JP2005071782A - リチウム二次電池用負極の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用負極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 リチウム二次電池の初期充電容量の低下を伴うことなく初期効率を改善する。サイクル特性を改善する。
【解決手段】 リチウム二次電池用負極に用いる集電体の表面に負極活物質層としてSiO膜を真空蒸着により形成する。その際、集電体の表面を真空中又は不活性雰囲気中で洗浄処理した後、大気雰囲気に曝すことなくSiO膜を形成する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウム二次電池に用いる負極の製造方法に関する。
リチウムイオンの吸蔵放出により充電・放電を行うリチウム二次電池は、高容量、高電圧、高エネルギー密度といった特徴を兼ね備えていることから、OA機器、なかでも携帯電話、パソコン等の携帯情報機器の電源として非常に多く使用されている。このリチウム二次電池では、充電時に正極から負極へリチウムイオンが移行し、負極に吸蔵されたリチウムイオンが放電時に正極へ移行する。
リチウム二次電池の負極を構成する負極活物質としては、炭素粉末が多用されている。これは後で詳しく述べるが、炭素負極の容量、初期効率及びサイクル寿命といった各種特性の総合的な評価が高いためである。そして、この炭素粉末は、結着剤溶液と混合されてスラリー化され、そのスラリーを集電板の表面に塗布し乾燥後、加圧する粉末混練塗布乾燥法により負極シートとされる。ちなみに、正極を構成する正極活物質としては、リチウムを含有する遷移金属の酸化物、主にLiCoO2 などが使用されている。
現在多用されている炭素負極の問題点の一つは、他の負極に比べて理論容量が小さい点である。理論容量が小さいにもかかわらず、炭素負極が多用されているのは、初期効率、サイクル寿命といった容量以外の特性が高く、諸特性のバランスが良いためである。
携帯情報機器用電源として多用されるリチウム二次電池に関しては、更なる容量増大が求められており、この観点から炭素粉末より容量が大きい負極活物質の開発が進められている。そのような負極活物質の一つがSiOであり、SiOの理論容量は炭素の数倍に達する。それにもかかわらずSiO負極は実用化されていない。その最大の理由はSiO負極の初期効率が極端に低いからである。
初期効率とは、初期充電容量に対する初期放電容量の比率であり、重要な電池設計因子の一つである。これが低いということは、初期充電で負極に注入されたリチウムイオンが初期放電時に十分に放出されないということであり、この初期効率が低いと如何に理論容量が大きくとも実用化は困難である。このため、SiO負極の初期効率を高める工夫が様々に講じられており、その一つが特許文献1に記載された、予めリチウムをSiOへ含有させる方法である。
特許第2997741号公報
SiO負極は、炭素負極と同様、SiOの微粉末を結着剤溶液と混合してスラリー化し、そのスラリーを集電板の表面に塗布し乾燥後、加圧する粉末混練塗布乾燥法により作製される。予めリチウムをSiOへ含有させた負極の場合も、同様の粉末混練塗布乾燥法を用いて集電板の表面に粉末を積層することにより作製される。
このようにして作製されるリチウム含有のSiO負極は、リチウム二次電池の初期効率を高めるのに有効である。しかし、SiOへ予めリチウムを含有させる方法は、その含有によって初期充電容量を低下させることになり、SiOの優れた特性である理論容量の高さを実質的に阻害することになる。このようなことから、SiO負極の初期充電容量を低減させずに初期効率を高める対策が待たれている。
また、リチウム二次電池には更なる小型化が要求されているが、粉末混練塗布乾燥法によって作製されるSiO負極では、SiO層が低密度の多孔質体となるため、リチウムの有無に関係なく小型化が難しいという問題もある。
このような事情を背景として、本発明者は、集電体の表面に真空蒸着によりSiOの緻密な薄膜を形成することを企画し、種々実験を行った。その結果、粉末混練塗布乾燥法で形成された従来のSiO層と比べて単位体積当たりの容量が増加するだけでなく、そのSiO層で問題になっていた初期効率の低さが、初期充電容量の低下を伴うことなく飛躍的に改善されることが判明した。また、真空蒸着のなかではイオンプレーティング法によって形成された薄膜が特に高性能であること、及びスパッタリング膜でも真空蒸着膜に類似した効果が得られることが判明した。そして本出願人は、これらの技術を特願2003−123938により特許出願した。
