JP2005060123A - 圧電セラミックス - Google Patents
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Abstract
【課題】鉛を含有せず、キュリー点が高く、かつ、高い靭性を有し、優れた圧電特性、特に大きなQmaxを有する圧電セラミックスを提供する。
【解決手段】圧電セラミックスを、(MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶(MIIはSrおよびCaから選択される元素、MIVはZrおよびHfから選択される元素)を含むビスマス層状化合物を主成分とし、副成分としてRb、Mnを含有し、xは0.3≦x≦0.8の範囲内、yは0≦y≦0.12の範囲内であるものとした。
【選択図】 なし
【解決手段】圧電セラミックスを、(MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶(MIIはSrおよびCaから選択される元素、MIVはZrおよびHfから選択される元素)を含むビスマス層状化合物を主成分とし、副成分としてRb、Mnを含有し、xは0.3≦x≦0.8の範囲内、yは0≦y≦0.12の範囲内であるものとした。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電セラミックスに係り、特にビスマス層状化合物の厚みすべり振動を利用してレゾネータ、高温用センサ等の分野に使用できる圧電セラミックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開2000−159574号
圧電セラミックスは、レゾネータやフィルター等の電子機器分野だけではなく、センサやアクチュエータといった電荷や変位を利用する製品等で幅広く使われている。
従来の圧電セラミックスは、室温付近において正方晶系あるいは菱面体晶系のチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3固溶体、以下PZTとする)や、正方晶系のチタン酸鉛(PbTiO3、以下PTとする)といったペロブスカイト構造を有する強誘電体が一般的であった。これらの材料は、副成分を添加することにより、様々な要求特性への対応が図られている。
【0003】
しかし、このようなPZT系、PT系の圧電セラミックスは、低温でも揮発性の極めて高い酸化鉛(PbO)を60〜70重量%程度含有しているのが一般的であり、生態学的な見地および公害防止の面からも好ましくない。具体的には、これらの圧電セラミックスが工業製品として市場に出された後に不要となって環境中に廃棄されると、酸性雨により圧電セラミックス中の鉛が溶出する恐れがあり、深刻な土壌汚染を引き起こすことが懸念される。
そこで、酸化鉛を全く含有しない圧電セラミックスとして、例えば、BaBi4Ti4O15を主結晶相とし、BaとTiとの複合酸化物を副結晶相として全量中に4〜30モル%含有する圧電セラミックス(特許文献1)が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、レゾネータの場合、インダクターとして使われるため、圧電特性の中で重要な特性の一つであるQm(機械的品質係数)、あるいは、共振周波数と反共振周波数の間でのQmax(Q=tanθの最大値、θ:位相)が大きい圧電セラミックスが必要である。また、このような圧電セラミックスには、温度特性が良好(発振周波数の温度依存性が小さいこと)であること、加工時のクラック発生等を抑制できる高い靭性を具備することが要求される。
【0005】
しかし、特許文献1に開示される圧電セラミックスでは、電気機械結合係数krの向上が達成されているものの、上記のQmaxは不十分であり、レゾネータに適用可能な十分な圧電特性を備えたものではないという問題があった。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、鉛を含有せず、キュリー点が高く、かつ、良好な温度特性と高い靭性を有し、優れた圧電特性、特に大きなQmaxを有する圧電セラミックスを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、(MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶(MIIはSrおよびCaから選択される元素、MIVはZrおよびHfから選択される元素)を含むビスマス層状化合物を主成分とし、副成分としてRb、Mnを含有し、xは0.3≦x≦0.8の範囲内、yは0≦y≦0.12の範囲内であるような構成とした。
本発明の好ましい態様として、副成分であるRbの含有量は、Rb2CO3に換算して0.02〜0.2重量%の範囲内であり、副成分であるMnの含有量は、MnCO3に換算して0.3〜0.7重量%の範囲内であるような構成とした。
本発明の好ましい態様として、副成分であるRbのRb2CO3に換算した含有量をzとしたときに、zが0.02〜0.05(重量%)の範囲内において、前記主成分のyとの間にy≧−z+0.05の関係が存在するような構成とした。
本発明の好ましい態様として、さらに副成分であるGeをGeO2に換算して0.2重量%以下の範囲内で含有するような構成とした。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の圧電セラミックスは、(MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶を有するビスマス層状化合物を主成分とし、この主成分とともに副成分としてRb、Mn、Geを含有するものであり、厚みすべり振動で使用される圧電セラミックスである。
【0008】
