JP2005067953A - 陰極線管用パネル - Google Patents

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Abstract

【課題】ブラウニングが起こりにくい陰極線管用パネルを提供する。
【解決手段】質量百分率で、HO 300〜1000ppmを含有し、0.6ÅにおけるX線吸収係数が34cm−1以上であることを特徴としているガラスからなる。前記ガラスは、実質的にPbOを含有せず、質量百分率で以下の組成を有する。SiO45〜60%、Al0〜2%、MgO0〜3%、CaO0〜3%、SrO4〜15%、BaO6〜18%、ZnO5〜10%、LiO0.01〜4%、NaO0.01〜4.5%、KO6〜15%、ZrO0〜2%、TiO0〜3%、CeO0〜3%、Sb0〜2%。
【選択図】なし

Description

本発明は、カラーテレビジョン管や投写管に用いられる陰極線管用パネルに関するものである。
陰極線管の外囲器は、映像が映し出されるパネル部と、電子銃が装着される管状のネック部と、パネル部とネック部を接続する漏斗状のファンネル部から構成される。電子銃から出た電子線は、パネル部の内面に設けられた蛍光体を発光させてパネル部に映像を映し出すが、この時に制動X線が管内に発生する。これが外囲器を通して管外に漏れると人体に悪影響を及ぼすため、この種の外囲器には高いX線吸収能を有するガラスが用いられている。
外囲器を構成するガラスのX線吸収係数を高めるためには、PbOをガラス中に含有させればよい。しかし、PbOを含有したガラスをパネルガラスに用いると、映像を映し出す際に発生する電子線及びX線照射によって、ブラウニングと呼ばれる着色が生じ、画像が見にくくなるという問題が起こる。
近年では、画像比率が4:3と16:9の2種類の画像サイズで映像が配信されており、サイズの違いによって常時画像が映し出される箇所と映し出されない箇所がある。そのため、常時画像が映し出される箇所とそうでない箇所との境界部分では、電子線が照射される時間が異なる。その結果、ブラウニング量に大きな差が生じ、境界部分は映像が見にくくなるという問題が生じている。
特に、投写管は、画像を拡大するため、輝度が低下し易く、印加電圧を高くして輝度を保つ必要がある。そのため、発生する電子線やX線の量が増加しブラウニングが起こりやすくなっている。
そこで、ブラウニングを抑えるために、PbOの代わりにSrOやBaOを多量に含有させたガラスや、イオン半径の異なるアルカリ金属酸化物を所定の割合で混合したガラスが開発されてきた。(特許文献1、2参照)
特開2001−302277号公報 特開2003−137596号公報
しかしながら、近年、高輝度、高画質の画像を得るために益々印加電圧が高くなってきており、さらにブラウニングし難い陰極線管用パネルが求められている。
本発明の第一の目的は、ブラウニングが起こりにくい陰極線管用パネルを提供することである。
また、第二の目的は、投写管用パネルとして好適なX線吸収係数の高い陰極線管用パネルを提供することである。
本発明者は、種々の実験を繰り返した結果、陰極線管用パネルに使用するガラスにおいて、ガラス中のHOを増加させることで、ブラウニング特性を向上させることができることを見いだし、提案するものである。
即ち、本発明の陰極線管用パネルは、質量百分率で、HO 300〜1000ppmを含有するガラスからなることを特徴とする。
また、本発明の陰極線管用パネルは、0.6ÅにおけるX線吸収係数が34cm−1以上であることを特徴とする。
尚、本発明におけるHO量は赤外分光光度計を用いて、波数3846cm−1及び3448cm−1における透過率を測定し、数1に示す計算式により求めた値を意味する。
Figure 2005067953
本発明は、高いブラウニング特性を有するため、陰極線管用パネルとして好適である。
