JP2005069693A - 車輪情報作成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車輪の状態量に関連する信号であってその車輪の回転につれて順次出力されるものに基づいてその車輪に関する車輪情報を作成する技術において、車両の加速または減速にもかかわらず車輪情報を安定した精度で作成することを容易にする。
【解決手段】一円周に沿って並んだ複数個の歯を備えて車輪と共に回転するロータと、車体に設けられ、ロータの回転につれて複数個の歯を順に1個ずつ検出する時間間隔Twを表す信号を出力する検出器と、その検出器の出力信号により表される時間間隔Twに基づいて車輪情報を作成するとともに、その時間間隔Twの時間的変動状態が設定状態以上である変動期間中(例えば、車輪の第N回転中)、その時間間隔Twを除外して車輪情報を作成する信号処理装置とを設ける。
【選択図】 図10
【解決手段】一円周に沿って並んだ複数個の歯を備えて車輪と共に回転するロータと、車体に設けられ、ロータの回転につれて複数個の歯を順に1個ずつ検出する時間間隔Twを表す信号を出力する検出器と、その検出器の出力信号により表される時間間隔Twに基づいて車輪情報を作成するとともに、その時間間隔Twの時間的変動状態が設定状態以上である変動期間中(例えば、車輪の第N回転中)、その時間間隔Twを除外して車輪情報を作成する信号処理装置とを設ける。
【選択図】 図10
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪の状態量に関連する信号であってその車輪の回転につれて順次出力されるものに基づいてその車輪に関する車輪情報を作成する技術に関するものであり、特に、その車輪情報作成のための信号処理の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車輪の状態量に関連する信号であってその車輪の回転につれて順次出力されるものに基づいてその車輪に関する車輪情報を作成する車輪情報作成装置が既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の車輪情報作成装置は、一般に、車輪の状態量に関連する信号をその車輪の回転につれて順次出力する信号出力装置と、その出力信号により表される車輪状態量に基づいて車輪情報を作成する信号処理装置とを含むように構成される。
【0004】
ここに、信号出力装置の一例は、回転体と検出器とを含むように構成される。
回転体は、一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて車輪と共に回転するものである。検出器は、車体に設けられ、回転体の回転につれて複数個の被検出部を順に1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を車輪状態量として表す信号を出力するものである。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−233840号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記の車輪情報作成装置について研究を行い、その結果、車両の加速または減速中には、車輪情報を正確に作成することが困難であることに気が付いた。
【0007】
具体的には、本発明者らは、上記の車輪情報作成装置として、次のものを開発した。それは、信号処理装置が、前記検出器から出力された信号により表される時間間隔の、その信号の出力時期が属する車輪の少なくとも1回転中に検出器から出力された信号により表される複数の時間間隔の平均的な値に対する偏差に基づいて車輪情報を作成する態様である車輪情報作成装置である。この車輪情報作成装置については、車輪が、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されており、かつ、車輪情報が、タイヤに関するタイヤ情報を含み、かつ、信号処理装置が、上記偏差の時間的変動に基づき、タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定する。
【0008】
この車輪情報作成装置においては、上記偏差を取得するために、車輪の少なくとも1回転中に(注目期間内に)検出器から出力された信号により表される複数の時間間隔の平均的な値が用いられる。この平均化という手法は、本来、注目期間内には時間間隔がほぼ一定であるというように安定しているときに、真の時間間隔を推定するために用いられるべき統計的手法である。
【0009】
その注目期間中に、車両が加速または減速されるために車輪の回転速度である車輪速度が変動すると、それに伴って時間間隔も変動する。それにもかかわらず、注目期間中に取得された複数の時間間隔の平均的な値を取得したうえで、それを用いて上記偏差を取得すると、その取得された偏差が大きな誤差を含むこととなってしまう。その結果、車輪情報の取得精度が低下することを避け得ない。
【0010】
このような事情を背景とし、本発明は、車輪の状態量に関連する信号であってその車輪の回転につれて順次出力されるものに基づいてその車輪に関する車輪情報を作成する技術において、車両の加速または減速にもかかわらず車輪情報を安定した精度で作成することを容易にすることを課題としてなされたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
(1) 車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられ、前記車輪に関連する車輪情報を作成する車輪情報作成装置であって、
前記車輪の状態量に関連する信号をその車輪の回転につれて順次出力する信号出力装置と、
その出力信号により表される車輪状態量に基づいて前記車輪情報を作成する信号処理装置であって、その車輪状態量の時間的変動状態が設定状態以上である変動期間中、その車輪状態量を除外して前記車輪情報を作成するものとを含む車輪情報作成装置。
【0012】
この装置においては、車輪状態量の時間的変動状態が設定状態以上である変動期間中、その車輪状態量が除外されて車輪情報が作成される。したがって、この装置によれば、車輪状態量の時間的変動に起因した精度低下を抑制しつつ車輪情報を作成することが容易となる。
【0013】
本項における「車輪状態量」としては、例えば、後述の時間間隔(車輪と同軸な一円周に沿って並んだ複数個の被検出部がそれぞれ順に、車体の定位置に設けられた検出器によって検出される時間間隔)、車輪の回転速度である車輪速度、設定時間内にその検出器によって検出される被検出部の数がある。
【0014】
本項における「車輪情報」としては、例えば、タイヤの空気圧に関する情報、タイヤの異常変形に関する情報がある。
【0015】
本項において、「車輪状態量の時間的変動状態が設定状態以上である」とは、例えば、その車輪状態量の、それより過去に取得された車輪状態量に対する偏差(例えば、差、比)が設定条件を満たすこととして定義することが可能である。
(2) 前記変動期間が、前記車輪の少なくとも1回転に対応する連続期間として予め設定されたものである(1)項に記載の車輪情報作成装置。
【0016】
この装置によれば、車輪状態量の除外開始時から車輪が1回転しないうちにその除外が終了することが回避される。したがって、この装置によれば、車輪状態量の除外を必要とする事象が発生した後、車輪の少なくとも1回転中は、所期の精度で車輪情報を作成することが確保される。
(3) 前記信号処理装置が、前記車輪状態量の時間的変動状態を、前記信号出力装置から出力された最新の信号により表される最新の車輪状態量と、その信号の出力時期より前記車輪の少なくとも1回転前に前記信号出力装置から出力された信号により表される車輪状態量との相対的な関係に基づいて決定する第1決定手段を含む(1)または(2)項に記載の車輪情報作成装置。
(4) 前記信号処理装置が、前記車輪状態量の時間的変動状態を、前記信号出力装置から出力された最新の信号により表される最新の車輪状態量と、その信号の出力時期が属する前記車輪の少なくとも1回転中に最初に前記信号出力装置から出力された信号により表される車輪状態量との相対的な関係に基づいて決定する第2決定手段を含む(1)または(2)項に記載の車輪情報作成装置。
(5) 前記信号処理装置が、前記信号出力装置から出力された信号により表される車輪状態量の、その信号の出力時期が属する前記車輪の少なくとも1回転中に前記信号出力装置から出力された信号により表される複数の車輪状態量の平均的な値に対する偏差に基づいて前記車輪情報を作成するものである(1)ないし(4)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
【0017】
