JP2005060190A - 誘電体磁器組成物および電子部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 焼成時の耐還元性に優れ、焼成後には優れた容量温度特性を有する誘電体磁器組成物において、特に誘電率を向上させ、直流電圧印加時の静電容量の変化が少なく(直流バイアス特性が良好)、絶縁抵抗の加速寿命が向上し、しかも破壊電圧特性が良好な誘電体磁器組成物を提供すること。
【解決手段】 チタン酸バリウムを含む主成分と、イットリウム(Y)の酸化物と、R1の酸化物(ただし、R1は、9配位時の有効イオン半径が108pm未満の希土類元素で構成される第1元素群から選ばれる少なくとも1種であり、Yを除く)とを、有する誘電体磁器組成物である。主成分100モルに対するYおよびR1の比率が、Y:0モル超10モル以下、好ましくは2〜8モル、R1:0モル超2モル以下、好ましくは0.01〜1.25モルであり、R1のモル数に対するYのモル数の比(Y/R1)が、4<Y/R1≦400である。
【選択図】 図2

Description

本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサの誘電体層などとして用いられる誘電体磁器組成物と、その誘電体磁器組成物を誘電体層として用いる電子部品に関する。
電子部品の一例である積層セラミックコンデンサは、たとえば、所定の誘電体磁器組成物からなるセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極層とを交互に重ね、その後一体化して得られるグリーンチップを、同時焼成して製造される。積層セラミックコンデンサの内部電極層は、焼成によりセラミック誘電体と一体化されるために、セラミック誘電体と反応しないような材料を選択する必要がある。このため、内部電極層を構成する材料として、従来では白金やパラジウムなどの高価な貴金属を用いることを余儀なくされていた。
しかしながら、近年ではニッケルや銅などの安価な卑金属を用いることができる誘電体磁器組成物が開発され、大幅なコストダウンが実現した。
近年、電子回路の高密度化に伴う電子部品の小型化に対する要求は高く、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化が急速に進んでいる。それに伴い、積層セラミックコンデンサにおける1層あたりの誘電体層の薄層化が進み、薄層化してもコンデンサとしての信頼性を維持できる誘電体磁器組成物が求められている。特に、小型化および大容量のためには、誘電体磁器組成物に対して非常に高い信頼性が要求される。なぜなら、小型化および大容量化のために、誘電体層の薄層化が進むと、直流電圧を印加した時に、各誘電体層に印加される電界が強くなるため、比誘電率(以下、単に、「誘電率」または「ε」とも言う)の経時変化、すなわち、容量の経時変化や高湿負荷試験における絶縁抵抗の劣化が著しく大きくなってしまうからである。
従来、内部電極を構成する材料として卑金属を用いることができ、しかも静電容量の温度変化がEIA規格のX7R特性(−55〜125℃、ΔC=±15%以内)を満足する技術として、本出願人は、下記の特許文献1〜2などに開示されている誘電体磁器組成物を提案した。これらの技術は、いずれも、Yを添加し、絶縁抵抗(IR)の加速寿命(以下、単に「寿命」、あるいは「高温負荷寿命」とも言う)を改善しようとしたものであった。しかし、急速に小型化、大容量化が進むなか、さらなる信頼性の向上が求められている。
一方、X7R特性を満足する別の技術として、たとえば特許文献3に開示されている誘電体磁器組成物も知られている。
このような誘電体磁器組成物は、チタン酸バリウムに、ScおよびYの少なくとも1種の希土類元素の酸化物と、Gd、TbおよびDyの少なくとも1種の希土類元素の酸化物とが添加されたものである。すなわち特許文献3に開示されている技術は、チタン酸バリウムに対し、任意に分けられた2つの元素群からそれぞれ選ばれる少なくとも2種類の希土類元素の酸化物を添加することにより、EIA規格のX7R特性を満足させ、しかも絶縁抵抗の加速寿命の向上を図ろうとするものである。
しかしながら、特許文献3に開示された技術では、X7R特性を満足させようとすると、焼成後の絶縁抵抗の加速寿命が短くなり、X7R特性と寿命とのバランスを図ることに関して課題を有していた。しかも、さらなる小型化、大容量化が進むに従い、誘電損失(tanδ)が大きくなり、DCバイアスなどの信頼性も悪化する傾向があり、これらの改善が求められていた。
また、特許文献3では、2種類の希土類元素の酸化物を添加してはいるが、これらの二種類の希土類元素のモル数の比は、4以下であり、誘電体層の薄層化の点で課題を有していた。すなわち、誘電体層を薄層化するためには、その誘電体層を形成するための母材である誘電体粉末の粒径を小さくする必要があり、特許文献3の組成では、誘電率、バイアス特性、および寿命などが低下するなどの課題を有していた。
なお、EIA規格のX8R特性の範囲を満たすことを目的とした温度特性の良い誘電体材料が特許文献4および5に開示されている。これは、温度特性を良好に保つことを目的として、希土類元素を添加しているのであって、そのため、添加する希土類元素の種類が異なっており、また希土類元素のイオン半径に着目しているものではない。さらに、これらの特許文献4および5には、二種類の希土類を添加する技術が開示してあるが、誘電体層を薄層化させた場合に、誘電体層の誘電率を低下させることなく破壊電圧特性を向上させるための手段は開示されていない。
また、本出願人は、下記の特許文献6に示す出願を行っている。この特許文献6に示す出願によれば、X7R特性を満足し、優れた特性の中耐圧用コンデンサが得られる。本発明者等は、特許文献6に示す組成に基づき、さらに研究を進めた結果、下記の本発明を完成させるに至った。
特開平6−84692号公報 特開平6−342735号公報 特開平10−223471号公報 特開2000−154057号公報 特開2001−31467号 特願2003−6649号。
