JP2004361257A - 車輪情報作成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車輪と共に回転する回転体を利用してその車輪に関する車輪情報を作成する技術において、その車輪情報作成のための信号処理装置の負荷を少なくとも高速域において軽減することを可能にする。
【解決手段】車輪情報を作成する車輪情報作成装置を(a)一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて車輪と共に回転する回転体と、(b)車体の定位置において回転体の回転につれて複数個の被検出部を順に1個ずつ検出して周期的に変化する信号(図7の(a)参照)を出力する検出器と、(c)複数個の被検出部を複数個の現実被検出部(同図の(a)参照)として、それらを複数のグループに分類するグループ分けを行い、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部を1個の見かけ被検出部(同図の(b)参照)として取り扱う信号処理装置とを含むものとする。
【選択図】 図7
【解決手段】車輪情報を作成する車輪情報作成装置を(a)一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて車輪と共に回転する回転体と、(b)車体の定位置において回転体の回転につれて複数個の被検出部を順に1個ずつ検出して周期的に変化する信号(図7の(a)参照)を出力する検出器と、(c)複数個の被検出部を複数個の現実被検出部(同図の(a)参照)として、それらを複数のグループに分類するグループ分けを行い、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部を1個の見かけ被検出部(同図の(b)参照)として取り扱う信号処理装置とを含むものとする。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪と共に回転する回転体を利用してその車輪に関する車輪情報を作成する技術に関するものであり、特に、その車輪情報作成のための信号処理の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車輪と共に回転する回転体を利用してその車輪に関する車輪情報を作成する技術が既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−233840号公報
その車輪情報を作成する車輪情報作成装置は、車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられるとともに、回転体と検出器と信号処理装置とを含むように構成される。以下、それら構成要素を簡単に説明する。
【0004】
回転体は、一般に、車輪と共に回転するとともに、複数個の被検出部(例えば、歯)が一円周に沿って並んで形成されたものである。
【0005】
検出器は、一般に、車体の定位置に設けられ、回転体の回転につれて複数個の被検出部を順に1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を1周期として複数個の被検出部について周期的に変化する信号を出力するものである。
【0006】
信号処理装置は、一般に、車輪情報を作成するために検出器の出力信号を処理するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術においては、信号処理装置は、検出器の出力信号に基づき、回転体が現実に有する複数個の被検出部をすべて実質的に利用することにより、車輪情報を作成するように設計されていた。
【0008】
具体的には、例えば、車輪の回転速度である車輪速度を車輪情報として作成することが必要である場合には、設定時間内に検出器によって検出された被検出部の数、すなわち、設定時間内に検出器の検出領域を通過した被検出部の数に基づいて車輪速度が演算されるようになっていた。
【0009】
ところで、一つの回転体における被検出部の数は、検出器による車輪速度の検出感度すなわち正常に検出し得る最低車速に影響を与える。具体的には、被検出部の数が大きいほど、検出感度が敏感になり、車両が極低速で走行している際にも車輪速度を精度よく検出することが可能となる。
【0010】
しかし、被検出部の数が大きいほど、信号処理装置の負荷が増加する傾向にある。一方、上述の、車輪速度を検出する例においては、車輪速度が増加するほど、設定時間内に検出器の検出領域を通過する被検出部の数が増加するため、高速域においては、低速域におけるほどには検出器の検出感度を敏感にすることが要求されない。むしろ、高速域においては、信号処理装置の負荷が無駄に増加させられることになる。
【0011】
以上説明した事情を背景にして、本発明は、車輪と共に回転する回転体を利用してその車輪に関する車輪情報を作成する技術において、その車輪情報作成のための信号処理装置の負荷を少なくとも高速域において軽減することを可能にすることを課題としてなされたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
(1) 車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられ、前記車輪に関連する車輪情報を作成する車輪情報作成装置であって、
一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて前記車輪と共に回転する回転体と、
前記車体の定位置に設けられ、前記回転体の回転につれて前記複数個の被検出部を1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を1周期として前記複数個の被検出部について周期的に変化する信号を出力する検出器と、
前記車輪情報を作成するために前記検出器の出力信号を処理する信号処理装置であって、少なくとも前記車輪の回転速度である車輪速度が設定値より大きい場合に、前記複数個の被検出部を複数個の現実被検出部として、それらを前記円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けを行い、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部を1個の見かけ被検出部として取り扱うものとを含む車輪情報作成装置。
【0013】
この装置においては、少なくとも車輪速度が設定値より大きい場合に、複数個の被検出部が複数個の現実被検出部とされて、それらを一円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けが行われる。さらに、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部が1個の見かけ被検出部として取り扱われる。
【0014】
したがって、この装置によれば、車輪情報の作成に際し、複数個の現実被検出部のうちの一部に関して信号処理装置による信号処理が省略されるため、それら複数個の現実被検出部のすべてについて信号処理を行わなければならない場合に比較して、信号処理装置の負荷が軽減される。
【0015】
なお付言すれば、本項に係る装置は、車輪速度が設定値以下である場合には上述のグループ分けを行うことが適当ではない状況において使用されるときには、車輪速度が設定値より大きい場合に限ってグループ分けを行う態様で実施され、その結果、高速域において信号処理装置の負荷が軽減されることとなる。
【0016】
ただし、本項に係る装置は、車輪速度の大小を問わずにグループ分けが行われる態様で実施することが可能であり、この場合には、車輪速度の大小を問わず、信号処理装置の負荷が軽減されることとなる。
(2) 前記車輪が、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されており、
前記車輪情報が、前記タイヤに関するタイヤ情報を含み、
前記信号処理装置が、
(a) 前記タイヤが正常である状態において前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動が、各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動より低減されるように前記グループ分けを行うグループ分け手段と、
(b) 前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段とを含む(1)項に記載の車輪情報作成装置。
【0017】
回転体における複数個の被検出部を複数個の現実被検出部として、それらを一円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けを行い、その後、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部を1個の見かけ被検出部として取り扱うこととすると、検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動が、各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動より低減される。グループ分けは、信号平滑化のためのフィルタ処理と同様に機能し得るからである。
【0018】
一方、検出器の出力信号には、回転体自体の加工誤差、その回転体を車輪に取り付ける際の位置誤差(車輪中心からの偏心を含む)等、タイヤに依存しない要因に依拠した基礎的な変動成分のみならず、タイヤの変形(タイヤの空気圧に依存する可能性がある)等、タイヤに依存した要因に依拠したタイヤ依拠成分も含まれる。すなわち、検出器の出力信号は、基礎的な変動成分と、タイヤ依拠成分との合成なのであり、それらを互いに分離することは比較的困難である。
