JP2005043098A - 物理量検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、物理量検出装置に関し、物理量検出時においても搭載された振動子の特性に合わせて検出振動の共振周波数を調整することにより、検出感度を良好に維持することを目的とする。
【解決手段】振動子14を駆動方向に振動駆動させた状態での検出方向の変位を検出することにより車両重心軸回りの角速度Ωを検出する。また、角速度Ωの検出時に振動子14を検出方向に、所望の検出方向の共振周波数にて振動させる。更に、振動子14の検出方向の変位を示す検出変位信号を所望の検出方向の共振周波数を用いて同期検波する。そして、その同期検波の結果が“0”でない場合には、“0”となるように離調調整電極部36へのバイアス電圧を変更する。これにより、振動子14の検出方向のバネ定数を電気的に変更し、検出方向の共振周波数を調整する。
【選択図】 図2
【解決手段】振動子14を駆動方向に振動駆動させた状態での検出方向の変位を検出することにより車両重心軸回りの角速度Ωを検出する。また、角速度Ωの検出時に振動子14を検出方向に、所望の検出方向の共振周波数にて振動させる。更に、振動子14の検出方向の変位を示す検出変位信号を所望の検出方向の共振周波数を用いて同期検波する。そして、その同期検波の結果が“0”でない場合には、“0”となるように離調調整電極部36へのバイアス電圧を変更する。これにより、振動子14の検出方向のバネ定数を電気的に変更し、検出方向の共振周波数を調整する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、物理量検出装置に係り、特に、振動子を振動させながらその振動とは異なる方向への変位を検出することにより振動子に作用する所定の物理量を検出する物理量検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基板に変位可能に支持された振動子に作用する角速度等の物理量を検出する物理量検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、振動子を所定の方向(以下、駆動方向と称す)に振動させつつ、かかる状態で生ずるコリオリ力に伴う振動子のその駆動方向とは直交する方向(以下、検出方向と称す)への変位を検出する。従って、かかる装置によれば、角速度等の物理量を検出することができる。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−183139公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、振動子の駆動方向への駆動振動によって検出方向の振動成分を効率よく検出するためには、すなわち、振動子を駆動振動の周波数に対して駆動方向に効率的に振動させ、かつ、コリオリ力によって生じた検出方向の振動を最も効率的に検出するためには、振動子の駆動方向への共振周波数と検出方向への共振周波数とを極力近づけることが望ましい。しかし、振動子にはコリオリ力が作用しなくても駆動振動の一部が検出方向への微小な漏れ成分として伝達されることがあるため、上記した両共振周波数を全く同一に設定すると、その漏れ成分をコリオリ力による変位として誤検出し易くなってしまう。従って、かかる不都合を回避するうえでは、振動子の駆動方向への共振周波数と検出方向への共振周波数とを適度に離すことが適切である。
【0005】
一方、これらの駆動方向への共振周波数と検出方向への共振周波数との差が所望の状態に維持されていないと、検出感度にバラツキが生ずる。振動子が設けられる密閉空間内の圧力は、その振動子の応答特性に大きな影響を与える。そこで、上記従来の装置においては、振動子が設けられた密閉空間内の圧力に応じて、振動子の検出振動の共振周波数を調整し、検出感度に対する密閉空間内の圧力の影響を低減することとしている。
【0006】
しかしながら、振動子の検出振動の共振周波数は、その密閉空間内の圧力以外にも、振動子を含むセンサ素子の特性によって大きく影響される。すなわち、振動子が異なればその共振周波数も異なっている可能性がある。かかる状況において、各センサ素子の特性に対応することなく一律に検出振動の共振周波数の調整を行うものとすると、検出感度のバラツキを抑えることができない。また、物理量検出装置の出荷前の製造段階においてのみ、各センサ素子の特性を検出し、その特性に従って検出振動の共振周波数の調整を行うものとすると、かかる調整に膨大な時間を要することとなり、製造コストの上昇を招くと共に、製品出荷後において共振周波数の変動に対処することができないものとなる。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、物理量検出時においても搭載された振動子の特性に合わせて検出振動の共振周波数を調整することにより、検出感度を良好に維持することが可能な物理量検出装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、振動子を第1の方向に所定の駆動周波数にて振動させる第1の駆動手段と、前記振動子が前記第1の方向に駆動振動されているときに該振動子に該第1の方向とは異なる第2の方向に生ずる変位を検出する変位検出手段と、を備え、前記振動子の前記第2の方向における変位に基づいて所定の物理量を検出する物理量検出装置であって、
前記振動子の前記第1の方向への駆動振動の共振周波数に対して設定されるべき所望の、該振動子の前記第2の方向への検出振動の共振周波数を算出する算出手段と、
前記振動子を前記第2の方向に、前記算出手段により算出された前記所望の検出振動の共振周波数にて振動させる第2の駆動手段と、
前記振動子の前記第2の方向における変位に応じた信号を、前記算出手段により算出された前記所望の検出振動の共振周波数にて同期検波する同期検波手段と、
前記同期検波回路の検波結果に基づいて、前記所定の駆動周波数における前記振動子の前記第2の方向への検出振動のゲインを補正するゲイン補正手段と、を備える物理量検出装置により達成される。
【0009】
本発明において、振動子の第1の方向(駆動方向)への駆動振動の共振周波数に対して設定されるべき所望の第2の方向(検出方向)への検出振動の共振周波数が算出される。そして、振動子は、検出方向に、上記した所望の検出振動の共振周波数にて振動される。振動子の共振周波数においては、駆動信号とその結果生ずる振動子の変位との間に90degの位相ずれが生ずる。このため、所望の検出振動の共振周波数およびその駆動信号位相にて振動子の検出変位を示す信号を同期検波すると、振動子の検出振動の共振周波数が所望の共振周波数に一致している場合には同期検波の結果は“0”となる一方、振動子の検出振動の共振周波数が所望の共振周波数に一致していない場合には同期検波の結果は“0”からずれたものとなる。
【0010】
従って、振動子を検出方向に所望の共振周波数にて振動させた状態で、振動子の検出変位を示す信号が所望の検出振動の共振周波数にて同期検波された結果が“0”になるか否かを検出し、その結果に基づいて振動子が駆動方向に駆動振動される際の所定の駆動周波数における検出方向への検出振動のゲインを補正することとすれば、振動子の特性にかかわらずその所定の駆動周波数における検出振動のゲインを一定に保つことができ、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【0011】
この場合、請求項2に記載する如く、請求項1記載の物理量検出装置において、前記ゲイン補正手段は、前記振動子の前記第2の方向への検出振動の共振周波数を調整する離調調整手段であることとすれば、同期検波結果として現れる振動子の特性に合わせて検出方向への検出振動の共振周波数を調整するので、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【0012】
また、請求項3に記載する如く、請求項2記載の物理量検出装置において、前記離調調整手段は、印加電圧に応じて前記振動子の前記第2の方向への検出振動のバネ定数を電気的に変更する離調調整電極と、前記同期検波回路の検波結果に応じて前記離調調整電極への印加電圧を調整する印加電圧調整手段と、を有することとすれば、離調調整電極への印加電圧の調整による振動子の検出方向への振動のバネ定数の電気的な変更によりその検出振動の共振周波数を調整することができる。
