JP2005053494A - 紙カップ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】筒状のカップ胴部材と、該筒状のカップ胴部材の底部を密閉する底部材とからなる紙カップにおいて、上記の筒状のカップ胴部材と底部材とを、少なくとも、紙基材、接着剤層、基材フィルムの一方の面に金属または無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性層、酸素吸収性樹脂層、および、最内層を順次に積層して積層材を構成し、更に、該積層材を使用し、これを製函してなることを特徴とする紙カップに関するものである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙カップに関し、更に詳しくは、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、更に、ピンホ−ルの発生を皆無とし、シ−ル不良、液漏れ等を回避し、特に、容器内に残存する酸素や容器壁を透過する酸素による内容物の変質やフレ−バ−低下等を防止し、内容物の変質等を防止すると共に保存性、貯蔵性等に優れた紙カップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、酒類、果汁類、清涼飲料類、乳製飲料類、液体調味料類、その他等の種々の液体飲食物を充填包装するために、種々の形態からなる紙カップが、開発され、提案されている。
而して、近年、バリア性素材として、2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルム、あるいは、2軸延伸ナイロンフィルム等の基材フィルムの一方の面に、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を設けた透明バリア性フィルムが注目され、これをバリア性素材として使用した紙カップが、開発され、提案されている。
すなわち、図10に示すように、先ず、少なくとも、ポリオレフィン系樹脂層61(ヒ−トシ−ル性樹脂層)/紙基材62/接着性樹脂層63/無機酸化物の蒸着膜64を設けた基材フィルム65/ポリオレフィン系樹脂層66(ヒ−トシ−ル性樹脂層)の順で積層する積層材67を製造し、次いで、該積層材67を使用し、これを紙カップの胴部を作るに必要な所定の形状に打ち抜き加工してブランク板68を形成し、次に、該ブランク板68を筒状に巻いてその両側端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分にフレ−ム処理、あるいは、ホットエア−処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在するポリオレフィン系樹脂層(ヒ−トシ−ル性樹脂層)を加熱溶融し、次いで、熱板等によって押圧して胴貼りを行って胴シ−ル部69を形成して、紙カップを構成する筒状のカップ胴部70を製造する。
他方、上記のブランク板68を構成する積層材67と同じ積層材67を使用し、これを円形状に打ち抜き加工して底部を構成する円板71を製造し、次いで、該円板71の外周部を筒状に起立成形して、起立成形部72を有する底部73を製造する。
次いで、上記で製造した筒状のカップ胴部70に、同じく上記で製造した底部73を挿入し、しかる後その筒状のカップ胴部70と底部73とを、その接合部分に熱風等を吹きつけてその接合部分に存在するポリオレフィン系樹脂層(ヒ−トシ−ル性樹脂層)61、66を加熱溶融し、次いで、カ−ル用型により筒状のカップ胴部70の先端部74を内方に折り曲げて、上記の底部73を構成する起立成形部72にかぶせて(矢印P3 参照)、上記の筒状のカップ胴部70の先端部74と底部73の起立成形部72との重合部分を内径側からロ−レットによりロ−レットがけすることにより、上記の筒状のカップ胴部70と底部73とを密接着させて、接合部75を形成し、しかる後、上記の筒状のカップ胴部70の底部73を取り付けた側と反対側の先端端部を、上記と同様にカ−ル用型により外方に折り曲げながらカ−ルさせて(P4 参照)、上端フランジ部76を形成して、紙カップKを製造している(例えば、特許文献1参照。)。
而して、図示しないが、上記で製造した紙カップを内容物を充填するメ−カ−等に納入し、次いで、該紙カップを内容物充填機に供給し、しかる後、紙カップ内にその上端の開口部から内容物を充填し、次に、紙カップを構成する上端フランジ部に蓋材等を密接着させてその開口部を密閉して、内容物を充填包装した紙カップ包装体を製造している。
なお、図示しないが、通常、内容物の浸透、液漏れ等を防止するために、筒状のカップ胴部を構成するシ−ル部の内側端面には、例えば、スカイブ・ヘミング処理等を施して端面処理が行われている。
【0003】
【特許文献1】
実開平2−37878号公報(実用新案登録請求の範囲、実施例等)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような紙カップにおいて、バリア性素材として、2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルム、あるいは、2軸延伸ナイロンフィルム等の基材フィルムの一方の面に、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を設けた透明バリア性フィルムを使用する場合、該透明バリア性フィルムを構成する酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜は、ガラス質の、非可撓性の薄膜であって、柔軟性に著しく欠ける薄膜であることから、例えば、外部から、熱、あるいは、圧等の作用により簡単にクラック等が発生するという問題点があり、而して、一度、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜にクラック等が発生すると、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に著しく欠け、もはや、その使用に耐えないという欠点がある。
例えば、紙基材と上記の透明バリア性フィルムを、その酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜の面を対向させて、アンカ−コ−ト剤層等を介して、例えば、低密度ポリエチレン樹脂等を使用し、これを330℃位に加熱し、押出機等から溶融押出しながら、その溶融押出樹脂層を介して積層すると、上記の溶融押出樹脂層による加熱温度等により、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜にクラック等を発生し易く、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に著しく劣化させるものである。
而して、上記のようにクラック等が発生した紙カップにおいては、カップ内に残存する酸素を除去したり、あるいは、カップ壁を透過する酸素を遮断したりする機能は消失し、内容物の酸化劣化、変質・変色、フレ−バ−低下、ガビ・好気性菌の繁殖、その他等を防止することは極めて困難になるというものである。
【0005】
また、上記のような紙カップを構成する部材として、少なくとも、ポリオレフィン系樹脂層(ヒ−トシ−ル性樹脂層)/紙基材/接着性樹脂層/無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルム/ポリオレフィン系樹脂層(ヒ−トシ−ル性樹脂層)を順次に積層した積層材を使用する場合においては、上記の内面層を構成するポリオレフィン系樹脂層(ヒ−トシ−ル性樹脂層)として、通常、低密度ポリエチレン樹脂を使用してヒ−トシ−ル性樹脂層を形成しているが、このような場合には、例えば、その内面にホットエア−等を吹きつける加熱処理により筒状のカップ胴部あるいは底部等を形成する際に、更に、その両者を接合する際に、更にはまた、上端フランジ部等を形成する際に、通常、350℃〜400℃位の加熱温度でヒ−トシ−ルを行い、而して、そのような加熱温度等の条件でヒ−トシ−ルを行うと、紙カップを構成する積層材の内面において、炙りピンホ−ルが、極めて容易に発生するという問題点がある。
そして、上記のようにピンホ−ルが発生すると、シ−ル不良、液漏れ等を発生し、これに伴い内容物の変質と共に保存性、貯蔵性等の安定性に欠けるという問題点があり、場合によっては、その商品価値を著しく低下し、廃棄しなければならないという問題点がある。
【0006】
一般的に、紙カップにおいて発生するピンホ−ルとしては、筒状のカップ胴部と底部とを加熱処理して製函するときに、それらをホットエア−等により炙る際に発生する炙りピンホ−ル等が知られている。
而して、上記の炙りピンホ−ルについてその発生の過程等を含めて以下に更に詳しく説明すると、前述のように、紙カップを製函する際に、まず、紙カップを構成する筒状のカップ胴部あるいは底部等を形成するために、ブランク板あるいは円板の内面あるいは外面に、加熱チャンバ−の吹き出し口からホットエア−を吹きつけて加熱処理を行う。
ところで、上記でブランク板あるいは円板の内面あるいは外面に吹きつけたホットエア−は、その内面にある最内層を構成する樹脂層を溶融するが、更に、ホットエア−による熱は、紙基材まで到達し、該紙基材を加熱し、而して、紙基材が加熱されると、紙基材中に含まれている水分が、加熱され、これが蒸気となって積層材の内外面側に抜けようとし、これにより、紙基材の内外面に積層されている樹脂層等を押し上げて、膨らむという発泡化現象を示す。
更に、ホットエア−による熱が加わると、紙基材に積層されている内面側の樹脂層は、水分の蒸発による蒸気圧に耐えられなくなり、その膨らんだ樹脂層が破れることになり、これにより炙りピンホ−ルが発生するものであると考えられている。
例えば、外面側から、低密度ポリエチレン樹脂層、紙基材、接着性ポリエチレン樹脂層、無機酸化物の蒸着膜を設けた2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルム、低密度ポリエチレンフィルム等を順次に積層した構成からなる積層材を使用し、これを製函して製造した紙カップにおいて、上記の炙りピンホ−ルの発生過程を観察すると、上記と同様に、まず、初期において、内面層を構成する接着性ポリエチレン樹脂層において、これが膨れて発泡化現象を発生し、その膨れにつられるように無機酸化物の蒸着膜を設けた2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルム、更に、低密度ポリエチレンフィルムが膨らんで発泡化し、次いで、最終的に、上記の膨らんで発泡化した気泡が破裂して炙りピンホ−ルが発生することを確認することができるものである。
そこで本発明は、バリア性素材としての透明バリア性フィルムを構成する酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜にクラック等が発生することを防止すると共に炙りピンホ−ル等の発生を皆無とし、これにより、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、ピンホ−ルの発生に伴いシ−ル不良、液漏れ等を回避し、更に、容器内に残存する酸素や容器壁を透過する酸素による内容物の変質やフレ−バ−低下等を防止し、内容物の変質等を防止すると共に保存性、貯蔵性等に優れた紙カップを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような紙カップにおける課題を解決すべく種々研究の結果、少なくとも、紙基材、接着剤層、基材フィルムの一方の面に金属または無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性層、酸素吸収性樹脂層、および、最内層を順次に積層した積層材、あるいは、少なくとも、最外層、紙基材、接着剤層、基材フィルムの一方の面に金属または無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性層、酸素吸収性樹脂層、および、最内層を順次に積層した積層材を製造し、而して、該積層材を使用し、まず、所望の形状にブランク板を打ち抜き、更に、スカイブ・ヘミング等の端面処理を加工してブランク板を形成し、次に、該ブランク板を筒状に巻いてその両側端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分にフレ−ム処理、あるいは、ホットエア−処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在する最内層、あるいは、最外層および最内層を加熱溶融し、次いで、熱板等によって押圧して胴貼りを行って胴シ−ル部を形成して紙カップを構成する筒状のカップ胴部材を製造し、他方、上記のブランク板を構成する積層材と同じ積層材を使用し、これを円形状に打ち抜き加工して、底部を構成する円板を製造し、次いで、該円板の外周部を筒状に起立成形して、起立成形部を有する底部材を製造し、次いで、上記で製造した筒状のカップ胴部材に、同じく上記で製造した底部材を挿入し、しかる後、その筒状のカップ胴部材と底部材とを、その接合部分に熱風等を吹きつけてその接合部分に存在する最内層、あるいは、最外層および最内層を加熱溶融し、次いで、カ−ル用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立成形部にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部材の先端部と底部材の起立成形部との重合部分を内径側からロ−レットによりロ−レットがけすることにより、上記の筒状のカップ胴部材と底部材とを接合させて接合部を形成し、しかる後、上記の筒状のカップ胴部材の底部を取り付けた側と反対側の先端端部を、上記と同様にカ−ル用型により外方に折り曲げながらカ−ルさせて、上端フランジ部を形成して紙カップを製造し、而して、上記で製造した紙カップ内に、その上端の開口部から内容物を充填し、次に、紙カップを構成する上端フランジ部に蓋材等を密接着させてその開口部を密閉して、内容物を充填包装した紙カップ包装体を製造したところ、バリア性層を構成するアルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属または無機酸化物の蒸着膜にクラック等が発生することを防止すると共に低温シ−ルを可能として炙りピンホ−ル等の発生を皆無とし、これにより、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、ピンホ−ルの発生に伴いシ−ル不良、液漏れ等を回避し、更に、容器内に残存する酸素や容器壁を透過する酸素による内容物の変質、変色、フレ−バ−低下等を防止し、その保存性、貯蔵性等に優れた紙カップを製造し得ることを見出して本発明を完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、筒状のカップ胴部材と、該筒状のカップ胴部材の底部を密閉する底部材とからなる紙カップにおいて、上記の筒状のカップ胴部材と底部材とを、少なくとも、紙基材、接着剤層、基材フィルムの一方の面に金属または無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性層、酸素吸収性樹脂層、および、最内層を順次に積層して積層材を構成し、更に、該積層材を使用し、これを製函してなることを特徴とする紙カップに関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記の本発明について以下に図面等を用いて更に詳しく説明する。
まず、本発明にかかる紙カップを構成する積層材等の構成についてその一二例を例示して図面を用いて説明すると、図1、図2および図3は、本発明にかかる紙カップを構成する積層材についてその一に例の層構成を示す概略的断面図である。
次に、本発明にかかる紙カップの構成についてその一例を例示して図面を用いて説明すると、図4、図5、図6、および、図7は、上記の図1に示す積層材を使用し、本発明にかかる紙カップについてその各製函工程における紙カップの構成を示す概略的構成図である。
【0010】
まず、本発明において、本発明にかかる紙カップを構成する積層材Aとしては、図1に示すように、少なくとも、紙基材1、接着剤層2、基材フィルム3の一方の面に金属または無機酸化物の蒸着膜4を設けたバリア性層5、酸素吸収性樹脂層6、および、最内層7の順で順次に積層した構成を基本構造とするものである。
而して、本発明において、本発明にかかる紙カップを構成する積層材としては、具体的には、図2に示すように、少なくとも、最外層8、紙基材1、接着剤層2、基材フィルム3の一方の面に金属または無機酸化物の蒸着膜4を設けたバリア性層5、酸素吸収性樹脂層6、および、最内層7の順で順次に積層した構成からなる積層材A1 を使用することができる。
更に、本発明において、本発明にかかる紙カップを構成する積層材について、具体例を例示すると、図3に示すように、少なくとも、最外層8、紙基材1、接着剤層2、基材フィルム3の一方の面に金属または無機酸化物の蒸着膜4を設けたバリア性層5、酸素吸収性樹脂層6、および、低密度ポリエチレンとメタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体とを使用し、それらを共押出成形して低密度ポリエチレン樹脂層9とメタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体層10とからなる共押出積層樹脂層11により構成した最内層7の順で順次に積層した構成からなる積層材A2 を例示することがてきる。
上記の例示は、本発明にかかる紙カップを構成する積層材についてその一二例を例示したものであり、これによって本発明は限定されるものではない。
【0011】
例えば、本発明においては、図示しないが、上記のような積層材の構成において、バリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜の面は、紙基材側の面、あるいは、最内層側の面のいずれの面に対向させて積層してもよいものであるが、好ましくは、紙基材側の面に対向させて積層することが、例えば、バリア性の効果を発揮すること、あるいは、クラックの発生等を防止するという観点から望ましいものである。
また、例えば、本発明においては、図示しないが、バリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜としては、金属または無機酸化物の蒸着膜の一層からなる単層膜のみならず同種あるいは異種の金属または無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる多層膜あるいは複合膜等でもよく、更にまた、本発明においては、紙カップの包装目的、充填包装する内容物、その使用目的、用途等によって、更に、他の基材を任意に積層して、種々の形態からなる積層材を設計して製造することができるものである。
【0012】
次に、本発明において、本発明にかかる紙カップの構成についてその一例を例示して説明すると、上記の図1に示す積層材Aを使用した例の場合で説明すると、図4に示すように、まず、上記の図1に示す積層材Aを使用し、これを紙カップの胴部を作るに必要な所定の形状、例えば、円錐台形等に合わせて、打ち抜き加工して、ブランク板12を形成し、次に、該ブランク板12を筒状に巻いてその両側端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分にフレ−ム処理、あるいは、ホットエア−処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在する最内層、あるいは、最外層と最内層とを構成する樹脂層を加熱溶融し、次いで、熱板等によって押圧して胴貼りを行って胴シ−ル部13を形成して、紙カップを構成する筒状のカップ胴部材Bを製造する。
他方、本発明においては、図5に示すように、上記のブランク板12を構成する積層材Aと同じ積層材Aを使用し、これを円形状に打ち抜き加工して、底部を構成する円板14を製造し、次いで、該円板14の外周部を筒状に起立成形して、起立成形部15を有する底部材Cを製造する。
【0013】
次いで、本発明においては、図6に示すように、上記で製造した筒状のカップ胴部材Bに、同じく上記で製造した底部材Cを挿入し、しかる後、その筒状のカップ胴部材Bと底部材Cとを、その接合部分に熱風等を吹きつけてその接合部分に存在する最内層、あるいは、最外層と最内層を構成する樹脂層を加熱溶融し、次いで、カ−ル用型(図示せず)により筒状のカップ胴部材Bの先端部16を内方に折り曲げて、上記の底部材Cを構成する起立成形部15にかぶせて(矢印P1 参照)、上記の筒状のカップ胴部材Bの先端部16と底部材Cの起立成形部15との重合部分を内径側からロ−レット(図示せず)によりロ−レットがけすることにより、上記の筒状のカップ胴部材Bと底部材Cとを密接着させて接合部17を形成して、上記の筒状のカップ胴部材Bと底部材Cとからなる紙カップ底部Dを形成する。