この装置によれば、前記変動期間中、精度低下を招来する車輪状態量が除外されて車輪情報が作成されるため、車輪情報を作成するために複数の車輪状態量の平均的な値を用いるにもかかわらず、車両の加速または減速とは無関係に、安定した精度で車輪情報を作成することが容易となる。
(6) 前記車輪が、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されており、
前記車輪情報が、前記タイヤに関するタイヤ情報を含み、
前記信号処理装置が、前記偏差の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段を含む(5)項に記載の車輪情報作成装置。
【0018】
この装置によれば、タイヤの異常を判定するために複数の車輪状態量の平均的な値を用いるにもかかわらず、車両の加速または減速とは無関係に、安定した精度でタイヤの異常を判定することが容易となる。
(7) 前記信号処理装置が、
前記信号出力装置の出力信号により表される複数の車輪状態量を、前記車輪の1回転を1周期として、前記車輪の複数の回転位置にそれぞれ関連付けて記憶することが可能なメモリと、
前記信号出力装置の出力信号により表される車輪状態量を取得するとともに、その車輪状態量が取得されるごとに、その取得が前記変動期間中に行われなかった場合には、その取得された車輪状態量により、それと同じ前記回転位置に関連付けて前記メモリに記憶されている車輪状態量を更新する一方、前記取得が前記変動期間中に行われた場合には、前記更新を禁止する制限的更新手段とを含む(1)ないし(6)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
(8) 前記信号出力装置が、
一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて前記車輪と共に回転する回転体と、
前記車体に設けられ、前記回転体の回転につれて前記複数個の被検出部を順に1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を前記車輪状態量として表す信号を出力する検出器と
を含み、かつ、前記信号処理装置が、その検出器の出力信号により表される時間間隔に基づいて前記車輪情報を作成するとともに、その時間間隔の時間的変動状態が設定状態以上である変動期間中、その時間間隔を除外して前記車輪情報を作成するものである(1)ないし(7)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
(9) 前記回転体が、前記複数個の被検出部としての複数個の歯が一円周に沿って並んで形成されたものであり、
前記検出器が、前記複数個の歯がそれぞれ通過することを電磁的に検出する電磁ピックアップを含む(8)項に記載の車輪情報作成装置。
(10) 前記信号処理装置が、前記検出器から出力された信号により表される時間間隔の、その信号の出力時期が属する前記車輪の少なくとも1回転中に前記検出器から出力された信号により表される複数の時間間隔の平均的な値に対する偏差に基づいて前記車輪情報を作成するものである(8)または(9)項に記載の車輪情報作成装置。
(11) 前記車輪が、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されており、
前記車輪情報が、前記タイヤに関するタイヤ情報を含み、
前記信号処理装置が、前記偏差の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段を含む(10)項に記載の車輪情報作成装置。
(12) 前記信号処理装置が、
前記検出器の出力信号により表される複数の時間間隔を、前記車輪の1回転を1周期として、前記複数の被検出部にそれぞれ関連付けて記憶することが可能なメモリと、
前記検出器の出力信号により表される時間間隔を取得するとともに、その時間間隔が取得されるごとに、その取得が前記変動期間中に行われなかった場合には、その取得された時間間隔により、それと同じ前記被検出部に関連付けて前記メモリに記憶されている時間間隔を更新する一方、前記取得が前記変動期間中に行われた場合には、前記更新を禁止する制限的更新手段とを含む(8)ないし(11)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
(13) 前記信号処理装置が、前記複数個の被検出部を複数個の現実被検出部として、それらを前記円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けを行い、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部を1個の見かけ被検出部として取り扱うものである(8)ないし(12)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
【0019】
回転体における複数個の現実被検出部についてのグループ分けを行うことなく、車輪情報を作成することが可能である。しかし、この場合には、車輪速度が増加するにつれて、同じ時間内に信号処理装置によって考慮すべき被検出部の数が増加し、このことは、信号処理装置の負荷が増加することにつながる可能性が高い。
【0020】
これに対し、本項に係る装置においては、車輪情報の作成に際し、複数個の現実被検出部のうちの一部に関して信号処理装置による信号処理が省略されるため、同じ時間内に信号処理装置によって考慮すべき被検出部の数が、現実被検出部の数より少なくて済む。
【0021】
したがって、この装置によれば、それら複数個の現実被検出部のすべてについて信号処理を行わなければならない場合に比較して、信号処理装置の負荷が軽減される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態の一つを図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1には、本発明の一実施形態に従うタイヤ異常判定装置の全体構成がブロック図で概念的に表されている。このタイヤ異常判定装置は車両に搭載されている。
【0024】
その車両は、それの前後左右にそれぞれ車輪を備えている。各車輪は、よく知られているように、金属製のホイールに装着されたゴム製のタイヤの内部に空気が圧力下に封入されて構成されている。
【0025】
図1に示すように、このタイヤ異常判定装置は、車体の定位置に、かつ、各車輪ごとに車輪速度センサ10を備えている。各車輪速度センサ10は、よく知られているように、各車輪の角速度を車輪速度として検出するセンサである。具体的には、車輪速度センサ10は、電磁ピックアップであり、車輪と共に回転するロータ12の外周に形成された多数の歯14の通過に応じて周期的に変化する電圧信号を出力する。本実施形態においては、歯14の総数が48個に選定されている。
【0026】
各車輪速度センサ10は、図1に示すように、波形整形器18を介して信号処理装置20に接続されている。波形整形器18は、各車輪速度センサ10の出力信号を整形することにより、パルス状の電圧信号(以下、単に「パルス信号」という)を生成するために設けられている。1個のパルス信号は、車輪速度センサ10によって1個の歯14が検出されるごとに車輪速度センサ10から発生させられる。
【0027】
信号処理装置20は、図2に示すように、コンピュータ22を主体として構成されており、各車輪速度センサ10の出力信号に基づき、各車輪の回転変動の大小に着目することにより、各車輪がタイヤに関して異常であるか否かを判定する。
【0028】
図2に示すように、コンピュータ22は、よく知られているように、CPU30(プロセッサの一例)とROM32(メモリの一例)とRAM34(メモリの一例)とがバス36により互いに接続されて構成されている。
【0029】
ROM32には、図2に示すように、タイヤ異常判定プログラムを始めとし、各種プログラムが予め記憶されている。
【0030】
図1に示すように、信号処理装置20には、さらに、警報器40が接続されている。警報器40は、各車輪に関連付けて、タイヤに異常変形が発生していることを車両の使用者に視覚的にまたは聴覚的に告知するために作動させられる。
【0031】
本実施形態においては、特に高速走行時におけるコンピュータ22の演算負荷を軽減するため、図3に概念的に表すように、48個の歯14(これが現実被検出部の一例である)が8個のグループに分類されている。
【0032】
図4に展開図で示すように、各グループには現実には、6個の歯14が属しているが、見かけ上、すなわち、コンピュータ22の処理上、それら6個の歯14が1個の歯14として取り扱われるようになっている。すなわち、互いに一列に並んだ6個の現実歯14が1個の見かけ歯14(これが前記見かけ被検出部の一例である)に置換されているのである。
【0033】
