JP2004200339A - 酸化物半導体レーザ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射角制御と垂直横モードの安定性の両方に優れた酸化物半導体レーザ素子を提供すること。
【解決手段】レーザ光に対して透明な基板上に少なくとも、ZnO 系半導体で構成される n 型クラッド層、n 型光ガイド層、活性層、p 型光ガイド層、p 型クラッド層、p 型コンタクト層を備え、前記n型クラッド層外側あるいは前記p型クラッド層外側の少なくともいずれかに光吸収層が形成されていることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子
【選択図】 図1
【解決手段】レーザ光に対して透明な基板上に少なくとも、ZnO 系半導体で構成される n 型クラッド層、n 型光ガイド層、活性層、p 型光ガイド層、p 型クラッド層、p 型コンタクト層を備え、前記n型クラッド層外側あるいは前記p型クラッド層外側の少なくともいずれかに光吸収層が形成されていることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は放射角制御と垂直横モードの安定性に優れた酸化物半導体レーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高密度な光ディスク記録システムのレーザ光源として利用すべく、3〜3.5eVのバンドギャップエネルギーを有する直接遷移型半導体の結晶成長およびデバイス技術が急速に発展している。
【0003】
特に III 族窒化物半導体の技術進展は目ざましく、光学特性や信頼性は既に実用化の域に達している。
【0004】
一方、酸化物半導体についても現在研究が進みつつあり、特に酸化亜鉛 (ZnO)は励起子結合エネルギーが 60meV と極めて高く、また原材料が安価、環境や人体に無害で成膜手法が簡便であるなどの特徴を有し、高効率・低消費電力で環境性に優れた半導体レーザ素子を実現出来る可能性がある。
【0005】
なお、本明細書においては ZnO 系半導体とは、ZnO およびこれを母体とした MgZnO あるいは CdZnOなどで表される混晶を含めるものとする。またGaN系半導体とは、GaNを母体としたAlGaNあるいはInGaNなどで表される混晶を含めるものとする。
【0006】
従来の ZnO 系半導体レーザ素子の例として、国際特許 WO 00/16411 号に開示されている構造を図 5 に示す。
【0007】
本従来素子は、サファイア基板 1 上に ZnO バッファ層 2、n 型 ZnO コンタクト層 3、n 型MgZnOクラッド層 4、n型 ZnO 光ガイド層 14、多重量子井戸活性層 15、p型 ZnO 光ガイド層 16、p型MgZnO クラッド層 6、p型 ZnO コンタクト層 7 を順次積層した後に p 型 ZnO コンタクト層 7 から p型 MgZnO クラッド層 6 の一部までをメサストライプ状にエッチングし、n 側電極 9 および p側電極 10 を形成してなる半導体レーザ素子である。
【0008】
上記従来素子において用いられているサファイア基板は、低コストで高品質な基板材料であり、また結晶性に優れた ZnO 半導体層が得られる一方、絶縁性基板であるため基板裏面に電極を形成することが出来ない。このため、サファイア基板 1 と n 型 MgZnO クラッド層 4 の間に n型 ZnO コンタクト層 3 を形成し、コンタクト層の一部を露出して電極を形成している。電流はコンタクト層を横方向 (接合面に対して平行方向) に流れるため、低抵抗化のためにはコンタクト層を厚く積層することが有効である。
【0009】
【特許文献1】
国際公開 WO 00/16411号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来素子の構造では、n 型 MgZnO クラッド層4 より n 型 ZnOコンタクト層 3 の方が高屈折率であり、更にサファイア基板 1 がレーザ光に対して透明であるため、n 型 MgZnO クラッド層 4 からしみ出した光が厚い n 型 ZnO コンタクト層 3を導波する多モード発振となりやすい。このような放射特性は、基本モードからの放射角のずれおよび導波損失の増大を生じ 、半導体レーザ素子の特性を著しく阻害する。また、この問題は、基板に ZnO 基板を用いた場合にも同様に生じる。
【0011】
前記の問題を解決するには、活性層への光閉じ込めを強くして光のしみ出しを抑える必要があり、例えば n 型 MgZnO クラッド層 4 を厚く形成することが有効である。しかし、光ディスクに用いれられる半導体レーザ素子は、その高密度化に伴って放射角を狭化することが求められており、そのためにはレーザ素子内で光を十分にを広げなければならない。また、クラッド層の厚膜化は高コストになり、その上に積層される半導体層の結晶性も悪化しやすいので、避けることが好ましい。
【0012】
すなわち、光ディスク用半導体レーザ素子に求められる高機能化と垂直横モードの安定化を両立することが困難であった。
本発明は以上の課題に鑑み、放射角制御と垂直横モードの安定性の両方に優れた酸化物半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ZnO 系半導体レーザ素子において、放射角を狭化すると共に垂直横モードを安定化させる手段について鋭意検討した結果、n 型クラッド層の外側にレーザ光の裾を吸収する光吸収層を設けることで、基本導波モードを安定に閉じ込めることが出来ることを見い出し本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明の酸化物半導体レーザ素子は、レーザ光に対して透明な基板上に光吸収層が形成され、前記光吸収層上に少なくとも、ZnO 系半導体で構成される n 型クラッド層、n 型光ガイド層、活性層、p 型光ガイド層、p 型クラッド層、p 型コンタクト層を備えたことを特徴とする。