本発明の目的は、焼成時の耐還元性に優れ、焼成後には優れた容量温度特性を有する誘電体磁器組成物において、特に誘電率を向上させ、直流電圧印加時の静電容量の変化が少なく(直流バイアス特性が良好)、絶縁抵抗の加速寿命が向上し、しかも破壊電圧特性が良好な誘電体磁器組成物を提供することである。また、本発明は、このような誘電体磁器組成物を用いて製造され、信頼性が高められた積層セラミックコンデンサなどの電子部品を提供することも目的とする。特に本発明は、薄層化および小型化対応の積層セラミックコンデンサ等の電子部品を提供することを目的としている。
上記特許文献6に示す先の出願では、希土類元素のチタン酸バリウムに対する添加効果に関して研究を進め、複数の希土類元素をチタン酸バリウムに対して添加することが、高温負荷寿命の向上に効果的である、との知見を得た。そして、希土類元素のイオン半径の大小により、希土類元素以外に、ともに添加される添加物元素の分布状態が変化し、これにより、積層セラミックコンデンサに発現する電気特性が異なってくる、との知見を得た。その後、これらを前提にさらに研究を進めた結果、添加される希土類元素のイオン半径が大きいほど、チタン酸バリウム粒子への固溶性が大きくなり、当該希土類元素が前記チタン酸バリウム粒子の内部の深い部分にまで分布する。そして、希土類元素や、添加物元素、特にアルカリ土類元素の偏析が減少する。その結果、絶縁抵抗は高くなり、高温負荷寿命などの信頼性は向上するが、比誘電率は低下し、静電容量の温度変化が大きくなり、X7R特性を満足しなくなることを確認した。その反面、添加される希土類元素のイオン半径が小さい場合には、静電容量の温度変化は小さいが、希土類元素やアルカリ土類元素が、焼結助剤として添加されるSiなどともに偏析しやすく、コンデンサとしての信頼性が低下することを確認した。
そこで、先の出願では、チタン酸バリウムに対して、希土類元素のイオン半径に着目し、イオン半径の異なる複数の希土類元素を添加する研究を進め、次に示す誘電体磁器組成物を開発した。
すなわち、
チタン酸バリウムを含む主成分と、
R1の酸化物(ただし、R1は、9配位時の有効イオン半径が108pm未満の希土類元素で構成される第1元素群から選ばれる少なくとも1種)を含む第4副成分と、
R2の酸化物(ただし、R2は、9配位時の有効イオン半径が108pm〜113pmの希土類元素で構成される第2元素群から選ばれる少なくとも1種)を含む第5副成分とを、有する誘電体磁器組成物を開発した。
この先の発明によれば、焼成時の耐還元性に優れ、焼成後には、比誘電率、誘電損失、絶縁抵抗、バイアス特性、破壊電圧、容量温度特性(たとえばX7R特性またはB特性)などにおいて優れた特性を有するとともに、絶縁抵抗の加速寿命が高められる誘電体磁器組成物を提供することができる。
本発明者等は、先の発明の組成について、さらに研究を進めた結果、主成分に対して、必ずしもR2の酸化物を含ませることなく、イットリウム(Y)と、その他のR1の酸化物とを含ませ、それらのモル数を、それぞれ特定の範囲内にすると共に、これらのモル数の比を特定範囲内にすることで、誘電体層を薄くした場合(母材の粒径を小さくした場合)でも、誘電率が向上すると共に、破壊電圧特性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る誘電体磁器組成物は、
チタン酸バリウムを含む主成分と、
イットリウム(Y)の酸化物と、
R1の酸化物(ただし、R1は、9配位時の有効イオン半径が108pm未満の希土類元素で構成される第1元素群から選ばれる少なくとも1種であり、Yを除く)と、
を、有し、
前記主成分100モルに対するYおよびR1の比率が、
Y:0モル超10モル以下、好ましくは2〜8モル、
R1:0モル超2モル以下、好ましくは0.01〜1.25モルであり、
前記R1のモル数に対する前記Yのモル数の比(Y/R1)が、4<Y/R1≦400であることを特徴とする。
好ましくは、前記R1が、Ho,Er,Tm,Yb,Luの少なくともいずれか、さらに好ましくはHoである。誘電体層の薄層化に係わらず、誘電率を向上させ、破壊電圧特性を向上させるためには、これらのR1が好ましい。
好ましくは、前記R1のイオン半径が、Yのイオン半径よりも小さくなるように、前記R1が選択される。Ho,Er,Tm,Yb,Luは、Yのイオン半径よりも小さいイオン半径を持つ。すなわち、本発明では、Yと共に添加される希土類は、Yのイオン半径よりも大きなR2(Dy,Tb,Gd,Eu)の希土類ではなく、Ho,Er,Tm,Yb,Luなどの希土類である。
なお、本明細書に記載のイオン半径は、文献「R.D.Shannon,Acta Crystallogr.,A32,751(1976)」に基づく値である。
好ましくは、MgO、CaO、SrOおよびBaOから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分をさらに有し、前記主成分100モルに対する第1副成分の比率が、第1副成分:0.1〜5モルである。第1副成分の比率が高すぎると、比誘電率が低下する傾向にある。
好ましくは、SiO系の焼結助剤を含む第2副成分をさらに有し、前記主成分100モルに対する第2副成分の比率が、第2副成分:2〜10モルである。第2副成分におけるSiOの比率が低すぎると、焼成温度幅が狭くなる傾向にあり、比率が高すぎると、比誘電率が低下する傾向にある。
好ましくは、前記焼結助剤が、(Ba,Ca)SiO2+x (ただし、x=0.8〜1.2)である。第2副成分中のBaOまたはCaOの比率が低すぎると、直流電圧下での静電容量の経時変化が大きく、容量の温度特性および直流バイアス特性が劣化する傾向にあり、比率が高すぎると、容量の温度特性が劣化する傾向にある。
好ましくは、V、MoOおよびWOから選ばれる少なくとも1種を含む第3副成分をさらに有し、前記主成分100モルに対する第3副成分の比率が、第3副成分:0.5モル以下である。第3副成分の比率が高すぎると、比誘電率が低下すると共に、直流バイアス特性が劣化する傾向にある。
好ましくは、MnOおよびCrの少なくとも1種を含む第6副成分をさらに有し、前記主成分100モルに対する第6副成分の比率が、第6副成分:0.5モル以下、さらに好ましくは0.25モル未満である。第6副成分の比率が高すぎると、直流電圧下での容量の経時変化が大きく、容量の温度特性が悪くなる傾向にある。
