JP2005060886A - 難燃性ポリエステル複合繊維 - Google Patents

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幹也 廣長
Takao Okochi
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Abstract

【課題】 物性値にバラツキのある再生ポリエステルを使用していても、紡糸操業性に優れ、良好な難燃性を有し、かつ染色斑等の色斑が発生することなく品位の高い布帛等の製品を得ることができる難燃ポリエステル複合繊維を提供する。
【解決手段】 ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルAを鞘成分、再生ポリエステルBを芯成分とする芯鞘型複合繊維であって、芯成分と鞘成分の質量比(芯/鞘)が20/80〜70/30、ポリエステルAと再生ポリエステルBの少なくとも一方にリン化合物を含有し、繊維中のリン原子の含有量が2000〜30000ppmであることを特徴とする難燃性ポリエステル複合繊維。
【選択図】 なし

Description

本発明は、回収、再生されたポリエステルを一成分とする芯鞘型の複合繊維であって、難燃性に優れ、かつ染色斑がなく、特にカーペット、カーテン地、座席シート地用等の難燃性が要求される用途に好適な難燃性ポリエステル複合繊維に関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)を始めとするポリエステルは、高融点で耐薬品性があり、また、低コストであるために、繊維はもちろんのこと、フィルム、成型品等に幅広く用いられている。
資源の再利用、環境問題等の面から、様々な分野や素材でリサイクル性が求められてきている。使用量が多く、今後も使用量の大幅な増加が予想されるポリエステルにおいても、液体飲用品用ポリエステルボトル等に一度成型使用されたポリエステル樹脂を再度使用することが行われており、このようなリサイクルは、資源の再利用に貢献するという地球環境にやさしい企業活動の一環としても重要である。
回収され、再生されたポリエステル樹脂を利用した製品の一つとして、ポリエステルフィラメントがあり、このような再生繊維は衣料用途あるいは産業資材用途に使用されている。
消費者のニーズが多様化する中、リサイクル性はもちろんのこと、さらに機能を付与した商品が望まれている。
中でも、防災に対する消費者の意識の向上、あるいは法規制の強化から、難燃性への関心は年々高まりつつあり、特に病院、旅館、福祉施設、劇場等の公共施設で使用されるカーテンや、輸送機関で使用される椅子張り等の繊維製品には防災対策として難燃性を有する繊維を使用することが必須となってきている。
そこで、特許文献1には、回収した再生ポリエステルと難燃性ポリエステルを混合したポリマーを用い、これを溶融紡糸して得たフィラメントが提案されている。このフィラメントは、再生ポリエステルと難燃性ポリエステルを溶融前のチップ段階での混合する方法、又は溶融混練した後、チップ化した原料を使用する方法、もしくは溶融紡糸時に各々別々に溶融押し出しを行いノズルパック内で混練する方法で得られたものである。
ところで、再生ポリエステル樹脂はその回収法から、溶融粘度、分子量分布、白度、結晶化度等の物性に広いバラツキを有している。このようなバラツキがあると、得られたフィラメントを製編織した布帛等は、染色斑が生じる等均一性に乏しいものとなる。また、紡糸操業性も不安定となりやすい。
特許文献1記載のフィラメントは、再生ポリエステルと難燃性ポリエステルを混合したポリマーからなり、再生ポリエステルが繊維表面にも存在するものであるため、上記のような再生ポリエステルのバラツキに起因する問題点を解消することができず、難燃性能は発現されるものの、染色斑等の色斑が発生し、製品の均一性に乏しく、紡糸操業性にも劣るものであった。
特開2002-54026号公報
本発明は、上記の問題点を解決し、物性値にバラツキのある再生ポリエステルを使用していても、紡糸操業性に優れ、良好な難燃性を有し、かつ染色斑等の色斑が発生することなく品位の高い布帛等の製品を得ることができる難燃ポリエステル複合繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルAを鞘成分、再生ポリエステルBを芯成分とする芯鞘型複合繊維であって、芯成分と鞘成分の質量比(芯/鞘)が20/80〜70/30、ポリエステルAと再生ポリエステルBの少なくとも一方にリン化合物を含有し、繊維中のリン原子の含有量が2000〜30000ppmであることを特徴とする難燃性ポリエステル複合繊維を要旨とするものである。