【0015】
クラッド層の外側に形成された光吸収層がレーザ光の裾を吸収することにより、高屈折率の基板やコンタクト層が存在しても垂直横モードが安定化する。このことにより、光学特性に優れた酸化物半導体レーザ素子を作製出来る。
【0016】
本発明において「レーザ光」は、ZnO系半導体から構成される発光層(活性層)から発光される光であり、バンドギャップエネルギーが3〜3.5eV(およそ350nm〜415nmの光に対応)を意図しており、基板は、そのようなレーザ光に対して透明なものを使用すればよい。
【0017】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記基板が ZnO、GaN あるいは SiC から選択された導電性基板である。
【0018】
基板が導電性基板であれば基板から電極を取り出せ、動作電圧低減とプロセス簡便性に優れる。
【0019】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記基板がサファイア、LiGaO2、NaAlO2 および MgAl2O4から選択された絶縁性基板である。
【0020】
絶縁性基板は導電性基板に比べ安価で高品質なものを用いることが出来、特に前記の絶縁性基板は ZnO 半導体層との格子不整合が小さい。特に酸化物基板は ZnO との親和性が高く、低コストで品質に優れた酸化物半導体うレーザ素子を作製出来る。
【0021】
前記の導電性基板は ZnO 半導体層との格子不整合が小さく、特に、ZnO 基板は ZnO 系半導体のエピタキシャル成長に最も優れた基板であり、特性に優れた半導体レーザ素子を作製出来る。
【0022】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記光吸収層がZnO 系半導体、例えばCdxZn1-xO、またはGaN 系半導体、例えばInyGa1-yN(0 ≦ x, y ≦ 1、好ましくは0≦ x ≦ 0.2、0≦ y ≦ 0.3)を含む。
【0023】
吸収層が ZnO 系半導体あるいは GaN 系半導体で構成されていれば、基板および ZnO 系半導体との親和性に優れ、結晶性の高いエピタキシャル層を得ることが出来る。
【0024】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記光吸収層が量子井戸構造を含む。
量子井戸吸収層は積層数によって体積を微細に制御出来、また微分吸収係数が大きいという利点を有し、吸収特性を微細に制御出来る。
【0025】
n型クラッド層は、ZnO 系半導体、好ましくはMgZnOで構成される。
【0026】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記 n 型クラッド層は屈折率の異なる 2 層以上の積層構造で構成される。
【0027】
クラッド層が多層構造であることにより、基板方向への光のしみ出しを微細に調整することが出来、放射角をより精密に制御することが出来る。
【0028】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記 n 型クラッド層の合計層厚が 0.5〜2.5 μm、好ましくは0.5〜1.5μmである。単層の場合でもn 型クラッド層の層厚は左記範囲内で形成するようにする。
【0029】
n 型クラッド層厚を所定の範囲とすることにより、レーザ光の裾部分のみを吸収するようにすることが出来るので、吸収損失を抑えてモードを安定化させることが出来る。
【0030】
p 型光ガイド層、p 型クラッド層、p 型コンタクト層は、上記で説明したn 型光ガイド層、n 型クラッド層、n 型コンタクト層と、ドーパントがp型ドーパントであることが相違する以外は、同様に適用できる。
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
(実施形態 1)
本実施形態では、半導体レーザ素子に本発明を適用した例を示す。
図 1 は本実施形態の ZnO 系半導体レーザ素子 300 の構造斜視図である。
【0031】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 は、C 面 (0001) を主面としたサファイア基板 301 上に、、Gaドーピング濃度が 1×1019cm-3 で厚さ 1 μm の n 型 ZnO コンタクト層 302、Siドーピング濃度が1×1019cm-3 で厚さ 10nm の In0.17Ga0.83N 光吸収層 303、Gaドーピング濃度が 3×1018cm-3 で厚さ 1 μm の n 型 Mg0.1Zn0.9O クラッド層 304、Gaドーピング濃度が 5×1017cm-3 で厚さ 30nmの n 型 ZnO 光ガイド層 305、ノンドープ量子井戸活性層 306、Nドーピング濃度が 5×1018cm-3 で厚さ 30nm の p 型 ZnO 光ガイド層 307、Nドーピング濃度が 5×1019cm-3 で厚さ 1.2 μm の p型 Mg0.1Zn0.9O クラッド層 308、Nドーピング濃度が 1×1020cm-3 で厚さ 0.5 μm の p 型 ZnOコンタクト層 309 が積層されている。n 型 ZnO コンタクト層 302はバッファ層の役割も兼ねている。
【0032】