【0019】
これに対し、本発明者らは、基礎的な変動成分はタイヤが正常であるときにおける検出器の出力信号に反映されることを前提に、タイヤが正常であるときにおける検出器の出力信号を平滑化するのに適当なグループ分けの規則を事前に特定し、以後、それと同じ規則に従い、検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動を取得すれば、検出器の合成的な出力信号から基礎的な変動成分を除去することが可能であるという知見を得た。
【0020】
この知見に基づき、本項に係る装置においては、タイヤが正常である状態において検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動が、各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動より低減されるようにグループ分けが行われる。さらに、検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動に基づき、タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かが判定される。
【0021】
ところで、タイヤが正常である状態において検出器の出力信号により各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動を、それら複数個の現実被検出部についてのグループ分けを行うことなく、特殊な信号処理によって平滑化することが可能である。しかし、この場合には、車輪速度が増加するにつれて、同じ時間内に信号処理装置によって考慮すべき被検出部の数が増加し、このことは、信号処理装置の負荷が増加することにつながる可能性が高い。
【0022】
これに対し、本項に係る装置においては、検出器の合成的な出力信号から基礎的な変動成分を除去するためにグループ分けが行われ、その結果、同じ時間内に信号処理装置によって考慮すべき被検出部の数が見かけ上、現実被検出部の数より少なくて済む。
【0023】
したがって、この装置によれば、それら複数個の現実被検出部のすべてについて信号処理を行わなければならない場合に比較して、信号処理装置の負荷が軽減される。
(3) 前記信号処理装置が、
前記検出器の出力信号に基づいて前記車輪速度を検出する車輪速度検出手段であって、前記車輪速度が基準値より低い場合には、前記検出器の出力信号に基づき、設定時間内に前記検出器によって検出された現実被検出部の数に基づいて前記車輪速度を演算する一方、前記車輪速度が前記基準値以上である場合には、前記検出器の出力信号に基づき、前記設定時間内に前記検出器によって検出された見かけ被検出部の数に基づいて前記車輪速度を演算するものを含む(1)または(2)項に記載の車輪情報作成装置。
【0024】
この装置によれば、回転体を用いて車輪速度を検出する場合に、複数個の現実被検出部のすべてについて信号処理を行わなければならない場合に比較して、信号処理装置の負荷が軽減される。
(4) 前記信号処理装置が、前記車輪速度に応じて前記グループ分けを行う(1)ないし(3)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
【0025】
この装置によれば、複数個の現実被検出部についてのグループ分けを車輪速度に応じて行うことが可能となる。例えば、グループの総数を車輪速度の増加につれて変化させること(例えば、増加させること)、各グループの編成を車輪速度に応じて変化させること(例えば、各グループに属する現実被検出部の組合せを変化させること)が可能となる。
(5) 前記回転体が、前記複数個の被検出部としての複数個の歯が一円周に沿って並んで形成されたものであり、
前記検出器が、前記複数個の歯がそれぞれ通過することを電磁的に検出する電磁ピックアップを含む(1)ないし(4)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
(6) 空気が圧力下に封入されて構成された車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられ、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定装置であって、
一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて前記車輪と共に回転する回転体と、
前記車体の定位置に設けられ、前記回転体の回転につれて前記複数個の被検出部を1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を1周期として前記複数個の被検出部について周期的に変化する信号を出力する検出器と、
前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するために前記検出器の出力信号を処理する信号処理装置であって、
(a) 少なくとも前記車輪の回転速度である車輪速度が設定値より大きい場合に、前記複数個の被検出部を複数個の現実被検出部として、それらを前記円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けを、前記タイヤが正常である状態において前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動を、各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動より低減されるように平滑化するために行うグループ分け手段と、
(b) 前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生している可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段とを含むタイヤ異常判定装置。
【0026】
この装置によれば、前記(2)項に係る装置と同様に、複数個の現実被検出部についてのグループ分けを採用することにより、検出器の合成的な出力信号から基礎的な変動成分が除去されるとともに、複数個の現実被検出部のうちの一部に関する信号処理装置による信号処理が省略される。
(7) 前記信号処理装置が、前記車輪速度に応じて前記グループ分けを行う(6)項に記載のタイヤ異常判定装置。
【0027】
この装置によれば、前記(4)項に係る装置と同様な作用効果を実現し得る。
(8) 前記回転体が、前記複数個の被検出部としての複数個の歯が一円周に沿って並んで形成されたものであり、
前記検出器が、前記複数個の歯がそれぞれ通過することを電磁的に検出する電磁ピックアップを含む(6)または(7)項に記載のタイヤ異常判定装置。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態の一つを図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1には、本発明の一実施形態に従うタイヤ異常判定装置の全体構成がブロック図で概念的に表されている。このタイヤ異常判定装置は車両に搭載されている。
【0030】
その車両は、それの前後左右にそれぞれ車輪を備えている。各車輪は、よく知られているように、金属製のホイールに装着されたゴム製のタイヤの内部に空気が圧力下に封入されて構成されている。
【0031】
図1に示すように、このタイヤ異常判定装置は、各車輪ごとに車輪速度センサ10を備えている。各車輪速度センサ10は、よく知られているように、各車輪の角速度を車輪速度として検出するセンサである。具体的には、車輪速度センサ10は、電磁ピックアップであり、車輪と共に回転するロータ12の外周に形成された多数の歯14の通過に応じて周期的に変化する電圧信号を出力する。本実施形態においては、歯14の総数が48個に選定されている。
【0032】
すなわち、本実施形態においては、車輪速度センサ10が前記(1)項における「検出器」の一例であり、ロータ12が同項における「回転体」の一例であり、多数の歯14が同項における「複数個の被検出部」の一例なのである。
【0033】
各車輪速度センサ10は、図1に示すように、波形整形器18を介して信号処理装置20に接続されている。波形整形器18は、各車輪速度センサ10の出力信号を整形することにより、パルス状の電圧信号(以下、単に「パルス信号」という)を生成するために設けられている。1個のパルス信号は、車輪速度センサ10によって1個の歯14が検出されるごとに車輪速度センサ10から発生させられる。
【0034】
信号処理装置20は、図2に示すように、コンピュータ22を主体として構成されており、各車輪速度センサ10の出力信号に基づき、各車輪の回転変動の大小に着目することにより、各車輪がタイヤに関して異常であるか否かを判定する。
【0035】
図2に示すように、コンピュータ22は、よく知られているように、CPU30(プロセッサの一例)とROM32(メモリの一例)とRAM34(メモリの一例)とがバス36により互いに接続されて構成されている。
【0036】
ROM32には、図2に示すように、タイヤ異常判定プログラム、グループ分けプログラム、回転変動判定プログラムおよび車輪速度演算プログラムを始めとし、各種プログラムが予め記憶されている。
【0037】
