JP2005046877A - 炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤおよびそれを用いた溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課 題】 炭酸ガスを主成分とするシールドガスを用いる炭酸ガスシールドアーク溶接において、溶滴のスプレー移行を可能とし、高入熱溶接を行なってもスパッタ発生の低減のみならず、優れたビード形状を有する溶接ワイヤ、およびそれを用いた溶接方法を提供する。
【解決手段】 C:0.20質量%以下,Si:0.05〜2.5 質量%,Mn:0.25〜3.5 質量%,希土類元素: 0.010〜0.100 質量%,Al:0.02〜3.00質量%,O:0.0200質量%以下,Ca:0.0050質量%以下,P:0.05質量%以下,S:0.05質量%以下を含有するとともに、E=[REM ]+([Ti]+[Zr]+[Al])/5−9×([O]+[Ca])で算出されるE値が0.00以上である鋼素線からなる炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤを用いて、正極性で溶接を行なう。
【選択図】 無
Description
E=[REM ]+([Ti]+[Zr]+[Al])/5−9×([O]+[Ca]) ・・(1)
[REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
[O] :鋼素線のO含有量(質量%)
[Ti] :鋼素線のTi含有量(質量%)
[Zr] :鋼素線のZr含有量(質量%)
[Al] :鋼素線のAl含有量(質量%)
[Ca] :鋼素線のCa含有量(質量%)
すなわち本発明は、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接に使用する溶接用鋼ワイヤであって、C:0.20質量%以下,Si:0.05〜2.5 質量%,Mn:0.25〜3.5 質量%,REM: 0.010〜0.100 質量%,Al:0.02〜3.00質量%,O:0.0200質量%以下,Ca:0.0050質量%以下,P:0.05質量%以下,S:0.05質量%以下を含有するとともに、上記の (1)式で算出されるE値が0.00以上である鋼素線からなる炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤである。
Cは、溶接金属の強度を確保するのに必要な元素であり、溶融メタルの粘性を低下させて流動性を向上させる効果がある。しかしC含有量が0.20質量%を超えると、正極性の溶接において溶滴および溶融メタルの挙動が不安定となるのみならず、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Cは0.20質量%以下とした。一方、C含有量を過剰に減少させると溶接金属の強度を確保できない。そのため、 0.003〜0.20質量%とするのが好ましい。なお、0.01〜0.10質量%が一層好ましい。
Siは、脱酸作用を有し、溶融メタルの脱酸のためには不可欠な元素である。Si含有量が0.05質量%未満では、溶融メタルの脱酸が不足し、溶接金属にブロー欠陥が発生する。一方、 2.5質量%を超えると、溶接金属の靱性が著しく低下する。したがって、Siは0.05〜2.5 質量%の範囲内を満足する必要がある。さらに正極性(すなわち溶接用鋼ワイヤをマイナス極)の炭酸ガスシールドアーク溶接におけるアークの広がりを抑え、溶滴の移行回数を増大させるためには、0.25質量%以上が望ましい。そのため、0.25〜2.5 質量%とするのが好ましい。
Mnは、Siと同様に脱酸作用を有し、溶融メタルの脱酸のためには不可欠な元素である。Mn含有量が0.25質量%未満では、溶融メタルの脱酸が不足し、溶接金属にブローホールが発生する。一方、 3.5質量%を超えると、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Mnは0.25〜3.5 質量%の範囲内を満足する必要がある。なお、溶融メタルの脱酸を促進し、ブローホールを防止するためには、0.45質量%以上が望ましい。そのため、0.45〜3.5 質量%とするのが好ましい。
REM は、製鋼および鋳造時の介在物の微細化,溶接金属の靱性改善のために有効な元素である。ただし、通常の逆極性(すなわち溶接用鋼ワイヤをプラス極)の炭酸ガスシールドアーク溶接においては、鋼素線中にREM を添加するとアークの集中が生じて、スパッタを低減する効果が得られない。しかし正極性(すなわち溶接用鋼ワイヤをマイナス極)の炭酸ガスシールドアーク溶接においては、溶滴移行を安定化するために不可欠な元素である。後述するAlとの複合添加によって、溶滴移行を一層安定させることができる。REM 含有量が 0.010質量%未満では、この溶滴移行の安定化効果が得られない。一方、 0.100質量%を超えると、溶接用鋼ワイヤの製造工程で割れが生じたり、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、REM は 0.010〜0.100 質量%の範囲内を満足する必要がある。なお、好ましくは 0.025〜0.050 質量%である。
Alは、強脱酸剤として作用するとともに、溶接金属の強度を増加する元素である。さらに溶融メタルの脱酸によって粘性を低下してビード形状を安定化(すなわちハンピングビードを抑制)する効果がある。逆極性の炭酸ガスシールドアーク溶接では、明確な溶滴移行の安定化効果は認められないが、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接では、 350A以上の高電流溶接において溶滴移行の安定化効果が顕著に発揮される。一方、低電流溶接においては、短絡移行回数を増加させて溶滴移行の均一化とビード形状の改善を達成できる。また、Oとの親和力によって、溶接用鋼ワイヤの製造段階における REMの酸化ロスを低減する効果も有する。Alが0.02質量%未満では、このような効果は得られない。一方、 Alが3.00質量%を超える場合は、溶接金属の結晶粒が粗大化し、靭性が著しく低下する。したがって、Alは0.02〜3.00質量%の範囲内を満足するの必要がある。
Pは、鋼の融点を低下させるとともに、電気抵抗率を向上させ、溶融効率を向上させる元素である。さらに正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において、溶滴を微細化し、アークを安定化する作用も有する。しかしP含有量が0.05質量%を超えると、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において溶融メタルの粘性が著しく低下し、アークが不安定となり、小粒のスパッタが増加する。また、溶接金属の高温割れを生じる危険性が増大する。したがって、Pは0.05質量%以下とした。なお、好ましくは0.03質量%以下である。一方、 鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階でPを低減するためには長時間を要するので、生産性向上の観点から 0.002質量%以上が望ましい。そのため、 0.002〜0.03質量%とするのが好ましい。