しかしながら、このようなSiO膜型負極においては、サイクル特性が低下する問題のあることが、更に研究を続ける過程で判明した。即ち、サイクル特性は、充電・放電を繰り返したときの放電量の減少特性を言い、初期効率、初期充填容量と並んで重要な電池因子である。負極集電体の表面に負極活物質としてSiO膜を形成すると、初期効率は向上するものの、サイクル特性が低下し、充放電を繰り返すごとに放電量が減少する傾向が強い。この傾向は、成膜用材料としてSiO焼結体を用いる場合よりもSiO析出体を用いる場合に顕著である。
本発明の目的は、初期充電容量の低下を伴うことなく初期効率を改善でき、合わせてサイクル特性を改善できるリチウム二次電池用負極の製造方法を提供することにある。
SiO膜型負極においてサイクル特性が劣る原因の一つとして、本発明者は負極集電体に対するSiO膜の密着性に注目した。即ち、SiOは充電時の膨張が比較的大きいため、充放電を繰り返すうちに集電体からSiO膜が剥離することがサイクル特性を悪化させる原因ではないかと考えた。そして、SiO膜の密着性を低下させる原因として、成膜前に集電体に実施される清浄化処理に注目し、種々の実験検討を行った。その結果、以下の事実が判明した。
成膜を行う場合、一般に成膜前の基材に清浄化処理が行われる。具体的には、大気中で洗浄・乾燥などが行われる。本発明者は、このような清浄化処理が、SiO膜型負極の製造では不十分であるのではないかと考えて、基材である負極集電体を非大気雰囲気中で清浄化処理し、その後も引続き大気雰囲気に曝すことなく、その基材表面に成膜を行った。その結果、密着性の向上が影響したか否かは定かでないものの、明らかにサイクル特性が向上することが確認された。
本発明のリチウム二次電池用負極の製造方法は、かかる知見に基づいて開発されものであり、負極集電体の表面に負極活物質としてSiO膜を形成する際に、真空中又は不活性雰囲気中で集電体表面を清浄化処理し、その後、集電体表面を大気雰囲気に曝すことなく該表面にSiO成膜を行うものである。
真空中又は不活性雰囲気中での清浄化処理としては、例えば真空チャンバー内での直流マグネトロン放電による表面処理ボンバードを挙げることができる。
成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法を挙げることができ、真空蒸着法のなかのイオンプレーティング法が特に好ましい。清浄化処理を真空中で行った場合、引続き成膜も真空中で行うというように同じ雰囲気で両工程を実施するのが合理的であるが、清浄化処理を不活性雰囲気中で実施し、成膜を真空中で行うというように、異なる雰囲気で両工程を実施することも可能である。要は、集電体の清浄化処理から成膜工程にかけてを真空中又は不活性雰囲気中で実施し、この間、集電体の表面を大気雰囲気に曝さなければよいわけである。
成膜用材料としては、SiO析出体又はSiO焼結体を用いることができるが、緻密で硬いSiO焼結体を用いる方がサイクル特性は良好となる。一方、製造コストはSiO析出体の方が安い。安価なSiO析出体を用いても良好なサイクル特性を確保できるところに本発明の重大な価値の一つがある。後述するが、SiO析出体は、Si粉末とSiO2 粉末の混合物を真空中で加熱することにより、SiOガスを発生させ、これを低温の析出部で析出させることにより製造される。また、SiO焼結体は、SiO析出体を粉砕して得たSiOの粉、粒又は塊などを押し固めて焼結することにより製造される。
SiOの粉末混練塗布乾燥層で初期効率が低下し、SiO膜、即ち真空蒸着膜及びスパッタリング膜でこれが低下しない理由は次のように考えられる。
SiO粉末は例えば次のようにして製造される。まずSi粉末とSiO2 粉末の混合物を真空中で加熱することにより、SiOガスを発生させ、これを低温の析出部で析出させてSiO析出体を得る。この製法で得られるSiO析出体のSiに対するOのモル比はほぼ1となる。このSiO析出体を粉砕してSiO粉末を得るのであるが、粉末にすると表面積が増大するために、粉砕時及び粉末の使用時などに大気中の酸素により酸化され、SiO成形体のSiに対するOのモル比は1を超えてしまう。加えて、SiO粉末を粉末混練塗布乾燥法で積層する際にもSiO粉末の表面積の大きさ故に酸化が進んでしまう。こうしてSiOの粉末混練塗布乾燥層ではSiに対するOのモル比が高くなる。そして、粉末混練塗布乾燥層のSiO粉末のSiに対するOのモル比が高いと、初期充電時に吸蔵されたリチウムイオンが放電時に放出されにくくなり、初期効率が低下することになる。
