JP2005071895A - 色素増感型光電変換素子用電解質組成物、それを用いた光電変換素子。 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、色素増感型光電変換素子に好適に用いられるヨウ素を活物質とした電解質に関し、イオン伝導性を向上させる添加物を提供することを目的にしている。即ち、高い光電変換効率、特には高い短絡電流密度を発揮させる電解質、さらにはこれを用いた光電変換素子を提供することを課題としている。
【解決手段】環状多糖類0.1〜30.0重量%、有機溶融塩化合物99.8〜50.0重量%、および、ヨウ素0〜10.0重量%を含んでなる色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
環状多糖類の数平均分子量が、800〜2,000である上記色素増感型光電変換素子用電解質組成物。上記電解質組成物を用いてなる光電変換素子。
【選択図】なし
【解決手段】環状多糖類0.1〜30.0重量%、有機溶融塩化合物99.8〜50.0重量%、および、ヨウ素0〜10.0重量%を含んでなる色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
環状多糖類の数平均分子量が、800〜2,000である上記色素増感型光電変換素子用電解質組成物。上記電解質組成物を用いてなる光電変換素子。
【選択図】なし
Description
本発明は、色素増感型光電変換素子の電解質として有用な電解質組成物に関する。さらには、さらにはこれを用いた光電変換素子に関する。
環境問題を考慮した発電システム、もしくは可搬型携帯用電源として有用な光電変換素子、いわゆる太陽電池の開発が近年盛んである。これらは現在単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン等の無機物からなる素子が中心である。これらは、現在実用化されているものもあるが、家庭用電源として広く普及させるためには、製造コストが高いこと、原材料の確保が困難であること、またエネルギーペイバックタイム、即ち製造するために要した電気量を自らの発電によって賄うために要する時間が長いこと等の問題が多く、これらの解決が望まれていた。また小型携帯型情報機器用電源として用いようとする場合には、無機物であるために柔軟なセルを構成することは困難であり、実装上の問題を有していた。
これらの問題を解決するため、有機材料を用いた光電変換素子の検討が行われている。しかしながら、一般にはこの様な光電変換素子は、光電変換効率が低く、また耐久性も良くなかった。
このなかでヨウ素化合物の酸化還元を利用した電解質を用いて成る色素増感型光電変換素子(非特許文献1参照)の報告がなされており、これは光電変換効率が高いという特徴を有している。しかしながら、この方法では、例えばプロピレンカーボネート等の低分子量カーボネート類、もしくはテトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等の低分子量エーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等の低分子量ニトリル類等の低分子量有機液体に、電極活物質としてヨウ素、もしくはヨウ素イオンを溶解させた電解質が用いられている。しかしながら低分子量有機液体では素子外部への電解液の漏洩、電極活物質の揮発、溶出等による長期信頼性に問題があった。
このため、近年高分子化合物を主体とした高分子ゲル電解質、もしくはいわゆる有機溶融塩もしくはイオン性液体と称される有機液体を電解質に用いる検討がなされている。
特に高分子化合物を主成分とした各種高分子ゲル電解質の検討が行われている(特許文献1〜9参照)。これら高分子ゲル電解質からなる光電変換素子は、電解液の漏洩や枯渇といった問題を解決するだけではなく、素子の柔軟性付与や、種々の形状に加工できる等の利点もある。しかしながら高分子ゲル電解質の機械的強度を持たせるために多くのゲル化剤を導入するとイオン伝導度が低下し、逆にイオン伝導度を向上させるためにゲル化剤を減量すると、機械的強度が保てないという本質的な問題を抱えていた。
