JP2005050993A - 酸化物半導体レーザ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低雑音で信頼性の高い酸化物半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】 半導体レーザ素子は、ZnO障壁層とCd0.1Zn0.9O井戸層とから成る量子井戸活性層105と、この量子井戸活性層105に対して独立して形成されたp型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108とを備えて、自励発振する。これにより、雑音および消費電力を低く抑えることが出来る。
【選択図】 図1
【解決手段】 半導体レーザ素子は、ZnO障壁層とCd0.1Zn0.9O井戸層とから成る量子井戸活性層105と、この量子井戸活性層105に対して独立して形成されたp型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108とを備えて、自励発振する。これにより、雑音および消費電力を低く抑えることが出来る。
【選択図】 図1
Description
本発明は半導体レーザ素子に関し、さらに詳しくは、低雑音で省電力性と光学特性に優れた酸化物半導体レーザ素子に関する。
近年、高密度な光ディスク記録システムのレーザ光源として利用すべく、3〜3.5eVのバンドギャップエネルギーを有する直接遷移型半導体の結晶成長およびデバイス技術が急速に発展している。特に、III族窒化物半導体の技術進展は目ざましく、光学特性や信頼性は既に実用化の域に達している。一方、酸化物半導体についても現在研究が進みつつあり、特に、ZnO(酸化亜鉛)は励起子結合エネルギーが60meVと極めて高く、また、原材料が安価、環境や人体に無害で成膜手法が簡便であるなどの特徴を有し、高効率・低消費電力で環境性に優れた半導体レーザ素子を実現出来る可能性がある。
以下、ZnOおよびこれを母体としたMgZnOあるいはCdZnOなどで表される混晶を含めてZnO系半導体と言う。
光ディスク記録システムに用いられる従来の半導体レーザ素子では、ディスクなどで反射されたレーザ光が半導体レーザ素子へ再入射することによって雑音が発生する、所謂「戻り光雑音」が問題となっている。この戻り光雑音を低減するための手段として、自励発振現象を利用する方法が知られている。GaAs/AlGaAs系半導体を用いた780nm帯の自励発振型半導体レーザ素子に関しては、特許第2958122号(特許文献1)、特開2000−223780号公報(特許文献2)などに開示されている。また、上記高密度な光ディスク記録システムのレーザ光源として、紫外〜緑色の短波長帯のGaN系半導体レーザ素子が用いられている。このGaN系半導体レーザ素子を自励発振させる技術が、特開平9−191160号公報(特許文献3)、特開平10−294532号公報(特許文献4)、特開2002−246686号公報(特許文献5)および特開2002−151786号公報(特許文献6)などに開示されている。
ところで、ZnO系半導体は強いイオン性に起因する自己補償効果のために従来p型の導電型制御が困難であったが、Applied Physics Letters Vol.81 (2002) p1830などに示されているように、アクセプタ不純物として窒素(N)を用いることで再現性よくp型層が得られるようになった。
これにより、ZnO系半導体を用いて実用的な電子デバイスを作製する研究がさかんになり、特に強い結合エネルギーを有する自由励起子を利用したZnO系半導体発光素子に関して、国際公開第00/16411号パンフレット(特許文献7)、特開2001−44500号公報(特許文献8)、特開2001−287998号公報(特許文献9)および特開2002−16285号公報(特許文献10)などに多くの技術が開示されている。
しかし、ZnO系半導体を始めとする酸化物半導体を用いたレーザ素子に関しては、戻り光雑音を回避出来る好適な構造が未だ開示されていない。
特許第2958122号
特開2000−223780号公報
特開平9−191160号公報
特開平10−294532号公報
特開2002−246686号公報
特開2002−151786号公報
国際公開第00/16411号パンフレット
特開2001−44500号公報
特開2001−287998号公報
特開2002−16285号公報
そこで、本発明の目的は、低雑音で信頼性の高い酸化物半導体レーザ素子を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の酸化物半導体レーザ素子は、酸化物半導体を含む活性層と、この活性層に対して独立して形成された可飽和吸収領域とを備え、自励発振することを特徴としている。
上記構成の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記活性層が酸化物半導体を含むので、強い励起子結合エネルギーを利用して量子効率の極めて高い誘導放出光を得ることが出来、また、自励発振特性を有するので、雑音および消費電力を低く抑えることが出来る。
特に、上記活性層と独立した可飽和吸収領域を形成することにより、活性層と可飽和吸収領域とを各々最適に設計出来る。その結果、閾値増大を抑制出来ると共に、放射角を容易且つ好適に制御出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、基板上に、少なくとも、第1導電型クラッド層、上記活性層、第2導電型クラッド層、第2導電型コンタクト層および電極が順次積層され、上記活性層に供給する電流を狭窄する電流狭窄機構を備え、上記第1導電型クラッド層、上記活性層、第2導電型クラッド層、第2導電型コンタクト層および電流狭窄機構はZnO系半導体を含む。
ここで、「少なくとも」と言う文言は、活性層の両側の光ガイド層、エッチングストップ層、平坦化層およびキャップ層などを設けてもよいということを意味している。