これに対して、真空蒸着法やスパッタリング法では、成膜を真空中で行うために酸素モル比の増加が抑制され、結果、初期効率の低下が抑えられる。加えて、真空蒸着法やスパッタリング法で形成される薄膜は緻密である。一方、粉末混練塗布乾燥層は粉末が押し固められただけの粉末集合体に過ぎず、SiOの充填率が低い。初期充電容量は負極活物質層の単位体積あたりの充電量であるため、緻密な薄膜の方が初期充電容量が高くなり、2サイクル目以降も充電容量が高くなる。
真空蒸着法の一種であるイオンプレーティング法が好ましい理由については、Siに対するOのモル比が1:1のSiOを使用する場合でも、そのSiO中の酸素が低下する傾向が見られることが影響していると考えられる。即ち、SiO中の酸素はリチウムイオンとの結合性が強いために出来るだけ少ない方が望ましいところ、イオンプレーティング法を用いることにより、SiO膜のSiに対するOのモル比が最大で0.5程度まで低下するのである。ちなみにイオンプレーティング法で酸素モル比が低下する理由は現状では不明である。
SiO膜の厚さは0.1〜50μmが好ましい。0.1μm未満の場合は、単位体積当たりの容量は増加するものの、単位面積当たりの容量が低くなる。一方、この薄膜は絶縁膜であるため、50μmを超えるような場合は、薄膜から集電体への集電効率の低下が問題になる場合がある。特に好ましい膜厚は0.2〜20μmである。
集電体としては金属薄板が好適である。その金属としてはCu、Alなどを用いることができる。板厚は1〜50μmが好ましい。これが薄すぎると製造が難しくなり、機械的強度の低下も問題になる。一方、厚すぎる場合は負極の小型化が阻害される。
なお正極は、集電体の表面に正極活物質層を形成した構造である。正極活物質としては、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMn2 4 などのリチウムを含有する遷移金属の酸化物が主に使用される。正極の作製法としては、酸化物の微粉末を結着剤溶液と混合してスラリー化し、そのスラリーを集電板の表面に塗布し乾燥後、加圧する粉末混練塗布乾燥法が一般的であるが、負極と同様の成膜により形成することもできる。
電解液としては、例えばエチレンカーボネートを含有する非水電解質などを使用することができる。
本発明のリチウム二次電池用負極の製造方法は、負極集電体の表面に負極活物質としてSiO膜を形成することにより、初期充電容量の低下を伴うことなく初期効率を改善できる。また、その膜形成に際して、真空中又は不活性雰囲気中で集電体表面を清浄化処理し、その後、集電体表面を大気雰囲気に曝すことなく該表面にSiO成膜を行うことにより、成膜用材料としてSiO焼結体を用いる場合はもとより、SiO析出体を用いる場合にも良好なサイクル特性を確保できる。
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1はリチウム二次電池の構成を例示する縦断面図である。
リチウム二次電池は、所謂ボタン電池であり、正極面を形成する円形の偏平なケース10を備えている。ケース10は金属からなり、その内部には、円盤状の正極20及び負極30が下から順に重ねられて収容されている。正極20は、円形の金属薄板からなる集電体21と、その表面に形成された正極活物質層22とからなる。同様に、負極30は円形の金属薄板からなる集電体31と、その表面に形成された負極活物質層32とからなる。そして両極は、それぞれの活物質層を対向させ、対向面間にセパレータ40を挟んだ状態で積層されて、ケース10内に収容されている。
ケース10内には又、正極20及び負極30と共に電解液が収容されている。そして、シール部材50を介してケース10の開口部をカバー60で密閉することにより、収容物がケース10内に封入されている。カバー60は負極面を形成する部材を兼ねており、負極30の集電体31に接触している。正極面を形成する部材を兼ねるケース10は、正極20の集電体21と接触している。