しかる後、本発明においては、図7に示すように、上記の筒状のカップ胴部材Bの底部材Cを密接着させて接合部17を形成した側と反対側の先端端部18を、上記と同様にカ−ル用型により外方に折り曲げながらカ−ルさせて(P2 参照)、上端フランジ部19を形成して、本発明にかかる紙カップEを製造する。
而して、図示しないが、上記で製造した紙カップを内容物を充填するメ−カ−等に納入し、次いで、該紙カップを内容物充填機に供給し、しかる後、紙カップ内に、その上端の開口部から内容物を充填し、次に、紙カップを構成する上端フランジ部に蓋材等を密接着させてその開口部を密閉して、内容物を充填包装した紙カップ包装体を製造するものである。
なお、図示しないが、通常、内容物の浸透、液漏れ等を防止するために、筒状のカップ胴部を構成する胴シ−ル部の内側端面には、例えば、スカイブ・ヘミング処理等を施して端面処理が行われている。
上記の例示は、本発明にかかる紙カップについてその一例を例示したものであり、これによって本発明は限定されるものではない。
勿論、本明においては、上記の図2、図3等に示す積層材を使用し、上記と同様にして、上記と同様な紙カップを製造することができる。
【0014】
次に、本発明において、本発明にかかる紙カップ等を構成する材料、製造法等について更に詳しく説明すると、まず、本発明にかかる紙カップを構成する紙基材としては、これが紙カップを構成する基本素材となることから、賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができ、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは、純白ロ−ル紙、クラフト紙、板紙、加工紙、その他等の各種の紙基材を使用することができる。
また、本発明において、上記の紙基材としては、坪量約80〜600g/m2 位のもの、好ましくは、坪量約100〜450g/m2 位の紙基材等を使用することができる。
なお、本発明において、上記の紙基材には、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他等の所望の印刷絵柄を通常の印刷方式にて任意に形成することができるものである。
【0015】
次にまた、本発明において、本発明にかかる紙カップを構成する接着剤層について説明すると、かかる接着剤層としては、紙基材とバリア性層とを密接着させるものであり、本発明においては、溶融押出樹脂層からなる接着剤層、具体的には、例えば、ポリオレフィン系樹脂による1層ないしそれ以上の溶融押出樹脂層からなる接着剤層、あるいは、エチレン−不飽和カルボン酸またはそのエステル化物との共重合体による300℃以下で溶融押出した溶融押出樹脂層からなる接着剤層、その他等を使用することができる。
而して、本発明において、上記の接着剤層を構成するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂、その他等を使用することができる。
具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ−、ポリブテンポリマ−、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他等の樹脂を使用することができる。
【0016】
ところで、本発明において、上記のようなヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂を使用し、ポリオレフィン系樹脂による1層ないしそれ以上の溶融押出樹脂層からなる接着剤層を介して紙基材とバリア性層とを積層する方法としては、例えば、押出機等を使用し、紙基材とバリア性層との層間に、上記のようなヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂の1種ないし2種以上を使用し、これを、アンカ−コ−ト剤層等を介して、単層ないし多層に溶融押出した溶融押出樹脂層からなる接着剤層を介して、紙基材とバリア性層とを積層することができる。
【0017】
具体的には、本発明において、上記のようなヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂を使用し、そのポリオレフィン系樹脂による多層(2層)の溶融押出樹脂層からなる接着剤層を介して紙基材とバリア性層とを積層する方法としては、例えば、予め、バリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜の上に、アンカ−コ−ト剤層を設け、そのアンカ−コ−ト剤層を介して、上記のようなヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂の1種ないし2種以上を使用し、これを、単層ないし多層に溶融押出積層して、厚さ10〜30μmの溶融押出ポリオレフィン系樹脂層を形成し、該溶融押出ポリオレフィン系樹脂層をもって、2層の内の一方のポリオレフィン系樹脂による溶融押出樹脂層からなる接着剤層を形成するものである。
次に、本発明においては、例えば、押出機等を使用し、紙基材と上記で形成した2層の内の一方のポリオレフィン系樹脂による溶融押出樹脂層からなる接着剤層との層間に、上記のようなヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂の1種ないし2種以上を使用し、これを、厚さ10〜30μmに単層ないし多層に溶融押出積層し、その押出積層した厚さ10〜30μmの溶融押出ポリオレフィン系樹脂層をもって、2層の内の他方のポリオレフィン系樹脂による溶融押出樹脂層からなる接着剤層を形成し、而して、上記の2層のポリオレフィン系樹脂による溶融押出樹脂層からなる接着剤層を介して紙基材とバリア性層とを積層することができるものである。
【0018】
上記において、溶融押出ポリオレフィン系樹脂層の膜厚としては、それぞれ10μm〜30μm位が好ましく、而して、2層のポリオレフィン系樹脂による溶融押出樹脂層からなる接着剤層の膜厚としては、20μm〜60μm位が好ましいものである。
なお、本発明においては、バリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜の上に溶融押出積層する溶融押出ポリオレフィン系樹脂層の場合、その膜厚が、30μmより厚くなると、金属または無機酸化物の蒸着膜のバリア性劣化が懸念されるものである。
【0019】
而して、本発明においては、上記のようにバリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜の上に、2層の内の一方のポリオレフィン系樹脂による溶融押出樹脂層からなる接着剤層を積層することにより、該2層の内の一方のポリオレフィン系樹脂による溶融押出樹脂層からなる接着剤層が、バリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜等に対する保護膜として作用し、例えば、上記の溶融押出ポリオレフィン系樹脂による溶融押出樹脂層から構成する2層の内の他方のポリオレフィン系樹脂による溶融押出樹脂層からなる接着剤層を形成する際の溶融押出積層する加熱等に対しても保護膜として作用し、バリア性層を構成する金属または酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属または無機酸化物の蒸着膜等にクラック等が発生することを防止し、それにより、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性等の機能を損なうことがないものである。
また、本発明においては、上記のように溶融押出ポリオレフィン系樹脂層との2層のポリオレフィン系樹脂による溶融押出樹脂層からなる接着剤層を構成することにより、その接着剤層の膜厚を、従来の15μm位の厚さから約20μm〜60μm位に厚くすることができ、これにより、例えば、その内面にホットエア−等を吹きつけて、筒状のカップ胴部材、底部材、あるいは、底部等を形成して製函する際に、紙基材までに熱が伝わるのを防止し、紙カップを構成する積層材の内面において、炙りピンホ−ル等の発生を防止し得るという作用効果を奏するものである。
【0020】
次にまた、本発明において、本発明にかかる紙カップを構成する接着剤層としてのエチレン−不飽和カルボン酸またはそのエステル化物との共重合体による300℃以下で溶融押出した溶融押出樹脂層からなる接着剤層としては、これも、紙基材とバリア性層とを密接着させるものである。
具体的には、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、その他等のエチレン−不飽和カルボン酸またはそのエステル化物との共重合体の1種ないし2種以上を使用し、これを、例えば、300℃以下、好ましくは、280℃〜290℃位に加熱して溶融押出した溶融押出樹脂層からなる接着剤層を使用することができる。
【0021】
ところで、紙基材とバリア性層とを密接着させる場合、通常、熱によって溶融し相互に融着し得る樹脂、具体的には、低密度ポリエチレン等を使用し、これを加熱して溶融押出しながら、その溶融押出樹脂層を介して積層するものであるが、この場合には、低密度ポリエチレンを330℃〜350℃位に加熱して溶融押出ししなければならないものであり、このため、バリア性層を構成する、アルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属または無機酸化物の蒸着膜に、その330℃〜350℃位の加熱温度が作用し、アルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属または無機酸化物の蒸着膜にクラック等が発生し易く、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に著しく劣化させてしまうものである。
そのため、本発明においては、より低温で溶融押出積層することができるエチレン−不飽和カルボン酸またはそのエステル化物との共重合体に着目し、それを300℃以下、好ましくは、280℃〜290℃位に加熱して溶融押出した溶融押出樹脂層からなる接着剤層を介して積層するものである。
更に、本発明においては、エチレン−不飽和カルボン酸またはそのエステル化物との共重合体による300℃以下で溶融押出した溶融押出樹脂層からなる接着剤層を使用することにより、後述するバリア性層を構成するプライマ−剤層あるいはガスバリア性塗布膜の面に、アンカ−コ−ト剤層等を介することなく、すなわち、ノ−アンカ−コ−ト剤層で紙基材を溶融押出積層することができるものである。
【0022】
而して、本発明において、上記の接着剤層としては、例えば、押出機等を使用し、紙基材とバリア性層との層間に、上記のような樹脂の1種ないし2種以上を単層ないし多層に溶融押出ししながら溶融押出樹脂層からなる接着剤層を形成し、その溶融押出樹脂層からなる接着剤層を介して、上記の紙基材とバリア性層とを溶融押出積層することがてきるものである。
なお、本発明において、上記の接着剤層の膜厚としては、10μm〜100μm位、好ましくは、15μm〜60μm位が望ましいものである。
上記において、膜厚が、10μm未満であると、その機能が喪失する傾向にあることから好ましくなく、また、膜厚が、100μmを越えると、底部およびトップ部の成形性が非常に悪くなることから好ましくないものである。
なお、本発明においては、バリア性層の面、例えば、金属または無機酸化物の蒸着膜の面に、必要ならば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、その他等の任意の前処理を任意に施すことができ、また、溶融押出樹脂層の面に、オゾン処理等の前処理を任意に施すことができるものである。
【0023】
次に、本発明において、本発明にかかる紙カップを構成するバリア性層について説明すると、まず、バリア性層を構成する基材フィルムとしては、これに金属または無機酸化物の蒸着膜を設けることから、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靱であり、かつ、耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。
具体的には、本発明において、基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリ−ルフタレ−ト系樹脂、シリコ−ン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエ−テルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタ−ル系樹脂、セルロ−ス系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。
なお、本発明においては、特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムないしシ−トを使用することが好ましいものである。
【0024】
本発明において、上記の各種の樹脂のフィルムないしシ−トとしては、例えば、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、押出法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレ−ション法、その他等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、あるいは、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押出製膜化する方法、更には、2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により、各種の樹脂のフィルムないしシ−トを製造し、更に、要すれば、例えば、テンタ−方式、あるいは、チュ−ブラ−方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。
本発明において、各種の樹脂のフィルムないしシ−トの膜厚としては、6〜100μm位、より好ましくは、9〜50μm位が望ましい。
【0025】
なお、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することがてきる。
【0026】
また、本発明において、上記の各種の樹脂のフィルムないしシ−トの表面には、後述する金属または無機酸化物の蒸着膜との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、予め、所望の表面処理層を設けることができるものである。
本発明において、上記の表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロ−放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理を任意に施し、例えば、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層、その他等を形成して設けることができる。
上記の表面前処理は、各種の樹脂のフィルムないしシ−トと後述する金属または無機酸化物の蒸着膜との密接着性等を改善するための方法として実施するものであるが、上記の密接着性を改善する方法として、その他、例えば、各種の樹脂のフィルムないしシ−トの表面に、予め、プライマ−コ−ト剤層、アンダ−コ−ト剤層、アンカ−コ−ト剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカ−コ−ト剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
上記の前処理のコ−ト剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロ−ス系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0027】
次に、本発明において、本発明にかかるバリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜について説明すると、かかる金属または無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、または、物理気相成長法、あるいは、その両者を併用して、金属または無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができるものである。
【0028】
本発明において、上記の化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜について更に説明すると、かかる化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を用いて無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
本発明においては、具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマ−ガスを原料とし、キャリヤ−ガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することがてき、而して、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るためには、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
【0029】
具体的に、上記の低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法についてその一例を例示して説明すると、図8は、上記のプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法についてその概要を示す低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。
上記の図8に示すように、本発明においては、プラズマ化学気相成長装置21の真空チャンバ−22内に配置された巻き出しロ−ル23から基材フィルム3を繰り出し、更に、該基材フィルム3を、補助ロ−ル24を介して所定の速度で冷却・電極ドラム25周面上に搬送する。
而して、本発明においては、ガス供給装置26、27および、原料揮発供給装置28等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマ−ガス、その他等を供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調整しなから原料供給ノズル29を通して真空チャンバ−22内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム25周面上に搬送された基材フィルム3の上に、グロ−放電プラズマ30によってプラズマを発生させ、これを照射して、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を製膜化する。
本発明においては、その際に、冷却・電極ドラム25は、真空チャンバ−22の外に配置されている電源31から所定の電力が印加されており、また、冷却・電極ドラム25の近傍には、マグネット32を配置してプラズマの発生が促進されている。
次いで、上記で酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム3は、補助ロ−ル33を介して巻き取りロ−ル34に巻き取って、本発明にかかるプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができるものである。
なお、図中、35は、真空ポンプを表す。
上記の例示は、その一例を例示するものであり、これによって本発明は限定されるものではないことは言うまでもないことである。
図示しないが、本発明においては、無機酸化物の蒸着膜としては、無機酸化物の蒸着膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0030】
上記において、真空チャンバ−内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10−1〜1×10−8Torr位、好ましくは、真空度1×10−3〜1×10−7Torr位に調製することが望ましいものである。
また、原料揮発供給装置においては、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバ−内に導入されるものである。
この場合、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%位、酸素ガスの含有量は、10〜70%位、不活性ガスの含有量は、10〜60%位の範囲とすることができ、例えば、有機珪素化合物と酸素ガスと不活性ガスとの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。