好ましくは、前記主成分100モルに対するY+R1の合計比率が、10モル未満である。この比率が大きすぎると、比誘電率が低下する傾向がある。
本発明に係る電子部品は、上記のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する。電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、上記のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層と、内部電極層とが交互に積層してあるコンデンサ素子本体を有する。
好ましくは、前記内部電極層に含まれる導電材がNiまたはNi合金である。
好ましくは、前記誘電体層の平均結晶粒径が0.5μm以下、さらに好ましくは0.1〜0.5μmである。平均結晶粒径を小さくすることにより、比誘電率は低下する傾向にあるが、直流電界下での容量の経時変化を改良することができる。
また、本発明において、前記誘電体層の厚みは、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。本発明は、誘電体層の厚みが薄くなった場合において特に有効である。
本発明によれば、誘電体層を薄層化(または母材の微粉化)したとしても、誘電率および破壊電圧特性を向上すると共に、絶縁抵抗の加速寿命が向上し、信頼性をさらに向上させることができるという作用効果を奏する。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2(A)〜図2(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるHoのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフ、
図3(A)〜図3(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるErのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフ、
図4(A)〜図4(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるTmのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフ、
図5(A)〜図5(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるYbのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフ、
図6(A)〜図6(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるLuのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフ、
図7(A)〜図7(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるY/Hoのモル比と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフ、
図8(A)〜図8(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるY/Erのモル比と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフ、
図9(A)〜図9(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるY/Tmのモル比と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフ、
図10(A)〜図10(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるY/Ybのモル比と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフ、
図11(A)〜図11(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるY/Luのモル比と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフ、
図12(A)〜図12(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるYのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)程度である。
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
誘電体層2は、本発明の誘電体磁器組成物を含有する。
誘電体磁器組成物では、チタン酸バリウム(好ましくは、組成式BaTiO2+m で表され、mが0.995≦m≦1.010であり、BaとTiとの比が0.995≦Ba/Ti≦1.010である)を含む主成分と、
イットリウム(Y)の酸化物と、
R1の酸化物(ただし、R1は、9配位時の有効イオン半径が108pm未満の希土類元素で構成される第1元素群から選ばれる少なくとも1種であり、Yを除く)と、を、有する。
前記第1元素群には、Y(107.5pm)を除いて、Ho(107.2pm)、Er(106.2pm)、Tm(105.2pm)、Yb(104.2pm)およびLu(103.2pm)が含まれる。なお、括弧内の数字は9配位時の有効イオン半径を示す。以下同様である。
本発明に係る誘電体磁器組成物には、R2の酸化物(ただし、R2は、9配位時の有効イオン半径が108pm〜113pmの希土類元素で構成される第2元素群から選ばれる少なくとも1種)は、実質的に含まれないが、本発明の効果を維持できる範囲において、これらのR2の酸化物を含ませても良い。
