JP2005047966A - 重金属固定化剤および重金属含有物の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】モノ−およびポリ−ジチオカルバミン酸(塩)の混合物と40℃で0.1〜50mmHgの蒸気圧を有するアミンからなる重金属固定化剤。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重金属固定化剤に関する。さらに詳しくは重金属含有物中の重金属を固定化して重金属の溶出を防止することのできる重金属固定化剤および重金属固定化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、焼却(飛)灰(焼却灰または焼却飛灰を意味する、以下同じ。)、鉱滓、土壌および汚泥などの固体粉末、スラリー、水溶液または懸濁液中に存在する重金属を固定化して重金属の溶出を防止するために添加される薬剤としては、例えばジチオカルバミン酸塩が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−231921号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のジチオカルバミン酸塩では、硫黄臭および/またはアミン臭が強いなど、作業性および安全性において問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、モノ−およびポリ−ジチオカルバミン酸(塩)の混合物(A)と40℃で0.1〜50mmHgの蒸気圧を有するアミン(B)からなる重金属固定化剤;重金属を含有する、固体粉末、スラリー、水溶液または懸濁液に該重金属固定化剤および必要により水を含有させて撹拌または混練する重金属含有物(D)の処理方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明における(A)を構成するモノ−およびポリ−ジチオカルバミン酸(塩)は、アミン(a)と二硫化炭素との反応により得られ、例えば特開平8−269434号公報に記載のものが挙げられる。
【0007】
(a)には、1級アミン、2級アミン、1、2級アミノ基含有アミン、その他のアミンおよびこれらの混合物が含まれる。
1級アミンとしては、脂肪族アミン〔モノアミン[炭素数1〜32、例えばメチルアミン、エチルアミン、n−およびi−プロピルアミン、n−、i−およびsec−ブチルアミン、アミルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ヘキサデシルアミンおよびアイコサミン、アルカノールアミン(例えばエタノールアミンおよびプロパノールアミン)]およびポリアミン(炭素数2〜32、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミン)];脂環式アミン[モノアミン(炭素数5〜32、例えばシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンおよびメチルシクロヘキシルアミン)およびポリアミン(炭素数6〜32、例えば1,3−シクロペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミンおよび1,4−ビス(アミノエチル)シクロヘキサン)];芳香(脂肪)族アミン[モノアミン(炭素数6〜32、例えばアニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミンおよびフェネチルアミン)およびポリアミン(炭素数6〜32、例えばフェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジアミノフェニルエーテル、トルイレンジアミンおよびキシリレンジアミン)];およびこれらの混合物が挙げられる。
【0008】
2級アミンとしては、脂肪族アミン〔モノアミン[炭素数2〜32、例えばジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、エチルヘキシルアミン、メチル−t−ブチルアミンおよびジn−ブチルアミン、アルカノールアミン(例えばジエタノールアミンおよびジプロパノールアミン)]およびポリアミン(炭素数2〜32、例えばN,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−プロピレンジアミンおよびN,N’−ヘキサメチレンジアミン)];脂環式アミン[モノアミン(炭素数6〜32、例えばN,N−メチルシクロペンチルアミンおよびN,N−メチルシクロヘキシルアミン)およびポリアミン(炭素数7〜32、例えばN,N’−ジメチル−1,3−シクロペンタンジアミンおよびN,N’−ジメチル−1,4−シクロヘキサンジアミン)];芳香(脂肪)族アミン[モノアミン(炭素数7〜32、例えばメチルアニリン)およびポリアミン(炭素数6〜32、例えばN,N’−ジメチル−フェニレンジアミン)];複素環含有アミン[炭素数4〜32、例えば2級アミン:ピペラジン、ピペリジン、ホモピペラジン、1−メチルピペラジン、およびピペコリン];およびこれらの混合物が挙げられる。