一方、冷却・電極ドラムには、電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバ−内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロ−放電プラズマが生成され、このグロ−放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態において、基材フィルムを一定速度で搬送させ、グロ−放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができるものである。
なお、このときの真空チャンバ−内の真空度は、1×10−1〜1×10−4Torr位、好ましくは、真空度1×10−1〜1×10−2Torr位に調製することが望ましく、また、基材フィルム4の搬送速度は、10〜300m/分位、好ましくは、50〜150m/分位に調製することが望ましいものである。
【0031】
また、上記のプラズマ化学気相成長装置において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜の形成は、基材フィルムの上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOX の形で薄膜状に形成されるので、当該形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層となるものであり、従って、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高いものとなり、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができるものである。
また、本発明においては、SiOX プラズマにより基材フィルムの表面が、清浄化され、基材フィルムの表面に、極性基やフリ−ラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなるという利点を有するものである。
更に、上記のように酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1×10−1〜1×10−4Torr位、好ましくは、1×10−1〜1×10−2Torr位に調製することから、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10−4〜1×10−5Torr位に比較して低真空度であることから、基材フィルムを原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度を安定しやすく、製膜プロセスが安定するものである。
【0032】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマ−ガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマ−ガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX (ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。
而して、上記の酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX (ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましいものである。
上記において、Xの値は、蒸着モノマ−ガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギ−等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0033】
また、上記の酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、これに、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または、その2種類以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。
例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラ−レン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。
具体例を挙げると、CH3 部位を持つハイドロカ−ボン、SiH3 シリル、SiH2 シリレン等のハイドロシリカ、SiH2 OHシラノ−ル等の水酸基誘導体等を挙げることができる。
上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。
而して、上記の化合物が、酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%位、好ましくは、5〜20%位が望ましいものである。
上記において、含有率が、0.1%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなとにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になり、また、50%を越えると、バリア性が低下して好ましくないものである。
更に、本発明においては、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が、酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少させることが好ましく、これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面においては、上記の化合物等により耐衝撃性等を高められ、他方、基材フィルムとの界面においては、上記の化合物の含有量が少ないために、基材フィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなるという利点を有するものである。
【0034】
而して、本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜について、例えば、X線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析する方法を利用して、酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことより、上記のような物性を確認することができる。
また、本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜の膜厚としては、膜厚50Å〜4000Å位であることが望ましく、具体的には、その膜厚としては、100〜1000Å位が望ましく、而して、上記において、1000Å、更には、4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくなく、また、100Å、更には、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になることから好ましくないものである。
上記のおいて、その膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメ−タ−法で測定することができる。
また、上記において、上記の酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくすること、すなわち、モノマ−ガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0035】
次に、上記において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマ−ガスとしては、例えば、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。
本発明において、上記のような有機珪素化合物の中でも、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に、好ましい原料である。
また、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0036】
次に、本発明において、上記の物理気相成長法による金属または無機酸化物の蒸着膜について更に詳しく説明すると、かかる物理気相成長法による金属または無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタ−ビ−ム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)を用いて、金属または無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
本発明において、具体的には、金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルムの一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルムの一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。
上記において、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビ−ム加熱方式(EB)等にて行うことができる。
【0037】
本発明において、物理気相成長法による金属または無機酸化物の薄膜膜を形成する方法について、その具体例を挙げると、図9は、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
図9に示すように、巻き取り式真空蒸着装置41の真空チャンバ−42の中で、巻き出しロ−ル43から繰り出す基材フィルム3は、ガイドロ−ル44、45を介して、冷却したコ−ティングドラム46に案内される。
而して、上記の冷却したコ−ティングドラム46上に案内された基材フィルム3の上に、るつぼ47で熱せられた蒸着源48、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口49より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク50、50を介して、例えば、アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等の金属または無機酸化物の蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム等の金属または無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム3を、ガイドロ−ル51、52を介して送り出し、巻き取りロ−ル53に巻き取ることによって、本発明にかかる物理気相成長法による金属または無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
なお、本発明においては、上記のような巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず、第1層の金属または無機酸化物の蒸着膜を形成し、次いで、同様にして、該金属または無機酸化物の蒸着膜の上に、更に、金属または無機酸化物の蒸着膜を形成するか、あるいは、上記のような巻き取り式真空蒸着装置を用いて、これを2連に連接し、連続的に、金属または無機酸化物の蒸着膜を形成することにより、2層以上の多層膜からなる金属または無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0038】
上記において、金属または無機酸化物の蒸着膜としては、基本的に金属または金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば使用可能であり、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属または金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。
而して、好ましいものとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属または金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。
而して、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物として呼ぶことができ、その表記は、例えば、SiOX 、AlOX 、MgOX 等のようにMOX (ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0〜2、アルミニウム(Al)は、0〜1.5、マグネシウム(Mg)は、0〜1、カルシウム(Ca)は、0〜1、カリウム(K)は、0〜0.5、スズ(Sn)は、0〜2、ナトリウム(Na)は、0〜0.5、ホウ素(B)は、0〜1、5、チタン(Ti)は、0〜2、鉛(Pb)は、0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は、0〜1.5の範囲の値をとることができる。
上記において、X=0の場合、完全な金属であり、透明ではなく全く使用することができない、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。
本発明において、一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しく、ケイ素(Si)は、1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は、0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
本発明において、上記のような金属または無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、使用する金属、または、金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å位、好ましくは、100〜1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。
また、本発明においては、金属または無機酸化物の蒸着膜としては、使用する金属、または、金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した金属または無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0039】
ところで、本発明において、本発明にかかる紙カップ等を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜として、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の金属または無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできるものである。
而して、上記の異種の金属または無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、基材フィルムの上に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設け、次いで、該無機酸化物の蒸着膜の上に、物理気相成長法による金属または無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる金属または無機酸化物の蒸着膜を構成することが望ましいものである。
勿論、本発明においては、上記とは逆くに、基材フィルムの上に、先に、物理気相成長法により、金属または無機酸化物の蒸着膜を設け、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる金属または無機酸化物の蒸着膜を構成することもできるものである。
【0040】
なお、本発明において、本発明にかかるバリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜の面には、例えば、バリア性層と、接着剤層、あるいは、酸素吸収性樹脂層、その他等との密接着性を向上させるために、プライマ−剤層を形成することができる。
而して、上記のプライマ−剤層としては、まず、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とし、該ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂1〜30重量%に対し、シランカップリング剤0.05〜10重量%位、好ましくは、0.1重量%〜5重量%位、充填剤0.1〜20重量%位、好ましくは、1〜10重量%位の割合で添加し、更に、必要ならば、安定剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他等の添加剤を任意に添加し、溶媒、希釈剤等を加えて充分に混合して樹脂組成物を調製する。
而して、上記で調製した樹脂組成物を使用し、これを、例えば、ロ−ルコ−ト、グラビアコ−ト、ナイフコ−ト、デップコ−ト、スプレイコ−ト、その他のコ−ティング法等により、前述の基材フィルムの一方の面に設けた金属または無機酸化物の蒸着膜の上にコ−ティングし、しかる後、コ−ティング膜を乾燥させて溶媒、希釈剤等を除去し、更に、要すれば、エ−ジング処理等を行って、本発明にかかるプライマ−剤層を形成することができる。
なお、本発明において、プライマ−剤層の膜厚としては、例えば、0.1g/m2 〜5.0g/m2 (乾燥状態)位が望ましい。
而して、本発明においては、上記のようなプライマ−剤層により、その密接着性等を向上させると共にプライマ−剤層の伸長度を向上させ、例えば、ラミネ−ト加工、あるいは、製袋加工等の後加工適性を向上させ、後加工時における無機酸化物の蒸着膜のクラック等の発生を防止するものである。
【0041】
上記において、上記の樹脂組成物を構成するポリウレタン系樹脂としては、例えば、多官能イソシアネ−トとヒドロキシル基含有化合物との反応により得られるポリウレタン系樹脂を使用することができる。
具体的には、例えば、トリレンジイソシアナ−ト、ジフェニルメタンジイソシアナ−ト、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナ−ト等の芳香族ポリイソシアナ−ト、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアナ−ト、キシリレンジイソシアナ−ト等の脂肪族ポリイソシアナ−ト等の多官能イソシアネ−トと、ポリエ−テルポリオ−ル、ポリエステルポリオ−ル、ポリアクリレ−トポリオ−ル、その他等のヒドロキシル基含有化合物との反応により得られる一液ないし二液硬化型のポリウレタン系樹脂を使用することができる。
而して、本発明において、上記のようなポリウレタン系樹脂を使用することにより、その密接着性等を向上させると共にプライマ−剤層の伸長度を向上させ、例えば、ラミネ−ト加工、あるいは、製袋加工等の後加工適性を向上させ、後加工時における無機酸化物の蒸着膜のクラック等の発生を防止するものである。
【0042】
また、上記において、上記の樹脂組成物を構成するポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸等のベンゼン核を基本骨格とする芳香族飽和ジカルボン酸の一種またはそれ以上と、飽和二価アルコ−ルの一種またはそれ以上との重縮合により生成する熱可塑性のポリエステル系樹脂を使用することができる。 上記において、ベンゼン核を基本骨格とする芳香族飽和ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルエ−テル−4、4−ジカルボン酸、その他等を使用することができる。
また、上記において、飽和二価アルコ−ルとしては、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ヘキサメチレングリコ−ル、ドデカメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、2.2−ビス(4′−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ナフタレンジオ−ル、その他の芳香族ジオ−等を使用することができる。
【0043】