量子井戸活性層 306 は、厚さ 5nm の ZnO 障壁層 2 層と、厚さ 6nm の Cd0. 1Zn0.9O 井戸層 3 層とが交互に積層されている。
【0033】
p 型 ZnO コンタクト層 309 および p 型 Mg0.1Zn0.9O クラッド 層 308 はリッジストライプ状にエッチング加工され、リッジストライプ側面は Ga が 3×1018cm-3 の濃度でドーピングされた n型 Mg0.2Zn0.8O 電流ブロック層 310 によって埋め込まれている。
【0034】
In0.17Ga0.83N 光吸収層 303 から n 型 Mg0.2Zn0.8O 電流ブロック層 310 に至る積層構造は一部がエッチングされ、露出した n 型 ZnO コンタクト層 302 上に n 型オーミック電極 311 が形成されている。
【0035】
n 型 Mg0.2Zn0.8O 電流ブロック層 310 および p 型 ZnO コンタクト層 309 の上には p 型オーミック電極 312 が形成されている。
【0036】
本発明は、レーザ光に対して透明な基板上に光吸収層を形成したことに特徴を有している。
【0037】
本発明の酸化物半導体レーザ素子 300 は、固体あるいは気体原料を用いた分子線エピタキシー(MBE)法、レーザ分子線エピタキシー(レーザ MBE)法、有機金属気相成長(MOCVD)法などの結晶成長手法で作製することが出来る。本実施形態の ZnO 系半導体レーザ素子は、レーザ MBE法によって作製した。
【0038】
本実施形態の構造を作製後、リッジストライプに垂直なミラー端面に保護膜を真空蒸着した後、素子を 300 μmに分離した。
【0039】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 に電流を流したところ、端面から波長 410nm の青色発振光が得られ、発振閾値電流は 35mA、光出力 5mW での動作電圧は4V であった。
【0040】
また、層厚方向遠視野像の測定を行ったところ、図 2 に実線で示した単峰性の放射パターンを示し、放射角は 20°であった。
【0041】
比較例として、In0.17Ga0.83N 光吸収層 303 を形成しない他は本実施形態と同様にして半導体レーザ素子を作製した。本実施形態と同様に端面から波長 410nm の青色発振光が得られた。層厚方向遠視野像の測定を行ったところ、図 2 に破線で示したような、双峰性の弱い放射パターンを示した。このような異常な放射パターンは、青色発光波長に対応した DVD などの高密度光ディスクシテムにおいて、信号記録および再生が正常に行なわれない。
【0042】
上記ような結果が得られた理由は、比較例の半導体レーザ素子において、n 型MgZnO クラッド層 304 からしみ出した光が屈折率の高い n 型 ZnO コンタクト層 302 を導波する反導波モード 発振となったのに対し 、本実施形態の半導体レーザ素子は、n 型 MgZnO クラッド層 304 の外側に形成された InGaN 光吸収層 303 がレーザ光の裾を吸収したため、高次モードを生じること無く導波モードが安定化したと考えられる。
【0043】
InGaN 光吸収層 303 は、サファイア基板 301 と n 型 ZnO コンタクト層 302の間に配置しても効果を奏するが、屈折率の高い n 型 ZnO コンタクト層よりも活性層側に配置した方がモード 安定化の効果が高いので好ましい。
【0044】
光吸収層には、InGaN 以外に CdZnOを用いてもよい。GaN 系および ZnO系半導体はいずれも ZnO 系半導体上に高品質な単結晶層をエピタキシャル成長させることが出来るので、光吸収層を配置することによる結晶性の劣化を生じない。
【0045】
光吸収層は、その膜厚(量子井戸構造の場合は合計膜厚)を1〜1000nm、好ましくは3〜100nmに形成する。その膜厚が1000nmより厚いと光吸収量が増大して発振閾値電流が上昇すると共に、光吸収層上に積層される半導体層の結晶性が悪化する傾向にあり、また薄いと十分な光吸収量が得られず導波モードが安定化しない。
【0046】
横モードを安定化させるには、光吸収層はレーザ光の裾を吸収すればよく、そのためには、n 型 MgZnO クラッド層の層厚を 0.5〜2.5 μmの範囲で適宜調整すればよい。これより薄いと損失が大幅に増大して発振閾値電流が増大し 、これより厚いとレーザ光が n 型 ZnO コンタクト層に達しないので横モードは安定化するものの、高コスト化および n 型 MgZnO クラッド層上に積層される半導体層の結晶性が悪化する。
【0047】
本実施形態のようにサファイアのような絶縁性基板を用いると、n 型オーミック電極を形成するためにコンタクト層を形成しなければならないが、絶縁性基板は安価かつ高品質であり、低コストで品質に優れた半導体レーザ素子を作製することが出来る。サファイア以外の絶縁性基板としては、ZnO 系および GaN 系半導体との格子整合性が高い LiGaO2、NaAlO2 や MgAl2O4 を用いることが好ましい。
【0048】
本実施形態では、基板上にn型層、活性層、p型層の順に形成したが、基板上にp型層、活性層、n型層の順に形成してもよい。この場合は光吸収層はp型であることが好ましい。また、本実施形態において光吸収層をp型層側(例えば、p型クラッド層とp型コンタクト層の間)に設けても良く、更にはn型層側とp型層側の両方に設けてもよい。
【0049】
(実施形態 2)
図 3 は本実施形態の ZnO 系半導体レーザ素子 300 の構造斜視図である。
本実施形態は、基板 301 に n 型 ZnO の亜鉛面(0001)を用い、ZnO 基板 301 の裏面に n 型オーミック電極 311 を形成した。また、n 型 ZnO コンタクト層 302 は形成せず、光吸収層 303 を n 型Cd0.2Zn0.8O で構成した。その他は実施形態 1 と同様にして半導体レーザ素子 300 を作製した。