【0009】
1、2級アミノ基含有アミンとしては、脂肪族アミン(炭素数4〜32、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、モノメチルアミノプロピルアミンおよびメチルイミノビスプロピルアミン);脂環式アミン(炭素数4〜32、例えばN−シクロヘキシルエチレンジアミン);芳香(脂肪)族アミン(炭素数7〜32、例えばN−メチルフェニレンジアミン);複素環含有アミン(炭素数5〜32、例えば1−アミノエチルピペラジン);およびこれらの混合物が挙げられる。
【0010】
その他のアミンとしては、メラミン、グアナミン、環状アミンの重合体(重量平均分子量300〜200万、例えばポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ−3−メチルプロピルイミンおよびポリ−2−エチルプロピルイミン)、不飽和アミンの重合体(重量平均分子量300〜200万、例えばポリビニルアミン、ポリアリルアミンおよびポリジアリルアミン)およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0011】
これらのうち、形成されるジチオカルバミン酸(塩)の耐熱安定性の観点から好ましいのは脂肪族2級アミンおよび複素環含有2級アミン、さらに好ましいのはジメチルアミン、ジエチルアミン 、ジn−ブチルアミン、およびとくに好ましいのはN,N’−ジメチルエチレンジアミンおよびピペラジン、最も好ましいのはピペラジンである。
【0012】
(A)はモノ−およびポリ−ジチオカルバミン酸(塩)の混合物であり、(A)中のモノジチオカルバミン酸(塩)の割合M(重量%)は、重金属固定化能の観点から好ましくは0.05〜50%、さらに好ましくは0.1〜30%、とくに好ましくは0.5〜20%、最も好ましくは1〜10%である。
ジチオカルバミン酸(塩)の一般的な製造方法としては、特に限定は無く公知の製造方法(特開平8−269434号公報等)、例えば外部から温調可能なガラス製容器に水および(a)を投入し、十分に溶解させた後、塩基(例えば水酸化カリウム)を加え、撹拌下冷却しながら二硫化炭素を滴下し、約40℃で反応させる方法が挙げられる。(a)と塩基の当量比は、通常1/0.2〜1/5、好ましくは1/0.5〜1/2、また水の使用量は、(A)の重量に基づいて通常10〜90%、好ましくは30〜80%である。
【0013】
(A)は、該ジチオカルバミン酸(塩)の一般的な製造方法に従って製造されるが、(A)が上記モノ−およびポリ−ジチオカルバミン酸(塩)の混合物であることから、その製造方法としては、例えば(1)対応する上記アミン(a)(モノアミンまたはポリアミン)に二硫化炭素を別々に反応させて混合物の各成分を別々に製造した後に配合して製造する方法、(2)モノアミンとポリアミンの混合物に二硫化炭素を反応させて製造する方法、および(3)(a)のうちのポリアミンに二硫化炭素を反応させて混合物を一度に製造する方法が挙げられ、これらのうちいずれを採用してもよい。製造プロセスの簡略化の観点から、(3)の方法がより好ましい。この際、反応させる二硫化炭素の量を調整することによりMを上記範囲に調整することができる。
上記製造方法(1)〜(3)において、(a)と二硫化炭素との当量比は、通常1/0.2〜1/3、副反応の防止の観点から好ましくは1/0.7〜1/1.5である。
【0014】
上記割合Mは、例えば(a)がピペラジンの場合には、(A)を重水にて5%程度に希釈した後、1H−NMRを測定し、ピペラジンモノ−およびビス−ジチオカルバミン酸(塩)(以下、それぞれモノ体およびビス体と略記)それぞれのピペラジン骨格中のメチレン基水素の積分比から算出できる。すなわち、モノ体のメチレン基水素は、TMS(テトラメチルシラン)を基準として2.88および4.35ppm付近にシグナルを示し、ビス体のメチレン基水素は4.42ppm付近にシグナルを示すので、モノ体およびビス体それぞれのピークの積分値合計の割合からモル比を算出し、重量比に変換することにより求めることができる。
【0015】