本発明において、上記のポリエステル系樹脂としては、具体的には、例えば、テレフタル酸とエチレングリコ−ルとの重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂、テレフタル酸とテトラメチレングリコ−ルとの重縮合により生成する熱可塑性ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂、テレフタル酸と1、4−シクロヘキサンジメタノ−ルとの重縮合により生成する熱可塑性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレ−ト樹脂、テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコ−ルとの共重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂、テレフタル酸とエチレングリコ−ルと1、4−シクロヘキサンジメタノ−ルとの共重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂、テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコ−ルとプロピレングリコ−ルとの共重縮合により生成する熱可塑性ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂、ポリエステルポリオ−ル樹脂、その他等を使用することができる。
なお、本発明においては、上記のようなベンゼン核を基本骨格とする飽和芳香族ジカルボン酸に、更に、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸の一種ないしそれ以上を添加して共重縮合することもでき、その使用量としては、ベンゼン核を基本骨格とする芳香族飽和ジカルボン酸に対し、1〜10重量%位を添加して使用することが好ましい。
而して、本発明において、上記のようなポリエステル系樹脂を使用することにより、その密接着性等を向上させると共にプライマ−剤層の伸長度を向上させ、例えば、ラミネ−ト加工、あるいは、製袋加工等の後加工適性を向上させ、後加工時における無機酸化物の蒸着膜のクラック等の発生を防止するものである。
【0044】
次にまた、上記において、上記の樹脂組成物を構成するシランカップリング剤としては、二元反応性を有する有機官能性シランモノマ−類を使用することができ、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルシリコ−ンの水溶液等の1種ないしそれ以上を使用することができる。
【0045】
上記のようなシランカップリング剤は、その分子の一端にある官能基、通常、クロロ、アルコキシ、または、アセトキシ基等が加水分解し、シラノ−ル基(SiOH)を形成し、これが、金属または無機酸化物の蒸着膜を構成する金属、あるいは、金属または無機酸化物の蒸着膜表面上の活性な基、例えば、水酸基等の官能基と何らかの作用により、例えば、脱水縮合反応等の反応を起こして、金属または無機酸化物の蒸着膜表面上にシランカップリング剤が共有結合等で修飾され、更に、シラノ−ル基自体の金属または無機酸化物の蒸着膜表面に吸着や水素結合等により強固な結合を形成する。
他方、シランカップリング剤の他端にあるビニル、メタクリロキシ、アミノ、エポキシ、あるいは、メルカプト等の有機官能基が、そのシランカップリング剤の薄膜の上に形成される、例えば、接着剤層、その他の層等を構成する物質と反応して強固な結合を形成し、強固に密接着して、そのラミネ−ト強度を高め、このようにして、本発明においては、ラミネ−ト強度の高い強固な積層構造を形成可能とするものである。
本発明においては、シランカップリング剤が有する無機性と有機性とを利用し、金属または無機酸化物の蒸着膜と、接着剤層、アンカ−コ−ト剤層、その他等の層を介して、他の基材等との密接着性を向上させ、これにより、そのラミネ−ト強度等を高めるものである。
【0046】
次に、本発明において、上記の樹脂組成物を構成する充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、タルク、ガラスフリット、樹脂粉末、その他等のものを使用することができる。
而して、上記の充填剤は、上記の樹脂組成物液の粘度等を調製し、そのコ−ティング適性を向上させると共にバインダ−樹脂としてのポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂とシランカップリング剤を介して結合し、コ−ティング膜の凝集力を向上させるものである。
【0047】
なお、本発明においては、上記のプライマ−剤層としては、前述の樹脂組成物によるコ−ティング膜からなるプライマ−剤層の他に、更に、例えば、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンアルイハポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロ−ス系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用してプライマ−剤層を形成することができる。
なお、本発明においては、例えば、ロ−ルコ−ト、グラビアロ−ルコ−ト、キスコ−ト、その他等のコ−ティング法を用いてコ−ティングしてプライマ−コ−ト剤層を形成することができ、而して、そのコ−ティング量としては、0.1〜5g/m2 (乾燥状態)位が望ましい。
而して、本発明において、プライマ−剤層としては、上記のポリウレン系樹脂またはポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とする樹脂組成物によるプライマ−剤層を使用することが最も有効なものである。
【0048】
また、本発明において、本発明にかかるバリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜の面には、例えば、バリア性層と、接着剤層、あるいは、酸素吸収性樹脂層等との密接着性を向上させるため、更に、バリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜によるバリア性能を向上させるために、ガスバリア性塗布膜を形成することができる。
而して、上記のガスバリア性塗布膜について説明すると、かかるガスバリア性塗布膜としては、少なくとも、ポリビニルアルコ−ル系樹脂〔以下(A)成分という。〕と、一般式R1 m M(OR2 )n ・・・・(1)(式中、Mは、金属原子を表し、R1 は、同一または異なり、炭素数1〜8の有機基を表し、R2 は、同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基もしくはフェニル基を表し、mおよびnは、それぞれ0以上の整数を表し、m+nは、Mの原子価を表す。)で表される金属アルコレ−ト、該金属アルコレ−トの加水分解物、該金属アルコレ−トの縮合物、該金属アルコレ−トのキレ−ト化合物、該キレ−ト化合物の加水分解物および金属アシレ−トの群から選ばれた少なくとも1種〔以下(B)成分という。〕とを含有するガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を使用することができる。
上記において、ガスバリア性組成物中には、含窒素有機溶剤を含有することが好ましく、また、無機微粒子〔以下(C)成分という。〕を含有することも好ましいものである。
また、上記において、(B)成分としては、(B)成分を水または水と親水性有機溶媒を含む混合溶媒中で加水分解した後、(A)成分と混合してガスバリア性組成物を調製することができるものである。
【0049】
上記のガスバリア性組成物において、(A)成分を構成するポリビニルアルコ−ル系樹脂としては、ポリビニルアルコールおよびエチレン・ビニルアルコール系共重合体の群から選ばれた少なくとも1種を使用することができる。
上記(A)成分のうち、ポリビニルアルコールは、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものである。
このポリビニルアルコールとしては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコールでも、もしくは、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、あるいは、OH基が変性された変性ポリビニルアルコールでもよく、特に限定されるものではない。
上記ポリビニルアルコールの具体例としては、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)等を使用することができる。
また、(A)成分のうち、エチレン・ビニルアルコール共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものであり、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは20〜45モル%である。
上記エチレン・ビニルアルコール共重合体の具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。
【0050】
以上の(A)成分を構成するポリビニルアルコール系樹脂のメルトフローインデックスは、210℃、荷重21.168N条件下で、1〜20g/10分、好ましくは1〜18g/10分である。
これらの(A)を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、1種単独で使用することも、あるいは、2種以上を混合して用いることもできる。
また、(A)成分を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、それ自体、ガスバリア性、耐候性、耐有機溶剤性、透明性、熱処理後のガスバリア性などに優れる。
加えて、(A)成分を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、本発明のガスバリア性組成物から得られる塗膜を硬化させる際に、ポリビニルアルコールに由来する繰り返し単位中に存在する水酸基が、後記(B)成分および/また(C)成分と共縮合することにより、優れた塗膜性能をもたらすことができる。
本発明のガスバリア性組成物における(A)成分の割合は、後記(B)成分100重量部に対し、10〜10,000重量部、好ましくは、20〜5,000重量部、さらに好ましくは、100〜1,000重量部である。
10重量部未満では、得られる塗膜にクラックが入りやすく、ガスバリア性が低下し、一方、10,000重量部を超えると、得られる塗膜が高湿度下ではガスバリア性が低下して好ましくないものである。
【0051】
次に、本発明に用いられる(B)成分としては、上記の一般式(1)で表される、金属アルコレート、該金属アルコレートの加水分解物、該金属アルコレートの縮合物、該金属アルコレートのキレート化合物、該キレート化合物の加水分解物および金属アシレートの群から選ばれた少なくとも1種を使用することができ、而して、(B)成分としては、その1種だけでもよいし、任意の2種以上の混合物であってもよい。
なお、上記の金属アルコレートの加水分解物としては、金属アルコレートに含まれるOR2 がすべて加水分解されている必要はなく、例えば、その1個だけが加水分解されているもの、2個以上が加水分解されているもの、あるいは、これらの混合物であってもよい。
また、上記の金属アルコレートの縮合物は、金属アルコレートの加水分解物のM−OH基が縮合してM−O−M結合を形成したものであるが、本発明では、M−OH基がすべて縮合している必要はなく、僅かな一部のM−OH基が縮合したもの、縮合の程度が異なっているものの混合物などをも包含した概念である。
さらに、上記の金属アルコレートのキレート化合物は、金属アルコレートと、β−ジケトン類、β−ケトエステル類、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸エステル、ケトアルコールおよびアミノアルコールから選ばれる少なくとも1種の化合物との反応で得られる。
これらの化合物の中でも、β−ジケトン類またはβ−ケトエステル類を用いることが好ましく、これらの具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。
また、上記のキレート化合物の加水分解物は、上記の金属アルコレートの加水分解物と同様に、キレート化合物に含まれるOR2 基がすべて加水分解されている必要はなく、例えば、その1個だけが加水分解されているもの、2個以上が加水分解されているもの、あるいは、これらの混合物であってもよい。
本発明において、(B)成分は、(A)成分との共縮合体を形成する作用をなすものと考えられる。
【0052】
上記の一般式(1)における、Mで表される金属原子としては、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムを好ましいものとして挙げることができ、特に好ましくはチタンである。
R1 の炭素数1〜8の1価の有機基は、一般式(1)で表される化合物が金属アルコレートである場合と金属アシレートである場合とで異なる。
金属アルコレートである場合には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基などのアシル基;ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基などのほか、これらの基の置換誘導体などを挙げることができる。
R1 の置換誘導体における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などを挙げることができる。
ただし、これらの置換誘導体からなるR1 の炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8以下である。
また、金属アシレートである場合には、R1 の炭素数1〜8の1価の有機基としては、アセトキシル基、プロピオニロキシル基、ブチリロキシル基、バレリロキシル基、ベンゾイルオキシル基、トリオイルオキシル基などのアシルオキシル基を挙げることができる。
一般式(1)中に、R1 が2個存在するときは、相互に同一でも異なってもよい。
【0053】
また、R2 の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などを挙げることができ、炭素数1〜6のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などを挙げることができる。
一般式(1)中に複数個存在するR2 は、相互に同一でも異なってもよい。
【0054】
これらの(B)成分のうち、金属アルコレートおよび金属アルコレートのキレート化合物の具体例としては、
(イ).テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウム化合物;
【0055】
(ロ).テトラ−i−プロポキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウム、テトラ−t−ブトキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナート)チタニウム、ジヒドロキシ・ビスラクテタートチタニウム、ジヒドロキシチタンラクテート、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタニウムなどのチタン化合物;
【0056】
(ハ).トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウム化合物;
などを挙げることができる。
これらの金属アルコレートおよび金属アルコレートのキレート化合物のうち好ましいものとしては、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナート)チタニウム、ジヒドロキシ・ビスラクテタートチタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウムおよびトリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムを挙げることができ、特に好ましい化合物はジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナート)チタニウム、ジヒドロキシ・ビスラクテタートチタニウムなどのチタン化合物である。
【0057】
また、金属アシレートの具体例としては、ジヒドロキシ・チタンジブチレート、ジ−i−プロポキシ・チタンジアセテート、ジ−i−プロポキシ・チタンジプロピオネート、ジ−i−プロポキシ・チタンジマロニエート、ジ−i−プロポキシ・チタンジベンゾイレート、ジ−n−ブトキシ・ジルコニウムジアセテート、ジ−i−プロピルアルミニウムモノマロニエートなどを挙げることができ、特に好ましい化合物はジヒドロキシ・チタンジブチレート、ジ−i−プロポキシ・チタンジアセテートなどのチタン化合物である。
これらの(B)成分は、1種単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0058】
(B)成分としては、コーティング液の粘度経時変化がなく、扱いやすくなるため、後述の親水性溶媒中に記載されている水または水と親水性有機溶媒を含む混合溶媒中で加水分解したものを用いることが好ましい。
この場合、水の使用量は、一般式R1 m M(OR2 )n (1)で表される化合物1モルに対し、0.1〜1000モル、好ましくは、0.5〜500モルである。
また、混合溶媒の場合、水と親水性有機溶媒の配合割合は、水/親水性有機溶媒=10〜90/90〜10(重量比)、好ましくは、30〜70/70〜30、更に、好ましくは、40〜60/60〜40である。
【0059】
次に、本発明のガスバリア組成物としては、(C)成分である無機微粒子を含有することが好ましい。
上記の無機微粒子は、平均粒子径が0.2μm以下の実質的に炭素原子を含まない粒子状無機物質であり、金属またはケイ素酸化物、金属またはケイ素窒化物、金属ホウ化物が挙げられる。
無機微粒子の製造方法は、例えば、酸化ケイ素を得るには四塩化ケイ素を酸素と水素の炎中での加水分解により得る気相法、ケイ酸ソーダのイオン交換により得る液相法、シリカゲルのミルなどによる粉砕より得る固相法などの製造方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0060】
具体的な化合物例としては、SiO2 、Al2 O3 、TiO2 、WO3 、Fe、ZnO、NiO、RuO2 、CdO、SnO2 、Bi2 O3 、3Al2 O3 ・O2 、Sn−In2 O3 、Sb−In2 O3 、CoFeOxなどの酸化物、Si、Fe4 N、AlN、TiN、ZrN、TaNなどの窒化物、Ti2 B、ZrB、TaB2 、W2 Bなどのホウ化物が挙げられる。
また、無機微粒子の形態は、粉体、水または有機溶剤に分散したコロイドもしくはゾルが挙げられるが、これらは限定されるものではない。
これらの中で、(A)成分および/または(B)成分と共縮合することで優れた塗膜性能を得るために、好ましくは、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、アルミナゾル、スズゾル、ジルコニウムゾル、五酸化アンチモンゾル、酸化セリウムゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化チタンゾルなどの粒子表面に水酸基が存在するコロイド状酸化物が用いられる。
無機微粒子の平均粒子径は、0.2μm以下、好ましくは、0.1μm以下であり、平均粒径が0.2μmを超えると、膜の緻密性の観点からガスバリア性が劣る場合がある。
【0061】
(C)成分の本発明の組成物中の割合は、(A)成分および(B)成分の合計量100重量部に対し、好ましくは、10〜900重量部、特に好ましくは、20〜400重量部である。
上記において、900重量部を超えると、得られる塗膜のガスバリア性が低下する場合がある。
【0062】
次に、本発明においては、本発明のガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜をより速く硬化させる目的と、(A)成分と(B)成分との共縮合体を形成させ易くする目的で(D)硬化促進剤を使用してもよく、比較的低い温度での硬化と、より緻密な塗膜を得るために、この(D)硬化促進剤を併用する方が効果的である。
【0063】
上記の(D)硬化促進剤としては、塩酸などの無機酸;ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性化合物;アルキルチタン酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸などの酸性化合物;エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペリジン、ピペラジン、メタフェニレンジアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系化合物、