【0013】
尚、請求項4に記載する如く、請求項1記載の物理量検出装置において、前記算出手段は、前記振動子の前記第1の方向への駆動振動の共振周波数を分周させる分周手段を有し、前記振動子の前記駆動振動の共振周波数と前記分周手段により分周された周波数との和又は差を前記所望の検出振動の共振周波数として算出することとすれば、振動子の特性にかかわらず振動子の駆動振動の共振周波数と検出振動の共振周波数とを常に一定の関係に保つことができ、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例である物理量検出装置10の備えるセンサ素子12の平面図を示す。本実施例の物理量検出装置10は、例えば車両に搭載されており、車両の重心軸回りに生ずる角速度Ωをセンサ素子12を用いて検出する角速度検出装置である。センサ素子12は、車両の重心軸を鉛直軸(Z軸)とするX−Y平面内に配置されている。
【0015】
センサ素子12は、シリコン結晶の表面に微細加工によるエッチングを施すことにより形成される。センサ素子12は、所定の質量mを有する振動子14を備えている。振動子14は、絶縁層を形成するシリコン基板16の表面に離れて配置されており、シリコン基板16に固定されたアンカ18により梁20,22を介してシリコン基板16に支持されている。梁20は、アンカ18に対する振動子14の図中X軸方向への変位を許容する梁である。また、梁22は、アンカ18に対する振動子14の図中Y軸方向への変位を許容する梁である。従って、振動子14は、シリコン基板16に対してX軸方向及びY軸方向の双方に振動可能に構成される。
【0016】
センサ素子12は、それぞれ略櫛歯状に形成された、駆動電極部30、駆動モニタ電極部32、検出電極部34、離調調整電極部36、及び、検出方向駆動電極部38を備えている。駆動電極部30、駆動モニタ電極部32、検出電極部34、離調調整電極部36、及び、検出方向駆動電極部38はそれぞれ、振動子14と一体に設けられた可動電極とシリコン基板16上に固定された固定電極とにより構成されている。この可動電極と固定電極とは、常態で所定の隙間を空けて対向するように配置されている。固定電極には、配線を介して後述の制御回路が接続されている。
【0017】
駆動電極部30は、固定電極への励磁電圧の印加によって固定電極と可動電極との間の静電引力を作用させることにより振動子14を基板16に対してX軸方向に駆動させるための電極である。駆動モニタ電極部32は、振動子14のX軸方向の変位に伴う固定電極と可動電極との間の静電容量の変化を検出することにより振動子14の基板16に対するX軸方向への駆動をモニタするための電極である。検出電極部34は、振動子14のY軸方向の変位に伴う固定電極と可動電極との間の静電容量の変化を検出することにより振動子14の基板16に対するY軸方向の振動を検出するための電極である。以下、適宜、X軸方向を振動子14の駆動方向と、Y軸方向を振動子14の検出方向と、それぞれ称す。
【0018】
また、離調調整電極部36は、固定電極への直流バイアス電圧の印加によって固定電極と可動電極との間の静電引力を作用させることにより振動子14の検出方向への検出振動の共振周波数を変更し、検出振動のゲイン(実効検出振動Q値)を変更するための電極である。尚、離調調整とは、振動子14の検出振動の共振周波数と駆動方向の共振周波数との差を調整することをいう。検出方向駆動電極部38は、固定電極への励磁電圧の印加によって固定電極と可動電極との間の静電引力を作用させることにより振動子14を基板16に対してY軸方向(検出方向)に駆動させるための電極である。
【0019】
次に、本実施例の物理量検出装置10の動作について説明する。本実施例において、車両のイグニションがオン状態になると、駆動電極部30の固定電極に所定周波数f(=ω/(2π))の正弦波状の電圧A・cos(ωt)が駆動信号として印加される。尚、所定周波数fは、振動子14のX軸方向(駆動方向)への共振周波数であり、例えば10kHzである。駆動電極部30の固定電極に駆動信号が印加されると、その固定電極と可動電極との間にその周波数fに応じた周期で振動子14をX軸方向(駆動方向)に振動駆動させる力が発生する。
【0020】
そして、振動子14が励振されている状態で、車両の重心軸(Z軸)回りに角速度Ωzが加わると、その振動子14に、X軸方向の振動速度Vx、質量m、及び角速度Ωzに応じたY軸方向(検出方向)へのコリオリ力Fc=2m・Vx・Ωzが作用する。かかるコリオリ力が作用すると、振動子14はY軸方向へ変位し、角速度Ωzの大きさに比例した振幅でかつX軸方向への駆動振動の周波数fに応じた周期で振動する。この場合、梁22はアンカ18を支点としてそのコリオリ力の大きさに応じた分だけ弾性変形するので、検出電極部34の可動電極と固定電極との隙間がコリオリ力の大きさの分だけ変化する。尚、この隙間の初期値は、所定のコリオリ力が作用しても両電極が接触しないように設定されている。
【0021】
検出電極部34の可動電極と固定電極との隙間が変化すると、両電極間の静電容量がその隙間に応じて変化する。従って、車両に生ずるZ軸回りの角速度Ωは、検出電極部34の可動電極と固定電極との間の静電容量の変化に基づいて検出することができる。このように、センサ素子12によれば、そのX−Y平面に直交する車両に生ずる重心軸回りの角速度Ωに応じた信号を出力することができ、振動子14による検出電極34の可動電極と固定電極との静電容量の変化に基づいて角速度Ωを検出する物理量検出装置10を実現することができる。
【0022】
図2は、本実施例の物理量検出装置10の要部構成図を示す。本実施例の物理量検出装置10は、各電極部へ印加すべき電圧の駆動信号を制御すると共に、各電極部の静電容量を検出する制御回路40を備えている。制御回路40は、センサ素子12の駆動電極部30に印加すべき駆動信号A・cos(ωt)(但し、Aは定数)を生成する励振駆動回路42と、振動子14の変位を検出する変位検出回路44と、を有している。変位検出回路44は、駆動モニタ電極部32を用いて振動子14の駆動方向への変位を検出すると共に、検出電極部34を用いて振動子14の検出方向への変位を検出する。
【0023】
駆動電極部30に駆動信号A・cos(ωt)が印加された場合は、振動子14を駆動方向へ振動させる力の発生に伴う振動子14の駆動方向への変位を表す信号(駆動変位信号)はB・sin(ωt)(但し、Bは定数)となる。従って、変位検出回路44は、振動子14の駆動方向への変位を表す駆動変位信号としてB・sin(ωt)の信号を出力する。変位検出回路44には、位相シフト回路46が接続されている。位相シフト回路46は、変位検出回路44から出力された駆動変位信号B・sin(ωt)を位相シフトさせて上記した励振駆動回路42に供給する。励振駆動回路42は、位相シフト回路46から供給される信号cos(ωt)を基に駆動電極部30に印加すべき駆動信号A・cos(ωt)を生成する。
【0024】
位相シフト回路46には、また、分周回路48が接続されている。分周回路48は、位相シフト回路46により位相シフトされた結果得られた余弦波信号cos(ωt)を整数Nで分周させる回路である。位相シフト回路46の出力信号cos(ωt)及び分周回路48の出力信号cos(ωt/N)は、乗算器50に供給される。乗算器50は、位相シフト回路46の出力信号cos(ωt)と分周回路48の出力信号cos(ωt/N)とを乗算する。
【0025】
乗算回路50の出力には、検出駆動回路52が接続されている。検出駆動回路52は、乗算回路50から供給される信号cos(ωt)・cos(ωt/N)を基に、センサ素子12の検出方向駆動電極部38に印加すべき駆動信号を生成する。この生成された駆動信号は、C・cos(ωt)・cos(ωt/N)(但し、Cは定数)である。尚、上記の分周により得られた周波数f/Nは、所望の離調周波数であり、例えばf=10kHz及びN=16が満たされる場合は625Hz(6.25%の離調)となる。
【0026】
C・cos(ωt)・cos(ωt/N)=C/2{cos(ω+ω/N)t+cos(ω−ω/N)t}・・・(1)
検出方向駆動電極部38に上記(1)式に示す駆動信号が印加されると、その固定電極と可動電極との間に振動子14をY軸方向(検出方向)に振動駆動させる力が発生する。この駆動力が振動子に付与されると、以後、振動子14は、この駆動力と共に角速度Ωzの発生によるコリオリ力とが重畳した形で検出方向へ変位・振動する。この場合、振動子14の検出方向への変位を表す信号(検出変位信号)は次式(2)の如くとなる。従って、変位検出回路44は、振動子14の検出方向への変位を表す検出変位信号として次式(2)に示す信号を出力する。但し、この式において、D1〜D4及びY1,Y2は定数である。