(A)がジチオカルバミン酸塩の場合、塩を構成する塩基(b)としては、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウム)および前記アミン(a)が挙げられ、水溶液として使用する際に高濃度にできるとの観点から、好ましいのはアルカリ金属の水酸化物、ジエチルアミンおよびピペラジン、さらに好ましいのは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである。
【0016】
(B)は、40℃で0.1〜50mmHg、好ましくは0.2〜40mmHgの蒸気圧を有するアミンである。(B)は重金属固定化剤中に存在することで、発生した有害ガス(例えば二硫化炭素、硫化水素および二酸化硫黄)を捕捉し、無害化することができる。該蒸気圧が0.1mmHg未満では効果的に有害ガスを捕捉できず、50mmHgを超えるとアミン臭が強くなり作業性および安全性に弊害が生じる。蒸気圧は、例えば沸点法(試料液面上の気相の圧力を変化させ、それに相当する沸点を測定してその温度における蒸気圧を求める方法)により測定できる。また、「別冊化学工学 第27巻 第15号 化学工業データ 新版蒸気圧線図(1983年、化学工業社刊)」などに記載の数値を用いることもできる。
【0017】
(B)としては、炭素数2〜12のアミン、例えば前記(a)として例示したもののうち、炭素数2〜12に該当するもの、およびそれらの混合物が挙げられる。これらのうち有害ガス(上記のもの、以下同じ)を捕捉する効果および/またはアミン臭の観点から好ましいのは[以下において()内は40℃での蒸気圧(mmHg)を示す。]、脂肪族1級ポリアミン[例えばヘキサメチレンジアミン(1.0)]、芳香(脂肪)族1級ポリアミン[例えばフェニレンジアミン(15)およびキシリレンジアミン(0.2)]、複素環含有2級アミン[例えばピペラジン(14)]および脂肪族1、2級アミノ基含有アミン[例えばジエチレントリアミン(1.3)、トリエチレンテトラミン(0.3)、イミノビスプロピルアミン(0.1)およびメチルイミノビスプロピルアミン(0.2)]、さらに好ましいのはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびピペラジンである。
【0018】
(A)と(B)の合計重量に基づく(B)の割合は、下限は有害ガス発生防止の観点から好ましくは0.001%、さらに好ましくは0.005%、とくに好ましくは0.01%、最も好ましくは0.03%であり、上限はアミン臭気の観点から好ましくは5%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは0.5%、最も好ましくは0.2%である。該割合はガスクロマトグラフィーを用いて測定することにより求めることができる。
【0019】
本発明の重金属固定化剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、さらにその他の重金属固定化剤(C)を含有させてもよい。
(C)には、(A)を除く公知の、有機系重金属固定化剤(C1)および無機系重金属固定化剤(C2)が含まれる。
(C1)としては、例えば特開平8−269434号公報に記載のもの、例えばチオカルバミン酸基、チオアミド基、チオウレイド基、キサントゲン酸基、チオール基、チオフェノール基およびこれらのアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウム)、アンモニウムまたはアミン(炭素数1〜8のモノ−、ジ−およびトリアルキルアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミンおよびトリエチルアミン)塩基を有する化合物が挙げられる。
(C2)としては、例えば一硫化ナトリウム、ポリ(2〜5)硫化ナトリウムおよび硫化水素ナトリウムが挙げられる。
これらのうち、重金属の固定化効果の観点から好ましいのは(C1)である。
【0020】
本発明の重金属固定化剤中の(A)と(B)の合計含有率は、重金属の固定化効果および有害ガス発生防止の観点から、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50〜100重量%、とくに好ましくは70〜100重量%である。
また、該重金属固定化剤中に(C)を含有させる場合の含有率は、好ましくは0.1〜70重量%、さらに好ましくは1〜50重量%である。
【0021】
本発明の重金属固定化剤の製造方法としては、(A)を別に製造しておいてこれに(B)を配合し、さらに必要により(C)を配合してもよいし、(A)を製造する際に(a)として(B)から選ばれる1種または2種以上を反応させて一部未反応物として(B)を残存させてもよい。製造プロセスの簡略化の観点から、後者の方法が好ましい。その際、二硫化炭素の滴下量を調整することにより前記(A)と(B)の合計重量に基づく(B)の割合を好ましい範囲とすることができる。