図1に示すように、信号処理装置20には、さらに、初期化スイッチ38および警報器40が接続されている。初期化スイッチ38は、タイヤが正常であること(例えば、タイヤの空気圧が設定圧に調整されたことや、タイヤが新品に交換されたこと)を車両の使用者(運転者を含む)が信号処理装置20に入力するためにその使用者によって操作される手段の一例である。一方、警報器40は、各車輪に関連付けて、タイヤに異常変形が発生していることを車両の使用者に視覚的にまたは聴覚的に告知するために作動させられる。
【0038】
図3には、上記タイヤ異常判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0039】
このタイヤ異常判定プログラムは、各車輪ごとに繰返し実行される。今回の車輪についての各回の実行時には、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする)において、前記車輪速度演算プログラムが実行される。
【0040】
図4には、この車輪速度演算プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。この車輪速度演算プログラムにおいては、まず、S31において、今回の車輪について車輪速度VWを演算するためにその車輪速度VWの現在値が設定値以下である場合に選択される低速用規則が暫定的に選択される。この低速用規則は、ロータ12における複数の歯14(前記(1)項における「複数個の現実被検出部」の一例である)についての複数のパルス信号をすべて考慮して車輪速度VWを演算するための規則である。
【0041】
次に、S32において、その選択された低速用規則に従って車輪速度VWが演算される。車輪速度VWは、設定時間のサンプリング周期内に車輪速度センサ10によって検出された歯14の数すなわち車輪速度センサ10から出力されたパルス信号の数に基づいて演算される。具体的には、例えば、その出力されたパルス信号の数に定数Aが乗じられて車輪速度VWが演算される。
【0042】
サンプリング期間中に車輪速度センサ10から出力されたパルス信号の数は、図5の(a)に示すパルス信号列の例においては、2個であり、同図の(b)に示すパルス信号列の例においては、7個である。
【0043】
続いて、図4のS33において、その演算された車輪速度VWがしきい値VWthより大きいか否かが判定される。高速走行中であるか否かが判定されるのである。今回は、演算された車輪速度VWがしきい値VWthより大きくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S31において、前回と同じ低速用規則が確定的に選択される。以後、S32以下のステップが実行される。
【0044】
これに対し、今回は、演算された車輪速度VWがしきい値VWthより大きいと仮定すれば、S33の判定がYESとなり、S34において、車輪速度センサ10の出力信号に対して間引き処理が行われる。
【0045】
具体的には、ロータ12における48個の歯14が、3個ずつの歯14から成る16個のグループに分類される。さらに、各グループに属する3個の歯14(現実歯)が、1個の見かけ歯として取り扱われる。
【0046】
したがって、図5の(b)に示す例においては、その間引き処理の結果、同図の(c)に示すように、サンプリング期間中に車輪速度センサ10から出力されたパルス信号の数が見かけ上、2個として取り扱われる。
【0047】
その後、図4のS35において、前記サンプリング周期内に車輪速度センサ10から出力された見かけパルス信号の数に基づいて車輪速度VWが演算される。具体的には、例えば、その出力された見かけパルス信号の数に定数Bが乗じられて車輪速度VWが演算される。ここに、定数Bは、前記定数Aとは異なる定数であり、例えば、図5の例においては、同じ車輪速度VWのもとで同じサンプリング期間中に取得されるパルス信号の数が間引き処理によって3分の1に減じられるため、定数Bは定数Aの3倍の値を有するものとされる。
【0048】
その後、図4のS33に戻り、車輪速度VWの最新の演算値がしきい値VWthより大きい場合には、S33の判定が再度、YESとなり、S34およびS35が繰り返されるが、それらS33ないしS35の実行が繰り返されるうちにS33の判定がNOとなれば、S31に移行し、低速用規則に従って車輪速度VWが演算される状態に戻る。
【0049】
なお付言すれば、この車輪速度演算プログラムの実行によって演算された車輪速度VWは、車両の運動を制御するなど、種々の用途に使用することが可能である。
【0050】
その後、図3のS2において、車両の使用者によって初期化スイッチ38がONに操作された直後であるか否かが判定される。すなわち、車両の使用者の意思表示からタイヤが正常であることを推定することが妥当であるか否かが判定されるのである。
【0051】
今回は、初期化スイッチ38がONに操作された直後であると仮定すると、判定がYESとなり、S3に移行する。このS3においては、前記グループ分けプログラムが実行される。
【0052】
このグループ分けプログラムは、概略的に説明すれば、タイヤが正常である状態において車輪速度センサ10を用いて取得される時系列信号であってタイヤの1回転分の回転変動を反映するもの(以下、「回転変動信号」ともいう)に対して平滑化を行い、それにより、その回転変動信号から基礎的な回転変動を除去するのに適当なグループ分けの規則すなわち後述の先頭歯番号hを特定するために実行される。
【0053】
そして、図6には、このグループ分けプログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0054】
このグループ分けプログラムにおいては、まず、S51において、ロータ12における48個の歯14が分類されるべきグループの数の設定値である設定歯数NがROM32から読み込まれる。この設定歯数Nの一例は、8個である。この例においては、各グループが、図7の(a)に概念的に示すように、互いに一列に並んだ6個の歯14によって構成されることとなる。
【0055】
48個の歯14を8個のグループに分類する規則、すなわち、各グループの編成は、6種類存在する。本実施形態においては、それら種類が、それら8個のグループをロータ12の回転方向に順に一列に並べた場合に先頭のグループに属する6個の歯14のうちの先頭の歯14の番号である先頭歯番号hによって識別される。先頭歯番号hは、1から6までの値を取る。
【0056】
そこで、図6のS52においては、先頭歯番号hが暫定的に1とされる。続いて、S53において、暫定先頭歯番号hを1としてグループ分けを行った場合における8個のグループが見かけ上、8個の歯14として取り扱われる。図7の(b)には、同図の(a)に示す6個の現実歯14が1個の見かけ歯14として取り扱われる様子が概念的に表されている。
【0057】
図6のS53においては、さらに、それら8個の見かけ歯14の各々につき、車輪速度センサ10からパルス信号が出力されるごとに、各パルス信号のエッジ発生時期t(i)が検出される。
【0058】
ここに、エッジは、各パルス信号の立ち上がりエッジを意味する場合と、立ち下がりエッジを意味する場合とがある。図7の例においては、エッジが立ち上がりエッジを意味する用語として定義されている。
【0059】
その後、図6のS54において、今回のエッジ発生時期t(i)の、前回のエッジ発生時期t(i−1)からの経過時間が最新のパルス信号の周期、すなわち、個別時間間隔Tw(i)として演算される。図7には、次回の個別時間間隔Tw(i+1)につき、今回のエッジ発生時期t(i)と次回のエッジ発生時期t(i+1)との関係がパルス波形を用いて説明されている。
【0060】
なお付言すれば、各パルス信号の周期のタイヤ1回転分の変動は、タイヤの回転変動信号を意味しており、それがタイヤが正常であることを条件に取得された場合には、その回転変動信号は、タイヤ以外の要因に依拠した基礎的な変動成分を意味することとなる。
【0061】
続いて、図6のS55において、上記演算された個別時間間隔Tw(i)を用いることにより、基礎的な変動成分が存在しなかったと仮定した場合の回転変動信号からの偏差W(i)が演算される。タイヤが正常であり、かつ、基礎的な変動成分が存在しないと仮定すれば、そのときの信号のレベルは0である。したがって、このS55においては、結局、個別時間間隔Tw(i)がそのまま偏差W(i)とされることになる。
【0062】
図8の(a)には、48個の現実歯14について個々に個別時間間隔Twを演算した場合の偏差Wのタイヤ1回転分の時間的変動がグラフで表されている。この時間的変動は上記基礎的な変動成分を表現している。これに対し、同図の(b)には、8個の見かけ歯14について個々に個別時間間隔Twを演算した場合の偏差Wのタイヤ1回転分の時間的変動がグラフで表されている。すなわち、同図の(a)には、グループ分け前の基礎的な変動成分が表され、一方、同図の(b)は、グループ分け後の基礎的な変動成分が表されているのである。後者における回転変動信号の振幅すなわち偏差Wは、グループ分けにより、前者における回転変動信号の振幅より減少させられており、このことは、グループ分けが、前者における回転変動信号から基礎的な変動成分を除去するためのフィルタ処理として機能することを意味する。
【0063】
続いて、図6のS56において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、個別時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次正弦波成分An(図8参照)が定義される。この定義のための式の一例が図9に式(1)で示されている。
【0064】
その後、図6のS57において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、個別時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次余弦波成分Bn(図8参照)が定義される。この定義のための式の一例が図9に式(2)で示されている。