また、本明細書において、第1導電型とは、p型またはn型を意味する。また、第2導電型とは、第1導電型がp型の場合はn型、n型の場合はp型を意味する。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記ZnO系半導体は特に強い励起子発光が得られ、青色〜紫外域にバンドギャップを有する直接遷移型酸化物半導体である。また、上記ZnO系半導体はバンドギャップ制御されたヘテロ構造や量子井戸構造を作製することが出来、実用的なレベルでレーザ発振に要求される構造を作製することが可能である。すなわち、上記ZnO系半導体は低閾値電流で動作する短波長半導体レーザ素子材料として非常に適している。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記可飽和吸収領域は量子効果を奏するドット形状を有する、または、上記可飽和吸収領域は量子井戸層を含む、または、上記可飽和吸収領域は単一量子井戸層を含む。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記可飽和吸収領域は、量子効果を奏するドット形状を有する、または、量子井戸層を含むことにより、微分吸収が大きくなって、吸収が飽和しやすくなる。特に、このような効果は、可飽和吸収領域が単一量子井戸層を含むことによって極めて高くなる。したがって、自励発振が生じやすく、且つ、高出力まで自励発振を維持することが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記可飽和吸収領域は、光屈折率またはバンドギャップの異なる2層以上の層から成る多層構造を含む。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記可飽和吸収領域が光屈折率またはバンドギャップの異なる2層以上の層から成る多層構造を含むことにより、可飽和吸収領域の光吸収量を微細に制御出来る。特に、上記可飽和吸収領域が可飽和吸収体として働く量子井戸層を含む場合、量子井戸層に接するように屈折率の低い層を形成することにより、この屈折率の低い層が光ガイド層として働き、可飽和吸収効果を更に向上させることが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記可飽和吸収領域は、任意の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層のいずれとも接合面を有するように形成されている。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記任意の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層のいずれとも接合面を有するように可飽和吸収領域を形成することにより、生成したキャリアがポテンシャルの高い層にブロックされながらポテンシャルの低い層に落ちて遠方に拡散する。その結果、上記可飽和吸収領域において吸収によって生じたキャリアを早く消滅して、高出力まで自励発振を維持することが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記可飽和吸収領域は、1×1017cm-3以上の不純物がドーピングされている。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記可飽和吸収領域における不純物のドーピング濃度を1×1017cm-3以上にすることにより、可飽和吸収領域で生じたキャリアは更に早く再結合して消滅する。その結果、更に高出力まで自励発振を維持することが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記活性層は、井戸層と障壁層との交互積層によって構成される量子井戸構造を含む。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記量子井戸構造を活性層が含むので、光学利得を増大させて発振閾値電流を低減出来る。
また、自励発振を効率よく起こすためには、微分吸収と微分利得とのバランスを好適に保つ必要があるが、活性層が量子井戸構造を含むことにより、微分吸収と微分利得とのバランスを容易に制御することが出来る。
ところで、酸化物半導体はキャリア(特に正孔)の有効質量が大きいので、高速変調に追随出来ず、実用的な光出力レベルで自励発振が弱くなり、戻り光雑音を回避出来なくなることがある。このような問題を防ぐには、注入キャリアが活性層内に均一に分布するようにし、高速変調下においても再結合を促進出来る必要がある。
そこで、一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記井戸層の層厚を1〜8nmの範囲内にする。これにより、上記井戸層の利得飽和を抑止し、且つ、井戸層内にキャリアを均一に分布させることが出来る。その結果、発振閾値電流を低減して良好な自励発振特性を得ることが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記障壁層の層厚は1〜8nmの範囲内である。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記障壁層の層厚が1〜8nmの範囲内であるので、井戸層へキャリアを効率よく閉じ込めることが出来ると共に、井戸層内にキャリアを均一に分布させることが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記井戸層の数は1〜5の範囲内である。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記井戸層の数が1〜5の範囲内であるから、活性層内にキャリアを均一に分布させることが出来ると共に、発振閾値電流が最も低くなるよう素子構造を最適化することが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記活性層は、上記井戸層の表面が引張応力を受けている歪量子井戸活性層である。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記井戸層の表面内に引張応力を与えることにより、価電子帯のバンド構造が変化する。その結果、キャリアの有効質量が軽減されて、移動度を増大させることが出来る。したがって、高速変調下においてもキャリアの再結合が促進され、高出力まで自励発振を維持することが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記井戸層はZnCdOとZnMgOとの少なくとも一方を含み、上記可飽和吸収領域はCdZnOとInGaNとの少なくとも一方を含む。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記井戸層はZnCdOとZnMgOとの少なくとも一方を含むので、自励発振を得るのに最適となるよう発振波長と微分利得を制御することが出来る。