一方、イミダゾリウム塩やピリジニウム塩を利用した有機溶融塩を主体とした電解質の検討も進められている(特許文献10〜14参照)。これら有機溶融塩からなる光電変換素子は、不揮発性の有機溶融塩を用いているため電解液の枯渇という問題はない。しかしながら、有機溶融塩は粘凋であるために、イオン伝導度の低下はさけられなかった。即ち、光電変換効率、とくに短絡電流密度(その素子が発生させることが出来る素子面積あたりの最大電流)の低下が著しいという問題があった。
また、環状多糖類を本発明における光電変換素子に用いようとする試みもある。(特許文献15〜16参照)しかしながらこれらには、光電変換素子の無機多孔質半導体を形成する段階、もしくは多孔質半導体の表面処理に用いられるものであり、本発明とは異なるものである。
なお、ヨウ素と環状多糖類が包接化合物を形成することは公知(非特許文献2参照)である。
また、環状多糖類の包接挙動を利用してとヨウ素化合物の酸化還元反応を制御し、調光素子に応用した例(特許文献17参照)もあるが、本発明とは利用の目的が異なる発明であり、関連は無い。
特開平5-120912号公報
特開平9-27352号公報
特開平8-236165号公報
特開2001-210390号公報
特開2002-216845号公報
特開2002-289272号公報
特開2003-68137号公報
特開2003-68138号公報
特開2000-150006号公報
特表平9-507334号公報
特開2000-53662号公報
特開2000-58891号公報
特開2000-90991号公報
特開2001-35253号公報
特開2003-217693号公報
特開2003-217692号公報
特開2001-174852号公報
B.Oregan, M.Gratzel, Nature. 1991年, 第353巻, 737ページ
M.Noltemeyer, W.Saenger, Nature. 1976年, 第259巻, 629ページ
本発明は、色素増感型光電変換素子に好適に用いられるヨウ素を活物質とした電解質に関し、イオン伝導性を向上させる添加物を提供することを目的にしている。即ち、高い光電変換効率、特には高い短絡電流密度を発揮させる電解質、さらにはこれを用いた光電変換素子を提供することを課題としている。
本発明者は、電解質内にヨウ素分子と包接形態を形成させ、ヨウ素分子の安定性を向上させることで、ヨウ素の酸化還元による電子の移動を円滑にして伝導性を向上させ、電池性能を向上させることが出来ることを見出し、本発明にいたった。
即ち本発明は、環状多糖類0.1〜30.0重量%、有機溶融塩化合物99.8〜50.0重量%、および、ヨウ素0〜10.0重量%を含んでなる色素増感型光電変換素子用電解質組成物に関する。
また、本発明は、環状多糖類の数平均分子量が、800〜2,000である上記色素増感型光電変換素子用電解質組成物に関する。
また、本発明は、上記電解質組成物を用いてなる光電変換素子に関する。
本発明の電解質は、優れたイオン伝導性向上効果を示し、ヨウ素の酸化還元反応が効率的に進行し、高いイオン伝導性、ひいては、高い光電変換効率、短絡電流密度を発揮させることができる。
特に、電解質中に含まれる、いわゆる有機溶融塩が主成分として用いられる電解質においては、イオン伝導性の低下に伴う伝導性の悪化が問題になっていた。この場合に、本発明における環状多糖類を添加することで、高いイオン伝導性を発揮させることが出来る。
本発明における環状多糖類とは、酸化還元により電子伝導を担うヨウ素分子を包接により固定させることを目的としている。これにより、ヨウ素―ヨウ化物イオン間の相互作用から、導電性の向上を図ることが出来る。
具体的にはアルファシクロデキストリン、ベータシクロデキストリン、ガンマーデキストリン等が挙げられる。
環状多糖類の好ましい数平均分子量の範囲は800〜2,000であり、さらに好ましくは950〜1,500である。この範囲の環状多糖類を用いることで、ヨウ素化合物との包接挙動が安定し好ましい。
本発明において用いられる環状多糖類の添加量としては、好ましくは電解質の総重量に対して0.1〜30.0重量%、更に好ましくは1〜10.0重量%である。この範囲よりも添加量が少ない場合には、その有効性が希薄になり、また多い場合には、電解質の粘度向上に伴う伝導性の悪化が見られる。