【0065】
続いて、図6のS58において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、n次の偏差W(i)の累積値が累積偏差Gnとして演算される。累積偏差Gnは、n次正弦波成分Anとn次余弦波成分Bnとの面積和に相当する。累積偏差Gnの演算のための式の一例が図9に式(3)で示されている。
【0066】
その後、図6のS59において、暫定先頭歯番号hの現在値が最大値hmaxと一致するか否かが判定される。前述の例においては、最大値hmaxは、6である。今回は、暫定先頭歯番号hの現在値が最大値hmaxより小さいと仮定すれば、判定がNOとなり、S60において、暫定先頭歯番号hの現在値が1だけインクリメントされた後、S53に戻る。以後、暫定先頭歯番号hが2である場合について、S53ないしS59が実行される。
【0067】
それらステップの実行が繰り返された結果、暫定先頭歯番号hの現在値が最大値hmaxと一致するに至った場合には、S59の判定がYESとなり、S61に移行する。このS61においては、暫定先頭歯番号hが1ないし最大値hmaxである場合についてそれぞれ取得された複数の累積偏差Gnのうち最小のものが検索されるとともに、その最小の累積偏差Gnに対応する暫定先頭歯番号hが最終先頭歯番号hとされる。図8の(c)には、その最小の累積偏差Gnに対応する基礎的な変動成分がグラフで表されている。このグラフは、同時に、先頭歯番号hを最適化すれば、基礎的な変動成分が実質的に完全に除去される可能性を示している。
【0068】
その後、図6のS62において、そのようにして確定された最終先頭歯番号hに基づき、48個の現実歯14が8個のグループすなわち8個の見かけ歯14にグループ分けされる。それら8個の見かけ歯14に関連して取得された基礎的な変動成分すなわち8個の個別時間間隔Twを表すデータは、後述の回転変動判定プログラムの実行に備えてRAM34に保存される。その回転変動判定プログラムの実行においては、それら8個の見かけ歯14について、上記と同様なタイヤ回転変動信号の抽出が行われる。
【0069】
以上詳述したグループ分けプログラムの実行が終了すると、図3のS4において、前記回転変動判定プログラムが実行される。
【0070】
図10には、この回転変動判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。この回転変動判定プログラムにおいては、まず、S101において、前述のようにしてグループ分けされた8個の見かけ歯14の各々につき、車輪速度センサ10からパルス信号が出力されるごとに、各パルス信号のエッジ発生時期t(i)が検出される。
【0071】
次に、S102において、今回のエッジ発生時期t(i)の、前回のエッジ発生時期t(i−1)からの経過時間が最新のパルス信号の周期、すなわち、個別時間間隔Tw(i)として演算される。
【0072】
なお付言すれば、各パルス信号の周期のタイヤ1回転分の変動は、タイヤの回転変動信号を意味しており、それがタイヤが正常ではないことを条件に取得された場合には、その回転変動信号は、タイヤ以外の要因に依拠した基礎的な変動成分と、タイヤに依拠した変動成分との合成を意味することとなる。
【0073】
続いて、S103において、タイヤに依拠した変動成分を抽出するため、上記演算された個別時間間隔Tw(i)の、前記基礎的な変動成分における各個別時間間隔Tw(i)(RAM34に保存されている)からの偏差W(i)が演算される。
【0074】
その後、S104において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、個別時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次正弦波成分Anが定義される。この定義のための式の一例が図9に式(1)で示されている。
【0075】
続いて、図10のS105において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、個別時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次余弦波成分Bn(図8参照)が定義される。この定義のための式の一例が図9に式(2)で示されている。
【0076】
その後、図10のS106において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、n次の偏差W(i)の累積値が累積偏差Gnとして演算される。累積偏差Gnは、n次正弦波成分Anとn次余弦波成分Bnとの面積和に相当する。累積偏差Gnの演算のための式の一例が図9に式(3)で示されている。
【0077】
続いて、S107において、その演算された累積偏差Gnがしきい値Gnthより大きいか否かが判定される。大きい場合には、判定がYESとなり、S108において、今回の車輪がタイヤに関して異常であると判定され、S109において、そのことを運転者に告知するために警報器40がONにされる。以上で、このタイヤ異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0078】
これに対し、上記演算された累積偏差Gnがしきい値Gnthより大きくはない場合には、図10のS107の判定がNOとなり、S110において、今回の車輪がタイヤに関して正常であると判定され、S111において、そのことを運転者に告知するために警報器40がOFFにされる。以上で、このタイヤ異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0079】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、信号処理装置20のうち図4の車輪速度演算プログラムを実行する部分が図1における車輪速度検出手段50を構成し、図6のグループ分けプログラムを実行する部分が図1におけるグループ分け手段60を構成し、図10の回転変動判定プログラムを実行する部分が図1におけるタイヤ異常判定手段62を構成しているのである。
【0080】
以上、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に従うタイヤ異常判定装置を表す系統図である。
【図2】図1における信号処理装置20のハードウエア構成を概念的に表すブロック図である。
【図3】図2におけるタイヤ異常判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図4】図3における車輪速度演算プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図5】図4におけるS34の実行内容を説明するためのグラフである。
【図6】図3におけるグループ分けプログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図7】図6におけるS53の実行内容を説明するためのグラフである。
【図8】図6におけるS55の実行内容を説明するためのグラフである。
【図9】図6におけるS56ないしS58の実行内容を説明するためのグラフである。
【図10】図3における回転変動判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【符号の説明】
10 車輪速度センサ
12 ロータ
14 歯
20 信号処理装置
50 車輪速度演算手段
60 グループ分け手段
62 タイヤ異常判定手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪と共に回転する回転体を利用してその車輪に関する車輪情報を作成する技術に関するものであり、特に、その車輪情報作成のための信号処理の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車輪と共に回転する回転体を利用してその車輪に関する車輪情報を作成する技術が既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−233840号公報
その車輪情報を作成する車輪情報作成装置は、車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられるとともに、回転体と検出器と信号処理装置とを含むように構成される。以下、それら構成要素を簡単に説明する。
【0004】
回転体は、一般に、車輪と共に回転するとともに、複数個の被検出部(例えば、歯)が一円周に沿って並んで形成されたものである。
【0005】
検出器は、一般に、車体の定位置に設けられ、回転体の回転につれて複数個の被検出部を順に1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を1周期として複数個の被検出部について周期的に変化する信号を出力するものである。
【0006】
信号処理装置は、一般に、車輪情報を作成するために検出器の出力信号を処理するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術においては、信号処理装置は、検出器の出力信号に基づき、回転体が現実に有する複数個の被検出部をすべて実質的に利用することにより、車輪情報を作成するように設計されていた。
【0008】
具体的には、例えば、車輪の回転速度である車輪速度を車輪情報として作成することが必要である場合には、設定時間内に検出器によって検出された被検出部の数、すなわち、設定時間内に検出器の検出領域を通過した被検出部の数に基づいて車輪速度が演算されるようになっていた。