図5には、上記タイヤ異常判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。このタイヤ異常判定プログラムは、各車輪ごとに繰返し実行される。今回の車輪についての各回の実行時には、まず、ステップS101(以下、単に「S101」で表す。他のステップについても同じとする)において、上述のようにしてグループ分けされた8個の見かけ歯14の各々につき、車輪速度センサ10からパルス信号が出力されるごとに、各パルス信号のエッジ発生時期t(i)が検出される。ここに、エッジは、各パルス信号の立ち上がりエッジを意味する場合と、立ち下がりエッジを意味する場合とがある。図4の例においては、エッジが立ち上がりエッジを意味する用語として定義されている。
【0034】
次に、図5のS102において、今回のエッジ発生時期t(i)の、直前のエッジ発生時期t(i−1)すなわち今回の見かけ歯14の直前の見かけ歯14に対応するエッジ発生時期からの経過時間が最新のパルス信号の周期、すなわち、時間間隔Tw(i)として演算される。図4の下側には、今回の時間間隔Tw(i)につき、今回のエッジ発生時期t(i)と直前のエッジ発生時期t(i−1)との関係がパルス波形を用いて説明されている。
【0035】
続いて、図5のS201において、カウンタの現在値が0であるか否かが判定される。今回は0であると仮定すれば、判定がYESとなり、S202において、今回の時間間隔Tw(i)が対応する見かけ歯14につき、図7に概念的に表すように、その今回の時間間隔Tw(i)の、前回の時間間隔Tw(i−8)すなわち車輪1回転前に同じ見かけ歯14について取得された時間間隔Tw(i−8)からの差ΔTwが設定値ΔTw0より小さいか否かが判定される。今回の時間間隔Tw(i)の時間的変動状態が設定状態より小さく、時間的に安定しているか否かが判定されるのである。
【0036】
図8に概念的に表すように、前回の時間間隔Tw(i−8)は、対応する見かけ歯14に関連付けて、RAM34の前回Twメモリ52(図2参照)に記憶されるようになっている。この前回Twメモリ52は、後述の他のメモリと同様に、車輪1回転分の見かけ歯14の数と同数、記憶位置を割り当てられており、各記憶位置に各見かけ歯14が関連付けられている。
【0037】
今回は、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さいと仮定すれば、図5のS202の判定がYESとなり、その後、S203において、S102において演算された時間間隔Tw(i)が、図6に概念的に表すように、RAM34の最新Twメモリ50(図2参照)に、対応する見かけ歯14(図6の例においては「4」という番号が付された見かけ歯14)に関連付けて記憶される。すなわち、今回の時間間隔Tw(i)により、最新Twメモリ50のうち、対応する見かけ歯14に関連する内容が更新されるのである。続いて、図5のS103に移行する。
【0038】
なお付言すれば、本実施形態においては、最新Twメモリ50の記憶内容が更新される直前に、更新前の記憶内容が、同じ見かけ歯14に関連付けて、前回Twメモリ52に転送されるようになっている。
【0039】
これに対し、今回は、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さくはないと仮定すれば、図5のS202の判定がNOとなり、その後、S204において、カウンタの現在値が7(ロータ14における見かけ歯14のグループの数から1を減じたものに等しい)に設定される。
【0040】
続いて、S205において、図8に概念的に表すように、今回の時間間隔Tw(i)により、最新Twメモリ50のうち、対応する見かけ歯14(図6の例においては「4」という番号が付された見かけ歯14)に関連する内容が更新されることが禁止される。これにより、結局、前回の時間間隔Tw(i−8)が今回の時間間隔Tw(i)として用いられることになる。その後、図5のS103に移行する。
【0041】
このタイヤ異常判定プログラムの次回の実行時には、カウンタの現在値が0ではないため、S201の判定がNOとなり、S206に移行する。このS206においては、カウンタの現在値が1だけ減じられて更新される。その後、S205に移行する。
【0042】
S201、S206およびS205の実行は、S202の判定が最初にNOとなったときから車輪が1回転するまで繰り返され、その結果、その間、最新Twメモリ50において各時間間隔Twが更新されることが禁止される。
【0043】
このタイヤ異常判定プログラムの実行が何回か繰り返されるうちにカウンタの現在値が0に至れば、S201の判定がYESとなり、S202に移行する。このときには、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さくなっていたと仮定すれば、S202の判定がYESとなり、S203により、最新Twメモリ50において時間間隔Tw(i)が更新される。これに対し、今回も、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さくはないと仮定すれば、S202の判定がNOとなり、再度、最新Twメモリ50において時間間隔Twが更新されることが禁止される状態に至る。
【0044】
いずれにしても、S103においては、今回の時間間隔Tw(i)について偏差W(i)が演算される。
【0045】
具体的には、まず、最新Twメモリ50および前回Twメモリ52から、今回の時間間隔Tw(i)から前回の時間間隔Tw(i−8)までの8個の時間間隔Twが読み出される。さらに、それら読み出された8個の時間間隔Twの平均値Ta(i)(これが前記平均的な値の一例である)が、図9に式(1)で示す式を用いて演算される。
【0046】
次に、今回の時間間隔Tw(i)の、その演算された平均値Ta(i)からの偏差W(i)が演算される。本実施形態においては、偏差W(i)は、基本的には、平均値Ta(i)と今回の時間間隔Tw(i)との差を平均値Ta(i)で割り算した割り算値を用いて演算される。ただし、偏差W(i)は、感度係数Kの存在下に、前回の偏差W(i−8)(車輪1回転前に同じ見かけ歯14について演算された偏差)を考慮しつつ、上記割り算値をまなして用いて演算されるようになっている。図9の式(2)には、そのために用いるべき式の一例が示されている。その演算は、例えば、
W(i)=Tw(i)/Ta(i)
なる式を用いて行うことが可能である。
【0047】
ただし、このようにして偏差W(i)を取得することは本発明を実施するために不可欠なことではなく、例えば、そのようななまし(平滑化処理の一例)を行うことなく偏差W(i)を演算して本発明を実施することが可能である。例えば、上記割り算値を主体的に用いたり、平均値Ta(i)と今回の時間間隔Tw(i)との比を主体的に用いたりして偏差W(i)を演算することが可能である。
【0048】
このようにして演算された偏差W(i)は、図6に概念的に表すように、RAM34のWメモリ54(図2参照)に、対応する見かけ歯14に関連付けて記憶され、これにより、Wメモリ54の各記憶内容が更新される。
【0049】
続いて、図5のS104において、最新の車輪1回転に関連付けて、時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次正弦波成分Anが定義される。この定義のための式の一例が図9に式(3)で示されている。
【0050】
その後、図5のS105において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次余弦波成分Bnが定義される。この定義のための式の一例が図9に式(4)で示されている。
【0051】
続いて、図5のS106において、最新の車輪1回転に関連付けて、n次の偏差W(i)の累積値が累積偏差Gnとして演算される。累積偏差Gnは、n次正弦波成分Anとn次余弦波成分Bnとの面積和に相当する。累積偏差Gnの演算のための式の一例が図9に式(5)で示されている。図6に概念的に表すように、演算された累積偏差Gn(同図の例においては、n=1,2および3の場合が示されている)が、RAM34のGnメモリ56(図2参照)に、次数nに関連付けて記憶される。
【0052】
続いて、図5のS107において、その演算された累積偏差Gnがしきい値Gnthより大きいか否かが判定される。大きい場合には、判定がYESとなり、S108において、今回の車輪がタイヤに関して異常であると判定され、S109において、そのことを運転者に告知するために警報器40がONにされる。以上で、このタイヤ異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0053】
これに対し、上記演算された累積偏差Gnがしきい値Gnthより大きくはない場合には、S107の判定がNOとなり、S110において、今回の車輪がタイヤに関して正常であると判定され、S111において、そのことを運転者に告知するために警報器40がOFFにされる。以上で、このタイヤ異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0054】