Sは、溶融メタルの粘性を低下させ、溶接用鋼ワイヤの先端に懸垂した溶滴の離脱を促進し、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においてアークを安定化する。またSは、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においてアークを広げ、溶融メタルの粘性を低下させてビードを平滑にする効果も有する。しかしS含有量が0.05質量%を超えると、小粒のスパッタが増加するとともに、溶接金属の靭性が低下する。したがって、Sは0.05質量%以下とした。なお、好ましくは0.02質量%以下である。一方、 鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階でSを低減するためには長時間を要するので、生産性向上の観点から 0.002質量%以上が望ましい。そのため、 0.002〜0.02質量%とするのが好ましい。
Oは、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接において溶接用鋼ワイヤの先端に懸垂した溶滴に発生するアーク点を不安定にし、溶滴を微細化する作用がある。しかし、O含有量が 0.0200質量%を超えると、正極性の高電流溶接におけるアークの安定化というREM 添加の効果が損なわれ、溶滴の揺動が増大してスパッタが多量に発生する。またOは、鋼素線の鋼材を溶製する製鋼段階で REMと激しく反応してスラグを形成する作用を有しており、O含有量が0.0200質量%を超えると、REM の歩留りが著しく低下する。したがって、Oは0.0200質量%以下とした。ただし、O含有量が0.0010質量%未満では、O添加の効果は充分に得られない。したがって、 0.0010〜0.0200質量%が好ましく、さらに0.0010〜0.0050質量%が一層好ましい。
Caは、製鋼および鋳造時に不純物として溶鋼に混入したり、あるいは伸線加工時に不純物として鋼素線に混入する。正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接では、Ca含有量が0.0050質量%を超えると、高電流溶接におけるアークの安定化というREM 添加の効果が損なわれる。したがって、Caは0.0050質量%以下とする必要がある。
E=[REM ]+([Ti]+[Zr]+[Al])/5−9×([O]+[Ca]) ・・(1)
[REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
[O] :鋼素線のO含有量(質量%)
[Ti] :鋼素線のTi含有量(質量%)
[Zr] :鋼素線のZr含有量(質量%)
[Al] :鋼素線のAl含有量(質量%)
[Ca] :鋼素線のCa含有量(質量%)
E≧0.00 ・・(2)
なお、鋼素線にZrを添加しない場合は、(1)式の[Zr]=0としてE値を算出する。
Kは、正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においてアークを広げ、低電流でも溶滴のスプレー移行を可能とする元素であり、溶滴を微細化する効果を有する。そこで、必要に応じて鋼素線に添加する。K含有量が0.0001質量%未満では、この効果は得られない。一方、 0.015質量%を超えると、アーク長が長くなり、溶接用鋼ワイヤの先端に懸垂した溶滴が不安定となり、スパッタの発生量が増加する。したがって、Kは0.0001〜0.015 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。なお、好ましくは0.0003〜0.003 質量%である。
Cr,Ni,Mo,Cu,B,Mgは、いずれも溶接金属の強度を増加し、耐候性を向上させる元素である。これらの元素の含有量が微少である場合は、このような効果は得られない。一方、過剰に添加すると、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Cr,Ni,Mo,Cu,B,Mgを含有する場合は、Cr:0.02〜3.0 質量%,Ni:0.05〜3.0 質量%,Mo:0.05〜1.5 質量%,Cu:0.05〜3.0 質量%,B:0.0005〜0.015 質量%,Mg: 0.001〜0.2 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
Nb,Vは、いずれも溶接金属の強度,靭性を向上し、アークの安定性を向上させる元素である。これらの元素の含有量が微少である場合は、このような効果は得られない。一方、過剰に添加すると、溶接金属の靭性の低下を招く。したがって、Nb,Vを含有する場合は、Nb: 0.005〜0.5 質量%,V: 0.005〜0.5 質量%の範囲内を満足するのが好ましい。
Claims (4)
- 正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接に使用する溶接用鋼ワイヤであって、C:0.20質量%以下、Si:0.05〜2.5 質量%、Mn:0.25〜3.5 質量%、希土類元素: 0.010〜0.100 質量%、Al:0.02〜3.00質量%、O:0.0200質量%以下、Ca:0.0050質量%以下、P:0.05質量%以下、S:0.05質量%以下を含有するとともに、下記の (1)式で算出されるE値が0.00以上である鋼素線からなることを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。
E=[REM ]+([Ti]+[Zr]+[Al])/5−9×([O]+[Ca]) ・・(1)
[REM ]:鋼素線の希土類元素含有量(質量%)
[O] :鋼素線のO含有量(質量%)
[Ti] :鋼素線のTi含有量(質量%)
[Zr] :鋼素線のZr含有量(質量%)
[Al] :鋼素線のAl含有量(質量%)
[Ca] :鋼素線のCa含有量(質量%) - 前記鋼素線が、前記組成に加えて、Ti:0.02〜0.50質量%およびZr:0.02〜0.50質量%のうちの1種または2種を含有するとともに、前記(1)式で算出されるE値が0.05以上である鋼素線からなることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。
- 請求項1または2に記載の炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤを用いて、ArとCO2 との混合ガスにおけるCO2 混合比率が60体積%以上のシールドガスでアーク点をシールドし、正極性で溶接を行なうことを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接方法。
- 前記シールドガスのCO2 濃度が 100体積%であることを特徴とする請求項3に記載の炭酸ガスシールドアーク溶接方法。
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