本実施形態においては、負極30における負極活物質層32が、SiO析出体を成膜用材料として真空蒸着又はスパッタリング、好ましくは真空蒸着の一種であるイオンプレーティングにより集電体31上に形成したSiOの緻密な薄膜からなる。より具体的には、集電体31上にSiO膜を形成する際に、真空チャンバー内での直流マグネトロン放電による表面処理ボンバードにより集電体31の表面を清浄化処理すると共に、引続きその真空チャンバー内で大気雰囲気に曝すことなくイオンプレーティング法などにより集電体31の表面にSiO膜を形成する。SiO膜の厚みは0.1〜50μmが適当である。
一方、正極20における正極活物質層22は、従来どおり、LiCoO2 などのリチウムを含有する遷移金属の酸化物の粉末を、結着剤溶液と混合してスラリー化し、そのスラリーを集電板21の表面に塗布し乾燥後、加圧する粉末混練塗布乾燥法により形成されている。
本実施形態のリチウム二次電池における特徴は以下のとおりである。
第1に、負極活物質層32がSiOからなるため、炭素粉末層と比べて理論容量が格段に大きい。第2に、そのSiOが真空蒸着又はスパッタリングにて形成された薄膜であるため、初期充電容量を低減させずに初期効率を高くできる。第3に、薄膜の単位体積当たりの容量が大きいため、小型化が容易となる。第4に、SiO膜を形成する際に、集電体31の表面を真空中で清浄化処理し、引続き真空中で大気雰囲気に曝すことなく成膜を行うことにより、成膜用材料としてSiO析出体を用いる場合にも、優れたサイクル特性が得られる。
次に、本発明の実施例を示し、比較例と対比することにより、本発明の効果を明らかにする。
SiO析出体を成膜用材料に用いて、厚みが10μmの銅箔からなる集電体の表面に、負極活物質層として、イオンプレーティング法によりSiO膜を形成した。イオンプレーティング法では、EBガンを加熱源として所定の真空雰囲気中〔10-3Pa(10-5torr)〕でSiO膜(膜厚5μm)を形成した。
その際、比較例として、集電体の表面を大気中で洗浄して乾燥させた後、真空チャンバー内で成膜を行った。また、本発明の実施例として、真空チャンバー内でのボンバート処理により集電体の表面を清浄化した後、引続きその真空チャンバー内で成膜を行った。
製造された2種類の負極を正極と組み合わせ、電解液と共にケース内に封入してリチウム二次電池(サイズ直径15mm、厚さ3mm)を完成させた。完成した各種電池のサイクル特性を測定した。サイクル特性は、1回目の放電量に対する10回目の放電量の比率(容量維持率)で評価した。なお、正極にはLiCoO2 の微粉末を用い、電解液にはエチレンカーボネートを含有する非水電解質を用いた。
サイクル特性は、比較例では85%あったが、本発明の実施例では98%に向上した。即ち、本発明の実施例では、集電体の清浄化処理から成膜工程にかけて、集電体の表面を大気雰囲気から隔離することにより、SiO析出体を使用するにもかかわらず、98%という高いサイクル特性が得られた。
成膜用材料としてSiO焼結体を用いた場合は、比較例と同じ前処理を行ったときのサイクル特性は90%であった。実施例と同じ前処理を行うと、このサイクル特性は99%に向上した。これから分かるように、本発明は成膜用材料としてSiO焼結体を用いる場合も有効である。
また、初期効率は、粉末混練塗布乾燥法により形成されたSiO層の場合は50%以下である。予めリチウムをSiOへ含有させることにより、初期効率は80%以上に上がるが、これはもっぱら初期充電容量が減少したためであり、SiOの優れた理論容量が阻害されることになる。SiO析出体及びSiO焼結体による膜形成の場合は、初期充電容量が大きいまま初期効率が80%以上に改善される。
リチウム二次電池の構造を例示する縦断面図である。
符号の説明
10 ケース
20 正極
21 集電体
22 正極活物質層
30 負極
31 集電体
32 負極活物質層
40 セパレータ
50 シール部材
60 カバー

Claims (3)

  1. 負極集電体の表面に負極活物質としてSiO膜を形成する際に、真空中又は不活性雰囲気中で集電体表面を清浄化処理し、その後、集電体表面を大気雰囲気に曝すことなく該表面にSiO成膜を行うことを特徴とするリチウム二次電池用負極の製造方法。
  2. SiO膜の形成法として真空蒸着法又はスパッタリング法を用いる請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
  3. SiO膜を形成する際の成膜用材料としてSiO析出体を用いる請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
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