なお、第2元素群には、Dy(108.3pm)、Tb(109.5pm)、Gd(110.7pm)、およびEu(112pm)が含まれる。Sm(113.2pm)、Pm(114.4pm)、Nd(116.3pm)、Pr(117.9pm)、Ce(119.6pm)およびLa(121.6pm)については、第2元素群からは除かれるが、本発明では、本発明の効果を維持できる範囲において、これらの酸化物を含ませても良い。なお、Scについては、9配位時の有効イオン半径が規定されていない。
本発明では、第1元素群を構成する希土類元素の有効イオン半径が106pm超であることが好ましい。このような第1元素群には、Ho、Erが含まれる。第1元素群の中で有効イオン半径が小さい希土類元素を用いると、異相(偏析)が発生する場合がある。
そこで、第1元素群を構成する希土類元素の中でも、有効イオン半径が大きいものを用いることがより好ましく、特に好ましくは、有効イオン半径が107pm超の前記第1元素群を構成する希土類元素を用いる。このような第1元素群として、Hoが特に好ましく、HoがYと共に含まれることで、誘電体層が薄層化しても、誘電率が特に向上すると共に、破壊電圧特性が向上する。
本発明では、Yの有効イオン半径をy1とし、第1元素群を構成する希土類元素の有効イオン半径をr1とした場合に、r1とy1との比(r1/y1)が、0.96<r1/y1<0.997の関係を満足するように、第1元素群が構成されていることが好ましい。
本発明の誘電体磁器組成物では、主成分100モルに対するYおよびR1の比率が、Y:0モル超10モル以下、およびR1:0モル超2モル以下、より好ましくは、Y:2〜8モル、およびR1:0.01〜1.50モルである。
好ましくは、前記主成分100モルに対するY+R1の合計比率が、好ましくは10モル未満、さらに好ましくは2〜9.5モルである。この比率が大きすぎると、比誘電率が低下する傾向にある。また、この比率が小さすぎると、本発明の効果が少なくなる傾向にある。
本発明の誘電体磁器組成物において、Yの酸化物は、主として、容量温度特性を平坦化する効果を示す。この含有量が少なすぎると、このような効果が不十分となり、容量温度特性が悪くなってしまう。一方、含有量が多すぎると、焼結性が悪化する傾向にある。
本発明の誘電体磁器組成物において、R1の酸化物は、誘電体層を薄層化しても、誘電率(ε)、絶縁抵抗(IR)、破壊電圧特性(VB)、IR寿命(HALT)および直流バイアス特性を改善する効果を示す。ただし、R1酸化物の含有量が多すぎると、誘電率、破壊電圧特性および寿命が悪化する傾向にある。Y酸化物と共に含まれるR1酸化物のうちでは、特性改善効果が高いことから、Ho酸化物が好ましい。
本発明では、特に、R1のモル数を、0モル超2モル以下とすることで、薄層化しても、比誘電率を向上させると共に、破壊電圧特性、直流バイアス特性およびHALTを向上させることができる。
また、本発明では、誘電体磁器組成物におけるR1のモル数に対するYのモル数の比(Y/R1)が、4<Y/R1≦400、さらに好ましくは4<Y/R1≦100、特に好ましくは4<Y/R1≦80である。
この比Y/R1が低すぎると、誘電体層を薄層化(または母材の微粒子化)に伴い、誘電率の低下、破壊電圧特性および寿命などの低下が見られる傾向にある。特に、誘電体層を形成するための誘電体母材の粒径が0.5μm以下、0.35μm、0.2μmとなった場合に、誘電率の低下、破壊電圧特性および寿命などの低下が見られる傾向にある。また、この比Y/R1が大きすぎると、R1添加の効果がほとんどなくなる。
本発明の誘電体磁器組成物には、必要に応じ、MgO、CaO、SrOおよびBaOから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分がさらに添加してあることが好ましい。前記主成分100モルに対する第1副成分の比率は、好ましくは0.1〜5モルである。第1副成分の含有量が少なすぎると、容量温度特性の改善効果が小さくなる傾向にある。一方、含有量が多すぎると、焼結性が悪化すると共に、比誘電率が低下する傾向にある。なお、第1副成分中における各酸化物の構成比率は任意である。
本発明の誘電体磁器組成物には、SiO系の焼結助剤を含む第2副成分がさらに添加してあることが好ましい。この場合に、前記焼結助剤が、(Ba,Ca)SiO2+x (ただし、x=0.8〜1.2)であることがさらに好ましい。
前記主成分100モルに対する第2副成分の比率は、好ましくは2〜10モル、より好ましくは2〜5モルである。第2副成分中に(Ba,Ca)SiO2+x が含まれる場合において、第2副成分中のBaOおよびCaOは第1副成分にも含まれるが、複合酸化物である(Ba,Ca)SiO2+x は融点が低いため主成分に対する反応性が良好である。このため、BaOおよび/またはCaOを上記複合酸化物としても添加することが好ましい。第2副成分の含有量が少なすぎると、容量温度特性が悪くなり、また、IR(絶縁抵抗)が低下する傾向にある。一方、含有量が多すぎると、IR寿命が不十分となるほか、誘電率の急激な低下が生じてしまう傾向にある。(Ba,Ca)SiO2+x におけるxは、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1である。xが小さすぎると、すなわちSiOが多すぎると、主成分に含まれるチタン酸バリウムと反応して誘電体特性を悪化させてしまう。一方、xが大きすぎると、融点が高くなって焼結性を悪化させるため、好ましくない。なお、第2副成分においてBaとCaとの比率は任意であり、一方だけを含有するものであってもよい。
本発明の誘電体磁器組成物には、V,MoOおよびWOから選ばれる少なくとも1種を含む第3副成分がさらに添加してあることが好ましい。前記主成分100モルに対する第3副成分の比率は、好ましくは0.5モル以下、より好ましくは0.01〜0.1モルである。第3副成分は、キュリー温度以上での容量温度特性を平坦化する効果と、IR寿命を向上させる効果とを示す。第3副成分の含有量が少なすぎると、このような効果が不十分となる。一方、含有量が多すぎると、IRが著しく低下する。なお、第3副成分中における各酸化物の構成比率は任意である。