Sn(OCOCC8 H17)2 などのカルボン酸型有機スズ化合物;
などのメルカプチド型有機スズ化合物;
などのスルフィド型有機スズ化合物;
【0064】
(C4 H9 )2 SnO、(C8 H17)2 SnO、または(C4 H9 )2 SnOH17)2 SnOなどの有機スズオキサイドとエチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物などが使用される。
これらの(D)硬化促進剤のガスバリア性組成物中における割合は、本発明のガスバリア性組成物の固形分100重量部に対して、通常、0.5〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部用いられる。
【0065】
さらに、本発明のガスバリア性組成物には、安定性向上剤として、先に挙げたβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類を添加することができる。
すなわち、上記の(B)成分としてガスバリア性組成物中に存在する上記の金属アルコレート中の金属原子に配位することにより、(A)成分と(B)成分との縮合反応をコントロールする作用をし、得られるガスバリア性組成物の保存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。
β−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類の使用量は、上記(B)成分における金属原子1モルに対し、好ましくは2モル以上、さらに好ましくは、3〜20モルである。
【0066】
本発明のガスバリア性組成物は、通常、上記(A)〜(D)成分および場合により上記任意成分を、水および/または親水性有機溶媒中で溶解、分散することによって得られる。
ここで、親水性有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの炭素数1〜8の飽和脂肪族の1価アルコールまたは2価アルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどの炭素数1〜8の飽和脂肪族のエーテル化合物;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの炭素数1〜8の飽和脂肪族の2価アルコールのエステル化合物;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ピリジンなどの含窒素化合物(含窒素有機溶媒);ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、サリチル酸、サリチル酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸エステルなどを挙げることができる。これらのうち、好ましいものとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1〜8の飽和脂肪族の1価アルコール;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ピリジンなどの含窒素化合物(含窒素有機溶媒)を挙げることができる。
【0067】
これらの水および/または親水性有機溶媒は、水と親水性有機溶媒とを混合して用いられることがより好ましい。
好ましい溶媒の組成としては、水/炭素数1〜8の飽和脂肪族の1価アルコール、水/含窒素化合物(含窒素有機溶媒)である。
さらに好ましくは、水/炭素数1〜8の飽和脂肪族の1価アルコール/含窒素化合物(含窒素有機溶媒)である。
含窒素有機溶媒を混合することで、薄膜でのコーティングにおいて外観が透明で良好な塗膜が得られる。
【0068】
水および/または親水性有機溶媒の使用量は、ガスバリア性組成物の全固形分濃度が好ましくは60重量%以下となるように用いられる。
例えば、薄膜形成を目的に用いられる場合には、通常、5〜40重量%、好ましくは、10〜30重量%であり、また厚膜形成を目的に使用する場合には、通常、20〜50重量%、好ましくは、30〜45重量%である。
ガスバリア性組成物の全固形分濃度が60重量%を超えると、組成物の保存安定性が低下する傾向にある。
また、上記含窒素有機溶媒の割合は、溶媒全量中に、通常、1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%である。
【0069】
なお、有機溶媒としては、上記の水および/または親水性有機溶媒が好ましいが、親水性有機溶媒以外に、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類なども使用できる。
【0070】
このように、本発明のガスバリア性組成物は、上記(A)〜(B)成分および場合により上記任意成分を、水および/または親水性有機溶媒中で混合することによって得られ、好ましくは上記(A)成分と(B)成分、必要に応じて(C)成分を、水および/または親水性有機溶媒中で、加水分解および/または縮合することによって得られる。
この際、反応条件は、温度は20〜100℃、好ましくは30〜80℃、時間は0.1〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
得られるガスバリア性組成物の重量平均分子量は、一般的なGPC法によるポリメチルメタクリレート換算値で、通常、500〜100万、好ましくは1,000〜30万である。
【0071】
なお、本発明のガスバリア性組成物には、得られる塗膜の着色、厚膜化、下地への紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性などの諸特性を発現させるために、別途、充填材を添加・分散させることも可能である。
ただし、充填材は、上記(C)成分を除く。
充填材としては、例えば、有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料または顔料以外の、粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。
この充填材の具体例としては、粒子状、繊維状もしくは鱗片状の、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントイエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどが挙げられる。
【0072】
これらの充填材の平均粒径または平均長さは、通常、50〜50,000nm、好ましくは100〜5,000nmである。
充填材の組成物中の割合は、充填材以外の成分の全固形分100重量部に対し、好ましくは、0.1〜300重量部、さらに好ましくは、1〜200重量部である。
【0073】
なお、本発明のガスバリア性組成物には、そのほか、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシランなどの公知の脱水剤、各種の界面活性剤、上記以外の、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、分散剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を配合することもできる。
【0074】
本発明のガスバリア性組成物を調製するに際しては、上記(A)〜(B)成分、好ましくは(A)〜(C)成分を含有する組成物を調製すればよいが、好ましくは、上記(B)成分を水または水と親水性有機溶媒を含む混合溶媒中で加水分解したのち、(A)成分を混合する。
このようにすると、ガスバリア性組成物の経時的な粘度変化がなく、取り扱い性に優れたガスバリア性組成物が得られる。
(C)成分を用いる場合の本発明のガスバリア性組成物の調製方法の具体例としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
これらの調製方法において用いられる(B)成分は、水または水と親水性有機溶媒を含む混合溶媒中であらかじめ加水分解したものを用いてもよい。
水および/または親水性有機溶剤に溶解させた(A)成分に(C)成分を添加したのち、(B)成分を添加する方法。
水および/または親水性有機溶剤に溶解させた(A)成分に(C)成分を添加したのち、(B)成分を添加し、加水分解および/または縮合する方法。
水および/または親水性有機溶剤に溶解させた(B)成分に、(C)成分を添加し、加水分解および/または縮合を行ない、そののちに(A)成分を添加する方法。
水および/または親水性有機溶剤に(A)〜(C)成分を一括添加し、溶解・分散する方法。または、そののちに加水分解および/または縮合を行う方法。
【0075】
而して、本発明においては、上記で調製したガスバリア性組成物を使用し、これを、前述の金属または無機酸化物の蒸着膜の上に塗布することにより、ガスバリア性塗布膜を形成することができる。
本発明においては、金属または無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成し、金属または無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得るものである。
上記の本発明のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータなどの塗装手段により、1回あるいは複数回の塗装で、乾燥膜厚が0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μmの本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができ、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾燥することにより、縮合が行われ、本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
また、必要ならば、本発明のガスバリア性組成物を塗布する際に、予め、金属または無機酸化物の蒸着膜の上に、プライマ−剤等を塗布することもできるものである。
【0076】
次に、本発明において、本発明にかかる紙カップを構成する酸素吸収性樹脂層について説明すると、かかる酸素吸収性樹脂層としては、酸素吸収性を有し、例えば、容器内に残存する酸素を吸収したり、あるいは、容器壁を透過する酸素を吸収して長期にわたって低減化する作用機能を有するものである。
而して、本発明において、酸素吸収性樹脂層としては、少なくとも、樹脂の1種ないしそれ以上と、遷移金属化合物の1種ないしそれ以上とを含む樹脂組成物によるブレンド樹脂膜を使用することができる。
上記において、樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアクリル酸ないしポリメタクリル酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体系樹脂、フッ素系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13、ナイロン66、、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、または、ナイロンMXD6等のポリアミド系樹脂、ポリテレフタル酸エチレン、ポリテレフタル酸ブチレン、または、ポリナフタレン酸エチレン等のポリエステル系樹脂、その他等の1種ないし2種以上を使用することができる。
【0077】
次にまた、本発明において、遷移金属化合物としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属、銅、銀等の第I族金属、錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウム等の第V族金属、クロム等の第VI族金属、あるいは、マンガン等の第VII族金属の化合物等を使用することができる。
具体的には、上記の遷移金属の低価数の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等の無機酸塩、あるいは、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等の有機酸塩、その他、錯塩の形のものを使用することができる。
【0078】
而して、本発明において、少なくとも、上記のような樹脂の1種ないしそれ以上と、上記のような遷移金属化合物の1種ないしそれ以上とを含み、更に必要ならば、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤、染料・顔料等の着色剤、その他の添加剤を任意に添加し、更に、要すれば、溶剤、希釈剤等を加えて充分に混練して、少なくとも、樹脂の1種ないしそれ以上と、遷移金属化合物の1種ないしそれ以上とを含む樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を使用し、これを押出成形してフィルムを製造するか、あるいは、上記の樹脂組成物を使用し、それを溶融押出樹脂層と積層して、上記の樹脂組成物によるブレンド樹脂膜を形成することができ、これを本発明にかかる酸素吸収性樹脂層として使用することができるものである。
【0079】
具体的には、上記で調製した樹脂組成物による押出成形フィルムを、バリア性層あるいは最内層等の面に、例えば、ラミネ−ト用接着剤層を介して積層するドライラミネ−ト積層方式、あるいは、溶融押出樹脂層等を介して積層する溶融押出積層方式等により積層して、本発明にかかる酸素吸収性樹脂層を形成することができる。
また、上記で調整した樹脂組成物を、最内層若しくはバリア性層のフィルム面上に直接若しくはアンカ−コ−ト剤層を介して、溶融押出積層して溶融押出樹脂層を設けることにより、本発明にかかる酸素吸収性樹脂層を形成することができるものである。
ところで、本発明において、本発明にかかる酸素吸収性樹脂層が、例えば、容器内に残存する酸素を吸収したり、あるいは、容器壁を透過する酸素を吸収して長期にわたって低減化する作用機能を有する機構は、詳らかではないが、例えば、酸素吸収性樹脂層中に存在する遷移金属化合物の遷移状態の金属化合物が酸素を捕獲して酸素を吸収する酸素吸収性、あるいは、酸素吸収性樹脂層中に存在する遷移金属化合物が、そこに共存する樹脂に作用し、その樹脂が、遷移状態を形成し、それが酸素を吸収する酸素吸収性等により、酸素が吸収されるものであると推定されるものである。
【0080】
次にまた、本発明において、本発明にかかる紙カップを構成する最内層について説明すると、かかる最内層としては、具体的には、例えば、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂、その他等を使用することができる。
而して、本発明において、最内層としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ−、ポリブテンポリマ−、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他等の樹脂を使用することができる。
【0081】
而して、本発明においては、上記のような樹脂の1種ないし2種以上を使用し、これを押出機等を用いて溶融押出して、例えば、アンカ−コ−ト剤層等を介して、溶融押出樹脂層を溶融押出積層することにより、あるいは、上記のような樹脂の1種ないし2種以上を使用し、予め、これから樹脂のフィルムないしシ−トを製造し、その樹脂のフィルムないしシ−トを、ラミネ−ト用接着剤層等を介してドライラミネ−ト積層することにより、最内層を形成することができる。
また、本発明においては、上記のような樹脂の1種ないし2種以上を使用し、、これらを共押出機等を用いて溶融共押出した2層以上からなる共押出積層樹脂層としても使用することができ、この場合には、無機酸化物の蒸着膜のクラック等の発生を防止することから、内容物と接する側の樹脂層の膜厚を厚くし、その他方の樹脂層の膜厚を薄くすることが好ましく、而して、その他方の樹脂層の膜厚を10〜30μm位、好ましくは、20μm前後にすることが望ましいものである。
更に、本発明においては、無機酸化物の蒸着膜のクラック等の発生を防止するため、上記の最内層を構成する樹脂を用いて、可能な限り膜厚を薄くして溶融押出樹脂層を設けた後、その上に、上記の最内層を構成する樹脂の1種ないし2種以上を使用し、これを共押出機等を用いて共押出樹脂層を設けて、最内層を構成することができる。
なお、本発明において、最内層の厚さとしては、5〜200μm位、好ましくは、10〜100μm位が望ましいものである。
【0082】
ところで、本発明において、最内層を構成する樹脂としては、通常、熱によって溶融し相互に融着し得る樹脂、具体的には、低密度ポリエチレン、あるいは、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を使用して構成するものであるが、その場合には、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂層によるシ−ル温度が、400℃〜450℃位であり、極めて高いシ−ル温度であることからピンホ−ルを発生し、シ−ル不良、液漏れ等を起こす原因となり易いものである。
そのため、本発明においては、低温シ−ル性を有するメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体に着目し、それによる最内層を形成し、300℃〜350℃位の低温シ−ルを可能とし、ピンホ−ルの発生を防止し、シ−ル不良、液漏れ等を回避することが好ましいものである。
更に、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体は、粘着性を有することから破断の伝搬が少なく耐衝撃性を向上させるという利点があるものであり、また、最内層は常時内容物に接触していることから、耐環境ストレスクラッキング性の劣化を防止するためにも有効なものである。
また、本発明においては、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体に他の樹脂をブレンドすることもでき、例えば、エチレン−ブテン共重合体等をブレンドすることにより、若干、耐熱性に劣り高温環境下ではシ−ル安定性が劣化する傾向があるものの、引き裂き性が向上し、易開封性に寄与するという利点がある。
本発明において、特に、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体層からなる最内層を使用する場合には、紙カップを製函するときに、低温ヒ−トシ−ル性が可能であるという利点を有するものである。
【0083】
上記のメタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体としては、例えば、二塩化ジルコノセンとメチルアルモキサンの組み合わせによる触媒等のメタロセン錯体とアルモキサンとの組み合わせによる触媒、すなわち、メタロセン触媒を使用して、エチレンとα・オレフィンとを共重合してなるエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。
上記のメタロセン触媒は、現行の触媒が、活性点が不均一でマルチサイト触媒と呼ばれているのに対し、活性点が均一であることからシングルサイト触媒とも呼ばれているものである(以下、メタロセン触媒は、シングルサイト触媒と同等の意味である。)。
具体的には、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体としては、三菱化学株式会社製の商品名「カ−ネル」、三井住友ポリオレフィン株式会社製の商品名「エボリュ−」、米国、エクソン・ケミカル(EXXON CHEMICAL)社製の商品名「エクザクト(EXACT)」、米国、ダウ・ケミカル(DOW CHEMICAL)社製の商品名「アフィニティ−(AFFINITY)、商品名「エンゲ−ジ(ENGAGE)」等のメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α−オレフィン共重合体を使用することができる。
而して、本発明において、上記のようなメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体層からなる最内層としては、バリア性層の面に、例えば、アンカ−コ−ト剤層等を介して積層する溶融押出積層法、あるいは、ラミネ−ト用接着剤層等を介して積層するドライラミネ−ト法等の通常の積層法を用いて形成することができる。
本発明において、最内層の膜厚としては、10μmないし300μm位、好ましくは、20μmないし100μm位が望ましい。
【0084】
而して、本発明において、上記のメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体の物性は、例えば、分子量、5×103 〜5×106 、密度、0.890〜0.930g/cm3 、メルトフロ−レ−ト〔MFR〕、0.1〜50g/10分位である。