【0027】
D1・cos(ω+ω/N)t+D2・sin(ω+ω/N)t+D3・cos(ω−ω/N)t+D4・sin(ω−ω/N)t+Y1・cos(ωt)+Y2・sin(ωt)=D1・{cos(ωt)・cos(ω/N)t−sin(ωt)・sin(ω/N)t}+D2・{sin(ωt)・cos(ω/N)t+cos(ωt)・sin(ω/N)t}+D3・{cos(ωt)・cos(ω/N)t+sin(ωt)・sin(ω/N)t}+D4・{sin(ωt)・cos(ω/N)t−cos(ωt)・sin(ω/N)t}+Y1・cos(ωt)+Y2・sin(ωt) ・・・(2)
変位検出回路44には、また、同期検波回路54が接続されている。同期検波回路54は、また、上記した位相シフト回路46に接続されている。同期検波回路54は、変位検出回路44から供給される上記(2)式に示す検出変位信号を、位相シフト回路46から供給されるcos(ωt)で同期検波する。振動子14の検出方向への変位を表す検出変位信号について同期検波回路54によるcos(ωt)での同期検波が行われると、その信号のうちcos(ωt)の振幅成分のみが抽出され、次式(3)に示す信号が出力される。
【0028】
D1・cos(ω/N)t+D2・sin(ω/N)t+D3・cos(ω/N)t−D4・sin(ω/N)t+Y1 ・・・(3)
同期検波回路54には、平滑回路56が接続されている。平滑回路56は、同期検波回路54から供給される上記(3)式に示す信号を平滑化する。この平滑化された信号は、コリオリ力による振動子14の検出方向への振動成分の振幅を表すY1となる。この振幅は角速度Ωが大きいほど大きくなる。平滑回路56は、車両の重心軸回りに生ずる角速度Ωを示すセンサ素子12の出力としてY1を出力する。従って、物理量検出装置10によれば、車両の重心軸回りの角速度Ωを検出することが可能となっている。
【0029】
また、同期検波回路54には、同期検波回路60が接続されている。同期検波回路60は、また、上記した分周回路48に接続されている。同期検波回路60は、同期検波回路54から出力される上記(3)式に示す信号を、分周回路48から供給されるcos(ω/N)tで同期検波する。かかる同期検波が行われると、(3)式に示す信号のうちcos(ω/N)tの振幅成分のみが抽出され、(D1+D3)に示す信号が出力される。
【0030】
同期検波回路60には、サーボ回路62が接続されている。サーボ回路62は、同期検波回路60から出力される(D1+D3)に示す信号に基づいて、振動子14の検出方向への共振周波数を適当に変更・設定すべく、離調調整電極部36への印加電圧(バイアス電圧)をフィードバック制御する。サーボ回路62には、離調バイアス回路64が接続されている。離調バイアス回路64は、サーボ回路62からの指令に従ったバイアス電圧を離調調整電極部36へ印加する回路である。
【0031】
離調調整電極部36にバイアス電圧が印加されると、その固定電極と可動電極との間に静電引力が作用し、その間に電気的なバネが付加される。そして、このバイアス電圧が変更されると、固定電極と可動電極との間の静電引力が変化し、振動子14の検出方向への力に対する変位量すなわち振動子14のバネ定数が変化する。この場合、振動子14の検出方向への検出振動の共振周波数は変化する。
【0032】
ところで、振動子14の駆動方向への共振周波数と検出方向への共振周波数とは適度に離間させることが必要であるが、振動子14の共振周波数は一般に機械的に定まるものであるため、両周波数の差についてはセンサ素子12ごとに固体差が生じる。しかし、このままでは、センサ素子12ごとの検出感度にバラツキが生じ、正確な角速度の検出が困難となる。そこで、離調調整電極部36への直流バイアス電圧の印加により両周波数の離調調整を行うことが考えられる。しかし、この際、各センサ素子12の特性に対応することなく一律に検出方向の共振周波数の調整を行うものとすると、検出感度のバラツキを抑えることができない。また、物理量検出装置10の出荷前の製造段階においてセンサ素子ごとにその特性を検出し、その特性に従って検出方向の共振周波数の調整を行うものとすると、その調整に膨大な時間を要し、製造コストの上昇を招くと共に、製品出荷後の共振周波数の変動に対処することができない不都合が生ずる。
【0033】
そこで、本実施例のシステムにおいては、物理量検出装置10の出荷後における作動時においても周波数の離調調整を行い得ることとし、検出感度を常に良好に維持することとしている。以下、図3乃至図5を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
【0034】
図3は、振動子14の振動特性について振動の周波数とその変位振幅及び変位位相との関係を表した図を示す。尚、図3(A)には周波数と変位振幅との関係を、また、図3(B)には周波数と変位位相との関係を、それぞれ示している。また、図3においては、振動子14の検出方向への検出振動の共振周波数について、振動子14が所望の共振周波数を有している場合を実線で、また、所望の共振周波数からずれている場合を点線で、それぞれ示している。
【0035】
上記の如く、本実施例において、変位検出回路44から出力される上記(2)式に示す検出変位信号は、同期検波回路54において信号cos(ωt)で同期検波された後に更に、同期検波回路60において所望の離調周波数を有する信号cos(ω/N)tで同期検波される。この場合には、(D1+D3)に示す信号が出力される。
【0036】
図3に示す如く、振動子14の共振周波数においては、駆動信号とその駆動信号の供給による振動子14の変位との間に90degの位相ずれが生ずる。この点、振動子14の検出方向への検出振動の共振周波数が、所望の共振周波数(具体的には、駆動方向への駆動振動の共振周波数fと分周回路48により分周した周波数f/Nとの和の周波数)に一致している場合には、駆動信号に対する変位の位相遅れが90degとなるため、上記(2)式における信号cos(ω+ω/N)tの振幅成分D1が“0”となる。一方、振動子14の検出方向の共振周波数が所望の共振周波数に一致していない場合には、駆動信号に対する変位の位相遅れが90degとならないため、上記した振幅成分D1が“0”以外の値となる。
【0037】
また、上記(2)式に示す如く振幅成分がD3及びD4である信号cos(ω−ω/N)t及び信号sin(ω−ω/N)の周波数(f−f/N)では、振動子14の検出方向への振幅は、図3(A)に示す如く極めて小さい。このため、その振幅成分D3及びD4はほとんど“0”であると判断できる。従って、同期検波回路60の出力は、振動子14の検出方向の共振周波数が所望の共振周波数に一致している場合には“0”である一方、振動子14の検出方向の共振周波数が所望の共振周波数に一致していない場合には“0”以外の値である。
【0038】
図4は、離調調整電極部36に印加されるバイアス電圧と振動子14の検出方向の共振周波数との関係を表した図を示す。また、図5は、本実施例における、離調調整電極部36に印加されるバイアス電圧と同期検波回路60による出力との関係を表した図を示す。尚、図4及び図5においては、振動子14ごとのバラツキがある場合を示している。また、駆動方向の共振周波数についても振動子14ごとにバラツキがあるが、図4には駆動方向の共振周波数を固定したものとした場合を示している。
【0039】
振動子14の検出方向の共振周波数は、初期状態においては、所望の共振周波数に一致していることが理想的であるが、その所望の共振周波数に比べて多少高い周波数に設定される。制御回路40のサーボ回路62は、同期検波回路60から供給される出力信号が“0”でない場合には、振動子14の現実の検出方向の共振周波数が所望の共振周波数でないとして、離調調整電極部36へバイアス電圧を印加すべく、離調バイアス回路64に指令信号を発する。かかる処理が行われると、振動子14の検出方向のバネ定数が変化し、共振周波数が変化する。
【0040】
