JP2018024589A - 青枯病防除剤及び青枯病防除方法 - Google Patents

青枯病防除剤及び青枯病防除方法 Download PDF

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Makoto Fujie
誠 藤江
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健 川崎
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Yukiko Nagamatsu
ゆきこ 永松
俊明 原島
Toshiaki Harashima
俊明 原島
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Abstract

【課題】短時間で確実に青枯病菌を死滅させることができる青枯病防除剤及び青枯病防除方法を提供する。【解決手段】青枯病防除剤は、Ralstonia solanacearumに感染し、かつ、RNAポリメラーゼをコードする遺伝子がゲノムの初期発現制御遺伝子群をコードする機能モジュール内にコードされているバクテリオファージを含む。前記バクテリオファージの溶菌酵素をコードする遺伝子が、前記ゲノムのDNA代謝遺伝子群をコードする機能モジュール内にコードされている、こととしてもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、青枯病防除剤及び青枯病防除方法に関する。
青枯病菌(Ralstonia solanacearum)はナス科植物等の200種以上の植物に感染し、青枯病を引き起こす。青枯病が進行すると、青枯病菌に感染した植物は枯死してしまう。青枯病の対策に使用されてきた主な化学農薬は、劇物であるクロロピクリン又は臭化メチルである。しかし、有効散布量の増大、環境汚染、オゾン層破壊、健康への影響及び残留農薬等の問題から、化学農薬に代わる安全な代替農薬及び防除技術の開発が望まれている。
非特許文献1には、タイの土壌から単離された、青枯病菌に感染するジャンボファージRSL2及びRSF1が開示されている。非特許文献1に開示されたバクテリオファージは、クロロピクリン又は臭化メチル等の化学農薬より安全性が高い農薬への応用が期待されている。
Buhnchoth A、外12名、「Two asian jumbo phages,φRSL2 and φRSF1,infect Ralstonia solanacearum and show common features of φKZ−related phages.」、2016年、Virology、494、p.56−66
上記のようなバクテリオファージを用いて青枯病菌の植物への病害を極力防ぐためには、青枯病菌をより短時間で死滅させればよい。青枯病菌の死滅に要する時間は、バクテリオファージの青枯病菌への感染サイクルの時間に依存する。上述の非特許文献1によれば、MAFF730138株を宿主とした場合、RSF1の感染サイクルが4時間で、RSL2の感染サイクルが4.5時間であった。感染サイクルの時間がさらに短いバクテリオファージを用いれば、短時間で確実に青枯病菌を死滅させることができる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、短時間で確実に青枯病菌を死滅させることができる青枯病防除剤及び青枯病防除方法を提供することを目的とする。
発明者は、バクテリオファージの青枯病菌に対する感染サイクルについて鋭意研究を重ねたところ、従来のバクテリオファージよりも短時間の感染サイクルを有するバクテリオファージを見出し、本発明を完成させた。すなわち、
本発明の第1の観点に係る青枯病防除剤は、
Ralstonia solanacearumに感染し、かつ、RNAポリメラーゼをコードする遺伝子がゲノムの初期発現制御遺伝子群をコードする機能モジュール内にコードされているバクテリオファージを含む。
この場合、前記バクテリオファージの溶菌酵素をコードする遺伝子が、
前記ゲノムのDNA代謝遺伝子群をコードする機能モジュール内にコードされている、
こととしてもよい。
また、前記バクテリオファージは、
独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに2016年6月17日に受託番号:NITE P−02288で受託されたRSB2である、