また、上記可飽和吸収領域はCdZnOとInGaNとの少なくとも一方を含むので、バンドギャップが小さくなると共に、組成比の増大により偏析し局在しやすくなる。すなわち、良好な自励発振を得るのに有効な量子ドット形状の可飽和吸収領域を簡便に形成することが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記活性層と上記可飽和吸収領域との少なくとも一方は、ZnSeO、ZnSOおよびZnTeOのうちの少なくとも1つの3元ZnO系混晶半導体を含む。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記3元ZnO系混晶半導体は、価電子帯の状態密度が小さく、ZnOやCdZnOに比べキャリアの有効質量が小さい。したがって、上記活性層と上記可飽和吸収領域との少なくとも一方が3元ZnO系混晶半導体を含むことにより、高速変調下においてもキャリアが追随しやすくなって、高出力まで自励発振を維持することが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記活性層のレーザ発振波長と、上記可飽和吸収領域のバンドギャップに対応する波長との差が−20〜+20nmの範囲内にある。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記活性層のレーザ発振波長と、上記可飽和吸収領域のバンドギャップに対応する波長との差を−20〜+20nmの範囲内にすることにより、動作電流の増大を抑えて振幅の大きな自励発振出力を得ることが出来、戻り光雑音を効果的に抑止出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記活性層の上記可飽和吸収領域側の端と、上記可飽和吸収領域の上記活性層側の端との間は、層厚方向に平行な距離が10nm〜0.1μmの範囲内である。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記活性層の可飽和吸収領域側の端と、可飽和吸収領域の上記活性層側の端との間において、層厚方向に平行な距離が10nm〜0.1μmの範囲内であるので、可飽和吸収領域がレーザ光を効果的に吸収出来、動作電流増大を抑えて良好な自励発振出力を得ることが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子において、上記電流狭窄機構は、上記活性層の上記電極側の端を含む平面から、上記第2導電型コンタクト層の上記電極側の端を含む平面までの任意の領域、または、上記活性層の上記基板側の端を含む平面から、上記基板の上記活性層側の端を含む平面までの任意の領域に形成された電流ブロック層を含み、上記活性層の上記ブロック層側の端と、上記電流ブロック層の上記活性層側の端との間は、層厚方向に平行な距離が10nm〜0.1μmの範囲内である。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記活性層のブロック層側の端と、電流ブロック層の活性層側の端との間において、層厚方向に平行な距離が10nm〜0.1μmの範囲内であるので、可飽和吸収領域がレーザ光を効果的に吸収出来、動作電流増大を抑えて良好な自励発振出力を得ることが出来る。
一実施形態の酸化物半導体レーザ素子は、上記活性層からのレーザ光を出射するレーザ光出射端面の光反射率は10〜30%の範囲内である。
上記実施形態の酸化物半導体レーザ素子によれば、上記活性層へ過度の戻り光が入射した場合、光吸収による急激なキャリア対の生成が生じて自励発振が停止することがあるが、レーザ光出射端面の光反射率を10〜30%の範囲内であると、高出力まで戻り光に擾乱されず、自励発振を維持することが出来る。
以上より明らかなように、本発明の酸化物半導体レーザ素子は、活性層が酸化物半導体を含むので、強い励起子結合エネルギーを利用して量子効率の極めて高い誘導放出光を得ることが出来、また、自励発振特性を有するので、雑音および消費電力を低く抑えることが出来る。
また、上記可飽和吸収領域が活性層に対して独立しているので、閾値増大を抑制出来ると共に、放射角を容易且つ好適に制御出来る。
以下、本発明の酸化物半導体レーザ素子を図示の実施の形態により詳細に説明する。
(実施形態1)
本実施形態1では、リッジストライプ型ZnO系半導体レーザ素子に本発明を適用した例について説明する。
本実施形態1では、リッジストライプ型ZnO系半導体レーザ素子に本発明を適用した例について説明する。
図1に、本発明の実施形態1のリッジストライプ型ZnO系半導体レーザ素子の模式断面図を示す。
上記ZnO系半導体レーザ素子は、亜鉛面(0001)を成長主面とするn型ZnO単結晶基板101上に、Ga(ガリウム)ドーピング濃度が1×1018cm-3で厚さ0.5μmのn型ZnOバッファ層102、Gaドーピング濃度が3×1018cm-3で厚さ1.0μmのn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層103、Gaドーピング濃度が5×1017cm-3で厚さ30nmのn型ZnO光ガイド層104、ノンドープ量子井戸活性層105、N(窒素)ドーピング濃度が5×1018cm-3で厚さ30nmのp型ZnO光ガイド層106、Nドーピング濃度が5×1019cm-3で厚さ0.1μmのp型Mg0.1Zn0.9O第1クラッド層107、Mgドーピング濃度が5×1020cm-3で厚さ5nmのp型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108、Nドーピング濃度が5×1019cm-3で厚さ1.1μmのp型Mg0.1Zn0.9O第2クラッド層109、Nドーピング濃度が1×1020cm-3で厚さ0.5μmのp型ZnOコンタクト層110がこの順で積層されている。