上記のMIIはSrおよびCaから選択される元素であり、MIVはZrおよびHfから選択される元素である。そして、Xは0.3≦x≦0.8、好ましくは0.5≦x≦0.7の範囲内、yは0≦y≦0.12、好ましくは0.02≦y≦0.06の範囲内で設定される。
MIIは、圧電セラミックスの使用振動域等に応じて、適宜選択することができる。MIIBi4Ti4O15型結晶のMIIサイトを置換するBaの含有量Xが0.3未満であると、発振周波数の温度依存性が大きくなり、一方、0.8を超えると、焼成時に圧電セラミックスが溶融しやすくなり好ましくない。
また、MIIBi4Ti4O15型結晶のTiサイトを置換するMIVは、Zrおよび/またはHfであり、含有量yが0.12を超えると、高いQmax(10以上)が得られず好ましくない。
【0009】
ここで、本発明において靭性(K1c)とは、3点曲げ強度Eb3と、この強度試験後の試料片を鏡面加工し、圧痕の対角線長さの平均値の半分a(m)およびクラック長の平均値の半分c(m)を測定し、下記の式により算出したものであり、0.8(MPa・m1/2)以上の圧電セラミックスを、高い靭性を具備したものとする。
K1c(Pa・m1/2)=(0.026×Eb3×P1/2×a)/c3/2
但し、Pは圧痕の押し込み荷重(N)
【0010】
副成分として含有されるRbは、Rb2CO3に換算して0.02〜0.2重量%の範囲内であり、好ましくは、Rb2CO3に換算した含有量をzとしたときに、zが0.02〜0.05(重量%)の範囲内において、上記主成分のTiサイトを置換するMIVの含有量yとzとがy≧−z+0.05の関係を満足するものである。Rb2CO3の含有量が0.02重量%未満であると、高い靭性(K1cが0.8(MPa・m1/2)以上)が得られず、0.2重量%を超えると、高いQmax(10以上)が得られず好ましくない。
【0011】
また、副成分として含有されるMnは、MnCO3に換算して0.3〜0.7重量%、好ましくは0.4〜0.6重量%の範囲内である。MnCO3の含有量が上記の範囲から外れると、高いQmax(10以上)が得られず好ましくない。
また、本発明の圧電セラミックスには、副成分としてGeを含有させることができる。含有されるGeは、GeO2に換算して0.2重量%以下、好ましくは0.05〜0.1重量%の範囲内である。GeO2の含有量が0.2重量%を超えると、高いQmax(10以上)が得られず好ましくない。
【0012】
本発明の圧電セラミックスでは、Qmaxを更に向上させるために、ランタノイド酸化物を含有させることが好ましい。ランタノイド(以下、Lnで表す)は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuであり、これらの中で特にLa、Sm、Nd、Gdが好ましい。このようなLnが含有される場合、原子比Ln/(MII+Ba+Ln)は、0<Ln/(MII+Ba+Ln)≦0.5、好ましくは0.01≦Ln/(MII+Ba+Ln)≦0.2であり、MIIBi4Ti4O15型結晶のMIIサイトを置換していると考えられる。MIIサイトを置換するLnの含有量が0.5モルを超える場合(Ln/(MII+Ba+Ln)>0.5となる場合)、Qmaxが低いものとなり好ましくない。
【0013】
また、本発明の圧電セラミックスは、不純物あるいは微量添加物として、Ca、Sn、Mo、W、Y、Zn、Sb、Si、Nb、Ta等が含有されてもよく、含有量は、これらの酸化物換算で全体の0.01重量%以下が好ましい。
また、本発明の圧電セラミックスの主成分である(MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶は、例えば、Tiに対するMII、Ba、Bi、MIVの比率が±5%以下程度の範囲で化学量論組成から外れていてもよい。例えば、Tiに対するBiの比率が、化学量論組成から±5%程度ずれていてもよく、例えば、Tiに対するBiの比率を高くすることにより、Qmaxをより高くすることが可能である。また、酸素量も、金属元素の価数や酸素欠陥等に応じて変化させてもよい。
本発明の圧電セラミックスの結晶粒は、板状ないし針状であり、その平均粒径は特に限定されず、例えば、長軸方向において、1〜10μm、好ましくは3〜5μm程度である。
【0014】
上述のような本発明の圧電セラミックスは、380℃以上の高いキュリー点をもち、かつ、MIIやMIVを適宜選択することにより、厚みすべり振動を利用した6〜12MHzでのQmaxが10以上となり、また、靭性K1cが0.8(MPa・m1/2)以上となる。これにより、レゾネータや高温センサ等に適用可能であり、かつ、鉛を含有しないので、環境保全の点でも安心である。また、レゾネータ、高温用センサ等における小型化が可能であり、製造、加工時のクラック発生が防止される。
【0015】
次に、本発明の圧電セラミックスの製造の一例を説明する。
まず、出発物質として、酸化物、または、焼成によって酸化物に変わりうる化合物、例えば、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、硝酸塩等、具体的にはMIICO3(MIIはSrおよびCaから選択される元素)、BaCO3、Bi2O3、TiO2、MIVO2(MIVはZrおよびHfから選択される元素)、および、副成分の酸化物、炭酸塩等、具体的にはRb2CO3、MnCO3、GeO2等の粉末原料をボールミル等により湿式混合する。
この混合物を乾燥した後、700〜1000℃、好ましくは750〜850℃程度で1〜3時間程度仮焼成し、得られた仮焼成物をスラリー化してボールミル等で湿式粉砕する。この粉砕により得られる粉末の平均粒径は特に制限されないが、その後の成型のしやすさを考慮すると、1〜5μm程度とすることが好ましい。
【0016】
次いで、仮焼成物を乾燥した後、必要に応じてポリビニルアルコール(PVA)等のバインダを添加して造粒する。その後、この造粒粉をプレス成形(荷重100〜400MPa)して成形体を得る。