こととしてもよい。
本発明の第2の観点に係る青枯病防除方法は、
上記本発明の第1の観点に係る青枯病防除剤を、植物又は植物成長媒体に投与する投与ステップを含む。
本発明によれば、短時間で確実に青枯病菌を死滅させることができる。
本発明に係るバクテリオファージRSB2の遺伝子地図を示す図である。 RSB2の外観の一例を示す図である。 RSB2の感染サイクルを示す図である。 RSB2の青枯病防除効果を示す図である。
本発明に係る実施の形態について添付の図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施の形態及び図面によって限定されるものではない。
(実施の形態)
本実施の形態に係るバクテリオファージは、podovirusに分類される。該バクテリオファージのファージ粒子は、正二十面体の頭部と、尾部とを含む。頭部の径は30〜60nm、好ましくは40〜50nmである。尾部の長さは5〜20nm、好ましくは10〜15nmである。尾部の幅は5〜15nm、好ましくは8〜12nmである。本実施の形態に係るバクテリオファージのゲノムは線状で2本鎖DNAである。該ゲノムのサイズは、40000〜40600bp、好ましくは40300〜40500bp、より好ましくは40400〜40450bpである。
例えば、上記バクテリオファージのゲノムには、約50個の遺伝子が同一方向にコードされており、ゲノムの3’末端に200〜250bpの重複配列があってもよい。該バクテリオファージのゲノムにおける特徴としては、公知の大腸菌ファージT7のように、3つの明確な機能モジュールが存在することが挙げられる。
機能モジュールは、初期発現制御遺伝子群をコードする機能モジュール(クラスI)、DNA代謝遺伝子群をコードする機能モジュール(クラスII)及び粒子構造遺伝子群をコードする機能モジュール(クラスIII)である。クラスIには、該バクテリオファージが宿主に感染した初期に発現する遺伝子が主にコードされている。クラスIIには、該バクテリオファージのゲノムの複製に関連する遺伝子が主にコードされている。クラスIIIには、該バクテリオファージのファージ粒子を構成する構造タンパク質の遺伝子が主にコードされている。通常、クラスIはゲノムの5’末端に存在し、クラスIIは、DNAプライメース遺伝子からORF34遺伝子までの領域である。クラスIIIは、ORF35遺伝子からORF50遺伝子までの領域である。
さらに、上記バクテリオファージのゲノムにおける特徴として、RNAポリメラーゼをコードする遺伝子がゲノムのクラスI内にコードされていることが挙げられる。上記バクテリオファージの一例としてのRSB2の遺伝子地図を図1に示す。青枯病菌を宿主とする公知のT7型のバクテリオファージRSB1のRNAポリメラーゼ遺伝子(RNAP)は、クラスIIにコードされているが、RSB2の場合、RNAPがT7と同じくクラスIにコードされている。
本実施の形態に係るバクテリオファージ、例えばRSB2の感染サイクルの時間は、下記実施例6に示すように60分で、RSB1よりも短い。この短期の感染サイクルは、RNAPがクラスI内にコードされているため、RNAポリメラーゼが感染初期に迅速に発現するためと考えられる。
好ましくは、上記バクテリオファージでは、溶菌酵素をコードする遺伝子がゲノムのクラスII内にコードされていてもよい。図1に示すように、溶菌酵素であるリゾチーム遺伝子(LYS)が、RSB1ではクラスIII内にコードされているのに対して、RSB2では、LYSがクラスII内にコードされている。
また、上記バクテリオファージのDNAリガーゼをコードする遺伝子が、ゲノムのクラスI内にコードされていてもよい。図1に示すように、DNAリガーゼ遺伝子(DNAL)が、RSB1ではクラスII内にコードされているのに対して、RSB2では、DNALがクラスI内にコードされている。なお、図1のMCPは主カプシドタンパク質を示す。
本実施の形態に係るバクテリオファージは、青枯病菌に感染する。該バクテリオファージは、レース、生理型及び系統型が異なる多様な青枯病菌に感染する。該バクテリオファージは、感染した青枯病菌に対する溶菌活性を有する。当該バクテリオファージが有効な青枯病菌の株としては、例えば、C319、Ps65、Ps72、Ps74、さらには、独立行政法人農業生物資源研究所等から入手可能なMAFF106603、211270、211271、211272、301485、301558、327032、730135、730138、730139等が挙げられる。なお、ここに挙げた株は例示であって、上記バクテリオファージの宿主域は、さらに広いと考えられる。
