JP2005068079A - グリセリンエーテル誘導体、非イオン性界面活性剤及び該グリセリンエーテル誘導体の製造方法 - Google Patents

グリセリンエーテル誘導体、非イオン性界面活性剤及び該グリセリンエーテル誘導体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 温和な条件で副生物の生成がなく簡単なプロセスで製造しうる新規なグリセリンエーテル誘導体及びそれからなる高性能な非イオン性界面活性剤を提供する。
【解決手段】 アクリル酸アルキルエステルとグリセリン類を付加させたグリセリンエーテル誘導体、それからなる非イオン性界面活性剤、並びに塩基性化合物の存在下、アクリル酸アルキルエステルとグリセリン類を反応させるグリセリンエーテル誘導体を製造する方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、グリセリンエーテル誘導体、非イオン性界面活性剤及び該グリセリンエーテル誘導体の製造方法に関し、さらに詳しくは、グリセリン類とアクリル酸エステルを反応させて得られる新規なグリセリンエーテル誘導体、それからなる高性能な非イオン性界面活性剤、及び該グリセリンエーテル誘導体を、温和な条件で、かつ副生物の生成がなく、簡単なプロセスで効率よく製造する方法に関する。
界面活性剤は、気体−液体、液体−液体、液体−固体間の界面に吸着又は配列し、少量で表面又は界面の性質を著しく変化させる物質である。界面活性剤が吸着する性質は、界面活性剤のもつ構造的な特異性に起因するといわれており、一般的にその希薄溶液で界面エネルギーに変化を与え、水溶液では表面張力を低下させるものとして、種々の分野で幅広く使用されている。具体的には、洗浄、化粧品、脱墨剤、医薬、農薬、繊維、プラスチック、紙、エネルギーなど各種分野で利用されている。
この界面活性剤は、極性を有し、水に溶解するか、水に親和性を示す親水基と無極性で有機溶媒に溶解するか、あるいは親和性を示す親油基、又は疎水基の両方を分子内にもつ化合物であって、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤に大別することができる。
前記界面活性剤の中で、非イオン性界面活性剤は、イオンに解離する基を有しない界面活性剤であって、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型などがある。
前記エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルが知られている。このポリエチレングリコール脂肪酸エステルは、ポリエチレングリコールの一端がエステル化されたモノエステル型と、両端がエステル化されたジエステル型があり、いずれも低毒性で皮膚刺激などが小さく、かつ生分解性にも優れている。この非イオン性界面活性剤の製造方法としては、例えばオレイン酸などの高級脂肪酸にエチレンオキシドを130℃以上の高温及び高圧で反応させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような製造方法では、反応条件が厳しい上に、エチレンオキシドの繰り返し単位からなる重合体部分の分子量に分布があるため、その性能が十分に発揮できないという欠点を有している(例えば、非特許文献1参照)。
また、予め製造したポリエチレングリコールとリノレン酸との縮合物が安定な乳化剤として使用できることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この特許文献2にはポリエチレングリコールとリノレン酸との反応には、140〜150℃の高温が必要であることも記載されている。
このように、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルを製造する従来の技術においては、高級脂肪酸にエチレンオキシドを付加重合させる方法では、高温高圧を必要とする上、生成物は、界面活性剤としての機能が十分に発揮されないなどの問題があり、また高級脂肪酸とポリエチレングリコールを縮合させる方法では、高温を必要とする上、副生物が生成して、精製を必要とする場合があるなどの問題を有している。
ドイツ特許第694178号明細書 米国特許第2473798号明細書 「機能性界面活性剤」角田光雄監修、シーエムシー刊行
本発明は、以上のような状況下でなされたもので、温和な条件で、かつ副生物の生成がなく、簡単なプロセスで製造し得る新規なグリセリンエーテル誘導体及びそれからなる高性能な非イオン性界面活性剤を提供することを目的とするものである。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、塩基性化合物の存在下に、アクリル酸アルキルエステルにグリセリン類を付加させることにより、非イオン性界面活性剤として優れた機能を発揮するグリセリンエーテル誘導体が、温和な条件で、副生物の生成もなく、簡単なプロセスで効率よく得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)一般式(I)