サーボ回路62は、共振周波数が初期から変化してもその後に同期検波回路60から供給される出力信号が“0”でない場合には、離調調整電極部36へ印加するバイアス電圧を変更する。かかる処理は、同期検波回路60から供給される出力信号が“0”となるまで継続される。そして、サーボ回路62は、その出力信号が“0”となった場合には、振動子14の現実の検出方向の共振周波数が所望の共振周波数であるとして、離調調整電極部36へ印加するバイアス電圧をその値に維持させる。
【0041】
このように、本実施例においては、センサ素子12の振動子14の特性に対応させて自動的に離調調整電極部36へのバイアス電圧を変更することができ、振動子14の検出方向の共振周波数を所望の共振周波数に一致させることができる。振動子14の検出方向の共振周波数が、所望の共振周波数に、具体的には、駆動方向への駆動振動の共振周波数fと分周回路48により分周した検出方向へ駆動させた際に用いた周波数と同一の周波数f/Nとの和(f+f/N)の周波数に一致すれば、離調周波数が常にf/Nとなるので、振動子14の特性にかかわらず駆動方向への駆動周波数における検出振動のゲインは一定に保たれる。従って、本実施例の物理量検出装置10によれば、振動子14の検出方向の変位・振動についての検出感度を良好に維持することが可能となっている。
【0042】
上記した離調調整は、図4及び図5に示す如く振動子14ごとの特性にバラツキがある場合においても、搭載された振動子14の特性に合わせて行われる。また、物理量検出装置10の製造段階に限らず、その出荷後、その装置10が機能を発揮して車両重心軸回りの角速度Ωを検出する過程においても、上記した離調調整を行うことは可能である。
【0043】
従って、本実施例の物理量検出装置10によれば、車両重心軸回りの角速度の検出時においても、搭載された振動子14の特性に合わせて検出振動の共振周波数を自動的に調整することができ、検出感度を良好に維持することが可能となっている。このため、製造段階において離調調整を行うことは不要であり、かかる調整に要する時間を削減することができ、製造上のコストダウンを図ることができる。
【0044】
更に、上記した離調調整は車両重心軸回りの角速度の検出時においても行うことができるため、例え物理量検出装置10の出荷後において振動子14の特性が変化し、共振周波数が変動した場合にも、その共振周波数を常に所望の周波数に一致させることができる。従って、本実施例の物理量検出装置10によれば、振動子14の検出方向の変位・振動についての検出感度の維持を常に図り、その信頼性を向上させることが可能となっている。
【0045】
尚、上記の実施例においては、X軸方向(駆動方向)が特許請求の範囲に記載した「第1の方向」に、Y軸方向(検出方向)が特許請求の範囲に記載した「第2の方向」に、センサ素子12の駆動電極部30及び励振駆動回路42が特許請求の範囲に記載した「第1の駆動手段」に、検出電極部34及び変位検出回路44が特許請求の範囲に記載した「変位検出手段」に、それぞれ相当している。
【0046】
また、上記の実施例においては、位相シフト回路46、分周回路48、及び乗算器50が特許請求の範囲に記載した「算出手段」に、検出方向駆動電極部38及び検出駆動回路52が特許請求の範囲に記載した「第2の駆動手段」に、同期検波回路60が特許請求の範囲に記載した「同期検波手段」に、サーボ回路62、離調バイアス回路64、及び離調調整電極部36が特許請求の範囲に記載した「ゲイン補正手段」及び「離調調整手段」に、離調調整電極部36が特許請求の範囲に記載した「離調調整電極」に、サーボ回路62及び離調バイアス回路64が特許請求の範囲に記載した「印加電圧調整手段」に、分周回路が特許請求の範囲に記載した「分周手段」に、それぞれ相当している。
【0047】
ところで、上記の実施例においては、信号cos(ωt)と信号cos(ωt/N)とを重畳した検出方向駆動電極部38への印加電圧により振動子14を検出方向へ振動駆動させると共に、同期検波回路60において信号cos(ωt/N)にて変位検出回路44からの検出変位信号を同期検波することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、位相シフト回路46により位相シフトする前の信号sin(ωt)とその信号をNで分周した信号sin(ω/N)tとを重畳した印加電圧により振動子14を検出方向へ振動駆動させると共に、同期検波回路60において信号sin(ω/N)tにて変位検出回路44からの検出変位信号を同期検波することとしてもよい。この場合においても、同様の動作を確保することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
また、上記の実施例においては、変位検出回路44から出力される振動子14の駆動方向への変位を表す駆動変位信号を位相シフトさせた信号とその信号を分周した信号とを乗算することにより所望の検出方向の共振周波数(f+f/N)を作成し、その所望の共振周波数に従って振動子14を検出方向に振動駆動すると共に、その周波数f/Nによる同期検波により検出方向の振幅成分を抽出することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、変位検出回路44の出力とは別途に所望の検出方向の共振周波数を作成し、その作成した周波数に従って振動子14の検出方向への振動駆動と同期検波とを行うこととしてもよい。この場合においても、上記した動作と同様の動作を確保することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
また、上記の実施例においては、駆動方向への駆動振動の共振周波数fと分周回路48により分周した周波数f/Nとの和の周波数(f+f/N)を、所望の検出方向の共振周波数としているが、それらの差の周波数(f−f/N)を、所望の検出方向の共振周波数とすることとしてもよい。この場合においても、上記した動作と同様の動作を確保することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
また、上記の実施例においては、物理量検出装置10の出荷後における作動時に常に離調調整を行うこととしているが、その出荷後一定期間ごとに或いは所定のタイミングで離調調整を行うこととしてもよい。
【0051】
更に、上記の実施例においては、センサ素子12を備える物理量検出装置10を車両に搭載することとしているが、車両に限らず、他の物体に固定することとしてもよい。
【0052】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1記載の発明によれば、振動子の特性にかかわらずその所定の駆動周波数における検出振動のゲインを一定に保つことができ、これにより、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【0053】
請求項2記載の発明によれば、振動子の特性に合わせてその検出方向への検出振動の共振周波数を調整することができ、これにより、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【0054】
請求項3記載の発明によれば、離調調整電極への印加電圧の調整による振動子の検出方向への振動のバネ定数の電気的な変更によりその検出振動の共振周波数を調整することができる。
【0055】
また、請求項4記載の発明によれば、振動子の特性にかかわらず振動子の駆動振動の共振周波数と検出振動の共振周波数とを常に一定の関係に保つことができ、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である物理量検出装置の備えるセンサ素子の平面図である。
【図2】本実施例の物理量検出装置の要部構成図である。
【図3】振動子の振動特性について振動の周波数とその変位振幅及び変位位相との関係を表した図である。
【図4】離調調整電極部に印加されるバイアス電圧と振動子の検出方向の共振周波数との関係を表した図である。
【図5】本実施例における、離調調整電極部に印加されるバイアス電圧と同期検波出力との関係を表した図である。
【符号の説明】
10 物理量検出装置
12 センサ素子
14 振動子
40 制御回路
48 分周回路
52 検出駆動回路
60 同期検波回路
62 サーボ回路