上記バクテリオファージの一例として、図2にRSB2の外観を示す。RSB2は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに2016年6月17日に受託番号:NITE P−02288で受託されている。
上記バクテリオファージは、土壌等を含む試料を、洗浄して遠心分離し、膜フィルターで上清を濾過することで得られる。さらに、宿主として適切な青枯病菌を用いることで、目的とするバクテリオファージを単離することができる。バクテリオファージの単離及び力価の測定には、寒天培地に青枯病菌とバクテリオファージ試料との混合液を加えた軟寒天培地(0.45%寒天)を重層してプラークを形成させるプラークアッセイが好適である。
バクテリオファージの青枯病菌への感染方法は、当該技術分野で公知である任意の方法を用いることができる。一例としては0.1%カザミノ酸、1%ペプトン及び0.5%グルコースを含有するCPG培地で培養した青枯病菌を含む培養液にバクテリオファージを加え、培養することでバクテリオファージを青枯病菌に感染させることができる。
上記バクテリオファージは、下記実施例1に示すように幅広い宿主域を有しており、感染した青枯病菌を溶菌する。このため、当該バクテリオファージは、青枯病防除剤の有効成分として好適である。ここで、「防除」とは、青枯病菌の植物への感染の予防、青枯病菌による植物の病害の予防、青枯病菌による植物の病害の拡大防止及び青枯病菌の駆除を含む。
本実施の形態に係る青枯病防除剤は、上記バクテリオファージを含む。青枯病防除剤におけるバクテリオファージの含有量は、例えば感染単位で特定される。感染単位は細菌培養用平板上に透明領域又はプラークを形成する能力であるプラーク形成単位(pfu)として定義される。青枯病防除剤は、例えば、滅菌水に懸濁した状態で、バクテリオファージを、10〜1014pfu/ml、10〜1012pfu/ml又は10〜10pfu/mlで含む。青枯病防除剤は、有効成分であるバクテリオファージ以外にも、一般に薬学的又は植物学的に許容される他の物質、組成物等を含んでもよい。
当該青枯病防除剤は、青枯病防除方法に利用できる。青枯病防除方法は、上記青枯病防除剤を、植物又は植物成長媒体に投与する投与ステップを含む。植物は、青枯病菌の病害が及び得るものであれば任意の種類であってよいが、好ましくはナス科の植物、より具体的には、トマト、ジャガイモ、ナス、クルクマ及びタバコ等である。
上記投与ステップにおける青枯病防除剤の用量は、投与対象の植物の種類あるいは植物成長媒体の容積等に応じて、適宜决定することができる。例えば、好適な用量は、植物個体あたり10〜1010pfu、好ましくは10〜10pfuである。青枯病防除剤は、上記用量のバクテリオファージを好適な担体又は希釈剤中に含み、投与対象の植物の種類あるいは植物成長媒体の容積等に応じて、例えば1回あたり100μl〜100ml又は1〜10mlの施用量で1回又は複数回投与されてもよい。なお、植物成長媒体は、土壌、マット、固形培地等の構造体、養液栽培における養液、及び水栽培における水等である。
当該青枯病防除剤を含む懸濁液を植物成長媒体に投与する場合、例えば、植物成長媒体の表面積1mあたり、1μl〜1000ml、10μl〜100ml、100μl〜10ml、1〜5mlを散布することで投与してもよく、これ以上の任意の量で投与してもよい。
本実施の形態に係る青枯病防除剤は、植物又は植物成長媒体に単回で投与されてもよいし、任意の時間間隔で植物又は植物成長媒体に複数回投与されてもよい。例えば、青枯病防除剤は、数ヶ月、1ヶ月若しくは1週間に1回又は複数回、植物等に投与されてもよい。投与間隔は、投与対象の植物又は植物成長媒体に応じて、適宜決定することができる。上記バクテリオファージは、青枯病菌を短時間で死滅させることができるため、好ましくは、当該青枯病防除剤を、青枯病菌の存在する土壌又は青枯病菌が感染した植物に投与すればよい。