図10には、時間間隔Twの取得値の時間的推移の一例が、本実施形態の適用前と適用後とについて対比的にグラフで概念的に表されている。
【0055】
図10の例においては、本実施形態の適用前にあっては、時間間隔Twが、車輪の第(N−1)回転中は時間的に安定している(定常状態にある)が、次の第N回転中は時間的に変動し(過渡状態にあり)、次の第(N+1)回転中は、安定状態(定常状態)に復帰している。
【0056】
これに対し、本実施形態の適用後にあっては、元の時間間隔Twが不安定である第N回転中、時間間隔Twの更新が禁止されて、時間間隔Twが第(N−1)回転中の時間間隔Twと同じ値に保持される。その後、第(N+1)回転中においては、第(N−1)回転中および第N回転中の時間間隔Twとは異なる値として時間間隔Twが取得される。
【0057】
これに対し、図11および図12にはそれぞれ、時間間隔Twから換算された車輪速度Vと1次、2次および3次の各累積偏差Gnとのそれぞれの時間的推移の一例が、本実施形態の適用前と適用後とについてグラフで概念的に表されている。
【0058】
図11に示すように、本実施形態の適用前にあっては、車輪速度Vに変化が複数回発生し、各変化はややだれたステップ状のグラフで表されている。特に、それら複数回の変化のうち前半の3回分にそれぞれ対応する時期に、いずれの累積偏差G1,G2およびG3のグラフにも、ノイズが現れている。この例における各グラフの後半においては、タイヤの空気圧が低下するなどの異常がタイヤに発生したために、いずれの累積偏差G1,G2およびG3にも変動が発生している。このことは図12のグラフについても同様である。
【0059】
これに対し、図12に示すように、本実施形態の適用後にあっては、車輪速度Vの複数回の変化にそれぞれ対応する複数の時期のいずれにも、いずれの累積偏差G1,G2およびG3のグラフにも、ノイズが現れていない。
【0060】
したがって、このグラフを図11のグラフと比較すれば明らかであるように、本実施形態によれば、車輪速度Vの時間的変動の有無を問わず、累積偏差Gnを精度よく取得可能となり、その結果、タイヤの異常を精度よく判定可能となる。
【0061】
以上の説明においては、車輪速度Vの変動成分のうち1次、2次および3次の変動成分に着目してタイヤの異常判定が行われるようになっている。本実施形態においては、車輪1回転中に見かけ歯14が8個しか、車輪速度センサ10によって検出され得ないが、車輪速度Vの変動成分を表すグラフ(周期的なグラフ)の山および谷の数との関係上、理論的には、1次から4次までの変動成分が得られる。
【0062】
したがって、コンピュータ22の演算負荷軽減のために48個の現実歯14を6個ずつ分周することによって8個の見かけ歯14に置換しても、変動成分の次数nの必要範囲をカバーすることができている。
【0063】
本実施形態においては、累積偏差Gnの演算が、観察すべきすべての次数nに関して各見かけ歯14ごとに行われるが、コンピュータ22の演算負荷を軽減するため、例えば、観察すべき次数nを1個とするとともに、累積偏差Gnの演算タイミングごとにその次数nを一定の順序で切り替えることが望ましい。
【0064】
さらに、例えば、すべての次数nに関する累積偏差Gnの観察を間欠的に行ってそれらのうち最大のものを検索することを条件とし、その検索後には、そのようにして検索された最大の累積偏差Gnの次数nのみに関して累積偏差Gnを演算することも可能である。
【0065】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ22のうち図5のタイヤ異常判定プログラムを実行する部分が図1におけるタイヤ異常判定手段70を構成しているのである。
【0066】
さらに、本実施形態においては、タイヤ異常判定装置が前記(1)項に係る「車輪情報作成装置」の一例を構成し、検出器としての車輪速度センサ10と回転体としてのロータ12とが互いに共同して同項における「信号出力装置」の一例を構成しているのである。
【0067】
さらに、本実施形態においては、時間間隔Twが前記(1)項における「車輪状態量」の一例を構成し、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さくはない状態が同項における「車輪状態量の時間的変動状態が設定状態以上である」状態の一例を意味し、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さくなった時期から車輪が1回転する期間が同項における「変動期間」の一例を意味し、タイヤが異常であるか否かに関する情報が同項における「車輪情報」の一例を意味するのである。
【0068】
さらに、本実施形態においては、最新Twメモリ50および前回Twメモリ52がそれぞれ、前記(7)項における「メモリ」の一例を構成し、コンピュータ22のうち、図5のS201ないしSC206を実行する部分が同項における「制限的更新手段」の一例を構成しているのである。
【0069】
以上、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に従うタイヤ異常判定装置を表す系統図である。
【図2】図1における信号処理装置20のハードウエア構成を概念的に表すブロック図である。
【図3】図2におけるタイヤ異常判定プログラムにおいて48個の現実歯14が8個の見かけ歯14として取り扱われる様子を概念的に表す正面図である。
【図4】図3における1個の見かけ歯14が6個の現実歯14によって構成される様子を概念的に表すタイムチャートである。
【図5】図2におけるタイヤ異常判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図6】図5のタイヤ異常判定プログラムにおけるS102ないしS106の実行内容を説明するための図である。
【図7】図5のタイヤ異常判定プログラムにおけるS202の実行内容を説明するためのタイムチャートである。
【図8】図5のタイヤ異常判定プログラムにおけるS201ないしS206の実行内容を説明するための図である。
【図9】図5のタイヤ異常判定プログラムにおけるS102ないしS106の実行内容を式で説明するための図である。
【図10】図5のタイヤ異常判定プログラムの実行による時間間隔Twの取得値の時間的推移の一例を本実施形態の適用前と適用後とについて対比的に概念的に表すタイムチャートである。
【図11】上記時間間隔Twから換算された車輪速度Vと、1次、2次および3次の各累積偏差Gnとのそれぞれの時間的推移の一例を本実施形態の適用前について概念的に表すタイムチャートである。
【図12】上記時間間隔Twから換算された車輪速度Vと、1次、2次および3次の各累積偏差Gnとのそれぞれの時間的推移の一例を本実施形態の適用後について概念的に表すタイムチャートである。
【符号の説明】
10 車輪速度センサ
12 ロータ
14 歯
20 信号処理装置
50 最新Twメモリ
52 前回Twメモリ
70 タイヤ異常判定手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪の状態量に関連する信号であってその車輪の回転につれて順次出力されるものに基づいてその車輪に関する車輪情報を作成する技術に関するものであり、特に、その車輪情報作成のための信号処理の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車輪の状態量に関連する信号であってその車輪の回転につれて順次出力されるものに基づいてその車輪に関する車輪情報を作成する車輪情報作成装置が既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の車輪情報作成装置は、一般に、車輪の状態量に関連する信号をその車輪の回転につれて順次出力する信号出力装置と、その出力信号により表される車輪状態量に基づいて車輪情報を作成する信号処理装置とを含むように構成される。
【0004】
ここに、信号出力装置の一例は、回転体と検出器とを含むように構成される。
回転体は、一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて車輪と共に回転するものである。検出器は、車体に設けられ、回転体の回転につれて複数個の被検出部を順に1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を車輪状態量として表す信号を出力するものである。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−233840号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記の車輪情報作成装置について研究を行い、その結果、車両の加速または減速中には、車輪情報を正確に作成することが困難であることに気が付いた。