64 離調バイアス回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、物理量検出装置に係り、特に、振動子を振動させながらその振動とは異なる方向への変位を検出することにより振動子に作用する所定の物理量を検出する物理量検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基板に変位可能に支持された振動子に作用する角速度等の物理量を検出する物理量検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、振動子を所定の方向(以下、駆動方向と称す)に振動させつつ、かかる状態で生ずるコリオリ力に伴う振動子のその駆動方向とは直交する方向(以下、検出方向と称す)への変位を検出する。従って、かかる装置によれば、角速度等の物理量を検出することができる。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−183139公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、振動子の駆動方向への駆動振動によって検出方向の振動成分を効率よく検出するためには、すなわち、振動子を駆動振動の周波数に対して駆動方向に効率的に振動させ、かつ、コリオリ力によって生じた検出方向の振動を最も効率的に検出するためには、振動子の駆動方向への共振周波数と検出方向への共振周波数とを極力近づけることが望ましい。しかし、振動子にはコリオリ力が作用しなくても駆動振動の一部が検出方向への微小な漏れ成分として伝達されることがあるため、上記した両共振周波数を全く同一に設定すると、その漏れ成分をコリオリ力による変位として誤検出し易くなってしまう。従って、かかる不都合を回避するうえでは、振動子の駆動方向への共振周波数と検出方向への共振周波数とを適度に離すことが適切である。
【0005】
一方、これらの駆動方向への共振周波数と検出方向への共振周波数との差が所望の状態に維持されていないと、検出感度にバラツキが生ずる。振動子が設けられる密閉空間内の圧力は、その振動子の応答特性に大きな影響を与える。そこで、上記従来の装置においては、振動子が設けられた密閉空間内の圧力に応じて、振動子の検出振動の共振周波数を調整し、検出感度に対する密閉空間内の圧力の影響を低減することとしている。
【0006】
しかしながら、振動子の検出振動の共振周波数は、その密閉空間内の圧力以外にも、振動子を含むセンサ素子の特性によって大きく影響される。すなわち、振動子が異なればその共振周波数も異なっている可能性がある。かかる状況において、各センサ素子の特性に対応することなく一律に検出振動の共振周波数の調整を行うものとすると、検出感度のバラツキを抑えることができない。また、物理量検出装置の出荷前の製造段階においてのみ、各センサ素子の特性を検出し、その特性に従って検出振動の共振周波数の調整を行うものとすると、かかる調整に膨大な時間を要することとなり、製造コストの上昇を招くと共に、製品出荷後において共振周波数の変動に対処することができないものとなる。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、物理量検出時においても搭載された振動子の特性に合わせて検出振動の共振周波数を調整することにより、検出感度を良好に維持することが可能な物理量検出装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、振動子を第1の方向に所定の駆動周波数にて振動させる第1の駆動手段と、前記振動子が前記第1の方向に駆動振動されているときに該振動子に該第1の方向とは異なる第2の方向に生ずる変位を検出する変位検出手段と、を備え、前記振動子の前記第2の方向における変位に基づいて所定の物理量を検出する物理量検出装置であって、
前記振動子の前記第1の方向への駆動振動の共振周波数に対して設定されるべき所望の、該振動子の前記第2の方向への検出振動の共振周波数を算出する算出手段と、
前記振動子を前記第2の方向に、前記算出手段により算出された前記所望の検出振動の共振周波数にて振動させる第2の駆動手段と、
前記振動子の前記第2の方向における変位に応じた信号を、前記算出手段により算出された前記所望の検出振動の共振周波数にて同期検波する同期検波手段と、
前記同期検波回路の検波結果に基づいて、前記所定の駆動周波数における前記振動子の前記第2の方向への検出振動のゲインを補正するゲイン補正手段と、を備える物理量検出装置により達成される。
【0009】
本発明において、振動子の第1の方向(駆動方向)への駆動振動の共振周波数に対して設定されるべき所望の第2の方向(検出方向)への検出振動の共振周波数が算出される。そして、振動子は、検出方向に、上記した所望の検出振動の共振周波数にて振動される。振動子の共振周波数においては、駆動信号とその結果生ずる振動子の変位との間に90degの位相ずれが生ずる。このため、所望の検出振動の共振周波数およびその駆動信号位相にて振動子の検出変位を示す信号を同期検波すると、振動子の検出振動の共振周波数が所望の共振周波数に一致している場合には同期検波の結果は“0”となる一方、振動子の検出振動の共振周波数が所望の共振周波数に一致していない場合には同期検波の結果は“0”からずれたものとなる。
【0010】
従って、振動子を検出方向に所望の共振周波数にて振動させた状態で、振動子の検出変位を示す信号が所望の検出振動の共振周波数にて同期検波された結果が“0”になるか否かを検出し、その結果に基づいて振動子が駆動方向に駆動振動される際の所定の駆動周波数における検出方向への検出振動のゲインを補正することとすれば、振動子の特性にかかわらずその所定の駆動周波数における検出振動のゲインを一定に保つことができ、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【0011】
この場合、請求項2に記載する如く、請求項1記載の物理量検出装置において、前記ゲイン補正手段は、前記振動子の前記第2の方向への検出振動の共振周波数を調整する離調調整手段であることとすれば、同期検波結果として現れる振動子の特性に合わせて検出方向への検出振動の共振周波数を調整するので、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【0012】
また、請求項3に記載する如く、請求項2記載の物理量検出装置において、前記離調調整手段は、印加電圧に応じて前記振動子の前記第2の方向への検出振動のバネ定数を電気的に変更する離調調整電極と、前記同期検波回路の検波結果に応じて前記離調調整電極への印加電圧を調整する印加電圧調整手段と、を有することとすれば、離調調整電極への印加電圧の調整による振動子の検出方向への振動のバネ定数の電気的な変更によりその検出振動の共振周波数を調整することができる。
【0013】
尚、請求項4に記載する如く、請求項1記載の物理量検出装置において、前記算出手段は、前記振動子の前記第1の方向への駆動振動の共振周波数を分周させる分周手段を有し、前記振動子の前記駆動振動の共振周波数と前記分周手段により分周された周波数との和又は差を前記所望の検出振動の共振周波数として算出することとすれば、振動子の特性にかかわらず振動子の駆動振動の共振周波数と検出振動の共振周波数とを常に一定の関係に保つことができ、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例である物理量検出装置10の備えるセンサ素子12の平面図を示す。本実施例の物理量検出装置10は、例えば車両に搭載されており、車両の重心軸回りに生ずる角速度Ωをセンサ素子12を用いて検出する角速度検出装置である。センサ素子12は、車両の重心軸を鉛直軸(Z軸)とするX−Y平面内に配置されている。
【0015】
センサ素子12は、シリコン結晶の表面に微細加工によるエッチングを施すことにより形成される。センサ素子12は、所定の質量mを有する振動子14を備えている。振動子14は、絶縁層を形成するシリコン基板16の表面に離れて配置されており、シリコン基板16に固定されたアンカ18により梁20,22を介してシリコン基板16に支持されている。梁20は、アンカ18に対する振動子14の図中X軸方向への変位を許容する梁である。また、梁22は、アンカ18に対する振動子14の図中Y軸方向への変位を許容する梁である。従って、振動子14は、シリコン基板16に対してX軸方向及びY軸方向の双方に振動可能に構成される。
【0016】
