JP2005057342A - 分波器および分波器における分波線路の線路長決定方法 - Google Patents

分波器および分波器における分波線路の線路長決定方法 Download PDF

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永典 江原
Tomokazu Komazaki
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Abstract

【課題】無線周波数帯域信号をそれぞれ周波数帯域が異なる3つの周波数帯域で分波する分波器および分波器における分波線路の線路長決定方法を提供。
【解決手段】入出力端子と第1の帯域通過フィルタとが第1の分波線路を介して接続され、入出力端子と第2の帯域通過フィルタとが第2の分波線路を介して接続され、第3の帯域通過フィルタは入出力端子に直接接続され、第1および第2の分波線路は、第3の帯域通過フィルタの分波器特性に応じた線路長にそれぞれ設定されている。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば車載用の移動体通信機器に用いられて、信号を分波する分波器に係り、無線周波数(RF: Radio Frequency)として、たとえば、1〜6(GHz)帯において使用される弾性表面波フィルタ、誘電体フィルタおよび集中定数フィルタ等の帯域通過フィルタを用いて、3つの周波数帯域に対応するトリプレクサである分波器および分波器における分波線路の線路長決定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、小型で、軽量な携帯電話等の移動体通信機器端末の開発が急速に進められている。このような端末に用いられる部品の小型および高性能化が求められており、弾性表面波(SAW)素子を基本としたRF部品の開発が求められている。
【0003】
とくにSAWフィルタを用いたSAW分波器はRF部の小型化に大きく貢献するデバイスであるため、その実用化とその高性能化が強く要望されている。SAW分波器は、たとえば、800(MHz)帯域のRFデバイスも開発され、一部、実用に供されている。
【0004】
800(MHz)帯域の周波数帯域を用いる移動体通信は多くの方式が実用化されている。この帯域の移動体機器の周波数配列はCDMA(Code Division Multiple Access)方式の場合、たとえば送信帯域が(824〜849)(MHz)、受信帯域が(869〜894)(MHz)で、送信帯域と受信帯域の間隔が20(MHz)である。
【0005】
さらに近年、小型軽量な移動体通信機器端末の需要の急増に伴い、2(GHz)帯域の周波数帯域を用いる移動体通信方式が実用化されている。たとえば、1.9(GHz)帯域のPCS (Personal Communication Service)方式では送信帯域と受信帯域との間隔が20(MHz)である。このPCS方式で使用される分波器では誘電体フィルタを用いられ、800(MHz)帯域フィルタよりもさらに2倍の急峻な特性が必要である。
【0006】
また、近年、薄型で軽量な携帯電話の2(GHz)帯域移動体通信機器端末が要求され、2(GHz)帯域SAW分波器の必要性が高まってきた。2(GHz)帯SAW分波器は、800(MHz)帯SAW分波器と同様に送信フィルタ、受信フィルタおよび分波線路を有する回路構成である。2(GHz)帯域SAW分波器は、小型で、通過帯域の挿入損失が小さいことや減衰帯域の減衰量が大きいこと等の特性が要求されている。2(GHz)帯分波器として、二つのSAWフィルタを一つのパッケージに組み込んだSAW−DUPにおいては、互いにフィルタ特性の干渉を防止・低減するために、二つのフィルタチップそれぞれに対して整合回路を設けるか、または少なくとも他方のフィルタのみに整合回路を設ける必要がある。この整合回路は、各フィルタチップとともに多層セラミックパッケージ内に収められ、略高さ2.0(mm)の分波器パッケージを構成することができる。
【0007】
この2(GHz)帯域分波器を構成する二つのSAWフィルタは、互いに異なる中心周波数を持つものであり、それぞれ通過帯域においては損失が小さく、減衰帯域においては減衰量が大きい特性を持つ必要がある。この互いに中心周波数が異なる二つのSAWフィルタを用いて分波器を構成する場合、互いの特性を劣化させないようにする必要がある。そのため、各々のフィルタの通過域において、他方のフィルタのインピーダンスが無限大であり、さらに反射係数が1であることが理想である。この特性を満たすために各SAWフィルタにそれぞれ分波線路を付加する必要があった。この分波線路は、たとえば、分布定数素子や、キャパシタおよびインダクタによる集中定数素子等を用いて形成される。
【0008】
また、携帯電話端末では、その送信信号が、RF回路の最終段の電力増幅器の出力から分波器のTx端に入力され、送信入力整合回路、送信フィルタ、アンテナ端子整合回路およびアンテナ端子を経てアンテナから空中に放射される。また、受信信号は、アンテナからアンテナ端子、アンテナ端子整合回路を経て、分波線路、受信フィルタおよび受信出力整合回路を通り、分波器のRx端から受信用回路に入力される。送信フィルタには電力増幅器から1〜2(Watt)程度の電力が印加され、また、受信フィルタにも1(W)程度の電力が印加されるため、これら2個の送信フィルタおよび受信フィルタはともに耐電力性が要求される。800(MHz)帯域のSAW分波器ではSAW分波器としての必要な特性および2.5(Watt)程度の印加電力に対してもSAW分波器特性を満足するものが得られて実用に供されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−167518号公報
【特許文献2】
特開2000−295011号公報。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このSAW分波器を実用化する場合、SAW共振器を構成する電極指間の間隔が狭いため、小さい印加電力に対して特性が変化するという問題があった。また、最近はアンテナが統合化され、さらにフィーダ線を一本化されたフィーダ線の使用が要求されている。この場合、従来では切り替えスイッチ方式やハイブリッド方式で分配合成する必要があり、このため余分なロスが増加して特性が劣化し、さらに個々のバンドパスフィルタ(BPF)の小型化が困難であった。
【0011】
このような状況の下、1つのアンテナを共用し、3つの周波数帯域にて使用される分波器(トリプレクサ)が求められている。しかしこれら3つの周波数帯域が互いに干渉しないようにして、特性劣化を低減することは困難であった。
【0012】
たとえば、3つの周波数帯域に対応するそれぞれのフィルタにおける信号の通過帯域の損失を下げるように、分波器を構成する際に、各フィルタに接続する最適な分波線路のインピーダンスを求めることが困難であった。
【0013】
本発明はこのような従来技術の欠点を解消し、小型化を図るために一本のアンテナを接続し、3個のフィルタに送信帯域および/または受信帯域を割り当て、これら3個の帯域がお互いに干渉しないように、3個のフィルタを並列接続した場合の特性劣化を少なくし、各フィルタに接続される分波線路の最適条件に適合する高性能な分波器および分波器における分波線路の線路長決定方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の課題を解決するために、無線周波数帯域信号をそれぞれ周波数帯域が異なる3つの周波数帯域で分波する分波器において、この分波器は、アンテナが接続されて無線周波数帯域信号を入出力する入出力端子と、無線周波数帯域信号のうち第1の周波数帯域の第1の信号を通過する第1のフィルタと、無線周波数帯域信号のうち第2の周波数帯の第2の信号を通過する第2のフィルタと、無線周波数帯信号のうち第3の周波数帯域の第3の信号を通過する第3のフィルタと、入出力端子と第1のフィルタとを接続し、線路長に応じて分波器特性を決定する第1の分波線路と、入出力端子と第2のフィルタとを接続し、線路長に応じて分波器特性を決定する第2の分波線路と、入出力端子と第3のフィルタとを直接接続する接続線とを含み、第1の分波線路および第2の分波線路は、それぞれ第3のフィルタの分波器特性に応じて決定した線路長を有することを特徴とする。
【0015】
この場合、第1の分波線路および第2の分波線路のそれぞれの線路長は、それぞれ第3のフィルタの分波器特性を向上させるように線路長に設定される。
【0016】
また、第1の分波線路および第2の分波線路は、分布定数線路にて形成されているとよい。また、第1のフィルタ、第2のフィルタおよび第3のフィルタは、それぞれ弾性表面波フィルタであるとよく、さらに、第1、第2および第3のフィルタを一つの圧電基板に形成した構成であるとよい。この場合、第1、第2および第3のフィルタを形成した圧電基板を積層基板パッケージ内に備え、積層パッケージに入出力端子を設けるとよい。
【0017】
また、第1および第2のフィルタはそれぞれ弾性表面波フィルタであり、第3のフィルタは誘電体フィルタであるとよい。また、第1のフィルタはGPS用の帯域通過フィルタであり、第2のフィルタはVICS用の帯域通過フィルタであるとよい。
【0018】
また、第3のフィルタは5.8(GHz)帯の帯域通過フィルタであるとよい。この場合、第3のフィルタはETC用の帯域通過フィルタであるとよい。また、第2の分波線路の線路長が第1の分波線路の線路長よりも長いとよく、この場合、第1の分波線路の線路長を3.5(cm)ないし4.5(cm)のうちいずれかの線路長に設定するとよい。また、第2分波線路の線路長を6.0(cm)ないし7.0(cm)のうちいずれかの線路長に設定するとよい。
【0019】