【0007】
具体的には、本発明者らは、上記の車輪情報作成装置として、次のものを開発した。それは、信号処理装置が、前記検出器から出力された信号により表される時間間隔の、その信号の出力時期が属する車輪の少なくとも1回転中に検出器から出力された信号により表される複数の時間間隔の平均的な値に対する偏差に基づいて車輪情報を作成する態様である車輪情報作成装置である。この車輪情報作成装置については、車輪が、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されており、かつ、車輪情報が、タイヤに関するタイヤ情報を含み、かつ、信号処理装置が、上記偏差の時間的変動に基づき、タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定する。
【0008】
この車輪情報作成装置においては、上記偏差を取得するために、車輪の少なくとも1回転中に(注目期間内に)検出器から出力された信号により表される複数の時間間隔の平均的な値が用いられる。この平均化という手法は、本来、注目期間内には時間間隔がほぼ一定であるというように安定しているときに、真の時間間隔を推定するために用いられるべき統計的手法である。
【0009】
その注目期間中に、車両が加速または減速されるために車輪の回転速度である車輪速度が変動すると、それに伴って時間間隔も変動する。それにもかかわらず、注目期間中に取得された複数の時間間隔の平均的な値を取得したうえで、それを用いて上記偏差を取得すると、その取得された偏差が大きな誤差を含むこととなってしまう。その結果、車輪情報の取得精度が低下することを避け得ない。
【0010】
このような事情を背景とし、本発明は、車輪の状態量に関連する信号であってその車輪の回転につれて順次出力されるものに基づいてその車輪に関する車輪情報を作成する技術において、車両の加速または減速にもかかわらず車輪情報を安定した精度で作成することを容易にすることを課題としてなされたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
(1) 車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられ、前記車輪に関連する車輪情報を作成する車輪情報作成装置であって、
前記車輪の状態量に関連する信号をその車輪の回転につれて順次出力する信号出力装置と、
その出力信号により表される車輪状態量に基づいて前記車輪情報を作成する信号処理装置であって、その車輪状態量の時間的変動状態が設定状態以上である変動期間中、その車輪状態量を除外して前記車輪情報を作成するものとを含む車輪情報作成装置。
【0012】
この装置においては、車輪状態量の時間的変動状態が設定状態以上である変動期間中、その車輪状態量が除外されて車輪情報が作成される。したがって、この装置によれば、車輪状態量の時間的変動に起因した精度低下を抑制しつつ車輪情報を作成することが容易となる。
【0013】
本項における「車輪状態量」としては、例えば、後述の時間間隔(車輪と同軸な一円周に沿って並んだ複数個の被検出部がそれぞれ順に、車体の定位置に設けられた検出器によって検出される時間間隔)、車輪の回転速度である車輪速度、設定時間内にその検出器によって検出される被検出部の数がある。
【0014】
本項における「車輪情報」としては、例えば、タイヤの空気圧に関する情報、タイヤの異常変形に関する情報がある。
【0015】
本項において、「車輪状態量の時間的変動状態が設定状態以上である」とは、例えば、その車輪状態量の、それより過去に取得された車輪状態量に対する偏差(例えば、差、比)が設定条件を満たすこととして定義することが可能である。
(2) 前記変動期間が、前記車輪の少なくとも1回転に対応する連続期間として予め設定されたものである(1)項に記載の車輪情報作成装置。
【0016】
この装置によれば、車輪状態量の除外開始時から車輪が1回転しないうちにその除外が終了することが回避される。したがって、この装置によれば、車輪状態量の除外を必要とする事象が発生した後、車輪の少なくとも1回転中は、所期の精度で車輪情報を作成することが確保される。
(3) 前記信号処理装置が、前記車輪状態量の時間的変動状態を、前記信号出力装置から出力された最新の信号により表される最新の車輪状態量と、その信号の出力時期より前記車輪の少なくとも1回転前に前記信号出力装置から出力された信号により表される車輪状態量との相対的な関係に基づいて決定する第1決定手段を含む(1)または(2)項に記載の車輪情報作成装置。
(4) 前記信号処理装置が、前記車輪状態量の時間的変動状態を、前記信号出力装置から出力された最新の信号により表される最新の車輪状態量と、その信号の出力時期が属する前記車輪の少なくとも1回転中に最初に前記信号出力装置から出力された信号により表される車輪状態量との相対的な関係に基づいて決定する第2決定手段を含む(1)または(2)項に記載の車輪情報作成装置。
(5) 前記信号処理装置が、前記信号出力装置から出力された信号により表される車輪状態量の、その信号の出力時期が属する前記車輪の少なくとも1回転中に前記信号出力装置から出力された信号により表される複数の車輪状態量の平均的な値に対する偏差に基づいて前記車輪情報を作成するものである(1)ないし(4)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
【0017】
この装置によれば、前記変動期間中、精度低下を招来する車輪状態量が除外されて車輪情報が作成されるため、車輪情報を作成するために複数の車輪状態量の平均的な値を用いるにもかかわらず、車両の加速または減速とは無関係に、安定した精度で車輪情報を作成することが容易となる。
(6) 前記車輪が、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されており、
前記車輪情報が、前記タイヤに関するタイヤ情報を含み、
前記信号処理装置が、前記偏差の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段を含む(5)項に記載の車輪情報作成装置。
【0018】
この装置によれば、タイヤの異常を判定するために複数の車輪状態量の平均的な値を用いるにもかかわらず、車両の加速または減速とは無関係に、安定した精度でタイヤの異常を判定することが容易となる。
(7) 前記信号処理装置が、
前記信号出力装置の出力信号により表される複数の車輪状態量を、前記車輪の1回転を1周期として、前記車輪の複数の回転位置にそれぞれ関連付けて記憶することが可能なメモリと、
前記信号出力装置の出力信号により表される車輪状態量を取得するとともに、その車輪状態量が取得されるごとに、その取得が前記変動期間中に行われなかった場合には、その取得された車輪状態量により、それと同じ前記回転位置に関連付けて前記メモリに記憶されている車輪状態量を更新する一方、前記取得が前記変動期間中に行われた場合には、前記更新を禁止する制限的更新手段とを含む(1)ないし(6)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
(8) 前記信号出力装置が、
一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて前記車輪と共に回転する回転体と、
前記車体に設けられ、前記回転体の回転につれて前記複数個の被検出部を順に1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を前記車輪状態量として表す信号を出力する検出器と
を含み、かつ、前記信号処理装置が、その検出器の出力信号により表される時間間隔に基づいて前記車輪情報を作成するとともに、その時間間隔の時間的変動状態が設定状態以上である変動期間中、その時間間隔を除外して前記車輪情報を作成するものである(1)ないし(7)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
(9) 前記回転体が、前記複数個の被検出部としての複数個の歯が一円周に沿って並んで形成されたものであり、
前記検出器が、前記複数個の歯がそれぞれ通過することを電磁的に検出する電磁ピックアップを含む(8)項に記載の車輪情報作成装置。
(10) 前記信号処理装置が、前記検出器から出力された信号により表される時間間隔の、その信号の出力時期が属する前記車輪の少なくとも1回転中に前記検出器から出力された信号により表される複数の時間間隔の平均的な値に対する偏差に基づいて前記車輪情報を作成するものである(8)または(9)項に記載の車輪情報作成装置。
(11) 前記車輪が、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されており、