本発明における有機溶融塩化合物としては、有機カチオン、もしくは有機アニオンから成り融点が室温以下であるものを指す。特に本発明においては、示差熱量計における凝固点熱量ピークが30℃以下のものを指す。これ以上の凝固点を示すものは本発明における光電変換素子として利用した場合、通常の使用状態において固体化してしまい電解質として有効に作用しない。
具体的に有機溶融塩部を構成する有機カチオンとしては、例えば芳香族系カチオン類としてN-メチル-N'-エチルイミダゾリウムカチオン、N-メチル-N'-n-プロピルイミダゾリウムカチオン、N-メチル-N'-n-ヘキシルイミダゾリウムカチオン等のN-アルキル-N'-アルキルイミダゾリウムカチオン類、N-ヘキシルピリジニウムカチオン、N-ブチルピリジニウムカチオン等のN-アルキルピリジニウムカチオン類等が挙げられる。また、脂肪族カチオン類として、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムカチオン等の脂肪族系カチオン類、N,N-メチルピロリジニウム等の環状脂肪族カチオン類が挙げられる。
具体的に有機溶融塩部を構成する有機アニオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、六フッ化リンイオン、4フッ化ホウ素イオン、過塩素酸イオン、次塩素酸イオン、塩素酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等無機アニオン類、ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド等のアミド、イミド系アニオン類等が挙げられる。
本発明において用いられる有機溶融塩化合物の添加量は、好ましくは電解質総重量に対して99.8〜50.0重量%の範囲、更に好ましくは98.0〜80.0重量%の範囲が好ましい。この範囲をよりも多くの有機溶融塩を添加させることは、その他の構成分を考慮すると実質的に出来ず、またこれよりも少ない添加量では、電解質の性状や電解質の耐久性に悪影響を及ぼすため好ましくない。
本発明において用いられるヨウ素は、電解質内において酸化還元を繰り返すことによって電子の移動を媒介する活物質である。特に有機溶融塩部を構成するアニオンがヨウ化物イオンだった場合には添加しなくても電子の移動を媒介することが出来るが、好ましくは電解質総重量に対し0.1重量%、更に好ましくは1.0重量%程度添加することが、電子の移動を考慮すると好ましい。さらに、添加量が10.0重量%、更に好ましくは5.0重量%を超える場合には、ヨウ素の持つ光の吸収によって素子の起電量が減少してしまう。これらのことを勘案し、ヨウ素の添加量はこの範囲が好ましい。
本発明において用いられる電解質には、これらの成分の他にその素子特性、素子製造時のライン適性、実際の使用時における素子特性等を考慮し、その他の添加剤を0〜49.8%の範囲で加えることも出来る。例えば、粘度調整を目的とした粘度調整剤、電極の特性を高めるその他電極調整剤、難燃性を付与する難燃剤、耐久性向上を目的とする酸化防止剤、電極表面との親和性を制御する目的とする表面張力調整剤、電解質の注入・塗工といった工程上のライン適性を付与を目的とする添加剤、例えば消泡剤等の各種添加剤等が挙げられる。
本発明における色素増感型光電変換素子とは、非特許文献1に指し示されるような、導電性透明基板状に成形された多孔質半導体層からなる電極と、導電性を有する対極、その間をヨウ化物イオン、及びヨウ素化合物を酸化還元媒体として電解質によって構成される光電変換素子である。好ましくは、多孔質半導体層には増感色素と称される化合物を吸着してなる素子である。
以下に、本発明における電解質、さらには素子化についての詳細な実施例を示す。
実施例1 環状多糖類添加による光電変換素子特性の評価
電解質の調製
環状多糖類を表1中記載量(表1中記載値は重量%)、ヨウ素を1.5重量%、N-メチル-N'-ヘキシルイミダゾリウムヨウ化物塩(HMII)/プロピオニトリル(PCN)=8/2(重量)混合溶媒中に添加し、十分攪拌し多糖類が完全にするのを確認した。
電解質の調製
環状多糖類を表1中記載量(表1中記載値は重量%)、ヨウ素を1.5重量%、N-メチル-N'-ヘキシルイミダゾリウムヨウ化物塩(HMII)/プロピオニトリル(PCN)=8/2(重量)混合溶媒中に添加し、十分攪拌し多糖類が完全にするのを確認した。