また、第3のフィルタは3.5(GHz)帯の帯域通過フィルタであるとよい。この場合、第2の分波線路の線路長が第1の分波線路の線路長よりも長いとよく、この場合、第1の分波線路の線路長を1.7(cm)ないし2.0(cm)のうちいずれかの線路長に設定するとよい。また、第2の分波線路の線路長を4.1(cm)ないし4.6(cm)のうちいずれかの線路長に設定するとよい。また、第3のフィルタは、通過帯域が3.44(MHz)ないし3.52(MHz)の帯域通過フィルタであるとよい。
【0020】
本発明は上述の課題を解決するために、無線周波数帯域信号をそれぞれ周波数帯域が異なる3つの周波数帯域で分波する分波器における分波線路の線路長決定方法において、分波器は、アンテナが接続されて無線周波数帯信号を入出力する入出力端子と、無線周波数帯信号のうち第1の周波数帯域の第1の信号を通過する第1のフィルタと、無線周波数帯信号のうち第1の周波数帯域よりも高い第2の周波数帯の第2の信号を通過する第2のフィルタと、無線周波数帯信号のうち第1および第2の周波数帯域よりも高い第3の周波数帯域の第3の信号を通過する第3のフィルタと、入出力端子と前記第1のフィルタとを接続し、線路長に応じて分波器特性を決定する第1の分波線路と、入出力端子と前記第2のフィルタとを接続し、線路長に応じて分波器特性を決定する第2の分波線路とを含み、この方法は、第1および第2の周波数帯域よりも高い第3の周波数帯域の通過帯域損失を下げるように、前記入出力端子と第3のフィルタとを直接接続し、第1の分波線路の第1の線路長と、第2の分波線路の第2の線路長とを、それぞれ、中心周波数が最も高い第3のフィルタの分波器特性に応じて、その中心周波数において算出したインピーダンスに基づいて決定した線路長に設定することを特徴とする。この場合、第1の周波数帯域、第2の周波数帯域および第3の周波数帯域は、それぞれ、互いに1(GHz)以上離れた周波数帯域であるとよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に添付図面を参照して本発明による分波器の実施例を詳細に説明する。
【0022】
図1を参照すると本発明が適用された分波器の基本回路構成が示されている。図示するように分波器20は、アンテナ22を接続するANT端子24と、ANT端子24にそれぞれ並列接続した第1、第2および第3の分波線路30,32,34と、第1、第2および第3の分波線路30,32,34のそれぞれに対応して接続した第1、第2および第3のフィルタ40,42,44と、第1、第2および第3のフィルタ40,42,44のそれぞれに接続する第1,第2および第3端50,52,54を含み、図1ではさらに電力増幅器60の出力が第1端50に接続されている。
【0023】
この送信帯域および受信帯域を合わせて3つの周波数帯域を有する分波器20の実現上において、3つの周波数帯域にてそれぞれ互いに干渉しないようにするために、各フィルタ40,42,44に接続される分波線路30,32,34の線路長を決定することが重要である。決定される分波線路の線路長は、零「線路長=0」、つまり分波線路を接続しない場合を含んで検討するので、その場合、説明において線路長が零である旨の表現をとる場合がある。
【0024】
分波器20の3つの周波数帯域について説明する。第1、第2および第3のフィルタ40,42,44は、第1、第2および第3帯域として、たとえばGPS用帯域(周波数1574〜1577 (MHz))、VICS用帯域(周波数2498〜2502 (MHz))、ETC用帯域(周波数5780〜5820 (MHz))を通過帯域とするバンドパスフィルタである。これらフィルタにそれぞれ接続された第1、第2および第3の分波線路30,32,34は、このような周波数帯域の間隔において、各フィルタ40,42,44をお互いに干渉しないように分波線路を用いて並列接続して1つのアンテナを接続し、分波線路により互いに干渉しないようにして3つの周波数帯域にて共に通過帯域損失を最小にするように構成したものである。なお、実施例における分波線路の特性インピーダンスは50(Ω)で構成されている。
【0025】
図示するように、本実施例の基本構成における分波器20は、通過帯域が異なる3個の第1、第2および第3のフィルタ40,42,44を並列接続して、1つのアンテナ22に接続する構成で、3個のフィルタ40,42,44のそれぞれフィルタ単体時の特性と、図示の分波器20を構成にした場合とで特性に変化が少ないことが要求される。
【0026】
図2を参照すると、同図には第1のフィルタ40を送信用フィルタとして使用した場合の構成図が示され、この場合、第2および第3フィルタ32,34を合成インピータンス36として図示し、第2および第3端52,54をそれぞれ終端抵抗38を介して回路に接地している。この説明においては、第1、第2および第3のフィルタと、第1、第2および第3の分波線路とのインピーダンスをそれぞれ1オーム[Ω]として説明する。
【0027】
図2において、第2および第3の分波線路32,34と第2および第3のフィルタ42,44とを終端抵抗38で終端した場合のアンテナ(ANT)端子24から見た入力インピーダンスをZIN(23)とする。
【0028】
第1端50からANT端子24の伝送特性S1は式(1)で与えられる。
【0029】
【数1】
=(A+B+C+D+A/ZIN(23)+B/ZIN(23))/2 ・・(1)
この減衰特性は式(2)となる。
【0030】
【数2】
α(ω)=20*LOG(ABS(S)) [dB] ・・(2)
ここでABS(S)はSの絶対値を示す。
【0031】
式(1)において、第1のフィルタ40単体の伝送特性S11は式(3)で与えられる。
【0032】
【数3】
11=(A+B+C+D)/2 ・・(3)
この第1のフィルタ40単体の減衰特性は式(4)となる。
【0033】
【数4】
α11(ω)=20*LOG(ABS(S11)) [dB] ・・(4)
ここでABS(S11)はS11の絶対値を示す。
【0034】
第1端50からANT端子24の伝送特性Sに対する合成インピーダンス回路36(第2および第3のフィルタ32,34)の影響は、ZIN(23)と伝送特性の関係が式(1)〜式(4)で与えられるので式(5)で評価される。
【0035】
【数5】
(23)=(1+(A/ZIN(23)+B/ZIN(23))/(A+B+C+D)) ・・(5)
この減衰特性は式(6)となる。
【0036】
【数6】
α(23)(ω)=20*LOG(ABS(S)) [dB] ・・(6)
ここで従来の分波器の構成を図3を参照して説明すると、同図には、送信周波数帯域と受信周波数帯域とを分離する分波器のデュプレクサの構成例が示されている。このデュプレクサ300は、アンテナ302を接続するANT端子304と、ANT端子304に接続した整合回路306と、整合回路306に接続した送信フィルタ308と、送信フィルタ308に接続した送信入力整合回路310と、送信側のTx端312と、整合回路306に接続した受信側の分波線路314と、分波線路314の他端に接続した受信フィルタ316と、受信フィルタ316に接続した受信出力整合回路318と、受信側のRx端320とを含み、Tx端312には受信信号を増幅する電力増幅器314が接続される。
【0037】
このような構成の分波器(デュプレクサ)300において、Tx端312からANT端子304間の伝送特性S11は式(7)で与えられる。
【0038】
【数7】
11=(A+B+C+D+A/ZIN(LR)+B/ZIN(LR))/2 ・・(7)
式(7)は次の様になり、ZIN(LR)が有限による特性が式(7−1)で評価可能である。
【0039】
【数8】
11=(A+B+C+D)(1+(1/ZIN(LR)*(C+D)/(A+B)))/2
【0040】
【数9】
αZIN(LR)(ω)≒8.686*Re((1/ZIN(LR))*(C+D)/(A+B)) [dB] ・・(7−1)
ここで(1/ZIN(LR)*(C+D)/(A+B))の絶対値は1より十分小さい。
【0041】
この場合の減衰特性は式(8)となる。
【0042】
【数10】
α(ω)=20*LOG((ABS(S11))+αZIN(LR)(ω) [dB] ・・(8)
式(7)においてZIN(LR)は図3に示すように、受信フィルタ316と分波線路314とを直列接続した場合の分波線路314の入力端からの入力インピーダンスZIN(LR)で、このZIN(LR)は式(9)で与えられる。
【0043】
【数11】
IN(LR)=(ZIN(R)*COS(θ)+jSIN(θ))/(COS(θ)+jZIN(R)*SIN(θ)) ・・(9)
ここでθ=βL、β=2π/λ、L=線路長である。
【0044】
通常、図3に示す分波器300では、受信フィルタ316の入力インピーダンスZIN(R)をZIN(R)≒0とし、分波線路314の線路長Lを四分の一波長(λ/4)、すなわち式(9)においてθ=π/2となる様に設定する。
【0045】
このように設定すると式(9)に表すZIN(LR)は無限大になり、Tx端312およびANT端子306間の伝送特性S11は式(10)で与えられ、送信時において受信側回路の影響を受けないようになる。
【0046】
式(7)において、送信フィルタ308の伝送特性S11は式(10)で与えられる。
【0047】
【数12】
11=(A+B+C+D)/2 ・・(10)
この送信フィルタの減衰特性は式(11)となる。
【0048】
【数13】
α11(ω)=20*LOG(ABS(S11)) [dB] ・・(11)
ここでABS(S11)はS11の絶対値を示す。
【0049】
すなわち、図3に示した従来構成例の分波器(デュプレクサ)300の特性は前述のように、分波線路314の入力端からみた入力インピーダンスZIN(LR)により決まる。すなわち式(9)における受信ZIN(LR)がどれくらい大きくなっているかどうかによって特性が評価される。
【0050】