前記車輪情報が、前記タイヤに関するタイヤ情報を含み、
前記信号処理装置が、前記偏差の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段を含む(10)項に記載の車輪情報作成装置。
(12) 前記信号処理装置が、
前記検出器の出力信号により表される複数の時間間隔を、前記車輪の1回転を1周期として、前記複数の被検出部にそれぞれ関連付けて記憶することが可能なメモリと、
前記検出器の出力信号により表される時間間隔を取得するとともに、その時間間隔が取得されるごとに、その取得が前記変動期間中に行われなかった場合には、その取得された時間間隔により、それと同じ前記被検出部に関連付けて前記メモリに記憶されている時間間隔を更新する一方、前記取得が前記変動期間中に行われた場合には、前記更新を禁止する制限的更新手段とを含む(8)ないし(11)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
(13) 前記信号処理装置が、前記複数個の被検出部を複数個の現実被検出部として、それらを前記円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けを行い、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部を1個の見かけ被検出部として取り扱うものである(8)ないし(12)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
【0019】
回転体における複数個の現実被検出部についてのグループ分けを行うことなく、車輪情報を作成することが可能である。しかし、この場合には、車輪速度が増加するにつれて、同じ時間内に信号処理装置によって考慮すべき被検出部の数が増加し、このことは、信号処理装置の負荷が増加することにつながる可能性が高い。
【0020】
これに対し、本項に係る装置においては、車輪情報の作成に際し、複数個の現実被検出部のうちの一部に関して信号処理装置による信号処理が省略されるため、同じ時間内に信号処理装置によって考慮すべき被検出部の数が、現実被検出部の数より少なくて済む。
【0021】
したがって、この装置によれば、それら複数個の現実被検出部のすべてについて信号処理を行わなければならない場合に比較して、信号処理装置の負荷が軽減される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態の一つを図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1には、本発明の一実施形態に従うタイヤ異常判定装置の全体構成がブロック図で概念的に表されている。このタイヤ異常判定装置は車両に搭載されている。
【0024】
その車両は、それの前後左右にそれぞれ車輪を備えている。各車輪は、よく知られているように、金属製のホイールに装着されたゴム製のタイヤの内部に空気が圧力下に封入されて構成されている。
【0025】
図1に示すように、このタイヤ異常判定装置は、車体の定位置に、かつ、各車輪ごとに車輪速度センサ10を備えている。各車輪速度センサ10は、よく知られているように、各車輪の角速度を車輪速度として検出するセンサである。具体的には、車輪速度センサ10は、電磁ピックアップであり、車輪と共に回転するロータ12の外周に形成された多数の歯14の通過に応じて周期的に変化する電圧信号を出力する。本実施形態においては、歯14の総数が48個に選定されている。
【0026】
各車輪速度センサ10は、図1に示すように、波形整形器18を介して信号処理装置20に接続されている。波形整形器18は、各車輪速度センサ10の出力信号を整形することにより、パルス状の電圧信号(以下、単に「パルス信号」という)を生成するために設けられている。1個のパルス信号は、車輪速度センサ10によって1個の歯14が検出されるごとに車輪速度センサ10から発生させられる。
【0027】
信号処理装置20は、図2に示すように、コンピュータ22を主体として構成されており、各車輪速度センサ10の出力信号に基づき、各車輪の回転変動の大小に着目することにより、各車輪がタイヤに関して異常であるか否かを判定する。
【0028】
図2に示すように、コンピュータ22は、よく知られているように、CPU30(プロセッサの一例)とROM32(メモリの一例)とRAM34(メモリの一例)とがバス36により互いに接続されて構成されている。
【0029】
ROM32には、図2に示すように、タイヤ異常判定プログラムを始めとし、各種プログラムが予め記憶されている。
【0030】
図1に示すように、信号処理装置20には、さらに、警報器40が接続されている。警報器40は、各車輪に関連付けて、タイヤに異常変形が発生していることを車両の使用者に視覚的にまたは聴覚的に告知するために作動させられる。
【0031】
本実施形態においては、特に高速走行時におけるコンピュータ22の演算負荷を軽減するため、図3に概念的に表すように、48個の歯14(これが現実被検出部の一例である)が8個のグループに分類されている。
【0032】
図4に展開図で示すように、各グループには現実には、6個の歯14が属しているが、見かけ上、すなわち、コンピュータ22の処理上、それら6個の歯14が1個の歯14として取り扱われるようになっている。すなわち、互いに一列に並んだ6個の現実歯14が1個の見かけ歯14(これが前記見かけ被検出部の一例である)に置換されているのである。
【0033】
図5には、上記タイヤ異常判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。このタイヤ異常判定プログラムは、各車輪ごとに繰返し実行される。今回の車輪についての各回の実行時には、まず、ステップS101(以下、単に「S101」で表す。他のステップについても同じとする)において、上述のようにしてグループ分けされた8個の見かけ歯14の各々につき、車輪速度センサ10からパルス信号が出力されるごとに、各パルス信号のエッジ発生時期t(i)が検出される。ここに、エッジは、各パルス信号の立ち上がりエッジを意味する場合と、立ち下がりエッジを意味する場合とがある。図4の例においては、エッジが立ち上がりエッジを意味する用語として定義されている。
【0034】
次に、図5のS102において、今回のエッジ発生時期t(i)の、直前のエッジ発生時期t(i−1)すなわち今回の見かけ歯14の直前の見かけ歯14に対応するエッジ発生時期からの経過時間が最新のパルス信号の周期、すなわち、時間間隔Tw(i)として演算される。図4の下側には、今回の時間間隔Tw(i)につき、今回のエッジ発生時期t(i)と直前のエッジ発生時期t(i−1)との関係がパルス波形を用いて説明されている。
【0035】
続いて、図5のS201において、カウンタの現在値が0であるか否かが判定される。今回は0であると仮定すれば、判定がYESとなり、S202において、今回の時間間隔Tw(i)が対応する見かけ歯14につき、図7に概念的に表すように、その今回の時間間隔Tw(i)の、前回の時間間隔Tw(i−8)すなわち車輪1回転前に同じ見かけ歯14について取得された時間間隔Tw(i−8)からの差ΔTwが設定値ΔTw0より小さいか否かが判定される。今回の時間間隔Tw(i)の時間的変動状態が設定状態より小さく、時間的に安定しているか否かが判定されるのである。
【0036】
図8に概念的に表すように、前回の時間間隔Tw(i−8)は、対応する見かけ歯14に関連付けて、RAM34の前回Twメモリ52(図2参照)に記憶されるようになっている。この前回Twメモリ52は、後述の他のメモリと同様に、車輪1回転分の見かけ歯14の数と同数、記憶位置を割り当てられており、各記憶位置に各見かけ歯14が関連付けられている。
【0037】
今回は、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さいと仮定すれば、図5のS202の判定がYESとなり、その後、S203において、S102において演算された時間間隔Tw(i)が、図6に概念的に表すように、RAM34の最新Twメモリ50(図2参照)に、対応する見かけ歯14(図6の例においては「4」という番号が付された見かけ歯14)に関連付けて記憶される。すなわち、今回の時間間隔Tw(i)により、最新Twメモリ50のうち、対応する見かけ歯14に関連する内容が更新されるのである。続いて、図5のS103に移行する。
【0038】
なお付言すれば、本実施形態においては、最新Twメモリ50の記憶内容が更新される直前に、更新前の記憶内容が、同じ見かけ歯14に関連付けて、前回Twメモリ52に転送されるようになっている。
【0039】