センサ素子12は、それぞれ略櫛歯状に形成された、駆動電極部30、駆動モニタ電極部32、検出電極部34、離調調整電極部36、及び、検出方向駆動電極部38を備えている。駆動電極部30、駆動モニタ電極部32、検出電極部34、離調調整電極部36、及び、検出方向駆動電極部38はそれぞれ、振動子14と一体に設けられた可動電極とシリコン基板16上に固定された固定電極とにより構成されている。この可動電極と固定電極とは、常態で所定の隙間を空けて対向するように配置されている。固定電極には、配線を介して後述の制御回路が接続されている。
【0017】
駆動電極部30は、固定電極への励磁電圧の印加によって固定電極と可動電極との間の静電引力を作用させることにより振動子14を基板16に対してX軸方向に駆動させるための電極である。駆動モニタ電極部32は、振動子14のX軸方向の変位に伴う固定電極と可動電極との間の静電容量の変化を検出することにより振動子14の基板16に対するX軸方向への駆動をモニタするための電極である。検出電極部34は、振動子14のY軸方向の変位に伴う固定電極と可動電極との間の静電容量の変化を検出することにより振動子14の基板16に対するY軸方向の振動を検出するための電極である。以下、適宜、X軸方向を振動子14の駆動方向と、Y軸方向を振動子14の検出方向と、それぞれ称す。
【0018】
また、離調調整電極部36は、固定電極への直流バイアス電圧の印加によって固定電極と可動電極との間の静電引力を作用させることにより振動子14の検出方向への検出振動の共振周波数を変更し、検出振動のゲイン(実効検出振動Q値)を変更するための電極である。尚、離調調整とは、振動子14の検出振動の共振周波数と駆動方向の共振周波数との差を調整することをいう。検出方向駆動電極部38は、固定電極への励磁電圧の印加によって固定電極と可動電極との間の静電引力を作用させることにより振動子14を基板16に対してY軸方向(検出方向)に駆動させるための電極である。
【0019】
次に、本実施例の物理量検出装置10の動作について説明する。本実施例において、車両のイグニションがオン状態になると、駆動電極部30の固定電極に所定周波数f(=ω/(2π))の正弦波状の電圧A・cos(ωt)が駆動信号として印加される。尚、所定周波数fは、振動子14のX軸方向(駆動方向)への共振周波数であり、例えば10kHzである。駆動電極部30の固定電極に駆動信号が印加されると、その固定電極と可動電極との間にその周波数fに応じた周期で振動子14をX軸方向(駆動方向)に振動駆動させる力が発生する。
【0020】
そして、振動子14が励振されている状態で、車両の重心軸(Z軸)回りに角速度Ωzが加わると、その振動子14に、X軸方向の振動速度Vx、質量m、及び角速度Ωzに応じたY軸方向(検出方向)へのコリオリ力Fc=2m・Vx・Ωzが作用する。かかるコリオリ力が作用すると、振動子14はY軸方向へ変位し、角速度Ωzの大きさに比例した振幅でかつX軸方向への駆動振動の周波数fに応じた周期で振動する。この場合、梁22はアンカ18を支点としてそのコリオリ力の大きさに応じた分だけ弾性変形するので、検出電極部34の可動電極と固定電極との隙間がコリオリ力の大きさの分だけ変化する。尚、この隙間の初期値は、所定のコリオリ力が作用しても両電極が接触しないように設定されている。
【0021】
検出電極部34の可動電極と固定電極との隙間が変化すると、両電極間の静電容量がその隙間に応じて変化する。従って、車両に生ずるZ軸回りの角速度Ωは、検出電極部34の可動電極と固定電極との間の静電容量の変化に基づいて検出することができる。このように、センサ素子12によれば、そのX−Y平面に直交する車両に生ずる重心軸回りの角速度Ωに応じた信号を出力することができ、振動子14による検出電極34の可動電極と固定電極との静電容量の変化に基づいて角速度Ωを検出する物理量検出装置10を実現することができる。
【0022】
図2は、本実施例の物理量検出装置10の要部構成図を示す。本実施例の物理量検出装置10は、各電極部へ印加すべき電圧の駆動信号を制御すると共に、各電極部の静電容量を検出する制御回路40を備えている。制御回路40は、センサ素子12の駆動電極部30に印加すべき駆動信号A・cos(ωt)(但し、Aは定数)を生成する励振駆動回路42と、振動子14の変位を検出する変位検出回路44と、を有している。変位検出回路44は、駆動モニタ電極部32を用いて振動子14の駆動方向への変位を検出すると共に、検出電極部34を用いて振動子14の検出方向への変位を検出する。
【0023】
駆動電極部30に駆動信号A・cos(ωt)が印加された場合は、振動子14を駆動方向へ振動させる力の発生に伴う振動子14の駆動方向への変位を表す信号(駆動変位信号)はB・sin(ωt)(但し、Bは定数)となる。従って、変位検出回路44は、振動子14の駆動方向への変位を表す駆動変位信号としてB・sin(ωt)の信号を出力する。変位検出回路44には、位相シフト回路46が接続されている。位相シフト回路46は、変位検出回路44から出力された駆動変位信号B・sin(ωt)を位相シフトさせて上記した励振駆動回路42に供給する。励振駆動回路42は、位相シフト回路46から供給される信号cos(ωt)を基に駆動電極部30に印加すべき駆動信号A・cos(ωt)を生成する。
【0024】
位相シフト回路46には、また、分周回路48が接続されている。分周回路48は、位相シフト回路46により位相シフトされた結果得られた余弦波信号cos(ωt)を整数Nで分周させる回路である。位相シフト回路46の出力信号cos(ωt)及び分周回路48の出力信号cos(ωt/N)は、乗算器50に供給される。乗算器50は、位相シフト回路46の出力信号cos(ωt)と分周回路48の出力信号cos(ωt/N)とを乗算する。
【0025】
乗算回路50の出力には、検出駆動回路52が接続されている。検出駆動回路52は、乗算回路50から供給される信号cos(ωt)・cos(ωt/N)を基に、センサ素子12の検出方向駆動電極部38に印加すべき駆動信号を生成する。この生成された駆動信号は、C・cos(ωt)・cos(ωt/N)(但し、Cは定数)である。尚、上記の分周により得られた周波数f/Nは、所望の離調周波数であり、例えばf=10kHz及びN=16が満たされる場合は625Hz(6.25%の離調)となる。
【0026】
C・cos(ωt)・cos(ωt/N)=C/2{cos(ω+ω/N)t+cos(ω−ω/N)t}・・・(1)
検出方向駆動電極部38に上記(1)式に示す駆動信号が印加されると、その固定電極と可動電極との間に振動子14をY軸方向(検出方向)に振動駆動させる力が発生する。この駆動力が振動子に付与されると、以後、振動子14は、この駆動力と共に角速度Ωzの発生によるコリオリ力とが重畳した形で検出方向へ変位・振動する。この場合、振動子14の検出方向への変位を表す信号(検出変位信号)は次式(2)の如くとなる。従って、変位検出回路44は、振動子14の検出方向への変位を表す検出変位信号として次式(2)に示す信号を出力する。但し、この式において、D1〜D4及びY1,Y2は定数である。
【0027】
D1・cos(ω+ω/N)t+D2・sin(ω+ω/N)t+D3・cos(ω−ω/N)t+D4・sin(ω−ω/N)t+Y1・cos(ωt)+Y2・sin(ωt)=D1・{cos(ωt)・cos(ω/N)t−sin(ωt)・sin(ω/N)t}+D2・{sin(ωt)・cos(ω/N)t+cos(ωt)・sin(ω/N)t}+D3・{cos(ωt)・cos(ω/N)t+sin(ωt)・sin(ω/N)t}+D4・{sin(ωt)・cos(ω/N)t−cos(ωt)・sin(ω/N)t}+Y1・cos(ωt)+Y2・sin(ωt) ・・・(2)
変位検出回路44には、また、同期検波回路54が接続されている。同期検波回路54は、また、上記した位相シフト回路46に接続されている。同期検波回路54は、変位検出回路44から供給される上記(2)式に示す検出変位信号を、位相シフト回路46から供給されるcos(ωt)で同期検波する。振動子14の検出方向への変位を表す検出変位信号について同期検波回路54によるcos(ωt)での同期検波が行われると、その信号のうちcos(ωt)の振幅成分のみが抽出され、次式(3)に示す信号が出力される。
【0028】
D1・cos(ω/N)t+D2・sin(ω/N)t+D3・cos(ω/N)t−D4・sin(ω/N)t+Y1 ・・・(3)