本発明の難燃性ポリエステル複合繊維は、再生ポリエステルを使用していながら、染色斑等のない均一性に優れた布帛等の製品を得ることが可能で、かつ難燃性能を有しているため、各種の難燃性能を必要とする用途に広く利用することができる。さらに、紡糸操業性にも優れているため、生産性よく得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の複合繊維は、PETを主たる構成成分とし、リン化合物を含有するポリエステルAと再生ポリエステルBとからなる芯鞘型複合繊維である。本発明においては、物性値にバラツキのある再生ポリエステルを芯部に配し、鞘部にポリエステルAを配することで、紡糸操業性を向上させることができるとともに、繊維表面に再生ポリエステルBが露出しないので、糸質物性の低下や染色斑等の欠点が生じることも防ぐことができる。
そして、ポリエステルAが鞘成分、再生ポリエステルBが芯成分であり、芯成分と鞘成分の質量比(芯/鞘)が20/80〜70/30、さらに好ましくは、55/45〜65/35である。
再生ポリエステルBの割合は、再生資源の活用という観点から、できるだけ多いほうがよく、このため20質量%以上含有するものとする。一方、再生ポリエステルBの割合が70質量%を超えたり、再生ポリエステルBが鞘成分に配されると、糸質物性が低下したり、染色斑等の色斑が生じるなど、得られる製品は品位の低いものとなる。また、紡糸操業性も低下する。
なお、本発明における再生ポリエステルBとは、液体飲食品用ポリエステルボトルや各種のフィルム、繊維などに成型された後、分別回収され、異物を取り除いた後、低分子に戻されることなく、利用される樹脂のことをいい、中でも液体飲食品用ポリエステルボトルを回収したものが好ましい。
そして、ポリエステルAと再生ポリエステルBの両者、あるいはいずれか一方にリン化合物を含有する。リン化合物の含有量としては、繊維中にリン原子を2000〜30000ppm含むことが必要であり、さらには、5000〜25000ppmとすることが好ましい。
リン原子含有量が2000ppm未満であると難燃性能が低くなり、一方、30000ppmを超えると、リン原子を含有する化合物の含有量を多くする必要があり、その結果、ポリエステルの融点が著しく低下し、紡糸が困難となるばかりか、得られる繊維の強度等の物性値も低下する。
リン化合物としては、リン酸エステル及びその誘導体、ホスホン酸及びその誘導体、ホスフィン酸及びその誘導体が挙げられ、これらを1種あるいは2種以上併用して使用することができる。
リン酸エステル及びその誘導体の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート等があり、ホスホン酸及びその誘導体の具体例としては、フェニルホスホン酸、ジメチルホスホン酸、ジエチルホスホン酸等があり、ホスフィン酸及びその誘導体の具体例としては、ホスホラン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシドのマレイン酸付加物やイタコン酸付加物等がある。また、ジフェニルホスフィンオキシドとp−ベンゾキノンの反応物にエチレンカーボネートを付加させた化合物等も挙げられる。
また、ポリエステルAと再生ポリエステルBともに、本発明の効果を損なわない範囲内であるならば共重合成分を含有してもよい。
共重合成分としては、3,3-ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸などの脂肪族ジカルボン酸、P-ヒドロキシ安息香酸、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオールなどの脂肪族、脂環式ジオールなどが挙げられる。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリエステルA、再生ポリエステルBともに、ヒンダードフェノール系化合物等の酸化防止剤、その他顔料、添加剤等が配合されていてもよい。
本発明の複合繊維は、長繊維でも短繊維でもよく、また、マルチフィラメントであってもモノフィラメントであってもよい。
次に、本発明の複合繊維(マルチフィラメント)の製造方法について説明する。
まず、ポリエステルAと再生ポリエステルBをそれぞれ別々の押出機に導入して溶融し、常用の複合紡糸装置を用いて複合紡糸する。そして、紡糸した糸条を冷却、固化した後、2000m/min以上の高速紡糸により延伸することなく半未延伸糸として巻き取るPOY法、あるいは、2000m/min以上の高速紡糸又は、2000m/min未満の低速紡糸で溶融紡糸し、一旦巻き取った後、糸条を延伸熱処理する二工程法、または、一旦巻き取ることなく、連続して延伸を行う紡糸延伸法により得ることができる。延伸を行う際には、目的とする繊維の物性や用途に応じて、延伸倍率、温度等を適宜設定すればよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における各種の値の測定及び評価は次の通りに行った。
(1)極限粘度
フェノールと四塩化エタンの質量比1/1の混合物を溶媒とし、20℃で測定した。
(2)強度、伸度
JIS L−1013に従い、島津製作所製の引張試験機AG-100Gを使用し、つかみ間隔100mmとし、引張速度500mm/minとして、糸が切断した時の値を測定した。
(3)難燃性評価
得られた繊維を筒編みし、限界酸素指数(LOI)をJIS K 7201に準拠して測定し、27以上のものを合格とした。