Figure 2005068079
(式中、(A)はグリセリン、ジグリセリン又はトリグリセリンから水酸基を除いた残基、xは0〜4の整数、nは1〜3の整数、Qは一般式(a)
Figure 2005068079
で示される基、Rは炭素数4〜18のアルキル基、yは0〜3の整数、pは0〜10の整数を示し、Qが複数ある場合、複数のQは互いに同一でも異なっていても良い。)
で表されるグリセリンエーテル誘導体、
(2)上記(1)のグリセリンエーテル誘導体からなることを特徴とする非イオン性界面活性剤、
(3)塩基性化合物の存在下、一般式(II)
CH2=CH−COOR ・・・(II)
(式中、Rは炭素数4〜18のアルキル基を示す。)
で表されるアクリル酸アルキルエステルと、一般式(III)
Figure 2005068079
(式中、mは1〜3の整数を示す。)
で表されるグリセリン類を反応させることを特徴とする上記(1)のグリセリンエーテル誘導体の製造方法、及び
(4)塩基性化合物が、ナトリウム t−ブトキシド、カリウム t−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの中から選ばれた少なくとも一種の化合物である上記(3)のグリセリンエーテル誘導体の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、高性能を有する非イオン性界面活性剤として有用なグリセリンエーテル誘導体を、温和な条件で、簡単なプロセスで製造することができると共に、該グリセリンエーテル誘導体からなる非イオン性界面活性剤を提供することができる。
また、本発明のグリセリンエーテル誘導体の製造方法では、副生物の生成がなく、環境に悪影響を与えないなどの特性を有する。
本発明のグリセリンエーテル誘導体は、一般式(I)
Figure 2005068079
で表される構造を有するものである。
前記一般式(I)において、(A)はグリセリン、ジグリセリン又はトリグリセリンから水酸基を除いた残基、xは0〜4の整数、nは1〜3の整数、Qは一般式(a)
Figure 2005068079
で示される基、Rは炭素数4〜18のアルキル基、yは0〜3の整数、pは0〜10の整数を示し、Qが複数ある場合、複数のQは互いに同一でも異なっていても良い。
上記Rで示されるアルキル基の炭素数が4未満では界面活性剤としての性能が劣り、一方18を超えるものは原料の入手が困難で実用的でない。pが10を超えた場合には界面活性剤としての性能が劣る。
前記Rの炭素数4〜18のアルキル基は、分子内に不飽和結合を有していてもよく、また直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基の例としては、各種のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基や、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−又はイソデシル基、ラウリル基、イソドデシル基、ミリスチル基、イソテトラデシル基、パルミチル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、イソオクタデシル基、オレイル基、シクロヘキシル基、イソボラニリル基などが挙げられる。
本発明はまた、前記一般式(I)で表されるグリセリンエーテル誘導体からなる本発明の非イオン性界面活性剤を提供する。
本発明の非イオ性界面活性剤は、高性能を有しており、その1質量%水溶液の表面張力(24℃)は、通常28〜40mN/m程度であり、また臨界ミセル濃度(cmc)は、通常0.1〜3ミリモル/リットル程度である。
前記一般式(I)で表されるグリセリンエーテル誘導体は、以下に示す本発明の方法に従えば、簡単なプロセス、かつ温和な反応条件で、極めて効率よく製造することができる。
すなわち、グリセリンエーテル誘導体は、塩基性化合物の存在下、一般式(II)
CH2=CH−COOR ・・・(II)
(式中、Rは前記と同じである。)で表されるアクリル酸アルキルエステルと、
一般式(III)
Figure 2005068079
で表されるグリセリン類を反応させることにより製造される。
式中、mは1〜3の整数を示し、mが1のときはグリセリン、mが2のときはジグリセリン、mが3のときはトリグリセリンである。
本発明の製造方法においては、前記一般式(I)におけるQの数は、主に使用する原料のアクリル酸アルキルエステル/グリセリン類のモル比により決定される。