青枯病防除剤を投与する方法は、植物又は植物成長媒体を、当該青枯病防除剤に暴露することができる方法であれば任意である。青枯病防除剤を投与する方法は、例えば、青枯病防除剤を噴霧、注射すること、あるいは当該青枯病防除剤を植物又は植物成長媒体に浸透させること等である。また、青枯病防除剤をポットの苗根部に添加してもよい。植物に注射する場合、当該防除剤を注射筒に入れ、圧迫接種してもよいし、注射針を介して接種してもよい。
当該青枯病防除剤を、噴霧等により植物に投与することで、青枯病菌に未感染の植物であれば、該植物への青枯病菌の感染、あるいは青枯病菌の病害が該植物に及ぶことを防止できる。青枯病に感染後の植物であれば、当該青枯病防除剤を投与することで病害の拡大を阻止できる。
青枯病防除剤を植物成長媒体に投与することで、青枯病防除剤に含まれるバクテリオファージを、潜在的な青枯病菌に感染させることができる。この結果、青枯病を防除できる。なお、植物成長媒体は、植物が成長する媒体であれば任意のものでよい。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る青枯病防除剤は、RNAPがクラスI内にコードされているバクテリオファージを含む。これにより、RNAポリメラーゼが感染初期に迅速に発現するため、該バクテリオファージが短期の感染サイクルで青枯病菌に感染し、短時間で確実に青枯病菌を死滅させることができる。
また、上記バクテリオファージでは、溶菌酵素をコードする遺伝子がゲノムのクラスII内にコードされていてもよいこととした。これにより、該バクテリオファージにおける溶菌酵素の発現は、溶菌酵素がクラスIII内にコードされているRSB1よりも早く、該バクテリオファージの溶菌特性はRSB1と異なると考えられる。実施例8に示すように、上記バクテリオファージは、他のバクテリオファージと比較して青枯病菌への感染力が強く、優先的に感染する。これにより、青枯病菌を迅速に死滅させることができる。
なお、本実施の形態に係る青枯病防除剤に含まれるバクテリオファージは、青枯病菌への特異性が高く、他の有用な微生物に影響を与えない。これにより、当該青枯病防除剤は、環境への影響を極力小さくすることができる。したがって、当該青枯病防除剤は、化学農薬よりも安全性が高く、耐性菌の増加、有効散布量の増大、環境汚染、残留農薬、及び健康への影響等の問題を回避できる。
また、本実施の形態に係る青枯病防除剤は、下記実施例に示すように、長期に渡って青枯病菌による病害を防除することができる。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(実施例1:RSB2の単離)
広島県東広島市で採取した土壌からバクテリオファージRSB2を、次のように単離した。1gの土壌を2mlの滅菌水に懸濁して調製した試料を、室温で1時間、激しく振った。次に、膜孔の径が0.45μmの膜フィルター(Steradisc、クラボウ社製)に試料を通し、100μlをプラークアッセイに用いた。プラークアッセイでは、青枯病菌株MAFF106603を宿主として、1.5%寒天を含むCPGプレート上に重層した0.45%の軟寒天培地にプラークを形成させた。
MAFF730138を、0.1%(W/V)カザミノ酸、1.0%(W/V)ペプトン及び0.5%(W/V)グルコースを含むCPG培地において、28℃で振盪培養した(200〜300rpm)。MAFF730138の培地のOD600が0.1(3×10細胞/ml)に達してから、上記で得られたRSB2をMOI(multiplicity of infection)=1.0で培地に加えた。1晩培養後、遠心機による遠心分離(6000×g)で細胞を沈殿させ、得られた上清をさらに遠心分離することで(15000×g)、RSB2を回収した。RSB2の力価は、1010〜1011pfu/mlであった。
(実施例2:RSB2のファージ粒子の構造)
超遠心分離(40000×g、2時間)で濃縮したRSB2(1011pfu/ml)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、MgSO)に懸濁後、リンタングステン酸でネガティブ染色し、電子顕微鏡(JEM−1400、日本電子社製)で観察した。
(結果)
図2に示すように、RSB2のファージ粒子は、径が約40〜50nmの正二十面体の頭部と、長さ10〜15nm及び幅10nmの尾部とを有するpodovirus型であった。なお、図2中のバーは40nmの長さを示す。
(実施例3:RSB2のゲノムのサイズの決定)