(4)染色斑
(3)と同様に得られた糸を筒編して染色し、染色斑を目視で判定し、以下の3段階評価とした。なお、染色条件は、Terasil Nevy Blue SGL (ハ゛イエル社製原糸用染料)の2.0%owf、浴比1:50の染液を用いて99℃で60分間、常法により染色した。
○:良好
△:やや斑がある
×:斑の発生が大きい
(5)紡糸操業性
それぞれの例において24時間連続して操業を行い、このときの一錘あたりの糸切れ回数で以下の3段階評価とした。
○:糸切れ回数 0回
△:糸切れ回数1〜5回
×:糸切れ回数6回以上
実施例1
ポリエステルAとして、PETにリン化合物として、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシドのイタコン酸付加物を用い、これを15質量%含有する極限粘度0.62のポリエステル重合体を用い、常法により乾燥したチップを290℃の押出機Aに供給した。再生ポリエステルBとして、主に液体飲食品用ポリエステルボトルから再生された極限粘度0.68の再生ポリエステルを用い、常法により乾燥したチッフ#を290℃の押出機Bに供給した。ポリエステルAを鞘成分、再生ポリエステルBを芯成分とし、芯鞘質量比(芯/鞘)が55/45となるようにして、複合紡糸装置に供給し、溶融紡糸を行った。紡糸口金には、孔径0.25mmの紡糸孔48個が穿設されており、紡出した糸条を空気流により冷却し、オイリング装置を通過させて0.5質量%の付着量となるように油剤を付与し、集束ガイドで集束し、交絡付与後、速度3500m/minのローラで引き取り、続いて捲取機にて巻き取った。得られた糸条は255dtex/48fであり、毛羽、単糸切れによる欠点はなかった。次にこれを通常の延伸装置を用い、90℃で予熱した後、温度150℃のヒートプレートに接触させながら1.53倍に延伸することにより、167dtex/48fの複合構造のマルチフィラメントを得た。
実施例2〜4、比較例1〜3
ポリエステルAのリン化合物の含有量と、ポリエステルAと再生ポリエステルBの質量比を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
実施例5
再生ポリエステルBにもリン化合物として、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシドのイタコン酸付加物を2000ppm含有させ、ポリエステルAのリン化合物の含有量を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
比較例4
ポリエステルAのリン化合物の含有量と、ポリエステルAと再生ポリエステルBの質量比を表1記載の値に変更し、溶融前のチッフ#段階でポリエステルAと再生ポリエステルBを混合して溶融混練し、複合繊維とすることなく、単一孔の紡糸口金より紡糸を行った以外は実施例1と同様に実施した。
比較例5
ポリエステルAのリン化合物の含有量と、ポリエステルAと再生ポリエステルBの質量比を表1記載の値に変更し、ポリエステルAを押出機Aに供給し、再生ポリエステルBを押出機Bに供給し、両者をノズルパック内で混練し、複合繊維とすることなく、単一孔の紡糸口金より紡糸を行った以外は実施例1と同様に実施した。
比較例6
鞘成分に再生ポリエステルB、芯成分にポリエステルAを用いた以外は実施例1と同様に実施した。
実施例1〜5、比較例1〜6で得られた複合繊維のリン原子の含有量、強度、伸度、LOI値、染色斑及び操業性の評価結果を表1に示す。
Figure 2005060886
実施例1〜5で得られた繊維は、強度、伸度が良好な値であり、染色斑の発生がなく、難燃性に優れており、かつ紡糸操業性よく得ることができた。
一方、比較例1の繊維は、リン原子含有量が少なかったため、難燃性に劣っていた。比較例2の繊維は、リン原子含有量が多すぎたため、強度が低く、紡糸操業性が悪かった。比較例3の繊維は、再生ポリエステルBの割合が多すぎたので、染色斑が生じ、また紡糸操業性が悪かった。比較例4〜5の繊維は、ポリエステルAと再生ポリエステルBを混練したポリマーからなる単一の繊維であったため、比較例6の繊維は、鞘部に再生ポリエステルBを用いたため、いずれも染色斑の発生が多く、また、紡糸操業性にも劣るものであった。

Claims (1)

  1. ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルAを鞘成分、再生ポリエステルBを芯成分とする芯鞘型複合繊維であって、芯成分と鞘成分の質量比(芯/鞘)が20/80〜70/30、ポリエステルAと再生ポリエステルBの少なくとも一方にリン化合物を含有し、繊維中のリン原子の含有量が2000〜30000ppmであることを特徴とする難燃性ポリエステル複合繊維。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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