これに対し、今回は、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さくはないと仮定すれば、図5のS202の判定がNOとなり、その後、S204において、カウンタの現在値が7(ロータ14における見かけ歯14のグループの数から1を減じたものに等しい)に設定される。
【0040】
続いて、S205において、図8に概念的に表すように、今回の時間間隔Tw(i)により、最新Twメモリ50のうち、対応する見かけ歯14(図6の例においては「4」という番号が付された見かけ歯14)に関連する内容が更新されることが禁止される。これにより、結局、前回の時間間隔Tw(i−8)が今回の時間間隔Tw(i)として用いられることになる。その後、図5のS103に移行する。
【0041】
このタイヤ異常判定プログラムの次回の実行時には、カウンタの現在値が0ではないため、S201の判定がNOとなり、S206に移行する。このS206においては、カウンタの現在値が1だけ減じられて更新される。その後、S205に移行する。
【0042】
S201、S206およびS205の実行は、S202の判定が最初にNOとなったときから車輪が1回転するまで繰り返され、その結果、その間、最新Twメモリ50において各時間間隔Twが更新されることが禁止される。
【0043】
このタイヤ異常判定プログラムの実行が何回か繰り返されるうちにカウンタの現在値が0に至れば、S201の判定がYESとなり、S202に移行する。このときには、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さくなっていたと仮定すれば、S202の判定がYESとなり、S203により、最新Twメモリ50において時間間隔Tw(i)が更新される。これに対し、今回も、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さくはないと仮定すれば、S202の判定がNOとなり、再度、最新Twメモリ50において時間間隔Twが更新されることが禁止される状態に至る。
【0044】
いずれにしても、S103においては、今回の時間間隔Tw(i)について偏差W(i)が演算される。
【0045】
具体的には、まず、最新Twメモリ50および前回Twメモリ52から、今回の時間間隔Tw(i)から前回の時間間隔Tw(i−8)までの8個の時間間隔Twが読み出される。さらに、それら読み出された8個の時間間隔Twの平均値Ta(i)(これが前記平均的な値の一例である)が、図9に式(1)で示す式を用いて演算される。
【0046】
次に、今回の時間間隔Tw(i)の、その演算された平均値Ta(i)からの偏差W(i)が演算される。本実施形態においては、偏差W(i)は、基本的には、平均値Ta(i)と今回の時間間隔Tw(i)との差を平均値Ta(i)で割り算した割り算値を用いて演算される。ただし、偏差W(i)は、感度係数Kの存在下に、前回の偏差W(i−8)(車輪1回転前に同じ見かけ歯14について演算された偏差)を考慮しつつ、上記割り算値をまなして用いて演算されるようになっている。図9の式(2)には、そのために用いるべき式の一例が示されている。その演算は、例えば、
W(i)=Tw(i)/Ta(i)
なる式を用いて行うことが可能である。
【0047】
ただし、このようにして偏差W(i)を取得することは本発明を実施するために不可欠なことではなく、例えば、そのようななまし(平滑化処理の一例)を行うことなく偏差W(i)を演算して本発明を実施することが可能である。例えば、上記割り算値を主体的に用いたり、平均値Ta(i)と今回の時間間隔Tw(i)との比を主体的に用いたりして偏差W(i)を演算することが可能である。
【0048】
このようにして演算された偏差W(i)は、図6に概念的に表すように、RAM34のWメモリ54(図2参照)に、対応する見かけ歯14に関連付けて記憶され、これにより、Wメモリ54の各記憶内容が更新される。
【0049】
続いて、図5のS104において、最新の車輪1回転に関連付けて、時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次正弦波成分Anが定義される。この定義のための式の一例が図9に式(3)で示されている。
【0050】
その後、図5のS105において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次余弦波成分Bnが定義される。この定義のための式の一例が図9に式(4)で示されている。
【0051】
続いて、図5のS106において、最新の車輪1回転に関連付けて、n次の偏差W(i)の累積値が累積偏差Gnとして演算される。累積偏差Gnは、n次正弦波成分Anとn次余弦波成分Bnとの面積和に相当する。累積偏差Gnの演算のための式の一例が図9に式(5)で示されている。図6に概念的に表すように、演算された累積偏差Gn(同図の例においては、n=1,2および3の場合が示されている)が、RAM34のGnメモリ56(図2参照)に、次数nに関連付けて記憶される。
【0052】
続いて、図5のS107において、その演算された累積偏差Gnがしきい値Gnthより大きいか否かが判定される。大きい場合には、判定がYESとなり、S108において、今回の車輪がタイヤに関して異常であると判定され、S109において、そのことを運転者に告知するために警報器40がONにされる。以上で、このタイヤ異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0053】
これに対し、上記演算された累積偏差Gnがしきい値Gnthより大きくはない場合には、S107の判定がNOとなり、S110において、今回の車輪がタイヤに関して正常であると判定され、S111において、そのことを運転者に告知するために警報器40がOFFにされる。以上で、このタイヤ異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0054】
図10には、時間間隔Twの取得値の時間的推移の一例が、本実施形態の適用前と適用後とについて対比的にグラフで概念的に表されている。
【0055】
図10の例においては、本実施形態の適用前にあっては、時間間隔Twが、車輪の第(N−1)回転中は時間的に安定している(定常状態にある)が、次の第N回転中は時間的に変動し(過渡状態にあり)、次の第(N+1)回転中は、安定状態(定常状態)に復帰している。
【0056】
これに対し、本実施形態の適用後にあっては、元の時間間隔Twが不安定である第N回転中、時間間隔Twの更新が禁止されて、時間間隔Twが第(N−1)回転中の時間間隔Twと同じ値に保持される。その後、第(N+1)回転中においては、第(N−1)回転中および第N回転中の時間間隔Twとは異なる値として時間間隔Twが取得される。
【0057】
これに対し、図11および図12にはそれぞれ、時間間隔Twから換算された車輪速度Vと1次、2次および3次の各累積偏差Gnとのそれぞれの時間的推移の一例が、本実施形態の適用前と適用後とについてグラフで概念的に表されている。
【0058】
図11に示すように、本実施形態の適用前にあっては、車輪速度Vに変化が複数回発生し、各変化はややだれたステップ状のグラフで表されている。特に、それら複数回の変化のうち前半の3回分にそれぞれ対応する時期に、いずれの累積偏差G1,G2およびG3のグラフにも、ノイズが現れている。この例における各グラフの後半においては、タイヤの空気圧が低下するなどの異常がタイヤに発生したために、いずれの累積偏差G1,G2およびG3にも変動が発生している。このことは図12のグラフについても同様である。
【0059】
これに対し、図12に示すように、本実施形態の適用後にあっては、車輪速度Vの複数回の変化にそれぞれ対応する複数の時期のいずれにも、いずれの累積偏差G1,G2およびG3のグラフにも、ノイズが現れていない。
【0060】
したがって、このグラフを図11のグラフと比較すれば明らかであるように、本実施形態によれば、車輪速度Vの時間的変動の有無を問わず、累積偏差Gnを精度よく取得可能となり、その結果、タイヤの異常を精度よく判定可能となる。
【0061】
以上の説明においては、車輪速度Vの変動成分のうち1次、2次および3次の変動成分に着目してタイヤの異常判定が行われるようになっている。本実施形態においては、車輪1回転中に見かけ歯14が8個しか、車輪速度センサ10によって検出され得ないが、車輪速度Vの変動成分を表すグラフ(周期的なグラフ)の山および谷の数との関係上、理論的には、1次から4次までの変動成分が得られる。
【0062】
したがって、コンピュータ22の演算負荷軽減のために48個の現実歯14を6個ずつ分周することによって8個の見かけ歯14に置換しても、変動成分の次数nの必要範囲をカバーすることができている。
【0063】
本実施形態においては、累積偏差Gnの演算が、観察すべきすべての次数nに関して各見かけ歯14ごとに行われるが、コンピュータ22の演算負荷を軽減するため、例えば、観察すべき次数nを1個とするとともに、累積偏差Gnの演算タイミングごとにその次数nを一定の順序で切り替えることが望ましい。