【0050】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 に電流を流したところ、実施形態 1 と同様に波長 410nm の青色発振光が得られ、層厚方向遠視野像は単峰性の放射パターンを示した。
【0051】
比較例として、n 型Cd0.2Zn0.8O 光吸収層 303 を形成せずに半導体レーザ素子を作製したところ、層厚方向遠視野像は双峰性の弱い放射パターンとなった。
【0052】
基板に導電性基板を用いると、n 型オーミック電極を基板裏面に形成出来るため、製造プロセスが簡便になると共に動作電圧が低減するので好ましい。ZnO、GaN および 6H-SiC 基板はウルツ鉱型の結晶構造を有し、ZnO 半導体層との格子整合性が高く好ましい。特に ZnO 基板は ZnO 半導体層との親和性に最も優れており、結晶性の極めて高いエピタキシャル層を得ること出来る。
【0053】
(実施形態 3)
本実施形態は、n 型クラッド 層 304 を、厚さ 0.9 μm の Mg0.1Zn0.9O 層 304a と厚さ0.1μmのMg0.06Zn0.94O 層304b の 2 層構造とした他は実施形態 1 と同様にして半導体レーザ素子 300 を作製した。
【0054】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 に電流を流したところ、実施形態 1 と同様に波長 410nmの青色発振光が得られ、層厚方向遠視野像は単峰性の放射パターンを示した。放射角は実施形態 1より狹くなり 15°であった。
【0055】
図 4 に、本実施形態と実施形態 1 の半導体レーザ素子の屈折率と光強度分布を示す。
本実施形態のようにクラッド層を多層構造にすることにより、光分布を微細に制御することが出来、活性層への光閉じ込め率を低下させることなく光分布の裾を広げて放射角を狹くすることが出来る。このことは、本発明の半導体レーザ素子を光ディスク記録の光源として用いた場合に記録密度が高くなるので好ましい
。
【0056】
また、クラッド層を多層構造とするときは、屈折率の異なる層を積層し、さらには、コンタクト層への光の漏れをより効果的に防止する観点から、屈折率の高い層をより基板側に設けることが好ましい。
【0057】
(実施形態 4)
本実施形態では、量子井戸活性層 306 を厚さ 5nm の Mg0.05Zn0.95O 障壁層 2 層と厚さ 6nm の ZnO 井戸層 3 層とを交互積層して構成し 、光吸収層 303 を n 型 ZnO 層で構成した他は実施形態 1 と同様にして半導体レーザ素子 300 を作製した。
【0058】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 に電流を流したところ、波長 380nm の紫外発振光が得られ、層厚方向遠視野像は単峰性の放射パターンを示した。
【0059】
本実施形態のように、レーザ光が紫外光の場合でも、レーザ発振波長に対応するバンドギャップエネルギーより小さいバンドギャップエネルギーを有する光吸収層を形成することにより、横モードを安定化させることが出来る。
【0060】
(実施形態 5)
本実施形態では、光吸収層 303 を厚さ 2nm の n 型 ZnO 井戸層 2 層と厚さ 5nm の n 型 Mg0.1Zn0.9O障壁層 3 層から成る量子井戸構造とした他は実施形態4 と同様にして半導体レーザ素子 300 を作製した。
【0061】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 に電流を流したところ、実施形態 4 と同様に波長 380nm の紫外発振光が得られ、層厚方向遠視野像は単峰性の放射パターンを示した。
また、発振閾値電流が実施形態 4 に比べて 3mA 低減した。
【0062】
本実施形態において発振閾値電流が低減した理由は、光吸収層 303 を量子井戸構造としたことにある。すなわち、量子井戸吸収層は量子効果を持たない所謂バルク吸収層に比べ体積が極めて小さく、微分吸収係数が大きいという特長を有する。このため、井戸層数を調整することによって吸収量を最適化することが容易に行え、損失を抑えて単一基本モードで安定に導波させることが出来る。
【0063】
【発明の効果】
本発明の酸化物半導体レーザ素子は、レーザ光に対して透明な基板上に光吸収層を形成してレーザ光の裾を吸収するようにしたので、垂直横モードが安定化し、光学特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態 1 の ZnO 系半導体レーザ素子の構造斜視図
【図2】実施形態 1 および比較例の半導体レーザ素子における層厚方向遠視野角に対する遠視野強度を表す図。
【図3】実施形態 2 の ZnO 系半導体レーザ素子の構造斜視図。
【図4】実施形態 3 および 1 の半導体レーザ素子の屈折率と光強度分布を示す図。
【図5】従来例の半導体レーザ素子の構造斜視図。
【符号の説明】
300:半導体レーザ素子
301:基板
302:n 型 ZnO コンタクト層
303:光吸収層
304:n 型 MgZnO クラッド層
305:n 型 ZnO 光ガイド層
306:量子井戸活性層
307:p 型 ZnO 光ガイド層
308:p 型 MgZnO クラッド層
309:p 型 ZnO コンタクト層
310:n 型 MgZnO 電流ブロック層
311:n 型オーミック電極
312:p 型オーミック電極
【発明の属する技術分野】