次に、上記の成形体に1100〜1250℃程度で1〜5時間の本焼成を行い、この焼結体に150〜250℃のシリコンオイルバス中で分極処理(分極電界は抗電界の1.1倍以上とする)を施して圧電セラミックスを得る。本焼成は、大気中で行ってもよく、また、大気よりも酸素分圧の低い雰囲気や高い雰囲気中、あるいは、純酸素雰囲気中で行ってもよい。尚、PVA等のバインダを使用する場合、本焼成の前に熱処理を行ってバインダを揮発させることが好ましい。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
出発物質として、SrCO3、BaCO3、La2O3、Bi2O3、TiO2、ZrO2、Rb2CO3、MnCO3、GeO2の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が(Sr0.9−xBaxLa0.1)Bi4(Ti4−yZry)O15でBa含有量xとZr含有量yが下記表1に示されるものとなり、かつ、副成分であるRb、Mn、Geの含有量をそれぞれ以下のようになるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約10時間)を行った。
副成分Rb:Rb2CO3換算で0.1重量%
副成分Mn:MnCO3換算で0.5重量%
副成分Ge:GeO2換算で0.05重量%
【0018】
次に、得られた各混合物を十分に乾燥させた後、仮成形を施し、空気中で2時間の仮焼成(800℃)を行った。その後、得られた仮焼成物を上記のボールミルを用いて湿式粉砕し、乾燥した後にバインダとしてポリビニルアルコール(PVA)を適量添加して造粒した。この造粒粉を、縦20mm、横20mmの金型に約4g入れ、一軸プレス成型機を用いて245MPaの荷重で成形した。
次に、上記の成形体に熱処理を施してバインダを除去した後、1100℃で2時間の本焼成(大気中)を行って、15種の圧電セラミックス(試料1−1〜試料1−15)を得た。
【0019】
上述のように作製した各圧電セラミックスについて、Qmax、および、靭性K1cを下記の条件で測定し、結果を下記の表1に示した。
Q max の測定条件
得られた圧電セラミックスの両面をラップ盤で厚み1.0mmに平面加工し、その後、ダイシングソーで縦15mm、横4.7mmに切断加工し、その両端部(4.7mm辺)にAgペーストを塗布し、700℃で熱処理を施して電極を焼き付けた。
次に、250℃のシリコンオイルバス中で5kV/mmの電界を10分間印加して分極処理を施した。
【0020】
上記のように分極した後、再度ラップ盤で厚み155μmまで研磨し、ダイシングソーで縦7mm、横4.5mmに切断加工し、両面に、厚みすべり振動を評価するためのAg電極(直径1.4mm)を真空蒸着法により形成して、Qmax測定用試料を得た。Qmaxの測定は、ヒューレットパッカード社製インピーダンスアナライザーHP4194Aを使用した。Qmaxは8MHz付近の共振周波数と反共振周波数の間でのQ(=tanθ、θ:位相各(deg))の最大値を表し、レゾネータとして重要な特性の一つで、低電圧駆動に寄与するものであり、10以上であることが要求される。
【0021】
靭性K1cの測定条件
得られた圧電セラミックスの両面をラップ盤で厚み0.3mmに平面加工し、その後、ダイシングソーで幅5mmに切断して試験片を得た。
この試験片についてInstron社製モデル5543を用いて3点曲げ強度Eb3を測定した。強度試験後の試料片の一方の面を3μmおよび1μmのダイヤモンドペーストで鏡面加工し、(株)島津製作所製のマイクロビッカース計により圧痕の対角線長さの平均値の半分a(m)およびクラック長の平均値の半分c(m)を測定した。靭性K1cは下記の式により算出し、0.8(MPa・m1/2)以上を実用レベルとする。
K1c(Pa・m1/2)=(0.026×Eb3×P1/2×a)/c3/2
但し、Pは圧痕の押し込み荷重=9.8(N)
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示されるように、主成分である(Sr0.9−xBaxLa0.1)Bi4(Ti4−yZry)O15において、Ba含有量xが0.3〜0.8の範囲内で、Zr含有量yが0〜0.12の範囲内である圧電セラミックス(試料1−1〜試料1−6、試料1−8〜試料1−13)は、いずれも10以上のQmaxをもち、靭性K1cも高い(0.8MPa・m1/2以上)ことが確認された。また、これらの圧電セラミックスのキュリー点(ヒューレットパッカード社製LCRメータHP4394Aと電気炉を用いて測定)は、いずれも380℃以上であった。
【0024】
[実施例2]
まず、出発物質として、SrCO3、BaCO3、La2O3、Bi2O3、TiO2、ZrO2、Rb2CO3、MnCO3、GeO2の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が(Sr0.3Ba0.6La0.1)Bi4(Ti3.96Zr0.04)O15となり、かつ、副成分であるRb、Mn、Geの含有量が、それぞれRb2CO3、MnCO3、GeO2に換算して下記表2に示されるものとなるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約10時間)を行った。
その後、得られた各混合物を使用し、実施例1と同様にして、16種の圧電セラミックス(試料2−1〜試料2−16)を得た。
上述のように作製した各圧電セラミックスについて、実施例1と同様の条件でQmax、および、靭性K1cを測定し、結果を下記の表2に示した。
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示されるように、副成分を所定量含有する圧電セラミックス(試料2−2〜試料2−6、試料2−10、試料2−11、試料2−13〜試料2−15)は、いずれも10以上のQmaxをもち、靭性K1cも高い(0.8MPa・m1/2以上)ことが確認された。また、これらの圧電セラミックスのキュリー点を実施例1と同様に測定した結果、いずれも380℃以上であった。