一般に、電子線によるブラウニングは、電子線がガラスを構成するイオンに照射され、イオンが還元されて、金属コロイドを形成するために起こる。PbOを含まない陰極線管パネルの場合、移動しやすいイオンであるアルカリ金属イオンが、電子線が照射される部分に移動して、還元されて金属コロイドとなるために起こる。
そこで、本発明の陰極線管用パネルでは、ガラス中にHOを300ppm以上含有させて、電子線によるブラウニングを抑えている。ガラス中にHOを300ppm以上含有させることで、OHがガラスの網目構造の隙間に入り込み、アルカリ金属イオンが移動し難くため、電子線によるイオンのコロイド化を抑制することが出来ると考えられる。
尚、HOの含有量が300ppmより少ないと、ブラウニングを抑える効果が得難くなる。一方、1000ppmより多くなると、ガラスの粘度が低下したり、金型が劣化しやすくなる。好ましい範囲は320〜900ppmであり、より好ましい範囲は340〜800ppmである。
また、ガラス中のHOの含有量を増加させる方法については、水酸化化合物をガラス原料に用いて溶融する方法、水蒸気分圧の高い雰囲気でガラス原料を溶融する方法、酸素バーナーを用いてガラス原料を溶融する方法、水蒸気を用いてバブリングする方法が挙げられる。
また、本発明の陰極線管用パネルは、34cm−1以上のX線吸収係数を有するガラスであることが好ましい。X線吸収係数が34cm−1より小さいと、投写管に用いた場合、人体に悪影響を及ぼすX線が管外に漏れる虞があるためである。尚、X線吸収係数を高めるには、ガラス中にSrO、BaO、ZnO、ZrOを含有させればよい。
また、本発明の陰極線管用パネルに好適なガラスの組成範囲は、実質的にPbOを含有せず、質量百分率で、SiO 45〜60%、Al 0〜2%、MgO 0〜3%、CaO 0〜3%、SrO 4〜15%、BaO 6〜18%、ZnO 5〜10%、LiO 0.01〜4%、NaO 0.01〜4.5%、KO 6〜15%、ZrO 0〜2%、TiO 0〜3%、CeO 0〜3%、Sb 0〜2%である。
本発明においてガラスの組成を上記のように限定した理由は、次のとおりである。
PbOは、ガラスのX線吸収能力を高める成分であるが、PbOを含有すると電子線およびX線照射によってブラウニングと呼ばれる着色を起こすため、実質的なガラスへの導入は避けるべきである。尚、実質的なガラスへの導入とは、PbOが0.1%以下であることを意味する。
SiOは、ガラスのネットワークフォーマーである。含有量が多くなると、ガラスの粘度が高くなり、溶融が難しくなったり、熱膨張係数が小さくなりすぎてファンネルガラスとの整合性が取り難くなる傾向にある。また、含有量が少なくなると、ガラスの粘度が低くなり、成形が難しくなったり、熱膨張係数が大きくなりすぎて、ファンネルガラスとの整合性が取り難くなる傾向にある。SiOの含有量が45〜60%であれば、ガラスの溶融性や成形性を悪化させることなく、ファンネルガラスと整合する熱膨張係数を有するガラスが得やすくなる。好ましい範囲は50〜58%である。
Alもガラスのネットワークフォーマーとなる成分である。含有量が多くなると、耐火物との反応によりリューサイトやカリ長石と呼ばれる反応ブツが生成し、生産性が低下する傾向にある。Alの含有量が0〜2%であれば、耐火物との反応生成物が析出し難いガラスが得やすくなる。好ましい範囲は0〜1.8%である。
MgO、CaOはガラスを溶融しやすくすると共に、熱膨張係数と粘度を調整する成分である。それぞれの含有量が多くなると、ガラスが失透しやすくなり成形し難くなる傾向にある。MgO、CaOの含有量がそれぞれ0〜3%であれば、失透し難いガラスが得やすくなる。好ましい範囲はそれぞれ0〜2%である。
SrOはガラスを溶融しやすくすると共に、熱膨張係数と粘度を調整し、X線吸収能を高める成分である。含有量が多くなると、ガラスが失透しやすくなり成形し難くなる傾向にある。一方、含有量が少なくなると、充分なX線吸収能が得難くなる傾向にある。SrOの含有量が4〜15%であれば、ガラスが失透することなく、充分なX線吸収係数を有するガラスが得やすくなる。好ましい範囲は5〜14%である。