同期検波回路54には、平滑回路56が接続されている。平滑回路56は、同期検波回路54から供給される上記(3)式に示す信号を平滑化する。この平滑化された信号は、コリオリ力による振動子14の検出方向への振動成分の振幅を表すY1となる。この振幅は角速度Ωが大きいほど大きくなる。平滑回路56は、車両の重心軸回りに生ずる角速度Ωを示すセンサ素子12の出力としてY1を出力する。従って、物理量検出装置10によれば、車両の重心軸回りの角速度Ωを検出することが可能となっている。
【0029】
また、同期検波回路54には、同期検波回路60が接続されている。同期検波回路60は、また、上記した分周回路48に接続されている。同期検波回路60は、同期検波回路54から出力される上記(3)式に示す信号を、分周回路48から供給されるcos(ω/N)tで同期検波する。かかる同期検波が行われると、(3)式に示す信号のうちcos(ω/N)tの振幅成分のみが抽出され、(D1+D3)に示す信号が出力される。
【0030】
同期検波回路60には、サーボ回路62が接続されている。サーボ回路62は、同期検波回路60から出力される(D1+D3)に示す信号に基づいて、振動子14の検出方向への共振周波数を適当に変更・設定すべく、離調調整電極部36への印加電圧(バイアス電圧)をフィードバック制御する。サーボ回路62には、離調バイアス回路64が接続されている。離調バイアス回路64は、サーボ回路62からの指令に従ったバイアス電圧を離調調整電極部36へ印加する回路である。
【0031】
離調調整電極部36にバイアス電圧が印加されると、その固定電極と可動電極との間に静電引力が作用し、その間に電気的なバネが付加される。そして、このバイアス電圧が変更されると、固定電極と可動電極との間の静電引力が変化し、振動子14の検出方向への力に対する変位量すなわち振動子14のバネ定数が変化する。この場合、振動子14の検出方向への検出振動の共振周波数は変化する。
【0032】
ところで、振動子14の駆動方向への共振周波数と検出方向への共振周波数とは適度に離間させることが必要であるが、振動子14の共振周波数は一般に機械的に定まるものであるため、両周波数の差についてはセンサ素子12ごとに固体差が生じる。しかし、このままでは、センサ素子12ごとの検出感度にバラツキが生じ、正確な角速度の検出が困難となる。そこで、離調調整電極部36への直流バイアス電圧の印加により両周波数の離調調整を行うことが考えられる。しかし、この際、各センサ素子12の特性に対応することなく一律に検出方向の共振周波数の調整を行うものとすると、検出感度のバラツキを抑えることができない。また、物理量検出装置10の出荷前の製造段階においてセンサ素子ごとにその特性を検出し、その特性に従って検出方向の共振周波数の調整を行うものとすると、その調整に膨大な時間を要し、製造コストの上昇を招くと共に、製品出荷後の共振周波数の変動に対処することができない不都合が生ずる。
【0033】
そこで、本実施例のシステムにおいては、物理量検出装置10の出荷後における作動時においても周波数の離調調整を行い得ることとし、検出感度を常に良好に維持することとしている。以下、図3乃至図5を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
【0034】
図3は、振動子14の振動特性について振動の周波数とその変位振幅及び変位位相との関係を表した図を示す。尚、図3(A)には周波数と変位振幅との関係を、また、図3(B)には周波数と変位位相との関係を、それぞれ示している。また、図3においては、振動子14の検出方向への検出振動の共振周波数について、振動子14が所望の共振周波数を有している場合を実線で、また、所望の共振周波数からずれている場合を点線で、それぞれ示している。
【0035】
上記の如く、本実施例において、変位検出回路44から出力される上記(2)式に示す検出変位信号は、同期検波回路54において信号cos(ωt)で同期検波された後に更に、同期検波回路60において所望の離調周波数を有する信号cos(ω/N)tで同期検波される。この場合には、(D1+D3)に示す信号が出力される。
【0036】
図3に示す如く、振動子14の共振周波数においては、駆動信号とその駆動信号の供給による振動子14の変位との間に90degの位相ずれが生ずる。この点、振動子14の検出方向への検出振動の共振周波数が、所望の共振周波数(具体的には、駆動方向への駆動振動の共振周波数fと分周回路48により分周した周波数f/Nとの和の周波数)に一致している場合には、駆動信号に対する変位の位相遅れが90degとなるため、上記(2)式における信号cos(ω+ω/N)tの振幅成分D1が“0”となる。一方、振動子14の検出方向の共振周波数が所望の共振周波数に一致していない場合には、駆動信号に対する変位の位相遅れが90degとならないため、上記した振幅成分D1が“0”以外の値となる。
【0037】
また、上記(2)式に示す如く振幅成分がD3及びD4である信号cos(ω−ω/N)t及び信号sin(ω−ω/N)の周波数(f−f/N)では、振動子14の検出方向への振幅は、図3(A)に示す如く極めて小さい。このため、その振幅成分D3及びD4はほとんど“0”であると判断できる。従って、同期検波回路60の出力は、振動子14の検出方向の共振周波数が所望の共振周波数に一致している場合には“0”である一方、振動子14の検出方向の共振周波数が所望の共振周波数に一致していない場合には“0”以外の値である。
【0038】
図4は、離調調整電極部36に印加されるバイアス電圧と振動子14の検出方向の共振周波数との関係を表した図を示す。また、図5は、本実施例における、離調調整電極部36に印加されるバイアス電圧と同期検波回路60による出力との関係を表した図を示す。尚、図4及び図5においては、振動子14ごとのバラツキがある場合を示している。また、駆動方向の共振周波数についても振動子14ごとにバラツキがあるが、図4には駆動方向の共振周波数を固定したものとした場合を示している。
【0039】
振動子14の検出方向の共振周波数は、初期状態においては、所望の共振周波数に一致していることが理想的であるが、その所望の共振周波数に比べて多少高い周波数に設定される。制御回路40のサーボ回路62は、同期検波回路60から供給される出力信号が“0”でない場合には、振動子14の現実の検出方向の共振周波数が所望の共振周波数でないとして、離調調整電極部36へバイアス電圧を印加すべく、離調バイアス回路64に指令信号を発する。かかる処理が行われると、振動子14の検出方向のバネ定数が変化し、共振周波数が変化する。
【0040】
サーボ回路62は、共振周波数が初期から変化してもその後に同期検波回路60から供給される出力信号が“0”でない場合には、離調調整電極部36へ印加するバイアス電圧を変更する。かかる処理は、同期検波回路60から供給される出力信号が“0”となるまで継続される。そして、サーボ回路62は、その出力信号が“0”となった場合には、振動子14の現実の検出方向の共振周波数が所望の共振周波数であるとして、離調調整電極部36へ印加するバイアス電圧をその値に維持させる。
【0041】
このように、本実施例においては、センサ素子12の振動子14の特性に対応させて自動的に離調調整電極部36へのバイアス電圧を変更することができ、振動子14の検出方向の共振周波数を所望の共振周波数に一致させることができる。振動子14の検出方向の共振周波数が、所望の共振周波数に、具体的には、駆動方向への駆動振動の共振周波数fと分周回路48により分周した検出方向へ駆動させた際に用いた周波数と同一の周波数f/Nとの和(f+f/N)の周波数に一致すれば、離調周波数が常にf/Nとなるので、振動子14の特性にかかわらず駆動方向への駆動周波数における検出振動のゲインは一定に保たれる。従って、本実施例の物理量検出装置10によれば、振動子14の検出方向の変位・振動についての検出感度を良好に維持することが可能となっている。
【0042】
上記した離調調整は、図4及び図5に示す如く振動子14ごとの特性にバラツキがある場合においても、搭載された振動子14の特性に合わせて行われる。また、物理量検出装置10の製造段階に限らず、その出荷後、その装置10が機能を発揮して車両重心軸回りの角速度Ωを検出する過程においても、上記した離調調整を行うことは可能である。
【0043】
従って、本実施例の物理量検出装置10によれば、車両重心軸回りの角速度の検出時においても、搭載された振動子14の特性に合わせて検出振動の共振周波数を自動的に調整することができ、検出感度を良好に維持することが可能となっている。このため、製造段階において離調調整を行うことは不要であり、かかる調整に要する時間を削減することができ、製造上のコストダウンを図ることができる。