本実施形態1では、n型ZnO単結晶基板101が基板の一例に、n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層103が第1導電型クラッド層の一例に、量子井戸活性層105が活性層の一例に、p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108が可飽和吸収領域の一例に、p型ZnOコンタクト層110が第2導電型コンタクト層の一例にそれぞれ相当している。また、上記p型Mg0.1Zn0.9O第1クラッド層107とp型Mg0.1Zn0.9O第2クラッド層109とが、第2導電型クラッド層の一例を構成している。
上記量子井戸活性層105は、厚さ5nmのZnO障壁層と、厚さ6nmのCd0.1Zn0.9O井戸層とが交互に積層されて成っている。上記ZnO障壁層は2層ある一方、Cd0.1Zn0.9O井戸層は3層ある。
上記p型ZnOコンタクト層110およびp型Mg0.1Zn0.9O第2クラッド層109は、リッジストライプ状にエッチング加工されてリッジストライプ114を構成している。また、上記リッジストライプ114の幅W1は2μmである。なお、上記リッジストライプ114のエッチング加工時、p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108がエッチングストップ層として機能する。つまり、上記p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108が可飽和吸収層とエッチングストップ層の役割りを兼ね備えている。
上記リッジストライプ114の側面は、Gaが3×1018cm-3の濃度でドーピングされたn型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層111によって埋め込まれている。つまり、上記n型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層111は、リッジストライプ114の両側に形成されている。
上記n型ZnO単結晶基板101の裏面にはn型オーミック電極112が形成し、n型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層111およびp型ZnOコンタクト層110の上には、電極の一例としてのp型オーミック電極113が形成されている。なお、上記n型オーミック電極112はTiで構成し、p型オーミック電極113はNiで構成している。
本発明の酸化物半導体レーザ素子は、固体あるいは気体原料を用いたMBE(分子線エピタキシ)法、レーザMBE法、MOCVD(有機金属気相成長)法などの結晶成長手法で作製することが出来るが、本実施形態1のZnO系半導体レーザ素子はレーザMBE法によって作製した。
上記保護膜は、厚さ70nmのSiO2と厚さ60nmのTiO2とを交互に積層した多層反射膜である。この多層反射膜の総厚は、光出射端面での光反射率が15%、光反射端面での光反射率が90%となるように調整した。このような光出射端面と光反射端面とによって、量子井戸活性層105からの光が共振増幅される。
本実施形態1の構造を作製後、リッジストライプに垂直なミラー端面に保護膜を真空蒸着した後、素子を共振器長300μmに分離した。
本実施形態1のZnO系半導体レーザ素子に電流を流したところ、端面から波長405nmの青色発振光が得られ、発振閾値電流が35mA、光出力5mWでの動作電圧が4Vであった。
また、上記ZnO系半導体レーザ素子の出力波形を観察したところ、直流電圧を印加しているにもかかわらず図2のようなパルス状の自励発振出力が得られ、スペクトルは多モード発振であった。この多モード自励発振は、出力7mWまで安定に得られた。
次に、上記ZnO系半導体レーザ素子の雑音特性を調べるため、放射光を光ディスクで反射させ、反射光を半導体レーザ素子に戻してRIN(相対雑音強度)を測定した。光出力が1〜5mW、戻り光量が0.1〜10%の範囲で、RINは−130dB/Hz以下であった。したがって、上記ZnO系半導体レーザ素子が光ディスク記録再生システム用光源として適した低雑音特性を有することがわかった。
図4に、可飽和吸収量ΔλとRINとの関係を示す。この可飽和吸収量Δλを以下の(式1)で定義する。
可飽和吸収量Δλ=(半導体レーザ素子の発振波長)−(可飽和吸収層のバンドギャップに相当する波長) …(式1)
光ディスク記録再生システム用光源として好適なRINは−125dB/Hz以下である。本実施形態1では、p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108の組成および層厚を変化させて可飽和吸収層のバンドギャップを変化させることにより、可飽和吸収量Δλが−20〜+20nmの範囲内で、RINを−125dB/Hz以下にできる。
可飽和吸収量Δλ=(半導体レーザ素子の発振波長)−(可飽和吸収層のバンドギャップに相当する波長) …(式1)
光ディスク記録再生システム用光源として好適なRINは−125dB/Hz以下である。本実施形態1では、p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108の組成および層厚を変化させて可飽和吸収層のバンドギャップを変化させることにより、可飽和吸収量Δλが−20〜+20nmの範囲内で、RINを−125dB/Hz以下にできる。
しかし、可飽和吸収量Δλが+20nmより大きいと、可飽和吸収量が小なすぎて自励発振が弱くなり、戻り光雑音が増大する。一方、可飽和吸収量Δλが−20nmより小さいと、可飽和吸収量が多すぎて発振出力のゆらぎが顕著となり、動作電流と量子雑音が増大する。
以上の結果、良好な自励発振特性を得て雑音を回避するには、可飽和吸収量Δλが−20〜+20nmの範囲内となるよう可飽和吸収層の構造を調整すればよいことがわかった。
上記実施形態1では、リッジストライプ114の幅W1は、層厚方向において一定であったが、層厚方向に異なっていてもよい。また、上記リッジストライプ114の幅W1は、リッジストライプ114が延びる方向においても異なってもよい。