本発明は放射角制御と垂直横モードの安定性に優れた酸化物半導体レーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高密度な光ディスク記録システムのレーザ光源として利用すべく、3〜3.5eVのバンドギャップエネルギーを有する直接遷移型半導体の結晶成長およびデバイス技術が急速に発展している。
【0003】
特に III 族窒化物半導体の技術進展は目ざましく、光学特性や信頼性は既に実用化の域に達している。
【0004】
一方、酸化物半導体についても現在研究が進みつつあり、特に酸化亜鉛 (ZnO)は励起子結合エネルギーが 60meV と極めて高く、また原材料が安価、環境や人体に無害で成膜手法が簡便であるなどの特徴を有し、高効率・低消費電力で環境性に優れた半導体レーザ素子を実現出来る可能性がある。
【0005】
なお、本明細書においては ZnO 系半導体とは、ZnO およびこれを母体とした MgZnO あるいは CdZnOなどで表される混晶を含めるものとする。またGaN系半導体とは、GaNを母体としたAlGaNあるいはInGaNなどで表される混晶を含めるものとする。
【0006】
従来の ZnO 系半導体レーザ素子の例として、国際特許 WO 00/16411 号に開示されている構造を図 5 に示す。
【0007】
本従来素子は、サファイア基板 1 上に ZnO バッファ層 2、n 型 ZnO コンタクト層 3、n 型MgZnOクラッド層 4、n型 ZnO 光ガイド層 14、多重量子井戸活性層 15、p型 ZnO 光ガイド層 16、p型MgZnO クラッド層 6、p型 ZnO コンタクト層 7 を順次積層した後に p 型 ZnO コンタクト層 7 から p型 MgZnO クラッド層 6 の一部までをメサストライプ状にエッチングし、n 側電極 9 および p側電極 10 を形成してなる半導体レーザ素子である。
【0008】
上記従来素子において用いられているサファイア基板は、低コストで高品質な基板材料であり、また結晶性に優れた ZnO 半導体層が得られる一方、絶縁性基板であるため基板裏面に電極を形成することが出来ない。このため、サファイア基板 1 と n 型 MgZnO クラッド層 4 の間に n型 ZnO コンタクト層 3 を形成し、コンタクト層の一部を露出して電極を形成している。電流はコンタクト層を横方向 (接合面に対して平行方向) に流れるため、低抵抗化のためにはコンタクト層を厚く積層することが有効である。
【0009】
【特許文献1】
国際公開 WO 00/16411号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来素子の構造では、n 型 MgZnO クラッド層4 より n 型 ZnOコンタクト層 3 の方が高屈折率であり、更にサファイア基板 1 がレーザ光に対して透明であるため、n 型 MgZnO クラッド層 4 からしみ出した光が厚い n 型 ZnO コンタクト層 3を導波する多モード発振となりやすい。このような放射特性は、基本モードからの放射角のずれおよび導波損失の増大を生じ 、半導体レーザ素子の特性を著しく阻害する。また、この問題は、基板に ZnO 基板を用いた場合にも同様に生じる。
【0011】
前記の問題を解決するには、活性層への光閉じ込めを強くして光のしみ出しを抑える必要があり、例えば n 型 MgZnO クラッド層 4 を厚く形成することが有効である。しかし、光ディスクに用いれられる半導体レーザ素子は、その高密度化に伴って放射角を狭化することが求められており、そのためにはレーザ素子内で光を十分にを広げなければならない。また、クラッド層の厚膜化は高コストになり、その上に積層される半導体層の結晶性も悪化しやすいので、避けることが好ましい。
【0012】
すなわち、光ディスク用半導体レーザ素子に求められる高機能化と垂直横モードの安定化を両立することが困難であった。
本発明は以上の課題に鑑み、放射角制御と垂直横モードの安定性の両方に優れた酸化物半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ZnO 系半導体レーザ素子において、放射角を狭化すると共に垂直横モードを安定化させる手段について鋭意検討した結果、n 型クラッド層の外側にレーザ光の裾を吸収する光吸収層を設けることで、基本導波モードを安定に閉じ込めることが出来ることを見い出し本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明の酸化物半導体レーザ素子は、レーザ光に対して透明な基板上に光吸収層が形成され、前記光吸収層上に少なくとも、ZnO 系半導体で構成される n 型クラッド層、n 型光ガイド層、活性層、p 型光ガイド層、p 型クラッド層、p 型コンタクト層を備えたことを特徴とする。
【0015】
クラッド層の外側に形成された光吸収層がレーザ光の裾を吸収することにより、高屈折率の基板やコンタクト層が存在しても垂直横モードが安定化する。このことにより、光学特性に優れた酸化物半導体レーザ素子を作製出来る。
【0016】
本発明において「レーザ光」は、ZnO系半導体から構成される発光層(活性層)から発光される光であり、バンドギャップエネルギーが3〜3.5eV(およそ350nm〜415nmの光に対応)を意図しており、基板は、そのようなレーザ光に対して透明なものを使用すればよい。
【0017】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記基板が ZnO、GaN あるいは SiC から選択された導電性基板である。
【0018】
基板が導電性基板であれば基板から電極を取り出せ、動作電圧低減とプロセス簡便性に優れる。