【0022】
本発明の重金属固定化剤を用いて重金属含有物(D)を処理するに際しては、1種単独で使用する方法、2種以上の混合物として使用する方法、あるいは2種以上を別々に順序不同で被処理物に添加して使用する方法のいずれで行ってもよい。
2種以上の混合物として使用する方法としては、予め異なる重金属固定化剤を別々に製造した後混合して用いる方法と、2種以上の混合物を一度に製造する方法が挙げられる。2種以上の混合物を一度に製造する方法には、2種以上の(a)を二硫化炭素と反応させる方法が含まれる。これらのうち製造コストの観点から、2種以上の混合物を一度に製造する方法が好ましい。
【0023】
本発明の重金属固定化剤の形態は、固体もしくは該重金属固定化剤を水に溶解した水溶液のいずれの形態であってもよい。水溶液の場合、重金属固定化剤の純分含量は、運搬コストの観点から、下限は好ましくは10重量%、さらに好ましくは20重量%、とくに好ましくは30重量%、最も好ましくは35重量%、また、低温保存時の安定性の観点から上限は好ましくは70重量%、さらに好ましくは60重量%、とくに好ましくは55重量%、最も好ましくは50重量%である。また形態が水溶液の場合のpHは、保存時の安定性の観点から重金属固定化剤の20重量%濃度でのpH(25℃)として、好ましくは11〜14、さらに好ましくは12〜14である。
【0024】
本発明の重金属固定化剤は、ブロック状固体、粉体、液体、スラリーおよびペーストなど、種々の性状の重金属含有物中の重金属の固定化に有効であるが、焼却(飛)灰、鉱滓、土壌および汚泥などの固体粉末やスラリーまたは工場排水、洗煙排水、廃棄物埋め立て処分場の浸出水などの水溶液や懸濁液である重金属含有物(D)中の重金属の固定化においてさらに効果的であり、高温の焼却(飛)灰中の重金属の固定化にはとくに効果的である。
【0025】
本発明の重金属固定化剤の使用量は、該重金属含有物中に含まれる重金属含有量によって任意に調整可能であり特に限定は無いが、重金属含有物の重量(固体、粉体、ペーストの場合はそれらの全重量、また、液体、スラリーの場合は固形分の全重量)に基づいて固形分として、下限は重金属固定化効果の観点から好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.2%、とくに好ましくは0.3%、上限は薬剤コストの観点から好ましくは30%、さらに好ましくは20%、とくに好ましくは10%である。
【0026】
本発明の重金属固定化剤を添加する際の重金属含有物の温度は、固体粉末の場合、下限は処理時に温度調整をすることがなく、処理コスト低減の観点から好ましくは20℃、さらに好ましくは50℃、とくに好ましくは80℃、最も好ましくは100℃、上限は有害ガス発生防止の観点から好ましくは400℃、さらに好ましくは350℃、とくに好ましくは300℃、最も好ましくは250℃である。
前記従来の重金属固定化剤では安定に処理できなかった高温の焼却(飛)灰(温度100〜300℃)についても、耐熱性に優れる本発明の重金属固定化剤は安定に処理できる性能を有することから、好適に用いられる。
また水を含有する上記スラリー、水溶液または懸濁液の場合は、下限は本発明の重金属固定化剤を有効に作用させるとの観点から好ましくは5℃、さらに好ましくは15℃、上限は大がかりな処理装置を要しないとの観点から好ましくは100℃、さらに好ましくは80℃である。
【0027】
本発明の重金属固定化剤の被処理物への添加方法としては、特に限定されることはなく、前記固体もしくは水溶液の形態のまま被処理物に添加する方法、予め該固体を水に溶解または該水溶液を希釈(例えば約10倍)して重金属固定化剤含量0.1〜70重量%の水溶液とした後に被処理物に添加してもよい。また該重金属固定化剤と水を別々に順序不同で添加してもよい。
【0028】
本発明の、重金属含有物(D)の処理方法において、(D)が固体粉末またはスラリーである場合は、重金属固定化剤および必要により水を、固体粉末またはスラリーの表面に散布するだけでもよいが、重金属の固定化効果の観点から固体粉末またはスラリーに添加して混練することがより好ましい。さらに、固体粉末が焼却(飛)灰の場合には、上記添加方法に加え、煙道排ガス中に重金属固定化剤の水溶液を噴霧して添加してもよい。
また、(D)が水溶液または懸濁液などの排水である場合は、重金属固定化剤および必要により水を排水に添加するだけでもよいが、該排水に添加した後に撹拌して重金属を不溶化せしめることがより好ましい。
【0029】
本発明の、重金属含有物(D)の処理方法においては、必要により通常用いられる凝集剤やpH調整剤を併用してもかまわない。