【0009】
ところで、一つの回転体における被検出部の数は、検出器による車輪速度の検出感度すなわち正常に検出し得る最低車速に影響を与える。具体的には、被検出部の数が大きいほど、検出感度が敏感になり、車両が極低速で走行している際にも車輪速度を精度よく検出することが可能となる。
【0010】
しかし、被検出部の数が大きいほど、信号処理装置の負荷が増加する傾向にある。一方、上述の、車輪速度を検出する例においては、車輪速度が増加するほど、設定時間内に検出器の検出領域を通過する被検出部の数が増加するため、高速域においては、低速域におけるほどには検出器の検出感度を敏感にすることが要求されない。むしろ、高速域においては、信号処理装置の負荷が無駄に増加させられることになる。
【0011】
以上説明した事情を背景にして、本発明は、車輪と共に回転する回転体を利用してその車輪に関する車輪情報を作成する技術において、その車輪情報作成のための信号処理装置の負荷を少なくとも高速域において軽減することを可能にすることを課題としてなされたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
(1) 車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられ、前記車輪に関連する車輪情報を作成する車輪情報作成装置であって、
一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて前記車輪と共に回転する回転体と、
前記車体の定位置に設けられ、前記回転体の回転につれて前記複数個の被検出部を1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を1周期として前記複数個の被検出部について周期的に変化する信号を出力する検出器と、
前記車輪情報を作成するために前記検出器の出力信号を処理する信号処理装置であって、少なくとも前記車輪の回転速度である車輪速度が設定値より大きい場合に、前記複数個の被検出部を複数個の現実被検出部として、それらを前記円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けを行い、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部を1個の見かけ被検出部として取り扱うものとを含む車輪情報作成装置。
【0013】
この装置においては、少なくとも車輪速度が設定値より大きい場合に、複数個の被検出部が複数個の現実被検出部とされて、それらを一円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けが行われる。さらに、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部が1個の見かけ被検出部として取り扱われる。
【0014】
したがって、この装置によれば、車輪情報の作成に際し、複数個の現実被検出部のうちの一部に関して信号処理装置による信号処理が省略されるため、それら複数個の現実被検出部のすべてについて信号処理を行わなければならない場合に比較して、信号処理装置の負荷が軽減される。
【0015】
なお付言すれば、本項に係る装置は、車輪速度が設定値以下である場合には上述のグループ分けを行うことが適当ではない状況において使用されるときには、車輪速度が設定値より大きい場合に限ってグループ分けを行う態様で実施され、その結果、高速域において信号処理装置の負荷が軽減されることとなる。
【0016】
ただし、本項に係る装置は、車輪速度の大小を問わずにグループ分けが行われる態様で実施することが可能であり、この場合には、車輪速度の大小を問わず、信号処理装置の負荷が軽減されることとなる。
(2) 前記車輪が、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されており、
前記車輪情報が、前記タイヤに関するタイヤ情報を含み、
前記信号処理装置が、
(a) 前記タイヤが正常である状態において前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動が、各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動より低減されるように前記グループ分けを行うグループ分け手段と、
(b) 前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段とを含む(1)項に記載の車輪情報作成装置。
【0017】
回転体における複数個の被検出部を複数個の現実被検出部として、それらを一円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けを行い、その後、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部を1個の見かけ被検出部として取り扱うこととすると、検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動が、各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動より低減される。グループ分けは、信号平滑化のためのフィルタ処理と同様に機能し得るからである。
【0018】
一方、検出器の出力信号には、回転体自体の加工誤差、その回転体を車輪に取り付ける際の位置誤差(車輪中心からの偏心を含む)等、タイヤに依存しない要因に依拠した基礎的な変動成分のみならず、タイヤの変形(タイヤの空気圧に依存する可能性がある)等、タイヤに依存した要因に依拠したタイヤ依拠成分も含まれる。すなわち、検出器の出力信号は、基礎的な変動成分と、タイヤ依拠成分との合成なのであり、それらを互いに分離することは比較的困難である。
【0019】
これに対し、本発明者らは、基礎的な変動成分はタイヤが正常であるときにおける検出器の出力信号に反映されることを前提に、タイヤが正常であるときにおける検出器の出力信号を平滑化するのに適当なグループ分けの規則を事前に特定し、以後、それと同じ規則に従い、検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動を取得すれば、検出器の合成的な出力信号から基礎的な変動成分を除去することが可能であるという知見を得た。
【0020】
この知見に基づき、本項に係る装置においては、タイヤが正常である状態において検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動が、各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動より低減されるようにグループ分けが行われる。さらに、検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動に基づき、タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かが判定される。
【0021】
ところで、タイヤが正常である状態において検出器の出力信号により各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動を、それら複数個の現実被検出部についてのグループ分けを行うことなく、特殊な信号処理によって平滑化することが可能である。しかし、この場合には、車輪速度が増加するにつれて、同じ時間内に信号処理装置によって考慮すべき被検出部の数が増加し、このことは、信号処理装置の負荷が増加することにつながる可能性が高い。
【0022】
これに対し、本項に係る装置においては、検出器の合成的な出力信号から基礎的な変動成分を除去するためにグループ分けが行われ、その結果、同じ時間内に信号処理装置によって考慮すべき被検出部の数が見かけ上、現実被検出部の数より少なくて済む。
【0023】
したがって、この装置によれば、それら複数個の現実被検出部のすべてについて信号処理を行わなければならない場合に比較して、信号処理装置の負荷が軽減される。
(3) 前記信号処理装置が、
前記検出器の出力信号に基づいて前記車輪速度を検出する車輪速度検出手段であって、前記車輪速度が基準値より低い場合には、前記検出器の出力信号に基づき、設定時間内に前記検出器によって検出された現実被検出部の数に基づいて前記車輪速度を演算する一方、前記車輪速度が前記基準値以上である場合には、前記検出器の出力信号に基づき、前記設定時間内に前記検出器によって検出された見かけ被検出部の数に基づいて前記車輪速度を演算するものを含む(1)または(2)項に記載の車輪情報作成装置。
【0024】
この装置によれば、回転体を用いて車輪速度を検出する場合に、複数個の現実被検出部のすべてについて信号処理を行わなければならない場合に比較して、信号処理装置の負荷が軽減される。
(4) 前記信号処理装置が、前記車輪速度に応じて前記グループ分けを行う(1)ないし(3)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
【0025】
この装置によれば、複数個の現実被検出部についてのグループ分けを車輪速度に応じて行うことが可能となる。例えば、グループの総数を車輪速度の増加につれて変化させること(例えば、増加させること)、各グループの編成を車輪速度に応じて変化させること(例えば、各グループに属する現実被検出部の組合せを変化させること)が可能となる。
(5) 前記回転体が、前記複数個の被検出部としての複数個の歯が一円周に沿って並んで形成されたものであり、