上記実施形態1では、p型オーミック電極の活性層側の表面積は、活性層のp型オーミック電極側の表面積と同じにしていたが、活性層のp型オーミック電極側の表面積よりも小さくしてもよい。
また、井戸層の利得飽和を抑止し、且つ、井戸層内にキャリアを均一に分布させる観点上、井戸層の層厚は1〜8nmの範囲内にするのが好ましい。
また、井戸層へキャリアを効率よく閉じ込める観点上、障壁層の層厚は1〜8nmの範囲内にするの好ましい。
また、活性層内にキャリアを均一に分布させると共に、発振閾値電流の増大を防ぐ観点上、井戸層の数は1〜5の範囲内にするのが好ましい。
図5に、p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108の不純物ドーピング濃度と、自励発振が得られる最大出力との関係を示す。
光ディスクシステムの信号再生に必要となる光出力はおよそ3mW以上であるが、上記不純物ドーピング濃度が1×1017cm-3以上の時に3mW以上の自励発振出力が得られている。この理由は、可飽和吸収領域で生じたキャリアがドーピング不純物に捕獲され再結合して消滅しやすくなったためと考えられる。よって、過飽和吸収層への不純物ドーピング濃度は1×1017cm-3以上であることが好ましい。
次に、比較例として、p型In0.25Ga0.75N過飽和吸収層108を図6のようにp型Mg0.1Zn0.9O第1クラッド層307中に形成した他は、本実施形態1と同様にしてZnO系半導体レーザ素子を作製した。つまり、比較例のZnO系半導体レーザ素子では、p型In0.25Ga0.75N過飽和吸収層108を層厚方向の両側からp型Mg0.1Zn0.9O第1クラッド層307で挟んでいる。このような比較例のZnO系半導体レーザ素子でも自励発振は得られたが、本実施形態1のZnO系半導体レーザ素子に比べてその自励発振の最大出力は低かった。具体的には、比較例のZnO系半導体レーザ素子において、自励発振の最大出力は5mWであった。この理由は、過飽和吸収層がポテンシャルの高いp型第1クラッド層に挟まれているため、光吸収によって生じたキャリアが閉じ込められて消滅しにくく、自励発振を維持出来なくなったものと考えられる。
これに対して、本実施形態1のZnO系半導体レーザ素子では、過飽和吸収層はn型電流ブロック層111およびp型クラッド層107,109のいずれとも接合面を有するように形成されているので、生成したキャリアはポテンシャルの高いp型クラッド層にブロックされながらポテンシャルの低いn型電流ブロック層に拡散する。その結果、キャリアが早く消滅し、高出力まで自励発振を維持することが出来たものと考えられる。すなわち、可飽和吸収領域は、任意のn型半導体層およびp型半導体層のいずれとも接合面を有するように形成されていることが好ましい。
上記実施形態1において、p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108の代わりに、図7に示すようなドット形状を有する可飽和吸収領域408を用いてもよい。但し、この可飽和吸収領域の径は量子効果を奏する範囲内とする。
また、上記実施形態1において、p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108の代わりに、図8に示すような可飽和吸収領域508を用いてもよい。この可飽和吸収領域508は、In0.25Ga0.75N量子井戸層508aとGaN障壁層508bとを交互に積層して形成している。このような可飽和吸収領域508を用いる場合、井戸層の数が多くなると、井戸層の体積が増えて可飽和状態が起こりにくいので、自励発振が起こりにくくなる。逆に、井戸層の数が少ないほど自励発振が起こりやすくなる。したがって、量子井戸層を含む可飽和吸収領域を用いる場合は、量子井戸層の数を1つにするのが特に好ましい。つまり、本実施形態1において、単一量子井戸層を含む可飽和吸収領域を用いるのは特に好ましい。
また、上記実施形態1において、p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層108の代わりに、光屈折率またはバンドギャップの異なる2層以上の層から成る多層構造を含む可飽和吸収領域を用いてもよい。
また、上記実施形態1では、保護膜である多層反射膜は、SiO2とTiO2とで構成したが、異なる任意の金属酸化物を交互に積層して構成してもよいし、または、異なる任意の金属窒化物を交互に積層して構成してもよい。例えば、MgO、Si3N4、Al3O3およびGa3O3などを多層反射膜の材料として用いることが出来る。
また、上記レーザ光出射端面の光反射率が高いと十分な光出力が得られず、逆に、レーザ光出射端面の光反射率が低いと、光ディスクなどで反射したレーザ光がZnO系半導体レーザ素子に大量に戻り、急激なキャリア対の生成が生じて自励発振を阻害してしまう。このため、上記レーザ光出射端面の光反射率は10〜30%の範囲内とすることが好ましい。
(実施形態2)
本実施形態2では、SAS(自己整合)型ZnO系半導体レーザ素子に本発明を適用した例について説明する。
本実施形態2では、SAS(自己整合)型ZnO系半導体レーザ素子に本発明を適用した例について説明する。
図3に、本発明の実施形態2のSAS型ZnO系半導体レーザ素子の模式断面図を示す。
上記ZnO系半導体レーザ素子は、亜鉛面を主面としたn型ZnO単結晶基板201上に、Gaドーピング濃度が1×1018cm-3で厚さ0.1μmのZnOバッファ層202、Gaドーピング濃度が1×1018cm-3で厚さ1.0μmのn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層203、Gaドーピング濃度が5×1017cm-3で厚さ30nmのn型ZnO光ガイド層204、ノンドープ量子井戸活性層205、Nドーピング濃度が1×1018cm-3で厚さ30nmのp型ZnO光ガイド層206、Nドーピング濃度が5×1018cm-3で厚さ0.1μmのp型Mg0.1Zn0.9O第1クラッド層207、Nドーピング濃度が1×1019cm-3で厚さ10nmのp型Cd0.2Zn0.8O可飽和吸収層208、Gaドーピング濃度が1×1018cm-3で厚さ1.0μmのn型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層209がこの順で積層されている。