なお、本発明においては、上記のメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体には、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、染料、顔料等を任意に添加して使用することができる。
【0085】
更に、本発明においては、メタロセン触媒により重合されたエチレン−α・オレフィン共重合体層からなる最内層としては、上記のようなメタロセン触媒により重合されたエチレン−α・オレフィン系共重合体と、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂との共押出積層樹脂層からなり、更に、該共押出積層樹脂層を構成するメタロセン触媒により重合したエチレン−α・オレフィン系樹脂層を最内層とする共押出積層樹脂層を使用することがてきる。
上記において、共押出積層樹脂層を形成する方法としては、Tダイ共押出方式等を用いて行うことができ、また、その層構成は、2層あるいはそれ以上の層からなる共押出積層樹脂層からなり、更にまた、その各樹脂層の厚さとしては、2〜30μm位の範囲内で任意に調整することが望ましく、特に、内容物と接する側の樹脂層と反対側の樹脂層の膜厚は、30μm以下、好ましくは、10〜20μm位とすることが好ましいものである。
【0086】
次に、本発明において、本発明にかかる紙カップを構成する最外層としては、前述の最内層と同様な素材を同様に使用して形成することができ、例えば、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂、その他等を使用することができる。
具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ−、ポリブテンポリマ−、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他等の樹脂を使用することができる。
而して、本発明においては、上記のような樹脂の1種ないし2種以上を使用し、これを押出機等を用いて溶融押出して、例えば、紙基材の一方の面に、アンカ−コ−ト剤層等を介して、溶融押出樹脂層を溶融押出積層することにより、あるいは、上記のような樹脂の1種ないし2種以上を使用し、予め、これから樹脂のフィルムないしシ−トを製造し、その樹脂のフィルムないしシ−トを、紙基材の一方の面にラミネ−ト用接着剤層等を介してドライラミネ−ト積層することにより、最外層を形成することができる。
なお、本発明において、最外層の厚さとしては、5〜200μm位、好ましくは、10〜100μm位が望ましいものである。
【0087】
なお、本発明において、本発明にかかる紙カップを構成する積層材を形成する材料として、例えば、水蒸気、水等のバリア−性を有する低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等の樹脂のフィルムないしシ−ト、あるいは、酸素、水蒸気等に対するバリア−性を有するポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体、MXD6ナイロン系樹脂、ポリナフタレンテレフタレ−ト系樹脂等の樹脂のフィルムないしシ−ト、樹脂に顔料等の着色剤を、その他、所望の添加剤を加えて混練してフィルム化してなる遮光性を有する各種の着色樹脂のフィルムないしシ−ト等も使用することができる。
これらの材料は、一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。
上記のフィルムないしシ−トの厚さとしては、任意であるが、通常、5μmないし300μm位、更には、10μmないし100μm位が望ましい。
【0088】
なお、本発明においては、通常、包装用容器は、物理的にも化学的にも過酷な条件におかれることから、包装用容器を構成する包装材料には、厳しい包装適性が要求され、変形防止強度、落下衝撃強度、耐ピンホ−ル性、耐熱性、密封性、品質保全性、作業性、衛生性、その他等の種々の条件が要求され、このために、本発明においては、上記のような諸条件を充足する材料を任意に選択して使用することができ、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマ−、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタ−ル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロ−ス、その他等の公知の樹脂のフィルムないしシ−トから任意に選択して使用することができる。
本発明において、上記のフィルムないしシ−トは、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれのものでも使用することができる。
また、その厚さは、任意であるが、数μmから300μm位の範囲から選択して使用することができる。
更に、本発明においては、フィルムないしシ−トとしては、押し出し成膜、インフレ−ション成膜、コ−ティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
その他、例えば、セロハン等のフィルム、合成紙等も使用することができる。
【0089】
次に、本発明においては、本発明にかかる紙カップを構成する積層材を形成するいずれかの層間に所望の印刷模様層を形成することができるものである。
上記の印刷模様層としては、例えば、上記の紙基材若しくは最外層の上に、通常のグラビアインキ組成物、オフセットインキ組成物、凸版インキ組成物、スクリーンインキ組成物、その他のインキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、その他の印刷方式を使用し、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他からなる所望の印刷絵柄を形成することにより構成することができる。
上記インキ組成物について、インキ組成物を構成するビヒクルとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルオキシエチルセルロースなどの繊維素系樹脂、塩化ゴム、環化ゴムなどのゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン、カゼインなどの天然樹脂、アマニ油、大豆油などの油脂類、その他の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。
本発明において、上記のようなビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、染料・顔料などの着色剤の1種ないし2種以上を加え、さらに必要ならば、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤、その他の添加剤を任意に添加し、溶剤、希釈剤などで充分に混練してなる各種の形態からなるインキ組成物を使用することができる。
【0090】
なお、本発明において、上記のような材料を使用して積層材を製造する方法について説明すると、かかる方法としては、通常の包装材料をラミネ−トする方法、例えば、ウエットラミネ−ション法、ドライラミネ−ション法、無溶剤型ドライラミネ−ション法、押出ラミネ−ション法、Tダイ押出成形法、共押出ラミネ−ション法、インフレ−ション法、共押出インフレ−ション法、その他等で行うことができる。
而して、本発明においては、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、その他等の前処理を任意に施すことができ、また、例えば、イソシアネ−ト系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカ−コ−ト剤、あるいは、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロ−ス系、その他等のラミネ−ト用接着剤等の公知のアンカ−コ−ト剤、ラミネ−ト用接着剤等を任意に使用することができる。
【0091】
本発明において、本発明にかかる積層材を製造する方法について、具体的に述べると、例えば、ラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤層を介して積層するドライラミネーション法、あるいは、溶融押し出し接着性樹脂による溶融押し出し樹脂層を介して積層する押し出しラミネーション法などで行うことができる。
上記において、ラミネート用接着剤としては、例えば、1液、あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などのラミネート用接着剤を使用することができる。
上記ラミネート用接着剤のコーティング法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。
そのコーティング量としては、好ましくは0.1〜10g/m2 (乾燥状態)位、より好ましくは1〜5g/m2 (乾燥状態)位である。
なお、上記ラミネート用接着剤には、例えば、シランカップリング剤などの接着促進剤を任意に添加することができる。
【0092】
また、上記において、溶融押出接着性樹脂としては、前述のヒートシール性樹脂層を形成するヒートシール性樹脂を同様に使用することができ、低密度ポリエチレン、特に、線状低密度ポリエチレン、酸変性ポリエチレンを使用することが好ましい。
上記の溶融押出接着性樹脂による溶融押出樹脂層の膜厚は、好ましくは5〜100μm位、さらに好ましくは、10〜50μm位である。
なお、本発明において、上記の積層を行う際に、より強固な接着強度を得る必要がある場合には、アンカーコート剤などの接着改良剤などをコートすることもできる。
上記アンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネートなどの有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、その他の水性または油性の各種のアンカーコート剤を使用することができる。
本発明においては、上記アンカーコート剤を、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤などを乾燥して、アンカーコート剤層を形成することができる。
上記アンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2 (乾燥状態)位が好ましい。
【0093】
次にまた、本発明において、本発明にかかる紙カップとしては、例えば、その形状としては、三角形、四角形、五角形、六角形、その他等の角形形状、あるいは、丸形等の円筒形状の紙缶等のいずれのものでも製造することができる。
更に、本発明において、本発明にかかる紙カップには、例えば、飲料、調味料、あるいは、カレ−、シチュ−、ス−プ等の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品等の雑貨品、その他等の種々の物品を充填包装することができるものである。
【0094】
【実施例】
上記の本発明について実施例を挙げて更に具体的に説明する。
実施例1
(1).厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロ−ルに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記の二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムのコロナ処理面に、厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着面;コロナ処理面
導入ガス量;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:3.0:3.0(単位:slm)
真空チャンバ−内の真空度;2〜6×10−6mBar
蒸着チャンバ−内の真空度;2〜5×10−3mBar
冷却・電極ドラム供給電力;10kW
ライン速度;100m/min
次に、上記で膜厚200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その酸化珪素の蒸着膜面に、グロ−放電プラズマ発生装置を使用し、パワ−9kw、酸素ガス(O2 ):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10−5Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させてたプラズマ処理面を形成した。
(2).他方、還流冷却器、攪拌機を備えた反応器に、テトラ−i−プロポキシチタン100部、アセチルアセトン70部を加え、60℃で30分間攪拌し、チタンキレート化合物を得た。
この反応生成物の純度は75%であった。
次に、(A)成分として、エチレン・ビニルアルコール共重合体〔日本合成化学株式会社製、商品名、ソアノールD2935、ケン化度;98%以上、エチレン含量;29モル%、メルトフローインデックス;35g/10分〕、および、ポリビニルピロリドン〔和光純薬株式会社製、Mw=25,000〕を、それぞれ、5%含む水/n−プロピルアルコール溶液(水/n−プロピルアルコール重量比=40/60)100部と、ならびに、上記で調製したチタンキレート化合物2部とn−プロピルアルコール16.8部、および水11.2部を混合して、55℃で4時間加水分解した(B)成分と、更に、N,N−ジメチルホルムアミド12.1部とを、40℃で混合して2時間攪拌し、本発明のガスバリア性組成物を得た。
次に、上記の(1)で製造した酸化硅素の蒸着膜のプラズマ処理面の面に、上記で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、120℃で1分間、加熱処理して、厚さ1.0g/m2 (乾燥状態)のガスバリア性塗布膜を形成して、バリア性層を製造した。
(3).次に、塩化カルシウムをコ−ティングした平均粒径25μmの還元鉄40重量部に対し低密度ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)60重量部をドライブレンドして樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を、押出ラミネ−ト機を用いて、上記の(2)で製造したバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの上に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トして、酸素吸収性樹脂層を形成した。
(4).次に、紙基材〔米国、ポトラッチ(Potlatch)社製、坪量400g/m2 〕の一方の面に、コロナ放電処理を施した後、該コロナ放電処理面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:20μm)を使用し、これを押出コ−トして低密度ポリエチレン樹脂層を形成した。
次に、上記の紙基材の非コ−ト面に、ポリエチレンイミン系アンカ−コ−ト剤層を設けた後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、上記の(3)で酸素吸収性樹脂層を形成したバリア性層のガスバリア性塗布膜の面に、コロナ処理を施しながら、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポン株式会社製、商品名、N0908C、膜厚20μm)を溶融押出し、オゾン処理を行いながら、上記の紙基材とバリア性層とをサンドラミネ−トした。
(5).更に、上記の(4)で紙基材とバリア性層とをサンドラミネ−トした後、そのバリア性層を構成する酸素吸収性樹脂層の面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:20μm)とメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂(日本ポリケム株式会社製、商品名、KC570S、押出膜厚:20μm)とを使用し、これらを、低密度ポリエチレン樹脂層とメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層との2層の共押出積層樹脂層からなり、かつ、低密度ポリエチレン樹脂層の膜厚を20μm、また、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層の膜厚を20μmとし、合計40μmからなる共押出積層樹脂層とし、更に、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層の面を最内層面となるようにして、共押出ラミネ−トして、最内層を形成して、本発明に係る積層材を製造した。
(6).次いで、上記で製造した積層材を使用し、該積層材から紙カップの胴部を作る円錐台形のブランク板を打ち抜き加工し、更に、スカイブ・ヘミング等の端面処理を行った。
次に、上記のブランク板を筒状に巻いてその両側端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分にフレ−ム処理、あるいは、ホットエア−処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在する最外層と最内層とを構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、次いで、熱板等によって押圧して胴貼りを行って胴シ−ル部を形成して、紙カップを構成する筒状のカップ胴部を製造した。
他方、上記と同様に、上記で製造した積層材を使用し、これを円形状に打ち抜き加工して、底部を構成する円板を製造し、次いで、該円板の外周部を筒状に起立成形して、起立成形部を有する底部を製造した。
次いで、上記で製造した筒状のカップ胴部に、同じく上記で製造した底部を挿入し、しかる後、その筒状のカップ胴部と底部とを、その接合部分に熱風等を吹きつけてその接合部分に存在する最外層と最内層を構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、次いで、カ−ル用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立成形部にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部との重合部分を内径側からロ−レットによりロ−レットがけすることにより、上記の筒状のカップ胴部と底部とを密接着させて接合部を形成して、上記の筒状のカップ胴部と底部とからなる紙カップ底部を形成した。
しかる後、上記の筒状のカップ胴部の底部を密接着させて接合部を形成した側と反対側の先端端部を、上記と同様にカ−ル用型により外方に折り曲げながらカ−ルさせて、上端フランジ部を形成して、本発明にかかる容量500ccの紙カップを製造した。
(7).次に、上記で製造した紙カップの上端の開口部から、味噌を充填し、次いで、その上に、パ−チメイト紙を敷き、更に、脱酸素剤を載せ、しかる後、紙カップの開口部の上端フランジ部に蓋材を密接着させて開口部を密閉シ−ルして味噌包装体を製造した。
上記で製造した味噌包装体においては、炙りピンホ−ル等の発生は認められず、更に、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、かつ、保香性に優れ、その内容物の変質は認められず、また、ラミネ−ト強度等に優れ、市場における流通に耐え、かつ、貯蔵保存等に優れているものであった。
【0095】
実施例2
(1).上記の実施例1で製造したバリア性層を同様に使用し、そのバリア性層を構成するガスバリア性塗布膜の面に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度320℃、押出膜厚20μm)を使用し、これを押出コ−トして、厚さ20μmの低密度ポリエチレン樹脂層を形成した。
他方、上記のバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの面に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通して、アンカ−コ−ト剤層を形成した。
次に、塩化カルシウムをコ−ティングした平均粒径25μmの還元鉄40重量部に対し低密度ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)60重量部をドライブレンドして樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を、押出ラミネ−ト機を用いて、上記で形成したバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムのアンカ−コ−ト剤層の面に、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トして、酸素吸収性樹脂層を形成した。