該凝集剤には、無機系〔例えば硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄および塩化第2鉄〕および有機系〔例えばポリ(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリルアミド系ポリマー[例えばポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルアミド部分加水分解物、ポリ(メタ)アクリルアミドメチロール化カチオン化物、(メタ)アクリルアミド/(メタ)アクリル酸(塩)共重合物、(メタ)アクリルアミド/ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合物の4級化物および(メタ)アクリルアミド/ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物の共重合物]、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートポリマーの4級化物、ポリエチレンイミンおよび天然物系[例えばグアーガム、アルギン酸塩およびキトサン]〕が含まれる。
凝集剤を併用する場合の使用量は、重金属含有物(D)の重量(固体、粉体、ペーストの場合はそれらの全重量、また、液体、スラリーの場合は固形分の全重量)に基づいて、通常5重量%以下、十分な凝集効果を発揮させるとの観点から好ましくは0.0001〜3重量%である。
【0030】
pH調整剤としては、特に限定はなく、酸性物質としては例えば鉱酸(例えば硫酸、塩酸およびリン酸)、無機固体酸性物質(例えば酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモン、硫安、重硫安およびスルファミン酸)および有機酸(炭素数2〜24、例えばシュウ酸およびこはく酸);アルカリ性物質としては無機アルカリ性物質(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、消石灰、生石灰およびアンモニア)および有機アルカリ性物質(例えばグアニジン)が挙げられる。
pH調整剤を併用する場合の使用量は、(D)の性状により任意に調整可能であり特に限定は無いが、(D)の重量(固体、粉体、ペーストの場合はそれらの全重量、また、液体、スラリーの場合は固形分の全重量)に基づいて、通常30重量%以下、処理後の重量を低減させるとの観点から好ましくは0.1〜10重量%である。
【0031】
上記固体粉末またはスラリーに添加して混練する際の混練装置としては、特に限定はなく通常のもの、例えばニーダーおよびホバートミキサーが挙げられる。
また上記排水に添加して撹拌する際の撹拌装置としては、特に限定は無く、撹拌ができるものであれば全ての撹拌装置を用いることができる。
【0032】
(D)に含まれる重金属としては、例えば鉛、カドミウム、銅、亜鉛、水銀、クロム、ニッケル、ヒ素およびセレンが挙げられるが、本発明の重金属固定化剤はこれらのうち、特に鉛、カドミウム、銅、亜鉛、水銀およびニッケルに対して重金属固定化効果が高い。
【0033】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0034】
<合成例1> ピペラジンモノ−およびビスジチオカルバミン酸カリウム水溶液の合成
冷却・撹拌が可能で、窒素置換が可能な反応容器にイオン交換水269部、ピペラジン100部を仕込み完全に溶解した後、48.5%の水酸化カリウム水溶液269部を仕込み、200rpmで撹拌した。反応容器中の固形物がスラリー状になったことを確認した後、窒素雰囲気下、35℃にて二硫化炭素177部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度にて3時間熟成を行うことによって、ピペラジン−モノ−およびビスジチオカルバミン酸カリウム混合物の45%水溶液(A1)を得た。(A1)中の該混合物重量に基づくモノ体の割合は6%、また(A1)に含まれるピペラジンの該混合物重量に基づく割合は0.07%であった。
【0035】
<合成例2> ピペラジンモノ−およびビスジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液の合成
48.5%の水酸化カリウム水溶液を48%水酸化ナトリウム水溶液194部に代え、イオン交換水1,277部および二硫化炭素177部を用いた以外は合成例1と同様にして、ピペラジンモノ−およびビスジチオカルバミン酸ナトリウム混合物の21%水溶液(A2)を得た。(A2)中の該混合物重量に基づくモノ体の割合は9%、また(A2)に含まれるピペラジンの該混合物重量に基づく割合は0.1%であった。