前記検出器が、前記複数個の歯がそれぞれ通過することを電磁的に検出する電磁ピックアップを含む(1)ないし(4)項のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
(6) 空気が圧力下に封入されて構成された車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられ、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定装置であって、
一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて前記車輪と共に回転する回転体と、
前記車体の定位置に設けられ、前記回転体の回転につれて前記複数個の被検出部を1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を1周期として前記複数個の被検出部について周期的に変化する信号を出力する検出器と、
前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するために前記検出器の出力信号を処理する信号処理装置であって、
(a) 少なくとも前記車輪の回転速度である車輪速度が設定値より大きい場合に、前記複数個の被検出部を複数個の現実被検出部として、それらを前記円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けを、前記タイヤが正常である状態において前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動を、各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動より低減されるように平滑化するために行うグループ分け手段と、
(b) 前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生している可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段とを含むタイヤ異常判定装置。
【0026】
この装置によれば、前記(2)項に係る装置と同様に、複数個の現実被検出部についてのグループ分けを採用することにより、検出器の合成的な出力信号から基礎的な変動成分が除去されるとともに、複数個の現実被検出部のうちの一部に関する信号処理装置による信号処理が省略される。
(7) 前記信号処理装置が、前記車輪速度に応じて前記グループ分けを行う(6)項に記載のタイヤ異常判定装置。
【0027】
この装置によれば、前記(4)項に係る装置と同様な作用効果を実現し得る。
(8) 前記回転体が、前記複数個の被検出部としての複数個の歯が一円周に沿って並んで形成されたものであり、
前記検出器が、前記複数個の歯がそれぞれ通過することを電磁的に検出する電磁ピックアップを含む(6)または(7)項に記載のタイヤ異常判定装置。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態の一つを図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1には、本発明の一実施形態に従うタイヤ異常判定装置の全体構成がブロック図で概念的に表されている。このタイヤ異常判定装置は車両に搭載されている。
【0030】
その車両は、それの前後左右にそれぞれ車輪を備えている。各車輪は、よく知られているように、金属製のホイールに装着されたゴム製のタイヤの内部に空気が圧力下に封入されて構成されている。
【0031】
図1に示すように、このタイヤ異常判定装置は、各車輪ごとに車輪速度センサ10を備えている。各車輪速度センサ10は、よく知られているように、各車輪の角速度を車輪速度として検出するセンサである。具体的には、車輪速度センサ10は、電磁ピックアップであり、車輪と共に回転するロータ12の外周に形成された多数の歯14の通過に応じて周期的に変化する電圧信号を出力する。本実施形態においては、歯14の総数が48個に選定されている。
【0032】
すなわち、本実施形態においては、車輪速度センサ10が前記(1)項における「検出器」の一例であり、ロータ12が同項における「回転体」の一例であり、多数の歯14が同項における「複数個の被検出部」の一例なのである。
【0033】
各車輪速度センサ10は、図1に示すように、波形整形器18を介して信号処理装置20に接続されている。波形整形器18は、各車輪速度センサ10の出力信号を整形することにより、パルス状の電圧信号(以下、単に「パルス信号」という)を生成するために設けられている。1個のパルス信号は、車輪速度センサ10によって1個の歯14が検出されるごとに車輪速度センサ10から発生させられる。
【0034】
信号処理装置20は、図2に示すように、コンピュータ22を主体として構成されており、各車輪速度センサ10の出力信号に基づき、各車輪の回転変動の大小に着目することにより、各車輪がタイヤに関して異常であるか否かを判定する。
【0035】
図2に示すように、コンピュータ22は、よく知られているように、CPU30(プロセッサの一例)とROM32(メモリの一例)とRAM34(メモリの一例)とがバス36により互いに接続されて構成されている。
【0036】
ROM32には、図2に示すように、タイヤ異常判定プログラム、グループ分けプログラム、回転変動判定プログラムおよび車輪速度演算プログラムを始めとし、各種プログラムが予め記憶されている。
【0037】
図1に示すように、信号処理装置20には、さらに、初期化スイッチ38および警報器40が接続されている。初期化スイッチ38は、タイヤが正常であること(例えば、タイヤの空気圧が設定圧に調整されたことや、タイヤが新品に交換されたこと)を車両の使用者(運転者を含む)が信号処理装置20に入力するためにその使用者によって操作される手段の一例である。一方、警報器40は、各車輪に関連付けて、タイヤに異常変形が発生していることを車両の使用者に視覚的にまたは聴覚的に告知するために作動させられる。
【0038】
図3には、上記タイヤ異常判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0039】
このタイヤ異常判定プログラムは、各車輪ごとに繰返し実行される。今回の車輪についての各回の実行時には、まず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする)において、前記車輪速度演算プログラムが実行される。
【0040】
図4には、この車輪速度演算プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。この車輪速度演算プログラムにおいては、まず、S31において、今回の車輪について車輪速度VWを演算するためにその車輪速度VWの現在値が設定値以下である場合に選択される低速用規則が暫定的に選択される。この低速用規則は、ロータ12における複数の歯14(前記(1)項における「複数個の現実被検出部」の一例である)についての複数のパルス信号をすべて考慮して車輪速度VWを演算するための規則である。
【0041】
次に、S32において、その選択された低速用規則に従って車輪速度VWが演算される。車輪速度VWは、設定時間のサンプリング周期内に車輪速度センサ10によって検出された歯14の数すなわち車輪速度センサ10から出力されたパルス信号の数に基づいて演算される。具体的には、例えば、その出力されたパルス信号の数に定数Aが乗じられて車輪速度VWが演算される。
【0042】
サンプリング期間中に車輪速度センサ10から出力されたパルス信号の数は、図5の(a)に示すパルス信号列の例においては、2個であり、同図の(b)に示すパルス信号列の例においては、7個である。
【0043】
続いて、図4のS33において、その演算された車輪速度VWがしきい値VWthより大きいか否かが判定される。高速走行中であるか否かが判定されるのである。今回は、演算された車輪速度VWがしきい値VWthより大きくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S31において、前回と同じ低速用規則が確定的に選択される。以後、S32以下のステップが実行される。
【0044】
これに対し、今回は、演算された車輪速度VWがしきい値VWthより大きいと仮定すれば、S33の判定がYESとなり、S34において、車輪速度センサ10の出力信号に対して間引き処理が行われる。
【0045】
具体的には、ロータ12における48個の歯14が、3個ずつの歯14から成る16個のグループに分類される。さらに、各グループに属する3個の歯14(現実歯)が、1個の見かけ歯として取り扱われる。
【0046】
したがって、図5の(b)に示す例においては、その間引き処理の結果、同図の(c)に示すように、サンプリング期間中に車輪速度センサ10から出力されたパルス信号の数が見かけ上、2個として取り扱われる。
【0047】
その後、図4のS35において、前記サンプリング周期内に車輪速度センサ10から出力された見かけパルス信号の数に基づいて車輪速度VWが演算される。具体的には、例えば、その出力された見かけパルス信号の数に定数Bが乗じられて車輪速度VWが演算される。ここに、定数Bは、前記定数Aとは異なる定数であり、例えば、図5の例においては、同じ車輪速度VWのもとで同じサンプリング期間中に取得されるパルス信号の数が間引き処理によって3分の1に減じられるため、定数Bは定数Aの3倍の値を有するものとされる。
【0048】