本実施形態2では、n型ZnO単結晶基板201が基板の一例に、n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層203が第1導電型クラッド層の一例に、量子井戸活性層205が活性層の一例に、p型Cd0.2Zn0.8O可飽和吸収層208が可飽和吸収領域の一例にそれぞれ相当している。
上記量子井戸活性層205は、厚さ5nmのZnO障壁層と、厚さ6nmのCd0.05Zn0.95O戸層とが交互に積層されて成っている。上記ZnO障壁層は2層ある一方、Cd0.05Zn0.95O井戸層は3層ある。
上記n型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層209には、エッチングによってストライプ形状の溝214が形成されている。この溝214は、p型Cd0.2Zn0.8O可飽和吸収層208の表面まで達している。つまり、上記溝214の底面は、p型Cd0.2Zn0.8O可飽和吸収層208の表面の一部となっている。また、上記溝214において基板表面と平行な方向(図5の左右方向)の幅は、量子井戸活性層205に向って徐々に狭くなり、量子井戸活性層205に最も近い部分で1.8μmとなっている。
また、上記p型Cd0.2Zn0.8O可飽和吸収層208の表面の一部上、および、n型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層209上には、Nドーピング濃度が5×1019cm-3で厚さ1.1μmのp型Mg0.1Zn0.9O第2クラッド層210を積層している。これにより、上記p型Mg0.1Zn0.9O第2クラッド層210の一部が溝214を埋めて、溝214内にチャネルストライプが形成される。このp型Mg0.1Zn0.9O第2クラッド層210とp型Mg0.1Zn0.9O第1クラッド層207とが、第2導電型クラッド層の一例を構成している。
また、上記p型Mg0.1Zn0.9O第2クラッド層210上には、Nドーピング濃度が1×1020cm-3で厚さ0.5μmのp型ZnOコンタクト層211が形成されている。
また、上記p型ZnOコンタクト層211上には、電極の一例としてのp型オーミック電極213が形成される一方、n型ZnO基板201の下にはn型オーミック電極212が形成されている。なお、上記n型オーミック電極212はAlで構成し、p型オーミック電極213はPdで構成している。
本実施形態2の構造を作製後、リッジストライプに垂直なミラー端面に上記実施形態1と同様の保護膜を真空蒸着した後、素子を共振器長300μmに分離した。
本実施形態2のZnO系半導体レーザ素子に電流を流したところ、端面から波長405nmの青色発振光が得られ、発振閾値電流が35mA、光出力5mWでの動作電圧が4Vであった。
また、上記ZnO系半導体レーザ素子の多モード自励発振は、出力10mWまで安定に得られた。
上記ZnO系半導体レーザ素子のRINを実施形態1と同様にして測定したところ、光出力が1〜10mW、戻り光量が0.1〜10%の範囲内で、RINは−130dB/Hz以下であった。したがって、上記ZnO系半導体レーザ素子においても、良好な低雑音特性を有することがわかった。
(実施形態3)
図9に、本実施形態3のSAS型ZnO系半導体レーザ素子の模式断面図を示す。また、図9において、図3に示した上記実施形態2の構成部と同一構成部は、図3における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
図9に、本実施形態3のSAS型ZnO系半導体レーザ素子の模式断面図を示す。また、図9において、図3に示した上記実施形態2の構成部と同一構成部は、図3における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
本実施形態3のZnO系半導体レーザ素子は、p型Cd0.2Zn0.8O可飽和吸収層208の代わりに、可飽和吸収領域の一例としての過飽和吸収層608を用いた他は、上記実施形態2と同様にしてSAS型ZnO系半導体レーザ素子を作製した。
上記過飽和吸収層608は、Nドーピング濃度が1×1019cm-3で厚さ5nmのp型Cd0.2Zn0.8O光吸収層608aと、Nドーピング濃度が1×1019cm-3で厚さ30nmのp型ZnO光ガイド層608bとの2層から成る積層構造を有している。
本実施形態3のZnO系半導体レーザ素子においても、上記実施形態2と同様にパルス状の自励発振出力が得られたが、自励発振最大出力は16mWまで向上した。
本実施形態3の可飽和吸収層608は、屈折率の小さなp型ZnO光ガイド層608bによってp型Cd0.2Zn0.8O光吸収層608aに光を閉じ込め、効率よく可飽和吸収を生ぜしめる構造となっている。このため、本実施形態3は、上記実施形態2に比べて自励発振最大出力が向上したものと考えられる。
本実施形態3の可飽和吸収層において、光ガイド層を光吸収層に接して形成すれば、自励発振最大出力が向上する効果を得ることができる。したがって、上記光ガイド層は、光吸収層の基板側へ形成してもよく、また、光吸収層の両側に形成してもよい。つまり、p型第1クラッド層と光吸収層との間に光ガイド層を形成してもよく、また、光吸収層を層厚方向の両側から挟むように光ガイド層を形成してもよい。この場合も、上記光ガイド層を光吸収層に接して形成するのは言うまでもない。
しかし、レーザ光が照射される活性層とこれを吸収する可飽和吸収領域が離れすぎていると、光ガイド層を設けても可飽和吸収効果は向上しない。また、上記活性層と可飽和吸収領域が近すぎても動作電流や量子雑音が増大し、放射角制御も困難となる。活性層の可飽和吸収領域側の端と、可飽和吸収領域の活性層側の端との間は、層厚方向に平行な距離が10nm〜0.1μmの範囲内であることが好ましい。
(実施形態4)
図10に、本実施形態4のリッジストライプ型ZnO系半導体レーザ素子の模式断面図を示す。また、図10において、図1に示した上記実施形態1の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
図10に、本実施形態4のリッジストライプ型ZnO系半導体レーザ素子の模式断面図を示す。また、図10において、図1に示した上記実施形態1の構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