【0036】
<合成例3> トリエチレンテトラミンモノ−およびポリジチオカルバミン酸カリウム水溶液の合成
ピペラジンをトリエチレンテトラミン85部に代え、イオン交換水512部を用いた以外は合成例1と同様にして、トリエチレンテトラミンモノ−およびポリジチオカルバミン酸カリウム混合物の30%水溶液(A3)を得た。(A3)中の該混合物重量に基づくモノ体の割合は5%、また(A3)に含まれるトリエチレンテトラミンの該混合物重量に基づく割合は0.2%であった。
【0037】
<合成例4> ジエチルアミンジチオカルバミン酸カリウム水溶液の合成
ピペラジンをジエチルアミン100部に代え、イオン交換水121部、48.5%の水酸化カリウム水溶液159部および二硫化炭素104部を用いた以外は合成例1と同様にして、ジエチルアミンジチオカルバミン酸カリウムの53%水溶液(A4)を得た(ジエチルアミンの40℃における蒸気圧は430mmHg)。ジエチルアミンジチオカルバミン酸カリウムの重量に基づくジエチルアミンの割合は0.2%であった。
【0038】
<合成例5> ペンタエチレンヘキサミン(ポリ)ジチオカルバミン酸カリウム水溶液の合成
ピペラジンをペンタエチレンヘキサミン90部に代え、イオン交換水512部を用いた以外は合成例1と同様にして、ペンタエチレンヘキサミン(ポリ)ジチオカルバミン酸カリウムの30%水溶液(A5)を得た(ペンタエチレンヘキサミンの40℃における蒸気圧は0.01mmHg未満)。
【0039】
<実施例1〜3、比較例1、2>
都市ゴミ焼却により生じた焼却飛灰50部を200mlのガラス製容器(直径5cm×高さ10.2cm円筒形)に秤り取り、蓋をして密閉にした後、200℃に温調した循風乾燥機内で1時間加熱した。乾燥機から取り出した後、瞬時に本発明の重金属固定化剤(合成例1〜3)または比較の重金属固定化剤(合成例4、5)の水溶液を重金属固定化剤の固形分として0.8部、水8部をそれぞれ添加し、スパーテルで素早く(約30秒間)十分に混練した。再度蓋をし、上記乾燥機内で30分間温調した後、取り出した直後の容器内の気相部のアミン、二硫化炭素および硫化水素濃度をガス検知管[アミンはガステック(株)製No.180L、二硫化炭素はガステック(株)製No.13、および硫化水素はガステック(株)製No.4LT]を用いて測定した。結果を表1に示す。この結果から、本発明の重金属固定化剤(実施例1〜3)は、比較の重金属固定化剤(比較例1、2)と比べて有害ガスの発生量が著しく少ないことがわかる。
【0040】
<実施例4〜6、比較例3、4>
上記実施例1〜3および比較例1、2で試験した後の処理飛灰と未処理飛灰(重金属固定化剤を添加していないもの)について溶出試験(環境庁告示13号)を行い溶出した鉛イオン濃度を原子吸光を用いて測定した。結果を表2に示す。
この結果から、本発明の重金属固定化剤(実施例4〜6)は、比較の重金属固定化剤(比較例3、4)と比べて重金属固定化能に優れることがわかる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
本発明の重金属固定化剤は下記の効果を奏することから極めて有用である。
(1)硫黄臭および/またはアミン臭が極めて少なく、作業性および安全性に優れる。
(2)高濃度の水溶液として用いることができるため作業性に優れる。
(3)耐熱性に優れるため高温の焼却(飛)灰中の重金属の固定化にとくに効果的である。
Claims (9)
- モノ−およびポリ−ジチオカルバミン酸(塩)の混合物(A)と40℃で0.1〜50mmHgの蒸気圧を有するアミン(B)からなる重金属固定化剤。
- (A)がピペラジンモノ−およびピペラジンビス−ジチオカルバミン酸(塩)の混合物である請求項1記載の重金属固定化剤。
- (B)がピペラジンである請求項1または2記載の重金属固定化剤。
- (A)と(B)の合計重量に基づく(B)の割合が0.001〜5%である請求項1〜3のいずれか記載の重金属固定化剤。
- さらに、その他の重金属固定化剤(C)を含有させてなる請求項1〜4のいずれか記載の重金属固定化剤。
- (A)と(B)の合計含有率が30〜100重量%である請求項1〜5のいずれか記載の重金属固定化剤。
- 重金属を含有する、固体粉末、スラリー、水溶液または懸濁液に請求項1〜6のいずれか記載の重金属固定化剤および必要により水を含有させて撹拌または混練する重金属含有物(D)の処理方法。
- (D)が焼却(飛)灰である請求項7記載の処理方法。
- 焼却(飛)灰の温度が100〜300℃である請求項8記載の処理方法。
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