【0027】
[実施例3]
出発物質として、SrCO3、BaCO3、La2O3、Bi2O3、TiO2、ZrO2、Rb2CO3、MnCO3、GeO2の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が(Sr0.3Ba0.6La0.1)Bi4(Ti4−yZry)O15でZr含有量yが下記表3に示されるものとなり、かつ、副成分であるRbのRb2CO3換算の含有量z(重量%)が下記表3に示すものとなり、また、副成分であるMn、Geの含有量をそれぞれ以下のようになるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約10時間)を行った。
副成分Mn:MnCO3換算で0.5重量%
副成分Ge:GeO2換算で0.05重量%
【0028】
その後、得られた各混合物を使用し、実施例1と同様にして、8種の圧電セラミックス(試料3−1〜試料3−8)を得た。
上述のように作製した各圧電セラミックスについて、実施例1と同様の条件でQmax、および、靭性K1cを測定し、結果を下記の表3に示した。
【0029】
【表3】
【0030】
表3に示されるように、Zr含有量yと副成分Rbの含有量z(zは0.02〜0.05の範囲)とが所定の関係を満足する圧電セラミックス(試料3−2〜試料3−8)は、いずれも10以上のQmaxをもち、靭性K1cも高い(0.8MPa・m1/2以上)ことが確認された。また、これらの圧電セラミックスのキュリー点を実施例1と同様に測定した結果、いずれも380℃以上であった。
【0031】
[実施例4]
まず、出発物質として、SrCO3、BaCO3、La2O3、Bi2O3、TiO2、HfO2、Rb2CO3、MnCO3、GeO2の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が(Sr0.3Ba0.6La0.1)Bi4(Ti3.96Hf0.04)O15となり、かつ、副成分であるRb、Mn、Geの含有量Rbをそれぞれ以下のようになるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約10時間)を行った。
副成分Rb:Rb2CO3換算で0.1重量%
副成分Mn:MnCO3換算で0.5重量%
副成分Ge:GeO2換算で0.05重量%
その後、得られた混合物を使用し、実施例1と同様にして、圧電セラミックス(試料4)を得た。この圧電セラミックスについて、実施例1と同様の条件でQmax、および、靭性K1cを測定した。その結果、Qmaxは20.6であり、靭性K1cは0.95(MPa・m1/2)であった。
【0032】
[実施例5]
まず、出発物質として、CaCO3、BaCO3、La2O3、Bi2O3、TiO2、ZrO2、Rb2CO3、MnCO3、GeO2の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が(Ca0.3Ba0.6La0.1)Bi4(Ti3.96Zr0.04)O15となり、かつ、副成分であるRb、Mn、Geの含有量Rbをそれぞれ以下のようになるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約10時間)を行った。
副成分Rb:Rb2CO3換算で0.1重量%
副成分Mn:MnCO3換算で0.5重量%
副成分Ge:GeO2換算で0.05重量%
その後、得られた混合物を使用し、実施例1と同様にして、圧電セラミックス(試料5)を得た。この圧電セラミックスについて、実施例1と同様の条件でQmax、および、靭性K1cを測定した。その結果、Qmaxは23.0であり、靭性K1cは1.07(MPa・m1/2)であった。
【0033】
[比較例]
まず、出発物質として、BaCO3、Bi2O3、TiO2、および、MnCO3の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が10BaBi4Ti4O15・90Ba4Ti13O30なり、副成分であるMnCO3をMnOに換算して含有量が0.5重量%となるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約16時間)を行った。
その後、得られた混合物を使用し、実施例1と同様にして、圧電セラミックス(比較試料)を得た。
上述のように作製した圧電セラミックスについて、実施例1と同様の条件でQmax、および、靭性K1cを測定した。その結果、靭性K1cは1.15(MPa・m1/2)であったが、Qmaxは5であり不十分なものであった。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば(MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶(MIIはSrおよびCaから選択される元素、MIVはZrおよびHfから選択される元素)を含むビスマス層状化合物を主成分とし、副成分としてRb、Mnを含有し、xは0.3≦x≦0.8の範囲内、yは0≦y≦0.12の範囲内であるものを圧電セラミックスとするので、キュリー点が高く、副成分を所定量含有することにより、靭性K1cが0.8(MPa・m1/2)以上となり、また、厚みすべり振動を利用した6〜12MHzでのQmaxが10以上となるので、圧電特性に優れた圧電セラミックスが可能で、レゾネータや高温センサ等に適用することができるとともに、これらの小型化が可能であり、さらに、製造、加工時のクラック発生が防止され、製造歩留まりが向上する。また、鉛を含有しないので、環境保全の点でも安心である。