【0019】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記基板がサファイア、LiGaO2、NaAlO2 および MgAl2O4から選択された絶縁性基板である。
【0020】
絶縁性基板は導電性基板に比べ安価で高品質なものを用いることが出来、特に前記の絶縁性基板は ZnO 半導体層との格子不整合が小さい。特に酸化物基板は ZnO との親和性が高く、低コストで品質に優れた酸化物半導体うレーザ素子を作製出来る。
【0021】
前記の導電性基板は ZnO 半導体層との格子不整合が小さく、特に、ZnO 基板は ZnO 系半導体のエピタキシャル成長に最も優れた基板であり、特性に優れた半導体レーザ素子を作製出来る。
【0022】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記光吸収層がZnO 系半導体、例えばCdxZn1-xO、またはGaN 系半導体、例えばInyGa1-yN(0 ≦ x, y ≦ 1、好ましくは0≦ x ≦ 0.2、0≦ y ≦ 0.3)を含む。
【0023】
吸収層が ZnO 系半導体あるいは GaN 系半導体で構成されていれば、基板および ZnO 系半導体との親和性に優れ、結晶性の高いエピタキシャル層を得ることが出来る。
【0024】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記光吸収層が量子井戸構造を含む。
量子井戸吸収層は積層数によって体積を微細に制御出来、また微分吸収係数が大きいという利点を有し、吸収特性を微細に制御出来る。
【0025】
n型クラッド層は、ZnO 系半導体、好ましくはMgZnOで構成される。
【0026】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記 n 型クラッド層は屈折率の異なる 2 層以上の積層構造で構成される。
【0027】
クラッド層が多層構造であることにより、基板方向への光のしみ出しを微細に調整することが出来、放射角をより精密に制御することが出来る。
【0028】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、前記 n 型クラッド層の合計層厚が 0.5〜2.5 μm、好ましくは0.5〜1.5μmである。単層の場合でもn 型クラッド層の層厚は左記範囲内で形成するようにする。
【0029】
n 型クラッド層厚を所定の範囲とすることにより、レーザ光の裾部分のみを吸収するようにすることが出来るので、吸収損失を抑えてモードを安定化させることが出来る。
【0030】
p 型光ガイド層、p 型クラッド層、p 型コンタクト層は、上記で説明したn 型光ガイド層、n 型クラッド層、n 型コンタクト層と、ドーパントがp型ドーパントであることが相違する以外は、同様に適用できる。
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
(実施形態 1)
本実施形態では、半導体レーザ素子に本発明を適用した例を示す。
図 1 は本実施形態の ZnO 系半導体レーザ素子 300 の構造斜視図である。
【0031】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 は、C 面 (0001) を主面としたサファイア基板 301 上に、、Gaドーピング濃度が 1×1019cm-3 で厚さ 1 μm の n 型 ZnO コンタクト層 302、Siドーピング濃度が1×1019cm-3 で厚さ 10nm の In0.17Ga0.83N 光吸収層 303、Gaドーピング濃度が 3×1018cm-3 で厚さ 1 μm の n 型 Mg0.1Zn0.9O クラッド層 304、Gaドーピング濃度が 5×1017cm-3 で厚さ 30nmの n 型 ZnO 光ガイド層 305、ノンドープ量子井戸活性層 306、Nドーピング濃度が 5×1018cm-3 で厚さ 30nm の p 型 ZnO 光ガイド層 307、Nドーピング濃度が 5×1019cm-3 で厚さ 1.2 μm の p型 Mg0.1Zn0.9O クラッド層 308、Nドーピング濃度が 1×1020cm-3 で厚さ 0.5 μm の p 型 ZnOコンタクト層 309 が積層されている。n 型 ZnO コンタクト層 302はバッファ層の役割も兼ねている。
【0032】
量子井戸活性層 306 は、厚さ 5nm の ZnO 障壁層 2 層と、厚さ 6nm の Cd0. 1Zn0.9O 井戸層 3 層とが交互に積層されている。
【0033】
p 型 ZnO コンタクト層 309 および p 型 Mg0.1Zn0.9O クラッド 層 308 はリッジストライプ状にエッチング加工され、リッジストライプ側面は Ga が 3×1018cm-3 の濃度でドーピングされた n型 Mg0.2Zn0.8O 電流ブロック層 310 によって埋め込まれている。
【0034】
In0.17Ga0.83N 光吸収層 303 から n 型 Mg0.2Zn0.8O 電流ブロック層 310 に至る積層構造は一部がエッチングされ、露出した n 型 ZnO コンタクト層 302 上に n 型オーミック電極 311 が形成されている。
【0035】
n 型 Mg0.2Zn0.8O 電流ブロック層 310 および p 型 ZnO コンタクト層 309 の上には p 型オーミック電極 312 が形成されている。
【0036】
本発明は、レーザ光に対して透明な基板上に光吸収層を形成したことに特徴を有している。
【0037】