上記ZnO系半導体レーザ素子は、n型ZnO単結晶基板101、n型ZnOバッファ層102およびn型オーミック電極112の代わりに、サファイア基板701、n型ZnOバッファ層702およびn型オーミック電極712を用いた他は、上記実施形態1と同様に作製した。
上記サファイ基板701は、サファイア(0001)面を成長主面としている。また、上記サファイア基板701は絶縁体であるため、サファイア基板701にオーミック電極を直接形成することが出来ない。したがって、成長層の一部をエッチングしてn型ZnOバッファ層702の一部を露出させ、その一部上にn型オーミック電極712を形成している。
本実施形態4のZnO系半導体レーザ素子においても、上記実施形態1と同様にパルス状の自励発振出力が得られ、自励発振最大出力は12mWまで向上できた。
本実施形態4で用いたサファイア基板701はZnOに対して面内格子定数が18%大きいので、サファイア基板701上に成長したZnO系半導体層は面内で引張応力を受ける。このため、量子井戸活性層105は歪みを内在し、バンド構造が変化して正孔の有効質量が軽減する。このことにより、自励発振周波数の増大する高出力においてもキャリアが追随し、自励発振を維持することが出来たものと考えられる。
活性層表面に引張応力を与えるには、ZnO系半導体をエピタキシャル成長出来、かつ、面内格子定数がZnO系半導体より大きな基板を用いればよい。このような基板には、サファイア(0001)面を成長主面とする基板の他に、NaAlO2またはNaGaO2から成る基板や、Si(111)面を成長主面とする基板を用いることが出来る。また、上記実施形態1と同様にZnO単結晶基板を用い、ZnO系半導体と同じ結晶構造であってZnO系半導体よりも大きな面内格子定数を有するInGaNでバッファ層を形成して、このバッファ層上にZnO系半導体をエピタキシャル成長してもよい。また、上記量子井戸活性層105を構成する障壁層に、ZnO系半導体と同じ結晶構造であってZnO系半導体よりも大きな面内格子定数を有する材料を用いても、井戸層に引張応力を与えることが出来る。
(実施形態5)
本実施形態5では、量子井戸活性層105を、厚さ5nmのZnO障壁層と、厚さ6nmのZn0.9Se0.1O井戸層とを交互に積層させて構成した他は、上記実施形態1と同様にしてZnO系半導体レーザ素子を作製した。なお、上記ZnO障壁層は2層ある一方、Zn0.9Se0.1O井戸層は3層ある。
本実施形態5では、量子井戸活性層105を、厚さ5nmのZnO障壁層と、厚さ6nmのZn0.9Se0.1O井戸層とを交互に積層させて構成した他は、上記実施形態1と同様にしてZnO系半導体レーザ素子を作製した。なお、上記ZnO障壁層は2層ある一方、Zn0.9Se0.1O井戸層は3層ある。
本実施形態5のZnO系半導体レーザ素子においても、上記実施形態1と同様にパルス状の自励発振出力が得られ、自励発振最大出力は12mWまで向上できた。
本実施形態5において用いたZnSeO井戸層は、価電子帯の状態密度が小さく、ZnOやCdZnOに比べキャリアの有効質量が小さい。したがって、高速変調下においてもキャリアが追随しやすくなって、高出力まで自励発振を維持出来たものと考えられる。
高出力まで自励発振を維持出来きる活性層の材料には、ZnSeOの他、ZnSOおよびZnTeOの3元II−VI族混晶半導体を用いることが出来る。但し、これら3元II−VI族混晶半導体は、Se、SおよびTeの組成比が大きくなると、長波長化と結晶性劣化が顕著となるため、ZnSeOにおいてはSe組成比は13%以下、ZnSOにおいてはS組成比が13%以下、ZnTeOにおいてはTe組成比が3%以下であることが好ましい。
上記実施形態1〜5の構成を適宜組み合せて、ZnO系半導体レーザ素子を作製してもよい。
上記実施形態1〜5において、電流ブロック層は、活性層のp型オーミック電極側の端を含む平面から、p型コンタクト層のp型オーミック電極側の端を含む平面までの任意の領域、または、活性層の基板側の端を含む平面から、基板の活性層側の端を含む平面までの任意の領域に形成してもよい。
また、本発明において、p型コンタクト層は、電流ブロック層上面にかかるように形成されていてもよい。
上記実施形態1〜5では、電流狭窄機構は、電流ブロック層で形成したが、電流ブロック層の他に、図11に示す電極ストライプ構造や、図12に示すリッジストライプのみからなる電流狭窄機構などを含んでもよい。
図11のZnO系半導体レーザ素子では、可飽和吸収層を形成するまでは上記実施形態1と同様に作製し、p型第2クラッド層以降に形成する層は上記実施形態1と異なるように作製している。つまり、図11のZnO系半導体レーザ素子は、リッジストライプ形状を有さない平板形状のp型MgZnO第2クラッド層809,p型ZnOコンタクト層810を備えている。そして、上記p型ZnOコンタクト層810上には、ストライプ形状の溝を有するSiO2絶縁体膜814を形成した後、その溝を埋めるようにストライプ形状のp型オーミック電極813を形成している。
図12のZnO系半導体レーザ素子も、可飽和吸収層を形成するまでは上記実施形態1と同様に作製し、p型第2クラッド層以降に形成する層は上記実施形態1と異なるように作製している。つまり、図12のZnO系半導体レーザ素子は、リッジストライプ形状を有するp型MgZnO第2クラッド層909,p型ZnOコンタクト層910を備えている。そして、上記p型MgZnO第2クラッド層909の上面と、p型MgZnOクラッド層909の上部の側面と、p型ZnOコンタクト層910の側面とをSi2絶縁膜914で覆っている。また、上記p型ZnOコンタクト層910には、ストライプ形状のp型オーミック電極913を形成している。
上記実施形態1〜5において、ZnCdOとZnMgOとの少なくとも一方を含む井戸層を活性層を形成するために用いてもよい。
上記実施形態1〜5において、CdZnOとInGaNとの少なくとも一方を含む可飽和吸収領域を用いてもよい。
上記実施形態1〜5では、基板上に、n型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層をこの順で積層していたが、p型クラッド層、活性層、n型クラッド層、n型コンタクト層をこの順で積層してもよい。つまり、上記実施形態1〜5において、各層の導電型を逆にしてもよい。