次に、本実施例における分波線路の線路長と特性との関係を図1に戻ってさらに詳細に設明する。第2のフィルタ42と分波線路32とを直列接続した場合の分波線路32の入力端(ANT端子24)からの入力インピーダンスZIN(2)は式(12)で与えられる。
【0051】
【数14】
IN(2)=(ZIN(R2)*COS(θ2)+jSIN(θ2))/(COS(θ2)+jZIN(R2)*SIN(θ2))・・(12)
第3のフィルタ44と第3の分波線路34とを直列接続した場合の分波線路34の入力端(ANT端子24)からの入力インピーダンスZIN(3)は式(13)で与えられる。
【0052】
【数15】
IN(3)=(ZIN(R3)*COS(θ3)+jSIN(θ3))/(COS(θ3)+jZIN(R3)*SIN(θ3))・・(13)
合成インピーダンスZIN(23)は式(14)になることがわかる。
【0053】
【数16】
IN(23)=ZIN(2)*ZIN(3)/(ZIN(2)+ZIN(3)) ・・(14)
図3に示した分波器300の分波線路314の入力端からみた入力インピーダンスZIN(LR)は、式(9)で与えられたのに対して、図1に示す実施例では合成インピーダンスZIN(23)は、式(14)で与えられる。
【0054】
このことは第1のフィルタ40の特性に、第2の分波線路32と、第2のフィルタ42の入力インピーダンスZIN(2)と、第3の分波線路34と、第3のフィルタ44の入力インピーダンスZIN(3)とが関係することを示している。
【0055】
すなわち、従来のデュプレクサの分波線路314の最適線路長は四分の一波長(λ/4)であったが、本発明のようにトリプレクサを構成する場合、第2の分波線路32と第3の分波線路34とにより特性が決定されるので、各分波線路32,34の線路長に幅を持たせることができ、(λ/4)に限定されず余裕ができることがわかる。
【0056】
以上、図1ないし図3を参照しながら原理的部分について説明した。次に、本発明が適用された3周波数帯域用分波器(トリプレクサ)の具体的構成および動作を説明する。
【0057】
図4を参照すると、本実施例における3周波数帯域用分波器(トリプレクサ)の構成例が示されている。本実施例では、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)、VICS(Vehicle Information and Communication System:高度道路情報通信システム)およびETC(Electronic Toll Collection:自動料金収受)のそれぞれのシステムにて使用される周波数帯域ごとに信号を通過および阻止する分波器であるトリプレクサ400が形成されている。
【0058】
図示するように、トリプレクサ400は、無線周波数1574〜1577(MHz)を使用するGPS用の第1の帯域通過フィルタ410と、無線周波数2498〜2502(MHz)を使用するVICS用の第2の帯域通過フィルタ412と、無線周波数5780〜5820(MHz)を使用するETC用の第3の帯域通過フィルタ414とを含む。第1および第2の帯域通過フィルタ410,412はさらにそれぞれ第1および第2の分波回路420,422が接続されて、第3の帯域通過フィルタ414と第1および第2の分波回路420,422とがそれぞれ導電部材430,432,434を介してアンテナ(ANT)端子440に接続されている。第1、第2および第3の帯域通過フィルタ410,412,414の他端には、それぞれ第1、第2および第3端50,52,54が接続されて、これら端子50,52,54は移動無線機器内のGPS回路、VICS回路およびETC回路(いずれも図示せず)の各RF回路に接続される。
【0059】
本実施例では、3個の帯域通過フィルタを並列接続して分波器を構成する際に、アンテナ端子440と各帯域通過フィルタとの間の線路の線路長を特定な値に形成することにより、それぞれのフィルタの単体特性からの特性劣化が少なくなるように構成している。
【0060】
図4に示す実施例における第1の帯域通過フィルタ410はGPS用に弾性表面波(SAW)フィルタにて圧電基板上に形成し、第2の帯域通過フィルタ412をVICS用に弾性表面波(SAW)フィルタにて圧電基板上に形成し、これらフィルタは同一の圧電基板上に一体形成されている。実施例におけるトリプレクサ400の主要部の外観構成を図5に示す。トリプレクサ400の圧電基板500は、図示するように積層パッケージ502上に不図示のゴムや樹脂等の弾性部材を介挿して配設されて、全体として分波器モジュールを形成している。
【0061】
第1の帯域通過フィルタ410の回路は、ボンディングワイヤ510,512によって積層パッケージ502の第4層514に形成された電極516,518にそれぞれ接続され、第2の帯域通過フィルタ412の回路は、ボンディングワイヤ520,522によって積層基板パッケージ502の第4層514に形成された電極524,526にそれぞれ接続されている。
【0062】
図示するように積層基板パッケージ502は、その下方側から第1層基板530、第2層基板532、第3層基板534および第4層基板514が積層されて形成され、同図において第4層基板の上に形成される第5層基板を煩雑化を避けるため省略している。その第5層基板は圧電基板500を密封するためにその周囲を覆うように形成されて、そのさらに上部に不図示の封入部材により圧電基板500を封止する。このようにSAWフィルタが形成された圧電基板500が積層基板パッケージ502内に備えられる。なお、第1層基板530、第2層基板532および第3層基板534それぞれ約0.15(mm)程度の厚みを有し、第4層基板514についても後述の第3の帯域通過フィルタ414構成に応じた厚みでよい。
【0063】
第1の帯域通過フィルタ410の回路構成を図6に示す。同図において2つのSAW共振器S1,S2が端子T1,T3間に直接に接続されて直列腕を形成し、さらに3つのSAW共振器P1,P2,P3の一端がそれぞれ接続点B1,B2,B3に接続されて並列腕を形成し、SAW共振器P1,P2,P3の他端が接続点B4に接続され、接続点B4はや用インダクタLPを介して接続点B5に接続されている。接続点B5は端子T2,T4に接続されている。第1の帯域通過フィルタ410における各SAW共振器S1,S2,P1,P2,P3は、圧電基板500上にすだれ状電極がそれぞれ形成されて配置され、インダクタLPは図5にも示したように、圧電基板500と積層基板パッケージ502とを接続するボンディングワイヤやバンプ接続などにより形成されて配置されている。
【0064】
第1の帯域通過フィルタ410の各素子構成をさらに説明すると、図9に示すように、直列腕のSAW共振器S1,S2の交差長は、それぞれともに40(μm)であり、対数は100本のすだれ状電極にて構成されている。また、並列腕のSAW共振器P1,P2,P3の交差長はそれぞれ39(μm)、55(μm)、39(μm)であり、対数はそれぞれ39(本)、55(本)、39(本)のすだれ状電極にて構成されている。
【0065】
第2の帯域通過フィルタ412の回路構成を図7に示す。同図において4つのSAW共振器S1,S2,S3,S4が端子T1,T3間に直接に接続されて直列腕を形成し、さらに4つのSAW共振器P1,P2,P3,P4の一端がそれぞれ接続点B1,B2,B3,B4に接続されて並列腕を形成し、SAW共振器P1,P2,P3,P4の他端が接続点B5に接続され、接続点B5は有極用インダクタLPを介して接続点B6に接続されている。接続点B5は端子T2,T4に接続されている。第2の帯域通過フィルタ412における各SAW共振器S1,S2,,S3,S4,P1,P2,P3,P4は、圧電基板500上にすだれ状電極がそれぞれ形成されて配置され、インダクタLPは圧電基板500と積層基板パッケージ502とを接続するボンディングワイヤやバンプ接続などにより形成されて配置されている。
【0066】
第2の帯域通過フィルタ412の各素子構成をさらに説明すると、図10に示すように、直列腕のSAW共振器S1,S2,S3,S4の交差長は、それぞれ49(μm)、45(μm)、45(μm)、90(μm)であり、対数はそれぞれ90本のすだれ状電極にて構成されている。また、並列腕のSAW共振器P1,P2,P3,P4の交差長はそれぞれ35(μm)、45(μm)、45(μm),45(μm)であり、対数はそれぞれ35(本)、45(本)、45(本)、45(本)のすだれ状電極にて構成されている。また有極用インダクタLPのインダクタンス値は、0.5(nH)にて構成される。
【0067】
第3の帯域通過フィルタ414の回路構成を図8に示す。図示するように同図には、インダクタとキャパシタを使用したLCフィルタが示されている。端子T1,T2間にインダクタL1,キャパシタC1,インダクタL2,キャパシタC2,が直列に接続されて、接続点B1,B2にはキャパシタC3およびインダクタL3が並列に接続され、キャパシタC3およびインダクタL3の他端はそれぞれ接続点B3,B4を介して端子T2,T4に接続されている。本実施例における第3の帯域通過フィルタ414は、積層基板パッケージ502の第4層基板514に形成されて配置される。
【0068】
第3の帯域通過フィルタ414の各素子構成をさらに説明すると、図11に示すように、インダクタL1,L2,L3は、それぞれ、318.3(nH)、318.3(nH)、0.0118(nH)にて形成され、キャパシタC1,C2,C3は、それぞれ0.00237(pF)、0.00237(pF)、63.7(pF)にて形成されている。
【0069】
トリプレクサ40の積層基板パッケージ502および第1の帯域通過フィルタ410部分の断面図を図12に示す。本実施例では、第1層基板530と第2層基板532とを貫通したスルーホール1200によりANT端子440と第1の分波線路420とが接続され、第3層基板534と第4層基板534とを貫通したスルーホール1202により、第1の分波線路420と電極516とが接続されている。さらに、第4層基板から第1層基板までを貫通するスルーホール1204により電極518と第1端50が接続されている。スルーホール1200〜1204内は導電性の金属等が充填されている。