本発明の酸化物半導体レーザ素子 300 は、固体あるいは気体原料を用いた分子線エピタキシー(MBE)法、レーザ分子線エピタキシー(レーザ MBE)法、有機金属気相成長(MOCVD)法などの結晶成長手法で作製することが出来る。本実施形態の ZnO 系半導体レーザ素子は、レーザ MBE法によって作製した。
【0038】
本実施形態の構造を作製後、リッジストライプに垂直なミラー端面に保護膜を真空蒸着した後、素子を 300 μmに分離した。
【0039】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 に電流を流したところ、端面から波長 410nm の青色発振光が得られ、発振閾値電流は 35mA、光出力 5mW での動作電圧は4V であった。
【0040】
また、層厚方向遠視野像の測定を行ったところ、図 2 に実線で示した単峰性の放射パターンを示し、放射角は 20°であった。
【0041】
比較例として、In0.17Ga0.83N 光吸収層 303 を形成しない他は本実施形態と同様にして半導体レーザ素子を作製した。本実施形態と同様に端面から波長 410nm の青色発振光が得られた。層厚方向遠視野像の測定を行ったところ、図 2 に破線で示したような、双峰性の弱い放射パターンを示した。このような異常な放射パターンは、青色発光波長に対応した DVD などの高密度光ディスクシテムにおいて、信号記録および再生が正常に行なわれない。
【0042】
上記ような結果が得られた理由は、比較例の半導体レーザ素子において、n 型MgZnO クラッド層 304 からしみ出した光が屈折率の高い n 型 ZnO コンタクト層 302 を導波する反導波モード 発振となったのに対し 、本実施形態の半導体レーザ素子は、n 型 MgZnO クラッド層 304 の外側に形成された InGaN 光吸収層 303 がレーザ光の裾を吸収したため、高次モードを生じること無く導波モードが安定化したと考えられる。
【0043】
InGaN 光吸収層 303 は、サファイア基板 301 と n 型 ZnO コンタクト層 302の間に配置しても効果を奏するが、屈折率の高い n 型 ZnO コンタクト層よりも活性層側に配置した方がモード 安定化の効果が高いので好ましい。
【0044】
光吸収層には、InGaN 以外に CdZnOを用いてもよい。GaN 系および ZnO系半導体はいずれも ZnO 系半導体上に高品質な単結晶層をエピタキシャル成長させることが出来るので、光吸収層を配置することによる結晶性の劣化を生じない。
【0045】
光吸収層は、その膜厚(量子井戸構造の場合は合計膜厚)を1〜1000nm、好ましくは3〜100nmに形成する。その膜厚が1000nmより厚いと光吸収量が増大して発振閾値電流が上昇すると共に、光吸収層上に積層される半導体層の結晶性が悪化する傾向にあり、また薄いと十分な光吸収量が得られず導波モードが安定化しない。
【0046】
横モードを安定化させるには、光吸収層はレーザ光の裾を吸収すればよく、そのためには、n 型 MgZnO クラッド層の層厚を 0.5〜2.5 μmの範囲で適宜調整すればよい。これより薄いと損失が大幅に増大して発振閾値電流が増大し 、これより厚いとレーザ光が n 型 ZnO コンタクト層に達しないので横モードは安定化するものの、高コスト化および n 型 MgZnO クラッド層上に積層される半導体層の結晶性が悪化する。
【0047】
本実施形態のようにサファイアのような絶縁性基板を用いると、n 型オーミック電極を形成するためにコンタクト層を形成しなければならないが、絶縁性基板は安価かつ高品質であり、低コストで品質に優れた半導体レーザ素子を作製することが出来る。サファイア以外の絶縁性基板としては、ZnO 系および GaN 系半導体との格子整合性が高い LiGaO2、NaAlO2 や MgAl2O4 を用いることが好ましい。
【0048】
本実施形態では、基板上にn型層、活性層、p型層の順に形成したが、基板上にp型層、活性層、n型層の順に形成してもよい。この場合は光吸収層はp型であることが好ましい。また、本実施形態において光吸収層をp型層側(例えば、p型クラッド層とp型コンタクト層の間)に設けても良く、更にはn型層側とp型層側の両方に設けてもよい。
【0049】
(実施形態 2)
図 3 は本実施形態の ZnO 系半導体レーザ素子 300 の構造斜視図である。
本実施形態は、基板 301 に n 型 ZnO の亜鉛面(0001)を用い、ZnO 基板 301 の裏面に n 型オーミック電極 311 を形成した。また、n 型 ZnO コンタクト層 302 は形成せず、光吸収層 303 を n 型Cd0.2Zn0.8O で構成した。その他は実施形態 1 と同様にして半導体レーザ素子 300 を作製した。
【0050】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 に電流を流したところ、実施形態 1 と同様に波長 410nm の青色発振光が得られ、層厚方向遠視野像は単峰性の放射パターンを示した。
【0051】
比較例として、n 型Cd0.2Zn0.8O 光吸収層 303 を形成せずに半導体レーザ素子を作製したところ、層厚方向遠視野像は双峰性の弱い放射パターンとなった。
【0052】
基板に導電性基板を用いると、n 型オーミック電極を基板裏面に形成出来るため、製造プロセスが簡便になると共に動作電圧が低減するので好ましい。ZnO、GaN および 6H-SiC 基板はウルツ鉱型の結晶構造を有し、ZnO 半導体層との格子整合性が高く好ましい。特に ZnO 基板は ZnO 半導体層との親和性に最も優れており、結晶性の極めて高いエピタキシャル層を得ること出来る。
【0053】
(実施形態 3)