BaOもSrOと同様に、ガラスを溶融しやすくすると共に、熱膨張係数と粘度を調整し、さらにX線吸収能を高める成分である。含有量が多くなると、ガラスが失透しやすくなり成形し難くなる傾向にある。一方、含有量が少なくなると、充分なX線吸収能が得難くなる傾向にある。BaOの含有量が6〜18%であれば、ガラスが失透することなく、充分なX線吸収係数を有するガラスが得やすくなる。好ましい範囲は7〜16%である。
ZnOもSrO、BaOと同様に、ガラスを溶融しやすくすると共に、熱膨張係数と粘度を調整し、さらにX線吸収能を高める成分である。含有量が多くなると、ガラスが失透しやすくなり成形し難くなる傾向にある。一方、含有量が少なくなると、充分なX線吸収能が得難くなる傾向にある。ZnOの含有量が5〜10%であれば、ガラスが失透することなく、充分なX線吸収係数を有するガラスが得やすくなる。好ましい範囲は6〜9%である。
LiOは、熱膨張係数と粘度を調整する成分である。含有量が多くなると、熱膨張係数が大きくなりすぎて、ファンネルガラスとの整合性が取り難くなったり、粘度が低くなりすぎて成形し難くなる。また、電気絶縁性が低下する傾向にある。一方、含有量が少なくなると、熱膨張係数が低くなり、ファンネルガラスの熱膨張係数と整合し難くなる傾向にある。LiOの含有量が0.01〜4%であれば、成形性、電気絶縁性を低下させることなく、ファンネルガラスと整合する熱膨張係数を有するガラスが得やすくなる。好ましい範囲は0.01〜3.5%である。
NaOもLiOと同様に、熱膨張係数と粘度を調整する成分である。含有量が多くなると、熱膨張係数が大きくなりすぎて、ファンネルガラスとの整合性が取り難くなったり、粘度が低くなりすぎて成形し難くなる。また、電気絶縁性が低下する傾向にある。一方、含有量が少なくなると、熱膨張係数が低くなり、ファンネルガラスの熱膨張係数と整合し難くなる傾向にある。NaOの含有量が0.01〜4.5%であれば、成形性、電気絶縁性を低下させることなく、ファンネルガラスと整合する熱膨張係数を有するガラスが得やすくなる。好ましい範囲は0.01〜4.0%である。
OもLiO、NaOと同様に、熱膨張係数と粘度を調整する成分である。含有量が多くなると、熱膨張係数が大きくなりすぎて、ファンネルガラスとの整合性が取り難くなったり、粘度が低くなりすぎて成形し難くなる。また、電気絶縁性が低下する傾向にある。一方、含有量が少なくなると、熱膨張係数が低くなり、ファンネルガラスの熱膨張係数と整合し難くなる傾向にある。KOの含有量が6〜15%であれば、成形性、電気絶縁性を低下させることなく、ファンネルガラスと整合する熱膨張係数を有するガラスが得やすくなる。好ましい範囲は6.2〜14%である。
ZrOは、熱膨張係数と粘度を調整し、さらにX線吸収能を高める成分である。含有量が多くなると、ガラスが失透しやすくなり成形し難くなる傾向にある。ZrOの含有量が0〜2%であれば、ガラスが失透することなく、充分なX線吸収係数を有するガラスが得やすくなる。好ましい範囲は、0.1〜1.8%である。
TiOは、ガラスの紫外線着色を抑制する成分である。TiOを3%より多く含有させてもその効果が顕著に得られず、原料コストが高くなる。好ましい範囲は0〜2%である。
CeOは、ガラスのX線着色を抑制する成分である。CeOを3%より多く含有させてもその効果が顕著に得られず、原料コストが高くなる。好ましい範囲は0〜2%である。
Sbは、清澄剤として働く成分である。Sbを2%より多く含有させてもその効果が顕著に得られず、原料コストが高くなる。好ましい範囲は0〜1.5%である。
尚、上記の成分以外にも、ガラスの特性を損なわない範囲で他の成分を添加させることも可能であり、例えば、失透を抑える成分としてPを0.5%まで添加しても良い。また、着色剤として、CoO、NiO及びFeを合量で1%まで添加しても良い。
次に、陰極線管用パネルの製造方法について説明する。