例えば、グリセリン類としてグリセリンを用いた場合、アクリル酸アルキルエステル/グリセリン類のモル比が約1では、Qの数が1でOHの数が2である化合物が主として生成し、該モル比が約2では、Qの数が2でOHの数が1である化合物が主として生成する。
グリセリンエーテル誘導体を製造する際の溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンが好適に用いられる。
この方法において、触媒として用いられる塩基性化合物としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム t−ブトキシド、カリウム t−ブトキシドなどのアルカリ金属のアルコキシド;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;NaまたはK置換イオン交換樹脂(水酸基を有するイオン交換樹脂をNaまたはK置換したもの)等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中でナトリウム t−ブトキシド、カリウム t−ブトキシド、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好適である。
前記塩基性化合物は、使用するグルセリン類に対し、通常0.1〜10モル%、好ましくは0.5〜3モル%の割合で用いられる。なお、この塩基性化合物は、反応中は通常溶解していないので、反応は効果的な攪拌下で行うことが肝要である。
前記一般式(II)で表されるアクリル酸アルキルエステルとしては、例えばブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、オレイルアクリレートなどが挙げられる。
また、前記一般式(III)で表されるグルセリン類としては、グルセリン、ジグルセリン、トリグルセリンが挙げられる。
これらのアクリル酸アルキルエステルと、グリセリン類の使用割合は、所望するグリセリンエーテル誘導体の種類に応じて、適宜選定される。
反応温度は、通常30〜60℃の範囲で選定される。反応時間は、反応温度、塩基性化合物の種類や量などによって左右され、一概に定めることはできないが、通常1〜10時間程度、好ましくは3〜5時間である。
反応終了液は、通常リン酸などで中和し、濾過した後、溶媒を留去させて樹枝状構造の製品が得られ、非イオン性界面活性剤として用いることができる。
このように、本発明の方法によれば、温和な条件で、かつ副生物の生成がなく、しかも簡単な後処理で、所望のグリセリンエーテル誘導体を効率よく得ることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
なお、各実施例で得られた生成物の物性は、以下の方法に従って測定した。
(1)表面張力
1質量%水溶液の表面張力を、JIS3362−1990に準拠し、温度24℃にて滴容法により測定した。
(2)臨界ミセル濃度(cmc)
表面張力の測定を溶液濃度を変えて行い、変極点から臨界ミセル濃度(cmc)を求めた。
窒素導入管、熱電対、攪拌装置を備えた300mLセパラブルフラスコに、グリセリン9.21g、2−エチルヘキシルアクリレート18.43gおよび溶媒としてN.N−ジメチルホルムアミド30mLを仕込み、窒素を導入しながら攪拌した。攪拌しながらナトリウム−t−ブトキシド0.19gを加え、35℃のオイルバスで4時間加熱した。リン酸70mgを添加し5分攪拌した後、濾過を行い、溶媒を留去して生成物を得た。収量は25.15g(収率91%)であった。
この生成物の1質量%水溶液の表面張力及び臨界ミセル濃度(cmc)を測定した。結果を第1表に示す。
この生成物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定し、GPCの各フラクションを分取して1H−NMR解析により構造を解析した。図1および図2に1H−NMRチャートを示す。1H−NMRより生成物は以下の(IV)および(V)の構造からなることが分かった。
Figure 2005068079
Figure 2005068079
窒素導入管、熱電対、攪拌装置を備えた300mLセパラブルフラスコに、グリセリン9.21g、ブチルアクリレート12.82gおよび溶媒としてN.N−ジメチルホルムアミド30mLを仕込み、窒素を導入しながら攪拌した。攪拌しながらナトリウム t−ブトキシド0.19gを加え、35℃のオイルバスで4時間加熱した。リン酸70mgを添加し5分攪拌した後、濾過を行い、溶媒を留去して生成物を得た。収量は18.5g(収率84%)であった。この生成物の1質量%水溶液の表面張力及び臨界ミセル濃度(cmc)を測定した。結果を第1表に示す。