本発明の誘電体磁器組成物には、MnOおよびCrの少なくとも1種を含む第6副成分がさらに添加してあることが好ましい。この第6副成分は、焼結を促進する効果と、IRを高くする効果と、IR寿命を向上させる効果とを示す。このような効果を十分に得るためには、前記主成分100モルに対する第6副成分の比率が0.01モル以上であることが好ましい。ただし、第6副成分の含有量が多すぎると容量温度特性に悪影響を与えるので、好ましくは0.5モル以下とする。CR積を向上させるためには、より好ましくは0.25モル未満とする。
本発明の誘電体磁器組成物には、上記各酸化物のほか、Alが含まれていてもよい。Alは容量温度特性にあまり影響を与えず、焼結性、IRおよびIR寿命を改善する効果を示す。ただし、Alの含有量が多すぎると焼結性が悪化してIRが低くなるため、前記主成分100モルに対するAlの比率は、好ましくは1モル以下、さらに好ましくは、誘電体磁器組成物全体の1モル以下である。
なお、本明細書では、主成分および各副成分を構成する各酸化物を化学量論組成で表しているが、各酸化物の酸化状態は、化学量論組成から外れるものであってもよい。ただし、各副成分の上記比率は、各副成分を構成する酸化物に含有される金属量から上記化学量論組成の酸化物に換算して求める。
なお、Sr,ZrおよびSnの少なくとも1種が、ペロブスカイト構造を構成する主成分中のBaまたはTiを置換している場合、キュリー温度が低温側にシフトするため、125℃以上での容量温度特性が悪くなる。このため、これらの元素を含むBaTiO[例えば(Ba,Sr)TiO]を主成分として用いないことが好ましい。ただし、不純物として含有されるレベル(誘電体磁器組成物全体の0.1モル%程度以下)であれば、特に問題はない。
誘電体層2の厚さは、一層あたり、20μm以下である。厚さの下限は、通常、0.5μm程度である。本実施形態では、誘電体層2の厚みを、10μm以下、さらには5μm以下に薄くした場合でも、比誘電率が向上し、破壊電圧特性が良好であり、絶縁抵抗の加速寿命も向上する。なお、誘電体層2の積層数は、通常2〜1000程度とする。
誘電体層2に含まれる誘電体粒子の平均結晶粒径は、特に限定されず、誘電体層2の厚さなどに応じて、例えば0.1〜5μmの範囲から適宜決定すればよい。ただし、本実施形態では、平均結晶粒径は、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.1〜0.5μmである。平均結晶粒径を小さくすることにより、比誘電率は低下する傾向にあるが、HALTを改良することができる。
また、容量温度特性は、一層あたりの誘電体層2が薄いほど悪化し、また、平均結晶粒径を小さくするほど悪化する傾向にある。また、平均結晶粒径を小さくすれば、IR寿命が長くなる。これらのことから、上記の範囲が好ましい。
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜3μm、特に0.2〜2.0μm程度であることが好ましい。
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
本発明の誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコンデンサは、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体磁器組成物粉末を準備し、これを塗料化して、誘電体層用ペーストを調整する。
誘電体層用ペーストは、誘電体磁器組成物粉末と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
誘電体磁器組成物粉末としては、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。誘電体磁器組成物粉末中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状態で、誘電体磁器組成物粉末の粒径は、通常、平均粒径0.1〜1μm程度である。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、例えば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理は、内部電極層ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、脱バインダ雰囲気中の酸素分圧を10−45 〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、脱バインダ効果が低下する。また酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、それ以外の脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、より好ましくは10〜100℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、より好ましくは200〜350℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは2〜20時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とすることが好ましく、還元性雰囲気における雰囲気ガスとしては、たとえばNとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−9〜10−4Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1100〜1400℃、より好ましくは1200〜1350℃である。保持温度が前記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
還元性雰囲気中で焼成した場合、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−3Pa以上、特に10−2〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化する傾向にある。
