対して15分間室温で吸着させた。次に、遠心分離(4000×g、5分)により未吸着のバクテリオファージを除いた後、新しいCPG培地中で3時間、28℃で培養した。培養後、上清中のRSB1及びRSB2を、それぞれの特異的な宿主であるM4S及びMAFF327032で検定した。
全液中におけるRSB1の占める割合(RSB1/(RSB1+RSB2)、%)を表2に示す。4種の宿主に対して、3段階のMOIいずれの場合も、圧倒的にRSB1の占有率が低く、混合感染でRSB2の感染が優先することが示された(MOI=0.1で99%以上、MOI=3でも97%以上)。この結果は、ゲノム構造がRSB1と類似する他の公知のバクテリオファージRSB3、RSJ2、RSJ5を用いた場合も同じ傾向であった。RSB2の優先感染特性は、RSB2のゲノムにおいてクラスI内にコードされたRNAPが迅速に発現することで、感染サイクルが短期になり、他のバクテリオファージに常に感染が先行するためであると考えられる。
Claims (4)
- Ralstonia solanacearumに感染し、かつ、RNAポリメラーゼをコードする遺伝子がゲノムの初期発現制御遺伝子群をコードする機能モジュール内にコードされているバクテリオファージを含む、青枯病防除剤。
- 前記バクテリオファージの溶菌酵素をコードする遺伝子が、
前記ゲノムのDNA代謝遺伝子群をコードする機能モジュール内にコードされている、
請求項1に記載の青枯病防除剤。 - 前記バクテリオファージは、
独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに2016年6月17日に受託番号:NITE P−02288で受託されたRSB2である、
請求項1又は2に記載の青枯病防除剤。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の青枯病防除剤を、植物又は植物成長媒体に投与する投与ステップを含む、
青枯病防除方法。
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JP2016156058A JP2018024589A (ja) | 2016-08-09 | 2016-08-09 | 青枯病防除剤及び青枯病防除方法 |
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