素子材料の調製(電極の調製)
酸化スズ膜を形成させた導電ガラス上に、酸化チタン分散液をハンドアプリケータにて膜厚およそ10マイクロメートル程度、幅10ミリメートルに塗工し、その後100℃で30分、さらに460℃で40分程度乾燥、焼成を行った。このときの塗膜厚はおおよそ8マイクロメートルであった。こうして得られた多孔質膜を、ルテニウム色素(ソーラロニックス社製ルテニウム535)0.5ミリモル/リットルのエタノール溶液に24時間含浸させた。含浸終了後、エタノールで過剰の色素を洗浄し、60℃で20分間乾燥させた。
酸化スズ膜を形成させた導電ガラス上に、酸化チタン分散液をハンドアプリケータにて膜厚およそ10マイクロメートル程度、幅10ミリメートルに塗工し、その後100℃で30分、さらに460℃で40分程度乾燥、焼成を行った。このときの塗膜厚はおおよそ8マイクロメートルであった。こうして得られた多孔質膜を、ルテニウム色素(ソーラロニックス社製ルテニウム535)0.5ミリモル/リットルのエタノール溶液に24時間含浸させた。含浸終了後、エタノールで過剰の色素を洗浄し、60℃で20分間乾燥させた。
光電変換素子の組み立て
前項にて調製した透明電極の酸化チタン焼成部が1センチメートル平方の正方形となるようにもう一辺の酸化チタン焼成膜を削切した。さらに厚さ25マイクロメートルのポリプロピレンフイルムをスペーサーとし、セルを構成した。
前項にて調製した透明電極の酸化チタン焼成部が1センチメートル平方の正方形となるようにもう一辺の酸化チタン焼成膜を削切した。さらに厚さ25マイクロメートルのポリプロピレンフイルムをスペーサーとし、セルを構成した。
そのスペーサーの上から正方形に削切した酸化チタン焼成膜に、調製した電解質溶液20マイクロリットルを塗工し、その上から白金板で覆い治具で固定した。余剰の電解質を除去した後、周囲をエポキシ系封止剤で周囲を覆い素子を得た。
光電変換特性の測定
こうして得られた光電変換素子の透明電極部、及び白金対極部に電極を取り付けた。さらに、AM-1.5条件下における素子特性を、短絡電流密度(Jsc, mA/cm2)、開放電圧(Voc, mV)、光電変換効率(m, %)の面から評価を行った。なお、走査時間は16秒とした。
こうして得られた光電変換素子の透明電極部、及び白金対極部に電極を取り付けた。さらに、AM-1.5条件下における素子特性を、短絡電流密度(Jsc, mA/cm2)、開放電圧(Voc, mV)、光電変換効率(m, %)の面から評価を行った。なお、走査時間は16秒とした。
実施例2 電解質組成比による光電変換素子特性の評価
電解質の調製
ベータシクロデキストリン5重量%、表2中有機溶融塩を表2中記載量(重量%)、ヨウ素(I)を表2中記載量(重量%)、粘度調製剤としてメトキシプロピオニトリル(MPCN)を表2中記載量(重量%)を配合し電解質を構成した。
電解質の調製
ベータシクロデキストリン5重量%、表2中有機溶融塩を表2中記載量(重量%)、ヨウ素(I)を表2中記載量(重量%)、粘度調製剤としてメトキシプロピオニトリル(MPCN)を表2中記載量(重量%)を配合し電解質を構成した。
本発明では、環状多糖類とヨウ素か包接化合物を形成すること利用し、電子の伝導性を向上させた電解質を構成した。特に本発明においてはヨウ素を酸化・還元媒体として電子を輸送する色素増感型光電変換素子用の電解質に環状多糖類を添加することで、伝導性の向上を図った。
このため、その他の酸化還元媒体を用いて電子を輸送する電解質については、酸化・還元媒体と包接挙動を示す化合物を添加することで、その伝導性を高めることが出来る可能性を有している。
Claims (3)
- 環状多糖類0.1〜30.0重量%、有機溶融塩化合物99.8〜50.0重量%、および、ヨウ素0〜10.0重量%を含んでなる色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
- 環状多糖類の数平均分子量が、800〜2,000である請求項1記載の色素増感型光電変換素子用電解質組成物。
- 請求項1または2記載の電解質組成物を用いてなる光電変換素子。
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