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が前記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、IR寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、IR寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜10時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
本発明によれば、主成分に対して、Yのモル数と、Yを含まないR1のモル数とを、特定の範囲内にすることで、誘電体層を薄くした場合でも、誘電率が向上すると共に、破壊電圧特性が向上し、信頼性をさらに向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記組成の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有するものであれば何でも良い。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1
平均粒径0.35μmの主成分原料(母材)および副成分原料を用意した。MgOおよびMnOの原料には炭酸塩を用い、他の原料には酸化物を用いた。なお、主成分原料としては、水熱合成法により得られたBaTiO粉体(BT−035/堺化学工業(株))を用いた。
また、第2副成分の原料には、主成分原料100モルに対して3モルの(Ba0.5 Ca0.5 )SiOを用いた。3モルの(Ba0.5 Ca0.5 )SiOは、1.5モルのBaCO、1.5モルのCaCOおよび3モルのSiOとをボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥後、1150℃で空気中で焼成し、さらに、ボールミルにより100時間湿式粉砕することにより製造した。
これらの原料を、焼成後の組成が表1に示すものとなるように配合して、ボールミルにより16時湿式混合し、乾燥して誘電体原料を得た。
得られた誘電体原料100重量部と、アクリル樹脂4.8重量部と、トルエン10重量部と、酢酸エチル70重量部と、ミネラルスピリット6重量部と、アセトン4重量部とをボールミルで混合し、ペースト化して誘電体層用ペーストを得た。
平均粒径0.2〜0.8μmのNi粒子100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)40重量部と、ブチルカルビトール10重量部とを3本ロールにより混練し、ペースト化して内部電極層用ペーストを得た。
得られた誘電体層用ペーストを用いてPETフィルム上にグリーンシートを形成した。この上に内部電極用ペーストを印刷した後、PETフィルムからシートを剥離した。次いで、これらのグリーンシートと保護用グリーンシート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを積層、圧着して、グリーンチップを得た。
次いで、グリーンチップを所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。脱バインダ処理条件は、昇温速度:32.5℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1260℃または1280℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN+H混合ガス(酸素分圧:10−6Pa)とした。アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1050℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−1Pa)とした。なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を20℃としたウエッターを用いた。
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Gaを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料1〜5を得た。
得られたコンデンサ試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4、1層あたりの誘電体層の厚み(層間厚み)は約4.5μmであり、内部電極層の厚さは1.2μmであった。また、各試料の誘電体層における平均結晶粒径を調べたところ、0.35μmであった。各試料について下記特性の評価を行った。
比誘電率(ε)、誘電損失(tanδ)、絶縁抵抗(IR)、CR積
コンデンサの試料に対し、基準温度20℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数120Hz,入力信号レベル(測定電圧)0.625Vrms/μmの条件下で、静電容量Cおよび誘電損失tanδを測定した。そして、得られた静電容量から、比誘電率(単位なし)を算出した。その後、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、20℃においてDC20Vを、コンデンサ試料に60秒間印加した後の絶縁抵抗IRを測定した。CR積は、静電容量(C,μF)と、絶縁抵抗(IR,MΩ)との積で表した。CR積は、大きいほど好ましい。
比誘電率εは、小型で高誘電率のコンデンサを作成するために重要な特性である。本実施例では、比誘電率εの値は、コンデンサの試料数n=10個を用いて測定した値の平均値として算出した。比誘電率は、大きいほど好ましい。
本実施例では、誘電損失tanδの値は、コンデンサの試料数n=10個を用いて測定した値の平均値として算出した。tanδは、小さいほど好ましい。結果を表1に示す。なお、表1(表2〜3も同じ)中、絶縁抵抗(IR)の数値において、「mE+n」は「m×10+n」を意味する。
静電容量の温度特性(B特性)
コンデンサの試料に対し、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数120kHz、入力信号レベル(測定電圧)0.625Vrmsの条件下で、静電容量を測定し、基準温度を20℃としたとき、−25〜85℃の温度範囲内で、温度に対する静電容量変化率(ΔC/C)がEIA規格のB特性を満足するかどうかを調べ、満足する場合を○、満足しない場合を×とし、結果を表1に示す。