その後、図4のS33に戻り、車輪速度VWの最新の演算値がしきい値VWthより大きい場合には、S33の判定が再度、YESとなり、S34およびS35が繰り返されるが、それらS33ないしS35の実行が繰り返されるうちにS33の判定がNOとなれば、S31に移行し、低速用規則に従って車輪速度VWが演算される状態に戻る。
【0049】
なお付言すれば、この車輪速度演算プログラムの実行によって演算された車輪速度VWは、車両の運動を制御するなど、種々の用途に使用することが可能である。
【0050】
その後、図3のS2において、車両の使用者によって初期化スイッチ38がONに操作された直後であるか否かが判定される。すなわち、車両の使用者の意思表示からタイヤが正常であることを推定することが妥当であるか否かが判定されるのである。
【0051】
今回は、初期化スイッチ38がONに操作された直後であると仮定すると、判定がYESとなり、S3に移行する。このS3においては、前記グループ分けプログラムが実行される。
【0052】
このグループ分けプログラムは、概略的に説明すれば、タイヤが正常である状態において車輪速度センサ10を用いて取得される時系列信号であってタイヤの1回転分の回転変動を反映するもの(以下、「回転変動信号」ともいう)に対して平滑化を行い、それにより、その回転変動信号から基礎的な回転変動を除去するのに適当なグループ分けの規則すなわち後述の先頭歯番号hを特定するために実行される。
【0053】
そして、図6には、このグループ分けプログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。
【0054】
このグループ分けプログラムにおいては、まず、S51において、ロータ12における48個の歯14が分類されるべきグループの数の設定値である設定歯数NがROM32から読み込まれる。この設定歯数Nの一例は、8個である。この例においては、各グループが、図7の(a)に概念的に示すように、互いに一列に並んだ6個の歯14によって構成されることとなる。
【0055】
48個の歯14を8個のグループに分類する規則、すなわち、各グループの編成は、6種類存在する。本実施形態においては、それら種類が、それら8個のグループをロータ12の回転方向に順に一列に並べた場合に先頭のグループに属する6個の歯14のうちの先頭の歯14の番号である先頭歯番号hによって識別される。先頭歯番号hは、1から6までの値を取る。
【0056】
そこで、図6のS52においては、先頭歯番号hが暫定的に1とされる。続いて、S53において、暫定先頭歯番号hを1としてグループ分けを行った場合における8個のグループが見かけ上、8個の歯14として取り扱われる。図7の(b)には、同図の(a)に示す6個の現実歯14が1個の見かけ歯14として取り扱われる様子が概念的に表されている。
【0057】
図6のS53においては、さらに、それら8個の見かけ歯14の各々につき、車輪速度センサ10からパルス信号が出力されるごとに、各パルス信号のエッジ発生時期t(i)が検出される。
【0058】
ここに、エッジは、各パルス信号の立ち上がりエッジを意味する場合と、立ち下がりエッジを意味する場合とがある。図7の例においては、エッジが立ち上がりエッジを意味する用語として定義されている。
【0059】
その後、図6のS54において、今回のエッジ発生時期t(i)の、前回のエッジ発生時期t(i−1)からの経過時間が最新のパルス信号の周期、すなわち、個別時間間隔Tw(i)として演算される。図7には、次回の個別時間間隔Tw(i+1)につき、今回のエッジ発生時期t(i)と次回のエッジ発生時期t(i+1)との関係がパルス波形を用いて説明されている。
【0060】
なお付言すれば、各パルス信号の周期のタイヤ1回転分の変動は、タイヤの回転変動信号を意味しており、それがタイヤが正常であることを条件に取得された場合には、その回転変動信号は、タイヤ以外の要因に依拠した基礎的な変動成分を意味することとなる。
【0061】
続いて、図6のS55において、上記演算された個別時間間隔Tw(i)を用いることにより、基礎的な変動成分が存在しなかったと仮定した場合の回転変動信号からの偏差W(i)が演算される。タイヤが正常であり、かつ、基礎的な変動成分が存在しないと仮定すれば、そのときの信号のレベルは0である。したがって、このS55においては、結局、個別時間間隔Tw(i)がそのまま偏差W(i)とされることになる。
【0062】
図8の(a)には、48個の現実歯14について個々に個別時間間隔Twを演算した場合の偏差Wのタイヤ1回転分の時間的変動がグラフで表されている。この時間的変動は上記基礎的な変動成分を表現している。これに対し、同図の(b)には、8個の見かけ歯14について個々に個別時間間隔Twを演算した場合の偏差Wのタイヤ1回転分の時間的変動がグラフで表されている。すなわち、同図の(a)には、グループ分け前の基礎的な変動成分が表され、一方、同図の(b)は、グループ分け後の基礎的な変動成分が表されているのである。後者における回転変動信号の振幅すなわち偏差Wは、グループ分けにより、前者における回転変動信号の振幅より減少させられており、このことは、グループ分けが、前者における回転変動信号から基礎的な変動成分を除去するためのフィルタ処理として機能することを意味する。
【0063】
続いて、図6のS56において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、個別時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次正弦波成分An(図8参照)が定義される。この定義のための式の一例が図9に式(1)で示されている。
【0064】
その後、図6のS57において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、個別時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次余弦波成分Bn(図8参照)が定義される。この定義のための式の一例が図9に式(2)で示されている。
【0065】
続いて、図6のS58において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、n次の偏差W(i)の累積値が累積偏差Gnとして演算される。累積偏差Gnは、n次正弦波成分Anとn次余弦波成分Bnとの面積和に相当する。累積偏差Gnの演算のための式の一例が図9に式(3)で示されている。
【0066】
その後、図6のS59において、暫定先頭歯番号hの現在値が最大値hmaxと一致するか否かが判定される。前述の例においては、最大値hmaxは、6である。今回は、暫定先頭歯番号hの現在値が最大値hmaxより小さいと仮定すれば、判定がNOとなり、S60において、暫定先頭歯番号hの現在値が1だけインクリメントされた後、S53に戻る。以後、暫定先頭歯番号hが2である場合について、S53ないしS59が実行される。
【0067】
それらステップの実行が繰り返された結果、暫定先頭歯番号hの現在値が最大値hmaxと一致するに至った場合には、S59の判定がYESとなり、S61に移行する。このS61においては、暫定先頭歯番号hが1ないし最大値hmaxである場合についてそれぞれ取得された複数の累積偏差Gnのうち最小のものが検索されるとともに、その最小の累積偏差Gnに対応する暫定先頭歯番号hが最終先頭歯番号hとされる。図8の(c)には、その最小の累積偏差Gnに対応する基礎的な変動成分がグラフで表されている。このグラフは、同時に、先頭歯番号hを最適化すれば、基礎的な変動成分が実質的に完全に除去される可能性を示している。
【0068】
その後、図6のS62において、そのようにして確定された最終先頭歯番号hに基づき、48個の現実歯14が8個のグループすなわち8個の見かけ歯14にグループ分けされる。それら8個の見かけ歯14に関連して取得された基礎的な変動成分すなわち8個の個別時間間隔Twを表すデータは、後述の回転変動判定プログラムの実行に備えてRAM34に保存される。その回転変動判定プログラムの実行においては、それら8個の見かけ歯14について、上記と同様なタイヤ回転変動信号の抽出が行われる。
【0069】
以上詳述したグループ分けプログラムの実行が終了すると、図3のS4において、前記回転変動判定プログラムが実行される。
【0070】
図10には、この回転変動判定プログラムの内容がフローチャートで概念的に表されている。この回転変動判定プログラムにおいては、まず、S101において、前述のようにしてグループ分けされた8個の見かけ歯14の各々につき、車輪速度センサ10からパルス信号が出力されるごとに、各パルス信号のエッジ発生時期t(i)が検出される。
【0071】
次に、S102において、今回のエッジ発生時期t(i)の、前回のエッジ発生時期t(i−1)からの経過時間が最新のパルス信号の周期、すなわち、個別時間間隔Tw(i)として演算される。
【0072】
なお付言すれば、各パルス信号の周期のタイヤ1回転分の変動は、タイヤの回転変動信号を意味しており、それがタイヤが正常ではないことを条件に取得された場合には、その回転変動信号は、タイヤ以外の要因に依拠した基礎的な変動成分と、タイヤに依拠した変動成分との合成を意味することとなる。
【0073】
続いて、S103において、タイヤに依拠した変動成分を抽出するため、上記演算された個別時間間隔Tw(i)の、前記基礎的な変動成分における各個別時間間隔Tw(i)(RAM34に保存されている)からの偏差W(i)が演算される。
【0074】
その後、S104において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、個別時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次正弦波成分Anが定義される。この定義のための式の一例が図9に式(1)で示されている。