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電セラミックスに係り、特にビスマス層状化合物の厚みすべり振動を利用してレゾネータ、高温用センサ等の分野に使用できる圧電セラミックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開2000−159574号
圧電セラミックスは、レゾネータやフィルター等の電子機器分野だけではなく、センサやアクチュエータといった電荷や変位を利用する製品等で幅広く使われている。
従来の圧電セラミックスは、室温付近において正方晶系あるいは菱面体晶系のチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3固溶体、以下PZTとする)や、正方晶系のチタン酸鉛(PbTiO3、以下PTとする)といったペロブスカイト構造を有する強誘電体が一般的であった。これらの材料は、副成分を添加することにより、様々な要求特性への対応が図られている。
【0003】
しかし、このようなPZT系、PT系の圧電セラミックスは、低温でも揮発性の極めて高い酸化鉛(PbO)を60〜70重量%程度含有しているのが一般的であり、生態学的な見地および公害防止の面からも好ましくない。具体的には、これらの圧電セラミックスが工業製品として市場に出された後に不要となって環境中に廃棄されると、酸性雨により圧電セラミックス中の鉛が溶出する恐れがあり、深刻な土壌汚染を引き起こすことが懸念される。
そこで、酸化鉛を全く含有しない圧電セラミックスとして、例えば、BaBi4Ti4O15を主結晶相とし、BaとTiとの複合酸化物を副結晶相として全量中に4〜30モル%含有する圧電セラミックス(特許文献1)が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、レゾネータの場合、インダクターとして使われるため、圧電特性の中で重要な特性の一つであるQm(機械的品質係数)、あるいは、共振周波数と反共振周波数の間でのQmax(Q=tanθの最大値、θ:位相)が大きい圧電セラミックスが必要である。また、このような圧電セラミックスには、温度特性が良好(発振周波数の温度依存性が小さいこと)であること、加工時のクラック発生等を抑制できる高い靭性を具備することが要求される。
【0005】
しかし、特許文献1に開示される圧電セラミックスでは、電気機械結合係数krの向上が達成されているものの、上記のQmaxは不十分であり、レゾネータに適用可能な十分な圧電特性を備えたものではないという問題があった。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、鉛を含有せず、キュリー点が高く、かつ、良好な温度特性と高い靭性を有し、優れた圧電特性、特に大きなQmaxを有する圧電セラミックスを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、(MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶(MIIはSrおよびCaから選択される元素、MIVはZrおよびHfから選択される元素)を含むビスマス層状化合物を主成分とし、副成分としてRb、Mnを含有し、xは0.3≦x≦0.8の範囲内、yは0≦y≦0.12の範囲内であるような構成とした。
本発明の好ましい態様として、副成分であるRbの含有量は、Rb2CO3に換算して0.02〜0.2重量%の範囲内であり、副成分であるMnの含有量は、MnCO3に換算して0.3〜0.7重量%の範囲内であるような構成とした。
本発明の好ましい態様として、副成分であるRbのRb2CO3に換算した含有量をzとしたときに、zが0.02〜0.05(重量%)の範囲内において、前記主成分のyとの間にy≧−z+0.05の関係が存在するような構成とした。
本発明の好ましい態様として、さらに副成分であるGeをGeO2に換算して0.2重量%以下の範囲内で含有するような構成とした。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の圧電セラミックスは、(MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶を有するビスマス層状化合物を主成分とし、この主成分とともに副成分としてRb、Mn、Geを含有するものであり、厚みすべり振動で使用される圧電セラミックスである。
【0008】
上記のMIIはSrおよびCaから選択される元素であり、MIVはZrおよびHfから選択される元素である。そして、Xは0.3≦x≦0.8、好ましくは0.5≦x≦0.7の範囲内、yは0≦y≦0.12、好ましくは0.02≦y≦0.06の範囲内で設定される。
MIIは、圧電セラミックスの使用振動域等に応じて、適宜選択することができる。MIIBi4Ti4O15型結晶のMIIサイトを置換するBaの含有量Xが0.3未満であると、発振周波数の温度依存性が大きくなり、一方、0.8を超えると、焼成時に圧電セラミックスが溶融しやすくなり好ましくない。
また、MIIBi4Ti4O15型結晶のTiサイトを置換するMIVは、Zrおよび/またはHfであり、含有量yが0.12を超えると、高いQmax(10以上)が得られず好ましくない。
【0009】
ここで、本発明において靭性(K1c)とは、3点曲げ強度Eb3と、この強度試験後の試料片を鏡面加工し、圧痕の対角線長さの平均値の半分a(m)およびクラック長の平均値の半分c(m)を測定し、下記の式により算出したものであり、0.8(MPa・m1/2)以上の圧電セラミックスを、高い靭性を具備したものとする。
K1c(Pa・m1/2)=(0.026×Eb3×P1/2×a)/c3/2
但し、Pは圧痕の押し込み荷重(N)
【0010】