DCバイアス(DC-Bias)特性(直流電圧印加時の静電容量の変化特性)
コンデンサの試料に対し、一定温度(20℃)において、徐々に直流電圧をかけていった際の誘電率の変化(単位は%)を算出した(測定条件は2V/μm)。本実施例では、DCバイアス特性は、10個のコンデンサ試料を用いて測定・算出した値の平均値とし、0に近いほど好ましい。結果を表1に示す。
破壊電圧(VB)
コンデンサの試料に対し、直流電圧を昇温速度100V/sec.で印加し、100mAの漏洩電流を検知するか、または素子の破壊時の電圧(破壊電圧、単位はV/μm)を測定した。本実施例では、破壊電圧は、10個のコンデンササンプルを用いて測定した値の平均値として算出した。破壊電圧は大きいほどよい。結果を表1に示す。
高温負荷寿命(絶縁抵抗の加速寿命/HALT)
コンデンサの試料に対し、180℃で20V/μmの直流電圧の印加状態に保持することにより、高温負荷寿命を測定した。この高温負荷寿命は、誘電体層を薄層化する際に特に重要となるものである。本実施例では印加開始から抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義し、これを10個のコンデンサ試料に対して行い、その平均寿命時間を算出した。寿命時間は長いほど好ましい。結果を表1に示す。
比較例1
Y以外のR1のモル数を、0モル%とした以外は、実施例1と同様にして、コンデンサの試料6を作製し、同様な測定を行った。結果を表1に示す。なお、表1において、※印のある試料番号は、比較例である。以下の表でも同様である。また、表1において、rの欄は、R1の種類に応じた希土類のイオン半径の値を示し、r/r(Y)の欄は、R1の種類に応じた希土類のイオン半径を、Yのイオン半径で割り算した値を示す。
Figure 2005060190
評価1
表1に示すように、Y以外に、Ho,Er,Tm,Yb,LuなどのR1が所定範囲で含まれている本実施例の試料を用いた試料1〜5は、B特性を満足し、しかも、比誘電率および絶縁抵抗が十分に高く、誘電損失が低く、CR積が良好で、DCバイアス特性、破壊電圧特性および高温負荷寿命も良好であることが判明した。
これに対し、表1に示すように、Yのみが含まれている比較例の試料では、B特性は満足するが、誘電率、破壊電圧(VB)特性、高温負荷寿命(HALT)が悪化することが確認された。
実施例2
下記表2に示すように、平均粒径0.2μmの主成分原料(母材)を用い、1層あたりの誘電体層の厚み(層間厚み)を約3.5μmとした以外は、実施例1と同様にして、コンデンサの試料11〜15を作製し、同様な測定を行った。結果を表2に示す。
比較例2
Y以外のR1のモル数を、0モル%とした以外は、実施例2と同様にして、コンデンサの試料16を作製し、同様な測定を行った。結果を表2に示す。
Figure 2005060190
評価2
表1に比べて、表2に示すように、母材の粒径を小さくし、誘電体層の厚みを、さらに薄くした場合には、εが低下することが確認された。しかしながら、表2に示す実施例2では、表1に示す実施例1に比べて、CR積が向上することが確認された。
比較例3
下記表3に示すように、R1の変わりに、R2(9配位時の有効イオン半径が108pm〜113pmの希土類元素で構成される第2元素群から選ばれる少なくとも1種)であるTbまたはEuを用いた以外は、実施例1と同様にして、コンデンサの試料101〜102を作製し、同様な測定を行った。結果を表3に示す。
Figure 2005060190
評価3
表1と表3とを比較して分かるように、R1の代わりに、R2であるTbまたはEuを添加すると、破壊電圧特性および/または寿命が悪化することが確認できた。
実施例3
実施例1におけるYのモル数を4.0モルとし、R1(Ho,Er,Tm,Yb,Lu)のモル数を0〜2.5モルの範囲で変化させた以外は、実施例1と同様にして、コンデンサの試料を作製し、実施例1と同様にして、ε、VB特性、HALTの測定を行った。結果を、図2〜図6に示す。
これらの図2〜図6に示すように、ε、VB特性、HALTは、R1が0モル超2モル以下、好ましくは0.01〜1.5モルの時に、特に向上することが確認できた。
実施例4
実施例1におけるYのモル数を4.0モルとし、R1のモル数を0〜2.5モルの範囲で変化させた以外は、実施例1と同様にして、コンデンサの試料を作製し、実施例1と同様にして、ε、VB特性、HALTの測定を行った。R1(Ho,Er,Tm,Yb,Lu)のモル数に対するYのモル数の比(Y/R1)を横軸にして、ε、VB特性、HALTの測定結果を縦軸にしてグラフ化した図を、図7〜図11に示す。
これらの図7〜図11に示すように、ε、VB特性、HALTは、Y/R1が4<Y/R1≦400、さらに好ましくは4<Y/R1≦100の時に、特に向上することが確認できた。
実施例5
実施例1におけるR1の1つであるHoのモル数を0.2モルとし、Yのモル数を0〜11モルの範囲で変化させた以外は、実施例1と同様にして、コンデンサの試料を作製し、実施例1と同様にして、ε、VB特性、HALTの測定を行った。Yのモル数を横軸にして、ε、VB特性、HALTの測定結果を縦軸にしてグラフ化した図を、図12(A)〜12(C)に示す。