【0075】
続いて、図10のS105において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、個別時間間隔Twの時間的変動を表す信号のうちのn次余弦波成分Bn(図8参照)が定義される。この定義のための式の一例が図9に式(2)で示されている。
【0076】
その後、図10のS106において、最新のタイヤ1回転に関連付けて、n次の偏差W(i)の累積値が累積偏差Gnとして演算される。累積偏差Gnは、n次正弦波成分Anとn次余弦波成分Bnとの面積和に相当する。累積偏差Gnの演算のための式の一例が図9に式(3)で示されている。
【0077】
続いて、S107において、その演算された累積偏差Gnがしきい値Gnthより大きいか否かが判定される。大きい場合には、判定がYESとなり、S108において、今回の車輪がタイヤに関して異常であると判定され、S109において、そのことを運転者に告知するために警報器40がONにされる。以上で、このタイヤ異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0078】
これに対し、上記演算された累積偏差Gnがしきい値Gnthより大きくはない場合には、図10のS107の判定がNOとなり、S110において、今回の車輪がタイヤに関して正常であると判定され、S111において、そのことを運転者に告知するために警報器40がOFFにされる。以上で、このタイヤ異常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0079】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、信号処理装置20のうち図4の車輪速度演算プログラムを実行する部分が図1における車輪速度検出手段50を構成し、図6のグループ分けプログラムを実行する部分が図1におけるグループ分け手段60を構成し、図10の回転変動判定プログラムを実行する部分が図1におけるタイヤ異常判定手段62を構成しているのである。
【0080】
以上、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に従うタイヤ異常判定装置を表す系統図である。
【図2】図1における信号処理装置20のハードウエア構成を概念的に表すブロック図である。
【図3】図2におけるタイヤ異常判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図4】図3における車輪速度演算プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図5】図4におけるS34の実行内容を説明するためのグラフである。
【図6】図3におけるグループ分けプログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図7】図6におけるS53の実行内容を説明するためのグラフである。
【図8】図6におけるS55の実行内容を説明するためのグラフである。
【図9】図6におけるS56ないしS58の実行内容を説明するためのグラフである。
【図10】図3における回転変動判定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【符号の説明】
10 車輪速度センサ
12 ロータ
14 歯
20 信号処理装置
50 車輪速度演算手段
60 グループ分け手段
62 タイヤ異常判定手段
Claims (5)
- 車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられ、前記車輪に関連する車輪情報を作成する車輪情報作成装置であって、
一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて前記車輪と共に回転する回転体と、
前記車体の定位置に設けられ、前記回転体の回転につれて前記複数個の被検出部を順に1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を1周期として前記複数個の被検出部について周期的に変化する信号を出力する検出器と、前記車輪情報を作成するために前記検出器の出力信号を処理する信号処理装置であって、少なくとも前記車輪の回転速度である車輪速度が設定値より大きい場合に、前記複数個の被検出部を複数個の現実被検出部として、それらを前記円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けを行い、信号処理上、各グループに属する複数個の現実被検出部を1個の見かけ被検出部として取り扱うものとを含む車輪情報作成装置。 - 前記車輪が、空気が圧力下に封入されたタイヤがホイールに装着されて構成されており、
前記車輪情報が、前記タイヤに関するタイヤ情報を含み、
前記信号処理装置が、
(a) 前記タイヤが正常である状態において前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動が、各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動より低減されるように前記グループ分けを行うグループ分け手段と、
(b) 前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段とを含む請求項1に記載の車輪情報作成装置。 - 前記信号処理装置が、
前記検出器の出力信号に基づいて前記車輪速度を検出する車輪速度検出手段であって、前記車輪速度が基準値より低い場合には、前記検出器の出力信号に基づき、設定時間内に前記検出器によって検出された現実被検出部の数に基づいて前記車輪速度を演算する一方、前記車輪速度が前記基準値以上である場合には、前記検出器の出力信号に基づき、前記設定時間内に前記検出器によって検出された見かけ被検出部の数に基づいて前記車輪速度を演算するものを含む請求項1または2に記載の車輪情報作成装置。 - 前記信号処理装置が、前記車輪速度に応じて前記グループ分けを行う請求項1ないし3のいずれかに記載の車輪情報作成装置。
- 空気が圧力下に封入されて構成された車輪が車体によって支持されて構成された車両に設けられ、前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定装置であって、
一円周に沿って並んだ複数個の被検出部を備えて前記車輪と共に回転する回転体と、
前記車体の定位置に設けられ、前記回転体の回転につれて前記複数個の被検出部を1個ずつ検出し、互いに隣接した2個の被検出部のうち先行する被検出部の検出時期と後続する被検出部の検出時期との間における時間間隔を1周期として前記複数個の被検出部について周期的に変化する信号を出力する検出器と、
前記タイヤに異常が発生しているかまたは発生する可能性があるか否かを判定するために前記検出器の出力信号を処理する信号処理装置であって、
(a) 少なくとも前記車輪の回転速度である車輪速度が設定値より大きい場合に、前記複数個の被検出部を複数個の現実被検出部として、それらを前記円周に沿って複数のグループに分類するグループ分けを、前記タイヤが正常である状態において前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動を、各現実被検出部ごとに表される周期の時間的変動より低減されるように平滑化するために行うグループ分け手段と、
(b) 前記検出器の出力信号により各見かけ被検出部ごとに表される周期の時間的変動に基づき、前記タイヤに異常が発生している可能性があるか否かを判定するタイヤ異常判定手段とを含むタイヤ異常判定装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003160240A JP2004361257A (ja) | 2003-06-05 | 2003-06-05 | 車輪情報作成装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003160240A JP2004361257A (ja) | 2003-06-05 | 2003-06-05 | 車輪情報作成装置 |
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JP2004361257A true JP2004361257A (ja) | 2004-12-24 |
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JP2003160240A Pending JP2004361257A (ja) | 2003-06-05 | 2003-06-05 | 車輪情報作成装置 |
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JP (1) | JP2004361257A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008190870A (ja) * | 2007-01-31 | 2008-08-21 | Fujitsu Ltd | 速度検知プログラム、位置特定プログラム、車載装置および携帯端末装置 |
-
2003
- 2003-06-05 JP JP2003160240A patent/JP2004361257A/ja active Pending
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