なお、本発明の酸化物半導体レーザ素子が備える層の材料が、上記実施形態1〜5に限定されないのは言うまでもない。
また、本発明の酸化物半導体レーザ素子は低雑音であるから、例えば高密度光記録に好適に用いることができる。
また、本発明は、ダブルへテロ構造の半導体レーザに適用できるのは勿論のこと、シングルへテロ構造の半導体レーザにも適用することが出来る。
105,205 量子井戸活性層
108 可飽和吸収層
108 p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層
208 p型Cd0.2Zn0.8O可飽和吸収層
408,508 可飽和吸収領域
608 過飽和吸収層
108 可飽和吸収層
108 p型In0.25Ga0.75N可飽和吸収層
208 p型Cd0.2Zn0.8O可飽和吸収層
408,508 可飽和吸収領域
608 過飽和吸収層
Claims (18)
- 酸化物半導体を含む活性層と、この活性層に対して独立して形成された可飽和吸収領域とを備え、自励発振することを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。
- 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
基板上に、少なくとも、第1導電型クラッド層、上記活性層、第2導電型クラッド層、第2導電型コンタクト層および電極が順次積層され、
上記活性層に供給する電流を狭窄する電流狭窄機構を備え、
上記第1導電型クラッド層、活性層、第2導電型クラッド層、第2導電型コンタクト層および電流狭窄機構はZnO系半導体を含むことを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収領域は、量子効果を奏するドット形状を有することを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収領域は量子井戸層を含むことを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項4に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収領域は単一量子井戸層を含むことを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収領域は、光屈折率またはバンドギャップの異なる2層以上の層から成る多層構造を含むことを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収領域は、任意の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層のいずれとも接合面を有するように形成されていることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記可飽和吸収領域は、1×1017cm-3以上の不純物がドーピングされていることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記活性層は、井戸層と障壁層との交互積層によって構成される量子井戸構造を含むことを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項9に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記井戸層の層厚は1〜8nmの範囲内であることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項9に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記障壁層の層厚は1〜8nmの範囲内であることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項9に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記井戸層の数は1〜5の範囲内であることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項9に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記活性層は、上記井戸層の表面が引張応力を受けている歪量子井戸活性層であることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項9に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記井戸層はZnCdOとZnMgOとの少なくとも一方を含み、
上記可飽和吸収領域はCdZnOとInGaNとの少なくとも一方を含むことを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記活性層と上記可飽和吸収領域との少なくとも一方は、ZnSeO、ZnSOおよびZnTeOのうちの少なくとも1つの3元ZnO系混晶半導体を含むことを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記活性層のレーザ発振波長と、上記可飽和吸収領域のバンドギャップに対応する波長との差は、−20〜+20nmの範囲内であることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記活性層の上記可飽和吸収領域側の端と、上記可飽和吸収領域の上記活性層側の端との間は、層厚方向に平行な距離が10nm〜0.1μmの範囲内であることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体レーザ素子において、
上記活性層からのレーザ光を出射するレーザ光出射端面の光反射率は10〜30%の範囲内であることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。
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