(2).次に、紙基材〔米国、ポトラッチ(Potlatch)社製、坪量400g/m2 〕の一方の面に、コロナ放電処理を施した後、該コロナ放電処理面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:20μm)を使用し、これを押出コ−トして、低密度ポリエチレン樹脂層を形成した。
次に、上記の紙基材の非コ−ト面に、ポリエチレンイミン系アンカ−コ−ト剤層を設けた後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、上記の(1)でバリア性層を構成するガスバリア性塗布膜の面に設けた低密度ポリエチレン樹脂層の面を対向させ、その層間に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:15μm)を使用し、これを溶融押出しながら押出コ−トして、上記の紙基材とバリア性層とをサンドラミネ−トした。
(3).更に、上記の(2)で紙基材とバリア性層とをサンドラミネ−トした後、そのバリア性層を構成する酸素吸収性樹脂層の面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:20μm)とメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂(日本ポリケム株式会社製、商品名、KC570S、押出膜厚:20μm)とを使用し、これらを、低密度ポリエチレン樹脂層とメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層との2層の共押出積層樹脂層からなり、かつ、低密度ポリエチレン樹脂層の膜厚を20μm、また、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層の膜厚を20μmとし、合計40μmからなる共押出積層樹脂層とし、更に、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層の面を最内層面となるようにして、共押出ラミネ−トして、最内層を形成して、本発明に係る積層材を製造した。
(4).次いで、上記で製造した積層材を使用し、該積層材から紙カップの胴部を作る円錐台形のブランク板を打ち抜き加工し、更に、スカイブ・ヘミング等の端面処理を行った。
次に、上記のブランク板を筒状に巻いてその両側端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分にフレ−ム処理、あるいは、ホットエア−処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在する最外層と最内層とを構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、次いで、熱板等によって押圧して胴貼りを行って胴シ−ル部を形成して、紙カップを構成する筒状のカップ胴部を製造した。
他方、上記と同様に、上記で製造した積層材を使用し、これを円形状に打ち抜き加工して、底部を構成する円板を製造し、次いで、該円板の外周部を筒状に起立成形して、起立成形部を有する底部を製造した。
次いで、上記で製造した筒状のカップ胴部に、同じく上記で製造した底部を挿入し、しかる後、その筒状のカップ胴部と底部とを、その接合部分に熱風等を吹きつけてその接合部分に存在する最外層と最内層を構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、次いで、カ−ル用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立成形部にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部との重合部分を内径側からロ−レットによりロ−レットがけすることにより、上記の筒状のカップ胴部と底部とを密接着させて接合部を形成して、上記の筒状のカップ胴部と底部とからなる紙カップ底部を形成した。
しかる後、上記の筒状のカップ胴部の底部を密接着させて接合部を形成した側と反対側の先端端部を、上記と同様にカ−ル用型により外方に折り曲げながらカ−ルさせて、上端フランジ部を形成して、本発明にかかる容量500ccの紙カップを製造した。
(5).次に、上記で製造した紙カップの上端の開口部から、味噌を充填し、次いで、その上に、パ−チメイト紙を敷き、更に、脱酸素剤を載せ、しかる後、紙カップの開口部の上端フランジ部に蓋材を密接着させて開口部を密閉シ−ルして味噌包装体を製造した。
上記で製造した味噌包装体においては、炙りピンホ−ル等の発生は認められず、更に、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、かつ、保香性に優れ、その内容物の変質は認められず、また、ラミネ−ト強度等に優れ、市場における流通に耐え、かつ、貯蔵保存等に優れているものであった。
【0096】
実施例3
(1).上記の実施例1で製造したバリア性層を同様に使用し、そのバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの上に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通して、アンカ−コ−ト剤層を形成した。
他方、塩化カルシウムをコ−ティングした平均粒径25μmの還元鉄40重量部に対し低密度ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)60重量部をドライブレンドして樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を、押出ラミネ−ト機を用いて、上記で形成したバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの上のアンカ−コ−ト剤層の面に、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トして、酸素吸収性樹脂層を形成した。
(2).次に、紙基材〔米国、ポトラッチ(Potlatch)社製、坪量400g/m2 〕の一方の面に、コロナ放電処理を施した後、該コロナ放電処理面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:20μm)を使用し、これを押出コ−トして低密度ポリエチレン樹脂層を形成した。
次に、上記の紙基材の非コ−ト面に、ポリエチレンイミン系アンカ−コ−ト剤層を設けた後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、上記の(1)で酸素吸収性樹脂層を形成したバリア性層を構成するガスバリア性塗布膜の面に、コロナ処理を施しながら、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポン株式会社製、商品名、N0908C、押出温度:298℃、押出膜厚:20μm)を溶融押出しながら、上記の紙基材とバリア性層とをサンドラミネ−トした。
(3).更に、上記の(2)で紙基材とバリア性層とをサンドラミネ−トした後、そのバリア性層を構成する酸素吸収性樹脂層の面に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通して、アンカ−コ−ト剤層を形成した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、押出ラミネ−ト機を使用して、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:15μm)を使用し、これを押出ラミネ−トして、最内層を形成して、本発明に係る積層材を製造した。
(4).次いで、上記で製造した積層材を使用し、該積層材から紙カップの胴部を作る円錐台形のブランク板を打ち抜き加工し、更に、スカイブ・ヘミング等の端面処理を行った。
次に、上記のブランク板を筒状に巻いてその両側端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分にフレ−ム処理、あるいは、ホットエア−処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在する最外層と最内層とを構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、次いで、熱板等によって押圧して胴貼りを行って胴シ−ル部を形成して、紙カップを構成する筒状のカップ胴部を製造した。
他方、上記と同様に、上記で製造した積層材を使用し、これを円形状に打ち抜き加工して、底部を構成する円板を製造し、次いで、該円板の外周部を筒状に起立成形して、起立成形部を有する底部を製造した。
次いで、上記で製造した筒状のカップ胴部に、同じく上記で製造した底部を挿入し、しかる後、その筒状のカップ胴部と底部とを、その接合部分に熱風等を吹きつけてその接合部分に存在する最外層と最内層を構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、次いで、カ−ル用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立成形部にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部との重合部分を内径側からロ−レットによりロ−レットがけすることにより、上記の筒状のカップ胴部と底部とを密接着させて接合部を形成して、上記の筒状のカップ胴部と底部とからなる紙カップ底部を形成した。
しかる後、上記の筒状のカップ胴部の底部を密接着させて接合部を形成した側と反対側の先端端部を、上記と同様にカ−ル用型により外方に折り曲げながらカ−ルさせて、上端フランジ部を形成して、本発明にかかる容量500ccの紙カップを製造した。
(5).次に、上記で製造した紙カップの上端の開口部から、味噌を充填し、次いで、その上に、パ−チメイト紙を敷き、更に、脱酸素剤を載せ、しかる後、紙カップの開口部の上端フランジ部に蓋材を密接着させて開口部を密閉シ−ルして味噌包装体を製造した。
上記で製造した味噌包装体においては、炙りピンホ−ル等の発生は認められず、更に、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、かつ、保香性に優れ、その内容物の変質は認められず、また、ラミネ−ト強度等に優れ、市場における流通に耐え、かつ、貯蔵保存等に優れているものであった。
【0097】
実施例4
(1).上記の実施例1と同様にして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムを使用し、そのコロナ処理面に、厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成し、その酸化珪素の蒸着膜の面に、プラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させてたプラズマ処理面を形成した。
次に、上記で形成したプラズマ処理面の面に、ポリウレタン系樹脂の初期縮合物に、エポキシ系のシランカップリング剤(8.0重量%)とブロッキング防止剤(1.0重量%)を添加し、十分に混練してなるポリウレタン系樹脂組成物を使用し、これをグラビアロ−ルコ−ト法により、膜厚0.5g/m2 (乾燥状態)になるようにコ−ティングし、次いで、乾燥してプライマ−剤層を形成して、バリア性層を製造した。
(2).次に、塩化カルシウムをコ−ティングした平均粒径25μmの還元鉄40重量部に対し低密度ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)60重量部をドライブレンドして樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を、押出ラミネ−ト機を用いて、上記の(1)で製造したバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの上に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トして、酸素吸収性樹脂層を形成した。
(3).次に、紙基材〔米国、ポトラッチ(Potlatch)社製、坪量400g/m2 〕の一方の面に、コロナ放電処理を施した後、該コロナ放電処理面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:20μm)を使用し、これを押出コ−トして低密度ポリエチレン樹脂層を形成した。
次に、上記の紙基材の非コ−ト面に、ポリエチレンイミン系アンカ−コ−ト剤層を設けた後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、上記の(2)で酸素吸収性樹脂層を形成したバリア性層のプライマ−剤層の面に、コロナ処理を施しながら、エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポン株式会社製、商品名、N0908C、膜厚20μm)を溶融押出し、オゾン処理を行いながら、上記の紙基材とバリア性層とをサンドラミネ−トした。
(4).更に、上記の(4)で紙基材とバリア性層とをサンドラミネ−トした後、そのバリア性層を構成する酸素吸収性樹脂層の面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:20μm)とメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂(日本ポリケム株式会社製、商品名、KC570S、押出膜厚:20μm)とを使用し、これらを、低密度ポリエチレン樹脂層とメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層との2層の共押出積層樹脂層からなり、かつ、低密度ポリエチレン樹脂層の膜厚を20μm、また、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層の膜厚を20μmとし、合計40μmからなる共押出積層樹脂層とし、更に、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層の面を最内層面となるようにして、共押出ラミネ−トして、最内層を形成して、本発明に係る積層材を製造した。
(5).次いで、上記で製造した積層材を使用し、該積層材から紙カップの胴部を作る円錐台形のブランク板を打ち抜き加工し、更に、スカイブ・ヘミング等の端面処理を行った。
次に、上記のブランク板を筒状に巻いてその両側端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分にフレ−ム処理、あるいは、ホットエア−処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在する最外層と最内層とを構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、次いで、熱板等によって押圧して胴貼りを行って胴シ−ル部を形成して、紙カップを構成する筒状のカップ胴部を製造した。
他方、上記と同様に、上記で製造した積層材を使用し、これを円形状に打ち抜き加工して、底部を構成する円板を製造し、次いで、該円板の外周部を筒状に起立成形して、起立成形部を有する底部を製造した。
次いで、上記で製造した筒状のカップ胴部に、同じく上記で製造した底部を挿入し、しかる後、その筒状のカップ胴部と底部とを、その接合部分に熱風等を吹きつけてその接合部分に存在する最外層と最内層を構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、次いで、カ−ル用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立成形部にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部との重合部分を内径側からロ−レットによりロ−レットがけすることにより、上記の筒状のカップ胴部と底部とを密接着させて接合部を形成して、上記の筒状のカップ胴部と底部とからなる紙カップ底部を形成した。
しかる後、上記の筒状のカップ胴部の底部を密接着させて接合部を形成した側と反対側の先端端部を、上記と同様にカ−ル用型により外方に折り曲げながらカ−ルさせて、上端フランジ部を形成して、本発明にかかる容量500ccの紙カップを製造した。
(6).次に、上記で製造した紙カップの上端の開口部から、味噌を充填し、次いで、その上に、パ−チメイト紙を敷き、更に、脱酸素剤を載せ、しかる後、紙カップの開口部の上端フランジ部に蓋材を密接着させて開口部を密閉シ−ルして味噌包装体を製造した。
上記で製造した味噌包装体においては、炙りピンホ−ル等の発生は認められず、更に、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、かつ、保香性に優れ、その内容物の変質は認められず、また、ラミネ−ト強度等に優れ、市場における流通に耐え、かつ、貯蔵保存等に優れているものであった。
【0098】
実施例5
(1).基材フィルムとして、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムを使用し、まず、上記の2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロ−ルにに装着し、次いで、これを繰り出し、その2軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムのコロナ処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビ−ム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、下記の蒸着条件により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバ−内の真空度:2×10−4mbar
巻き取りチャンバ−内の真空度:2×10−2mbar
電子ビ−ム電力:25kW
フィルムの搬送速度:240m/分
蒸着面:コロナ処理面
次に、上記で厚さ200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した直後に、その酸化アルミニウムの蒸着膜面に、上記の実施例1と同様にして、プラズマ処理面を形成した。
更に、上記で形成したプラズマ処理面に、ポリウレタン系樹脂の初期縮合物に、エポキシ系のシランカップリング剤(8.0重量%)とブロッキング防止剤(1.0重量%)を添加し、十分に混練してなるポリウレタン系樹脂組成物を使用し、これをグラビアロ−ルコ−ト法により、膜厚0.5g/m2 (乾燥状態)になるようにコ−ティングし、次いで、乾燥してプライマ−剤層を形成して、バリア性層を製造した。
(2).次に、上記の(1)で製造したバリア性層を構成するプライマ−剤層の面に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度320℃、押出膜厚20μm)を使用し、これを押出コ−トして、厚さ20μmの低密度ポリエチレン樹脂層を形成した。
他方、上記のバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの面に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通して、アンカ−コ−ト剤層を形成した。
次に、塩化カルシウムをコ−ティングした平均粒径25μmの還元鉄40重量部に対し低密度ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)60重量部をドライブレンドして樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を、押出ラミネ−ト機を用いて、上記で形成したバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムのアンカ−コ−ト剤層の面に、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トして、酸素吸収性樹脂層を形成した。
(3).次に、紙基材〔米国、ポトラッチ(Potlatch)社製、坪量400g/m2 〕の一方の面に、コロナ放電処理を施した後、該コロナ放電処理面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:20μm)を使用し、これを押出コ−トして、低密度ポリエチレン樹脂層を形成した。
次に、上記の紙基材の非コ−ト面に、ポリエチレンイミン系アンカ−コ−ト剤層を設けた後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、上記の(2)でバリア性層を構成するプライマ−剤層の面に設けた低密度ポリエチレン樹脂層の面を対向させ、その層間に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:15μm)を使用し、これを溶融押出しながら押出コ−トして、上記の紙基材とバリア性層とをサンドラミネ−トした。