フェノール抽出によってRSB2のファージ粒子からゲノムDNAを単離した。ゲノムのサイズを決めるため、精製したファージ粒子を0.7%低融点アガロース(InCert(商標)アガロース、FMC社製)に包埋した。次に、1mg/mLのプロテアーゼK(メルク社製)及び1%(W/V)のSarkosylで処理し、核酸に対してCHEF MAPPER(商標)電気泳動装置(Bio−Rad社製)でパルスフィールドゲル電気泳動法を実施した。
(結果)
サイズマーカーのバンドを参照し、RSB2のゲノムは2本鎖DNAで、ゲノムのサイズは40411bpであった。
(実施例4:RSB2のゲノム解析)
RSB2のゲノムDNAのショットガン配列決定を、GS Junior Sequence System(ロシュ社製)で行った。決定した塩基配列のアセンブリをGS De Novo Assembler及びGS Reference Mapper v2.6で行った。次に、150bpより大きいオープンリーディングフレーム(ORF)をGlimmer v3.02及びGeneMarkで同定した。さらに、配列データベースに対してBLASTP/RPS−BLASTでホモロジー検索を行った。ホモロジー検索では、著しい類似性のカットオフとして、E−valueが1e−4未満とした。なお、配列データベースは、UniProt配列データベース及びNCBI/CDDデータベースである。
上記実施例1に記載の方法で別に単離されたpodovirus型のバクテリオファージRSB1(ゲノムサイズが43079bp)のゲノムも同様に解析した。さらに大腸菌ファージT7のゲノムの配列も取得し、RSB2、RSB1及びT7のゲノム配列を配列アライメント法で比較した。配列アライメント法は、DNASISプログラム v3.6(日立ソフトウェアエンジニアリング社製)で実行した。
(結果)
図1に示すように、RSB2のゲノムには、同一方向に計50個の遺伝子がコードされていた。該ゲノムの末端には214bpの末端重複配列が存在した。RSB2、T7及びRSB1のゲノムには、クラスI、クラスII及びクラスIIIの3つの明確な機能モジュールがそれぞれ存在していた。RSB1のゲノムでは、T7型RNAポリメラーゼ遺伝子(RNAP)がクラスII内にコードされているのに対し、RSB2のゲノムでは、RNAPがクラスI内にコードされていた。なお、RSB2のゲノムDNAの塩基配列は、DDBJデータベースにアクセション番号AB597179として登録されている。なお、RSB2のゲノムのGC含量は61.7%であった。
(実施例5:RSB2の宿主域の検討)
種々の青枯病菌株を用いた上記のプラークアッセイによって、RSB2の宿主域を検討した。
(結果)
表1は、RSB2に感受性がある青枯病菌株を示す。RSB2は種々の植物を宿主植物とする13種類の菌株に感染した。RSB2は青枯病菌のみに感染し、腸内細菌、Pseudomonas、Rhizobium及びグラム陽性菌等には感染しなかった。
(実施例6:RSB2の感染サイクルの評価)
以下のようにワンステップ増殖法で感染サイクルを評価した。培養によりOD600が0.5に達したMAFF730138株を遠心(6000×g)で回収し、最終培養液量が10mlとなるようにCPG培地に懸濁した(3×10cfu/ml)。この試料にRSB2をMOI=0.1となるように加えて、室温で5分間吸着させた。遠心後、CPGに試料を再懸濁し、最終液量が10mlになるように希釈系列を調製し、28℃でインキュベーションした。感染後30分経過した時点で1mMのEDTAを試料に添加した。ここで、等量のクロロホルムを添加後撹拌した試料も同様に調製した。クロロホルム処理により青枯病菌は溶菌するがファージ粒子は安定である。クロロホルム処理併用によって細胞内のファージ粒子形成の正確なタイミングが把握できる。試料を10分ごとに3時間後まで採取し、タイターをプラークアッセイで決定した。
(結果)
細胞あたりのRSB2の個数の経時変化を図3に示す。RSB1は、MAFF730138株を宿主とした場合、潜伏期が30分で、感染サイクルは60分であった。バーストサイズは約30pfu/cellであった。同様にRSB1の感染サイクルを評価したところ、潜伏期が30分で、感染サイクルは90分であった。図1に示すように、RSB2では、RNAPがクラスI内にコードされているため、RNAポリメラーゼが迅速に発現することで感染サイクルの時間がRSB1よりも短いと考えられる。
(実施例7:トマトにおけるRSB2の青枯病防除効果の評価)