【0070】
トリプレクサ40の積層基板パッケージ502および第2の帯域通過フィルタ412部分の断面図を図13に示す。本実施例では、第1層基板530を貫通したスルーホール1300によりANT端子440と第2の分波線路422とが接続され、第2層基板532と第4層基板534とを貫通したスルーホール1302により、第2の分波線路422と電極524とが接続されている。さらに、第4層基板514から第1層基板530までを貫通するスルーホール1304により電極526と第2端52が接続されている。スルーホール1300〜1304内は導電性の金属等が充填されている。なお、本実施例における各分波線路420,422は、それぞれ第2層基板532および第1層基板530上に特定の線路長のマイクロストリップ線路やストリップ線路などの分布定数線路を形成して構成されている。
【0071】
さらに、第3の帯域通過フィルタ414の積層基板パッケージ502内の構成例を図14に示す。同図にはLCフィルタが形成される部分の積層基板パッケージ502の断面図であり、第3層基板534上に配置した電極パターンと、第4層基板514の上下面に配置した電極パターンとによりインダクタおよびキャパシタが形成されている。ANT端子440はスルーホール1400によって第3の帯域通過フィルタ414に直結され、第3の帯域通過フィルタ414は、スルーホール1402によって第3端54に接続されている。スルーホール1400および1402内は導電性の金属等が充填されている。
【0072】
図6〜図8および図10〜図11に示した各フィルタ単体構成の中心周波数における単体特性値と、さらに各分波線路30,32,34の各線路長を仮に零とした場合の中心周波数における分波器特性値(DUP特性)とを図15に示す。
【0073】
中心周波数における単体フィルタ特性と線路長零における分波器特性(DUP特性)との差は図15から、第1の帯域通過フィルタ410(GPS)の場合、中心周波数1.6(GHz)において、単体特性のGPS(−2.2dB)とDUP特性のGPS(−3.8dB)との差が1.6(dB)であり、第2の帯域通過フィルタ412(VICS)の場合、中心周波数2.5(GHz)において、単体特性のVICS(−1.7dB)とDUP特性のVICS(−2.6dB)との差が0.9(dB)であり、第3の帯域通過フィルタ414(ETC)の場合、中心周波数5.8((GHz))において、単体特性のETC(−0.5dB)とDUP特性のETC(−12.7dB)との差が12.2(dB)である。これら単体フィルタ特性とその分波器特性(DUP特性)の差は零に近く小さいのが望ましい。
【0074】
本発明ではこの中心周波数における単体フィルタ特性と分波器特性(DUP特性)との差が可能な限り小さくなるように、各フィルタの一端に直列接続する分波線路の線路長を設定する。この線路長決定方法は、図15に示したような各フィルタの単体特性と分波線路の線路長が零の場合の分波器特性(DUP特性)との差が最も大きい周波数帯域、つまりこの場合、差12.2(dB)であったETC帯域に着目し、その特性差が少なくなるようにGPS帯域およびVICS帯域に対応して設けた各分波線路30,32の線路長を決定してトリプレクサ400を構成する。
【0075】
各単体フィルタ時の各中心周波数におけるインピーダンスを図16に示し、分波器を構成した場合の各合成インピーダンスZIN(23)を図17に示す。図15に示したように、中心周波数における単体フィルタと分波器構成時との特性の差がETC帯域の場合が一番大きい原因は、図17に示されているように、中心周波数におけるETCの合成インピーダンスが低いからである。この合成インピーダンスZIN(23)は図17に示すように、GPSの合成インピーダンスがZIN(23)(GPS)=0.03−j1.41であり、VICSの合成インピーダンスがZIN(23)(VICS)=0.15−j1.48であり、ETCの合成インピーダンスがZIN(23)(ETC)=0.01−j0.12である。
【0076】
このETCにおける合成インピーダンスZIN(23)=0.01−j0.12の原因は、ETCの中心周波数5.8(GHz)におけるGPSおよびVICSの単体フィルタ時のインピーダンスで、その値は図16に示すように、GPS=0.00−j0.21、VICS=0.03−j0.28による。
【0077】
通常、この合成インピーダンスは、GPSの場合1.6(GHz)において、ZIN(GPS)=0.03−j1.41、VICSの場合2.5(GHz)において、ZIN(VICS)=0.15−j1.48であるので、ETCの単体特性とDUP特性の差をGPSおよびVICSの場合と同程度にするには、ETCの周波数5.8(GHz)におけるETCの合成インピーダンスをGPSおよびVICSの値と同程度にする必要がある。
【0078】
具体的には、合成インピーダンスのインピーダンスの絶対値で1.487以上が必要である。このETCの5.8(GHz)における合成インピーダンスを絶対値で1.487以上にするために、VICSの分波線路およびGPSの分波線路の線路長を決定する。
【0079】
さらに詳細に説明すると、図1において、第2のフィルタ42をVICSフィルタとし、これと第2の分波線路32とを直列接続した場合、分波線路32の入力端24からの入力インピーダンスZIN(2)は式(15)で与えられる。つまり、図16に示した具体的値を式(12)に入れて整理すると入力端からの入力インピーダンスZIN(2)は式(15)となる。ここで、ZIN(R2)は図16から、ZIN(R2)=0.03−j0.28≒−j0.28とした。
【0080】
【数17】
IN(2)=j(SIN(θ2)−0.28*SIN(θ2))/(COS(θ2)+0.28*SIN(θ2)) ・・(15)
ここでθ2=β2L2、β2=(2π/λ)、L2=VICSフィルタ(第2のフィルタ42)に接続される線路の線路長である。
【0081】
次に、第3のフィルタ44をGPSフィルタとし、これと第3の分波線路34とを直列接続した場合、第3の分波線路34の入力端24からの入力インピーダンスZIN(3)は式(16)で与えられる。ここで、図16から、ZIN(R3)はZIN(R3)=0.00−j0.21≒−j0.21とした。
【0082】
【数18】
IN(3)=j(SIN(θ3)−0.21*COS(θ3))/(COS(θ3)+0.21*SIN(θ3)) ・・(16)
ここでθ3=β3L3、β3=(2π/λ)、L3=GPSフィルタ(第3のフィルタ44)に接続される線路の線路長である。
【0083】
したがって図2で示した合成インピーダンスZIN(23)は式(17)で示される。
【0084】
【数19】
ABS(ZIN(23))=ABS(ZIN(2)*ZIN(3)/(ZIN(2)+ZIN(3)) ・・(17)
ここでABS(ZIN(23))はZIN(23)の絶対値を表す。
【0085】
式(15)、式(16)に基づいてZIN(23)を計算した結果を図18に示す。図18はVICS用分波線路として第2の分波線路32の線路長L2を(5.0〜7.0)(cm)に変化させ、また、GPS用分波線路として第3の分波線路34の線路長L3を(3.5〜5.0)(cm)に変化させた場合の合成インピーダンスZIN(23)を示している。たとえばGPS用分波線路の線路長L3を4.5(cm)として、線路長L2を変化させた場合、線路長L2を6.0(cm)または6.5(cm)にするとZIN(23)の絶対値は1.48以上になり、単体特性とDUP特性の差がGPSの場合の1.6(dB)、VICSの場合の0.9(dB)と同等またはそれ以下になる。
【0086】
合成インピーダンス(IMP)ZIN(23)の基準1.48を超える場合の組み合わせは同図18からNO−5、NO−9、NO−10、NO−13およびNO−14の5パターンである。つまり、NO−5においてVICSの線路長L2=7.00(cm)およびGPSの線路長L3=3.50(cm)、NO−9においてVICSの線路長L2=6.50(cm)およびGPSの線路長L3=4.00(cm)、NO−10においてVICSの線路長L2=7.00(cm)およびGPSの線路長L3=4.00(cm)、NO−13においてVICSの線路長L2=6.00(cm)およびGPSの線路長L3=4.50(cm)、NO−14においてVICSの線路長L2=6.50(cm)およびGPSの線路長L3=4.50(cm)である。また、ETC用分波線路の線路長はVICS帯域のフィルタ中心周波数から3.3(GHz)離れており、さらに図16からわかるようにETC用フィルタは、GPS帯域およびVICS帯域でのインピーダンスが大きいので、ETCの線路長を零とした。したがって図4に示したトリプレクサ400では、ANT端子400と第3の帯域通過フィルタ414との間に分波線路を接続せずに、ANT端子400と第3の帯域通過フィルタ414とを直接接続する導電部材434にて接続し、分波線路としての線路長を零としている。
【0087】
図4に示したトリプレクサ400において、図18のNO−14で示した組み合わせの線路長(L2=6.50(cm)、L3=4.50(cm))での第1の帯域通過フィルタ410(GPS)における分波器特性1900(実線)と、トリプレクサ400における分波線路の各線路長を仮に全て零とした場合(L=0)、つまり分波線路を設けない場合のそれぞれの分波器特性1910(破線)とを図19に示す。同様にトリプレクサ400において、図18のNO−14で示した線路長(L2=6.50(cm)、L3=4.50(cm))での第2の帯域通過フィルタ412(VICS)における分波器特性2000(実線)と、トリプレクサ400における分波線路の各線路長を仮に全て零とした場合(L=0)の分波器特性2010(破線)とを図20に示す。同様にトリプレクサ400において、図18のNO−14で示した線路長(L2=6.50(cm)、L3=4.50(cm))での第3の帯域通過フィルタ414(ETC)における分波器特性2100(実線)と、トリプレクサ400における分波線路の各線路長を仮に全て零とした場合(L=0)の分波器特性2110(破線)とを図20に示す。