まず、ガラス原料を上記のガラス組成範囲となるように調合し混合する。次に、調合したガラス原料を連続溶融炉に投入し、溶融、脱泡を行い、溶融ガラスを成型装置に供給し、プレス成型し徐冷する。尚、ガラス中のHO含有量の調整は、水酸化化合物原料を用いたり、溶融雰囲気を水蒸気分圧の高い雰囲気で溶融したり、酸素バーナーを用いて溶融したり、バブリングに水蒸気を用いることで行う。このようにすることで、陰極線管用パネルを得ることができる。
以下、本発明の陰極線管用パネルを実施例に基づいて詳細に説明する。
表1及び2は本発明の実施例(試料No.1〜9)を、表3は比較例(試料No.10〜14)をそれぞれ示している。
Figure 2005067953
Figure 2005067953
Figure 2005067953
表中の各試料は、次のようにして調製した。
まず、表中のガラス組成となるように調合した原料バッチを白金坩堝に入れ、溶融炉で約1500℃で4時間溶融した。ガラス中のHO量を増加させるために、途中で水蒸気バブリングを行い均質なガラスにした。続いて、溶融ガラスを金型に流し込み、プレスし、7インチの陰極線管パネルに成形した後、徐冷した。尚、試料No.10〜13については、水蒸気バブリングを行わずに、白金攪拌棒を用いて攪拌を行い均質なガラスにした。
こうして得られた各試料のガラス中のHOの含有量、ブラウニング量、金型劣化性の評価及びX線吸収係数を測定し、表に示した。
表から明らかなように実施例である試料No.1〜9は、ガラス中のHOの含有量が310〜800ppmであり、ブラウニング量は7.8%以下と小さく、金型劣化性の評価についても、金型の劣化は認められなかった。また、X線吸収係数は35cm−1以上と高かった。
これに対し、比較例である試料No.10〜13は、ガラス中のHOの含有量が280ppm以下であり、ブラウニング量は9.2%以上と大きかった。また、試料No.14については、ガラス中のHOの含有量が1050ppmであり、金型劣化性の評価で、金型の劣化が認められた。
尚、ガラス中のHO含有量については、各試料を肉厚が1mmとなるように両面を光学研磨した後、赤外分光光度計を用いて、波数3846cm−1及び3448cm−1における透過率を測定し、先に記載した数1に示す計算式により求めた。
ブラウニング量については、各試料を肉厚が2mmとなるように両面を光学研磨した後、波長400nmにおける光透過率を測定し、続いて、30kV、3μA/cmの電子線を100時間照射する。その後、再度400nmにおける光透過率を測定し、電子線照射による光透過率の低下量を求め、ΔT%として示した。この透過率の低下量が大きくなるほど、ブラウニングが起こりやすく、ブラウニング特性が劣ることを示す。
金型劣化性については、1000℃の各試料の溶融ガラスを金型に流し込み、金型との離脱状態で評価した。金型とガラスとの固着が認められなければ、劣化してないとして○とし、金型とガラスとの固着が認められれば、金型の酸化が進行したとして×とした。
X線吸収係数は、ガラス組成と密度に基づいて、0.6Åの波長に対する吸収係数を計算して求めたものである。
本発明の陰極線管用パネルは、X線吸収係数が34cm−1以上になるように、ガラス組成を適宜選択することで、特に、ブラウニングが起こりやすい投写管用パネルとして好適である。

Claims (3)

  1. 質量百分率で、HO 300〜1000ppmを含有するガラスからなることを特徴とする陰極線管用パネル。
  2. 0.6ÅにおけるX線吸収係数が34cm−1以上であることを特徴とする請求項1記載の陰極線管用パネル。
  3. 実質的にPbOを含有せず、質量百分率で、SiO 45〜60%、Al 0〜2%、MgO 0〜3%、CaO 0〜3%、SrO 4〜15%、BaO 6〜18%、ZnO 5〜10%、LiO 0.01〜4%、NaO 0.01〜4.5%、KO 6〜15%、ZrO 0〜2%、TiO 0〜3%、CeO 0〜3%、Sb 0〜2%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の陰極線管用パネル。
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