これらの図に示すように、ε、VB特性は、Yが0モル超10モル以下、好ましくは2〜8モルの時に、特に向上することが確認できた。また、HALTは、Yの添加量の増大と共に、増大し、10モルを越えると、それほど増大しなくなることが確認できた。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2(A)〜図2(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるHoのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。 図3(A)〜図3(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるErのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。 図4(A)〜図4(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるTmのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。 図5(A)〜図5(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるYbのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。 図6(A)〜図6(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるLuのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。 図7(A)〜図7(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるY/Hoのモル比と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。 図8(A)〜図8(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるY/Erのモル比と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。 図9(A)〜図9(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるY/Tmのモル比と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。 図10(A)〜図10(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるY/Ybのモル比と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。 図11(A)〜図11(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるY/Luのモル比と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。 図12(A)〜図12(C)は本発明の実施例に係る誘電体磁器組成物におけるYのモル数と、比誘電率、破壊電圧および寿命との関係を示すグラフである。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極

Claims (15)

  1. チタン酸バリウムを含む主成分と、
    イットリウム(Y)の酸化物と、
    R1の酸化物(ただし、R1は、9配位時の有効イオン半径が108pm未満の希土類元素で構成される第1元素群から選ばれる少なくとも1種であり、Yを除く)とを有し、
    前記主成分100モルに対するYおよびR1の比率が、Y:0モル超10モル以下、R1:0モル超2モル以下であり、
    前記R1のモル数に対する前記Yのモル数の比(Y/R1)が、4<Y/R1≦400であることを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. 前記R1が、Ho,Er,Tm,Yb,Luの少なくともいずれかである請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
  3. 前記R1のイオン半径が、Yのイオン半径よりも小さくなるように、前記R1が選択される請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物。
  4. MgO、CaO、SrOおよびBaOから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分をさらに有し、前記主成分100モルに対する第1副成分の比率が、第1副成分:0.1〜5モルである請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  5. SiO系の焼結助剤を含む第2副成分をさらに有し、前記主成分100モルに対する第2副成分の比率が、第2副成分:2〜10モルである請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  6. 前記焼結助剤が、(Ba,Ca)SiO2+x (ただし、x=0.8〜1.2)である請求項5に記載の誘電体磁器組成物。
  7. 、MoOおよびWOから選ばれる少なくとも1種を含む第3副成分をさらに有し、前記主成分100モルに対する第3副成分の比率が、第3副成分:0.5モル以下である請求項1〜6のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  8. 前記主成分100モルに対するY+R1の合計比率が、10モル未満である請求項1〜7のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する電子部品。
  10. 前記誘電体層の平均結晶粒径が0.5μm以下である請求項9に記載の電子部品。
  11. 前記誘電体層の厚みが5μm以下である請求項9または10に記載の電子部品。
  12. 請求項1〜8のいずれかに記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層と、内部電極層とが交互に積層してあるコンデンサ素子本体を有する積層セラミックコンデンサ。
  13. 前記内部電極層に含まれる導電材がNiまたはNi合金である請求項12に記載の積層セラミックコンデンサ。
  14. 前記誘電体層の平均結晶粒径が0.5μm以下である請求項12または13に記載の積層セラミックコンデンサ。
  15. 前記誘電体層の厚みが5μm以下である請求項12〜14のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
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