【0044】
更に、上記した離調調整は車両重心軸回りの角速度の検出時においても行うことができるため、例え物理量検出装置10の出荷後において振動子14の特性が変化し、共振周波数が変動した場合にも、その共振周波数を常に所望の周波数に一致させることができる。従って、本実施例の物理量検出装置10によれば、振動子14の検出方向の変位・振動についての検出感度の維持を常に図り、その信頼性を向上させることが可能となっている。
【0045】
尚、上記の実施例においては、X軸方向(駆動方向)が特許請求の範囲に記載した「第1の方向」に、Y軸方向(検出方向)が特許請求の範囲に記載した「第2の方向」に、センサ素子12の駆動電極部30及び励振駆動回路42が特許請求の範囲に記載した「第1の駆動手段」に、検出電極部34及び変位検出回路44が特許請求の範囲に記載した「変位検出手段」に、それぞれ相当している。
【0046】
また、上記の実施例においては、位相シフト回路46、分周回路48、及び乗算器50が特許請求の範囲に記載した「算出手段」に、検出方向駆動電極部38及び検出駆動回路52が特許請求の範囲に記載した「第2の駆動手段」に、同期検波回路60が特許請求の範囲に記載した「同期検波手段」に、サーボ回路62、離調バイアス回路64、及び離調調整電極部36が特許請求の範囲に記載した「ゲイン補正手段」及び「離調調整手段」に、離調調整電極部36が特許請求の範囲に記載した「離調調整電極」に、サーボ回路62及び離調バイアス回路64が特許請求の範囲に記載した「印加電圧調整手段」に、分周回路が特許請求の範囲に記載した「分周手段」に、それぞれ相当している。
【0047】
ところで、上記の実施例においては、信号cos(ωt)と信号cos(ωt/N)とを重畳した検出方向駆動電極部38への印加電圧により振動子14を検出方向へ振動駆動させると共に、同期検波回路60において信号cos(ωt/N)にて変位検出回路44からの検出変位信号を同期検波することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、位相シフト回路46により位相シフトする前の信号sin(ωt)とその信号をNで分周した信号sin(ω/N)tとを重畳した印加電圧により振動子14を検出方向へ振動駆動させると共に、同期検波回路60において信号sin(ω/N)tにて変位検出回路44からの検出変位信号を同期検波することとしてもよい。この場合においても、同様の動作を確保することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
また、上記の実施例においては、変位検出回路44から出力される振動子14の駆動方向への変位を表す駆動変位信号を位相シフトさせた信号とその信号を分周した信号とを乗算することにより所望の検出方向の共振周波数(f+f/N)を作成し、その所望の共振周波数に従って振動子14を検出方向に振動駆動すると共に、その周波数f/Nによる同期検波により検出方向の振幅成分を抽出することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、変位検出回路44の出力とは別途に所望の検出方向の共振周波数を作成し、その作成した周波数に従って振動子14の検出方向への振動駆動と同期検波とを行うこととしてもよい。この場合においても、上記した動作と同様の動作を確保することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
また、上記の実施例においては、駆動方向への駆動振動の共振周波数fと分周回路48により分周した周波数f/Nとの和の周波数(f+f/N)を、所望の検出方向の共振周波数としているが、それらの差の周波数(f−f/N)を、所望の検出方向の共振周波数とすることとしてもよい。この場合においても、上記した動作と同様の動作を確保することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
また、上記の実施例においては、物理量検出装置10の出荷後における作動時に常に離調調整を行うこととしているが、その出荷後一定期間ごとに或いは所定のタイミングで離調調整を行うこととしてもよい。
【0051】
更に、上記の実施例においては、センサ素子12を備える物理量検出装置10を車両に搭載することとしているが、車両に限らず、他の物体に固定することとしてもよい。
【0052】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1記載の発明によれば、振動子の特性にかかわらずその所定の駆動周波数における検出振動のゲインを一定に保つことができ、これにより、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【0053】
請求項2記載の発明によれば、振動子の特性に合わせてその検出方向への検出振動の共振周波数を調整することができ、これにより、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【0054】
請求項3記載の発明によれば、離調調整電極への印加電圧の調整による振動子の検出方向への振動のバネ定数の電気的な変更によりその検出振動の共振周波数を調整することができる。
【0055】
また、請求項4記載の発明によれば、振動子の特性にかかわらず振動子の駆動振動の共振周波数と検出振動の共振周波数とを常に一定の関係に保つことができ、振動子の検出方向の変位についての検出感度を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である物理量検出装置の備えるセンサ素子の平面図である。
【図2】本実施例の物理量検出装置の要部構成図である。
【図3】振動子の振動特性について振動の周波数とその変位振幅及び変位位相との関係を表した図である。
【図4】離調調整電極部に印加されるバイアス電圧と振動子の検出方向の共振周波数との関係を表した図である。
【図5】本実施例における、離調調整電極部に印加されるバイアス電圧と同期検波出力との関係を表した図である。
【符号の説明】
10 物理量検出装置
12 センサ素子
14 振動子
40 制御回路
48 分周回路
52 検出駆動回路
60 同期検波回路
62 サーボ回路
64 離調バイアス回路
Claims (4)
- 振動子を第1の方向に所定の駆動周波数にて振動させる第1の駆動手段と、前記振動子が前記第1の方向に駆動振動されているときに該振動子に該第1の方向とは異なる第2の方向に生ずる変位を検出する変位検出手段と、を備え、前記振動子の前記第2の方向における変位に基づいて所定の物理量を検出する物理量検出装置であって、
前記振動子の前記第1の方向への駆動振動の共振周波数に対して設定されるべき所望の、該振動子の前記第2の方向への検出振動の共振周波数を算出する算出手段と、
前記振動子を前記第2の方向に、前記算出手段により算出された前記所望の検出振動の共振周波数にて振動させる第2の駆動手段と、
前記振動子の前記第2の方向における変位に応じた信号を、前記算出手段により算出された前記所望の検出振動の共振周波数にて同期検波する同期検波手段と、
前記同期検波回路の検波結果に基づいて、前記所定の駆動周波数における前記振動子の前記第2の方向への検出振動のゲインを補正するゲイン補正手段と、を備えることを特徴とする物理量検出装置。 - 前記ゲイン補正手段は、前記振動子の前記第2の方向への検出振動の共振周波数を調整する離調調整手段であることを特徴とする請求項1記載の物理量検出装置。
- 前記離調調整手段は、印加電圧に応じて前記振動子の前記第2の方向への検出振動のバネ定数を電気的に変更する離調調整電極と、前記同期検波回路の検波結果に応じて前記離調調整電極への印加電圧を調整する印加電圧調整手段と、を有することを特徴とする請求項2記載の物理量検出装置。
- 前記算出手段は、前記振動子の前記第1の方向への駆動振動の共振周波数を分周させる分周手段を有し、前記振動子の前記駆動振動の共振周波数と前記分周手段により分周された周波数との和又は差を前記所望の検出振動の共振周波数として算出することを特徴とする請求項1記載の物理量検出装置。
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