副成分として含有されるRbは、Rb2CO3に換算して0.02〜0.2重量%の範囲内であり、好ましくは、Rb2CO3に換算した含有量をzとしたときに、zが0.02〜0.05(重量%)の範囲内において、上記主成分のTiサイトを置換するMIVの含有量yとzとがy≧−z+0.05の関係を満足するものである。Rb2CO3の含有量が0.02重量%未満であると、高い靭性(K1cが0.8(MPa・m1/2)以上)が得られず、0.2重量%を超えると、高いQmax(10以上)が得られず好ましくない。
【0011】
また、副成分として含有されるMnは、MnCO3に換算して0.3〜0.7重量%、好ましくは0.4〜0.6重量%の範囲内である。MnCO3の含有量が上記の範囲から外れると、高いQmax(10以上)が得られず好ましくない。
また、本発明の圧電セラミックスには、副成分としてGeを含有させることができる。含有されるGeは、GeO2に換算して0.2重量%以下、好ましくは0.05〜0.1重量%の範囲内である。GeO2の含有量が0.2重量%を超えると、高いQmax(10以上)が得られず好ましくない。
【0012】
本発明の圧電セラミックスでは、Qmaxを更に向上させるために、ランタノイド酸化物を含有させることが好ましい。ランタノイド(以下、Lnで表す)は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuであり、これらの中で特にLa、Sm、Nd、Gdが好ましい。このようなLnが含有される場合、原子比Ln/(MII+Ba+Ln)は、0<Ln/(MII+Ba+Ln)≦0.5、好ましくは0.01≦Ln/(MII+Ba+Ln)≦0.2であり、MIIBi4Ti4O15型結晶のMIIサイトを置換していると考えられる。MIIサイトを置換するLnの含有量が0.5モルを超える場合(Ln/(MII+Ba+Ln)>0.5となる場合)、Qmaxが低いものとなり好ましくない。
【0013】
また、本発明の圧電セラミックスは、不純物あるいは微量添加物として、Ca、Sn、Mo、W、Y、Zn、Sb、Si、Nb、Ta等が含有されてもよく、含有量は、これらの酸化物換算で全体の0.01重量%以下が好ましい。
また、本発明の圧電セラミックスの主成分である(MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶は、例えば、Tiに対するMII、Ba、Bi、MIVの比率が±5%以下程度の範囲で化学量論組成から外れていてもよい。例えば、Tiに対するBiの比率が、化学量論組成から±5%程度ずれていてもよく、例えば、Tiに対するBiの比率を高くすることにより、Qmaxをより高くすることが可能である。また、酸素量も、金属元素の価数や酸素欠陥等に応じて変化させてもよい。
本発明の圧電セラミックスの結晶粒は、板状ないし針状であり、その平均粒径は特に限定されず、例えば、長軸方向において、1〜10μm、好ましくは3〜5μm程度である。
【0014】
上述のような本発明の圧電セラミックスは、380℃以上の高いキュリー点をもち、かつ、MIIやMIVを適宜選択することにより、厚みすべり振動を利用した6〜12MHzでのQmaxが10以上となり、また、靭性K1cが0.8(MPa・m1/2)以上となる。これにより、レゾネータや高温センサ等に適用可能であり、かつ、鉛を含有しないので、環境保全の点でも安心である。また、レゾネータ、高温用センサ等における小型化が可能であり、製造、加工時のクラック発生が防止される。
【0015】
次に、本発明の圧電セラミックスの製造の一例を説明する。
まず、出発物質として、酸化物、または、焼成によって酸化物に変わりうる化合物、例えば、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、硝酸塩等、具体的にはMIICO3(MIIはSrおよびCaから選択される元素)、BaCO3、Bi2O3、TiO2、MIVO2(MIVはZrおよびHfから選択される元素)、および、副成分の酸化物、炭酸塩等、具体的にはRb2CO3、MnCO3、GeO2等の粉末原料をボールミル等により湿式混合する。
この混合物を乾燥した後、700〜1000℃、好ましくは750〜850℃程度で1〜3時間程度仮焼成し、得られた仮焼成物をスラリー化してボールミル等で湿式粉砕する。この粉砕により得られる粉末の平均粒径は特に制限されないが、その後の成型のしやすさを考慮すると、1〜5μm程度とすることが好ましい。
【0016】
次いで、仮焼成物を乾燥した後、必要に応じてポリビニルアルコール(PVA)等のバインダを添加して造粒する。その後、この造粒粉をプレス成形(荷重100〜400MPa)して成形体を得る。
次に、上記の成形体に1100〜1250℃程度で1〜5時間の本焼成を行い、この焼結体に150〜250℃のシリコンオイルバス中で分極処理(分極電界は抗電界の1.1倍以上とする)を施して圧電セラミックスを得る。本焼成は、大気中で行ってもよく、また、大気よりも酸素分圧の低い雰囲気や高い雰囲気中、あるいは、純酸素雰囲気中で行ってもよい。尚、PVA等のバインダを使用する場合、本焼成の前に熱処理を行ってバインダを揮発させることが好ましい。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
出発物質として、SrCO3、BaCO3、La2O3、Bi2O3、TiO2、ZrO2、Rb2CO3、MnCO3、GeO2の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が(Sr0.9−xBaxLa0.1)Bi4(Ti4−yZry)O15でBa含有量xとZr含有量yが下記表1に示されるものとなり、かつ、副成分であるRb、Mn、Geの含有量をそれぞれ以下のようになるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約10時間)を行った。
副成分Rb:Rb2CO3換算で0.1重量%
副成分Mn:MnCO3換算で0.5重量%
副成分Ge:GeO2換算で0.05重量%
【0018】