【0088】
このように図4に示した実施例におけるGPS用分波線路420の線路長は、図18から略(3.5〜4.5)(cm)、VICS用分波線路422の線路長は略(7.0〜6.0)(cm)およびETC用分波線路の線路長は0(cm)であることがわかる。
【0089】
図18のNO−14で示した分波線路の線路長の組み合わせの場合における各部の合成インピーダンスIMPと、各フィルタの中心周波数における周波数特性とを図22に示し、GPS用分波線路の線路長を4.5(cm)としVICS用分波線路の線路長を6.5(cm)としETC帯域に対する線路長を零としたときの分波器(DUP)特性値(周波数特性)を図23に示す。各フィルタの単体特性の場合と、分波器を構成した場合との中心周波数における損失の差を0.9(dB)以下にするには、合成インピーダンスIMPが0.15+j1.48以上になることが必要であることが図17からわかるので、合成インピーダンスの絶対値が1.5以上必要であることを基準とする。図18で示した組み合わせNO−14の場合の合成インピーダンスは、ETCが0.22−j2.70、VICSが1.27+j4.88、GPSが0.08+j2.45となっているので、合成インピーダンスの絶対値が1.5以上必要であることの条件を満足する。このように各フィルタの特性の変動は少なく、実用に耐えられる特性が得られている。
【0090】
以上、図4に示したトリプレクサ400において、GPS用帯域(1574〜1577(MHz))の通過フィルタとして第1の帯域通過フィルタ410と、VICS用帯域(2498〜2502(MHz))の通過フィルタとして第2の帯域通過フィルタ412と、ETC用帯域(5780〜5820)(MHz))の通過フィルタとして第3の帯域通過フィルタ414とを並列接続した分波器(トリプレクサ)の特性を、最も関係する各フィルタの分波線路の線路長の決定手法にて改善し、これにより構成されたトリプレクサ400の有効性を説明した。
【0091】
図19〜図20に示したように各帯域の通過特性において中心周波数が最も高く、信号を通過する帯域通過フィルタにおいて、GPS帯域、VICS帯域およびETC帯域の周波数間隔のように、周波数帯域間隔が離れている3つの帯域通過フィルタにてトリプレクサを構成した場合に、他の帯域とはより周波数帯域が離れているETC帯域用フィルタであって、帯域が一番高いETC帯域用フィルタの特性を、他の帯域通過フィルタ(GPS帯域、VICS帯域)に接続した分波線路420,422の線路長を特定したことにより改善することができた。
【0092】
GPS用分波線路420の線路長を(3.5〜4.5)(cm)に構成し、VICS用分波線路422の線路長を(7.0〜6.0)(cm)に構成し、さらにETC用分波線路の線路長を0(cm)とすること、つまりETC帯域用フィルタ414を分波線路を介さずにANT端子440に接続した構成とすることを説明した。このような構成によりGPS帯域、VICS帯域およびETC帯域のそれぞれの特性を十分満足するトリプレクサ400を得ることができた。
【0093】
従来はデュプリケートの分波器はあったが、実施例のような3つの周波数帯域に対応するトリプレクサの分波器は無かった。最近はアンテナが統合化され、さらにフィーダ線を削減するため一本化されたフィーダ線の使用が要求されている。従来では3種類の周波数帯域に対応するためには切替スイッチ方式やハイブリッド方式で分配合成する必要があった。この場合、余分なロスが増加し、特性を劣化させ、さらに個々のBPFも必要となり、小型化が困難であった。しかし本実施例における分波器(トリプレクサ400)はワンチップ化されて小型化されるとともにフィーダ線およびアンテナ22を1本化することができる。
【0094】
上記実施例において、図23に示したように、GPS用分波線路の線路長を4.5(cm)としVICS用分波線路の線路長を6.5(cm)としETC帯域に対する線路長を零としたときの分波器(DUP)特性値(周波数特性)は、周波数1.60(GHz)では−2.2(dB)、周波数2.50(GHz)では−1.8(dB)、周波数、5.80(GHz)では−0.6(dB)と、図15に示したフィルタ単体特性におけるそれぞれ−2.2(dB),−1.7(dB),−0.5(dB)とほぼ同等の良好な特性が得られている。また、とくにETC帯域において、図15に示したように各分波線路の線路長を仮に全て零にした場合には、周波数5.80(GHz)で−12.7(dB)であるのに対し、線路長4.5(cm)−6.5(cm)−0の分波器(DUP)特性値では同帯域−0.6(dB)に大幅に改善している。
【0095】
図4に示した上記実施例では、ETC帯域用の第3の帯域通過フィルタ44はLCフィルタで回路構成したが、これに代えてSAWフィルタを用いて構成することができる。この場合の実施例を図24を参照して説明する。本実施例では、上記実施例で説明した構成と同一構成について同じ参照符号を付し、またその詳細説明を省略する。
【0096】
本実施例におけるトリプレクサ2400は、アンテナ端子440にETC帯域用のSAWフィルタが形成されている第3の帯域通過フィルタが直接接続線路により直接接続され、他端側は第3端54に接続されている。このトリプレクサ2400は、図25にその主要部の外観構成を示すように、GPS用のSAWフィルタとして形成した第1の帯域通過フィルタ410と、VICS用のSAWフィルタとして形成した第2の帯域通過フィルタ412と、ETC用のSAWフィルタとして形成した第3の帯域通過フィルタ2410とを同一の圧電基板2500上に一体形成し、トリプレクサ2400の圧電基板2500を積層パッケージ2510上に不図示のゴムや樹脂等の弾性部材を介挿して配設して、全体として分波器モジュールを形成している。
【0097】
第1の帯域通過フィルタ410の回路は、ボンディングワイヤ510,512によって積層パッケージ502の第4層2520に形成された電極516,518にそれぞれ接続され、第2の帯域通過フィルタ412の回路は、ボンディングワイヤ520,522によって積層基板パッケージ502の第4層2520に形成された電極524,526にそれぞれ接続されている。さらに第3の帯域通過フィルタ2410の回路は、ボンディングワイヤ2522,2524によって積層基板パッケージ2510の第4層2520に形成された電極2526,2528にそれぞれ接続されている。
【0098】
積層基板パッケージ2510は、その下方側から第1層基板2530、第2層基板2532、第3層基板2534および第4層基板2520が積層されて形成され、同図において第4層基板の上に形成される第5層基板の図示を省略して示している。その第5層基板は圧電基板2500を密封するためにその周囲を覆い、そのさらに上部に不図示の封入部材により圧電基板2500を封止する。
【0099】
第3の帯域通過フィルタ2410の回路構成を図26に示す。同図において3つのSAW共振器S1,S2,S3が端子T1,T3間に直接に接続されて直列腕を形成し、さらに4つのSAW共振器P1,P2,P3,P4の一端がそれぞれ接続点B1,B2,B3,B4に接続されて並列腕を形成し、SAW共振器P1,P2,P3,P4の他端が接続点B5に接続され、接続点B5は有極用インダクタLPを介して接続点B6に接続されている。接続点B5は端子T2,T4に接続されている。第3の帯域通過フィルタ2410における各SAW共振器S1,S2,S3,P1,P2,P3,P4は、圧電基板2500(図25)上にすだれ状電極がそれぞれ形成されて配置され、インダクタLPは図25にも示したように圧電基板500と積層基板パッケージを接続するボンディングワイヤやバンプ接続などにより形成されて配置されている。
【0100】
第3の帯域通過フィルタ2410の各素子構成を図27に示す。図示するように直列腕のSAW共振器S1,S2,S3の交差長はそれぞれ30(μm)であり、対数はそれぞれ90本のすだれ状電極にて構成されている。また、並列腕のSAW共振器P1,P2,P3,P4の交差長はそれぞれ25(μm)、35(μm)、35(μm)、25(μm)であり、対数はそれぞれ25(本)、35(本)、35(本)、25(本)のすだれ状電極にて構成されている。また有極用インダクタLPは0.01(nH)にて構成される。なお、第1および第2の帯域通過フィルタ410,412の各構成は、図6、図7、図9および図10で説明した素子構成と同じでよい。
【0101】
本実施例におけるトリプレクサ2400の積層基板パッケージ2510および第1の帯域通過フィルタ410部分は図12で説明した構造と同じ構造でよく、また、第2の帯域通過フィルタ412部分は図13で説明した構造と同じ構造でよい。本実施例では、積層基板パッケージ2510および第3の帯域通過フィルタ2410部分の断面図を図28に示す。図示するように、第1層基板2530と第4層基板2520とを貫通するスルーホール2800によりANT端子440と電極2526とが接続されている。さらに、第4層基板2520から第1層基板2530までを貫通するスルーホール2810により電極2528と第3端54とが接続されている。スルーホール2800および2810内は導電性の金属等が充填されている。このように本実施例では、同一の圧電基板上に3つのSAWフィルタ410,412,2410を形成して積層基板パッケージ2510に収容してトリプレクサ24を形成している。
【0102】