窒素導入管、熱電対、攪拌装置を備えた300mLセパラブルフラスコに、グリセリン9.21g、ラウリルアクリレート24.04gおよび溶媒としてN.N−ジメチルホルムアミド30mLを仕込み、窒素を導入しながら攪拌した。攪拌しながらナトリウム t−ブトキシド0.19gを加え、35℃のオイルバスで4時間加熱した。リン酸70mgを添加し5分攪拌した後、濾過を行い、溶媒を留去して生成物を得た。収量は31.92g(収率94%)であった。この生成物の1質量%水溶液の表面張力及び臨界ミセル濃度(cmc)を測定した。結果を第1表に示す。
窒素導入管、熱電対、攪拌装置を備えた300mLセパラブルフラスコに、グリセリン9.21g、2−エチルヘキシルアクリレート36.86gおよび溶媒としてN.N−ジメチルホルムアミド50mLを仕込み、窒素を導入しながら攪拌した。攪拌しながらナトリウム t−ブトキシド0.38gを加え、35℃のオイルバスで4時間加熱した。リン酸150mgを添加し5分攪拌した後、析出した白色固体の濾過を行い、溶媒を留去して生成物を得た。収量は39.16g(収率85%)であった。この生成物の1質量%水溶液の表面張力及び臨界ミセル濃度(cmc)を測定した。結果を第1表に示す。生成物の1H−NMR測定を行なった結果、以下の(VI)および(VII)の構造からなることが分かった。
Figure 2005068079
Figure 2005068079
窒素導入管、熱電対、攪拌装置を備えた300mLセパラブルフラスコに、グリセリン9.21g、ブチルアクリレート25.64gおよび溶媒としてN.N−ジメチルホルムアミド50mLを仕込み、窒素を導入しながら攪拌した。攪拌しながらナトリウム t−ブトキシド0.38gを加え、35℃のオイルバスで4時間加熱した。反応終了後、リン酸150mgを添加し5分攪拌した後、析出した白色固体の濾過を行い、溶媒を留去して生成物を得た。収量は33.8g(収率87%)であった。この生成物の1質量%水溶液の表面張力及び臨界ミセル濃度(cmc)を測定した。結果を第1表に示す。
窒素導入管、熱電対、攪拌装置を備えた300mLセパラブルフラスコに、ジグリセリン16.6g、2−エチルヘキシルアクリレート18.43gおよび溶媒としてN.N−ジメチルホルムアミド30mlを仕込み、窒素を導入しながら攪拌した。攪拌しながらナトリウム t−ブトキシド0.19gを加え、35℃のオイルバスで4時間加熱した。リン酸70mgを添加し5分攪拌した後、析出した白色固体の濾過を行い、溶媒を留去して生成物を得た。収量は28.31g(収率81%)であった。この生成物の1質量%水溶液の表面張力及び臨界ミセル濃度(cmc)を測定した。結果を第1表に示す。
Figure 2005068079
本発明によれば、温和な条件で、かつ副生物の生成がなく、簡単なプロセスで製造し得る新規なグリセリンエーテル誘導体を提供することができ、また、それからなる非イオン性界面活性剤は、洗浄、化粧品、医薬・農薬の製剤、印刷、塗料、紙・パルプ、プラスチック、相溶化などの各種分野で利用することができる。
実施例1で得られた(IV)式の生成物の1H−NMRチャートである。 実施例1で得られた(V)式の生成物の1H−NMRチャートである。

Claims (4)

  1. 一般式(I)
    Figure 2005068079
    (式中、(A)はグリセリン、ジグリセリン又はトリグリセリンから水酸基を除いた残基、xは0〜4の整数、nは1〜3の整数、Qは一般式(a)
    Figure 2005068079
    で示される基、Rは炭素数4〜18のアルキル基、yは0〜3の整数、pは0〜10の整数を示し、Qが複数ある場合、複数のQは互いに同一でも異なっていても良い。)
    で表されるグリセリンエーテル誘導体。
  2. 請求項1に記載のグリセリンエーテル誘導体からなることを特徴とする非イオン性界面活性剤。
  3. 塩基性化合物の存在下、一般式(II)
    CH2=CH−COOR ・・・(II)
    (式中、Rは炭素数4〜18のアルキル基を示す。)
    で表されるアクリル酸アルキルエステルと、一般式(III)
    Figure 2005068079
    (式中、mは1〜3の整数を示す。)
    で表されるグリセリン類を反応させることを特徴とする請求項1に記載のグリセリンエーテル誘導体の製造方法。
  4. 塩基性化合物が、ナトリウム t−ブトキシド、カリウム t−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの中から選ばれた少なくとも一種の化合物である請求項3に記載のグリセリンエーテル誘導体の製造方法。

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