次に、得られた各混合物を十分に乾燥させた後、仮成形を施し、空気中で2時間の仮焼成(800℃)を行った。その後、得られた仮焼成物を上記のボールミルを用いて湿式粉砕し、乾燥した後にバインダとしてポリビニルアルコール(PVA)を適量添加して造粒した。この造粒粉を、縦20mm、横20mmの金型に約4g入れ、一軸プレス成型機を用いて245MPaの荷重で成形した。
次に、上記の成形体に熱処理を施してバインダを除去した後、1100℃で2時間の本焼成(大気中)を行って、15種の圧電セラミックス(試料1−1〜試料1−15)を得た。
【0019】
上述のように作製した各圧電セラミックスについて、Qmax、および、靭性K1cを下記の条件で測定し、結果を下記の表1に示した。
Q max の測定条件
得られた圧電セラミックスの両面をラップ盤で厚み1.0mmに平面加工し、その後、ダイシングソーで縦15mm、横4.7mmに切断加工し、その両端部(4.7mm辺)にAgペーストを塗布し、700℃で熱処理を施して電極を焼き付けた。
次に、250℃のシリコンオイルバス中で5kV/mmの電界を10分間印加して分極処理を施した。
【0020】
上記のように分極した後、再度ラップ盤で厚み155μmまで研磨し、ダイシングソーで縦7mm、横4.5mmに切断加工し、両面に、厚みすべり振動を評価するためのAg電極(直径1.4mm)を真空蒸着法により形成して、Qmax測定用試料を得た。Qmaxの測定は、ヒューレットパッカード社製インピーダンスアナライザーHP4194Aを使用した。Qmaxは8MHz付近の共振周波数と反共振周波数の間でのQ(=tanθ、θ:位相各(deg))の最大値を表し、レゾネータとして重要な特性の一つで、低電圧駆動に寄与するものであり、10以上であることが要求される。
【0021】
靭性K1cの測定条件
得られた圧電セラミックスの両面をラップ盤で厚み0.3mmに平面加工し、その後、ダイシングソーで幅5mmに切断して試験片を得た。
この試験片についてInstron社製モデル5543を用いて3点曲げ強度Eb3を測定した。強度試験後の試料片の一方の面を3μmおよび1μmのダイヤモンドペーストで鏡面加工し、(株)島津製作所製のマイクロビッカース計により圧痕の対角線長さの平均値の半分a(m)およびクラック長の平均値の半分c(m)を測定した。靭性K1cは下記の式により算出し、0.8(MPa・m1/2)以上を実用レベルとする。
K1c(Pa・m1/2)=(0.026×Eb3×P1/2×a)/c3/2
但し、Pは圧痕の押し込み荷重=9.8(N)
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示されるように、主成分である(Sr0.9−xBaxLa0.1)Bi4(Ti4−yZry)O15において、Ba含有量xが0.3〜0.8の範囲内で、Zr含有量yが0〜0.12の範囲内である圧電セラミックス(試料1−1〜試料1−6、試料1−8〜試料1−13)は、いずれも10以上のQmaxをもち、靭性K1cも高い(0.8MPa・m1/2以上)ことが確認された。また、これらの圧電セラミックスのキュリー点(ヒューレットパッカード社製LCRメータHP4394Aと電気炉を用いて測定)は、いずれも380℃以上であった。
【0024】
[実施例2]
まず、出発物質として、SrCO3、BaCO3、La2O3、Bi2O3、TiO2、ZrO2、Rb2CO3、MnCO3、GeO2の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が(Sr0.3Ba0.6La0.1)Bi4(Ti3.96Zr0.04)O15となり、かつ、副成分であるRb、Mn、Geの含有量が、それぞれRb2CO3、MnCO3、GeO2に換算して下記表2に示されるものとなるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約10時間)を行った。
その後、得られた各混合物を使用し、実施例1と同様にして、16種の圧電セラミックス(試料2−1〜試料2−16)を得た。
上述のように作製した各圧電セラミックスについて、実施例1と同様の条件でQmax、および、靭性K1cを測定し、結果を下記の表2に示した。
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示されるように、副成分を所定量含有する圧電セラミックス(試料2−2〜試料2−6、試料2−10、試料2−11、試料2−13〜試料2−15)は、いずれも10以上のQmaxをもち、靭性K1cも高い(0.8MPa・m1/2以上)ことが確認された。また、これらの圧電セラミックスのキュリー点を実施例1と同様に測定した結果、いずれも380℃以上であった。
【0027】
[実施例3]
出発物質として、SrCO3、BaCO3、La2O3、Bi2O3、TiO2、ZrO2、Rb2CO3、MnCO3、GeO2の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が(Sr0.3Ba0.6La0.1)Bi4(Ti4−yZry)O15でZr含有量yが下記表3に示されるものとなり、かつ、副成分であるRbのRb2CO3換算の含有量z(重量%)が下記表3に示すものとなり、また、副成分であるMn、Geの含有量をそれぞれ以下のようになるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約10時間)を行った。
副成分Mn:MnCO3換算で0.5重量%
副成分Ge:GeO2換算で0.05重量%
【0028】
その後、得られた各混合物を使用し、実施例1と同様にして、8種の圧電セラミックス(試料3−1〜試料3−8)を得た。
上述のように作製した各圧電セラミックスについて、実施例1と同様の条件でQmax、および、靭性K1cを測定し、結果を下記の表3に示した。
【0029】
【表3】
【0030】