1苗あたり4mlの青枯菌株MAFF211270の培養液(1.0×10cfu/ml)を、ポットに灌注法によって接種することで断根感染させたトマト苗(品種:世界一、1ヶ月苗)を対照区とした(46苗)。一方、断根後1苗あたり8mlのRSB2含有液(5.0×10pfu/ml)を、灌注法によってポットに投与し、3日後、断根後に1苗あたり3.5mlのRSB2含有液(1.3×10pfu/ml)を、ポットに投与したトマト苗を処理区(48苗)とした。5時間後、処理区には1苗あたり4mlの上記MAFF211270の培養液(1.0×10cfu/ml)を灌注法によって接種した。対照区及び処理区を接種後約60日まで観察した。
(結果)
図4(A)及び(B)は、それぞれ対照区及び処理区の病徴が現れたトマト苗の個数を示す。対照区では、約1週間後に顕著な青枯病の病徴が出現し、約2週間で約70%のトマト苗が枯死した。これに対し、処理区では、2週間後に約18%のトマト苗に病徴が観察されたが、病徴が現れるトマト苗の個数にその後大きな変化はなく、25〜60日後でも病徴が現れるトマト苗は約20%に限定された。なお、病徴指数「0」は病徴なし、「1」は本葉1葉が萎凋、「2」は本葉2葉が萎凋、「3」は本葉の大部分が萎凋、「4」は枯死、を示す。
(実施例8:RSB2及びRSB1の混合感染の評価)
共通の宿主であるMAFF730138で増殖させたRSB1及びRSB2を、1:1(pfu/pfu)となるように混合し、4種の宿主に対して15分間室温で吸着させた。次に、遠心分離(4000×g、5分)により未吸着のバクテリオファージを除いた後、新しいCPG培地中で3時間、28℃で培養した。培養後、上清中のRSB1及びRSB2を、それぞれの特異的な宿主であるM4S及びMAFF327032で検定した。
(結果)
全液中におけるRSB1の占める割合(RSB1/(RSB1+RSB2)、%)を表2に示す。4種の宿主に対して、3段階のMOIいずれの場合も、圧倒的にRSB1の占有率が低く、混合感染でRSB2の感染が優先することが示された(MOI=0.1で99%以上、MOI=3でも97%以上)。この結果は、ゲノム構造がRSB1と類似する他の公知のバクテリオファージRSB3、RSJ2、RSJ5を用いた場合も同じ傾向であった。RSB2の優先感染特性は、RSB2のゲノムにおいてクラスI内にコードされたRNAPが迅速に発現することで、感染サイクルが短期になり、他のバクテリオファージに常に感染が先行するためであると考えられる。
なお、上記RSB1は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに2016年7月22日に受託番号:NITE P−02297で受託されている。また、RSB1のゲノムDNAの塩基配列は、DDBJデータベースにアクセション番号AB451219として登録されている。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等な発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
本発明は、青枯病の防除、拡大防止又は青枯病菌の駆除に好適である。

Claims (4)

  1. Ralstonia solanacearumに感染し、かつ、RNAポリメラーゼをコードする遺伝子がゲノムの初期発現制御遺伝子群をコードする機能モジュール内にコードされているバクテリオファージを含む、青枯病防除剤。
  2. 前記バクテリオファージの溶菌酵素をコードする遺伝子が、
    前記ゲノムのDNA代謝遺伝子群をコードする機能モジュール内にコードされている、
    請求項1に記載の青枯病防除剤。
  3. 前記バクテリオファージは、
    独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに2016年6月17日に受託番号:NITE P−02288で受託されたRSB2である、
    請求項1又は2に記載の青枯病防除剤。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の青枯病防除剤を、植物又は植物成長媒体に投与する投与ステップを含む、
    青枯病防除方法。
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