このトリプレクサ2400の特性を、図18に示した組み合わせNO−14の線路長(L2=6.50(cm)、L3=4.50(cm))での第1の帯域通過フィルタ410(GPS)における分波器特性2900(実線)と、トリプレクサ2400における分波線路の各線路長を仮に全て零とした場合(L=0)、つまり分波線路を設けない場合のそれぞれの分波器特性2910(破線)とを図29に示す。同様にトリプレクサ2400において、図18に示した組み合わせNO−14の線路長(L2=6.50(cm)、L3=4.50(cm))での第2の帯域通過フィルタ412(VICS)における分波器特性3000(実線)と、トリプレクサ2400における分波線路の各線路長を仮に全て零とした場合(L=0)の分波器特性3010(破線)とを図30に示す。同様にトリプレクサ2400において、組み合わせNO−14で線路長(L2=6.50(cm)、L3=4.50(cm))での第3の帯域通過フィルタ2410(ETC)における分波器特性3100(実線)と、トリプレクサ2400における分波線路の各線路長を仮に全て零とした場合(L=0)の分波器特性3110(破線)とを図31に示す。このように本実施例においても、分波線路の各線路長を決定することにより各帯域において良好な分波特性が得られることがわかる。
【0103】
次に、GPS用帯域(1574〜1577(MHz))の第1の帯域通過フィルタおよびVICS用帯域(2498〜2502(MHz))用の第2の帯域通過フィルタに加えて、たとえば、近距離・超高速通信用のUWB(Ultra Wide Band)などにて採用される3.5(GHz)(3440〜3520(MHz))帯の第3の帯域通過フィルタを備えるトリプレクサの実施例を説明する。
【0104】
本実施例におけるトリプレクサは、帯域間隔が第2の帯域通過フィルタと第3の帯域通過フィルタとの間隔が1(GHz)である点で前述の実施例における帯域間隔(3.3(GHz))と異なる。本実施例では前述の実施例と同様に、通過帯域の周波数が一番高く構成している第3の帯域通過フィルタの特性に着目し、第3の帯域通過フィルタの特性を改善するように、第1の帯域通過フィルタおよび第2の帯域通過フィルタにそれぞれ接続する分波線路の線路長を決定する。これにより、各フィルタの互いの干渉を改善し、3個の帯域通過フィルタを並列接続して1本のアンテナを共用し、3つの帯域共に高性能の特性となる分波器(トリプレクサ)が構成される。
【0105】
詳しくは図32に示すように本実施例におけるトリプレクサ3200は、図24を参照して説明した前述の実施例における同様の構成の第1の帯域通過フィルタ410(”Fi(1.6)”と略記する場合がある)と、第2の帯域通過フィルタ412(”Fi(2.5)”と略記する場合がある)とがそれぞれANT端子440に第1および第2の分波線路3210,3212を介して接続されている。さらにトリプレクサ3200は、UWB用の帯域にて使用される第3の帯域通過フィルタ3214(”Fi(3.5)”と略記する場合がある)がATN端子440および第3端54に接続されている。なお、前述の実施例で説明した構成と同一構成について同じ参照符号を付し、またその詳細説明を省略する。
【0106】
第3の帯域通過フィルタ3214の回路構成を図33に示す。同図において4つのSAW共振器S1,S2,S3,S4が端子T1,T3間に直接に接続されて直列腕を形成し、さらに4つのSAW共振器P1,P2,P3,P4の一端がそれぞれ接続点B1,B2,B3,B4に接続されSAW共振器P1,P2,P3,P4の他端が接続点B5に接続されて並列腕を形成し、接続点B5は有極用インダクタLPを介して接続点B6に接続されている。接続点B5は端子T2,T4に接続されている。第3の帯域通過フィルタ3214における各SAW共振器S1,S2,S3,S4,P1,P2,P3,P4は、圧電基板(図示を省略する)上にすだれ状電極がそれぞれ形成されて配置され、インダクタLPは圧電基板500と積層基板パッケージとを接続するボンディングワイヤやバンプ接続等により形成されて配置されている。
【0107】
第3の帯域通過フィルタ3214の各素子構成を図34に示す。図示するように直列腕のSAW共振器S1,S2,S3の交差長はそれぞれ30(μm)でありSAW共振器S4の交差長は90(μm)であり、対数はそれぞれ90本のすだれ状電極にて構成されている。また、並列腕のSAW共振器P1の交差長は25(μm)であり対数が25本のすだれ状電極にて構成されている。また、SAW共振器P2,P3,P4の交差長はそれぞれ50(μm)であり対数がそれぞれ50本のすだれ状電極にて構成されている。また有極用インダクタLPは0.5(nH)にて構成される。このような構成により中心周波数が3.5(MHz)で、通過帯域が周波数(3440〜3520(MHz))の帯域通過フィルタが構成されている。なお、第1および第2の帯域通過フィルタ410,412の各構成は、図6、図7、図9および図10で説明した構成と同じでよい。
【0108】
各フィルタの単体構成の中心周波数における特性値と、各分波線路3210,3212の線路長を仮に零として各フィルタを3個直接に並列接続した場合の3個並列時特性値とを図35に示す。中心周波数におけるフィルタ単体特性と線路長零における分波器特性(3個並列特性)との差は図35から、GPS帯の周波数1.6(GHz)において、GPS(Fi(1.6))の単体特性−1.8(dB)と3個並列特性−3.5(dB)との差が1.7(dB)であり、VICS帯の周波数、2.5(GHz)において、VICS(Fi(2.5))の単体特性−1.7(dB)と3個並列特性の−5.2(dB)との差が3.5(dB)であり、UWB帯の周波数3.5(GHz)において、UWB帯の第3の帯域通過フィルタ3214(Fi(3.5))の単体特性の−2.0(dB)と3個並列特性−7.7(dB)との差が5.7(dB)である。これら単体フィルタ特性とその分波器特性(3個並列特性)の差は零に近いほうが望ましい。
【0109】
第1、第2および第3の帯域通過フィルタ410,412,3214の1.3〜4.5(GHz)の帯域でのフィルタ単体特性と、各フィルタを用いて分波線路の線路長を仮に零として分波器を構成した場合の分波器特性とをそれぞれのフィルタについて図36〜図38に示す。図36には第1の帯域通過フィルタ410のフィルタ単体特性3600が実線にて示され分波器構成時の分波器特性3610が破線にて示されている。また図37には第2の帯域通過フィルタ412のフィルタ単体特性3700が実線にて示され分波器構成時の分波器特性3710が破線にて示されている。さらに図38には第3の帯域通過フィルタ3214のフィルタ単体特性3800が実線にて示され分波器構成時の分波器特性3810を破線にて示している。
【0110】
単体フィルタとその分波器構成時との特性差は零が望ましいので、この中心周波数における単体フィルタと、分波器特性の差が可能な限り小さくなるように各フィルタに直列接続する分布定数線路である分波線路3210,3212の線路長を以下のように設定する。
【0111】
まず、中心周波数における第3の帯域通過フィルタ3214のフィルタ単体特性3800と、分波器構成時の分波器特性3810との差が図38に示すように他のフィルタよりも一番大きい原因は、合成インピーダンスZIN(23)が低いからである。
【0112】
各単体フィルタ時のインピーダンス特性を図39に示し、分波線路の線路長を仮に全て零として分波器を構成した場合(図35の3個並列特性時)の各合成インピーダンスZIN(23)を図40に示す。図38に示したように中心周波数における単体フィルタ時と分波器構成時との特性差が第3の帯域通過フィルタ3214の場合に一番大きい原因は、中心周波数におけるUWB帯のFi(3.5)の合成インピーダンスが低いからである。この合成インピーダンスZIN(23)は図40に示すように、周波数3.5(GHz)において、GPS帯のFi(1.6)の合成インピーダンスがZIN(23)(GPS)=0.36−j0.43であり、VICS帯のFi(2.5)の合成インピーダンスがZIN(23)(VICS)=0.23−j0.39であり、UWB帯のFi(3.5)の合成インピーダンスがZIN(23)(UWB)=0.01−j0.29である。
【0113】
このUWB帯のFi(3.5)における合成インピーダンスZIN(23)=0.01−j0.29は、周波数3.5(GHz)(FREQ=3.5(GHz))におけるFi(1.6)およびFi(2.5)の単体インピーダンスの値によるものである。各単体フィルタの各中心周波数(1.6(GHz), 2.5(GHz), 3.5(GHz))におけるインピーダンス特性を図39に示す。図示するようにFREQ=3.5(GHz)におけるFi(1.6)の単体インピーダンスの値はFi(1.6)=0.00−j0.51であり、Fi(2.5)の単体インピーダンスの値はFi(2.5)=0.03−j0.70である。
【0114】
通常、この合成インピーダンスは、Fi(1.6)の場合、1.6(GHz)において、Fi(1.6)=0.0l−j0.72でフィルタ単体特性と分波器構成時特性との差が1.7(dB)となり、Fi(2.5)の場合、2.5(GHz)においてFi(2.5)=0.00−j0.39でフィルタ単体特性と分波器構成時特性との差が3.5(dB)になるので、Fi(1.6)と同程度にするにはFi(3.5)の周波数3.5(GHz)におけるFi(3.5)の合成インピーダンスをFi(1.6)の合成インピーダンスと同程度にする必要がある。
【0115】
具体的には、合成インピーダンスの絶対値で0.72以上必要である。このFi(3.5)の3.5(GHz)における合成インピーダンスを絶対値で0.72以上にするために、Fi(1.6)およびFi(2.5)の分波線路のそれぞれの線路長を決定する。
【0116】
図32に戻ってさらに詳細に説明すると、第2の帯域通過フィルタ412(Fi(2.5))と第2の分波線路3212とを直列接続した場合の第2の分波線路3212の入力端(ANT端子24)からの入力インピーダンスZIN(2)は式(18)で与えられる。すなわち図16に示した特性値を式(12)に入れて整理すると入力端からの入力インピーダンスZIN(2)は式(18)で示される。ここで、図39に示したFi(2.5)のインピーダンス特性から、ZIN(R2)はZIN(R2)=0.03−j0.70≒−j0.70とした。