(4).更に、上記の(2)で紙基材とバリア性層とをサンドラミネ−トした後、そのバリア性層を構成する酸素吸収性樹脂層の面に、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン16P、押出温度:320℃、押出膜厚:20μm)とメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂(日本ポリケム株式会社製、商品名、KC570S、押出膜厚:20μm)とを使用し、これらを、低密度ポリエチレン樹脂層とメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層との2層の共押出積層樹脂層からなり、かつ、低密度ポリエチレン樹脂層の膜厚を20μm、また、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層の膜厚を20μmとし、合計40μmからなる共押出積層樹脂層とし、更に、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層の面を最内層面となるようにして、共押出ラミネ−トして、最内層を形成して、本発明に係る積層材を製造した。
(5).次いで、上記で製造した積層材を使用し、該積層材から紙カップの胴部を作る円錐台形のブランク板を打ち抜き加工し、更に、スカイブ・ヘミング等の端面処理を行った。
次に、上記のブランク板を筒状に巻いてその両側端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分にフレ−ム処理、あるいは、ホットエア−処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在する最外層と最内層とを構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、次いで、熱板等によって押圧して胴貼りを行って胴シ−ル部を形成して、紙カップを構成する筒状のカップ胴部を製造した。
他方、上記と同様に、上記で製造した積層材を使用し、これを円形状に打ち抜き加工して、底部を構成する円板を製造し、次いで、該円板の外周部を筒状に起立成形して、起立成形部を有する底部を製造した。
次いで、上記で製造した筒状のカップ胴部に、同じく上記で製造した底部を挿入し、しかる後、その筒状のカップ胴部と底部とを、その接合部分に熱風等を吹きつけてその接合部分に存在する最外層と最内層を構成する低密度ポリエチレン樹脂層を加熱溶融し、次いで、カ−ル用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立成形部にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部の先端部と底部の起立成形部との重合部分を内径側からロ−レットによりロ−レットがけすることにより、上記の筒状のカップ胴部と底部とを密接着させて接合部を形成して、上記の筒状のカップ胴部と底部とからなる紙カップ底部を形成した。
しかる後、上記の筒状のカップ胴部の底部を密接着させて接合部を形成した側と反対側の先端端部を、上記と同様にカ−ル用型により外方に折り曲げながらカ−ルさせて、上端フランジ部を形成して、本発明にかかる容量500ccの紙カップを製造した。
(6).次に、上記で製造した紙カップの上端の開口部から、味噌を充填し、次いで、その上に、パ−チメイト紙を敷き、更に、脱酸素剤を載せ、しかる後、紙カップの開口部の上端フランジ部に蓋材を密接着させて開口部を密閉シ−ルして味噌包装体を製造した。
上記で製造した味噌包装体においては、炙りピンホ−ル等の発生は認められず、更に、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、かつ、保香性に優れ、その内容物の変質は認められず、また、ラミネ−ト強度等に優れ、市場における流通に耐え、かつ、貯蔵保存等に優れているものであった。
【0099】
比較例1
上記の実施例1において、上記の実施例1の(3)の塩化カルシウムをコ−ティングした平均粒径25μmの還元鉄40重量部に対し低密度ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)60重量部をドライブレンドして樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を、押出ラミネ−ト機を用いて、上記の実施例1の(2)で製造したバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの上に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トして、酸素吸収性樹脂層を形成する代りに、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)を使用し、これを、押出ラミネ−ト機を用いて、上記の実施例1の(2)で製造したバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの上に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トして、低密度ポリエチレン樹脂層を形成し、その他は、上記の実施例1と全く同様にして、上記の実施例1と同様に、紙カップ、更に、それを使用して味噌包装体を製造した。
【0100】
比較例2
上記の実施例2において、上記の実施例2の(1)のバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの面に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通して、アンカ−コ−ト剤層を形成した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、塩化カルシウムをコ−ティングした平均粒径25μmの還元鉄40重量部に対し低密度ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)60重量部をドライブレンドして樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を、押出ラミネ−ト機を用いて、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トした酸素吸収性樹脂層を形成する代りに、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)を使用し、これを、押出ラミネ−ト機を用いて、上記の実施例2の(1)のバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの上に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トして、低密度ポリエチレン樹脂層を形成し、その他は、上記の実施例2と全く同様にして、上記の実施例2と同様に、紙カップ、更に、それを使用して味噌包装体を製造した。
【0101】
比較例3
上記の実施例5において、上記の実施例2の(2)のバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの面に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通して、アンカ−コ−ト剤層を形成した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、塩化カルシウムをコ−ティングした平均粒径25μmの還元鉄40重量部に対し低密度ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)60重量部をドライブレンドして樹脂組成物を調製し、次いで、該樹脂組成物を、押出ラミネ−ト機を用いて、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トして、酸素吸収性樹脂層を形成する代りに、低密度ポリエチレン樹脂(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名、スミカセン206P)を使用し、これを、押出ラミネ−ト機を用いて、上記の実施例5の(2)のバリア性層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ−トフィルムの上に、2液硬化型のエステル系アンカ−コ−ト剤〔武田薬品工業株式会社製、商品名、タケラックA3210/タケネ−トA3075、コ−ト量:1g/m2 (乾燥状態)〕をグラビアコ−タ−にて塗布し、乾燥炉を通した後、そのアンカ−コ−ト剤層の面に、厚さ20μmに溶融押出ラミネ−トして、低密度ポリエチレン樹脂層を形成し、その他は、上記の実施例5と全く同様にして、上記の実施例5と同様に、紙カップ、更に、それを使用して味噌包装体を製造した。
【0102】
実験例
上記の実施例1〜5、および、比較例1〜3で製造した紙カップについて、酸素濃度と内容物の変色について測定した。
(1).酸素濃度の測定
これは、上記の実施例1〜5、および、比較例1〜3で製造した紙カップを使用し、これに、味噌を充填包装し、次いで、25℃で1週間保存した後、紙カップのヘッドスペ−ス内の酸素濃度をジルコニア式酸素計にて測定して評価した。
(2).内容物の変色の測定
これは、上記の実施例1〜5、および、比較例1〜3で製造した紙カップを使用し、これに、味噌を充填包装し、次いで、25℃で1ヶ月間保存した後、味噌の変色度合いを目視にて観察して測定した。
上記の測定結果について下記の表1に示す。
【0103】
(表1)
【0104】
上記の表1に示す測定結果から明らかなように、実施例1〜5にかかるものは、ヘッドスペ−ス内の酸素濃度が0%であり、かつ、内容物の変色も認められず、内容物の貯蔵性、保存性等に極めて優れているものであった。
【0105】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明は、少なくとも、紙基材、接着剤層、基材フィルムの一方の面に金属または無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性層、酸素吸収性樹脂層、および、最内層を順次に積層して積層材、あるいは、少なくとも、最外層、紙基材、接着剤層、基材フィルムの一方の面に金属または無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性層、酸素吸収性樹脂層、および、最内層を順次に積層して積層材を製造し、而して、該積層材を使用し、まず、所望の形状にブランク板を打ち抜き、更に、スカイブ・ヘミング等の端面処理を加工してブランク板を形成し、次に、該ブランク板を筒状に巻いてその両側端部を部分的に重ね合わせ、その重合部分にフレ−ム処理、あるいは、ホットエア−処理等の加熱処理を行い、上記の重合部分に存在する最内層、あるいは、最外層および最内層を加熱溶融し、次いで、熱板等によって押圧して胴貼りを行って胴シ−ル部を形成して紙カップを構成する筒状のカップ胴部材を製造し、他方、上記のブランク板を構成する積層材と同じ積層材を使用し、これを円形状に打ち抜き加工して、底部を構成する円板を製造し、次いで、該円板の外周部を筒状に起立成形して、起立成形部を有する底部材を製造し、次いで、上記で製造した筒状のカップ胴部材に、同じく上記で製造した底部材を挿入し、しかる後、その筒状のカップ胴部材と底部材とを、その接合部分に熱風等を吹きつけてその接合部分に存在する最内層、あるいは、最外層および最内層を加熱溶融し、次いで、カ−ル用型により筒状のカップ胴部の先端部を内方に折り曲げて、上記の底部を構成する起立成形部にかぶせて、上記の筒状のカップ胴部材の先端部と底部材の起立成形部との重合部分を内径側からロ−レットによりロ−レットがけすることにより、上記の筒状のカップ胴部材と底部材とを接合させて接合部を形成し、しかる後、上記の筒状のカップ胴部材の底部を取り付けた側と反対側の先端端部を、上記と同様にカ−ル用型により外方に折り曲げながらカ−ルさせて、上端フランジ部を形成して紙カップを製造し、而して、上記で製造した紙カップ内に、その上端の開口部から内容物を充填し、次に、紙カップを構成する上端フランジ部に蓋材等を密接着させてその開口部を密閉して、内容物を充填包装した紙カップ包装体を製造して、バリア性層を構成する酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜にクラック等の発生を防止すると共に低温シ−ルを可能として炙りピンホ−ル等の発生を皆無とし、これにより、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、ピンホ−ルの発生に伴いシ−ル不良、液漏れ等を回避し、更に、容器内に残存する酸素や容器壁を透過する酸素による内容物の変質、変色、フレ−バ−低下等を防止し、その保存性、貯蔵性等に優れた紙カップを製造し得ることができるというものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる紙カップを構成する積層材についてその一例の層構成を示す概略的断面図である。
【図2】本発明にかかる紙カップを構成する積層材についてその一例の層構成を示す概略的断面図である。
【図3】本発明にかかる紙カップを構成する積層材についてその一例の層構成を示す概略的断面図である。
【図4】上記の図1に示す積層材を使用し、本発明にかかる紙カップについてその各製函工程における紙カップの構成を示す概略的構成図である。
【図5】上記の図1に示す積層材を使用し、本発明にかかる紙カップについてその各製函工程における紙カップの構成を示す概略的構成図である。
【図6】上記の図1に示す積層材を使用し、本発明にかかる紙カップについてその各製函工程における紙カップの構成を示す概略的構成図である。
【図7】上記の図1に示す積層材を使用し、本発明にかかる紙カップについてその各製函工程における紙カップの構成を示す概略的構成図である。
【図8】プラズマ化学気相成長装置についてその概要を示す概略的構成図である。
【図9】巻き取り式真空蒸着装置についてその概要を示す概略的構成図である。
【図10】従来の紙カップについてその各製函工程における紙カップの構成を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
A、A1 、A2 積層材
1 紙基材
2 接着剤層
3 基材フィルム
4 金属または無機酸化物の蒸着膜
5 バリア性層
6 酸素吸収性樹脂層
7 最内層
8 最外層
Claims (19)
- 筒状のカップ胴部材と、該筒状のカップ胴部材の底部を密閉する底部材とからなる紙カップにおいて、上記の筒状のカップ胴部材と底部材とを、少なくとも、紙基材、接着剤層、基材フィルムの一方の面に金属または無機酸化物の蒸着膜を設けたバリア性層、酸素吸収性樹脂層、および、最内層を順次に積層して積層材を構成し、更に、該積層材を使用し、これを製函してなることを特徴とする紙カップ。
- 紙基材が、その他方の表面に、最外層を設けることを特徴とする上記の請求項1に記載する紙カップ。
- 積層材が、バリア性層を構成する金属または無機酸化物の蒸着膜を、紙基材の面に対向させて積層した積層材からなることを特徴とする上記の請求項1〜2のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 紙基材が、坪量80〜600g/m2 の紙基材からなることを特徴とする上記の請求項1〜3のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 接着剤層が、溶融押出樹脂層からなることを特徴とする上記の請求項1〜4のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 接着剤層が、ポリオレフィン系樹脂による1層ないしそれ以上の溶融押出樹脂層、または、エチレン−不飽和カルボン酸またはそのエステル化物との共重合体による300℃以下で溶融押出した溶融押出樹脂層からなることを特徴とする上記の請求項1〜5のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 基材フィルムが、2軸延伸加工した樹脂のフィルムないしシ−トからなることを特徴とする上記の請求項1〜6のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 金属または無機酸化物の蒸着膜が、化学気相成長法または物理気相成長法による金属または無機酸化物の蒸着膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜7のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 無機酸化物の蒸着膜が、化学気相成長法による酸化珪素の蒸着膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜8のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 金属または無機酸化物の蒸着膜が、物理気相成長法によるアルミニウムまたは酸化アルミニウムの蒸着膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜8のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 金属または無機酸化物の蒸着膜が、その他方の面に、プライマ−剤層、または、ガスバリア性塗布膜を設けることを特徴とする上記の請求項1〜10のいずれか1項に記載する紙カップ。
- プライマ−剤層が、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とする樹脂組成物によるコ−ティング膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜11のいずれか1項に記載する紙カップ。
- プライマ−剤層が、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とし、更に、シランカップリング剤と充填剤とを含む樹脂組成物によるコ−ティング膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜12のいずれか1項に記載する紙カップ。
- ガスバリア性塗布膜が、少なくとも、ポリビニルアルコ−ル系樹脂と、一般式R1 m M(OR2 )n (式中、Mは、金属原子を表し、R1 は、同一または異なり、炭素数1〜8の有機基を表し、R2 は、同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基もしくはフェニル基を表し、mおよびnは、それぞれ0以上の整数を表し、m+nは、Mの原子価を表す。)で表される金属アルコレ−ト、該金属アルコレ−トの加水分解物、該金属アルコレ−トの縮合物、該金属アルコレ−トのキレ−ト化合物、該キレ−ト化合物の加水分解物および金属アシレ−トの群から選ばれた少なくとも1種とを含有するガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜11のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 酸素吸収性樹脂層が、少なくとも、樹脂の1種ないしそれ以上と、遷移金属化合物の1種ないしそれ以上とを含む樹脂組成物によるブレンド樹脂膜からなることを特徴とする上記の請求項1〜14のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 最内層が、ヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂層からなることを特徴とする上記の請求項1〜15のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 最内層が、ヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂による共押出積層樹脂層からなることを特徴とする上記の請求項1〜16のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 最内層が、低密度ポリエチレンとメタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体との共押出積層樹脂層からなることを特徴とする上記の請求項1〜17のいずれか1項に記載する紙カップ。
- 最外層が、ヒ−トシ−ル性を有するポリオレフィン系樹脂層からなることを特徴とする上記の請求項1〜18のいずれか1項に記載する紙カップ。
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