表3に示されるように、Zr含有量yと副成分Rbの含有量z(zは0.02〜0.05の範囲)とが所定の関係を満足する圧電セラミックス(試料3−2〜試料3−8)は、いずれも10以上のQmaxをもち、靭性K1cも高い(0.8MPa・m1/2以上)ことが確認された。また、これらの圧電セラミックスのキュリー点を実施例1と同様に測定した結果、いずれも380℃以上であった。
【0031】
[実施例4]
まず、出発物質として、SrCO3、BaCO3、La2O3、Bi2O3、TiO2、HfO2、Rb2CO3、MnCO3、GeO2の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が(Sr0.3Ba0.6La0.1)Bi4(Ti3.96Hf0.04)O15となり、かつ、副成分であるRb、Mn、Geの含有量Rbをそれぞれ以下のようになるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約10時間)を行った。
副成分Rb:Rb2CO3換算で0.1重量%
副成分Mn:MnCO3換算で0.5重量%
副成分Ge:GeO2換算で0.05重量%
その後、得られた混合物を使用し、実施例1と同様にして、圧電セラミックス(試料4)を得た。この圧電セラミックスについて、実施例1と同様の条件でQmax、および、靭性K1cを測定した。その結果、Qmaxは20.6であり、靭性K1cは0.95(MPa・m1/2)であった。
【0032】
[実施例5]
まず、出発物質として、CaCO3、BaCO3、La2O3、Bi2O3、TiO2、ZrO2、Rb2CO3、MnCO3、GeO2の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が(Ca0.3Ba0.6La0.1)Bi4(Ti3.96Zr0.04)O15となり、かつ、副成分であるRb、Mn、Geの含有量Rbをそれぞれ以下のようになるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約10時間)を行った。
副成分Rb:Rb2CO3換算で0.1重量%
副成分Mn:MnCO3換算で0.5重量%
副成分Ge:GeO2換算で0.05重量%
その後、得られた混合物を使用し、実施例1と同様にして、圧電セラミックス(試料5)を得た。この圧電セラミックスについて、実施例1と同様の条件でQmax、および、靭性K1cを測定した。その結果、Qmaxは23.0であり、靭性K1cは1.07(MPa・m1/2)であった。
【0033】
[比較例]
まず、出発物質として、BaCO3、Bi2O3、TiO2、および、MnCO3の各粉末原料を準備し、主成分の最終組成が10BaBi4Ti4O15・90Ba4Ti13O30なり、副成分であるMnCO3をMnOに換算して含有量が0.5重量%となるように秤量し、純水中でジルコニアボールを用いボールミル混合(約16時間)を行った。
その後、得られた混合物を使用し、実施例1と同様にして、圧電セラミックス(比較試料)を得た。
上述のように作製した圧電セラミックスについて、実施例1と同様の条件でQmax、および、靭性K1cを測定した。その結果、靭性K1cは1.15(MPa・m1/2)であったが、Qmaxは5であり不十分なものであった。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば(MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶(MIIはSrおよびCaから選択される元素、MIVはZrおよびHfから選択される元素)を含むビスマス層状化合物を主成分とし、副成分としてRb、Mnを含有し、xは0.3≦x≦0.8の範囲内、yは0≦y≦0.12の範囲内であるものを圧電セラミックスとするので、キュリー点が高く、副成分を所定量含有することにより、靭性K1cが0.8(MPa・m1/2)以上となり、また、厚みすべり振動を利用した6〜12MHzでのQmaxが10以上となるので、圧電特性に優れた圧電セラミックスが可能で、レゾネータや高温センサ等に適用することができるとともに、これらの小型化が可能であり、さらに、製造、加工時のクラック発生が防止され、製造歩留まりが向上する。また、鉛を含有しないので、環境保全の点でも安心である。
Claims (4)
- (MII 1−xBax)Bi4(Ti4−yMIV y)O15型結晶(MIIはSrおよびCaから選択される元素、MIVはZrおよびHfから選択される元素)を含むビスマス層状化合物を主成分とし、副成分としてRb、Mnを含有し、xは0.3≦x≦0.8の範囲内、yは0≦y≦0.12の範囲内であることを特徴とする圧電セラミックス。
- 副成分であるRbの含有量は、Rb2CO3に換算して0.02〜0.2重量%の範囲内であり、副成分であるMnの含有量は、MnCO3に換算して0.3〜0.7重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の圧電セラミックス。
- 副成分であるRbのRb2CO3に換算した含有量をzとしたときに、zが0.02〜0.05(重量%)の範囲内において、前記主成分のyとの間にy≧−z+0.05の関係が存在することを特徴とする請求項2に記載の圧電セラミックス。
- 副成分として、さらにGeをGeO2に換算して0.2重量%以下の範囲内で含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の圧電セラミックス。
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JP2010030832A (ja) * | 2008-07-29 | 2010-02-12 | Kyocera Corp | 圧電磁器およびそれを用いた圧電素子 |
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