本実施形態は、n 型クラッド 層 304 を、厚さ 0.9 μm の Mg0.1Zn0.9O 層 304a と厚さ0.1μmのMg0.06Zn0.94O 層304b の 2 層構造とした他は実施形態 1 と同様にして半導体レーザ素子 300 を作製した。
【0054】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 に電流を流したところ、実施形態 1 と同様に波長 410nmの青色発振光が得られ、層厚方向遠視野像は単峰性の放射パターンを示した。放射角は実施形態 1より狹くなり 15°であった。
【0055】
図 4 に、本実施形態と実施形態 1 の半導体レーザ素子の屈折率と光強度分布を示す。
本実施形態のようにクラッド層を多層構造にすることにより、光分布を微細に制御することが出来、活性層への光閉じ込め率を低下させることなく光分布の裾を広げて放射角を狹くすることが出来る。このことは、本発明の半導体レーザ素子を光ディスク記録の光源として用いた場合に記録密度が高くなるので好ましい
。
【0056】
また、クラッド層を多層構造とするときは、屈折率の異なる層を積層し、さらには、コンタクト層への光の漏れをより効果的に防止する観点から、屈折率の高い層をより基板側に設けることが好ましい。
【0057】
(実施形態 4)
本実施形態では、量子井戸活性層 306 を厚さ 5nm の Mg0.05Zn0.95O 障壁層 2 層と厚さ 6nm の ZnO 井戸層 3 層とを交互積層して構成し 、光吸収層 303 を n 型 ZnO 層で構成した他は実施形態 1 と同様にして半導体レーザ素子 300 を作製した。
【0058】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 に電流を流したところ、波長 380nm の紫外発振光が得られ、層厚方向遠視野像は単峰性の放射パターンを示した。
【0059】
本実施形態のように、レーザ光が紫外光の場合でも、レーザ発振波長に対応するバンドギャップエネルギーより小さいバンドギャップエネルギーを有する光吸収層を形成することにより、横モードを安定化させることが出来る。
【0060】
(実施形態 5)
本実施形態では、光吸収層 303 を厚さ 2nm の n 型 ZnO 井戸層 2 層と厚さ 5nm の n 型 Mg0.1Zn0.9O障壁層 3 層から成る量子井戸構造とした他は実施形態4 と同様にして半導体レーザ素子 300 を作製した。
【0061】
本実施形態の半導体レーザ素子 300 に電流を流したところ、実施形態 4 と同様に波長 380nm の紫外発振光が得られ、層厚方向遠視野像は単峰性の放射パターンを示した。
また、発振閾値電流が実施形態 4 に比べて 3mA 低減した。
【0062】
本実施形態において発振閾値電流が低減した理由は、光吸収層 303 を量子井戸構造としたことにある。すなわち、量子井戸吸収層は量子効果を持たない所謂バルク吸収層に比べ体積が極めて小さく、微分吸収係数が大きいという特長を有する。このため、井戸層数を調整することによって吸収量を最適化することが容易に行え、損失を抑えて単一基本モードで安定に導波させることが出来る。
【0063】
【発明の効果】
本発明の酸化物半導体レーザ素子は、レーザ光に対して透明な基板上に光吸収層を形成してレーザ光の裾を吸収するようにしたので、垂直横モードが安定化し、光学特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態 1 の ZnO 系半導体レーザ素子の構造斜視図
【図2】実施形態 1 および比較例の半導体レーザ素子における層厚方向遠視野角に対する遠視野強度を表す図。
【図3】実施形態 2 の ZnO 系半導体レーザ素子の構造斜視図。
【図4】実施形態 3 および 1 の半導体レーザ素子の屈折率と光強度分布を示す図。
【図5】従来例の半導体レーザ素子の構造斜視図。
【符号の説明】
300:半導体レーザ素子
301:基板
302:n 型 ZnO コンタクト層
303:光吸収層
304:n 型 MgZnO クラッド層
305:n 型 ZnO 光ガイド層
306:量子井戸活性層
307:p 型 ZnO 光ガイド層
308:p 型 MgZnO クラッド層
309:p 型 ZnO コンタクト層
310:n 型 MgZnO 電流ブロック層
311:n 型オーミック電極
312:p 型オーミック電極
Claims (7)
- レーザ光に対して透明な基板上に少なくとも、ZnO 系半導体で構成される n 型クラッド層、n 型光ガイド層、活性層、p 型光ガイド層、p 型クラッド層、p 型コンタクト層を備え、前記n型クラッド層外側あるいは前記p型クラッド層外側の少なくともいずれかに光吸収層が形成されていることを特徴とする酸化物半導体レーザ素子。
- 前記クラッド層は屈折率の異なる 2 層以上の積層構造で構成される請求項 1 記載の酸化物半導体レーザ素子。
- 前記クラッド層の合計層厚が 0.5〜2.5 μm である請求項 2または1 記載の酸化物半導体レーザ素子。
- 前記光吸収層が CdxZn1-xO または InyGa1-yN(0 ≦ x, y ≦ 1)を含む請求項 1 記載の半導体レーザ素子。
- 前記光吸収層が量子井戸構造を含む請求項 1 記載の半導体レーザ素子。
- 前記基板が ZnO、GaN あるいは SiC から選択された導電性基板である請求項 1 記載の半導体レーザ素子。
- 前記基板がサファイア、LiGaO2、NaAlO2 および MgAl2O4 から選択された絶縁性基板である請求項 1 記載の半導体レーザ素子。
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