【0117】
【数20】
IN(2)=j(SIN(θ2)−0.70*SIN(θ2))/(COS(θ2)+0.70*SIN(θ2)) (18)
ここでθ2=β2L2、β2=(2π/λ)、L2=Fi(2.5)フィルタに接続される線路の線路長である。
【0118】
次に第1の帯域通過フィルタ410(Fi(1.6))と第1の分波線路3210とを直列接続した場合の第1の分波線路3210の入力端(ANT端子24)からの入力インピーダンスZIN(3)は式(19)で与えられる。ここで、図39に示したFi(1.6)のインピーダンス特性から、ZIN(R3)はZIN(R3)=0.00−j0.51≒−j0.51とした。
【0119】
【数21】
IN(3)=j(SIN(θ3)−0.51*COS(θ3))/(COS(θ3)+0.51*SIN(θ3)) (19)
ここでθ3=β3L3、β3=(2π/λ)、L3=Fi(1.6)フィルタに接続される線路の線路長である。
【0120】
式(5)および図3のZIN(23)は式(20)になることがわかる。
【0121】
【数22】
ABS(ZIN(23))=ABS(ZIN(2)*ZIN(3)/(ZIN(2)+ZIN(3)) (20)
ここでABS(ZIN(23))はZIN(23)の絶対値である。
【0122】
式(18)および式(19)に基づいて合成インピーダンスZIN(23)を計算した結果を図41に示す。図41は、Fi(2.5)用の第2の分波線路3212の線路長L2を4.1〜4.6(cm)に変化させ、また、Fi(1.6)用の第1の分波線路3210の線路長L3を1.7(cm)、1.8(cm)、2.0(cm)に変化させた場合の合成インピーダンスZIN(23)を示している。この場合、第3の帯域通過フィルタ3214(Fi(3.5))に対する分波線路の線路長は零、つまり分波線路を接続しない状態で示している。同図から第2の分波線路3212の線路長L2を4.1〜4.6(cm)の範囲で合成インピーダンスZIN(23)の絶対値が0.72以上になり、単体特性と分波器構成時特性との差がFi(1.6)の場合の1.7(dB)と同等またはそれ以下になることがわかる。
【0123】
さらに、Fi(2.5)用の第2の分波線路3212の線路長L2を4.1〜4.6(cm)に変化させ、また、Fi(1.6)用の第1の分波線路3210の線路長L3を1.7(cm)、1.8(cm)、2.0(cm)に変化させた場合の各中心周波数(3.5(GHz),2.5(GHz),1.6(GHz))における各フィルタ(Fi(3.5),Fi(2.5),Fi(1.6))の特性値を図42に示す。
【0124】
合成インピーダンスZIN(23)の基準の0.72を超えているので、単体特性からの変化は(L2,L3)=(4.0, 1.8)、(L2,L3)=(4.6, 1.8)、(L2,L3)=(4.0, 2.0)(cm)の組み合わせを除いて、2.0(dB)以下となり、実用上問題のない特性値が得られる。このように、図41からFi(1.6)用分波線路3210の線路長を1.7〜2.0(cm)に設定し、Fi(2.5)用分波線路3212の線路長を4.1〜4.6(cm)に設定し、第3の帯域通過フィルタ3214(Fi(3.5))には分波線路を接続せず、ANT端子440に直接接続したトリプレクサ3200が構成される。
【0125】
このようにして、たとえば、Fi(1.6)の第1の分波線路3210の線路長を2.0(cm)、Fi(2.5)の第2の分波線路3212の線路長を4.5(cm)で構成した場合のトリプレクサ3200の特性を各フィルタFi(1.6)、Fi(2.5)およびFi(3.5)についてそれぞれ図43〜図45に示す。図43にFi(1.6)の特性4300を示し、図44にFi(2.5)の特性4400を示し、図45にFi(3.5)の特性4500を示す。いずれのフィルタ特性4300,4400,400もそれぞれ図36〜図38に示したフィルタ単体特性3600,3700,3800と同等の分波器特性が得られていることがわかる。
【0126】
図46に本実施例におけるFi(1.6)の線路長=2.0(cm)、Fi(2.5)の線路長=4.5(cm)、Fi(3.5)の線路長=0にした場合の分波特性を示す。図示するように、図35に示したフィルタ単体特性および全分波線路の線路長を零とした場合の特性と比較しても、図46では良好な特性値が得られていることが示されている。Fi(1.6)、Fi(2.5)、Fi(3.5)では、それぞれ中心周波数で−2.8(dB)、−1.3(dB)および−3.6(dB)の良好な通過特性が得られている。
【0127】
以上、説明したように、GPS用帯域通過フィルタ(1574〜1577(MHz))のFi(1.6)と、VICS用帯域通過(2498〜2502(MHz))のFi(2.5)と、Fi(3.5)帯域通過フィルタ(3440〜3520(MHz))のFi(3.5)とを並列接続した分波器(トリプレクサ)の特性が改善がされた。このように、各フィルタの帯域間隔が1(GHz)の場合も、周波数が最も高い周波数のFi(3.5)のフィルタの特性を他のフィルタに接続した分波線路の線路長を適切に設定することにより改善することができた。
【0128】
また、Fi(1.6)帯域の特性、Fi(2.5)帯域の特性およびFi(3.5)帯域の各特性において、本実施例のように構成したトリプレクサ(分波器)3200によって各フィルタの単体特性を十分維持することができる。
【0129】
【発明の効果】
このように本発明によれば、1本のアンテナを入出力端子に接続して共用する分波器が提供され、無線周波数帯域に応じた3個のフィルタを有し、これら3個の帯域がお互いに干渉しないように3個のフィルタを並列接続した分波器のトリプレクサが提供される。この場合、第1の帯域通過フィルタと第2の帯域通過フィルタに接続する分波線路の最適線路長をそれぞれ設定しているので、それぞれ単体フィルタの特性に較べて特性劣化が少ない分波器特性を有する高性能なトリプレクサ(分波器)が提供される。また、分波線路は、ストリップ線路やマイクロストリップ線路などの分布定数線路を分波器内に形成して、良好な特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理説明するための分波器の基本構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した第2および第3の分波線路と第2および第3のフィルタとを合成インピーダンス回路とみなした場合のブロック図である。
【図3】分波器の従来構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明が適用されたトリプレクサ(分波器)を示すブロック図である。
【図5】トリプレクサの概略外観を示す図である。
【図6】第1の帯域通過フィルタ(GPS方式用SAWフィルタ)の構成を示す図である。
【図7】第2の帯域通過フィルタ(VICS方式用SAWフィルタ)の構成を示す図である。
【図8】第3の帯域通過フィルタ(ETC方式用LCフィルタ)の構成を示す図である。
【図9】第1の帯域通過フィルタ(GPS方式用SAWフィルタ)の素子構成を示す図である。
【図10】第2の帯域通過フィルタ(VICS方式用SAWフィルタ)の素子構成を示す図である。
【図11】第3の帯域通過フィルタ(ETC方式用LCフィルタ)の素子構成を示す図である。
【図12】第1の帯域通過フィルタ部分の断面を示す断面図である。
【図13】第2の帯域通過フィルタ部分の断面を示す断面図である。
【図14】第3の帯域通過フィルタ部分の断面を示す断面図である。
【図15】各フィルタの単体特性値と、各線路長を零とした場合の分波器特性とを示す図である。
【図16】単体フィルタのインピーダンス特性を示す図である。
【図17】各中心周波数における分波器特性の合成インピーダンスを示す図である。
【図18】ETC帯の5.8(GHz)におけるGPS用およびVICS用各分波線路の線路長と、合成インピーダンスとを示す図である。
【図19】第2の分波線路の線路長をL2=6.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=4.5(cm)とした場合の分波器特性と、各線路長を零とした場合の分波器特性とを第1の帯域通過フィルタについて示すグラフである。
【図20】第2の分波線路の線路長をL2=6.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=4.5(cm)とした場合の分波器特性と、各線路長を零とした場合の分波器特性とを第2の帯域通過フィルタについて示すグラフである。
【図21】第2の分波線路の線路長をL2=6.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=4.5(cm)とした場合の分波器特性と、各線路長を零とした場合の分波器特性とを第3の帯域通過フィルタについて示すグラフである。
【図22】第2の分波線路の線路長をL2=6.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=4.5(cm)とした場合の合成インピーダンスを示す図である。
【図23】第2の分波線路の線路長をL2=6.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=4.5(cm)とした場合の分波器特性を示す図である。
【図24】第3の帯域通過フィルタのETC帯用フィルタをSAWフィルタで構成した他の構成例のトリプレクサ(分波器)を示すブロック図である。
【図25】図24に示したトリプレクサの概略外観を示す図である。