【0064】
さらに、例えば、すべての次数nに関する累積偏差Gnの観察を間欠的に行ってそれらのうち最大のものを検索することを条件とし、その検索後には、そのようにして検索された最大の累積偏差Gnの次数nのみに関して累積偏差Gnを演算することも可能である。
【0065】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ22のうち図5のタイヤ異常判定プログラムを実行する部分が図1におけるタイヤ異常判定手段70を構成しているのである。
【0066】
さらに、本実施形態においては、タイヤ異常判定装置が前記(1)項に係る「車輪情報作成装置」の一例を構成し、検出器としての車輪速度センサ10と回転体としてのロータ12とが互いに共同して同項における「信号出力装置」の一例を構成しているのである。
【0067】
さらに、本実施形態においては、時間間隔Twが前記(1)項における「車輪状態量」の一例を構成し、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さくはない状態が同項における「車輪状態量の時間的変動状態が設定状態以上である」状態の一例を意味し、差ΔTwが設定値ΔTw0より小さくなった時期から車輪が1回転する期間が同項における「変動期間」の一例を意味し、タイヤが異常であるか否かに関する情報が同項における「車輪情報」の一例を意味するのである。
【0068】
さらに、本実施形態においては、最新Twメモリ50および前回Twメモリ52がそれぞれ、前記(7)項における「メモリ」の一例を構成し、コンピュータ22のうち、図5のS201ないしSC206を実行する部分が同項における「制限的更新手段」の一例を構成しているのである。
【0069】
以上、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に従うタイヤ異常判定装置を表す系統図である。
【図2】図1における信号処理装置20のハードウエア構成を概念的に表すブロック図である。
【図3】図2におけるタイヤ異常判定プログラムにおいて48個の現実歯14が8個の見かけ歯14として取り扱われる様子を概念的に表す正面図である。
【図4】図3における1個の見かけ歯14が6個の現実歯14によって構成される様子を概念的に表すタイムチャートである。
【図5】図2におけるタイヤ異常判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図6】図5のタイヤ異常判定プログラムにおけるS102ないしS106の実行内容を説明するための図である。
【図7】図5のタイヤ異常判定プログラムにおけるS202の実行内容を説明するためのタイムチャートである。
【図8】図5のタイヤ異常判定プログラムにおけるS201ないしS206の実行内容を説明するための図である。
【図9】図5のタイヤ異常判定プログラムにおけるS102ないしS106の実行内容を式で説明するための図である。
【図10】図5のタイヤ異常判定プログラムの実行による時間間隔Twの取得値の時間的推移の一例を本実施形態の適用前と適用後とについて対比的に概念的に表すタイムチャートである。
【図11】上記時間間隔Twから換算された車輪速度Vと、1次、2次および3次の各累積偏差Gnとのそれぞれの時間的推移の一例を本実施形態の適用前について概念的に表すタイムチャートである。
【図12】上記時間間隔Twから換算された車輪速度Vと、1次、2次および3次の各累積偏差Gnとのそれぞれの時間的推移の一例を本実施形態の適用後について概念的に表すタイムチャートである。
【符号の説明】
10 車輪速度センサ
12 ロータ
14 歯
20 信号処理装置
50 最新Twメモリ
52 前回Twメモリ
70 タイヤ異常判定手段
Claims (5)
- 車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられ、前記車輪に関連する車輪情報を作成する車輪情報作成装置であって、
前記車輪の状態量に関連する信号をその車輪の回転につれて順次出力する信号出力装置と、
その出力信号により表される車輪状態量に基づいて前記車輪情報を作成する信号処理装置であって、その車輪状態量の時間的変動状態が設定状態以上である変動期間中、その車輪状態量を除外して前記車輪情報を作成するものとを含む車輪情報作成装置。 - 前記変動期間が、前記車輪の少なくとも1回転に対応する連続期間として予め設定されたものである請求項1に記載の車輪情報作成装置。
- 前記信号処理装置が、前記信号出力装置から出力された信号により表される車輪状態量の、その信号の出力時期が属する前記車輪の少なくとも1回転中に前記信号出力装置から出力された信号により表される複数の車輪状態量の平均的な値に対する偏差に基づいて前記車輪情報を作成するものである請求項1または2に記載の車輪情報作成装置。
- 前記車輪が、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されており、
前記車輪情報が、前記タイヤに関するタイヤ情報を含み、
前記信号処理装置が、前記偏差の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段を含む請求項3に記載の車輪情報作成装置。 - 前記信号処理装置が、
前記信号出力装置の出力信号により表される複数の車輪状態量を、前記車輪の1回転を1周期として、前記車輪の複数の回転位置にそれぞれ関連付けて記憶することが可能なメモリと、
前記信号出力装置の出力信号により表される車輪状態量を取得するとともに、その車輪状態量が取得されるごとに、その取得が前記変動期間中に行われなかった場合には、その取得された車輪状態量により、それと同じ前記回転位置に関連付けて前記メモリに記憶されている車輪状態量を更新する一方、前記取得が前記変動期間中に行われた場合には、前記更新を禁止する制限的更新手段とを含む請求項1ないし4のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
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---|---|---|---|
JP2003208386A JP2005069693A (ja) | 2003-08-22 | 2003-08-22 | 車輪情報作成装置 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012513029A (ja) * | 2008-12-19 | 2012-06-07 | ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム | 幾何学的タイヤ測定値のデータ品質を向上させるフィルタリング処理方法 |
US8712720B2 (en) | 2008-12-19 | 2014-04-29 | Michelin Recherche at Technigue S.A. | Filtering method for improving the data quality of geometric tire measurements |
JP2016526500A (ja) * | 2013-06-14 | 2016-09-05 | コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングContinental Automotive GmbH | 車両の複数のホイールの位置特定方法及び装置並びにタイヤ空気圧監視システム |
US9569563B2 (en) | 2010-06-14 | 2017-02-14 | Michelin Recherche Et Technique S.A. | Method for prediction and control of harmonic components of tire uniformity parameters |
-
2003
- 2003-08-22 JP JP2003208386A patent/JP2005069693A/ja active Pending
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US10173479B2 (en) | 2013-06-14 | 2019-01-08 | Continental Automotive Gmbh | Method and device for locating wheels of a vehicle as well as a tire pressure monitoring system |
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