【図26】ETC用SAWフィルタの構成例を示す図である。
【図27】ETC用SAWフィルタの素子構成例を示す図である。
【図28】図24に示したトリプレクサにおける第3の帯域通過フィルタ(ETC用SAWフィルタ)部分の断面を示す断面図である。
【図29】第2の分波線路の線路長をL2=6.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=4.5(cm)とした場合の分波器特性と、各線路長を零とした場合の分波器特性とを第1の帯域通過フィルタについて示すグラフである。
【図30】第2の分波線路の線路長をL2=6.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=4.5(cm)とした場合の分波器特性と、各線路長を零とした場合の分波器特性とを第2の帯域通過フィルタについて示すグラフである。
【図31】第2の分波線路の線路長をL2=6.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=4.5(cm)とした場合の分波器特性と、各線路長を零とした場合の分波器特性とを第3の帯域通過フィルタについて示すグラフである。
【図32】第3の帯域通過フィルタを3.5(GHz)帯のSAWフィルタで構成したさらに他の構成例のトリプレクサ(分波器)を示すブロック図である。
【図33】図32に示した第3の帯域通過フィルタの構成例を示す図である。
【図34】図32に示した第3の帯域通過フィルタの素子構成例を示す図である。
【図35】各フィルタの単体特性と、各線路長を零とした場合の3個並列時特性とを示す図である。
【図36】第1の帯域通過フィルタの単体特性と、各分波線路の線路長を零とした場合の分波器特性とを示すグラフである。
【図37】第2の帯域通過フィルタの単体特性と、各分波線路の線路長を零とした場合の分波器特性とを示すグラフである。
【図38】第3の帯域通過フィルタの単体特性と、各分波線路の線路長を零とした場合の分波器特性とを示すグラフである。
【図39】単体フィルタのインピーダンス特性を示す図である。
【図40】3個並列時の各合成インピーダンスを示す図である。
【図41】3.5(GHz)におけるFi(1.6)、Fi(2.5)用分波線路の各線路長と、各合成インピーダンスとを示す図である。
【図42】各線路長における各フィルタの特性値を示す図である。
【図43】第2の分波線路の線路長をL2=4.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=2.0(cm)とした場合の第1の帯域通過フィルタ(Fi(1.6))の分波器特性を示すグラフである。
【図44】第2の分波線路の線路長をL2=4.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=2.0(cm)とした場合の第2の帯域通過フィルタ(Fi(2.5))の分波器特性を示すグラフである。
【図45】第2の分波線路の線路長をL2=4.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=2.0(cm)とした場合の第3の帯域通過フィルタ(Fi(3.5))の分波器特性を示すグラフである。
【図46】第2の分波線路の線路長をL2=4.5(cm)、第1の分波線路の線路長をL3=2.0(cm)とした場合の各中心周波数における3個並列時特性値を示す図である。
【符号の説明】
20 分波器
24 アンテナ(ANT)端子
30, 32, 34 第1、第2、第3の分波線路
40, 42, 44 第1、第2、第3のフィルタ
400 トリプレクサ(分波器)
420, 422 第1、第2の分波線路
410, 412, 414 第1、第2、第3の帯域通過フィルタ
440 アンテナ(ANT)端子
500 圧電基板
502 積層基板パッケージ
2400 トリプレクサ(分波器)
2410 第3の帯域通過フィルタ
3200 トリプレクサ(分波器)
3214 第3の帯域通過フィルタ

Claims (20)

  1. 無線周波数帯信号をそれぞれ周波数帯が異なる3つの周波数帯域で分波する分波器において、該分波器は、
    アンテナが接続されて前記無線周波数帯信号を入出力する入出力端子と、
    前記無線周波数帯信号のうち第1の周波数帯の第1の信号を通過する第1のフィルタと、
    前記無線周波数帯信号のうち第2の周波数帯の第2の信号を通過する第2のフィルタと、
    前記無線周波数帯信号のうち第3の周波数帯の第3の信号を通過する第3のフィルタと、
    前記入出力端子と前記第1のフィルタとを接続し、線路長に応じて分波器特性を決定する第1の分波線路と、
    前記入出力端子と前記第2のフィルタとを接続し、線路長に応じて分波器特性を決定する第2の分波線路と、
    前記入出力端子と前記第3のフィルタとを直接接続する接続線とを含み、
    前記第1の分波線路および前記第2の分波線路は、それぞれ前記第3のフィルタの分波器特性に応じて決定した線路長を有することを特徴とする分波器。
  2. 請求項1に記載の分波器において、前記第1の分波線路および第2の分波線路のそれぞれの線路長は、それぞれ前記第3のフィルタの分波器特性を向上させる線路長に設定されていることを特徴とする分波器。
  3. 請求項1に記載の分波器において、前記第1の分波線路および第2の分波線路は、分布定数線路にて形成されていることを特徴とする分波器。
  4. 請求項1に記載の分波器において、前記第1のフィルタ、第2のフィルタおよび第3のフィルタは、それぞれ弾性表面波フィルタであることを特徴とする分波器。
  5. 請求項4に記載の分波器において、前記第1、第2および第3のフィルタを一つの圧電基板に形成したことを特徴とする分波器。
  6. 請求項5に記載の分波器において、前記第1、第2および第3のフィルタを形成した圧電基板を積層基板パッケージ内に備え、該積層パッケージに前記入出力端子を設けたことを特徴とする分波器。
  7. 請求項1に記載の分波器において、前記第1および第2のフィルタはそれぞれ弾性表面波フィルタであり、前記第3のフィルタは誘電体フィルタであることを特徴とする分波器。
  8. 請求項1に記載の分波器において、前記第1のフィルタはGPS用の帯域通過フィルタであり、前記第2のフィルタはVICS用の帯域通過フィルタであることを特徴とする分波器。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の分波器において、前記第3のフィルタは5.8(GHz)帯の帯域通過フィルタであることを特徴とする分波器。
  10. 請求項9に記載の分波器において、前記第3のフィルタはETC用の帯域通過フィルタであることを特徴とする分波器。
  11. 請求項9に記載の分波器において、前記第2の分波線路の線路長が前記第1の分波線路の線路長よりも長いことを特徴とする分波器。
  12. 請求項9に記載の分波器において、前記第1の分波線路の線路長を3.5(cm)ないし4.5(cm)のうちいずれかの線路長に設定したことを特徴とする分波器。
  13. 請求項9に記載の分波器において、前記第2分波線路の線路長を6.0(cm)ないし7.0(cm)のうちいずれかの線路長に設定したことを特徴とする分波器。
  14. 請求項1ないし8のいずれかに記載の分波器において、前記第3のフィルタは3.5(GHz)帯の帯域通過フィルタであることを特徴とする分波器。
  15. 請求項14に記載の分波器において、前記第2の分波線路の線路長が前記第1の分波線路の線路長よりも長いことを特徴とする分波器。
  16. 請求項15に記載の分波器において、前記第1の分波線路の線路長を1.7(cm)ないし2.0(cm)のうちいずれかの線路長に設定したことを特徴とする分波器。
  17. 請求項15に記載の分波器において、前記第2の分波線路の線路長を4.1(cm)ないし4.6(cm)のうちいずれかの線路長に設定したことを特徴とする分波器。
  18. 請求項14に記載の分波器において、前記第3のフィルタは、通過帯域が3.44(GHz)〜3.52(GHz)の帯域通過フィルタであることを特徴とする分波器。
  19. 無線周波数帯信号をそれぞれ周波数帯が異なる3つの周波数帯域で分波する分波器における分波線路の線路長決定方法において、前記分波器は、
    アンテナが接続されて前記無線周波数帯信号を入出力する入出力端子と、前記無線周波数帯信号のうち第1の周波数帯の第1の信号を通過する第1のフィルタと、前記無線周波数帯信号のうち前記第1の周波数帯域よりも高い第2の周波数帯の第2の信号を通過する第2のフィルタと、前記無線周波数帯信号のうち前記第2および第2の周波数帯域よりも高い第3の周波数帯の第3の信号を通過する第3のフィルタと、前記入出力端子と前記第1のフィルタとを接続し、線路長に応じて分波器特性を決定する第1の分波線路と、前記入出力端子と前記第2のフィルタとを接続し、線路長に応じて分波器特性を決定する第2の分波線路とを含み、該方法は、
    前記第2および第3の周波数帯域よりも高い第3の周波数帯の通過帯域損失を下げるように、前記入出力端子と前記第3のフィルタとを直接接続し、
    前記第1の分波線路の第1の線路長と、前記第2の分波線路の第2の線路長とを、それぞれ、中心周波数が最も高い前記第3のフィルタの分波器特性に応じて算出したインピーダンスに基づいて決定した線路長に設定することを特徴とする分波器における分波線路の線路長決定方法。
  20. 請求項19に記載の分波器における分波線路の線路長決定方法において、
    前記第1の周波数帯域、第2の周波数帯域および第3の周波数帯域は、それぞれ、互いに1(GHz)以上離れた周波数帯域であることを特徴とする分波器における分波線路の線路長決定方法。
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